(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、記録媒体上のある広さを持った一定領域をインクで塗りつぶすように印刷する、いわゆるベタ画像を印刷する場合、当該領域内にインクで被覆されない余白部(ユーザーが視認可能な程度の余白部)が存在すると、印刷品質が低いものとして認識される。また、インク滴は、記録媒体上で本来着弾すべき位置から若干ずれて着弾する(着弾誤差がある)ことがある。着弾誤差は、本来生じさせるべきでない余白部を生じさせ得る。
このような余白部の発生をできるだけ抑制するには、前記複数のサイズのインク滴のうち、より大きいサイズのインク滴(1滴でより広い領域を被覆できるインク滴)を多用することが有効である。
【0005】
しかしながら、前記大きいサイズのインク滴を多用することによる弊害も起こり得る。例えば、同じ濃度の画像をあるサイズのインク滴で表現する場合と、当該サイズよりも小さいサイズのインク滴で表現する場合とでは、当該画像を再現するために記録媒体に吐出されるインク滴数は後者の場合の方が多くなる。そのため、例えば文字等のように比較的細い線で表現される画像は、前記大きいサイズのインク滴により再現したときに、相対的にインク滴数が少ないために、文字を構成する線の一部が欠けることがあった。このような文字の一部の欠けは、印刷結果としての文字の品質を低下させるものであった。
従って、比較的大きいサイズのインク滴を使用することが望ましい場面において発生し得る画質劣化を的確に抑制する技術が望まれていた。上記文献は、このような課題を解決するものではなかった。
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、複数のサイズのインク滴を吐出可能な印刷ヘッドを用いて印刷を行う際の印刷結果の品質向上に資する印刷制御装置、印刷制御方法および印刷制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、複数のサイズのインク滴を吐出可能な印刷ヘッドを制御して印刷を実行させる印刷制御装置であって、画像データに基づくインク色の階調値を取得し、当該階調値に基づいて、前記複数のサイズのいずれかのインク滴の吐出あるいはインク滴の不吐出を決定し、当該決定に応じて前記印刷ヘッドによるインク滴の吐出を制御する印刷制御部を備え、前記印刷制御部は、前記階調値が、最大値を含む当該最大値側の一部範囲に属する場合には、前記印刷ヘッドに吐出させるインク滴を第一サイズのインク滴あるいは当該第一サイズよりも小さいサイズのインク滴のいずれかとし、前記階調値が、前記一部範囲よりも最小値側の範囲に属する場合には、前記印刷ヘッドに吐出させるインク滴を前記第一サイズのインク滴のみとする構成としてある。
【0008】
当該構成によれば、画像データに基づくインク色の階調値にかかわらず第一サイズのインク滴が吐出される可能性が許容されている(当該階調値が、最大値側の前記一部範囲よりも最小値側の範囲に属する場合に至っては、第一サイズのインク滴のみ吐出が許容されている)。そのため、上述したような余白部の発生が抑制される。さらに、前記階調値が、前記最大値側の一部範囲に属する場合には、第一サイズのインク滴あるいは第一サイズよりも小さいサイズのインク滴のいずれかが吐出される。そのため、文字等が印刷される際には、第一サイズのみならず、第一サイズよりも小さいサイズのインク滴によっても当該文字が構成され、印刷結果において劣化(上述の「欠け」)が殆ど無い高品質な文字が得られる。
【0009】
本発明の態様の一つは、前記印刷制御部は、少なくとも、前記階調値が前記一部範囲に属する場合に、前記印刷ヘッドに吐出させるインク滴を前記第一サイズのインク滴あるいは前記第一サイズよりも小さいサイズのインク滴のいずれかとし、前記階調値が前記一部範囲よりも最小値側の範囲に属する場合に、前記印刷ヘッドに吐出させるインク滴を前記第一サイズのインク滴のみとする、第一吐出モードと、前記階調値が前記最小値を含む前記最小値側の第二の一部範囲に属する場合に、前記印刷ヘッドに吐出させるインク滴を、前記第一サイズよりも小さいサイズのインク滴とする第二吐出モードと、を実行可能である。
【0010】
そして、前記印刷制御部は、着弾したインク滴のにじみ易さが異なる第一記録媒体と第二記録媒体のうち、インク滴がにじみにくい前記第一記録媒体が使用される場合に、前記第一吐出モードを実行し、前記第二記録媒体が使用される場合に、前記第二吐出モードを実行する、としてもよい。
インク滴がにじみにくい記録媒体においては、着弾したインク滴が広がりにくく、そのため余白部が発生し易い。当該構成によれば、インク滴がにじみにくい第一記録媒体が使用される場合は第一吐出モードを実行することで、余白部の発生が的確に抑制されるとともに、文字等の品質が向上する。また、第一記録媒体と比較してインク滴がにじみ易い第二記録媒体が使用される場合(余白部が発生しにくい状況の一種)には、第二吐出モードを実行することで、低階調側の範囲で第一サイズよりも小さいサイズのインク滴が吐出されることとなり、粒状感(ドットの目立ち)が少なく階調性が豊かな画質が得られる。
【0011】
また、前記印刷制御部は、前記印刷ヘッドの1走査当たりのインク滴の吐出回数が異なる第一記録方法と第二記録方法のうち、前記吐出回数が多い第一記録方法を採用する場合に、前記第一吐出モードを実行し、前記第二記録方法を採用する場合に、前記第二吐出モードを実行する、としてもよい。
前記印刷ヘッドの1走査当たりのインク滴の吐出回数が多い第一記録方法を採用する場合は、記録媒体の表現近傍における気流の乱れの影響により、インク滴の着弾誤差が生じやすく、そのため余白部が発生し易い状況である。当該構成によれば、第一記録方法を採用する場合は第一吐出モードを実行することで、余白部の発生が的確に抑制されるとともに、文字等の品質が向上する。また、第一記録方法と比較して、余白部が発生しにくい第二記録方法を採用する場合は、第二吐出モードを実行することで、低階調側の範囲で第一サイズよりも小さいサイズのインク滴が吐出されることとなり、粒状感(ドットの目立ち)が少なく階調性が豊かな画質が得られる。
【0012】
また、前記印刷制御部は、ブラックインクのみを印刷ヘッドに吐出させる場合に、前記第一吐出モードを実行し、前記ブラックインクおよび前記ブラックインク以外のカラーインクを印刷ヘッドに吐出させる場合に、前記第二吐出モードを実行する、としてもよい。
ブラックインクのみを印刷ヘッドに吐出させる場合(モノクロ印刷を行う場合)は、上述したような余白や文字の欠けは、より目立ちやすいと言える。当該構成によれば、ブラックインクのみを印刷ヘッドに吐出させる場合に、余白部の発生が的確に抑制されるとともに、文字等の品質が向上する。また、ブラックインクおよびブラックインク以外のカラーインクを印刷ヘッドに吐出させる(モノクロ印刷を行う場合と比較して前記余白の目立ちや文字の欠けが問題となりにくい)状況では、第二吐出モードを実行することで、低階調側の範囲で第一サイズよりも小さいサイズのインク滴が吐出されることとなり、粒状感(ドットの目立ち)が少なく階調性が豊かな画質が得られる。
【0013】
本発明にかかる技術的思想は印刷制御装置という形態のみで実現されるものではなく、他の物によって具現化されてもよい。また、上述したいずれかの態様の印刷制御装置の特徴に対応した工程を備える方法(印刷制御方法)の発明や、当該方法を所定のハードウェア(コンピューター)に実行させる印刷制御プログラムの発明や、当該プログラムを記録したコンピューター読取可能な記憶媒体の発明も把握することができる。また、印刷制御装置は、単体の装置によって実現されてもよいし、複数の装置の組み合せによって実現されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.装置の概略
図1は、本実施形態にかかるハードウェア構成およびソフトウェア構成を概略的に示している。
図1では、第1装置10と第2装置50とを示している。第1装置10は、第2装置50を制御して第2装置50に印刷を実行させる機能を有し、例えば、パーソナルコンピューター(PC)や、サーバー、携帯型端末装置等が該当する。第2装置50は、プリンターである。プリンター(printer)とは、あらかじめ定められた一つ又は複数の文字集合に属する離散的な図形文字の列を主な様式として、データのハードコピー記録を作る出力装置、である(JIS X0012−1990)。第2装置50は、プリンターとして機能し得るものであればよく、スキャナーやコピー機としても機能するいわゆる複合機であってもよい。
【0016】
第1装置10は、印刷制御装置の一例に該当する。あるいは、第1装置10および第2装置50からなるシステム100を印刷制御装置と捉えてもよいし、第2装置50のみを印刷制御装置と捉えることも可能である。また、第1装置10と第2装置50は、それぞれが別個の装置であることのみを前提としたものではない。第1装置10と第2装置50は、一体的に構成された一つの製品(プリンター)内における各部に該当するとしてもよく、当該製品の一部が第1装置10として機能し、他の部が第2装置50として機能する構成も本実施形態に含まれる。
【0017】
第1装置10においては、CPU11が、ハードディスクドライブ(HDD)20等に記憶されたプログラムデータ21をRAM12に展開してOSの下でプログラムデータ21に従った演算を行なうことにより、第2装置50を制御するための印刷制御部13(印刷制御プログラム。例えば、プリンタードライバー。)が実行される。印刷制御部13は、画像取得部13a、画像処理部13b、ドット振分部13c、転送部13d等の各機能をCPU11に実行させる。これら各機能については後述する。また、第1装置10と第2装置50とが一体的にプリンターとして構成された場合には、印刷制御部13は後述するファームウェアFWとして、HDD20は後述するROM53等のメモリーとして、それぞれ構成されるとしてもよい。
【0018】
第1装置10には、表示部としてのディスプレー30が接続されており、ディスプレー30には各処理に必要なユーザーインターフェイス(UI)画面が表示される。また、第1装置10は、例えば、キーボードやマウスや各種ボタンやタッチパッドやタッチパネル等により実現される操作部40を適宜備え、各処理に必要な指示がユーザーにより操作部40を介して入力される。なお、ディスプレー30および操作部40は、第1装置10に内蔵されていてもよいし、外部接続されていてもよい。第1装置10は、第2装置50と転送路70を介して通信可能に接続されている。転送路70は、有線あるいは無線による通信経路の総称である。上述したように第1装置10と第2装置50が一体的な製品である場合は、転送路70は当該製品内における通信経路である。
【0019】
第2装置50においては、CPU51が、ROM53等のメモリーに記憶されたプログラムデータ54をRAM52に展開してOSの下でプログラムデータ54に従った演算を行なうことにより、自機を制御するためのファームウェアFWが実行される。ファームウェアFWは、第1装置10から送信された印刷データに基づいた印刷をASIC56に実行させることができる。
【0020】
ASIC56は印刷データを取得し、印刷データに基づいて、例えば、搬送機構57や、キャリッジモーター58や、印刷ヘッド62を駆動するための駆動信号を生成する。
搬送機構57は、図示しない紙送りモーターや紙送りローラーを備え、ASIC56に駆動制御されることにより、一定の搬送方向に沿って記録媒体を搬送する。記録媒体とは、印刷画像を保持する素材のことであり、代表的には用紙であるが、プラスチックや繊維などの用紙以外の素材であってもよい。
【0021】
第2装置50は、例えばキャリッジ60を備えており、キャリッジ60は複数種類のインク毎のカートリッジ61を搭載している。
図1の例では、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、の各種液体に対応したカートリッジ61が搭載されている。ただし、第2装置50が使用するインクの具体的な種類や数は上述したものに限られず、例えば、ライトシアン、ライトマゼンダ、オレンジ、グリーン、グレー、ライトグレー、ホワイト、メタリック…等、種々のインクを使用可能である。また、カートリッジ61は、キャリッジ60に搭載されずに第2装置50内の所定位置に設置されるとしてもよいし、カートリッジ61は、インクタンク、インクパッケージ等の体裁でもよい。
【0022】
キャリッジ60は、各カートリッジ61から供給されるインクを多数のインク吐出孔(以下、ノズル)から噴射(吐出)する印刷ヘッド62を備える。印刷ヘッド62内においては、各ノズルに対応して、ノズルからインク(インク滴)を吐出させるための圧電素子が設けられている。圧電素子は、前記駆動信号が印加されると変形して、対応するノズルからインクを吐出させる。本実施形態では、印刷ヘッド62は、ノズルから前記駆動信号に応じて、複数の異なるサイズのインク滴を吐出することが可能である。インク滴のサイズが異なるとは、インク滴あたりのインク量が異なることを意味する。より具体的には、印刷ヘッド62は、最も大きいサイズのインク滴(Lサイズのインク滴)と、その次に大きいサイズのインク滴(Mサイズのインク滴)と、最も小さいサイズのインク滴(Sサイズのインク滴)とを吐出可能である。ここで、「ドット」と表現した場合には、基本的には、記録媒体に着弾した状態のインク滴を指す。ただし、インク滴が記録媒体に着弾する以前の段階においても、説明の都合上、ドットという表現を用いることがある。また、Lサイズのインク滴を「大ドット」、Mサイズのインク滴を「中ドット」、Sサイズのインク滴を「小ドット」、と表現することもある。
【0023】
ASIC56にキャリッジモーター58の駆動が制御されることにより、キャリッジ60(および印刷ヘッド62)が、搬送方向と交差する方向(主走査方向)に沿って移動(主走査)し、かつASIC56は当該移動に伴って印刷ヘッド62に各ノズルからインクを吐出させる。これにより、記録媒体にインク滴が付着し(記録媒体にドットが形成され)、印刷データに基づく画像が記録媒体上に再現される。なお前記“交差”とは、直交の意である。ただし、直交といっても、厳密な直交(90°)のみを意味するのではなく、製品の品質上許容される程度の角度の誤差を含む意味である。
【0024】
第2装置50は、さらに操作パネル59を備える。操作パネル59は、表示部(例えば液晶パネル)や、表示部内に形成されるタッチパネルや、各種ボタンやキーを含み、ユーザーからの入力を受け付けたり、必要なUI画面を表示部に表示したりする。
第2装置50は、前記のように印刷ヘッド62が主走査方向に沿って移動するいわゆるシリアルプリンターに限られない。例えば、第2装置50は、ノズルが主走査方向に沿って並ぶインク種類毎のノズル列を搬送方向に複数並列させたラインプリンター用ヘッドを有する、いわゆるラインプリンターであってもよい。また、ノズルからドットを吐出させる手段も、前記圧電素子に限られず、発熱素子によりインクを加熱してノズルからドットを吐出させる手段を採用してもよい。さらに、プリンターが採用する印刷方式は、前記のようなインクジェット方式に限る必要はなく、レーザー方式やサーマル方式であってもよい。
【0025】
2.印刷制御処理
上述の構成を踏まえ、本実施形態において実行される印刷制御処理(方法)を説明する。
図2は、印刷制御処理をフローチャートにより示している。ここでは、第1装置10においてCPU11が印刷制御部13の機能を実現して当該フローチャートを実行するものとして説明を行う。
ステップS100では、印刷制御部13は、ユーザーが操作部40を操作してディスプレー30に表示させたUI画面を介して、ユーザーから印刷に関する各種条件(印刷条件)の設定を受け付ける。印刷条件としては、例えば、印刷に使用する記録媒体の種類や、印刷解像度や、モノクロ印刷かカラー印刷かの選択、など種々の条件がある。ステップS100で受け付けた設定の少なくとも一部は、後述のドット振分処理(ステップS140)に参照される。
【0026】
記録媒体としては、普通紙や光沢紙など種々設定し得るが、本実施形態では、記録媒体を、インクがにじみ易い記録媒体とにじみにくい記録媒体とに大別している。インクがにじみ易いとは、着弾したインク滴が記録媒体上でより広い範囲に広がることを意味する。インクがにじみ易い場合には、仮にインク滴の着弾位置に誤差があったとしても、そのような着弾誤差に起因する余白部の発生を抑制できる。また、上述したいわゆるベタ画像の印刷に際しても、インクがにじみ易い方がインクによる記録媒体表面の被覆率が向上し、ベタ画像の画質を低下させる余白部の発生を抑制できる。一方、インクがにじみにくい場合は、このような余白部が発生し易いと言える。
【0027】
ユーザーがUI画面を介して選択可能な記録媒体のうち、どの記録媒体がインクがにじみ易い記録媒体であり、どの記録媒体がインクがにじみにくい記録媒体であるかは、予め決められているものとする。以下では、インクがにじみにくい記録媒体を「第一記録媒体」と呼び、インクがにじみ易い記録媒体を「第二記録媒体」と呼んで区別する。
【0028】
印刷解像度(dpi)は、主走査方向の解像度と搬送方向(副走査方向)の解像度とがある。主走査方向の解像度は主に、印刷ヘッド62の1走査(1回の主走査)当たりの(1ノズルによる)インク滴の吐出回数に依存する。また、このような1回の主走査当たりの1ノズルによるインク滴の吐出回数(以下、走査中吐出回数)は、主走査の速度(キャリッジ60の移動速度)およびノズルによる単位時間あたりのインク滴の吐出回数に依存する。単位時間(例えば1秒)あたりのインク滴の吐出回数は、ノズルに対応して設けられた圧電素子に印加される駆動信号の周波数に相当するため、吐出周波数等と表現してもよい。副走査方向の解像度は主に、搬送機構57による記録媒体の搬送速度に依存する。ここで、走査中吐出回数の違いは、上述した余白部の発生有無に影響すると言える。走査中吐出回数が多い場合、基本的には、あるインク滴が記録媒体に着弾した後、次にインク滴が記録媒体に着弾するまでの時間が短いと言える。この場合、先に着弾したインク滴が着弾時に記録媒体の表面近傍に巻き起こした気流(風)により、次に着弾しようとするインク滴が若干流される。このような現象が各インク滴に起こることで、結果的に、各インク滴の着弾誤差が生じて余白部が発生し得る。このような余白部は「風紋」等と呼ぶことができ、カーブ状の筋となって記録媒体上に表れる。
【0029】
一方、走査中吐出回数が少ない場合は、基本的には、あるインク滴が記録媒体に着弾した後、次にインク滴が記録媒体に着弾するまでの時間が長いと言える。そのため、前記気流(風)の影響が低減し、前記風紋が発生しにくい。つまり、走査中吐出回数が多い場合は余白部(風紋)が発生し易く、逆に、走査中吐出回数が少ない場合は余白部(風紋)が発生しにくいと言える。いずれにしてもユーザーは、UI画面を介して印刷解像度を選択することができる。ユーザーがUI画面を介して選択可能な印刷解像度は、上述の走査中吐出回数が、所定の基準値以上である印刷解像度と、当該基準値に満たない印刷解像度とに分けることができる。以下では、走査中吐出回数が基準値以上である印刷解像度を「第一記録方法」と呼び、走査中吐出回数が基準値に満たない印刷解像度を「第二記録方法」と呼ぶ。
【0030】
ユーザーは、UI画面を介して、印刷解像度を直接的に選択するのではなく、例えば、印刷速度が異なる複数の印刷モードの中から1つの印刷モードを選択することにより、印刷解像度を間接的に選択することがある。例えば、最も印刷速度が速い高速モード、その次に印刷速度が速い標準モード、最も印刷速度が遅い低速モード、などである。このような各印刷モードは、互いに異なる印刷解像度で印刷を実行する。従って、例えば、高速モードおよび標準モードが前記「第二記録方法」に該当し、低速モードが前記「第一記録方法」に該当するとしてもよい。
【0031】
モノクロ印刷はKインクのみを使用する印刷であり、カラー印刷はKインク以外にも、C,M,Y等の各種有彩色インクを使用する印刷である。モノクロ印刷は、例えば、文字や図形を印刷する場合に選択されることが予想され、Kインクでベタ塗りすべき画像における余白部や、Kインクで印刷される文字の「欠け」が目立ちやすい。一方、カラー印刷は、例えば、写真等を印刷する場合に選択されることが予想され、モノクロ印刷と比較すると、余白部が仮に存在していたとしても目立ちにくいと言える。
【0032】
ステップS110では、画像取得部13aが、記録媒体に印刷するための画像としてユーザーが任意に選択した画像データ22(ビットマップデータ)を取得する。画像データ22は、例えば、所定のアプリケーションソフトウェアによって予め生成されてHDD20等に保存されている。あるいは、画像取得部13aは、図示しないネットワークに接続した外部のサーバー等から画像データ22を取得(ダウンロード)するとしてもよい。
【0033】
ステップS120では、画像処理部13bが画像データ22を解像度変換する。つまり、画像データ22の解像度がステップS100で受け付けた印刷解像度と一致するように、画像データ22の解像度を変換し、また記録媒体のサイズを参照して画素数を印刷に必要な画素数へ調整する。
【0034】
ステップS130では、画像処理部13bは、ステップS120の後の画像データ22に対し、色変換処理を行なう。具体的には、画像処理部13bは、画像データ22の表色系をプリンター(第2装置50)が採用するインク表色系に変換する。例えば、画像データ22が、画素毎にレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の階調値(例えば、0〜255の256階調)を有するRGBデータである場合、画像処理部13bは、画像データ22の画素毎のRGB値を、C、M、Y、Kの各インク量(インク濃度。例えば、0〜255の256階調。)の組み合わせであるCMYK値に変換する。色変換処理は、RGBとCMYKとの対応関係を予め定めたルックアップテーブル(LUT)を参照することにより実行可能である。LUTは、所定の記憶領域(例えば、HDD20やROM53)に格納されている。なお、ステップS100において、モノクロ印刷の設定が受け付けられている場合は、当該ステップS130では、画像データ22の画素毎の値をKだけのインク量に変換する。当該ステップS130の処理が施された画像データ22の各画素が有する階調値は、特許請求の範囲における「インク色の階調値」の一例に該当する。
【0035】
ステップS140では、ドット振分部13cは、ステップS130の後の画像データ22に対し、ドット振分処理を行なう。つまり、画像データ22の各画素が有するインク色毎のインク量を、複数の異なるサイズのインク滴毎の記録率に振り分ける処理を行なう。ドット振分処理は、インク量と各サイズのインク滴毎の記録率との変換関係を規定したドット振分テーブルを参照することにより実行する。当該ステップS140において、ドット振分部13cは、まず、ステップS100で受け付けられた印刷条件の内容に応じて「第一吐出モード」と「第二吐出モード」のいずれを実行すべきか判定する(ステップS142)。
【0036】
第一吐出モードとは、概略的には、インク量(階調値)が、最大値を含む最大値側の一部範囲に属する場合に、印刷ヘッド62に吐出させるインク滴を第一サイズのインク滴あるいは第一サイズよりも小さいサイズのインク滴のいずれかとし、インク量(階調値)が前記一部範囲よりも最小値側の範囲に属する場合に、印刷ヘッド62に吐出させるインク滴を第一サイズのインク滴のみとする印刷制御を意味する。
また、第二吐出モードとは、概略的には、インク量(階調値)が最小値を含む最小値側の第二の一部範囲に属する場合に、印刷ヘッド62に吐出させるインク滴を第一サイズよりも小さいサイズのインク滴とする印刷制御を意味する。第一サイズのインク滴は、例えば、Lサイズのインク滴(大ドット)であり、第一サイズよりも小さいサイズのインク滴は、Mサイズのインク滴(中ドット)であるとする。
【0037】
本実施形態では、ドット振分部13cは、ステップS100において第一記録媒体が設定されている場合は第一吐出モードを実行すると判定し(ステップS144へ進み)、ステップS100において第二記録媒体が設定されている場合は第二吐出モードを実行すると判定する(ステップS146へ進む)。あるいは、ドット振分部13cは、ステップS100において第一記録方法が設定されている場合は第一吐出モードを実行すると判定し(ステップS144へ進み)、ステップS100において第二記録方法が設定されている場合は第二吐出モードを実行すると判定する(ステップS146へ進む)。あるいは、ドット振分部13cは、ステップS100においてモノクロ印刷が設定されている場合は第一吐出モードを実行すると判定し(ステップS144へ進み)、ステップS100においてカラー印刷が設定されている場合は第二吐出モードを実行すると判定する(ステップS146へ進む)。すなわち本実施形態では、上述した余白部が発生し易い、あるいは、余白部が目立つと予想される印刷条件である場合に、第一吐出モードを選択する。
【0038】
ステップS144では、ドット振分部13cは、第一吐出モードのための第一テーブル(ドット振分テーブルT1)を参照することによりドット振分処理を行う。一方、ステップS146では、ドット振分部13cは、第二吐出モードのための第二テーブル(ドット振分テーブルT2)を参照することによりドット振分処理を行う。ドット振分テーブルT1,T2は、所定の記憶領域(例えば、HDD20やROM53)に格納されている。
【0039】
図3は、第一吐出モードのためのドット振分テーブルT1の一例である。ドット振分テーブルT1は、入力(横軸)をインク量(0〜255)とし、出力(縦軸)をドットの記録率(0〜100%)としたテーブル(あるいは関数)である。ドットの記録率としては、例えば、記録媒体における単位領域内のドットの被覆率が想定されている。ドット振分テーブルT1は、大ドットの記録率を規定したテーブルLT(実線)と中ドットの記録率を規定したテーブルMT(二点鎖線)とで構成されている。このようなドット振分テーブルT1を参照して、ドット振分部13cは、ステップS130の後の画像データ22の1つの画素が有する1つのインク種類のインク量(例えばK)を、大ドットの記録率及び又は中ドットの記録率に変換する。このような変換は、全ての画素が有する全てのインク種類のインク量について行う。
【0040】
ドット振分テーブルT1は、入力階調値P1〜255の範囲に限って中ドットの記録率(MT)を発生させている点に一つの特徴がある。階調値P1〜255は、最大値(255)を含む最大値側の一部範囲に該当する。具体的には、中ドットの記録率(MT)は、高階調側の階調値P1〜P2(ただし、P1<P2<255。)の範囲で一定の傾きで増加し、階調値P2〜255の範囲で一定値となっている。また、ドット振分テーブルT1は、入力階調値の全範囲(ただし、入力階調値=0を除く。)に渡って大ドットの記録率(LT)を発生させている点でも特徴的である。具体的には、大ドットの記録率(LT)は、最低値(0)〜P1の範囲で一定の傾きで増加し、階調値P1〜255の範囲で、それまでよりも小さい傾きとなっている。ここで、中ドットの記録率(MT)の発生点である階調値P1は、概念的には、ある一定の広さを持った画像領域について大ドットのみを記録媒体に形成したときにユーザーが当該領域の全てがインクで覆われていると視認する程度の記録率に対応する階調値である。つまり、完全にインクで覆われている訳ではないが、ユーザーが見た印象ではほぼインクで覆われている(ベタ画像と認識できる)と言える程度の記録率に対応する階調値である。階調値P1は、階調値0〜255の範囲を0〜100%に規格化した場合、例えば、60%程度に相当する値である。
【0041】
図4は、第二吐出モードのためのドット振分テーブルT2の一例である。ドット振分テーブルT2については、ドット振分テーブルT1と異なる点を説明する。ドット振分テーブルT2は、大ドットの記録率を規定したテーブルLT(実線)と、中ドットの記録率を規定したテーブルMT(二点鎖線)と、小ドットの記録率を規定したテーブルST(一点鎖線)とで構成されている。具体的には、ドット振分テーブルT2は、入力階調値が最低値(0)から最大値(255)へ増加するにつれて、最初は小ドットの記録率(ST)のみを発生させ、次に、中ドットの記録率(MT)も発生させ、次に、ある階調値P3以上で、大ドットの記録率(LT)も発生させる。ドット振分テーブルT2によれば、比較的インク濃度が低い画像は比較的小さなドットを多用して画像が再現され、比較的インク濃度が高い画像は比較的大きなドットを多用して画像が再現される。ドット振分テーブルT2において、入力階調値0〜P3の範囲は、特許請求の範囲における「第二の一部範囲」の一例である。階調値P3は、例えば、階調値P1(
図3)よりも低い値である。
【0042】
ステップS150では、画像処理部13bは、ステップS140の後の画像データ22に対してハーフトーン処理を行なう。ハーフトーン処理は、例えば、ディザ法や誤差拡散法等により行うことができるが、ここでは一例として、不図示のディザマスクを用いるディザ法を採用する。ディザマスクは、所定の記憶領域(例えば、HDD20やROM53)に格納されている。ステップS140後の画像データ22においては、各画素の各インク種類について、複数のサイズのドットのうちの少なくとも一部のドットについての記録率(大ドットの記録率、中ドットの記録率、小ドットの記録率)が規定されている。そこで、画像処理部13bは、ディザマスクと画像データ22とを重畳したときに重なり合う画素毎かつインク種類毎に、ディザマスクに格納されたしきい値(例えば、0〜255)と各サイズのドットの記録率とを比較し、大、中、小ドットのいずれか1つの形成(大ドットオン、または中ドットオン、または小ドットオン)あるいはドットの非形成(ドットオフ)を決定したハーフトーンデータ(4値データ)を生成する。ハーフトーンデータは、印刷データとも呼ぶ。
【0043】
ハーフトーン処理の具体的手法は特に限られず、例えば、特開2011‐223520号公報に開示された手法を採用してもよい。あるいは、ある画素のあるインク種類についてのドット振分処理(ステップS140)後の大ドットの記録率、中ドットの記録率、小ドットの記録率をそれぞれ、大ドットの記録率=LR、中ドットの記録率=MR、小ドットの記録率=SRとした場合、次のようにディザマスクのしきい値THと比較しても良い。ここで、しきい値THは、LR、MR、SRと同様の数値範囲(0〜100%)に規格化されているものとする。
【0044】
画像処理部13bは、まず、LR、LR+MR、LR+MR+SR、という各数値を算出する。次に、
TH≦LRであれば、大ドットオンを決定し、
LR<TH≦LR+MRであれば、中ドットオンを決定し、
LR+MR<TH≦LR+MR+SRであれば、小ドットオンを決定し、
LR+MR+SR<THであれば、ドットオフを決定する。
仮に、LR=0%、MR=10%、SR=40%であり、TH=35%であれば、上記の例によれば、小ドットオンと決定する。
【0045】
ステップS160では、転送部13dが、ステップS150の処理により得られた印刷データを、印刷ヘッド62に転送すべき順に並べ替えた上で、転送路70を介して順次第2装置50側へ転送する。かかる並び替えの処理によれば、印刷データに規定された各サイズのドット(正確には、各サイズのドットの形成を示す情報)は、その画素位置およびインク種類に応じて、印刷ヘッド62のいずれのノズルによって、いずれのタイミングで吐出されるかが確定される。この結果、第2装置50側では、印刷データに基づいて、画像データ22が表現していた画像が記録媒体に印刷される。
【0046】
つまり、ステップS144を経た処理であれば、第一吐出モードとしてのインク滴の吐出(大ドットおよび中ドットの吐出)が実行され、ステップS146を経た処理であれば、第二吐出モードとしてのインク滴の吐出(大ドット、中ドットおよび小ドットの吐出)が実行される。むろん、実際の印刷は、ステップS100で受け付けた各種印刷条件の下で実行される。
【0047】
このように本実施形態は、ドット振分テーブルT1が入力の全階調範囲(入力階調値=0を除く。)に渡って大ドットの記録率を発生させることで、第一吐出モードでは、画像データ22が表現する画像を基本的には記録媒体上で大ドットにより再現するようにしている。そのため、上述したような余白部が発生し易い印刷条件(第一記録媒体が選択された場合や第一記録方法が選択された場合)や、余白部が目立つと予想される印刷条件(モノクロ印刷が選択された場合)において、余白部が発生することを効果的に抑制し、画質向上を実現している。つまり、インクがにじみにくい第一記録媒体上でも、大ドットが多用されることで、余白部が少なくなる。また、風紋が発生し易い第一記録方法が採用された場合でも、大ドットが多用されることで、余白部が少なくなる(風紋の発生が抑制される)。なお、大ドットは1滴の重量が重いため、上述したような気流(風)を受けても着弾誤差が発生し難いとも言える。また、モノクロ画像において目立ちやすい余白部が少なくなる。また、ドット振分テーブルT1は、階調値P1(
図3)以上で大ドットの記録率とともに中ドットの記録率を発生させる。そのため、第一吐出モードでは、画像データ22において(インク量に換算したときに)最大値255か最大値255に近い濃度で規定されることが専らである文字について、大ドットだけでなく中ドットでも再現するようにしている。これにより、以下の
図5および
図6を用いて説明するように、印刷結果における文字の一部の欠けが抑制され、文字の品質も保たれる。
【0048】
図5は、画像データ22の一部を模式的に例示している。
図5に示す画像データ22は、ステップS130の色変換処理が実施された後の状態であり、例えば、図中グレーで塗った各画素は、Kのみのインク量(階調値P1以上のインク量)を有し、K以外のC、M、Yのインク量は0である。また、図中の白い各画素は、C、M、Y、Kのいずれのインク量も0であるとする。
図5は、画像データ22に含まれた1つの文字(数字の“6”)を表現している。このような画像データ22について、ドット振分テーブルT1を参照したドット振分処理(ステップS144)およびハーフトーン処理(ステップS150)を行なった場合を想定する。
【0049】
図6Aは、
図5に示した画像データ22について、ステップS144およびステップS150を行なった後の印刷データ(の一部)を模式的に例示している。
図6Aでは、理解を容易とするために、印刷データにおいて大ドットオンと規定されている画素の位置にグレー色の比較的大きな●を付し、印刷データにおいて中ドットオンと規定されている画素の位置に、大ドットの●よりも小さいグレー色の●を付している。一方、
図6Bは、
図6Aに対する比較例であり、振分テーブルT1が大ドットの記録率のみを規定したものであると仮定した場合の、ステップS144およびステップS150を行なった後の印刷データ(の一部)を模式的に例示している。
図6Bでも
図6Aと同様に、印刷データにおいて大ドットオンと規定されている画素の位置に、グレー色の比較的大きな●を付している。
図6Bでは、発生するドットは大ドットのみである。
【0050】
図5と
図6Aとの比較から判るように、色変換後の画像データ22においてKのインク量が規定されていた画素の全てが、印刷データの状態でドットオンとなる訳ではない。画像データ22においてKのインク量が規定されていた画素の一部は、ドットオフとなっている。このように、インク量を規定していた時点で値が存在した画素において実際にはドットオフとなることを、ドットの「欠け」と呼ぶ。このような、欠けの発生は、主に記録媒体におけるデューティー制限値を考慮した結果に基づく。
【0051】
デューティー制限値とは、記録媒体の単位面積あたりに打ち込み可能なインク量の上限であり、予め定められたデューティー制限値が遵守されるように、印刷データは生成される。つまり、各画素がインク量を規定した画像データ22の状態で仮に全画素が最大値(255)を規定していたとしても、そのまま全画素の位置で最大サイズのドット(大ドット)の形成を許容するとデューティー制限値を超えることとなる。そのため、全ての画素で大ドットの記録率が100%になる事態が回避されるように、ドット振分テーブルは予め設計されている。従って、例えば、ある程度広い領域を塗りつぶしたベタ画像の印刷結果においても、上述したような欠けは存在するが、そのような欠けは目立たず、ユーザーに視認されることは殆ど無い。一方、文字のように、狭い幅しか有さない線で描かれた画像は、上述したような欠けの存在が目立つため、上述の欠けの存在が品質劣化につながり易いと言える。
【0052】
次に、
図6Aと
図6Bとを比較する。この比較によれば、同じ画像(画像データ22内に表現された文字)が、
図6Aにおいては大ドットおよび中ドットにより表され、
図6Bにおいては大ドットのみにより表されている。そのため、
図6Aに示した大ドットおよび中ドットのインク量の合計と、
図6Bに示した大ドットのインク量の合計とは略等しいものの、
図6Aに示した大ドットおよび中ドットの数の合計と、
図6Bに示した大ドットの数の合計は、前者の方がより多い。言い換えると、
図6Aは、
図6Bよりも、上述の「欠け」が少ない。すなわち、本実施形態においては、ある程度の高濃度領域では大ドットだけでなく中ドットの記録率も発生させるドット振分テーブルT1を採用することにより(ステップS144)、ドットの「欠け」の数が抑制された、より品質の高い文字等の印刷結果を得ることができる。
【0053】
また本実施形態によれば、ドット振分テーブルT2は、ドット振分テーブルT1と異なり、入力が低階調側であるほど、より小さいサイズのドットの記録率を優先的に発生させている。そのため、第二吐出モードでは、画像データ22が表現する画像をより多くの小ドットや中ドットで再現することができる。そのため、上述したような余白部がそもそも発生しにくい印刷条件(第二記録媒体が選択された場合や第二記録方法が選択された場合)や、余白部があまり目立たないと予想される印刷条件(カラー印刷が選択された場合)においては、粒状感(ドットの目立ち)が少なく階調性が豊かな画質が得られる。
【0054】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下に説明する各変形例も可能である。上述の実施形態と各変形例とを適宜組み合わせた構成も、本発明の開示に含まれる。
【0055】
上記では、第一サイズのインク滴は大ドットであり、第一サイズよりも小さいサイズのインク滴は中ドットであるとした。ただし、第一サイズよりも小さいサイズのインク滴は、小ドットであってもよい。また、第一サイズのインク滴は中ドットであり、第一サイズよりも小さいサイズのインク滴は小ドットであってもよい。むろん、印刷ヘッド62が吐出可能なインク滴のサイズは、上述したような3種類に限られず、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。
【0056】
上記では、インクがにじみにくい第一記録媒体が設定されていること、走査中吐出回数が相対的に多い第一記録方法が設定されていること、モノクロ印刷が設定されていること、のいずれかが成立する場合に、ステップS142からステップS144へ進む(
図2)とした。しかし、本発明は、このような思想に拘泥されない。例えば、第一記録媒体が設定されていること、第一記録方法が設定されていること、モノクロ印刷が設定されていること、といった全ての条件が成立するときにステップS144に進み、それ以外の場合はステップS146に進むとしてもよい。あるいは、これら条件のうち、2つ以上の条件が成立するときに、ステップS144に進み、それ以外の場合はステップS146に進むとしてもよい。あるいは、これら条件のうち1つ(例えば、第一記録媒体が設定されていること)を必須条件としつつ、他の条件のうち1つ以上が成立するときに、ステップS144に進むとしてもよい。
【0057】
ドット振分テーブルT1,T2の具体的内容は、図示したものに限られず、上述した第一吐出モード、第二吐出モードをそれぞれ実現させることが可能なものであればよい。また、ドット振分テーブルT1,T2はそれぞれ予め用意されていなくてもよい。例えば、基本的なドット振分テーブル(例えば、ドット振分テーブルT2)のみが所定の記憶領域に格納されており、ドット振分部13cは、ステップS144において、当該基本的なドット振分テーブルの一部を変更することにより、ドット振分処理に用いるドット振分テーブルT1を生成するとしてもよい。
【0058】
なお、これまでは
図2の処理を第1装置10側で実行する場合を例に説明を行なったが、当該処理の少なくとも一部が第2装置50側で行なわれるとしてもよい。例えば、ファームウェアFWがステップS100〜S150の処理を実行し、これら処理の結果得た印刷データをASIC56に出力し(ステップS160)、印刷データに応じた印刷を実行させるとしてもよい。
【0059】
また、設定された印刷条件にかかわらず(つまり、ステップS142の判定をすることなく)、常にステップS144を行い、第一吐出モードを実行する印刷制御装置や印刷装置(プリンター)を把握することも可能である。