(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離の平均が1μm以下であり、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造である微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層と、平均粒径が前記微小突起間の距離の平均よりも小さい金属ナノ粒子とを有し、前記金属ナノ粒子が前記微小突起構造体の表面に担持されており、
前記微細凹凸層の表面が無機酸化物層からなる、金属粒子担持触媒。
複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離の平均が1μm以下であり、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造である微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層を準備する工程と、
蒸着法を用いて前記微小突起構造体表面に金属原子を付着することにより、金属ナノ粒子を形成し、担持する工程とを有し、
前記微細凹凸層の表面が無機酸化物層からなる、金属粒子担持触媒の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る金属粒子担持触媒、及び、本発明に係る金属粒子担持触媒の製造方法について詳細に説明する。
なお、本明細書において「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0016】
本発明に係る金属粒子担持触媒は、複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離の平均が1μm以下であり、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造である微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層と、平均粒径が前記微小突起間の距離の平均よりも小さい金属ナノ粒子とを有し、前記金属ナノ粒子が前記微小突起構造体の表面に担持されていることを特徴とする。ここで、本発明において担持とは、担体に粒子を付着している状態で持っていることをいい、具体的には、微細凹凸層の微小突起構造体側表面に金属ナノ粒子を付着している状態で持っていることをいう。
【0017】
また、本発明に係る金属粒子担持触媒の製造方法は、複数の微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離の平均が1μm以下であり、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造である微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層を準備する工程と、
蒸着法を用いて前記微小突起構造体表面に金属原子を付着することにより、金属ナノ粒子を形成し、担持する工程とを有することを特徴とする。
【0018】
発明者らは、上記特定の微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層上に、蒸着法を用いて前記微小突起構造体表面に金属原子を付着させると、バルクな蒸着膜ではなく、金属ナノ粒子が形成され、微小突起構造体表面に当該金属ナノ粒子が担持すること、並びに、上記特定の微小突起構造体表面に担持した金属ナノ粒子は、凝集することなく単独の粒子として安定に存在し得ることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の製造方法によれば、特定の微小突起構造体表面を用い、蒸着法によって前記微小突起構造体表面に金属ナノ原子を付着することにより、当該特定の微小突起構造体表面に金属ナノ粒子を形成すると同時に担持することができる。そのため、金属ナノ粒子の調製及び担持という2つの工程が1工程で実現でき、且つ、焼成工程も不要であり、製造効率が高い。
本発明の製造方法は、特定の形状を有する微小突起構造体表面を用いれば、蒸着法で前記微小突起構造体表面に金属ナノ原子を付着することにより、微小突起構造体表面に金属ナノ粒子を担持することができるため、担体の材質と触媒金属の材質を自由に選択可能であり、種々の触媒の製造に応用できる。
また、本発明の製造方法によれば、担体の内部に金属が入り込むことがなく、上記特定の微小突起構造体の表面のみに金属ナノ粒子が存在するので、触媒金属の使用効率が高く、特に金属として高価な貴金属を用いた時に製造コストを抑制できる。
本発明の金属粒子担持触媒は、表面積が広大な上記特定の微小突起構造体の表面に金属ナノ粒子が担持されているため、平坦面に比べてより多くの金属ナノ粒子を表面上に保持することができることから、触媒活性が高い。
【0019】
なお、微小突起構造体表面に金属原子を蒸着することにより金属ナノ粒子が形成される作用は未だ解明されていないが、以下のように推定される。蒸着法は、通常、平坦な基板に対して概ね垂直方向から金属原子を付着させることになるが、上記特定の微小突起構造体表面は其々、蒸着源に対して垂直にはならず、垂直の場合よりも相対的に面積が広い傾斜面となる。そのため、垂直方向から平坦面上に付着させたと仮定した場合に比べて、微小突起構造体表面に付着する原子の単位面積当たりの含有量が少なくなり、蒸着量を適宜調整することにより上記特定の微小突起構造体表面に付着した金属原子は平面へ成長せずに金属粒子を形成することができると推定される。
また、本発明によれば、微小突起構造体の形状により、所望の粒径に調整しやすく、また、粒度分布が小さくなりやすいというメリットもある。
蒸着法において平坦面上に形成される蒸着膜は、通常、厚みが均一であり、単位面積あたりに付着する金属原子の量は面内でほぼ一定である。同様に微小突起構造体表面においても、単位面積あたりに付着する金属原子の量は面内でほぼ一定であるため、微小突起構造体表面に形成される金属ナノ粒子は粒径が揃いやすく、当該金属ナノ粒子の粒度分布は小さくなりやすいものと推定される。
このように、本発明の製造方法によれば、析出沈殿法や、ヨウ素やイオン液体を用いることなく、簡便に金属ナノ粒子を得ることができる上、当該金属ナノ粒子は、微小突起構造体表面上に一様に形成される。そのため、金属ナノ粒子は金属粒子担持触媒内に均一に分布し、金属ナノ粒子同士の凝集の問題もなく安定して固定される。
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1は、本発明に係る金属粒子担持触媒の一例を示す模式断面図である。
図1の例では、金属粒子担持触媒10は、複数の微小突起2が密接して配置され、隣接する前記微小突起2間の距離の平均が1μm以下である上記特定の微小突起構造体1を表面に有する微細凹凸層3と、平均粒径が前記微小突起間の距離の平均よりも小さい金属ナノ粒子4とを有し、前記金属ナノ粒子4が前記微小突起構造体1の表面に担持されている。
【0021】
図2は、本発明に係る金属粒子担持触媒の製造方法の一例を示す概略工程図である。
図2の例では、
図2(A)に示すように、複数の微小突起2が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離dの平均が1μm以下である上記特定の微小突起構造体1を表面に有する微細凹凸層3を準備する。次いで、
図2(B)のように、前記特定の条件で蒸着法を用いて前記微小突起構造体1の表面に金属原子を付着することにより、金属ナノ粒子4を形成し、当該微小突起構造体1の表面に担持する。本発明に係る金属粒子担持触媒の製造方法は、上記本発明の金属粒子担持触媒10の製造方法として好適に用いることができる。
【0022】
<微細凹凸層>
本発明の微細凹凸層3は、複数の微小突起2が密接して配置され、隣接する前記微小突起間の距離dの平均が1μm以下である微小突起構造体1を表面に有する。
【0023】
微小突起構造体1は、複数の微小突起2が密接して配置されている。微小突起構造体を構成する各微小突起は、基材に植立するように形成され、その形状は、特に限定されないが、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造である。すなわち、金属粒子の形成性の点、及び触媒活性の点から、各微小突起は、先細りとなる構造を有するものが用いられる。このような構造は、微小突起の頂部から深部方向側が必ず外側に来てオーバーハングしないという単調増加の形状になっている。そのため、通常の多孔質体が有する迷路状細孔構造などへ蒸着した場合と比較して、蒸着源から見て陰になる部分がなく、金属がより広い面積に付着する。また、このような場合、金属が同一箇所へ堆積しにくく、金属のナノ粒子形状がより保たれ、金属ナノ粒子と担体の接合界面が保たれる。例えば、金ナノ粒子触媒では金ナノ粒子と担体の接合界面が活性中心であることと報告されているが(Science 333, 736 (2011))、本発明においては、上記のようにして接合界面を増やすことができるため、高い触媒活性を得ることが可能になる。
このような微小突起の形状の具体例としては、半円状、半楕円状、三角形状、放物線状、釣鐘状等の垂直断面形状を有するものが挙げられる。複数ある微小突起は、同一の形状を有していても異なる形状を有していてもよい。また、微小突起の頂上は、曲面を有することが金属粒子の形成性の点から好ましい。
また、微細凹凸層の表面積を増加して、金属ナノ粒子と担体との接合界面を増やして触媒活性を向上する点から、各微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面の長径と短径の比(長径/短径)は、1以上3以下であることが好ましく、更に1以上2以下であることが好ましい。
【0024】
本発明において、前記微小突起構造体を構成する微小突起は、隣接する前記微小突起間の距離d(以下、「隣接突起間距離d」と称する。)の平均d
AVGが、1μm以下となるよう密接して配置される。この隣接突起間距離dに係る隣接する微小突起は、いわゆる隣り合う微小突起であり、基材側の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。本発明に用いられる微細凹凸層は、微小突起が密接して配置されることにより、微小突起間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。隣接突起間距離dに係る隣接する微小突起は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
また、前記微小突起の平均隣接突起間距離d
AVGは、触媒活性や用いる金属種に合わせて適宜選択すればよい。中でも、巨視的には平滑な触媒シートを形成する点から、平均隣接突起間距離d
AVGは、700nm以下であることが好ましく、更に500nm以下であることが好ましく、より更に50〜300nmであることが好ましく、70〜180nmであることが特に好ましい。
【0025】
微小突起の高さH(
図1中のH)は、適宜設定すればよい。中でも、微小突起のアスペクト比(平均突起高さH
AVG/平均隣接突起間隔d
AVG)が、0.8〜2.5となるように選択することが好ましく、更に、0.8〜2.1となるように選択することがより好ましい。
高さの平均値H
AVGは、2.5μm以下であることが好ましく、更に1μm以下であることが好ましく、より更に500nm以下であることが好ましく、より更に50〜350nmであることが好ましく、100〜250nmであることが特に好ましい。
【0026】
本発明において隣接突起間隔d及び微小突起の高さHは以下の方法により測定される。
(1)先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。
【0027】
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と称する。)を検出する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。
【0028】
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunary Diagram)を作成する。
図3にドロネー図の一例を示す模式平面図を示す。
図3の例に示されるようにドロネー図とは、各微小突起23の極大点21を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分22で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。
【0029】
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離(隣接突起間距離)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する前記微細構造を有しない微小突起を選んで、その隣接突起間距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接突起間距離平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。
【0030】
(5)このようにして求めた隣接突起間距離dの度数分布を正規分布とみなして平均値d
AVG及び標準偏差σ
dを求める。本発明においては、隣接突起間距離dの最大値d
maxをd
max=d
AVG+2σ
dと定義して算出する。
【0031】
同様の手法を適用して突起の高さを定義する。この場合、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値H
AVG、標準偏差σ
Hを求める。
本発明の微小突起は、突起の頂部に凹部が存在する微細構造や、頂部が複数の峰に分裂している微細構造を有していてもよい。このような突起の頂部に凹部が存在する微細構造、或いは、頂部が複数の峰に分裂している微細構造を有する微小突起が含まれる場合は、1つの微小突起が頂点を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが突起高さHのヒストグラムにおいて混在することになる。そこでこの場合は麓部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。
【0032】
なお、微小突起の高さを測る際の基準位置は、突起付け根位置、すなわち隣接する微小突起の間の谷底(高さの極小点)を高さ0の基準とする。但し、係る谷底の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でうねった凹凸形状を有する場合(
図4参照)等は、(1)先ず、微小突起構造体30の微小突起表面31とは反対側の面から測った各谷底の高さの平均値を、該平均値が収束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを有し、且つ微小突起構造体30の微小突起表面31とは反対側の面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
【0033】
また、微小突起構造体30の良好な平滑性を確保するために、前記周期Dでうねった凹凸面33の高低差(
図4中のh)は、100μm以下であることが好ましく、500nm〜10nm範囲内であることがより好ましい。なお、前記凹凸面33により形成される凹凸面の高低差は、例えば1000μm以上離れた微小突起32の谷底部の位置の高低差を測定することにより求めることができる。微小突起32の谷底部の位置は、微小突起構造体30を、厚み方向に切断した垂直断面のTEM写真又はSEM写真を用いて観察することにより求めることができる。
【0034】
当該微小突起は、一定周期で規則正しく配置されていても良いし、不規則に配置されていても良い。
前記微小突起構造体中の各微小突起が同一の高さHを有し、当該微小突起が一定周期で規則正しく配置されている場合、隣接突起間距離dの標準偏差σ
dが0となり、微小突起配列の周期pと一致するため、d
AVG=pとなる。
一方突起が不規則に配置されている場合には、上述のようにして求めた平均隣接突起間距離が1μm以下であればよい。
金属粒子の粒度分布を小さくしたい場合は、隣接突起間距離の標準偏差σ
dを小さくすればよく、σ
d=0であること、即ち、微小突起が一定周期で規則正しく配置されていることが好ましい。
【0035】
また、前記微細凹凸層は、微小突起構造体側の表面、すなわち金属ナノ粒子が担持される面が、無機酸化物層からなることが触媒活性を著しく向上する点から好ましい。
図5に、本発明の金属粒子担持触媒の別の一例として、微細凹凸層3の微小突起構造体1側の表面が、無機酸化物層5からなる金属粒子担持触媒10’を示す。
微細凹凸層3の微小突起構造体1側表面が無機酸化物層5からなることにより、前記微細凹凸層3が樹脂を含む場合においても、金属粒子担持無機酸化物触媒として触媒性能がより向上する。
前記無機酸化物層5の材料としては、触媒金属粒子との組み合わせにより適宜選択されればよく、特に限定されないが、例えば、酸化チタン(TiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化セリウム(CeO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、五酸化バナジウム(V2O5)、アルミノケイ酸等が挙げられる。
当該無機酸化物層の厚みは、当該無機酸化物層を形成した後も上記微小突起構造体の凹凸構造を維持するように適宜調整すればよく特に限定されない。無機酸化物層の厚みは、例えば、1nm〜30nmの範囲とすることが好ましい。
当該厚みは、例えば、本発明に係る金属担持触媒の微小突起構造体の厚み方向に切断した垂直断面のTEM、STEM、SEM等の電子顕微鏡写真を観察することにより測定することができる。
【0036】
微細凹凸層の厚みは、適宜調整すればよく特に限定されない。例えば、20μm〜5000μm範囲とすることができ、50μm〜500μmであることが好ましい。
【0037】
本発明に用いられる微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層を準備する方法としては、所望の微小突起構造体が形成された市販品を用いてもよい。一方、当該微細凹凸層を製造する場合は、上述の微小突起構造体を形成できる方法であれば特に限定されない。
例えば、基材の一方の面に微細凹凸層用樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層の製造方法の具体例としては、まず基材上に微細凹凸層用樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、所望の凹凸形状を有する微小突起構造体形成用原版の該凹凸形状を、前記樹脂組成物の塗膜に賦形した後、前記樹脂組成物を硬化させることにより微小突起構造体を形成し、前記微小突起構造体形成用原版を剥離する方法等が挙げられる。
なお、微小突起構造体形成用原版の凹凸形状とは、多数の微小孔が密に形成されたものであり、微小突起構造体が備える微小突起群の形状に対応する形状である。
また、微小突起構造体形成用原版の凹凸形状を微細凹凸層用樹脂組成物に賦形し、該樹脂組成物を硬化させる方法は、樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。また、前記樹脂組成物を硬化させることにより微小突起構造体を形成した後、製造に使用した基材は、必要に応じて剥離して、微細凹凸層のみとしてもよい。
また、前記無機酸化物層5を微小突起構造体表面に形成する場合、その製造方法としては特に限定されない。例えば、微小突起構造体を形成した後に、微小突起構造体側の表面に、例えば、スパッタリング法、CVD法、ゾルゲル法、MOD法(金属有機化合物分解法)等により、前記無機酸化物層5を形成することができる。
【0038】
(1)基材
上記基材は、従来公知の基材の中から適宜選択すればよく、特に限定されない。前記基材に用いられる材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等の無機材料、及びこれらの複合材料等が挙げられる。
また、前記基材は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよく、用途に応じて適宜選択することができる。
【0039】
本発明に用いられる基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
また、後述する微小突起構造体が基材とは別の材料からなる微細凹凸層に形成される場合は、層間の密着性、塗工適性、表面平滑性等の基材表面性能を向上させる点から、基材上に中間層を形成してもよい。
【0040】
(2)微細凹凸層用樹脂組成物
微細凹凸層用樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。当該樹脂組成物に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を使用することができる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
【0041】
上記樹脂としては、微小突起の成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体、低重合度の重合体、反応性重合体を適宜混合したものであり、重合開始剤によって硬化されるものである。なお、非反応性重合体を含有してもよい。
【0042】
微細凹凸層用樹脂組成物は、さらに必要に応じて、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。
【0043】
(3)微小突起構造体形成用原版
前記微小突起構造体形成用原版としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製であっても良いが、通常、耐変形性および耐摩耗性に優れている点から、金属製が好適に用いられる。
前記微小突起構造体形成用原版の凹凸形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記微小突起構造体形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は各種の中間層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
前記微小突起構造体形成用原版に凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微小孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微小孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微小孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。
微小突起構造体形成用原版に凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微小孔をそれぞれ目的とする深さ及び形状に作製することができる。
【0044】
また、前記微小突起構造体形成用原版の形状としては、例えば、平板状、ロール状等が挙げられ、特に限定されるものではないが、生産性向上の観点からは、ロール状が好ましい。本発明においては、前記微小突起構造体形成用原版として、ロール状の金型(以下、「ロール金型」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。
前記ロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
【0045】
図6に、微細凹凸層用樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用い、微小突起構造体形成用原版としてロール金型を用いて、微小突起構造体を表面に有する部材を製造する方法の一例を示す。この製造方法では、まず、樹脂供給工程において、ダイ41により、帯状フィルム形態の基材45に、微小突起構造体の受容層46を構成する未硬化で液状の紫外線硬化性樹脂組成物を塗布する。尚、紫外線硬化性樹脂組成物の塗布については、ダイ41による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ43により、賦形用金型であるロール金型42の周側面に基材45を加圧押圧し、これにより基材45に未硬化の受容層46を密着させると共に、ロール金型42の周側面に形成された微小な凹凸形状の凹部に受容層46を構成する紫外線硬化性樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより基材45の微小突起構造体47が形成される。続いて剥離ローラ44を介してロール金型42から、硬化した微小突起構造体47と一体に基材45を剥離する。必要に応じてこの基材45に粘着層等を積層した後、所望の大きさに切断する。これにより、所望の形状の微小突起が形成された微小突起構造体が形成される。
【0046】
なお、微小突起間距離dの標準偏差σ
dや、微小突起高さHの標準偏差σ
Hを大きくする場合には、陽極酸化処理において作製される微小突起構造体形成用原版の微小孔の間隔をばらつかせることにより実現することができる。突起の頂部に凹部が存在する微小突起は、その頂部に対応する形状の凹部を備えた微小孔により作成されるものであり、このような微小孔は、極めて近接して作製された微小孔が、エッチング処理により、一体化して形成されると考えられる。
また、微小突起構造体の個々の微小突起について、高さに所定範囲のばらつきがある場合、個々の微小突起の高さのばらつきは、微小突起構造体形成用原版に形成される微小孔の深さのばらつきによるものであり、このような微小孔の深さのばらつきは、陽極酸化処理におけるばらつきに起因するものと言える。これにより相対的に高さの高い頂部微小突起と、相対的に高さの低い複数の周辺微小突起とを混在させるには、陽極酸化処理におけるばらつきを大きくすることにより実現することができる。
【0047】
また上述の実施形態では、ロール金型を使用した賦形処理により、フィルム形状の基材上に微小突起構造体の形成方法を生産する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、基材の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による賦形用金型を使用した枚葉の処理により微小突起構造体を作成する場合等、賦形処理に係る工程、金型は、基材の形状に応じて適宜変更することができる。
【0048】
<金属ナノ粒子>
本発明においては、上述のように、凹凸面を有する微細凹凸層を利用して平均粒径が前記微小突起間の距離の平均よりも小さい金属ナノ粒子を担持することにより、金属ナノ粒子を単独の粒子として安定に存在させることができる。従って本発明における微細凹凸層は、粒子の状態のときに凝集し易いという性質を有する金属から構成された金属ナノ粒子に対してより好適に用いられ得る。
【0049】
なお、触媒機能は、金属ナノ粒子自体に基づいて発揮されるものであり、凹凸面上における金属ナノ粒子の分布状態には必ずしも依存しない。従って本実施の形態において、金属ナノ粒子の分布状態としては、
図1に示すように金属粒子4が均一に並んでいるような状態だけでなく、ある程度のばらつきをもって金属ナノ粒子4が配置されている状態であってもよい。例えば、金属ナノ粒子4は、微小突起の側面に比べて微小突起の谷部7や頂部6により密に配置されていてもよい。
【0050】
また、金属ナノ粒子の粒径は、1μm未満であって、且つ、金属ナノ粒子の担持安定性の点から、平均粒径が前記微小突起間の距離の平均よりも小さいものである。金属ナノ粒子の粒径は、所望の触媒性能を発現する粒径に適宜調整して用いることができる。具体的には、金属ナノ粒子の平均粒径が、1〜20nmであることが好ましく、1〜5nmであることがより好ましい。
【0051】
中でも触媒性能に優れる点から、単位表面積あたりの金属粒子の個数(密度)が、
1000個/μm
2以上であることが好ましく、更に、2000個/μm
2以上であることが好ましい。
【0052】
本発明に用いられる金属粒子は、従来公知のものの中から、触媒の用途に応じて適宜選択して用いることができる。金属粒子における金属の種類は、触媒機能を有する限り特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの合金よりなる群から選択される1種以上が挙げられる。中でも触媒機能の点から、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの合金よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0053】
上記金属ナノ粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とする。次に100個以上の粒子についてそれぞれ粒子の体積を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径として求めそれを平均粒径とする。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)、走査型(SEM)又は走査透過型(STEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0054】
(金属ナノ粒子の担持方法)
本発明の金属粒子担持触媒において、金属ナノ粒子を前記微細凹凸層の前記微小突起構造体表面に担持する方法は特に限定されない。
中でも、金属ナノ粒子を前記微細凹凸層の前記微小突起構造体表面に担持する方法としては、本発明の金属粒子担持触媒の製造方法における担持工程を用いることが好ましい。
すなわち、本発明においては、蒸着法を用いて前記微小突起構造体表面に金属原子を付着することにより、金属ナノ粒子を形成し、担持する工程を用いることが特に好ましい。
本工程の蒸着法は、従来公知の金属原子を堆積することができる方法の中から適宜選択すればよいが、真空蒸着法を用いることが、金属ナノ粒子の形成性の点から特に好ましい。
【0055】
中でも、金属ナノ粒子の微小突起構造体への付着は、金属ナノ粒子を安定的に形成でき、凝集や堆積が抑制される点から、微小突起構造体が平坦面であったと仮定した場合に当該平坦面上に付着する金属原子によって形成される蒸着膜の厚みが、好ましくは40nm以下となるよう、より好ましくは20nm以下となるよう調整された状態で、蒸着法を用いて実施されることが好ましい。
蒸着法の設定方法としては、例えば、まず、蒸着法に用いられる蒸着装置を任意の条件に予め設定する。微小突起構造体を表面に有する部材の代わりに平坦面を有する部材を用い、製造しようとする金属ナノ粒子と同じ金属原子を、前記蒸着装置を用いて蒸着法により前記平坦面上に付着させて当該金属の蒸着膜を得る。当該蒸着膜の厚みが40nm以下であれば、上記予め設定した条件を本発明の製造方法における好適な蒸着法の装置条件とすることができる。
【0056】
真空蒸着法の場合、通常、真空排気系と、蒸発源と、基板ホルダーを備えた真空蒸着装置が用いられる。
真空排気系は、従来公知の高真空排気系を用いればよい。例えば、荒引きポンプとして油回転ポンプ、ドライポンプ等を用い、必要に応じてルーツポンプ等をブースターポンプとして併用することができる。高真空ポンプとしては、拡散ポンプ、クライオポンプ等を用いることができる。拡散ポンプを用いる場合には、−120〜−150℃程度のコールドトラップを更に備えていてもよい。
蒸発源は、金属を加熱蒸発するための加熱源を有する。加熱源としては、抵抗加熱、電子ビーム加熱等が挙げられる。
【0057】
例えば、まず、前記微小突起構造体を表面に有する部材を、微小突起構造体表面が蒸発源に対面するように基板ホルダーに設置する。真空蒸着装置の真空容器内を10
−2〜10
−3Pa程度の真空状態にしたのち、前記蒸発源において金属の蒸気圧が1〜10
−2Pa程度となるように加熱して、前記微小突起構造体の表面に金属原子を付着すればよい。
【0058】
<金属粒子担持触媒の用途>
本発明の製造方法は、特定の形状を有する微小突起構造体表面を用いれば、蒸着法で前記微小突起構造体表面に金属ナノ原子を付着することにより、微小突起構造体表面に金属ナノ粒子を担持することができるため、担体の材質と触媒金属の材質を自由に選択可能であり、種々の触媒の製造に応用できる。従って、担体の材質と触媒金属の材質の組み合わせは特に限定されるものではない。
例えば、以下の金属ナノ粒子(触媒金属)と、前記微細凹凸層の表面(担体)の材質との組み合わせが好適なものとして挙げられるが、下記の例示に限定されるものではない。
金ナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をTiO
2、ZrO
2、CeO
2とする組み合わせ;
銀ナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をAl
2O
3、BaCe
2O
3、SiO
2等の無機酸化物とする組み合わせ;
銅ナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をZnO、Al
2O
3、SiO
2等の無機酸化物とする組み合わせ;
白金ナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をTiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、V
2O
5、SiO
2等の無機酸化物、又は、導電性を付与したポリフェニレンエーテル及びポリフェニレンサルファイド等樹脂材料とする組み合わせ;
パラジウムナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をSnO
2、ZnO、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2、SiO
2等の無機酸化物とする組み合わせ;
ニッケルナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をハイドルタルサイト、CeO
2、SiO
2、Al
2O
3等の無機酸化物とする組み合わせ;
ロジウムナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をTiO
2、SiO
2等の無機酸化物とする組み合わせ;
ルテニウムナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をハイドルタルサイト、ZrO
2、TiO
2、SiO
2等の無機酸化物とする組み合わせ;
白金とルテニウムの合金ナノ粒子に対して、前記微細凹凸層の表面(担体)をSiO
2、TiO
2等の無機酸化物とする組み合わせ等が挙げられる。
【0059】
具体的な用途としては、例えば、白金などの貴金属ナノ粒子を、導電性を付与したポリフェニレンエーテル及びポリフェニレンサルファイド等樹脂材料に担持させてなる金属粒子担持触媒は、消毒薬、漂白剤等の分解触媒材料として用いられる。
白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の白金族金属ナノ粒子を、TiO
2に担持させてなる金属粒子担持触媒は、各種光触媒として用いられる。
白金ナノ粒子又はパラジウムナノ粒子を、Al
2O
3、ZrO
2等に担持させてなる金属粒子担持触媒は、自動車排気ガスの浄化用触媒として用いられる。
ルテニウム等の貴金属ナノ粒子を、各種無機酸化物に担持させてなる金属粒子担持触媒は、燃料電池分野の水蒸気改質や部分酸化改質等の改質触媒として用いられる。
金ナノ粒子を、TiO2、ZrO2、CeO2等に担持させてなる金属粒子担持触媒は、一酸化炭素の室温での酸化除去など空気質浄化剤として用いられる。
銀ナノ粒子を、Al
2O
3等に担持させてなる金属粒子担持触媒は、脱硝や選択酸化などの機能を有する触媒として用いられる。
【0060】
本発明に係る金属粒子担持触媒の形態としては、適宜選択されれば良く特に限定されない。シート状のほか、シートを加工してチューブ状等、適宜形状を変形したり、各種の立体構造を有する基材を用いることにより各種立体構造とすることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0062】
(実施例1:金属粒子担持触媒の製造)
(1)微細凹凸層の準備
(1−1)微小突起構造体形成用原版の製造
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、十点平均粗さRz30nm、且つ周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微細な凹凸形状が形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微小突起構造体形成用原版を得た。
【0063】
(1−2)微細凹凸層用樹脂組成物の調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)20質量部、アロニックスM−260(東亜合成社製)70質量部、ヒドロキシエチルアクリレート10質量部、ルシリンTPO 3質量部を酢酸エチル300質量部に溶解させ、樹脂組成物を調製した。
【0064】
(1−3)微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層の製造
上記(1−2)で得られた樹脂組成物を、上記(1−1)で得られた微小突起構造体形成用原版の微細凹凸面が覆われ、硬化後の微細凹凸層の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC)(富士フィルム社製)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cm
2の加重で圧着した。原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、透明基材側から2000mJ/cm
2のエネルギーで紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させた。その後、原版より剥離し、微小突起構造体表面を有する微細凹凸層を得た。
【0065】
(1−4)無機酸化物層の形成
上記(1−3)で得られた微細凹凸層の微小突起構造体表面に、スパッタ装置(アルバック社製、SMD−750)を用い、35℃で酸化ジルコニウムをスパッタリングし、各微小突起の頂部から高さ方向の中央部までの領域における厚さが10〜20nmの酸化ジルコニウムの連続層からなる無機酸化物層を形成した。続いて、スパッタ装置(アルバック社製、SMD-750)を用い、35℃で酸化チタンをスパッタリングし、各微小突起の頂部から高さ方向の中央部までの領域における厚さが10〜20nmの範囲の酸化チタンの連続層からなる無機酸化物層を形成した。
なお、前記無機酸化物層の厚さは、前記無機酸化物層形成後の積層体を厚み方向に切断した垂直断面のTEMの電子顕微鏡写真を観察することにより測定した。
無機酸化物層形成後の微細凹凸層に設けられた微小突起構造体は、平均隣接微細突起間距離が100nm、平均微小突起高さが200nmで、各微小突起が先細りとなる構造、すなわち、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有するものであった。
【0066】
(2)金属ナノ粒子の担持
上記(1−4)で得られた微細凹凸層の微小突起構造体表面の無機酸化物層上に、真空蒸着法により金原子を付着させることにより、金ナノ粒子を形成した。蒸着の条件としては、真空蒸着装置(アルバック社製、VPC−410)を用い、真空度8×10E−6Torrで、凹凸面上の領域と平面視において同面積となる平版材の表面に成膜した場合に5nmとなるような平面での換算膜厚5nmで金を蒸着するように予め設定し、金ナノ粒子を微小突起構造体表面の無機酸化物層上に担持した。このようにして、実施例1の金属粒子担持触媒を得た。
実施例1の金属粒子担持触媒のSTEM像を確認したところ、平均粒径17.3nmの金ナノ粒子が形成されており、金ナノ粒子間平均距離は3.5nmであり、金ナノ粒子の個数密度は4900個/μm
2であった。
【0067】
[触媒性能評価]
実施例1で得られた金属粒子担持触媒をそれぞれ、8cm×8cmの大きさにして、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)バッグに封入した。そのPVDFバッグへ、窒素と酸素とが大気と同じ割合に混合され、さらに800ppmの濃度の一酸化炭素を混合した合成空気を1000ml導入した。導入後に室温23℃で静置し、24時間後の一酸化炭素の減少量及び二酸化炭素の増加量をガスクロマトグラフで測定することで一酸化炭素から二酸化炭素への変換率を求めた。
その結果、実施例1の金属粒子担持触媒による変換率は0.20であり、一酸化炭素を酸化除去して浄化する性能があることが確認された。