特許第6237056号(P6237056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237056
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】遠心圧縮機および過給機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20171120BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F04D29/44 P
   F04D29/44 X
   F04D29/66 H
   F04D29/66 N
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-201054(P2013-201054)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-68192(P2015-68192A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 友一
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−060878(JP,A)
【文献】 特開2008−309029(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0267765(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第04213047(DE,A1)
【文献】 特開2012−184751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の端部に固定されたコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラが収容されるコンプレッサハウジングと、
前記コンプレッサハウジングに設けられ、前記回転軸の延長線上に延在するとともに、前記コンプレッサインペラの正面側に位置する吸気空間と、
前記コンプレッサインペラに対して前記回転軸の径方向外側に設けられ、前記吸気空間から吸引されて該コンプレッサインペラによって圧縮された流体を、該コンプレッサハウジングの外に導く下流側流路と、
一端が前記下流側流路を形成する前記コンプレッサハウジングの壁面に開口し、他端が前記吸気空間を形成する該コンプレッサハウジングの壁面に開口し、該下流側流路に導かれた流体を該下流側流路から該吸気空間へ還流させる戻り流路と、
前記吸気空間において前記コンプレッサインペラと前記回転軸の軸方向に離隔して設けられ、前記コンプレッサハウジング外から流体が導かれる流路を形成する内周面のうち、該流体の流れ方向の下流端が、前記戻り流路の他端が開口する該コンプレッサハウジングの壁面よりも、回転軸の径方向内側に位置する導入部と、
を備えることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記導入部は、流体の流れ方向の上流側から下流側に向かって内径が縮小する縮径部で構成されることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記導入部よりも前記回転軸の径方向外側であって、かつ、前記戻り流路のうち前記吸気空間側の開口よりも該回転軸の径方向内側には、該回転軸の回転方向に環状に延在する環状路が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記環状路は、前記戻り流路のうち前記吸気空間側の開口よりも、前記導入部の上流端側に延在し、かつ、該導入部の上流端側から下流端側に向かって、前記回転軸の径方向における断面積が拡大することを特徴とする請求項3に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記戻り流路のうち前記吸気空間側の開口は、前記導入部と、前記回転軸の径方向に少なくとも一部が重なっていることを特徴とする請求項3または4に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記導入部は、前記コンプレッサハウジングに着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項7】
前記吸気空間内であって、前記導入部の下流端よりも前記コンプレッサインペラ側には、前記回転軸の回転方向に環状に延在する隔壁が設けられ、
前記隔壁の外周面と、前記吸気空間を形成する前記コンプレッサハウジングの壁面との間には、前記コンプレッサインペラ側から前記導入部側に向かって前記流体を導く還流路が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項8】
前記請求項1から7のいずれか1項に記載の遠心圧縮機を備えたことを特徴とする過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮後の空気の一部を上流側に還流させるための戻り流路が形成される遠心圧縮機および過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一端にタービンインペラが設けられ他端にコンプレッサインペラが設けられたシャフトが、ベアリングハウジングに回転自在に保持された過給機が知られている。こうした過給機をエンジンに接続し、エンジンから排出される排気ガスによってタービンインペラを回転させるとともに、このタービンインペラの回転によって、シャフトを介してコンプレッサインペラを回転させる。
【0003】
このような過給機においては、コンプレッサインペラの回転に伴い空気を圧縮してエンジンに送出するが、過給機を搭載した車などにおいてアクセルオフをしたときなどにエンジンのスロットルバルブが閉じられると、過給圧が上昇するとともに空気流量が減少する。その結果、流体の圧力や流量が大きく変動し(サージ)、音が発生してしまう場合がある。そこで、例えば、特許文献1のように、コンプレッサインペラが収容されたコンプレッサハウジングにおいて、コンプレッサインペラの上流と下流を連通する戻り流路を設け、当該戻り流路をエアバイパスバルブによって開閉する構成が普及している。この構成を採用すると、過給圧が上昇するとき、エアバイパスバルブを開いて圧縮後の空気の一部をコンプレッサインペラの上流側に還流させてサージを抑制することができる。このような戻り流路は、過給機に限らず、遠心圧縮機全般に適用可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−279677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した戻り流路を設けた遠心圧縮機において、戻り流路を通ってコンプレッサインペラの下流から上流に還流した空気は、コンプレッサインペラの上流における空気の主流に合流する。そのため、還流した空気が主流に干渉し、主流を乱す場合がある。主流が乱れると、運転条件によっては空気の流れに伴う音が大きくなり、静音性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、戻り流路を設けてサージを抑えつつ、静音性を向上することが可能な遠心圧縮機および過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の遠心圧縮機は、回転軸の端部に固定されたコンプレッサインペラと、コンプレッサインペラが収容されるコンプレッサハウジングと、コンプレッサハウジングに設けられ、回転軸の延長線上に延在するとともに、コンプレッサインペラの正面側に位置する吸気空間と、コンプレッサインペラに対して回転軸の径方向外側に設けられ、吸気空間から吸引されてコンプレッサインペラによって圧縮された流体を、コンプレッサハウジングの外に導く下流側流路と、一端が下流側流路を形成するコンプレッサハウジングの壁面に開口し、他端が吸気空間を形成するコンプレッサハウジングの壁面に開口し、下流側流路に導かれた流体を下流側流路から吸気空間へ還流させる戻り流路と、吸気空間においてコンプレッサインペラと回転軸の軸方向に離隔して設けられ、コンプレッサハウジング外から流体が導かれる流路を形成する内周面のうち、流体の流れ方向の下流端が、戻り流路の他端が開口するコンプレッサハウジングの壁面よりも、回転軸の径方向内側に位置する導入部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
導入部は、流体の流れ方向の上流側から下流側に向かって内径が縮小する縮径部で構成されてもよい。
【0009】
導入部よりも回転軸の径方向外側であって、かつ、戻り流路のうち吸気空間側の開口よりも回転軸の径方向内側には、回転軸の回転方向に環状に延在する環状路が設けられていてもよい。
【0010】
環状路は、戻り流路のうち吸気空間側の開口よりも、導入部の上流端側に延在し、かつ、導入部の上流端側から下流端側に向かって、回転軸の径方向における断面積が拡大してもよい。
【0011】
戻り流路のうち吸気空間側の開口は、導入部と、回転軸の径方向に少なくとも一部が重なっていてもよい。
【0012】
導入部は、コンプレッサハウジングに着脱自在に設けられてもよい。
【0013】
吸気空間内であって、導入部の下流端よりもコンプレッサインペラ側には、回転軸の回転方向に環状に延在する隔壁が設けられ、隔壁の外周面と、吸気空間を形成するコンプレッサハウジングの壁面との間には、コンプレッサインペラ側から導入部側に向かって流体を導く還流路が形成されていてもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の過給機は、上記の遠心圧縮機を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、戻り流路を設けてサージを抑えつつ、静音性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】過給機の概略断面図である。
図2】コンプレッサハウジングおよび縮径部の分解斜視図である。
図3図1の一点鎖線部分の抽出図である。
図4】貫通路を説明するための説明図である。
図5】第2変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
以下の実施形態では、遠心圧縮機の一例として、遠心圧縮機と同様の構成部を含む過給機を例に挙げて説明する。初めに、過給機の概略的な構成について説明した後、過給機の遠心圧縮機側の構成について詳述する。
【0019】
図1は、過給機Cの概略断面図である。以下では、図1に示す矢印L方向を過給機Cの左側とし、矢印R方向を過給機Cの右側として説明する。図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備えて構成される。この過給機本体1は、ベアリングハウジング2と、ベアリングハウジング2の左側に締結機構3によって連結されるタービンハウジング4と、ベアリングハウジング2の右側に締結ボルト5によって連結されるコンプレッサハウジング6と、が一体化されて形成されている。
【0020】
ベアリングハウジング2のタービンハウジング4近傍の外周面には、ベアリングハウジング2の径方向に突出する突起2aが設けられている。また、タービンハウジング4のベアリングハウジング2近傍の外周面には、タービンハウジング4の径方向に突出する突起4aが設けられている。ベアリングハウジング2とタービンハウジング4は、突起2a、4aを締結機構3によってバンド締結して固定される。締結機構3は、突起2a、4aを挟持する締結バンド(Gカップリング)で構成される。
【0021】
ベアリングハウジング2には、過給機Cの左右方向に貫通する軸受孔2bが形成されており、この軸受孔2bに収容された軸受7によって、シャフト8(回転軸)が回転自在に軸支されている。シャフト8の一端にはタービンインペラ9が一体的に固定されており、このタービンインペラ9がタービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、シャフト8の他端(端部8a)にはコンプレッサインペラ10が一体的に固定されており、このコンプレッサインペラ10がコンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0022】
コンプレッサハウジング6には、過給機Cの右側に開口するとともに不図示のエアクリーナに接続される吸気空間11が形成されている。吸気空間11は、シャフト8の軸方向の延長線上に延在するとともに、コンプレッサインペラ10の正面側に位置する。吸気空間11には、コンプレッサインペラ10の回転によって、コンプレッサハウジング6外からコンプレッサインペラ10の正面に向かって流体(例えば空気)が吸引される吸気流路11aが形成される。また、吸気空間11には、コンプレッサインペラ10に向かって内径が漸減するテーパ部11bが形成される。ここで、コンプレッサインペラ10は、シャフト8の軸方向のタービンインペラ9側が背面であって、その反対側が正面となっている。
【0023】
また、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6とが連結された状態では、これら両ハウジング2、6の対向面によって、流体を昇圧するディフューザ流路12が形成される。このディフューザ流路12は、シャフト8の径方向内側から外側に向けて環状に形成されており、上記の径方向内側において、コンプレッサインペラ10を介して吸気空間11に連通している。
【0024】
また、コンプレッサハウジング6には、ディフューザ流路12よりもシャフト8の径方向外側に位置する環状のコンプレッサスクロール流路13(下流側流路)が設けられている。コンプレッサスクロール流路13は、不図示のエンジンの吸気口と連通するとともに、ディフューザ流路12にも連通している。したがって、コンプレッサインペラ10が回転すると、コンプレッサハウジング6外から吸気空間11に流体が吸引される。そして、当該吸引された流体は、コンプレッサインペラ10の翼間を流通する過程において遠心力の作用により増速され、ディフューザ流路12およびコンプレッサスクロール流路13で昇圧される。
【0025】
こうして、吸気空間11から吸引されてコンプレッサインペラ10によって圧縮された流体は、コンプレッサインペラ10に対してシャフト8の径方向外側に設けられたコンプレッサスクロール流路13および排気流路14(下流側流路)から排気口15を通ってコンプレッサハウジング6外に導かれて、排気口15に連設されたエンジンの吸気口に吐出されることとなる。
【0026】
タービンハウジング4には、過給機Cの左側に開口するとともに不図示の排気ガス浄化装置に接続される吐出口16が形成されている。また、タービンハウジング4には、流路17と、この流路17よりもシャフト8の径方向外側に位置する環状のタービンスクロール流路18とが設けられている。タービンスクロール流路18は、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれるガス流入口と連通するとともに、上記の流路17にも連通している。したがって、ガス流入口からタービンスクロール流路18に導かれた排気ガスは、流路17およびタービンインペラ9を介して吐出口16に導かれるとともに、その流通過程においてタービンインペラ9を回転させることとなる。そして、上記のタービンインペラ9の回転力は、シャフト8を介してコンプレッサインペラ10に伝達されることとなり、コンプレッサインペラ10の回転力によって、上記のとおりに、流体が昇圧されてエンジンの吸気口に導かれることとなる。
【0027】
ところで、過給機Cを搭載した車などにおいてアクセルオフをしたときなどにエンジンのスロットルバルブが閉じられると、過給圧が上昇するとともに流量が減少する。その結果、サージが生じ、音が発生してしまう場合がある。そこで、コンプレッサハウジング6には、圧縮後の流体の一部を上流側に還流させる機構が設けられている。
【0028】
具体的に、過給機本体1には、その右側からコンプレッサハウジング6に穴19が開けられる。また、この穴19とコンプレッサスクロール流路13との間には、穴19の底面に位置するコンプレッサハウジング6の壁面6aから、コンプレッサスクロール流路13を形成するコンプレッサハウジング6の壁面6bまで貫通する貫通路20が設けられている。
【0029】
さらに、穴19と吸気空間11との間には、穴19の内周面に位置するコンプレッサハウジング6の壁面6cから、吸気空間11の内周面を形成するコンプレッサハウジング6の壁面6dまで貫通する貫通路21が形成されている。
【0030】
戻り流路22は、穴19と貫通路20、21によって構成される。戻り流路22の一端22aは、コンプレッサスクロール流路13を形成するコンプレッサハウジング6の壁面6bに位置し、他端22bが吸気空間11を形成するコンプレッサハウジング6の壁面6dであってテーパ部11bの上流側に位置する。すなわち、戻り流路22は、壁面6bおよび壁面6dそれぞれに開口している。
【0031】
そして、戻り流路22は、コンプレッサスクロール流路13に導かれた、圧縮された流体の一部を、コンプレッサスクロール流路13から吸気空間11へ還流させる。
【0032】
エアバイパスバルブ23は、例えば、過給圧の測定値やエンジンの制御状態等に基づいて、貫通路20の穴19側の開口を開閉する電動バルブである。エアバイパスバルブ23の弁体23aは、コンプレッサハウジング6の壁面6aのうち、貫通路20の周囲近傍に位置するシート面に当接可能に配される。エアバイパスバルブ23のアクチュエータは、弁体23aを可動とし、弁体23aをシート面に当接させて貫通路20を閉じたり、弁体23aをシート面から離隔させて貫通路20を開いたりする。
【0033】
ここでは、エアバイパスバルブ23が電動バルブの場合について説明したが、エアバイパスバルブ23は、排気流路14と吸気空間11の圧力差によってダイアフラムが作動して開閉する機械式のバルブであってもよい。
【0034】
過給圧が上昇し流量が減少し過ぎる場合、エアバイパスバルブ23を開いて圧縮後の流体の一部をコンプレッサインペラ10の上流側の吸気空間11に還流させて、コンプレッサインペラ10に向かう流量を増加させることで、サージを回避することができる。
【0035】
また、吸気空間11内には、コンプレッサハウジング6と別体に形成された環状部材で構成される縮径部24(導入部)が設けられている。
【0036】
図2は、コンプレッサハウジング6および縮径部24の分解斜視図である。図2に示すように、縮径部24は、上流端24aから下流端24bに向かって内径および外径が漸減するテーパ形状に形成されている。より詳細には、縮径部24は、コンプレッサハウジング6外から流体が導かれる導入路であって、外部からコンプレッサハウジング6に導かれる流体が流通する吸気流路11aの一部を構成するが、吸気流路11aの流体の流れ方向の上流側(上流端24a側)から下流側(下流端24b側)に向かって内径および外径が縮小する。
【0037】
そして、縮径部24は、吸気空間11内に圧入されることで、コンプレッサハウジング6に固定されている。このとき、戻り流路22のうち吸気空間11側の開口(他端22b)は、縮径部24の上流端24aよりも吸気流路11aの流体の流れ方向の下流側であって、かつ、下流端24bの内周面24cよりも、シャフト8の径方向外側に位置する。
【0038】
また、縮径部24の下流端24bは、戻り流路22の他端22bと、シャフト8の径方向に一部が重なる位置関係となる。コンプレッサハウジング6および縮径部24におけるこれらの位置関係について、図3を用いてさらに詳述する。
【0039】
図3は、図1の一点鎖線部分の抽出図である。なお、図3中、流体の流れを矢印で示す。図3に示すように、戻り流路22の他端22bは、吸気空間11を構成する壁面6dに位置している。また、吸気空間11に圧入された縮径部24の外周面24dは、上流端24a側においてコンプレッサハウジング6に当接し、下流端24b側に向かうほど、シャフト8の径方向内側に突出するテーパ形状となっている。
【0040】
このように、縮径部24の下流端24bがコンプレッサハウジング6の壁面6dからシャフト8の径方向内側に突出している分、および、縮径部24の厚みの分だけ、戻り流路22の他端22bは、縮径部24の下流端24bの内周面24cよりも、シャフト8の径方向外側に位置することとなる。言い換えれば、コンプレッサハウジング6外から流体が導かれる流路を形成する縮径部24の内周面のうち、下流端24bが、戻り流路22の他端22bが開口するコンプレッサハウジング6の壁面6dよりも、シャフト8の径方向内側に位置する。
【0041】
その結果、戻り流路22の他端22bから流出した流体は、縮径部24からコンプレッサインペラ10に向かう流体の主流に合流する前に、主流の流れに沿う方向に、流れ方向が修正される。そのため、戻り流路22によって還流された流体が主流に干渉し難く、音の発生を抑えて、静音性を向上することが可能となる。その上、主流が乱れ難いことから、サージの一要因となっている流れのはく離が抑制され、サージを抑制できる流量範囲を拡大することが可能となる。
【0042】
また、縮径部24の外周面24dと、吸気空間11を形成するコンプレッサハウジング6の壁面6dとの間、すなわち、縮径部24の外周面24dよりもシャフト8の径方向外側であって、かつ、戻り流路22の他端22bよりもシャフト8の径方向内側には、シャフト8の回転方向(周方向)に環状に延在する環状路25が形成されている。
【0043】
戻り流路22の他端22bから流出した流体の一部は、一旦、環状路25に流入し、縮径部24の外周面24dに沿って、シャフト8の回転方向に流れながら、主流に合流する。主流は、コンプレッサインペラ10の回転の影響により、シャフト8の回転方向および軸方向に流れる旋回流となっており、戻り流路22の他端22bから流出した流体は、主流の流れをほとんど乱さずに、主流に合流される。
【0044】
また、環状路25は、戻り流路22の他端22bよりも、縮径部24の上流端24a(上流端)側に向かって延在し、かつ、縮径部24の上流端24a側から下流端24b側に向かって、シャフト8の径方向における断面積が拡大している。
【0045】
戻り流路22の他端22bから流出し、環状路25に流入した流体は、断面積の大きな方向に向かって流れ易い。すなわち、主流の流れの下流側に向かって流れ易くなる。そのため、環状路25から主流の流れに合流する流体によって、主流が乱される影響をさらに抑制することが可能となる。
【0046】
また、戻り流路22の他端22bは、縮径部24と、シャフト8の径方向(図3中、上下方向であって、軸方向に垂直な方向)に一部が重なっている。すなわち、縮径部24に対し、シャフト8の径方向外側に、戻り流路22の他端22bが位置している。ここでは、戻り流路22の他端22bは、縮径部24のうちの下流端24bと、シャフト8の径方向に一部が重なっている。言い換えれば、戻り流路22の他端22bは、縮径部24のうちの下流端24bと、シャフト8の軸方向の位置が一部重なっている。
【0047】
その結果、戻り流路22の他端22bから流出した流体の一部は、縮径部24の外周面24dに当たって流速が低下するとともに、外周面24dに沿って環状路25を流れ易くなる。そのため、戻り流路22の他端22bから流出した流体による主流の乱れがさらに抑制される。
【0048】
また、上述したように、縮径部24は、コンプレッサハウジング6と別部材であって、コンプレッサハウジング6に着脱自在に設けられている。そのため、縮径部24をコンプレッサハウジング6と一体に形成する場合に比べ、上述したように、戻り流路22の他端22bを、縮径部24の下流端24bの内周面24cよりも、シャフト8の径方向外側に位置するような加工が容易となる。
【0049】
その上、上述したように、縮径部24とコンプレッサハウジング6を別部材とし、上述した環状路25を形成することで、縮径部24とコンプレッサハウジング6との接触面積が小さくなり、縮径部24の圧入が容易となる。
【0050】
さらに、戻り流路22を構成する貫通路21についても、主流を乱さないような工夫がなされる。具体的には、まず、貫通路21は、吸気空間11を構成する壁面6d側に向かって、シャフト8の軸方向の流路幅が大きく形成されている。
【0051】
図4は、貫通路21を説明するための説明図であり、図3のIV‐IV線断面の形状を簡略化して示す。図4では、縮径部24は図示を省略する。図4(a)に示すように、貫通路21は、吸気空間11を構成する壁面6d側に向かって、シャフト8の軸方向に垂直な面方向(IV‐IV線断面の面方向)の流路幅も大きく形成されている。
【0052】
このように、貫通路21は、吸気空間11を構成する壁面6d側に向かって、流体の流れ方向に垂直な流路断面積が大きく形成されている。そのため、貫通路21を流れる流体は、流速が減速して主流の流れを乱し難くなる。
【0053】
また、図4(b)に示す第1変形例のように、吸気空間11の主流に生じる旋回流の流れ方向に沿って、シャフト8の径方向に対して、貫通路31を傾斜させて延在させてもよい。このような構成であっても、貫通路21を流れる流体は、旋回流に沿って主流に合流するため、主流の流れを乱し難くなる。
【0054】
また、図3に示すように、本実施形態では、貫通路21は、シャフト8の径方向に平行に延在する場合について説明したが、吸気空間11の主流におけるシャフト8の軸方向の流れに沿って、穴19(図1参照)から吸気空間11に向かって、シャフト8の軸方向にコンプレッサインペラ10に近づく向きに、貫通路を傾斜させて延在させてもよい。
【0055】
図5は、第2変形例を説明するための説明図である。なお、図5中、流体の流れを矢印で示す。図5に示すように、第2変形例においては、縮径部24に加えて、隔壁40が形成されている。
【0056】
隔壁40は、吸気空間11内であって、縮径部24の下流端24bよりもコンプレッサインペラ10側に、シャフト8の回転方向に環状に延在する。隔壁40の外周面40aと、吸気空間11を形成するコンプレッサハウジング6の壁面6dとの間には還流路41が形成されている。隔壁40は、吸気空間11と還流路41を区分けする境界となっており、コンプレッサハウジング6と一体に形成される。
【0057】
還流路41は、吸気空間11のうち、コンプレッサインペラ10が位置する部分と、シャフト8の回転方向に延在する環状の連通路42によって連通している。そのため、連通路42から還流路41に流入した流体が、還流路41を通ってコンプレッサインペラ10側から縮径部24側、すなわち、主流の流れ方向の下流側から上流側に導かれる。
【0058】
そして、隔壁40と縮径部24との間に形成される隙間43から、流体が主流(吸気流路11a)に還流する。その結果、吸気流路11aを流れる主流の流量が増加し、サージが抑制される。
【0059】
また、戻り流路22の他端22bは、縮径部24のうちの下流端24bおよび隔壁40それぞれに対し、シャフト8の径方向に一部が重なっている。
【0060】
戻り流路22の他端22bから流出した流体は、還流路41を流れる流体と合流した後、隙間43から吸気流路11aに流入する。このとき、戻り流路22の他端22bから流出した流体の一部は、隔壁40の外周面40a、または、縮径部24の外周面24dに当たって流速が低下するとともに、隔壁40の外周面40a、または、縮径部24の外周面24dに沿って環状路25を流れ易くなる。そのため、戻り流路22の他端22bから流出した流体による主流の乱れがさらに抑制される。
【0061】
上述した実施形態および変形例では、コンプレッサハウジング6外から流体が導かれる流路を形成する導入部が、上流側から下流側に向かって内径が縮小する縮径部24で構成される場合について説明した。しかし、導入部としては、内径が一定であってもよいし、内周面にステップ(段差)などが形成されて上流側から下流側に向かって不連続に内径が縮小していてもよい。ただし、上述した実施形態および変形例のように、導入部を、上流側から下流側に向かって内径が縮小する縮径部24で構成することで、コンプレッサハウジング6外から導かれる流体の流れを整流し、流体の流れの乱れを抑制することが可能となる。
【0062】
また、上述した実施形態では、吸気流路11aのうち、縮径部24よりも主流の流れ方向の下流側において、上流側から下流側に向かって内径が漸減するテーパ部11bが設けられる。そのため、戻り流路22の他端22bから流出した流体が合流した後の主流は、テーパ部11bによっても整流されることから、流体の流れの乱れをさらに抑えることが可能となる。
【0063】
また、上述した実施形態および変形例では、縮径部24は、コンプレッサハウジング6に着脱自在に形成されている場合について説明したが、縮径部24は、コンプレッサハウジング6に一体形成されてもよい。なお、縮径部24の外周面24dなどにネジ山を設けるとともに、吸気空間11を形成するコンプレッサハウジング6の内壁に、縮径部24のネジ山に螺合するネジ溝を形成し、縮径部24をコンプレッサハウジング6にネジ締結によって固定してもよい。
【0064】
また、上述した実施形態および変形例では、環状路25が形成される場合について説明したが、環状路25は必須の構成ではない。
【0065】
また、上述した実施形態および変形例では、環状路25は、戻り流路22の他端22bよりも、縮径部24の上流端24a側に向かって延在し、かつ、縮径部24の上流端24a側から下流端24b側に向かって、シャフト8の径方向における断面積が拡大する場合について説明した。しかし、環状路25は、戻り流路22の他端22bよりも、縮径部24の上流端24a側に延在せずともよいし、縮径部24の上流端24a側から下流端24b側に向かって、シャフト8の径方向における断面積が拡大せず、一定または縮小していてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態および変形例では、戻り流路22の他端22bは、縮径部24と、シャフト8の径方向に少なくとも一部が重なっている場合について説明したが、戻り流路22の他端22bは、縮径部24とシャフト8の径方向に重なっていなくともよい。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、圧縮後の空気の一部を上流側に還流させるための戻り流路が形成される遠心圧縮機および過給機に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
C 過給機(遠心圧縮機)
6 コンプレッサハウジング
8 シャフト(回転軸)
8a 端部
10 コンプレッサインペラ
11 吸気空間
13 コンプレッサスクロール流路(下流側流路)
14 排気流路(下流側流路)
22 戻り流路
24 縮径部(導入部)
24a 一端(上流端)
24b 他端(下流端)
24c 内周面
25 環状路
40 隔壁
40a 外周面
41 還流路
図1
図2
図3
図4
図5