特許第6237044号(P6237044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 不二製油株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237044
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】うなぎ蒲焼き様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20171120BHJP
【FI】
   A23L17/00 101A
   A23L17/00 101D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-196486(P2013-196486)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-62346(P2015-62346A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 達朗
(72)【発明者】
【氏名】工藤 透
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−081895(JP,A)
【文献】 特開昭60−259162(JP,A)
【文献】 特開平02−020265(JP,A)
【文献】 特開平01−235556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/00
A23L 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の表側成形物と裏側成形物を貼りあわせて成形してから、蒸煮または揚成後に、蒲焼きのたれを焼成前に塗布することなく、あるいは塗布後に、両面焼成し、焼成後に蒲焼きのたれを塗布することを特徴とする、うなぎ蒲焼き様食品の製造方法。
表側成形物:タラ類及びホッケ類の魚種から選択される1種または2種以上の未加熱魚肉切り身と魚肉すり身を含み、さらに分離大豆蛋白並びに粒状大豆蛋白が添加されてなる成形物。
裏側成形物:魚肉すり身及び黒色着色剤を含む成形物。
【請求項2】
表側成形物と裏側成形物の重量比率が、70〜95:30〜5である請求項1記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法。
【請求項3】
表側成形物に添加する未加熱魚肉切り身と魚肉すり身の重量比率が50〜90:50〜10である請求項2記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法。
【請求項4】
表側成形物及び裏側成形物に蛋白質、油脂、澱粉類を添加する請求項3記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法。
【請求項5】
油脂がパーム中融点部を含む、請求項4記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うなぎ蒲焼き様の風味、食感及び外観を有するうなぎ蒲焼き様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
うなぎ蒲焼きは栄養価が高いとともに、非常に美味な食品として根強い需要のある食品であるが、うなぎ稚魚の漁獲量激減とともに価格高騰し、一般庶民にとって容易に食することができないものになっている。
【0003】
うなぎ蒲焼き様食品を提供する目的で、塩ずりした魚肉を加熱、ゲル化した人工うなぎ蒲焼きが既に数種類製造されているが、これらの食感は蒲鉾あるいははんぺん状の食感であるとともに外観もうなぎ蒲焼きと異なるものであり、食感及び外観とも満足の行くものではなかった。
【0004】
特許文献1は、塩ずりせずに加熱変性した魚肉と塩ずりした魚肉とを混合した後、脂肪、卵白、脱脂粉乳、調味料、香辛料、蒲焼きのたれおよびその他添加物を添加し、成形後の裏側に黒色着色し表側にうなぎの中骨および枝骨様の模様を付けた後、蒲焼きのたれを塗布し、ついで成形物全体を蒸煮した後、再び成形物の表側に蒲焼きのたれを塗布しついで焼いて仕上げるうなぎ風味蒲焼きの製造方法に関する。本方法によると、蒲鉾あるいははんぺん状の食感と煮魚あるいは焼魚の食感の中間的な蒲焼き様食感が得られており、有力な人工うなぎ蒲焼きのひとつであるが、ジューシー感及び繊維感に改良の余地のある方法であった。
【0005】
特許文献2では、水切りした豆腐又はオカラを胡麻及び大和芋と共に、所定の容器内で混合し乍ら摺擦して練状物を形成し、一方、海苔を練状物に所定厚みを有して貼り付け、該貼り付けられた練状物の表面中央部長手方向及び横方向に、うなぎの背骨及び横骨に対応して包丁等を用いて切線を形成し、更に、その上面に垂れを塗布し、食油を用いて蒲焼様に揚成して生成する擬似蒲焼製造法に関する。本方法による疑似蒲焼きは、風味、味覚が良好で、且つ、材料はすべて植物性を用い、低カロリーで生産性も高く安価なものであるが、やはりジューシー感及び繊維感の点で満足しうるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−75259号公報
【特許文献2】特開平9−294555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、比較的豊富に得られかつ安価な魚肉、蛋白質、油脂及び澱粉類を利用して、風味、食感及び外観がうなぎ蒲焼きに酷似した、うなぎ蒲焼きの代替品となり得るうなぎ蒲焼き様食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、魚肉切り身と魚肉すり身、蛋白質、油脂、澱粉類、調味剤及び水を混合した成形物を蒸煮または揚成後に、蒲焼きのたれを焼成前に塗布することなくまたは塗布後に両面焼成し、焼成後に蒲焼きのたれ塗布することで、風味、食感及び外観がうなぎ蒲焼きに酷似したうなぎ蒲焼き様食品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明の第1は、未加熱魚肉切り身と魚肉すり身を含む表側成形物と魚肉すり身及び黒色着色剤を含む裏側成形物を貼りあわせて成形してから、蒸煮または揚成後に、蒲焼きのたれを焼成前に塗布することなくまたは塗布後に両面焼成し、焼成後に蒲焼きのたれを塗布することを特徴とする、うなぎ蒲焼き様食品の製造方法である。
第2は、表側成形物と裏側成形物の重量比率が、70〜95:30〜5である第1記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法である。
第3は、表側成形物に添加する未加熱魚肉切り身と魚肉すり身の重量比率が50〜90:50〜10である第2記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法である。
第4は、表側成形物及び裏側成形物に蛋白質、油脂、澱粉類を添加する第3記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法である。
第5は、表側成形物に添加する蛋白質が、分離大豆蛋白及び粒状大豆蛋白である第4記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法である。
第6は、油脂がパーム中融点部を含む、第4または第5に記載のうなぎ蒲焼き様食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、風味、食感及び外観がうなぎ蒲焼きに酷似した、うなぎ蒲焼きの代替品となり得るうなぎ蒲焼き様食品を提供することができる。特に、従来の人工うなぎ蒲焼きよりもジューシー感、繊維感でうなぎ蒲焼きにより近似したうなぎ蒲焼き様食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(未加熱魚肉切り身)
本発明の未加熱魚肉切り身とは、フィレとも呼ばれ、魚の頭部、内臓、骨、皮を除去して採肉された水晒しされていない魚肉であり、通常の魚肉すり身に比べて水溶性蛋白質が除去されていないため、ゲル強度に優れるものである。魚肉切り身となる魚種としては、スケソウダラ、ホッケ、イワシ、アジ、ミナミダラ、太刀魚、エソ、グチ、イトヨリ、キンメダイなどが例示できるが、特にタラ類及びホッケ類の魚種が好ましい。
【0012】
(魚肉すり身)
本発明の魚肉すり身とは、スケソウダラ,ミナミダラ,ホキ,シログチ,ハモ,タチウオ,キンメダイ,イトヨリダイ,パシフィックホワイティング等の白身魚、イワシ,アジ,サンマ,サバ,サメ等の白身魚以外に由来する魚肉をすり潰したものであるが、その工程として、対象の魚から頭,内臓を除去し、洗浄し、骨,皮を除去して採肉し、水晒しし、小骨などを裏ごし除去し、脱水する方法が例示できる。主たる成分は白身魚であることが好ましくい、スケソウダラを主とするものが最も好ましい。また、食塩,糖質およびリン酸塩等を添加して、品質を調整したものも利用できる。
【0013】
(黒色着色剤)
本発明の黒色着色剤とは、うなぎ蒲焼き様食品の外観をうなぎ様とするため、うなぎ蒲焼き様食品の裏側成形物がうなぎの皮に似た色合いとなるように黒色に着色する目的で添加するものである。黒色色素としては、カラメル系色素、ココア色素、クロシン、木炭パウダー、竹炭パウダー、イカ墨パウダーが例示できる。
【0014】
(蛋白質)
本発明の蛋白質とは、加水後にゲル化能を有する蛋白質、魚肉様の繊維感や粒状感を付与する繊維状蛋白や粒状蛋白である。ゲル化能を有する蛋白質としては、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白、濃縮小麦蛋白、小麦グルテン、卵白、カゼインが例示できる。本発明においては、使い勝手の良さと少量で十分なゲル化能が得られることから、分離大豆蛋白の利用が好ましい。繊維状蛋白とは、濃縮大豆蛋白又は脱脂大豆を原料とし、水と混合してから小さい孔を押し出し繊維状に成形したものが例示でき、各種肉様の繊維感を出すために使用することができる。また、粒状蛋白としては、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白又は脱脂大豆を原料とし、2軸エクストルーダーのような押し出し成形機で粒状にしたものが例示でき、かかる粒状蛋白を水和させることによりひき肉的な食感を出すことができる。
【0015】
(油脂)
本発明に用いる油脂としては、大豆油,菜種油,ヒマワリ油,紅花油,コーン油,パーム油,パーム核油,ヤシ油等の植物性油脂、乳脂,豚脂,牛脂,鯨油等の動物脂、これらの分別油やエステル交換油等がから選択される油脂の1種以上が使用できる。特に、本発明のうなぎ蒲焼き様食品にジューシーな食感を付与するために、融点が25〜35℃の比較的口溶けの良い固形状油脂を含有するのが好ましく、体温付近で急激に融解するような固形状油脂を含有するのが最も好ましい。ジューシーな食感を付与する油脂として、融点25〜33℃のパーム中融点部を含有するのが最も好ましい。本発明においては、ジューシー感とこく味付与のため、上記固形状油脂と例えば大豆油のような液状植物油を混合使用するのが好ましい。
【0016】
(澱粉類)
本発明に用いる澱粉類としては、トウモロコシ澱粉,馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、これらの加工澱粉から選択される澱粉の1種以上が使用できる。本発明のうなぎ蒲焼き様食品の冷蔵及び冷凍保存での離水耐性を付与するために、各種加工澱粉の利用が好ましい。
【0017】
(その他の原材料、添加物)
本発明のうなぎ蒲焼き様食品には、風味調整のために糖類、食塩、調味料、調味剤を添加することができる。糖類としては、砂糖、ブドウ糖他の各種糖類が使用できるが、砂糖の利用が好ましい。調味料としては、アミノ酸等をベースとする市販調味料を利用することができる。調味剤としては、醤油、味醂、酒、魚介エキスなどを適宜利用することができる。
(うなぎ蒲焼き様食品の製造方法)
本発明のうなぎ蒲焼き様食品は、例えば、以下の手順で製造することができる。
【0018】
(表側成形物)
サイレントカッターに凍結した魚肉すり身の−3℃解凍品を荒擂りし、次いで固形状植物性油脂及び食塩を投入し、塩擦りを行う。次いで、蛋白質、水、糖類、調味料及び液状植物油を投入し本擂りを行う。その後、加工澱粉と水を投入し、最後に解凍された未加熱魚肉切り身、あらかじめ3倍加水後にチョッパー処理した粒状大豆蛋白を投入し、表側成形物となる練り生地を調製する。魚肉切り身と魚肉すり身の重量比率としては、50〜90:50〜10であるのが好ましく、60〜80:40〜20であるのがより好ましい。魚肉切り身の配合比率が低すぎると、うなぎ様のコシのある食感が得られないため好ましくない。逆に、高すぎるとゲル食感が強くなりすぎるため好ましくない。また、表側成形物中の魚肉切り身と魚肉すり身の合計配合量は40〜80重量部であるのが好ましく、50〜70重量部であるのがより好ましい。魚肉切り身と魚肉すり身の合計配合量が少なすぎると、うなぎ様のコシのある食感が得られないため好ましくない。逆に、高すぎるとゲル食感が強くなりすぎるため好ましくない。蛋白質としては、ゲル化能を有する蛋白質と粒状蛋白の併用が好ましい。ゲル化能を有する蛋白質として、分離大豆蛋白を0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量添加するのが好ましい。分離大豆蛋白の配合量が低すぎると、ゲル化力の低下や油分や水分の分離防止効果が低下するため好ましくない。逆に、高すぎるとゲル食感が強くなりすぎるため好ましくない。粒状蛋白は、あらかじめ3倍加水してチョッパー処理して繊維状としたものが好ましく、配合量としては加水前粒状蛋白として0.5〜2重量部、好ましくは1〜1.5重量部である。配合量が低すぎると、繊維感に乏しい食感になるため好ましくなく、逆に配合量が多すぎると繊維感が強くなりすぎるため好ましくない。油脂の配合量としては、固形状植物油脂2〜8重量部、好ましくは4〜6重量部、液状植物油としては1〜5重量部、好ましくは2〜4重量部である。油脂の種類と配合量を上記範囲とすることにより、ジューシー感に富んだうなぎ蒲焼き様食感を付与することができる。加工澱粉の配合量としては、0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量部であるのが好ましい。下限未満では、冷蔵、冷凍保存での離水耐性が低下するため好ましくなく、上限を超えると食感がやや重くなるため好ましくない。
【0019】
(裏側成形物)
サイレントカッターに凍結した魚肉すり身の−3℃解凍品を荒擂りし、次いで固形状植物性油脂、食塩を投入し、塩擦りを行う。次いで、分離大豆蛋白質、水、糖類、調味料及び液状植物油を投入し本擂りを行う。その後、加工澱粉と水を投入し、最後に竹炭パウダーを添加して裏側成形物となる練り生地を調製する。魚肉すり身の配合量は10〜50重量部であるのが好ましく、さらに好ましくは20〜40重量部である。魚肉すり身の配合量が少なすぎると、うなぎ蒲焼きの皮様のコシのある食感が得られず、逆に配合量が多すぎるとコシが強くなりすぎるため好ましくない。分離大豆蛋白質としては、3〜8重量部、好ましくは4〜6重量添加するのが好ましい。分離大豆蛋白質の配合量が低すぎると、うなぎ蒲焼きの皮様のコシのある食感の低下や油分や水分の分離防止効果が低下するため好ましくない。逆に、高すぎるとコシが強くなりすぎるため好ましくない。油脂の配合量としては、固形状植物油脂5〜15重量部、好ましくは8〜12重量部、液状植物油としては2〜10重量部、好ましくは4〜8量部である。油脂の種類と配合量を上記範囲とすることにより、ジューシー感に富んだうなぎ蒲焼きの皮様食感を付与することができる。加工澱粉の配合量としては、1〜6重量部、好ましくは2〜5重量部であるのが好ましい。下限未満では、冷蔵、冷凍保存での離水耐性が低下するため好ましくなく、上限を超えると食感がやや重くなるため好ましくない。
【0020】
(うなぎ蒲焼き様食品生地の成形)
上記の表側成形物と裏側成形物を適度な厚みになるように、それぞれ圧延し、貼り合わせる。貼り合わせの厚みとしては5〜15mm、好ましくは8〜12mmが望ましい。また、表側成形物と裏側成形物を貼り合わせた後で、前記の貼り合わせの厚みとなるように圧延することもできる。表側成形物と裏側成形物の重量比は70〜95:30〜5であるのが好ましく、75〜90:25〜10であるのがより好ましい。上記の重量比率とすることにより、外観をうなぎ蒲焼き様とすることができる。貼り合わせ品の大きさとしては、うなぎ蒲焼きに外観が近似するように所望の形にカットするが、例えば、縦40〜80mm、横20〜60mmのような形にするのが好ましい。なお、成形後の表側成形物表面に、ヘラや包丁を用いてうなぎの中骨及び枝骨の跡に類似するような模様を付けることもできる。
【0021】
(うなぎ蒲焼き様食品のフライ)
上記の貼り合わせ成形物を、140〜150℃フライヤーで1分間1次フライ後、160〜170℃フライヤーで1〜1.5分間2次フライして、表側表面がきつね色となったフライ調理品を得る。なお、本発明ではフライに代えて蒸煮による調理を採用することもできる。
【0022】
(うなぎ蒲焼き様食品の焼成)
フライ調理品にうなぎ蒲焼きのたれを塗布することなく、または塗布してから、両面をバーナー焼きして表面に焦げ目を付ける。その後、うなぎ蒲焼きのたれを塗布して、うなぎ蒲焼き様食品を得る。なお、焼成はバーナー焼きが簡便であるが、炭火焼き、ガスコンロ焼き、電気オーブン焼きなどの周知の焼成方法のいずれも利用可能である。
【0023】
上記手順で製造されたうなぎ蒲焼き様食品は、風味、食感及び外観がうなぎ蒲焼きに酷似した、うなぎ蒲焼きの代替品となり得るものである。特に、従来の人工うなぎ蒲焼きよりもジューシー感、繊維感でうなぎ蒲焼きにより近似したものであり、消費者に対し手軽で安価なうなぎ蒲焼き様食品を提供することができる。また、本発明のうなぎ蒲焼き様食品は冷蔵、冷凍保存性にも優れるため、チルドから冷凍食品まで幅広くうなぎ蒲焼き様食品として提供できる利点もある。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を記載し、本発明を説明する。なお、各例の部は全て重量部を意味する。
なお、各例における風味、食感は下記にて評価した。
うなぎ蒲焼の食経験のあるパネラー5名により、風味、食感(ジューシー感、繊維感、歯ごたえ)について合議により評価を行った。評価基準は以下の通りであり、それぞれ3点以上を合格とした。
<風味>
5点 うなぎ蒲焼と同等の風味である。
4点 うなぎ蒲焼とほとんど同等の風味である。
3点 うなぎ蒲焼と若干の差異はある風味だが、許容範囲である。
2点 うなぎ蒲焼に近い風味だが、違和感を感じる。
1点 うなぎ蒲焼と相違する風味である。
<食感>
5点 うなぎ蒲焼と同等の食感である。
4点 うなぎ蒲焼とほとんど同等の食感である。
3点 うなぎ蒲焼と若干の差異はある食感だが、許容範囲である。
2点 うなぎ蒲焼に近い食感だが、違和感を感じる。
1点 うなぎ蒲焼と相違する食感である。
【0025】
実施例1
(表側成形物の調製)
サイレントカッターに凍結した魚肉すり身(陸上二級)17.41部の−3℃解凍品を荒擂りし、次いで品温20℃のユニショートMJ(パーム中融点部:融点26℃、不二製油株式会社製)5.22部を添加し練り生地の温度が氷点下から2℃に上昇した時点で、食塩0.33部を投入し、2分間の塩擦りを行なった。次いで、サンラバー10(分離大豆蛋白質、不二製油株式会社製)2.61部、水7.83部、砂糖0.35部、味醂0.52部、調味料(グルタミン酸ナトリウム、味の素株式会社製)0.1部、魚介エキス0.33部及び大豆白絞油3.48部を投入し本擂りを行なった。その後、トウモロコシ加工澱粉2.44部と水9.58部を投入し、最後に、解凍したスケソウダラ切り身(フィレ)44.57部とあらかじめ3倍加水後にチョッパー処理した粒状大豆蛋白(商品名アペックス950、不二製油株式会社製)5.22部を投入し、表側成形物となる練り生地を調製した。
(裏側成形物の調製)
サイレントカッターに凍結したすり身(陸上二級)31.65部の−3℃解凍品を荒擂りし、次いで品温20℃のユニショートMJ(パーム中融点部:融点26℃、不二製油株式会社製)9.49部を添加し練り生地の温度が氷点下から2℃に上昇した時点で、食塩0.6部を投入し、2分間の塩擦りを行なった。次いで、サンラバー10(分離大豆蛋白質、不二製油株式会社製))4.75部、水14.25部、砂糖0.63部、調味料(グルタミン酸ナトリウム、味の素株式会社製)0.19部、魚介エキス0.63部及び大豆白絞油6.33部を投入し本擂りを行なった。その後、トウモロコシ加工澱粉4.43部と水26.89部を投入し、最後に竹炭パウダー0.16部を添加し、裏側成形物となる練り生地を調製した。
(うなぎ蒲焼き様食品生地の成形)
表側成形物を8.3mmの厚みに圧延し、その上に1.7mmの厚みに圧延した裏側成形物を重ねて、厚み10mmに貼り合わせた後、縦80mm、横50mmの長方形にカットし、うなぎ蒲焼き様食品生地の貼り合わせ成形物を得た。得られた成形物の表側成形物表面に、包丁を用いてうなぎの中骨の跡に類似するような模様を付けた。
(うなぎ蒲焼き様食品のフライ)
上記の貼り合わせ成形物を、大豆白絞油をフライ油として利用して、145℃フライヤーで1分間1次フライ後、165℃フライヤーで1.5分間2次フライして、表側表面がきつね色となったフライ調理品を得た。
(うなぎ蒲焼き様食品の焼成)
得られたフライ調理品の両面をバーナー焼きして表面に焦げ目を付けてから、うなぎ蒲焼きのたれを塗布して、うなぎ蒲焼き様食品を得た。なお、うなぎ蒲焼きのたれは、下記にて調製したものを用いた。酒10部と味醂30部をとろ火で煮て、アルコールを飛ばし、濃口醤油35部と砂糖25部を加え、さらにうなぎの頭や骨を加える。次いで、軽く煮詰めて、ろ過し、素早く氷水で冷却し、うなぎ蒲焼きのたれを得た。得られたたれは、袋に密栓し、冷蔵保管しておき、上記なぎ蒲焼きのたれを塗布時に利用した。
(うなぎ蒲焼き様食品の評価)
得られたうなぎ蒲焼き様食品は、風味4.5点、食感4.5点でジューシー感、繊維感、歯ごたえともうなぎ蒲焼きに近似し、外観もうなぎ蒲焼きに近似するもので、優れたうなぎ蒲焼き様食品であった。
【0026】
比較例1
実施例1の表側成形物のスケソウダラ切り身(フィレ)44.57部をすり身(陸上二級)に代えて、実施例1同様にうなぎ蒲焼き様食品を調製した。得られたうなぎ蒲焼き様食品は、風味4点で外観はうなぎ蒲焼き近似ではあったが、食感1.5点で歯ごたえが弱くコシのない食感であり、焼魚様の物足りない食感であった。
【0027】
実施例2
実施例1の表側成形物の粒状大豆蛋白(商品名アペックス950、不二製油株式会社製)5.22部をサンラバー10(分離大豆蛋白質、不二製油株式会社製)に代えて、実施例1同様にうなぎ蒲焼き様食品を調製した。得られたうなぎ蒲焼き様食品は、風味4.2点で外観はうなぎ蒲焼き近似ではあったが、食感3点で歯ごたえはあるがうなぎ蒲焼き様の繊維感に乏しく、うなぎ蒲焼きとはやや異なる口当たりの食感であった。
【0028】
実施例3
実施例1の表側成形物のユニショートMJ(パーム中融点部:融点26℃、不二製油株式会社製)5.22部を大豆白絞油に代えて、実施例1同様にうなぎ蒲焼き様食品を調製した。得られたうなぎ蒲焼き様食品は、風味4.2点で外観はうなぎ蒲焼き近似ではあったが、食感3点で歯ごたえはあるがジューシー感がなくやや油っぽい食感であり、うなぎ蒲焼きとはやや異なる口当たりの食感であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、比較的豊富に得られかつ安価な魚肉、蛋白質、油脂及び澱粉類を利用して、風味、食感及び外観がうなぎ蒲焼きに酷似した、うなぎ蒲焼きの代替品となり得るうなぎ蒲焼き様食品の製造方法に関する。