(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係わる実施形態についてさらに詳細に説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。また、本明細書中の結晶学的な記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面{}で、それぞれ示すものとする。なおまた、結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付すことで表現するものとする。
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
まず、本願発明の実施形態(以下、「本実施形態」とも記す)の概要を以下の(1)〜(15)に列記して説明する。
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行なったところ、炭化珪素半導体装置では、ゲート電極とゲート絶縁膜との界面領域にダングリングボンドが多く存在しており、このダングリングボンドに可動イオンとなる不純物がトラップされることにより、閾値電圧が不安定になっているという知見を得、該知見に基づきさらに研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。すなわち、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置は、以下の構成を備える。
【0012】
(1)炭化珪素半導体層100と、炭化珪素半導体層100上に形成されたゲート絶縁膜91と、ゲート絶縁膜91上に設けられたゲート電極92と、を備え、ゲート電極92は、少なくともゲート絶縁膜91との界面側にポリシリコン層92aを有し、さらに、ゲート絶縁膜91は、ゲート絶縁膜91とゲート電極92のポリシリコン層92aとの界面に、ポリシリコン層92aに由来する酸化膜91aを有する。
【0013】
従来、ゲート絶縁膜は、炭化珪素半導体層を熱酸化することにより形成されている。しかしながら、炭化珪素半導体層に由来するゲート絶縁膜とゲート電極との界面にはダングリンボンドが多く存在しており、このダングリングボンドの存在によってゲート絶縁膜とゲート電極との界面に不純物が蓄積しやすい状態にある。
【0014】
本実施形態によれば、炭化珪素半導体装置は、ゲート電極92とゲート絶縁膜91との界面領域に、ポリシリコン層92aに由来する酸化膜を形成できる。すなわち当該酸化膜91aとポリシリコン層92aとの界面におけるダングリングボンドを低減できる。したがって、当該領域に不純物がトラップされ難くなり、閾値電圧の安定した炭化珪素半導体装置を提供することができる。
【0015】
(2)酸化膜91aの厚さは、50nm以下であることが好ましい。本実施形態において酸化膜91aは、ゲート電極92の一部を構成するポリシリコン層92aに由来するものである。シリコンは酸化されると元の体積の2倍の体積となる。そのため、形成されるべき酸化膜91aの厚さが50nmを超えると、酸化膜91aの厚さの制御が困難になる場合もある。酸化膜91aの厚さが50nm以下であれば、所望の厚さの酸化膜91aを形成することができ、さらに閾値電圧の安定した炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0016】
(3)ゲート電極92は、ポリシリコン層92aにより構成されることが好ましい。このような態様によれば、ゲート電極92を熱酸化することにより、ゲート絶縁膜91とゲート電極92との界面に、ポリシリコン層92aに由来する酸化膜91aを容易に形成することができる。
【0017】
(4)酸化膜91aは、ゲート電極92の側部表面および上部表面上にまで延在することが好ましい。これにより炭化珪素半導体装置は、ゲート電極92を覆う層間絶縁膜93を形成した際に、ゲート電極92と層間絶縁膜93との界面におけるダングリングボンドを低減した状態とすることができる。したがって、炭化珪素半導体装置において不純物の蓄積がさらに低減され、信頼性を向上させることができる。
【0018】
(5)炭化珪素半導体層100は、主面MPを有し、第1の導電型を有する第1の不純物領域81と、第1の不純物領域81内に設けられ第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の不純物領域82と、主面MPの一部を構成し第2の不純物領域82内に設けられ第1の導電型を有する第3の不純物領域83と、を含み、さらに主面MPには、第2の不純物領域82および第3の不純物領域83が側壁SWに表出したトレンチTRが設けられており、ゲート絶縁膜91は、側壁SW上に形成されていることが好ましい。
【0019】
これにより、トレンチゲート構造を有し、かつ閾値電圧の安定した炭化珪素半導体装置とすることができる。
【0020】
(6)炭化珪素半導体層100は、主面MPを有し、主面MPの一部を構成し第1の導電型を有する第1の不純物領域81と、主面MPの一部を構成し第1の不純物領域81内に設けられ第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の不純物領域82と、主面MPの一部を構成し第2の不純物領域82内に設けられ第1の導電型を有する第3の不純物領域83と、を含み、さらにゲート絶縁膜91は、第2の不純物領域82により構成される主面MP上に形成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、プレーナ構造を有し、かつ閾値電圧の安定した炭化珪素半導体装置とすることができる。
【0022】
(7)ゲート電極92とゲート絶縁膜91(酸化膜91a)との界面から10nm以内の領域におけるナトリウム濃度は、1×10
16/cm
3以下であることが好ましい。本発明者の研究によれば、ナトリウム(Na)は特に可動イオンとなりやすい不純物である。そして、ゲート絶縁膜91中のナトリウム濃度が1×10
16/cm
3を超えると閾値電圧が不安定になりやすい傾向にある。したがって、当該領域におけるナトリウム濃度を1×10
16/cm
3以下に制限することにより、閾値電圧の安定性をさらに高めることができる。
【0023】
(8)炭化珪素半導体層100とゲート絶縁膜91(下地絶縁膜91b)との界面から10nm以内の領域における窒素濃度は、1×10
21/cm
3以上であることが好ましい。これにより、炭化珪素半導体層100とゲート絶縁膜91との界面においてもダングリングボンドを低減し、不純物の蓄積を抑制することができる。したがって、閾値電圧をより一層安定化させることできる。
【0024】
(9)本実施形態の別の局面に従えば、炭化珪素
半導体装置は、炭化珪素半導体層100と、炭化珪素半導体層100上に形成されたゲート絶縁膜91と、ゲート絶縁膜91上に設けられたゲート電極92と、を備え、ゲート絶縁膜91中のナトリウム濃度が、1×10
16/cm
3以下である。
【0025】
上記のように、ゲート絶縁膜91中において、閾値電圧の変動要因となるナトリウムの濃度を制限することにより、閾値電圧の安定した炭化珪素半導体装置を提供することができる。
【0026】
(10)本実施形態の別局面に従う炭化珪素半導体装置において、ゲート電極92とゲート絶縁膜91(酸化膜91a)との界面から10nm以内の領域におけるナトリウム濃度は、1×10
16/cm
3以下であることが好ましい。ゲート電極92とゲート絶縁膜91との界面から10nm以内の領域は、とりわけ不純物が蓄積しやすい領域である。したがって、当該領域におけるナトリウム濃度を制限することにより、さらに閾値電圧を安定化させることができる。
【0027】
(11)本実施形態の別局面に従う炭化珪素半導体装置において、炭化珪素半導体層100は、主面MPを有し、第1の導電型を有する第1の不純物領域81と、第1の不純物領域81内に設けられ第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の不純物領域82と、主面MPの一部を構成し第2の不純物領域82内に設けられ第1の導電型を有する第3の不純物領域83と、を含み、さらに主面MPには、第2の不純物領域82および第3の不純物領域83が側壁SWに表出したトレンチTRが設けられており、ゲート絶縁膜91は、側壁SW上に形成されていることが好ましい。
【0028】
これにより、トレンチゲート構造を有し、かつゲート絶縁膜91中のナトリウム濃度が1×10
16/cm
3以下である炭化珪素半導体装置とすることができる。
【0029】
(12)本実施形態の別局面に従う炭化珪素半導体装置において、炭化珪素半導体層100は、主面MPを有し、主面MPの一部を構成し第1の導電型を有する第1の不純物領域81と、主面MPの一部を構成し第1の不純物領域81内に設けられ第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の不純物領域82と、主面MPの一部を構成し第2の不純物領域82内に設けられ第1の導電型を有する第3の不純物領域83と、を含み、さらにゲート絶縁膜91は、第2の不純物領域82により構成される主面MP上に形成されていることが好ましい。
【0030】
これにより、プレーナ構造を有し、かつゲート絶縁膜91中のナトリウム濃度が1×10
16/cm
3以下である炭化珪素半導体装置とすることができる。
【0031】
(13)本実施形態の炭化珪素半導体装置は、次のような製造方法によって製造することができる。すなわち本実施形態の炭化珪素半導体装置の製造方法は、炭化珪素半導体層100を準備する工程S1と、炭化珪素半導体層100上にゲート絶縁膜91を構成する下地絶縁膜91bを形成する工程S2と、下地絶縁膜91b上にゲート電極92を設ける工程S4と、ゲート電極92を酸素含有雰囲気中で熱処理することにより、ゲート電極92に由来し、ゲート絶縁膜91を構成する酸化膜91aを、少なくとも下地絶縁膜91bとゲート電極92との界面に形成する工程S5と、を備える。
【0032】
上記の製造方法によれば、ゲート電極92とゲート絶縁膜91との界面においてダングリングボンドが低減され、安定した閾値電圧を有する本実施形態の炭化珪素半導体装置を容易に製造することができる。
【0033】
(14)ゲート電極を設ける工程S4において、ゲート電極92は、少なくともゲート絶縁膜91との界面にポリシリコン層92aを有するように設けられることが好ましい。これにより、工程S5において酸化膜91aを下地絶縁膜91bとゲート電極92との界面に容易に形成することができる。
【0034】
(15)上記の炭化珪素半導体装置の製造方法は、炭化珪素半導体層100と下地絶縁膜91bとの界面に窒素およびリンの少なくともいずれかを導入する工程S3を、さらに備えることが好ましい。これにより、ゲート絶縁膜91と炭化珪素半導体層100との界面においてもダングリングボンドが低減され、より一層安定した閾値電圧を有する炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0035】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置について、より詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<炭化珪素半導体装置>
図1に示す本実施形態に係る炭化珪素半導体装置201はプレーナ構造を有する縦型MOSFETとして構成されている。炭化珪素半導体装置201は、単結晶基板80と、炭化珪素半導体層100(エピタキシャル層)と、ゲート絶縁膜91と、ゲート電極92と、層間絶縁膜93と、ソース電極94と、ソース配線層95と、ドレイン電極98とを有する。
【0037】
ゲート絶縁膜91は、炭化珪素半導体層100上に形成されており、下地絶縁膜91bと酸化膜91aとから構成されている。下地絶縁膜91bは酸化珪素膜(SiO
2)であることが好ましい。そしてゲート絶縁膜91上にはゲート電極92が設けられている。ゲート電極92は、ポリシリコン層92aと電極層92bとを含む積層構造を有している。電極層92bは、たとえばアルミニウム(Al)等の導体から構成される。ポリシリコン層92aはゲート絶縁膜91(酸化膜91a)との界面側に位置している。すなわち炭化珪素半導体装置201は、ゲート絶縁膜91とポリシリコン層92aとの界面に、酸化膜91aを有している。酸化膜91aはポリシリコン層92aに由来の酸化膜であり、具体的にはポリシリコン層92aの一部を熱酸化することにより形成された酸化珪素膜である。したがって酸化膜91aは非常に清浄な膜であり、膜中のダングリングボンドが極めて少ない。そして、酸化膜91aは下地絶縁膜91bと一体となってゲート絶縁膜91を構成し、ゲート電極92と炭化珪素半導体層100(チャネル領域)との間を絶縁している。
【0038】
このように、ゲート絶縁膜91とゲート電極92(ポリシリコン層92a)との界面にポリシリコンを熱酸化して得た酸化膜91aが設けられることにより、当該領域において閾値電圧の変動要因となる不純物の蓄積を防止することができる。
【0039】
ここで、閾値電圧の変動要因となる不純物としては、たとえば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)等を例示することができる。これらの不純物がゲート絶縁膜中に含まれると可動イオンとなり、温度や電界によって膜中を移動するため閾値電圧のシフトを引き起こすと考えられる。そして、特にNaは可動イオンとなりやすく、閾値電圧への影響が大きい。したがって、閾値電圧をより安定化させるとの観点から、ゲート電極92とゲート絶縁膜91の一部である酸化膜91aとの界面から10nm以内の領域におけるNa濃度は1×10
16/cm
3以下であることが好ましい。本実施形態では、たとえば、酸化膜91aの厚さを10nm程度とすることにより、当該領域におけるNa濃度を容易に1×10
16/cm
3以下とすることができる。
【0040】
ここで、ポリシリコンを熱酸化して得られた熱酸化珪素膜の体積は、元のポリシリコンの約2倍となることが知られている。前述のように酸化膜91aは下地絶縁膜91bと一体となっており、ゲート絶縁膜91の一部を構成するものである。そのため、酸化膜91aの厚さが過度に厚くなると、ゲート絶縁膜91の膜厚の変動量が大きくなり好ましくない。このような観点から、酸化膜91aの厚さは50nm以下であることが好ましい。なお酸化膜91aの厚さは、好ましくは5nm以上50nm以下であり、より好ましくは5nm以上40nm以下であり、特に好ましくは10nm以上30nm以下である。
【0041】
以上のように、本実施形態ではゲート電極92とゲート絶縁膜91との界面において不純物の蓄積が防止され、以って閾値電圧が安定化される。さらに本実施形態では、これに加えてゲート絶縁膜91と炭化珪素半導体層100との界面においても不純物の蓄積が防止することもできる。
【0042】
すなわち、炭化珪素半導体層100とゲート絶縁膜91(下地絶縁膜91b)との界面に窒素(N)およびリン(P)の少なくともいずれかを導入することにより、当該領域においてもダングリングボンドを低減し、不純物の蓄積を防止することができる。具体的には、炭化珪素半導体層100とゲート絶縁膜91との界面から10nm以内の領域における窒素濃度およびリン濃度の少なくともいずれかが1×10
21/cm
3以上となるように、窒素およびリンが導入されていることが好ましい。
【0043】
そして、このような態様によれば、ゲート電極92からゲート絶縁膜91を通って炭化珪素半導体層100に至る領域において不純物の蓄積が防止される。すなわち、ゲート絶縁膜91中の不純物濃度(Na濃度)を1×10
16/cm
3以下とすることも可能である。このように、ゲート絶縁膜91中の不純物濃度(Na濃度)が1×10
16/cm
3以下であれば、より一層閾値電圧が安定化された炭化珪素半導体装置を実現することができる。
【0044】
さらに、ダングリングボンドを低減するとの観点から、炭化珪素半導体層100とゲート絶縁膜91(下地絶縁膜91b)との界面に水素(H)が導入されていてもよい。すなわち、炭化珪素半導体層100とゲート絶縁膜91との界面から10nm以内の領域における窒素濃度、リン濃度および水素濃度の少なくともいずれかが1×10
21/cm
3以上であってもよい。
【0045】
なお、上記で説明した各界面領域等におけるNa濃度、窒素濃度、リン濃度および水素濃度は、たとえば二次イオン質量分析装置(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometer)によって計測することができる。
【0046】
以下、炭化珪素半導体装置201のその他の構成について説明する。なお以下において各層または領域における導電型はあくまで例示であり、各層または領域はこれらと異なる導電型を有していてもよい。
【0047】
単結晶基板80はSiCからなり、n型(第1の導電型)を有している。単結晶基板80上には炭化珪素半導体層100が設けられている。
【0048】
炭化珪素半導体層100は、単結晶基板80上にエピタキシャル成長させられたSiC層である。炭化珪素半導体層100はポリタイプ4Hの六方晶の結晶構造を有することが好ましい。かかる結晶構造を採用することにより、炭化珪素半導体装置201のオン抵抗を低くすることができるからである。炭化珪素半導体層100は、単結晶基板80に面する下面と、当該下面と反対の上面である主面MPとを有している。さらに炭化珪素半導体層100は、nドリフト層81(第1の不純物領域)と、pボディ層82(第2の不純物領域)と、n+層83(第3の不純物領域)と、pコンタクト領域84とを含んでいる。
【0049】
nドリフト層81は単結晶基板80上に設けられ、n型(第1の導電型)を有する。nドリフト層81は一対のpボディ層82に挟まれた領域にJFET(Junction Field Effect Transistor)領域を含んでいる。そして、JFET領域の上端は主面MPの一部を構成しており、ゲート絶縁膜91(下地絶縁膜91b)と接している。すなわち、ゲート絶縁膜91はnドリフト層81(第1の不純物領域)により構成される主面MP上に形成されている。nドリフト層81の不純物濃度は単結晶基板80の不純物濃度よりも低いことが好ましい。nドリフト層81の不純物濃度は、たとえば1×10
15/cm
3以上5×10
16/cm
3以下である。
【0050】
pボディ層82はnドリフト層81内に設けれ、p型(第1の導電型と異なる第2の導電型)を有している。pボディ層82は主面MPの一部を構成しており、当該部分においてゲート絶縁膜91(下地絶縁膜91b)と接している。すなわち、ゲート絶縁膜91はpボディ層82(第2の不純物領域)により構成される主面MP上に形成されている。そして、このゲート絶縁膜91と接する部分に沿ってチャネル領域が形成される。pボディ層82の不純物濃度は5×10
15/cm
3以上2×10
18/cm
3以下であることが好ましく、たとえば1×10
18/cm
3程度とすることができる。
【0051】
n+層83はpボディ層82内に設けられ、n型(第1の導電型)を有し、かつソース領域として機能する。n+層83は、主面MPの一部を構成している。さらにn+層83に隣接して、pコンタクト領域84がpボディ層82上に形成されている。pコンタクト領域84はp型の導電型を有し、主面MPの一部を構成している。
【0052】
ソース電極94は主面MP上に設けられており、n+層83およびpコンタクト領域84の各々に接している。層間絶縁膜93はゲート電極92を覆うように、ゲート電極92上に設けられており、ゲート電極92とソース電極94との間を絶縁している。ソース配線層95は層間絶縁膜93およびソース電極94に接して形成されている。ソース配線層95は、たとえばAl等の導体から構成される。ドレイン電極98は炭化珪素半導体層100の主面MPとは反対の下面に単結晶基板80を介して設けられている。
【0053】
以上のように、炭化珪素半導体装置201はプレーナ構造を有するMOSFETであり、安定した閾値電圧を有する炭化珪素半導体装置である。また本発明者の研究によれば、炭化珪素半導体装置201と同様の構成を有する装置のうち次の構成を有する装置は、特に安定した閾値電圧を有するものである。
【0054】
すなわち、本実施形態の別の局面に従えば、炭化珪素半導体装置は、炭化珪素半導体層100と、炭化珪素半導体層100上に形成されたゲート絶縁膜91と、ゲート絶縁膜91上に設けられたゲート電極92と、を備え、ゲート絶縁膜91中のナトリウム濃度が、1×10
16/cm
3以下である。
【0055】
<炭化珪素半導体装置の製造方法>
以上に説明した本実施形態に係る炭化珪素半導体装置は、以下に説明する製造方法によって製造することができる。
図16は本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の概略を示すフローチャートである。
図16に示すように、当該製造方法は工程S1、工程S2、工程S4および工程S5を備えるものであり、好ましくは工程S2の後に工程S3をさらに備える。以下、各工程について説明する。
【0056】
(工程S1)
工程S1では炭化珪素半導体層100が準備される。炭化珪素半導体層100は、たとえば単結晶基板80上でのエピタキシャル成長と、イオン注入によって準備される。
【0057】
図4を参照して、炭化珪素半導体層100の一部となるべきnドリフト層81が、単結晶基板80上にエピタキシャル成長によって形成される。ここで単結晶基板80は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素からなるインゴット(図示せず)をスライスすることによって得ることができる。nドリフト層81のエピタキシャル成長は、原料ガスとして、たとえばシラン(SiH
4)とプロパン(C
3H
8)との混合ガスを用い、キャリアガスとして、たとえば水素ガス(H
2)を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により行なうことができる。この際、不純物として、たとえば窒素(N)やリン(P)を導入することが好ましい。このようにして得られたnドリフト層81の上面は、炭化珪素半導体層100の主面MPとなる。
【0058】
次に、
図5を参照して、nドリフト層81内に、pボディ層82、n+層83およびpコンタクト領域84が形成される。これらの形成は、たとえばnドリフト層81の全面上へのイオン注入によって行なうことができる。pボディ層82およびpコンタクト領域84を形成するためのイオン注入では、たとえばAl等のp型を付与するための不純物がイオン注入される。また、n+層83を形成するためのイオン注入では、たとえばリン(P)等のn型を付与するための不純物がイオン注入される。各層および領域のイオン注入には、従来公知のフォトレジスト等の注入マスク(図示せず)が用いられる。なお、イオン注入の代わりに、不純物の添加を伴うエピタキシャル成長を行なってもよい。
【0059】
次に、不純物を活性化するための熱処理が行なわれる。これにより、各不純物領域において所望のキャリアが生成される。このときの熱処理温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。熱処理時間は、たとえば30分程度とすることができる。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気であることが好ましく、たとえばアルゴン(Ar)雰囲気が好ましい。以上のようにして炭化珪素半導体層100が準備される。
【0060】
(工程S2)
工程S2は、炭化珪素半導体層100上にゲート絶縁膜91を構成する下地絶縁膜91bを形成する工程である。
図6を参照して、炭化珪素半導体層100上に下地絶縁膜91bが形成される。下地絶縁膜91bは、たとえば酸化珪素であり、炭化珪素半導体層100を熱酸化することにより形成されることが好ましい。このときの熱酸化条件は、たとえば酸素(O
2)を含む雰囲気中において炭化珪素半導体層100を1300℃程度に加熱することにより、酸化珪素膜である下地絶縁膜91bを形成することができる。
【0061】
(工程S3)
本実施形態では、工程S2の後、炭化珪素半導体層100と下地絶縁膜91bとの界面に窒素およびリンの少なくともいずれかを導入する工程S3が実行されることが好ましい。工程S3が実行されることにより、当該界面においてダングリングボンドが窒素またはリンよって終端化され、不純物の蓄積を防止することができる。すなわち、閾値電圧をより安定化させることができる。
【0062】
窒素およびリンの少なくともいずれかは、これらの原子を含む雰囲気ガス中において、下地絶縁膜91bおよび炭化珪素半導体層100を熱処理することによって導入することができる。なおこのとき、窒素およびリンとともに水素が導入されてもよい。すなわち工程S3は、炭化珪素半導体層100と下地絶縁膜91bとの界面に窒素、リンおよび水素の少なくともいずれかを導入する工程であってもよい。
【0063】
窒素を含む気体(ガス)としては、たとえば窒素(N
2)、一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N
2O)、二酸化窒素(NO
2)およびアンモニア(NH
4)等を挙げることができる。また、リンを含む気体としては、たとえば塩化ホスホリル(POCl
3)等である。また、水素を含む気体としては、水素(H
2)および水蒸気(H
2O)を挙げることができる。熱処理条件としては、たとえば熱処理温度を1300℃以上1500℃以下程度、熱処理時間を1時間程度とする条件が好適である。
【0064】
なお工程S3は、窒素を含む雰囲気中での熱処理、リンを含む雰囲気中での熱処理および水素を含む雰囲気中での熱処理が、個別に順次行なわれる工程であってもよく、上記に例示したNO、POCl
3、H
2等の混合ガスを用いた熱処理が行なわれる工程であってもよい。
【0065】
工程S3の後、さらに不活性ガスを用いた熱処理が行なわれてもよい。具体的には、Arガス雰囲気中でさらに熱処理が行なわれてもよい。このときの熱処理条件は、熱処理温度を工程S3での熱処理温度よりも高く、かつ下地絶縁膜91bの融点よりも低くすることが好ましい。また、熱処理時間は、たとえば1時間程度とすることができる。この処理を行なうことにより、ダングリングボンドがさらに低減され、閾値電圧がより安定化される。
【0066】
(工程S4)
下地絶縁膜91bが形成された後、下地絶縁膜91b上にゲート電極92を設ける工程S4が実行される。
図7を参照して、下地絶縁膜91b上に、たとえば従来公知のCVD法や蒸着法によってポリシリコン層92aおよび電極層92bがこの順に積層されることによりゲート電極92が形成される。すなわち、工程S4において、ゲート電極92は、少なくともゲート絶縁膜91(下地絶縁膜91b)との界面にポリシリコン層92aを有するように設けられる。なお、ゲート電極92は、少なくともゲート絶縁膜91との界面側にポリシリコン層を有するように構成されていればよく、後述するように全体がポリシリコン層から構成されていてもよいし、当該界面側にポリシリコン層を有する限り3以上の層から構成されていてもよい。
【0067】
ポリシリコン層92aは、たとえばリン等の不純物がドープされたものであってもよい。電極層92bは導体であればよく、たとえばAl層である。なおゲート電極92の形成後、ゲート電極92に対して、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)または反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)等が行なわれてもよい。
【0068】
(工程S5)
工程S4の後、
図8を参照して工程S5が実行される。工程S5は、ゲート電極92を酸素(O
2)含有雰囲気中で熱処理することにより、ゲート電極92(ポリシリコン層92a)に由来し、ゲート絶縁膜91を構成する酸化膜91aを、少なくとも下地絶縁膜91bとゲート電極92(ポリシリコン層92a)との界面に形成する工程である。
【0069】
前述のように、工程S4を経ることにより下地絶縁膜91b上にはポリシリコン層92aが形成されている。したがって、このポリシリコン層92aを熱酸化することにより、下地絶縁膜91bとポリシリコン層92aとの界面にポリシリコンに由来する清浄な熱酸化膜である酸化膜91aが形成される。
【0070】
この熱処理温度は、700℃以上1100℃未満であることが好ましい。熱処理温度が700℃未満であると、ポリシリコンが十分酸化されない場合があり、他方1100℃以上となると炭化珪素半導体層も酸化されてしまう場合があるからである。熱処理時間は、たとえば1時間以上2時間以下程度である。
【0071】
また熱処理に用いられる雰囲気ガスとしては、酸素(O
2)の他、酸素原子を分子中に含む気体を用いることができる。そのような気体としては、たとえばNO、N
2O、H
2O等を挙げることができる。これらの雰囲気ガスは、それぞれ単独で用いてもよいし、混合ガスとして用いてもよい。
【0072】
以上のようにして、酸化膜91aが形成されることにより、ゲート電極92とゲート絶縁膜91との界面において、従来に比しダングリングボンドが低減され、炭化珪素半導体装置の閾値電圧を安定化させることができる。
【0073】
(後工程)
以下、
図9を参照して、後工程について説明する。まず、ゲート電極92(ポリシリコン層92aおよび電極層92b)および酸化膜91aの露出面を覆うように、層間絶縁膜93が形成される。続いて、層間絶縁膜93および下地絶縁膜91bに開口部が形成されるようにエッチングが行なわれる。この開口部により、n+層83およびpコンタクト領域84の各々が露出される。そして、露出したn+層83およびpコンタクト領域84の各々に接してソース電極94が形成される。さらに単結晶基板80において、主面MPと反対側の下面上にドレイン電極98が形成される。そして再び
図1を参照して、ソース電極94上にソース配線層95が形成される。
【0074】
以上のようにして、安定した閾値電圧を有する本実施形態に係る炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0075】
<第1の変形例>
次に本実施形態の変形例について説明する。
図2に示す炭化珪素半導体装置301は、本実施形態の第1の変形例であり、
図1に示す炭化珪素半導体装置201と同様に、プレーナ構造を有する縦型MOSFETとして構成されている。
【0076】
炭化珪素半導体装置301は、ゲート電極92がポリシリコン層により構成されている点において炭化珪素半導体装置201と相違する。すなわち、炭化珪素半導体装置301においては、実質的にゲート電極92の全体がポリシリコン層である。ここで、「実質的に全体がポリシリコン層である」とは、ゲート電極92の体積のうち80%以上がポリシリコン層で占められることを示す。なお、ゲート電極92が一部にポリシリコン層と異なるものを含んでいたとしても、ゲート電極92のうち少なくともゲート絶縁膜91との界面側はポリシリコン層によって構成されているものとする。
【0077】
炭化珪素半導体装置301も、ゲート絶縁膜91とゲート電極92との界面に、ポリシリコン層に由来する酸化膜91aを有するため、安定した閾値電圧を有することができる。また、ゲート電極92の全体がポリシリコン層により構成されることによって、製造プロセスを簡易化することができる。
【0078】
<第2の変形例>
図3に示す炭化珪素半導体装置401は、本実施形態の第2の変形例である。炭化珪素半導体装置401は、酸化膜91aがゲート電極92の側部表面および上部表面上にまで延在する点において、
図2に示す炭化珪素半導体装置301と相違する。このような構成は、実質的にゲート電極92の全体がポリシリコン層により構成されることで容易に実現される。
【0079】
炭化珪素半導体装置401も、ゲート絶縁膜91とゲート電極92との界面に、ポリシリコン層に由来する酸化膜91aを有するため、安定した閾値電圧を有することができる。また、酸化膜91aがゲート電極92の側部表面および上部表面上にまで延在することにより、層間絶縁膜93とゲート電極92との界面にも清浄な熱酸化膜である酸化膜91aを有することができる。これにより、当該界面においても、不純物の蓄積が防止され、閾値電圧をより一層安定化することができる。なお同様の観点から、酸化膜91aはゲート電極92の表面全体を覆うことがより好ましい。
【0080】
<第3の変形例>
図10に示す炭化珪素半導体装置501は、本実施形態の第3の変形例である。炭化珪素半導体装置501は、トレンチゲート構造を有する縦型MOSFETとして構成されている。炭化珪素半導体装置501は、単結晶基板80と、炭化珪素半導体層100(エピタキシャル層)と、ゲート絶縁膜91と、ゲート電極92と、層間絶縁膜93と、ソース電極94と、ソース配線層95と、ドレイン電極98とを有する。
【0081】
炭化珪素半導体層100は主面MPを有し、n型(第1の導電型)を有する第1の不純物領域(nドリフト層81)と、p型(第2の導電型)を有する第2の不純物領域(pボディ層82)と、n型を有する第3の不純物領域(n+層83)と、p型を有するpコンタクト領域84とを含む。
【0082】
ここで、
図10に示すように、pボディ層82はnドリフト層81内に設けられている。また、n+層83およびpコンタクト領域84はpボディ層82内に設けられている。そして、n+層83およびpコンタクト領域84は主面MPの一部を構成している。
【0083】
そして、炭化珪素半導体層100の主面MPにはトレンチTRが設けられている。トレンチTRは、nドリフト層81が表出する底部BTと、nドリフト層81、pボディ層82およびn+層83が表出した側壁SWとを有している。そして、ゲート絶縁膜91(酸化膜91aおよび下地絶縁膜91b)は、トレンチTRの底部BTおよび側壁SW上に形成されている。ここで酸化膜91aはゲート電極92に由来する酸化膜である。さらにトレンチTR内において酸化膜91a上にはポリシリコン層により構成されるゲート電極92が設けられている。これにより、側壁SWに表出したpボディ層82に沿ってチャネル領域が形成される。
【0084】
ソース電極94は、n+層83およびpコンタクト領域84の各々に接して、n+層83およびpコンタクト領域84上に設けられている。また層間絶縁膜93は、ゲート電極92の上方においてゲート絶縁膜91(酸化膜91aおよび下地絶縁膜91b)を覆うように形成されている。さらにソース配線層95は層間絶縁膜93およびソース電極94に接して、これらの上に形成されている。ドレイン電極98は炭化珪素半導体層100の主面MPとは反対の下面に単結晶基板80を介して設けられている。
【0085】
以上のように、炭化珪素半導体装置501においても、ゲート電極92はゲート絶縁膜91との界面側にポリシリコン層を有し、さらにゲート絶縁膜91は、ゲート絶縁膜91とゲート電極92(ポリシリコン層)との界面に、ポリシリコン層に由来する酸化膜91aを有している。すなわち、炭化珪素半導体装置501はトレンチゲート構造を有し、ゲート絶縁膜91とゲート電極92との界面においてダングリングボンドが低減され、かつ安定した閾値電圧を有する炭化珪素半導体装置である。
【0086】
なお第3の変形例においては、トレンチTRを、傾斜した側壁SWと平坦面である底部BTとを有し、台形状の断面形状を有するものとして説明したが、トレンチTRの断面形状はこれに限定されず、たとえば
図11に示すような矩形状であってもよいし、
図12に示すようにV字形状であってもよい。またあるいは、トレンチTRの断面形状は、
図13に示すように底部BTが平坦面ではないU字状であってもよい。
【0087】
以上のように本実施形態に係わる炭化珪素半導体装置を、MOSFETを例示して説明したが、本実施形態はこれに限定されず、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよく、IGBTであっても上記と同様の効果が示される。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を用いて本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0089】
<実施例>
以下のようにして実施例に係る炭化珪素半導体装置Aを製造した。
【0090】
(工程S1)
まず、SiC単結晶からなり、厚さ300μmである単結晶基板80を準備した。単結晶基板80は、(0001)面に対して4°のオフ角度を有するものであった。
【0091】
次いで
図4を参照して、原料ガスとしてSiH
4とC
3H
8との混合ガスを、キャリアガスとしてH
2を用いたCVD法によって、単結晶基板80上に厚さ15μmの炭化珪素半導体層100(nドリフト層81)を成長させた。
【0092】
次いで、
図5を参照して、注入マスク(図示せず)を用いたイオン注入によってnドリフト層81内に、pボディ層82、n+層83およびpコンタクト領域84を形成した。各層または領域における不純物(ドナーまたはアクセプタ)の濃度は、nドリフト層81(N濃度:7×10
15/cm
3)、pボディ層82(Al濃度:5×10
16/cm
3)、n+層(P濃度:2×10
19/cm
3)、pコンタクト領域(Al濃度:7×10
19/cm
3)である。続いて、Ar雰囲気中において、1700℃で30分間熱処理を行なうことにより注入された不純物を活性化した。以上のようにして炭化珪素半導体層100を準備した。
【0093】
(工程S2)
次に
図6を参照して、炭化珪素半導体層100を、O
2を含む雰囲気中1300℃で1時間熱処理することにより、炭化珪素半導体層100に由来するSiO
2膜である厚さ45nmの下地絶縁膜91bを形成した。
【0094】
(工程S3)
続いて、NOを含む雰囲気中1400℃で1時間熱処理することにより、炭化珪素半導体層100と下地絶縁膜91bとの界面に窒素を導入した。炭化珪素半導体層100と下地絶縁膜91bとの界面から10nm以内の領域における窒素濃度をSIMSによって測定したところ、窒素濃度は1×10
21/cm
3以上であった。
【0095】
(工程S4)
次に
図7を参照して下地絶縁膜91b上に厚さ300nmのポリシリコン層92aと厚さ100nmのAl層(電極層92b)とからなるゲート電極92をCVD法によって形成した。
【0096】
(工程S5)
続いて
図8を参照して、厚さ5nmのポリシリコン層92aを熱酸化することにより、厚さ10nmの酸化膜91aを形成した。このときの熱酸化は、O
2を含む雰囲気中900℃で1時間行なった。
【0097】
その後、
図9および
図1を参照して、層間絶縁膜93、ソース電極94、ソース配線層95およびドレイン電極98を形成することにより、実施例に係る炭化珪素半導体装置Aを得た。なお炭化珪素半導体装置Aにおいて、ゲート絶縁膜91のうちポリシリコン層92aと接する部分は、厚さ40nmの下地絶縁膜91bと厚さ10nmの酸化膜91aとから構成され、合計50nmの厚さを有している。
【0098】
<比較例>
工程S2において厚さ50nmの下地絶縁膜を形成し、工程S3および工程S5を行なわない以外は炭化珪素半導体装置Aと同様にして、比較例に係る炭化珪素半導体装置Bを製造した。すなわち、比較例に係る炭化珪素半導体装置Bでは、ゲート絶縁膜(厚さ50nm)は炭化珪素半導体層に由来する酸化珪素膜のみから構成されており、かつゲート絶縁膜と炭化珪素半導体層との界面に窒素が導入されていない。
【0099】
<評価>
以上のようにして得た炭化珪素半導体装置AおよびBを以下のようにして評価した。
【0100】
(ナトリウム濃度の測定)
まずSIMSによって、各炭化珪素半導体装置のゲート電極92と炭化珪素半導体層100との間における不純物(Na)濃度の分布を測定した。測定結果を
図14に示す。
【0101】
図14は、炭化珪素半導体装置においてゲート電極92からゲート絶縁膜91を通って炭化珪素半導体層100に至る領域のNa濃度の分布を示すグラフである。
図14中、横軸は測定対象位置の基準点からの深さ(たとえば、
図1等の縦方向の位置)を示し、縦軸は測定対象位置でのNa濃度(単位:atoms/cm
3)を示す対数軸である。ここで、深さが0.15μm以上0.25μm未満の領域はゲート電極92(ポリシリコン層)に相当し、深さが0.25μm以上0.30μm以下の領域はゲート絶縁膜91(酸化膜91aおよび下地絶縁膜91b)に相当し、深さが0.30μmを超える領域は炭化珪素半導体層100に相当する。また
図14中の実線は実施例に係る炭化珪素半導体装置Aでの測定結果を示し、点線は比較例に係る炭化珪素半導体装置Bでの測定結果を示している。なお
図14中、横軸の一目盛は0.01μm(10nm)である。
【0102】
図14に示すように、実施例に係る炭化珪素半導体装置Aでは深さが0.15μm以上0.40μm以下の領域の全域に亘って、Na濃度が1×10
16/cm
3以下である。特に、ゲート電極92とゲート絶縁膜91(酸化膜91a)との界面(
図14中において深さ0.25μmの位置)から±10nm以内の領域におけるNa濃度が1×10
16/cm
3以下となっている。この理由は、実施例に係る炭化珪素半導体装置Aでは、ポリシリコン層に由来する酸化膜91aが形成されることにより、この界面周辺に不純物が蓄積し難くなったためであると考えられる。
【0103】
これに対して、比較例に係る炭化珪素半導体装置Bでは、深さが0.25μmである近傍(すなわちゲート電極とゲート絶縁膜の界面近傍)で、Na濃度は1×10
17/cm
3を超える大きなピークを示している。これはゲート電極とゲート絶縁膜との界面近傍(特に界面から±10nmの領域)に多量のダングリングボンドが存在しており、該ダングリングボンドに不純物であるNaがトラップされた結果であると考えられる。
【0104】
次に、ゲート絶縁膜91と炭化珪素半導体層100との界面について考察する。当該界面は、
図14中で深さ0.30μmの位置に相当する。実施例に係る炭化珪素半導体層Aでは、当該界面から±10nm以内の領域におけるNa濃度が1×10
16/cm
3以下となっている。これは、ゲート絶縁膜91(下地絶縁膜91b)と炭化珪素半導体層100との界面に窒素が導入されたことにより、当該界面周辺のダングリングボンドが終端化され、不純物(Na)が蓄積し難くなった結果であると考えられる。
【0105】
これに対して、比較例に係る炭化珪素半導体装置Bでは、深さ0.30μmの近傍で、Na濃度は1×10
17/cm
3を超える大きなピークを示している。これはゲート絶縁膜と炭化珪素半導体層との界面近傍(特に界面から±10nmの領域)に多量のダングリングボンドが存在しており、該ダングリングボンドに不純物であるNaがトラップされた結果であると考えられる。
【0106】
また以上の結果の中で、特筆すべき点として実施例に係る炭化珪素半導体装置Aでは、ゲート絶縁膜91中(すなわち深さ0.25μm以上0.30μm以下の領域)の全域に亘ってNa濃度が1×10
16/cm
3以下であることが挙げられる。このようにゲート絶縁膜91中のNa濃度が1×10
16/cm
3以下となった理由は、上記のように特に不純物が蓄積しやすい部分であるゲート電極92とゲート絶縁膜91との界面、およびゲート絶縁膜91と炭化珪素半導体層100との界面の両方においてNaの蓄積が防止されたことにより、両界面に挟まれる領域においてもNaの存在量が低下したものと考えることができる。
【0107】
(耐久試験)
次に各炭化珪素半導体装置の閾値電圧の安定性を、高温における連続動作試験(耐久試験)によって評価した。すなわち、150℃の環境下において各炭化珪素半導体装置に−10Vのゲート電圧を連続印加し、閾値電圧の変動量を測定した。測定結果を
図15に示す。
【0108】
図15は、耐久試験におけるゲート電圧の印加時間(単位:hour)と閾値電圧の変動量(単位:V)の関係を示すグラフである。
図15中の白抜き丸で表わされる凡例および実線は実施例に係る炭化珪素半導体装置Aでの測定結果を示し、黒丸で表わされる凡例および点線は比較例に係る炭化珪素半導体装置Bでの測定結果を示している。
【0109】
図15に示すように、比較例の炭化珪素半導体装置Bでは、試験開始当初から閾値電圧が低下していき、100時間経過後には当初の閾値電圧から4V近くマイナス側へシフトしていた。
【0110】
これに対し、実施例に係る炭化珪素半導体装置Aでは、閾値電圧は試験開始からほぼ一定のまま推移し、100時間経過後も変動量はほぼゼロであった。このような結果が得られた理由は、実施例に係る炭化珪素半導体装置Aでは、ゲート電極から炭化珪素半導体装置に至る領域において不純物(Na)濃度が1×10
16/cm
3以下であったからであると考えられる。
【0111】
以上の評価結果から、炭化珪素半導体層100と、炭化珪素半導体層100上に形成されたゲート絶縁膜91と、ゲート絶縁膜91上に設けられたゲート電極92と、を備え、ゲート電極92は、少なくともゲート絶縁膜91との界面側にポリシリコン層92aを有し、さらにゲート絶縁膜91は、ゲート絶縁膜91とゲート電極92のポリシリコン層92aとの界面に、ポリシリコン層92aに由来する酸化膜91aを有する実施例に係る炭化珪素半導体装置は、安定した閾値電圧を有する炭化珪素半導体装置であることが確かめられた。
【0112】
そして、この実施例に係る炭化珪素半導体装置は、炭化珪素半導体層100と、炭化珪素半導体層100上に形成されたゲート絶縁膜91と、ゲート絶縁膜91上に設けられたゲート電極92と、を備え、ゲート絶縁膜91中のナトリウム濃度が、1×10
16/cm
3以下であり、以って安定した閾値電圧を有する炭化珪素半導体装置である。
【0113】
以上のように本発明の実施形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施形態、各変形例および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。