【0011】
(酸化マグネシウム)
本発明で使用される酸化マグネシウムは、BET比表面積が0.1〜1.0m
2/gの低活性の酸化マグネシウムである。このような低活性の酸化マグネシウムを採用することにより、空気透過防止性能を維持したまま脆化温度を低下させ、耐クラック性を向上させることが可能となる。
なお、タイヤインナーライナー用ゴム組成物に酸化マグネシウムを配合することは公知であるが、その目的は特許文献1に記載のように耐スコーチ性の改良であり、そのBET比表面積も例えば100〜150m
2/gと高活性の酸化マグネシウムである。
また、本発明で使用される低活性の酸化マグネシウムは一般的に導電材料として使用されており、このような材料をタイヤインナーライナー用ゴム組成物に配合することは知られていない。なお、本発明で使用される低活性の酸化マグネシウムは商業的に入手可能であり、例えば宇部マテリアルズ(株)製RF−10C等が挙げられる。
本発明で使用される酸化マグネシウムのBET比表面積は、本発明の効果が向上するという観点から、0.5〜1.0m
2/gであることがさらに好ましい。
【0013】
(タイヤインナーライナー用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤインナーライナー用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積が20〜50m
2/gのカーボンブラックを40〜80質量部およびBET比表面積が0.1〜1.0m
2/gの酸化マグネシウムを0.5〜5.0質量部配合してなることを特徴とする。
カーボンブラックの配合量が40質量部未満であると、空気透過防止性能が低下し、逆に80質量部を超えると、脆化温度が上昇し、耐クラック性が悪化する。
酸化マグネシウムの配合量が0.5質量部未満であると、添加量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に5.0質量部を超えると空気透過防止性能が悪化し、また耐疲労性も悪化する。
さらに好ましい窒素吸着比表面積が20〜50m
2/gのカーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対し、40〜70質量部である。
またさらに好ましいBET比表面積が0.1〜1.0m
2/gの酸化マグネシウムの配合量は、ゴム成分100質量部に対し、2〜5質量部である。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0018】
実施例1〜3および比較例1〜8
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られたゴム組成物および加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0019】
脆化温度:JIS K6261に準拠して、ゴムの脆化温度を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど脆化温度が低下していることを示す。
空気透過性能:JIS K7126 A法に準拠し、30℃の空気透過係数を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど空気透過防止性能に優れることを示す。
耐疲労性:JIS K6251に準拠して、JIS 3号ダンベル状サンプルを用いて、歪率60%にて繰返し歪を与え、破断に至るまでの回数を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きいほど耐疲労性に優れることを示す。
耐クラック性:JIS K6260に準拠して、DeMattia型屈曲試験機を用いて、亀裂成長長さを測定し、その逆数をもって耐クラック性を評価した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きい程、耐クラック性が良好であることを示す。
結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
*1:Br−IIR(Exxonmobil chemical社製Exxon bromobutyl 2255)
*2:NR(SIR20)
*3:カーボンブラック−1(新日化カーボン(株)製ニテロン#GN、N
2SA=32m
2/g)
*4:カーボンブラック−2(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN330、N
2SA=75m
2/g)
*5:酸化マグネシウム−1(宇部マテリアルズ(株)製RF−10C、BET比表面積=0.8m
2/g)
*6:酸化マグネシウム−2(協和化学工業(株)製キョーワマグ30、BET比表面積=40m
2/g)
*7:酸化マグネシウム−3(協和化学工業(株)製パイロキスマ5Q、BET比表面積=4.8m
2/g)
*8:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製ビーズステアリン酸)
*9:樹脂−1(エアウォーター(株)製芳香族炭化水素系樹脂FR−120)
*10:樹脂−2(トーネックス(株)製石油樹脂エスコレッツ1102)
*11:オイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*12:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*13:可溶性硫黄(細井化学工業(株)製油処理イオウ)
*14:加硫促進剤(三新化学工業(株)製サンセラーDM−P0)
【0022】
上記表1から明らかなように、本発明の実施例1〜3で調製されたゴム組成物は、特定の組成を有するゴム成分に、特定の特性を有するカーボンブラックの特定量および特定の特性を有する酸化マグネシウムの特定量を配合したので、これを配合していない比較例1に比べて、空気透過防止性能を維持したまま脆化温度が低下し、耐クラック性が向上している。
これに対し、比較例2は、ブチル系ゴムの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、空気透過性能が悪化した。
比較例3は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、脆化温度が上昇し、耐クラック性が悪化した。また耐疲労性も悪化した。
比較例4は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)が本発明で規定する上限を超えているので、脆化温度が上昇し、耐クラック性が悪化した。また耐疲労性も悪化した。
比較例5は、酸化マグネシウムの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、空気透過性能および耐疲労性が悪化した。
比較例6〜8は、酸価マグネシウムのBET比表面積が本発明で規定する上限を超えているので、空気透過性能、耐クラック性、耐疲労性が悪化した。