特許第6237059号(P6237059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237059多孔性金属錯体を含有する成形体、および、それを用いたフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237059
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】多孔性金属錯体を含有する成形体、および、それを用いたフィルタ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20171120BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20171120BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20171120BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08L23/08
   C08L31/04 S
   C08K3/00
   B01J20/22 A
   B01J20/34 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-204078(P2013-204078)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66512(P2015-66512A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構『グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発』「副生ガス高効率分離・精製プロセス基盤技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】増森 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】西口 靖子
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2013/035702(JP,A1)
【文献】 国際公開第2015/012068(WO,A1)
【文献】 特開2015−067749(JP,A)
【文献】 特開2011−225638(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/021658(JP,A1)
【文献】 特開2006−225579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
B01J 20/00− 20/34
B01D 53/02− 53/12
C01B 32/00− 32/991
C07B 31/00− 61/00
C07B 63/00− 63/04
C07C 1/00−409/44
C07F 1/00− 5/06
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性金属錯体を含有する成形体において、
エチレンに由来する構成単位を有する有機バインダーを含み、
前記有機バインダーがエチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体を含むことを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記成形体が、繊維状、粒状、シート状、ハニカム状である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形体を用いたフィルタ。
【請求項4】
多孔性金属錯体の細孔に溶媒を吸着させる工程、
細孔内に溶媒を有する多孔性金属錯体と有機バインダーとを混合し、成形する工程、及び
脱溶媒処理する工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の水分、有機溶剤、および、悪臭成分を効率的に分離・回収、もしくは、吸着・除去する多孔性金属錯体を含有する成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭やシリカゲル、ゼオライト等といった多孔質材料は、脱臭、空気や水の浄化、ガスの分離・精製といった様々な用途に利用されており、現代の生活に必要不可欠な材料となっている。近年、種々の配位形態を取りうる金属イオンと、二座以上の配位座を有する架橋配位子とを組み合わせて自己集合させた多孔質材料、すなわち、多孔性金属錯体(MOF)、もしくは、多孔性配位高分子(PCP)と呼ばれる新しい多孔質材料が見出された。これら多孔性金属錯体は、活性炭やシリカゲル、ゼオライト等の従来の多孔質材料に
はない特徴、すなわち、高比表面積、シャープな細孔分布、および、高い構造設計性という特徴を有しており、注目されている。また、活性炭やシリカゲル、ゼオライト等の従来の多孔質材料にはないその他の特徴として、多孔性金属錯体微粒子の細孔以外の表面部分においては、架橋配位子が金属イオンに架橋していない状態で配位しているため結合力が弱く、水蒸気が存在する雰囲気下では、その架橋配位子が水に容易に置換されるという特徴がある。特に、成形体のように多孔性金属錯体微粒子同士を結着させ、それら微粒子間の隙間が多く形成される場合には、水蒸気が存在する雰囲気下において、その隙間部分に多量の水が吸着されるため、成形体として高い耐水性が要求される。
【0003】
多孔性金属錯体を含有する成形体としては、例えば、特許文献1には、金属−有機骨格材料(MOF)を含む成形体の製造法であって、MOFを含む粉末を成形体に加工する工程を有し、その際、成形体の体積当たりの表面積対粉末の体積当たりの表面積の比が少なくとも1.6:1である、金属−有機骨格材料(MOF)を含む成形体の製造法が開示されている。また、特許文献2には、細孔と、少なくとも1種の金属イオンと、前記金属イオンに配位結合された少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物とを含有する金属有機フレームワーク材料において、材料が成形体の形であることを特徴とする金属有機フレームワーク材料が開示されている。特許文献1〜2には、成形体のバインダーとして、アルミナ水和物又は他のアルミニウム含有バインダー、ケイ素化合物とアルミニウム化合物との混合物、ケイ素化合物、チタンの酸化物、ホウ素の酸化物、リンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、粘土鉱物、アルコキシシラン、両親媒性物質等の無機化合物が例示されている。また、有機粘性増大物質、親水性ポリマーとして、例えば、セルロース、デンプン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテン、および、ポリテトラヒドロフランが例示されている。しかしながら、特許文献1〜2に例示されているような無機化合物をバインダーとして使用した場合、成形体として十分な耐水性を得るには300℃以上での焼結処理が必要であるが、前記焼結処理を施すと、多孔性金属錯体の構造が変化し、十分な吸着性能が得られないという問題がある。また、有機粘性増大物質、親水性ポリマーも一部バインダーとして機能していると考えられるが、それらでは、十分な耐水性が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−518781号公報
【特許文献2】特表2005−528204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、耐水性に優れており、十分な吸着性能を有する多孔性金属錯体を含有する成形体は見当たらないのが現状である。ここでいう耐水性とは、完全に水に浸した成形体を温度80℃条件下で24時間振とうさせた時、著しい破壊が見られないことを指す。
【0006】
本発明は上記従来技術の課題を背景になされたものであり、耐水性に優れており、十分な吸着性能を有する多孔性金属錯体を含有する成形体、および、それを用いたフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、以下の通りである。
1.多孔性金属錯体を含有する成形体において、エチレンに由来する構成単位を有する有機バインダーを含むことを特徴とする成形体。
2.前記有機バインダーがエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする上記1に記載の成形体。
3.上記1又は2に記載の成形体を用いたフィルタ。
4. 細孔内に溶媒を有する多孔性金属錯体を成形する工程、及び脱溶媒処理する工程を含むことを特徴とする、上記1又は2のいずれかに記載の成形体の製造方法である。
【0008】
なお、本明細書でいう有機溶剤とは、物質を溶解する性質をもつ有機化合物のことを指し、具体的には、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロエチレン等の塩化脂肪族炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、シクロヘキサノン等の脂環式炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トリメチルシラノール、ヘキサメチルジシラザン、環状シロキサン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等)等の含ケイ素化合物、その他として、クレゾール、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0009】
また、本明細書でいう悪臭成分とは、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、酢酸、イソ吉草酸などのカルボン酸類、アンモニア等の含窒素化合物、硫化水素、二硫化メチル、メチルメルカプタン等の含硫黄化合物等が挙げられる。
【0010】
さらに、本明細書でいう成形体とは、紡糸、造粒、押出し等の各種成形方法により、繊維状、粒状、シート状、ハニカム状に加工されたもの、および、繊維、粒状物、シート、もしくは、ハニカム等の基材上に多孔性金属錯体等の活性材料が担持されているもののことを指す。なお、ここでいう繊維とはアスペクト比(短辺:長辺)=1:1000以上のもののことを指す。また、ここでいう粒状、もしくは、粒状物とは粒子直径(短軸径)が100μm以上のもののことを指す。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多孔性金属錯体を含有する成形体は、エチレンに由来する構成単位を有する有機バインダーを含んでおり、さらに、必要に応じて、前記有機バインダーがエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体を少なくとも含むため、耐水性、および、吸着性能に優れるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における成形体は、少なくとも多孔性金属錯体と、エチレンに由来する構成単位を有する有機バインダーを含むことが必要である。エチレンに由来する構成単位を有する有機バインダーを含有することにより、十分な耐水性が得られることを本発明者は見出したからである。もし、エチレンに由来する構成単位を有する有機バインダーを含有しなければ、十分な耐水性が得られない。エチレンに由来する構成単位を有する有機バインダーとしては特に限定しないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体が好ましく、それらの混合物であってもよい。
【0013】
前記有機バインダーの成形体における含有比率、もしくは、基材に担持された成形体の場合は、その担持量に対する含有比率は、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。含有比率が5重量%未満では十分な耐水性を得ることができない場合がある。また、含有比率が30重量%以上であれば十分な吸着性能が得られない場合がある。
【0014】
前記有機バインダーのガラス転移点は−30℃〜10℃であることが好ましい。より好ましくは、−20℃〜10℃である。ガラス転移点が10℃より大きければ、バインダーとしての柔軟性に欠けるため、多孔性金属錯体の微粒子間の隙間部分に多量の水が吸着された際に生じる体積変化に追従できずに、成形体が壊れてしまい、十分な耐水性を得ることができない虞がある。また、ガラス転移点が−30℃未満であれば、有機バインダー自体の製造が困難という問題がある場合がある。前記有機バインダーのガラス転移点を調製する方法としては、特に定めないが、エチレンとガラス転移点が10℃以上の高分子化合物の単量体、例えば、ポリ酢酸ビニル(ガラス転移点:30℃)、ポリアクリル酸(ガラス転移点:85℃)を共重合させる方法が好ましい。
【0015】
本発明に係る多孔性金属錯体は、金属イオンと、架橋配位子を有する有機化合物とからなる多孔性材料である。構成する金属イオンとしては、例えば、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム等のイオンが好ましく、より好ましくは、環境面から、チタン、鉄、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムである。一方、架橋配位子としては、例えば、2−メチルイミダゾール、テレフタル酸、トリメシン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、もしくは、それらにアミノ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基等の官能基がついている化合物等が挙げられる。具体的な多孔性金属錯体としては、例えば、亜鉛イオンと2−メチルイミダゾールから構成される多孔性金属錯体(BASF社製Basolite(登録商標、以下同様) Z1200)、アルミニウムイオンとテレフタル酸から構成される多孔性金属錯体(BASF社製Basolite A100)、銅イオンとトリメシン酸から構成される多孔性金属錯体(BASF社製Basolite C300)、鉄イオンとトリメシン酸から構成される多孔性金属錯体(BASF社製Basolite F300)、銅イオン、4,4’−ビピリジン、および、テトラフルオロボレート([BF4-)から構成される多孔性金属錯体(東京化成工業社製preELM−11)等を用いることができる。水分を含むガスから有機溶剤、および、悪臭成分を効率的に分離・回収、もしくは、吸着・除去する目的で使用される場合は、疎水性の高い多孔性金属錯体が好ましい。疎水性の高い多孔性金属錯体とは、200℃、真空条件下で48時間以上の脱溶媒処理を施した後の多孔性金属錯体を、30℃、相対湿度60%RHの窒素雰囲気下に3日以上静置し、その重量増加を脱溶媒直後の多孔性金属錯体の重量で割った重量増加率が10%未満である多孔性金属錯体のことを指す。具体的には、亜鉛イオンと2−メチルイミダゾールから構成される多孔性金属錯体(BASF社製Basolite Z1200)等が好ましく用いられる。
【0016】
前記多孔性金属錯体の77K窒素吸着法によるBET比表面積は、特に制限されないが、500m/g以上であることが好ましい。もし、BET比表面積が500m/g未満であれば、十分な吸着性能が得られない場合がある。より好ましくは、1000m/g以上である。BET比表面積の上限は特に限定しないが、6000m2/g以下であることが好ましい。この範囲を超えると、製造が非常に困難になるという不都合が生じる場合があるからである。
【0017】
前記多孔性金属錯体の成形体における含有比率、基材に担持された成形体の場合はその担持量に対する含有比率は、50〜95重量%が好ましく、より好ましくは、60〜90重量%である。含有比率が50重量%未満では十分な吸着性能を得ることができない場合がある。また、含有比率が95重量%以上であれば十分な耐水性を得ることができない場合がある。
【0018】
本発明の成形体は前記多孔性金属錯体以外の多孔質材料を含んでいてもよく、前記多孔質材料については特に限定されないが、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、粘土鉱物、アルミノリン酸塩、シリコアルミノリン酸、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機高分子多孔質体等の多孔質材料が好ましい。より好ましくは、安価に入手できる活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナであり、もっとも好ましくは、活性炭、ゼオライトである。
【0019】
本発明の成形体製造における成形工程で実施される成形方法としては、特に制限されず、紡糸、造粒、押出し等の従来公知の各種成形方法を用いることができる。好ましくは、多孔性金属錯体、多孔質材料、有機バインダーの水性エマルジョン等の成形体構成材料を、水、有機溶媒又はこれらの混合物中に分散させ、シートやハニカム等の基材に塗布する方法や、多孔性金属錯体、多孔質材料、有機バインダーの水性エマルジョン等の成形体構成材料に、必要であれば、水、有機溶媒又はこれらの混合物を加えて混練し、押出し造粒機により、粒状化する方法が挙げられる。
【0020】
なお、上記多孔性金属錯体は、その細孔内に溶媒分子を有する状態で、有機バインダー等の上記成形体構成材料と混合し、成形工程に供するのが好ましい。多孔性金属錯体が細孔内に溶媒分子を有していない場合、成形体を構成する有機バインダーが、当該細孔内に吸着されてしまう虞がある。この場合、成形後、後述する脱溶媒処理を実施しても多孔性金属錯体細孔内に捕捉された有機バインダーを除去することは難しく、成形体の吸着性能が劣る結果となる。すなわち、本発明では、多孔性金属錯体の細孔に溶媒分子を吸着させておくことにより、成形工程における有機バインダー等の細孔への吸着を防止し、成形工程後、後述する脱溶媒処理により細孔内から溶媒分子を除去することにより、成形体の吸着性能を確保している。通常は、多孔性金属錯体を合成する段階で、当該多孔性金属錯体の細孔内に溶媒分子が吸着するが、多孔性金属錯体が細孔内に溶媒分子を有していない場合又は溶媒分子の吸着量が不十分である場合は、後述する実施例に記載の方法により細孔内に有機溶媒を吸着させることができる。尚、ここでいう溶媒分子とは、水や一般的な有機溶媒分子を指す。
【0021】
本発明の成形体の製造では、成形工程後に、成形体内に含まれる溶媒を除去する脱溶媒処理工程を実施する。上述の様に、前記多孔性金属錯体は、その細孔内に溶媒分子を有する状態で成形されている。したがって、多孔性金属錯体がその細孔内に溶媒分子を有する状態では、十分な吸着性能が得られ難い。よって、吸着性能を発現させるため、成形工程後に脱溶媒処理を実施する。尚、脱溶媒処理の実施時期は成形工程以降であれば特に限定されず、後述するシート化、フィルタ化以降でもよい。
【0022】
脱溶媒処理の条件は特に定めないが、温度は80℃〜200℃であることが好ましい。80℃未満では、溶媒の除去が不完全となる虞があり、十分な吸着性能が得られ難い場合がある。一方、200℃を超えると、有機バインダーの構造が壊れてしまい、成形体の形状を維持することが困難になる虞がある。より好ましくは80℃〜150℃である。また、脱溶媒処理は、減圧下で実施することで一層効率よく溶媒を除去できる。この際、圧力は特に限定されず、多孔性金属錯体の物性や配合量に応じて適宜調整すればよいが、例えば、103Pa〜10-5Paが好ましく、10-1Pa〜10-5Paであるのがより好ましい。脱溶媒処理時間も特に限定されないが、例えば1時間〜100時間とするのが好ましく、より好ましくは3時間〜48時間であり、さらに好ましくは3時間〜24時間である。尚、最も好ましい脱溶媒処理の条件は、真空条件下で100℃〜150℃、3時間〜24時間である。
【0023】
本発明におけるフィルタは多孔性金属錯体を含有する成形体を含有することが好ましい。前記フィルタの製造方法については、特に限定しないが、成形体の形状でフィルタとして用いる、もしくは、成形体をシート化した後、平面状、プリーツ状、ハニカム状に加工するという製造方法が挙げられる。プリーツ状は直行流型フィルタとしての使用において、また、ハニカム状は平行流型フィルタとしての使用において、処理する気体との接触面積を大きくして除去効率を向上させるとともに、フィルタの低圧損化を同時に図ることができる。
【0024】
本発明における成形体のシート化方法として従来公知の加工方法を用いることができる。例えば、成形体が粒状物であれば、(1)シート構成繊維と共に多孔性金属錯体を含有する成形体を水中に分散させ脱水することにより得られる湿式シート化法、(2)シート構成繊維と共に多孔性金属錯体を含有する成形体を気中分散させることにより得られるエアレイド法、(3)二層以上の不織布もしくは織布、ネット状物、フィルム、膜の層間に、熱接着により多孔性金属錯体を含有する成形体を充填する方法、(4)エマルジョン接着剤、溶剤系接着剤を利用して不織布、織布、発泡ウレタンなどの通気性材料に多孔性金属錯体を含有する成形体を結合担持させる方法、(5)基材、ホットメルト接着剤の熱可塑性等を利用して不織布、織布、発泡ウレタンなどの通気性材料に多孔性金属錯体を含有する成形体を結合担持させる方法、(6)多孔性金属錯体を含有する成形体を繊維もしくは樹脂に練りこむことにより混合一体化する方法等、用途に応じて適当な方法を用いることができる。界面活性剤、水溶性高分子等を用いる必要がなく、多孔質体自身の細孔閉塞を防止することができるため、前記加工方法(2)、(3)、(5)を用いることが好ましい。
【0025】
本発明における多孔性金属錯体を含有する成形体を用いたフィルタは、屋内、乗り物内、壁紙、家具、内装材、樹脂成形体、電気機器等で、低極性ガスを低減する目的で広く用いることができる。例えば、粒状物、シート化物、フィルタ化物を通気性の箱、袋、網等の容器に充填し、静置もしくは通気させて用いることが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示す。下記実施例は本発明方法を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。なお、実施例中で測定した特性値の評価方法を以下に示す。
【0027】
[耐水性試験(ペレット)]
造粒サンプル(粒子直径:4.75〜5.6mm)10粒を100ml三角フラスコに投入し、サンプルが完全に水につかるように水を加えた。恒温振とう器(東京理化器械社製、MMS−1)にセットし、温度80℃、振とう速度160rpm(振とう振幅25mm)条件で24時間振とうさせた。サンプルの中で壊れずに形状を維持しているものの数を数え、それを10で割ることにより、形状維持率[%]を算出した。
【0028】
[耐水性試験(ハニカム)]
ハニカムサンプル(サイズ3cm×1cm×1cm)2個を100ml三角フラスコに投入し、サンプルが完全に水につかるように水を加えた。恒温振とう器(東京理化器械社製、MMS−1)にセットし、温度80℃、振とう速度160rpm(振とう振幅25mm)条件で24時間振とうさせた。その後、ハニカムサンプルを取り出し、100℃で24時間乾燥させた後、その重量を測定した。耐水性試験後のハニカムと担持前のハニカムとの重量差を、耐水試験前のハニカムと担持前のハニカムとの重量差で割ることにより、形状維持率[%]を算出した。
【0029】
[ガラス転移点の測定]
JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」記載の方法により測定した。すなわち、示差走査熱量計装置DSC200型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器にサンプル10mg充填して、窒素ガス流量30mL/min、昇温速度20℃/minで220℃まで昇温し、10分間保持した後に取り出し室温にて急冷する。その後、再度、窒素ガス流量30ml/min、昇温速度10℃/minで220℃まで昇温してガラス転移温度を測定し、中間点ガラス転移温度をガラス転移点[℃]とした。
【0030】
[BET比表面積、細孔容積、性能維持率の測定方法]
サンプル約100mgを採取し、120℃で12時間真空乾燥した後、秤量した。自動比表面積装置ジェミニ2375(マイクロメリティックス社製)を使用し、液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で徐々に高めながら40点測定し、前記サンプルの吸着等温線を作製した。自動比表面積装置ジェミニ2375に付属の解析ソフト(GEMINI−PCW version1.01)にて、BET条件で、表面積解析範囲を0.01〜0.15に設定して、BET比表面積[cc/g]を求め、相対圧0.95のデータより全細孔容積[cc/g]を求めた。成形体サンプルの場合は、上記で得られた全細孔容積にサンプル重量を掛け合わせ、それを成形体に担持されている多孔性金属錯体の重量で割ることにより、成形体における多孔性金属錯体の単位重量当たりの全細孔容積[cc/g(PCP)]を算出した。成形体における多孔性金属錯体当たりの全細孔容積を成形前の多孔性金属錯体の全細孔容積で割ることにより性能維持率[%]を算出した。
【0031】
(実施例1)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)2.0g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0032】
(実施例2)
Basolite A100(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)2.0g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0033】
(実施例3)
Basolite C300(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをエタノール中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)2.0g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0034】
(実施例4)
Basolite F300(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)2.0g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0035】
(実施例5)
preELM−11(東京化成工業社製)を100℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをイオン交換水中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に水分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)2.0g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0036】
(実施例6)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)0.96g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0037】
(実施例7)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)4.5g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0038】
(実施例8)
preELM−11(東京化成工業社製)を100℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをイオン交換水中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に水分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−355HQ)2.0g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0039】
(実施例9)
preELM−11(東京化成工業社製)を100℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをイオン交換水中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に水分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−408HQE)2.2g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0040】
(実施例10)
Basolite C300(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをエタノール中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−900HL)1.9g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0041】
(実施例11)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−アクリル酸共重合体の水性エマルジョン(住化精化社製ザイクセンL)4.4g、および、イオン交換水18gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0042】
(実施例12)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)0.56g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0043】
(実施例13)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)9.8g、および、イオン交換水15gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0044】
(実施例14)
preELM−11(東京化成工業社製)を100℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをイオン交換水中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に水分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−752)2.2g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0045】
(比較例1)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにベントナイト(ナカライテスク社製)2.5g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0046】
(比較例2)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにポリビニルピロリドン(日本触媒社製K−90)1.1g、および、イオン交換水20gを加え、よく混練した。得られた混練物を直径5mm、高さ5mmの円筒形金型内にいれ、ペレットを成形した。得られた成形体を100℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、耐水性試験(ペレット)、および、性能維持率の測定を行った。
【0047】
実施例1〜14、比較例1〜2のサンプルに関して、耐熱性、吸着性能を測定した結果を表1に示す。表1より明らかなように、本発明である実施例1〜14は、バインダーとして無機化合物を使用した場合(比較例1)、水溶性有機バインダーの場合(比較例2)と比較して、耐水性の面で優れていることが分かる。また、実施例1〜11は、含有比率が5%未満の場合(実施例12)、バインダー含有比率が30%より大きい場合(実施例13)、エチレン−酢酸ビニル共重合体においてガラス転移点が10℃より大きい場合(実施例14)と比較して、耐水性、吸着性能の両面で優れていることが分かる。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例15)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)2.0g、および、イオン交換水60gを加え、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。
続いて、厚さ0.05mmのセルロース紙、および、バインダーとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョン(住化ケムテックス社製スミカフレックスS−400HQ)を用いてハニカム基材(500セル/inch2、サイズ3cm×1cm×1cm)を作製し、100℃で5時間乾燥させた後、担持前のハニカム基材の重量を測定した。前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(100℃)で3時間乾燥させ、さらに、100℃、真空条件下、24時間の脱溶媒処理を行ったところ、ハニカム成形体が得られた。担持前後のハニカムの重量差、および、多孔性金属錯体の含有比率より、多孔性金属錯体の担持量はハニカム1L当たり37gであった。得られたハニカム成形体について耐水性試験(ハニカム)、および、性能維持率の測定を行った。
【0050】
(比較例3)
Basolite Z1200(BASF社製)を150℃で24時間真空乾燥させ、室温まで窒素雰囲気下で冷却したサンプル10gをN,N−ジメチルホルムアミド中に24時間浸漬させた後、ろ過し、細孔内に溶媒分子が吸着された多孔性金属錯体サンプルを得た。続いて、多孔性金属錯体サンプルにポリビニルピロリドン(日本触媒社製K−90)1.1g、および、イオン交換水60gを加え、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。
続いて、実施例15と同様にしてハニカム成形体を作製した。多孔性金属錯体の担持量はハニカム1L当たり42gであった。得られたハニカム成形体について耐水性試験、および、性能維持率の測定を行った。
【0051】
実施例15、比較例3のサンプルに関して、耐熱性、吸着性能を測定した結果を表2に示す。表2より明らかなように、本発明である実施例15は、バインダーとして水溶性有機バインダーを用いた場合(比較例3)と比較して、耐水性の面で優れていることが分かる。
【0052】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により空気中の水分、有機溶剤、および、悪臭成分を効率的に分離・回収、もしくは、吸着・除去するができるようになり、産業界に大きく寄与することが期待できる。