(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の静電気保護回路500では、静電気によって信号配線501に付加された電荷を、導通状態となったp型トランジスター504またはn型トランジスター505を介して、高電位配線502及び低電位配線503のいずれか放電し、静電気による信号配線501の電位の変化を小さくしている。ところが、p型トランジスター504のキャリア(ホール)の移動度は、n型トランジスター505のキャリア(電子)の移動度よりも小さいため、p型トランジスター504では、n型トランジスター505と比べて、電流(電荷)が流れにくい。すなわち、p型トランジスター504は、n型トランジスター505と比べて、静電気によって付加された電荷の放電能力が弱い。
一方、上述した液晶装置では、より高品位な表示を提供するために(映像信号の電位保持特性を高めるために)、付加容量を構成する容量絶縁膜を薄膜化し、付加容量を大容量化する必要がある。当該容量絶縁膜を薄膜化すると付加容量の静電気に対する耐性が低下するため、静電気の影響、すなわち静電気による信号配線501の電位の変化をさらに小さくする必要がある。
しかしながら、p型トランジスター504は、静電気によって付加された電荷の放電能力が弱いため、静電気によって付加された電荷を素早く放電し、静電気による信号配線501の電位の変化をさらに小さくすることが難しく、付加容量を構成する容量絶縁膜を薄膜化した場合に、静電気によって付加容量に回復不能な静電ダメージが生じる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る電気光学装置は、第1の端子と、前記第1の端子に電気的に接続される第1の配線と、前記第1の配線に電気的に接続される第1の静電気保護回路と、を含み、前記第1の静電気保護回路は、n型トランジスターとp型トランジスターと、を含み、前記n型トランジスターのゲートと前記n型トランジスターのソース及びドレインのうちの一方とは第2の配線に電気的に接続され、前記n型トランジスターのソース及びドレインのうちの他方と前記p型トランジスターのソース及びドレインのうちの一方と、は前記第1の配線に電気的に接続され、前記p型トランジスターのゲートと前記p型トランジスターのソース及びドレインの他方とは第3の配線に電気的に接続され、前記n型トランジスターの半導体層は、前記ソース及びドレインの一方となる第1の領域と、前記ソース及びドレインの他方となる第2の領域と、前記第1の領域及び前記第2の領域の間のチャネル領域と、を含み、前記第1の領域と前記チャネル領域とは接するように配置されるか、または前記第1の領域と前記チャネル領域との間に第3の領域が配置され、前記第1の領域及び前記第2の領域の不純物濃度より前記第3の領域の不純物濃度は低く、前記第1の配線は、映像信号の供給に係る信号配線であることを特徴とする。
【0009】
第1の静電気保護回路に配置されているn型トランジスターの半導体層は、ソース及びドレインの一方となる第1の領域と、チャネル領域と、ソース及びドレインの他方となる第2の領域とを備えた構成を有している。換言すれば、当該n型トランジスターは、ゲートをマスクにして不純物を打ち込むことで形成した高濃度不純物領域の半導体層を、ソース及びドレインの一方、並びにソース及びドレインの他方とし、ゲートと対向する部分の半導体層をチャネルとしたセルフアライン構造を有している。
または、第1の静電気保護回路に配置されているn型トランジスターの半導体層は、ソース及びドレインの一方となる第1の領域とチャネル領域との間、つまりソースとなる側とチャネルとなる側との間に不純物濃度が低くなった領域(低濃度不純物領域)を有している。換言すれば、当該n型トランジスターは、チャネル領域の片側に低濃度不純物領域を形成した片側LDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。
【0010】
上述したセルフアライン構造のn型トランジスター、及び片側LDD構造のn型トランジスターでは、ソースまたはドレインに対するゲートの電位が正となる電位を印加するとチャネル領域の半導体層が導通状態(オン状態)となり、ソース・ドレイン間に電流が流れる。ソースまたはドレインに対するゲートの電位が負となる電位を印加すると、チャネル領域の半導体層が非導通状態(オフ状態)となり、ソース・ドレイン間に電流が流れにくくなる。さらに、チャネル領域が非導通状態(オフ状態)となる電位よりも低い負の電位をゲートに印加すると、セルフアライン構造のn型トランジスター及び片側LDD構造のn型トランジスターは、ドレインとなる側とチャネルとなる側との間に低濃度不純物領域が設けられていないので、ドレイン端の近傍でホットキャリアが発生し、当該ホットキャリアによってソース・ドレイン間に電流が流れるようになる。詳しくは、ゲートにより低い負の電位を印加するとドレイン近傍の電界強度が増大し、ドレイン近傍が高電界領域となる。当該高電界領域に侵入したキャリアは、高電界によって加速されて大きなエネルギーを得る。一部のキャリアは、半導体層とゲート絶縁膜との間の電位障壁を乗り越えるような大きなエネルギーを有するホットキャリアとなる。当該ホットキャリアが、ゲート絶縁膜や半導体層などに存在する局在準位をトンネリングすることによって、ソース・ドレイン間に電流が流れるようになる。このため、上述したセルフアライン構造のn型トランジスター及び片側LDD構造のn型トランジスターでは、ゲートに正の電位を印加した場合、及びゲートにより低い負の電位を印加した場合の両方で、ソース・ドレイン間に電流が流れるようになる。
【0011】
静電気が第1の端子に作用し、第1の端子に電気的に接続されている第1の配線に負の電荷が付加されると、p型トランジスターのゲート及びn型トランジスターのゲートは正の電位となるので、p型トランジスターは非導通状態(オフ状態)となり、n型トランジスターは導通状態(オン状態)となる。よって、静電気によって第1の配線に付加された負の電荷は、導通状態となったn型トランジスターを介して、第2の配線の側に分配(放電)される。
【0012】
静電気が第1の端子に作用し、第1の端子に電気的に接続されている第1の配線に正の電荷が付加されると、p型トランジスターのゲート及びn型トランジスターのゲートは負の電位となるので、p型トランジスターは導通状態(オン状態)となる。n型トランジスターは、上述したゲートにより低い負の電位を印加した状態に対応し、ホットキャリアによる電流が流れる。このため、第1の配線に正の電荷が付加されると、p型トランジスター及びn型トランジスターの両方が導通状態となる。よって、第1の配線に付加された正の電荷は、導通状態となったp型トランジスター及びn型トランジスターの両方を介して、第2の配線及び第3の配線の両方に分配(放電)される。
【0013】
p型トランジスターは、n型トランジスターと比べてキャリアの移動度が小さく、電流が流れにくい(静電気で付加された電荷の放電能力が弱い)という課題を有している。本適用例の第1の静電気保護回路は、p型トランジスター及びn型トランジスターの両方が導通状態となるので、p型トランジスターだけが導通状態となる公知技術(特開2006−18165号公報)の静電気保護回路を用いた場合と比べて、静電気よって付加された正の電荷をより迅速に放電し、静電気の影響をより強く抑制することができる。
【0014】
一方、第1の配線は、映像信号の供給に係る信号配線である。信号配線である第1の配線は、サンプリング回路を介してデータ線に電気的に接続され、さらにデータ線には画素を駆動する画素トランジスターや映像信号の電位を保持するための付加容量などが電気的に接続されている。例えば、静電気によって第1の配線に電荷が付加され、第1の配線の電位が変動すると、画素トランジスターや付加容量も当該第1の配線の電位変動の影響を受け、回復不能な静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じる恐れがある。
【0015】
さらに、本適用例に係る電気光学装置では、表示の高品位化を図るために(映像信号の電位保持特性を向上させるために)、付加容量を構成する容量絶縁膜を薄膜化し、付加容量を大容量化している。このため、付加容量に回復不能な静電ダメージが発生しやすい。第1の静電気保護回路は、p型トランジスター及びn型トランジスターの両方が導通状態となるので、p型トランジスターだけが導通状態となる公知技術の静電気保護回路と比べて、静電気よって付加された電荷の放電能力に優れている。よって、本適用例に係る第1の静電気保護回路では、公知技術の静電気保護回路と比べて、静電気による第1の配線の電位の変化がさらに小さくなるので、容量絶縁膜を薄膜化し付加容量を大容量化しても、付加容量に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。
従って、本適用例に係る第1の静電気保護回路では、公知技術の静電気保護回路と比べて、静電気の影響がより強く抑制され、画素トランジスターや付加容量に回復不能な静電ダメージが生じにくくなり、電気光学装置の静電気に対する耐性(信頼性)を高めることができる。
【0016】
[適用例2]本適用例に係る電気光学装置は、第1の端子と、前記第1の端子に電気的に接続される第1の配線と、前記第1の配線に電気的に接続される第1の静電気保護回路と、を含み、前記第1の静電気保護回路は、n型トランジスターとp型トランジスターと、を含み、前記n型トランジスターのゲートと前記n型トランジスターのソース及びドレインのうちの一方とは第2の配線に電気的に接続され、前記n型トランジスターのソース及びドレインのうちの他方と前記p型トランジスターのソース及びドレインのうちの一方とは前記第1の配線に電気的に接続され、前記p型トランジスターのゲートと前記p型トランジスターのソース及びドレインの他方とは第3の配線に電気的に接続され、前記n型トランジスターの半導体層は、前記ソース及びドレインの一方となる第1の領域と、前記ソース及びドレインの他方となる第2の領域と、前記第1の領域及び前記第2の領域の間のチャネル領域と、を含み、前記第1の領域と前記チャネル領域とは接するように配置されるか、または前記第1の領域と前記チャネル領域との間に第3の領域が配置され、前記第1の領域及び前記第2の領域の不純物濃度より前記第3の領域の不純物濃度は低く、前記第1の配線は、共通電極への信号の供給に係わる共通電極配線であることを特徴とする。
【0017】
第1の静電気保護回路に配置されているn型トランジスターの半導体層は、ソース及びドレインの一方となる第1の領域と、チャネル領域と、ソース及びドレインの他方となる第2の領域とを備えた構成を有している。換言すれば、当該n型トランジスターは、セルフアライン構造を有している。
または、第1の静電気保護回路に配置されているn型トランジスターの半導体層は、ソース及びドレインの一方となる第1の領域とチャネル領域との間、つまりソースとなる側とチャネルとなる側との間に不純物濃度が低くなった領域(低濃度不純物領域)を有している。換言すれば、当該n型トランジスターは、チャネル領域の片側に低濃度不純物領域を形成した片側LDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。
【0018】
上述したセルフアライン構造のn型トランジスター、及び片側LDD構造におけるn型トランジスターでは、ソースまたはドレインに対するゲートの電位が正となる電位を印加するとチャネル領域の半導体層が導通状態(オン状態)となり、ソース・ドレイン間に電流が流れる。ソースまたはドレインに対するゲートの電位が負となる電位を印加すると、チャネル領域の半導体層が非導通状態(オフ状態)となり、ソース・ドレイン間に電流が流れにくくなる。さらに非導通状態(オフ状態)となるゲート電位よりも低い負の電位を印加すると、ドレインとなる側の近傍でホットキャリアが発生し、当該ホットキャリアによってソース・ドレイン間に電流が流れるようになる。このため、上述したセルフアライン構造のn型トランジスター及び片側LDD構造のn型トランジスターでは、ゲートに正の電位を印加した場合、及びゲートにより低い負の電位を印加した場合の両方で、ソース・ドレイン間に電流が流れるようになる。
【0019】
静電気が第1の端子に作用し、第1の端子に電気的に接続されている第1の配線に負の電荷が付加されると、p型トランジスターのゲート及びn型トランジスターのゲートは正の電位となるので、p型トランジスターは非導通状態(オフ状態)となり、n型トランジスターは導通状態(オン状態)となる。よって、静電気によって第1の配線に付加された負の電荷は、導通状態となったn型トランジスターを介して、第2の配線の側に分配(放電)される。
【0020】
静電気が第1の端子に作用し、第1の端子に電気的に接続されている第1の配線に正の電荷が付加されると、p型トランジスターのゲート及びn型トランジスターのゲートは上述したより低い負の電位の状態になるので、p型トランジスター及びn型トランジスターの両方が導通状態(オン状態)となる。よって、第1の配線に付加された正の電荷は、導通状態となったp型トランジスター及びn型トランジスターの両方を介して、第2の配線及び第3の配線の両方に分配(放電)される。
【0021】
p型トランジスターは、n型トランジスターと比べてキャリアの移動度が小さく、電流が流れにくいという課題を有している。本適用例の第1の静電気保護回路は、p型トランジスター及びn型トランジスターの両方が導通状態となるので、p型トランジスターだけが導通状態となる公知技術(特開2006−18165号公報)の静電気保護回路と比べて、静電気よって付加された正の電荷をより迅速に放電し、静電気の影響をより強く抑制することができる。
【0022】
一方、第1の配線は、共通電極への信号の供給に係わる共通電極配線である。換言すれば、第1の配線は、付加容量を構成する一対の容量電極の一方(共通電極)に電位を供給する共通電極配線である。電気光学装置では、付加容量の容量値を大きくするために、付加容量を構成する容量絶縁膜の薄膜化が図られており、静電気によって回復不能な静電ダメージ(静電気破壊)が生じやすい。
【0023】
第1の静電気保護回路は、共通電極配線である第1の配線に接続されている。第1の静電気保護回路は、p型トランジスター及びn型トランジスターの両方が導通状態となるので、p型トランジスターだけが導通状態となる公知技術の静電気保護回路と比べて、静電気よって付加された電荷の放電能力に優れている。よって、第1の静電気保護回路では、公知技術の静電気保護回路と比べて、静電気による第1の配線の電位の変化がさらに小さくなるので、容量絶縁膜を薄膜化し付加容量の容量値を大きくしても、付加容量に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。
従って、本適用例に係る第1の静電気保護回路では、公知技術の静電気保護回路と比べて、静電気の影響がより強く抑制され、画素トランジスターや付加容量に回復不能な静電ダメージが生じにくくなり、電気光学装置の静電気に対する耐性(信頼性)を高めることができる。
【0024】
[適用例3]上記適用例に記載の電気光学装置において、第2の端子と、前記第2の端子に電気的に接続される第4の配線と、前記第4の配線に電気的に接続される第2の静電気保護回路と、をさらに含み、前記第2の静電気保護回路は、n型トランジスターと、p型トランジスターと、を含み、前記n型トランジスターのゲートと前記n型トランジスターのソース及びドレインのうちの一方とは第5の配線に電気的に接続され、前記n型トランジスターのソース及びドレインのうちの他方と前記p型トランジスターのソース及びドレインのうちの一方とは前記第4の配線に電気的に接続され、前記p型トランジスターのゲートと、前記p型トランジスターのソース及びドレインの他方とは第6の配線に電気的に接続され、前記n型トランジスターの半導体層は、前記ソース及びドレインの一方となる第4の領域と、前記ソース及びドレインの他方となる第5の領域と、前記第4の領域と前記第5の領域との間のチャネル領域と、を含み、前記第4の領域と前記チャネル領域との間に第6の領域が配置され、前記第5の領域と前記チャネル領域との間に第7の領域が配置され、前記第6の領域及び前記第7の領域の不純物濃度は、前記第4の領域及び前記第5の領域の不純物濃度よりも低いことが好ましい。
【0025】
第2の静電気保護回路に配置されているn型トランジスターの半導体層は、ソースまたはドレインとなる領域(第4の領域、第5の領域)とチャネル領域との間に、不純物濃度が低くなった領域(第6の領域、第7の領域)を有している。換言すれば、第2の静電気保護回路に配置されているn型トランジスターは、チャネル領域の両端に低濃度不純物領域を形成した両側LDD構造を有している。
【0026】
両側LDD構造のn型トランジスターでは、ソースまたはドレインに対するゲートの電位が正となる電位が付加されると半導体層が導通状態(オン状態)となり、ソース・ドレイン間に電流が流れる。ソースまたはドレインに対するゲートの電位が負となる電位が印加されると、半導体層が非導通状態(オフ状態)となりソース・ドレイン間に電流(オフ電流)が流れにくくなる。両側LDD構造のn型トランジスターは、ドレインとなる側に低濃度不純物領域を有しているので、当該ドレインとなる側に設けられた低濃度不純物領域がドレイン端における電界集中を緩和する役割を有し、ホットキャリアの発生が抑制される。このため、ゲートにより低い負の電位を印加しても、ホットキャリアの発生が抑制されるので、ソース・ドレイン間に電流が流れにくい。このため、両側LDD構造のn型トランジスターでは、ゲートに正の電位が付加されると導通状態(オン状態)となり、ゲートに負の電位が印加されると非導通状態(オフ状態)となる。さらに、両側LDD構造のn型トランジスターは、チャネル領域の両端に低濃度不純物領域、つまり高抵抗領域を有しているので、セルフアライン構造のn型トランジスターまたは片側LDD構造のn型トランジスターと比べて、電流が流れる部分の抵抗が大きくなり、非導通状態(オフ状態)におけるソース・ドレイン間の電流(オフ電流)が小さくなる。
【0027】
静電気が第2の端子に作用し、第2の端子に電気的に接続されている第4の配線に負の電荷が付加されると、p型トランジスターのゲート及びn型トランジスターのゲートは正の電位となるので、p型トランジスターは非導通状態(オフ状態)となり、n型トランジスターは導通状態(オン状態)となる。よって、静電気によって第4の配線に付加された負の電荷は、導通状態となったn型トランジスターを介して第5の配線の側に分配(放電)される。静電気によって第4の配線に正の電荷が付加されると、p型トランジスターのゲート及びn型トランジスターのゲートは負の電位となるので、p型トランジスターは導通状態(オン状態)となり、n型トランジスターは非導通状態(オフ状態)となる。よって、静電気によって第4の配線に付加された正の電荷は、導通状態となったp型トランジスターを介して第6の配線の側に分配(放電)される。
【0028】
このように、第4の配線に印加された正または負の電荷は、導通状態となったn型トランジスターまたはp型トランジスターを介して、第5の配線の側または第6の配線の側に放電されるので、静電気による第4の配線の電位変動を小さくし、第4の配線に接続されているトランジスターや付加容量などに回復不能な静電ダメージ(例えば、静電破壊)を生じにくくすることができる。
【0029】
さらに、第2の静電気保護回路のn型トランジスター(両側LDD構造のトランジスター)は、第1の静電気保護回路のn型トランジスター(セルフアライン構造のトランジスター、片側LDD構造のトランジスター)と比べて、オフ電流が小さくなっている。このため、第2の静電気保護回路のn型トランジスターに接続されている第4の配線及び第5の配線は、第1の静電気保護回路のn型トランジスターに接続されている第1の配線及び第2の配線と比べて、配線間のリーク電流が小さくなるので、電気光学装置の消費電流を小さくすることができる。従って、静電ダメージが生じやすい端子と、比較的静電ダメージが生じにくい端子と、について、適切な静電保護回路を設置することができる。
【0030】
[適用例4]上記適用例に記載の電気光学装置において、前記第1の配線は、映像信号のサンプリングに係わる供給するサンプリング用トランジスターを介してデータ線に電気的に接続され、前記データ線は、付加容量に電気的に接続されることが好ましい。
【0031】
静電気によって第1の配線に付加された電荷は、サンプリング用トランジスターを介して電気的に接続されたデータ線にも影響し、データ線に電気的に接続されている付加容量に回復不能な静電ダメ―ジ(静電破壊)が生じる恐れがある。静電気によって第1の配線に付加された電荷は、第1の静電気保護回路によって、第2の配線の側及び第3の配線の側の少なくとも一方に放電されるので、第1の静電気保護回路を有していない場合と比べて第1の配線の電位変動を小さくすることができる。よって、第1の配線に電気的に接続されているデータ線の電位変動も小さくなり、データ線に電気的に接続されている付加容量に静電ダメ―ジ(静電破壊)が生じにくくなる。
【0032】
[適用例5]本適用例に係る電子機器は、上記適用例に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする。
【0033】
本適用例に係る電子機器置は、上記適用例に記載の電気光学装置を備えているので、静電気の影響が抑制され、静電気に対する耐性、すなわち電子機器の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならせしめてある。
【0036】
(実施形態1)
「液晶装置の概要」
実施形態1に係る液晶装置100は、電気光学装置の一例であり、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor;以降TFTと称す)30を備えた透過型の液晶装置である。本実施形態に係る液晶装置100は、例えば後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(ライトバルブ)として好適に使用することができるものである。
【0037】
まず、本実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置100の全体構成について、
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1は、液晶装置の構成を示す概略平面図である。
図2は、
図1のH−H’線に沿った概略断面図である。
図3(a)は液晶装置の回路図であり、同図(b)は画素の等価回路である。
【0038】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る液晶装置100は、互いに対向配置された素子基板10及び対向基板20や、これら一対の基板によって挟持された液晶層50などを有する。
【0039】
素子基板10は対向基板20よりも大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材52を介して接着され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材52は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤であり、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0040】
額縁状に配置されたシール材52の内側には、同じく額縁状に遮光膜53が設けられている。遮光膜53は、例えば遮光性の金属あるいは金属化合物などからなり、遮光膜53の内側が表示領域Eとなる。表示領域Eには、画素Pがマトリックス状に複数配置されている。
【0041】
素子基板10の複数の外部回路接続端子102が配列された第1の辺と該第1の辺に沿ったシール材52との間には、データ線駆動回路101が設けられている。該第1の辺に沿ったシール材52と表示領域Eとの間には、サンプリング回路7が設けられている。該第1の辺と直交し互いに対向する他の第2の辺、第3の辺に沿ったシール材52と表示領域Eとの間には、走査線駆動回路104が設けられている。該第1の辺と対向する他の第4の辺に沿ったシール材52と表示領域Eとの間には、2つの走査線駆動回路104を繋ぐ配線105が設けられている。さらに、データ線駆動回路101、サンプリング回路7、及び走査線駆動回路104と、外部回路接続端子102とを電気的に接続するための引回配線90が設けられている。
データ線駆動回路101は、プリチャージ回路を含んでいる。
なお、外部回路接続端子102は、本発明における「第1の端子」または「第2の端子」の一例である。
【0042】
図2に示すように、素子基板10は、基板本体10a、並びに基板本体10aの液晶層50側の面に形成されたTFT30や画素電極9a、及び画素電極9aを覆う配向膜18などを有している。基板本体10aは、例えば石英やガラスなどの透明材料で構成されている。また、TFT30や画素電極9aは画素Pの構成要素である。画素Pの詳細は後述する。
【0043】
さらに、ここでは図示しないが、素子基板10上には、データ線駆動回路101、サンプリング回路7、走査線駆動回路104の他に、後述する静電気保護回路301,302,303が設けられている。これに加えて、製造途中や出荷時の液晶装置100の品質、欠陥等を検査するための検査回路などの半導体回路が設けられていてもよい。
【0044】
対向基板20は、対向基板本体20a、並びに対向基板本体20aの液晶層50側の面に順に積層された遮光膜53、絶縁膜22、対向電極23、及び配向膜24などを有している。対向基板本体20aは、例えば石英やガラスなどの透明材料で構成されている。
なお、対向電極23は、本発明における「共通電極」の一例である。
【0045】
遮光膜53は、
図1に示すようにサンプリング回路7や走査線駆動回路104などと平面的に重なり、対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これら回路の光による誤動作を防止する役割を有している。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0046】
絶縁膜22は、例えばシリコン酸化物などの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜53を覆うように設けられている。また、絶縁膜22は、遮光膜53によって基板上に生じる凹凸を緩和する平坦化層としても機能している。
【0047】
対向電極23は、例えばITOなどの透明導電膜からなり、絶縁膜22を覆うと共に、表示領域Eに亘って形成される。対向電極23は、
図1に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により、素子基板10側の配線に電気的に接続されている。
【0048】
画素電極9aを覆う配向膜18及び対向電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて設定されており、本実施形態では、シリコン酸化物などの無機材料の斜め蒸着膜(無機配向膜)で構成されている。また、配向膜18,24は、ポリイミドなどの有機配向膜を使用してもよい。
【0049】
図3(a)に示すように、走査線駆動回路104には、外部回路から外部回路接続端子102及び走査線駆動回路用電源配線94を介して、低電位電源VSSYの電位及び高電位電源VDDYの電位が供給されている。低電位電源VSSYの電位は、接地電位(基準電位)、すなわち走査線駆動回路104に供給される電位の中で最も低い電位となっている。高電位電源VDDYの電位は、低電位電源VSSYの電位よりも高く、走査線駆動回路104に供給される電位の中で最も高い電位となっている。さらに、走査線駆動回路104には、外部回路から外部回路接続端子102及び走査線駆動回路用信号配線95を介してYクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYB、及びYスタートパルス信号DYが供給される。走査線駆動回路104は、これらの信号に基づいて走査信号G1〜Gmを順次生成して、走査線11aに出力する。
【0050】
データ線駆動回路101には、外部回路から外部回路接続端子102及びデータ線駆動回路用電源配線91を介して、低電位電源VSSXの電位及び高電位電源VDDXの電位が供給されている。低電位電源VSSXの電位は、接地電位(基準電位)、すなわちデータ線駆動回路101に供給される電位の中で最も低い電位となっている。高電位電源VDDXの電位は、低電位電源VSSXの電位よりも高く、データ線駆動回路101に供給される電位の中で最も高い電位となっている。さらに、データ線駆動回路101には、外部回路から外部回路接続端子102及びデータ線駆動回路用信号配線92を介してXクロック信号CLX、反転Xクロック信号CLXB、Xスタートパルス信号DX、データイネーブル信号ENBX1,ENBX2,ENBX3,ENBX4、及びプリチャージ信号NRGが供給される。データ線駆動回路101は、Xスタートパルス信号DXが入力されると、Xクロック信号CLX(及び反転Xクロック信号XCLXB)に基づくタイミングで、サンプリング信号S1〜Snを順次生成して出力する。
【0051】
対向電極23には、外部回路から外部回路接続端子102及び共通電極配線97を介して共通電位LCCOMが供給される。さらに、共通電位LCCOMは、共通電極配線97及び容量線60を経由して、付加容量70,75を形成する一方の電極(下部電極71,76)に供給される。
なお、共通電極配線97は、本発明における「第1の配線」の一例である。
【0052】
サンプリング回路7は、映像信号VID1〜VID6をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング用トランジスター7sを備えている。データ線6aは、サンプリング用トランジスター7sを介して、映像信号線96に接続されている。サンプリング回路7には、外部回路接続端子102及び映像信号線96を介して、映像信号VID1〜VID6の電位が供給されている。さらに、サンプリング回路7には、データ線駆動回路101からサンプリング用トランジスター7s毎にサンプリング信号S1〜Snが供給される。サンプリング回路7は、サンプリング信号S1〜Snが入力されると、サンプリング用トランジスター7sに対応するデータ線6aにサンプリング信号S1〜Snに応じて映像信号VS1〜VSnを順次供給する。
なお、映像信号線96は、本発明における「第1の配線」及び「信号配線」の一例である。
【0053】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、表示領域Eには互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線11a及び複数のデータ線6aと、走査線11aに対して平行に延在する容量線60とが設けられている。走査線11a及びデータ線6aで区分された領域に、画素電極9aと、TFT30と、付加容量70とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0054】
映像信号VS1〜VSnが供給されるデータ線6aは、TFT30のソース電極に電気的に接続されている。データ線6aに書き込む映像信号VS1〜VSnは、この順に線順次に供給してもよいし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。本実施形態では、映像信号VS1〜VSnは、6相にシリアル−パラレル展開された映像信号VID1〜VID6の夫々に対応して、6本のデータ線6aの組に対してグループ毎に供給される。映像信号の相展開数(即ち、シリアル−パラレル展開される映像信号の系列数)は、6相に限られるものでなく、例えば、9相、12相、24相などの複数相に展開された映像信号が、その相展開数に対応した数を一組としたデータ線6aの組に対して供給されるように構成してもよい。
【0055】
映像信号VID1〜VID6をデータ線6aのそれぞれ均一に供給するために、データ線6aの末端側に付加容量75が設けられ、データ線6aの配線容量の適正化が図られている。付加容量75は、データ線6aに接続された上部電極77と、容量線60に接続された下部電極76とを有している。上述したように、下部電極76には、共通電極配線97及び容量線60を介して共通電位LCCOMが供給されている。
なお、下部電極76は、本発明における「共通電極」の一例である。
【0056】
走査信号が供給される走査線11aは、TFT30のゲート電極3a(
図4参照)に接続されている。走査線11a及びゲート電極3aには、走査信号G1〜Gmが、この順に線順次で供給される。画素電極9aは、TFT30のドレイン電極に電気的に接続されている。
【0057】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号G1〜Gmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される映像信号VS1〜VSnが所定のタイミングで、TFT30を介して画素電極9aに書き込まれる構成となっている。そして、画素電極9aを介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの映像信号VS1〜VSnは、画素電極9aと液晶層50を介して対向配置された対向電極23との間で一定期間保持される。
【0058】
保持された映像信号VS1〜VSnがリークするのを防止するために、画素電極9aと対向電極23との間に形成される液晶容量と並列に付加容量70が付加されている。付加容量70は、TFT30のドレインと容量線60との間に設けられている。付加容量70は、画素電極9aに接続された上部電極73と、容量線60に接続された下部電極71とを有している。上述したように、下部電極71には、共通電極配線97及び容量線60を介して共通電位LCCOMが供給されている。
なお、下部電極71は、本発明における「共通電極」の一例である。
【0059】
このような液晶装置100は透過型であって、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも大きくて明表示となるノーマリーホワイトモードや、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも小さくて暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光学設計に応じて、光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子(図示省略)が配置されて用いられる。
【0060】
「配線の概要と静電気保護回路の配置」
次に、
図3(a)を参照して、液晶装置100に設けられている配線の概要と、本発明の特徴をなす静電気保護回路301,302,303の配置位置を説明する。
上述したように、液晶装置100は、データ線駆動回路101に電源を供給するためのデータ線駆動回路用電源配線91、データ線駆動回路101に駆動用の信号を供給するためのデータ線駆動回路用信号配線92、走査線駆動回路104に電源を供給するための走査線駆動回路用電源配線94、走査線駆動回路104に駆動用の信号を供給するための走査線駆動回路用信号配線95、サンプリング回路7に映像信号VID1〜VID6を供給するための映像信号線96、及び共通電極(対向電極23、下部電極71、下部電極76)に共通電位LCCOMを供給するための共通電極配線97などを有している。
【0061】
一方のデータ線駆動回路用電源配線91には、低電位電源VSSXの電位(低い電位)が供給され、他方のデータ線駆動回路用電源配線91には、高電位電源VDDXの電位(高い電位)が供給されている。さらに、一方の走査線駆動回路用電源配線94には、低電位電源VSSYの電位(低い電位)が供給され、他方の走査線駆動回路用電源配線94には、高電位電源VDDYの電位(高い電位)が供給されている
【0062】
低電位電源VSSXの電位が供給されているデータ線駆動回路用電源配線91、及び低電位電源VSSYの電位が供給されている走査線駆動回路用電源配線94は、本発明における「第2の配線」または「第5の配線」の一例であり、以降、低電位電源配線VSSと称す。
【0063】
高電位電源VDDXの電位が供給されているデータ線駆動回路用電源配線91、及び高電位電源VDDYの電位が供給されている走査線駆動回路用電源配線94は、本発明における「第3の配線」または「第6の配線」の一例であり、以降、高電位電源配線VDDと称す。
【0064】
走査線駆動回路用信号配線95には、Yクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYB、Yスタートパルス信号DYなどが供給されている。データ線駆動回路用信号配線92には、Xクロック信号CLX、反転Xクロック信号CLXB、Xスタートパルス信号DX、データイネーブル信号ENBX1,ENBX2,ENBX3,ENBX4、及びプリチャージ信号NRGが供給されている。映像信号線96には映像信号VID1〜VID6が供給されている。共通電極配線97には、共通電位LCCOMが供給されている。
【0065】
これらYクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYB、Yスタートパルス信号DY、Xクロック信号CLX、反転Xクロック信号CLXB、Xスタートパルス信号DX、データイネーブル信号ENBX1,ENBX2,ENBX3,ENBX4、プリチャージ信号NRG、映像信号VID1〜VID6、及び共通電位LCCOMの電位は、低電位電源配線VSSの電位と高電位電源配線VDDの電位との間にある。
データ線駆動回路用信号配線92及び走査線駆動回路用信号配線95は、本発明における「第4の配線」の一例である。
【0066】
以降の説明では、外部回路接続端子102に接続されている配線を、各配線に供給される電位の符号で称する場合がある。つまり、Yクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYB、Yスタートパルス信号DY、Xクロック信号CLX、反転Xクロック信号CLXB、Xスタートパルス信号DX、データイネーブル信号ENBX1,ENBX2,ENBX3,ENBX4、プリチャージ信号NRG、映像信号VID1〜VID6、及び共通電位VCOMが供給されている配線を、配線CLY、配線CLYB、配線DY、配線CLX、配線CLXB、配線DX、配線ENBX1,ENBX2,ENBX3,ENBX4、配線NRG、配線VID1〜VID6、及び配線LCCOMと称する場合がある。
さらに、データ線駆動回路用信号配線92、走査線駆動回路用信号配線95、映像信号線96及び共通電極配線97を、配線92、配線95、配線96、及び配線97と称する場合がある。
【0067】
本発明の特徴をなす静電気保護回路は、第1静電気保護回路301、第2静電気保護回路302、及び第3静電気保護回路303で構成される。
第1静電気保護回路301、または第2静電気保護回路302は、映像信号線96(配線VID1、配線VID2、配線VID3、配線VID4、配線VID5、配線VID6)、及び共通電極配線97(配線LCCOM)に電気的に接続されている。
【0068】
第3静電気保護回路303は、走査線駆動回路用信号配線95(配線CLY、配線CLYB、配線DY)、データ線駆動回路用信号配線92(配線CLX、配線CLXB、配線DX、配線ENBX1、配線ENBX2、配線ENBX3、配線ENBX4、配線NRG)に電気的に接続されている。
【0069】
なお、
図3では図示が省略されているが、第1静電気保護回路301と第2静電気保護回路302と第3静電気保護回路303とは、低電位電源配線VSS及び高電位電源配線VDDにも電気的に接続されている。
なお、第1静電気保護回路301及び第2静電気保護回路302は、本発明における「第1の静電気保護回路」の一例である。第3静電気保護回路303は、本発明における「第2の静電気保護回路」の一例である。
【0070】
「画素の構成」
図4は、画素を構成する各構成要素の断面的な位置関係を示す模式断面図であり、明示可能な尺度で表されている。次に、
図4を参照して、画素Pの具体的な構成を説明する。
【0071】
図4に示すように、画素Pは、基板本体10aに順に積層された、走査線11a等を含む第1層、TFT30等を含む第2層、データ線6a等を含む第3層、付加容量70等を含む第4層、及び画素電極9aや配向膜18等を含む第5層(最上層)を有している。第1層と第2層との間には下地絶縁膜12が、第2層と第3層との間には第1層間絶縁膜41が、第3層と第4層との間には第2層間絶縁膜42が、第4層と第5層との間には第3層間絶縁膜43が、それぞれ設けられており、上述した各要素が短絡することを防止している。
【0072】
(第1層の構成−走査線等−)
第1層には、タングステンシリサイドからなる走査線11aが設けられている。走査線11aを構成する材料としては、タングステンシリサイドの他に、例えばチタンナイトライドやタングステンなどを使用することができる。走査線11aは、遮光性を有し、TFT30に下側から入射しようとする光を遮り、光によるTFT30の誤動作を抑制する。
【0073】
(第2層の構成−TFT等−)
次に、第2層として、ゲート電極3aを含むTFT30が設けられている。TFT30は、導電性の多結晶シリコン及びタングステンシリサイドからなるゲート電極3a、多結晶シリコンからなる半導体層1a、及びゲート電極3aと半導体層1aとを絶縁するシリコン酸化物からなるゲート絶縁膜2によって構成されている。半導体層1aは、高濃度ソース領域1dと、チャネル領域1a’と、高濃度ドレイン領域1eと、高濃度ソース領域1dとチャネル領域1a’との間に形成された接合領域(低濃度ソース領域1b)と、チャネル領域1a’と高濃度ドレイン領域1eとの間に形成された接合領域(低濃度ドレイン領域1c)とを有している。ゲート絶縁膜2は、半導体層1a及び下地絶縁膜12を覆うように設けられている。また、ゲート電極3aは、ゲート絶縁膜2を挟んで半導体層1aのチャネル領域1a’に対向配置されている。
【0074】
(第1層と第2層との間の構成−下地絶縁膜等−)
走査線11aと半導体層1aとの間には、シリコン酸化物からなる下地絶縁膜12が設けられている。半導体層1aと接していない領域の下地絶縁膜12は、ゲート絶縁膜2で覆われている。走査線11a上の下地絶縁膜12及びゲート絶縁膜2には、コンタクトホール12cvが設けられている。このコンタクトホール12cvを埋めるようにゲート電極3aが設けられ、ゲート電極3aと走査線11aとは、コンタクトホール12cvを介して互いに接続され、同電位となっている。
【0075】
(第3層の構成−データ線等−)
第3層には、データ線6a(ソース電極6a1)及び中継電極5a(ドレイン電極5a1)が設けられている。データ線6a及び中継電極5aは、金属等の導電材料で構成され、例えばアルミニウムからなる層と窒化チタンからなる層との二層構造を有している。データ線6aとソース電極6a1とは一体形成されており、TFT30の高濃度ソース領域1dと接する部分が、ソース電極6a1となる。中継電極5aとドレイン電極5a1とは一体形成されており、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと接する部分が、ドレイン電極5a1となる。
【0076】
(第2層と第3層との間の構成−第1層間絶縁膜−)
ゲート電極3aとデータ線6aとの間には、例えばシリコン酸化物やシリコン窒化物からなる第1層間絶縁膜41が設けられている。第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ソース領域1dとソース電極6a1とが電気的に接続するためのコンタクトホール81、及びTFT30の高濃度ドレイン領域1eとドレイン電極5a1とが電気的に接続するためのコンタクトホール83が設けられている。
【0077】
(第4層の構成−付加容量等−)
第4層には、付加容量70が設けられている。付加容量70は、画素電極9aに接続され画素電位側容量電極としての上部電極73と、固定電位側容量電極としての下部電極71と、上部電極73と下部電極71とで挟まれた誘電体層72などで構成されている。この付加容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。
【0078】
上部電極73は、例えば金属等の導電材料で構成され、画素電極9aと中継電極5aとを中継接続する機能をもつ。上部電極73は、コンタクトホール89を介して画素電極9aに接続され、コンタクトホール85と中継電極5aとコンタクトホール83とを介してTFT30の高濃度ドレイン領域1eに接続されている。
下部電極71は、金属等の導電材料で構成され、例えばアルミニウムからなる層と窒化チタンからなる層との二層構造を有している。下部電極71の本線部は、走査線11aの配置方向に延在され、容量線60となる。つまり、下部電極71と容量線60とは、同電位(固定電位)になっている。
【0079】
誘電体層72としては、例えばシリコン窒化物、酸化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどの単層膜や、これら単層膜のうち少なくとも2種以上の単層膜を積層した多層膜を用いることができる。
なお、画素電極9aにおける電位保持特性を高めるためには、付加容量70を大容量化することが好ましい。このため、誘電体層72は薄膜化(例えば、数十nm程度)されている。なお、誘電体層72を薄膜化したため、付加容量70は静電気に対する耐性が弱くなっている。
なお、データ線6aの末端側に設けられた付加容量75(
図3参照)は、付加容量70と同じ工程(同じ材料)で形成されている。このため、付加容量75も、付加容量70と同様に静電気に対する耐性が弱くなっている。
【0080】
(第3層と第4層との間の構成−第2層間絶縁膜−)
データ線6a及び中継電極5aと、付加容量70との間には、例えばシリコン窒化物やシリコン酸化物などで構成される第2層間絶縁膜42が設けられている。第2層間絶縁膜42には、中継電極5aと上部電極73とを電気的に接続するためのコンタクトホール85が設けられている。
【0081】
(第5層、及び第4層と第5層との間の構成−画素電極等−)
第5層には、画素電極9aが設けられている。画素電極9aは、画素P毎に島状に形成され、画素電極9a上には配向膜18が設けられている。そして、画素電極9aと付加容量70との間には、例えばシリコン窒化物やシリコン酸化物などからなる第3層間絶縁膜43が設けられている。第3層間絶縁膜43には、画素電極9aと上部電極73とを電気的に接続するためのコンタクトホール89が設けられている。
【0082】
なお、上述した半導体回路(データ線駆動回路101、サンプリング回路7、走査線駆動回路104など)や静電気保護回路301,302,303は、上述した画素Pと同じ配線層の構造を有し、画素Pと同じ工程で(同じ機会に)形成されている。
【0083】
「静電気保護回路の概要」
図5(a)は第1静電気保護回路の回路図であり、同図(b)は第2静電気保護回路の回路図であり、同図(c)は第3静電気保護回路の回路図である。
以下、
図5を参照して、本実施形態に係る静電気保護回路301,302,303の概要を説明する。
【0084】
図5(a)に示すように、第1静電気保護回路301は、p型トランジスター310−1と、n型トランジスター330−1と、第1配線321−1と、第2配線322−1と、第3配線323−1とを有している。
【0085】
第2配線322−1は、低電位電源配線VSSに電気的に接続され、低電位電源配線VSSの電位が供給される。第3配線323−1は、高電位電源配線VDDに電気的に接続され、高電位電源配線VDDの電位が供給される。第1配線321−1は、配線96,97(映像信号線96、共通電極配線97)に接続され、低電位電源配線VSSの電位と高電位電源配線VDDの電位との間の電位が供給される。さらに、第1配線321−1は、配線96,97を介して、外部回路接続端子102に接続されている。
このように、第1静電気保護回路301では、液晶装置100が駆動時において、第2配線322−1の電位、第1配線321−1の電位、第3配線323−1の電位の順に、電位が高くなる。
【0086】
図5(b)に示すように、第2静電気保護回路302は、p型トランジスター310−2と、n型トランジスター330−2と、第1配線321−2と、第2配線322−2と、第3配線323−2とを有している。
【0087】
第2配線322−2は、低電位電源配線VSSに電気的に接続され、低電位電源配線VSSの電位が供給される。第3配線323−2は、高電位電源配線VDDに電気的に接続され、高電位電源配線VDDの電位が供給される。第1配線321−2は、配線96,97(映像信号線96、共通電極配線97)に接続され、低電位電源配線VSSの電位と高電位電源配線VDDの電位との間の電位が供給される。さらに、第1配線321−2は、配線96,97を介して、外部回路接続端子102に接続されている。
このように、第2静電気保護回路302では、液晶装置100が駆動時において、第2配線322−2の電位、第1配線321−2の電位、第3配線323−2の電位の順に、電位が高くなる。
【0088】
図5(c)に示すように、第3静電気保護回路303は、p型トランジスター310−3と、n型トランジスター330−3と、第1配線321−3と、第2配線322−3と、第3配線323−3とを有している。
【0089】
第2配線322−3は、低電位電源配線VSSに電気的に接続され、低電位電源配線VSSの電位が供給される。第3配線323−3は、高電位電源配線VDDに電気的に接続され、高電位電源配線VDDの電位が供給される。第1配線321−3は、配線92,95(データ線駆動回路用信号配線92、走査線駆動回路用信号配線95)に接続され、低電位電源配線VSSの電位と高電位電源配線VDDの電位との間の電位が供給される。さらに、第1配線321−3は、配線92,95を介して、外部回路接続端子102に接続されている。
このように、第3静電気保護回路303では、液晶装置100が駆動時において、第2配線322−3の電位、第1配線321−3の電位、第3配線323−3の電位の順に、電位が高くなる。
【0090】
なお、外部回路接続端子102は、導電部が露出しているため、静電気の影響を受けやすい。詳細は後述するが、外部回路接続端子102を介して配線92,95,96,97に静電気による電荷が付加される。配線92,95,96,97に付加された電荷は、静電気保護回路301,302,303によって低電位電源配線VSS及び高電位電源配線VDDの少なくとも一方に放電され、配線92,95,96,97に付加された電荷による配線92,95,96,97の電位変動が小さくなり、配線92,95,96,97に接続されている半導体回路(データ線駆動回路101、サンプリング回路7、走査線駆動回路104)や、付加容量70,75などに静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じにくくなる。
【0091】
p型トランジスター310−1,310−2,310−3では、高電位側がソースとなり、低電位側がドレインとなる。静電気によって第1配線321−1,321−2,321−3の電位が変動するが、以降の説明では、p型トランジスター310−1,310−2,310−3において、高電位電源配線VDDに接続されている配線(第3配線323−1,323−2,323−3)、つまり高電位側の配線(第3配線323−1,323−2,323−3)に接続されている側をソース314−1,314−2,314−3と称す。さらに、低電位側の配線(第1配線321−1,311−2,311−3)に接続されている側をドレイン315−1,315−2,315−3と称す。
【0092】
n型トランジスター330−1,330−2,330−3では、低電位側がソースとなり、高電位側がドレインとなる。静電気によって第1配線321−1,321−2,321−3の電位が変動するが、以降の説明では、n型トランジスター330−1,330−2,330−3において、低電位電源配線VSSに接続されている配線(第2配線322−1,322−2,322−3)、つまり低電位側の配線(第2配線322−1,322−2,322−3)に接続されている側をソース334−1,334−2,334−3と称す。高電位側の配線(第1配線321−1,321−2,322−3)に接続されている側をドレイン335−1,335−2,335−3と称す。
【0093】
静電気保護回路301,302,303(第1静電気保護回路301、第2静電気保護回路302、第3静電気保護回路303)では、第1配線321−1,321−2,321−3に、n型トランジスター330−1,330−2,330−3のドレイン335−1,335−2,335−3と、p型トランジスター310−1,310−2,310−3のドレイン315−1,315−2,315−3とが電気的に接続されている。第2配線322−1,322−2,322−3に、n型トランジスター330−1,330−2,330−3のゲート333−1a,333−2a,333−3aと、n型トランジスター330−1,330−2,330−3のソース334−1,334−2,334−3とが電気的に接続されている。第3配線323−1,323−2,323−3に、p型トランジスター310−1,310−2,310−3のゲート313−1a,313−2a,313−3aと、p型トランジスター310−1,310−2,310−3のソース314−1,314−2,314−3とが電気的に接続されている。
【0094】
なお、第1配線321−1,321−2,321−3に接続されているn型トランジスター330−1,330−2,330−3のドレイン335−1,335−2,335−3は、本発明における「n型トランジスターのソース及びドレインのうちの他方」の一例である。第1配線321−1,321−2,321−3に接続されているp型トランジスター310−1,310−2,310−3のドレイン315−1,315−2,315−3は、本発明における「p型トランジスターのソース及びドレインのうちの一方」の一例である。第2配線322−1,322−2,322−3に接続されているn型トランジスター330−1,330−2,330−3のソース334−1,334−2,334−3は、本発明における「n型トランジスターのソース及びドレインのうちの一方」の一例である。第3配線323−1,323−2,323−3に接続されているp型トランジスター310−1,310−2,310−3のソース314−1,314−2,314−3は、本発明における「p型トランジスターのソース及びドレインの他方」の一例である。
【0095】
このように、n型トランジスター330−1,330−2,330−3のゲート333−1a,333−2a,333−3aと、n型トランジスター330−1,330−2,330−3のソース334−1,334−2,334−3とは電気的に接続され、同電位となる。p型トランジスター310−1,310−2,310−3のゲート313−1a,313−2a,313−3aと、p型トランジスター310−1,310−2,310−3のソース314−1,314−2,314−3とは電気的に接続され、同電位となる。
【0096】
その結果、n型トランジスター330−1,330−2,330−3では、ドレイン335−1,335−2,335−3に対するゲート333−1a,333−2a,333−3a(ソース334−1,334−2,334−3)の電位によって、n型トランジスター330−1,330−2,330−3の抵抗が変化する。
【0097】
p型トランジスター310−1,310−2,310−3では、ドレイン315−1,315−2,315−3に対するゲート313−1a,313−2a,313−3a(ソース314−1,314−2,314−3)の電位によって、p型トランジスター310−1,310−2,310−3の抵抗が変化する。
【0098】
「静電気保護回路の構成」
図6(a)は第1静電気保護回路の概略平面図であり、同図(b)は同図(a)のA−A’線に沿った概略断面図である。
図7(a)は第2静電気保護回路の概略平面図であり、同図(b)は同図(a)のB−B’線に沿った概略断面図である。
図8(a)は第3静電気保護回路の概略平面図であり、同図(b)は同図(a)のC−C’線に沿った概略断面図である。
最初に、
図6(a)を参照して、第1静電気保護回路301の平面的な構成を説明する。
【0099】
図6(a)に示すように、第1静電気保護回路301では、p型トランジスター310−1とn型トランジスター330−1とが、第1配線321−1を挟んで略線対称に配置されている。
n型トランジスター330−1において、半導体層331−1は、矩形状であり、高濃度ドレイン領域331−1eとチャネル領域331−1aと高濃度ソース領域331−1dとを有している。換言すれば、高濃度ソース領域331−1d及び高濃度ドレイン領域331−1eは、チャネル領域331−1aに接するように配置されている。また、高濃度ドレイン領域331−1eがドレイン335−1となり、高濃度ソース領域331−1dがソース334−1となる。
【0100】
高濃度ソース領域331−1dの一部は第2配線322−1に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTS−1aが配置されている。高濃度ドレイン領域331−1eの一部は第1配線321−1に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTD−1aが配置されている。ゲート電極333−1は、半導体層331−1のチャネル領域331−1aと、第2配線322−1とに重なるように配置されている。半導体層331−1のチャネル領域331−1aと重なった部分のゲート電極333−1が、ゲート333−1aとなる。ゲート電極333−1は、U字形状を有し、高濃度ソース領域331−1dと重ならないようになっている。ゲート電極333−1と第2配線322−1とが重なった部分に、コンタクトホールCTG−1aが配置されている。
なお、高濃度ソース領域331−1dは、本発明における「第1の領域」の一例である。高濃度ドレイン領域331−1eは、本発明における「第2の領域」の一例である。
【0101】
p型トランジスター310−1において、半導体層311−1は、矩形状であり、高濃度ドレイン領域311−1eとチャネル領域311−1aと高濃度ソース領域311−1dとを有している。高濃度ドレイン領域311−1eがドレイン315−1となり、高濃度ソース領域311−1dがソース314−1となる。
【0102】
高濃度ドレイン領域311−1eの一部は第1配線321−1に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTD−1bが配置されている。高濃度ソース領域311−1dの一部は第3配線323−1に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTS−1bが配置されている。ゲート電極313−1は、半導体層311−1のチャネル領域311−1aと、第3配線323−1とに重なるように配置されている。半導体層311−1のチャネル領域311−1aと重なった部分のゲート電極313−1が、ゲート313−1aとなる。ゲート電極313−1は、U字形状を有し、高濃度ソース領域311−1dと重ならないようになっている。ゲート電極313−1と第3配線323−1とが重なった部分に、コンタクトホールCTG−1bが配置されている。
【0103】
次に、
図6(b)を参照して、第1静電気保護回路301の断面的な構成を説明する。
図6(b)に示すように、基板本体10aを覆う下地絶縁膜12の上に設けられた半導体層331−1,311−1は、ゲート絶縁膜2で覆われている。ゲート絶縁膜2の上には、ゲート電極3aと同じ工程で形成されたゲート電極313−1,333−1が設けられている。ゲート絶縁膜2を介して、半導体層311−1,331−1に対向配置された部分のゲート電極313−1,333−1が、ゲート313−1a,333−1aとなる。ゲート電極313−1,333−1及びゲート絶縁膜2は、第1層間絶縁膜41で覆われている。第1層間絶縁膜41の上には、データ線6aや中継電極5aと同じ工程で形成された配線321−1,322−1,323−1が設けられている。配線321−1,322−1,323−1には、第2層間絶縁膜42と第3層間絶縁膜43と配向膜18とが、順に積層されている。
【0104】
n型トランジスター330−1において、高濃度ソース領域331−1d及び高濃度ドレイン領域331−1eは、ゲート333−1aをマスクとして、ゲート絶縁膜2を介して不純物を打ち込むことで形成される。つまり、n型トランジスター330−1は、高濃度ソース領域331−1d及び高濃度ドレイン領域331−1eがゲート333−1aをマスクとして自己整合的に形成されている。そして、ゲート絶縁膜2を介して、ゲート333−1aに対向する部分の半導体層331−1が、チャネル領域331−1aとなる。
このように、n型トランジスター330−1は、ソース334−1(高濃度ソース領域331−1d)及びドレイン335−1(高濃度ドレイン領域331−1e)が自己整合的に形成されたセルフアライン構造のトランジスターである。
【0105】
次に、
図7(a)を参照して、第2静電気保護回路302の平面的な構成を説明する。
図7(a)に示すように、第2静電気保護回路302では、p型トランジスター310−2とn型トランジスター330−2とが、第1配線321−2を挟んで略線対称に配置されている。
【0106】
n型トランジスター330−2において、半導体層331−2は、矩形状であり、高濃度ドレイン領域331−2eと、チャネル領域331−2aと、低濃度ソース領域331−2bと、高濃度ソース領域331−2dとを有している。高濃度ドレイン領域331−2eがドレイン335−2となり、高濃度ソース領域331−2dがソース334−2となり、低濃度ソース領域331−2bがLDD領域(低濃度不純物領域)となる。換言すれば、低濃度ソース領域331−2bの不純物の濃度は、高濃度ソース領域331−2dの不純物の濃度及び高濃度ドレイン領域331−2eの不純物の濃度よりも低くなっている。さらに、高濃度ドレイン領域331−2eと低濃度ソース領域331−2bとの間に、チャネル領域331−2aが配置される。
なお、高濃度ソース領域331−2dは、本発明における「第1の領域」の一例である。高濃度ドレイン領域331−2eは、本発明における「第2の領域」の一例である。低濃度ソース領域331−2bは、本発明における「第3の領域」の一例である。
【0107】
高濃度ソース領域331−2dの一部は第2配線322−2に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTS−2aが配置されている。高濃度ドレイン領域331−2eの一部は第1配線321−2に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTD−2aが配置されている。ゲート電極333−2は、半導体層331−2のチャネル領域331−2aと、第2配線322−2とに重なるように配置されている。半導体層331−2のチャネル領域331−2aと重なった部分のゲート電極333−2が、ゲート333−2aとなる。ゲート電極333−2は、U字形状を有し、高濃度ソース領域331−2dと重ならないようになっている。ゲート電極333−2と第2配線322−2とが重なった部分に、コンタクトホールCTG−2aが配置されている。
このように、n型トランジスター330−2は、ソース334−2(高濃度ソース領域331−2d)とチャネル領域331−2aとの間に低濃度不純物領域(低濃度ソース領域331−2b)が設けられた片側LDD構造のトランジスターである。
【0108】
p型トランジスター310−2において、半導体層311−2は、矩形状であり、高濃度ドレイン領域311−2eとチャネル領域311−2aと高濃度ソース領域311−2dとを有している。高濃度ドレイン領域311−2eがドレイン315−2となり、高濃度ソース領域311−2dがソース314−2となる。高濃度ドレイン領域311−2eの一部は第1配線321−2に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTD−2bが配置されている。高濃度ソース領域311−2dの一部は第3配線323−2に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTS−2bが配置されている。ゲート電極313−2は、半導体層311−2のチャネル領域311−2aと、第3配線323−2とに重なるように配置されている。半導体層311−2のチャネル領域311−2aと重なった部分のゲート電極313−2が、ゲート313−2aとなる。ゲート電極313−2は、U字形状を有し、高濃度ソース領域311−2dと重ならないようになっている。ゲート電極313−2と第3配線323−2とが重なった部分に、コンタクトホールCTG−2bが配置されている。
【0109】
次に、
図7(b)を参照して、第2静電気保護回路302の断面的な構成を説明する。
図7(b)に示すように、基板本体10aを覆う下地絶縁膜12の上に設けられた半導体層331−2,311−2は、ゲート絶縁膜2で覆われている。ゲート絶縁膜2の上には、ゲート電極3aと同じ工程で形成されたゲート電極313−2,333−2が設けられている。ゲート絶縁膜2を介して、半導体層311−2,331−2に対向配置された部分のゲート電極313−2,333−2が、ゲート313−2a,333−2aとなる。ゲート電極313−2,333−2及びゲート絶縁膜2は、第1層間絶縁膜41で覆われている。第1層間絶縁膜41の上には、データ線6aや中継電極5aと同じ工程で形成された配線321−2,322−2,323−2が設けられている。配線321−2,322−2,323−2には、第2層間絶縁膜42と第3層間絶縁膜43と配向膜18とが、順に積層されている。
【0110】
次に、
図8(a)を参照して、第3静電気保護回路303の平面的な構成を説明する。
図8(a)に示すように、第3静電気保護回路303では、p型トランジスター310−3とn型トランジスター330−3とが、第1配線321−3を挟んで略線対称に配置されている。
【0111】
n型トランジスター330−3において、半導体層331−3は、矩形状であり、高濃度ドレイン領域331−3eと、低濃度ドレイン領域331−3cと、チャネル領域331−3aと、低濃度ソース領域331−3bと、高濃度ソース領域331−3dとを有している。高濃度ドレイン領域331−3eがドレイン335−3となり、高濃度ソース領域331−3dがソース334−3となり、低濃度ソース領域331−3b及び低濃度ドレイン領域331−3cがLDD領域(低濃度不純物領域)となる。換言すれば、低濃度ソース領域331−3b及び低濃度ドレイン領域331−3cの不純物濃度は、高濃度ソース領域331−3d及び高濃度ドレイン領域331−3eの不純物の濃度よりも低くなっている。
【0112】
このように、n型トランジスター330−2は、チャネル領域331−3aの両端に低濃度不純物領域(低濃度ドレイン領域331−3c、低濃度ソース領域331−3b)が設けられた両側LDD構造のトランジスターである。
なお、高濃度ソース領域331−3dは、本発明における「第4の領域」の一例である。高濃度ドレイン領域331−3eは、本発明における「第5の領域」の一例である。低濃度ソース領域331−3bは、本発明における「第6の領域」の一例である。低濃度ドレイン領域331−3cは、本発明における「第7の領域」の一例である。
【0113】
高濃度ソース領域331−3dの一部は第2配線322−3に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTS−3aが配置されている。高濃度ドレイン領域331−3eの一部は第1配線321−3に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTD−3aが配置されている。ゲート電極333−3は、半導体層331−3のチャネル領域331−3aと、第2配線322−3とに重なるように配置されている。半導体層331−3のチャネル領域331−3aと重なった部分のゲート電極333−3が、ゲート333−3aとなる。ゲート電極333−3は、U字形状を有し、高濃度ソース領域331−3dと重ならないようになっている。ゲート電極333−3と第2配線322−3とが重なった部分に、コンタクトホールCTG−3aが配置されている。
【0114】
p型トランジスター310−3において、半導体層311−3は、矩形状であり、高濃度ドレイン領域311−3eとチャネル領域311−3aと高濃度ソース領域311−3dとを有している。高濃度ドレイン領域311−3eがドレイン315−3となり、高濃度ソース領域311−3dがソース314−3となる。高濃度ドレイン領域311−3eの一部は第1配線321−3に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTD−3bが配置されている。高濃度ソース領域311−3dの一部は第3配線323−3に重なり、当該重なった部分にコンタクトホールCTS−3bが配置されている。ゲート電極313−3は、半導体層311−3のチャネル領域311−3aと、第3配線323−3とに重なるように配置されている。半導体層311−3のチャネル領域311−3aと重なった部分のゲート電極313−3が、ゲート313−3aとなる。ゲート電極313−3は、U字形状を有し、高濃度ソース領域311−3dと重ならないようになっている。ゲート電極313−3と第3配線323−3とが重なった部分に、コンタクトホールCTG−3bが配置されている。
【0115】
次に、
図8(b)を参照して、第3静電気保護回路303の断面的な構成を説明する。
図8(b)に示すように、基板本体10aを覆う下地絶縁膜12の上に設けられた半導体層331−3,311−3は、ゲート絶縁膜2で覆われている。ゲート絶縁膜2の上には、ゲート電極3aと同じ工程で形成されたゲート電極313−3,333−3が設けられている。ゲート絶縁膜2を介して、半導体層311−3,331−3に対向配置された部分のゲート電極313−3,333−3が、ゲート313−3a,333−3aとなる。ゲート電極313−3,333−3及びゲート絶縁膜2は、第1層間絶縁膜41で覆われている。第1層間絶縁膜41の上には、データ線6aや中継電極5aと同じ工程で形成された配線321−3,322−3,323−3が設けられている。配線321−3,322−3,323−3には、第2層間絶縁膜42と第3層間絶縁膜43と配向膜18とが、順に積層されている。
【0116】
なお、静電気保護回路301,302,303に配置されているp型トランジスター310−1,310−2,310−3は、高濃度ドレイン領域311−1e,311−2e,311−3eとチャネル領域311−1a,311−2a,311−3aと高濃度ソース領域311−1d,311−2d,311−3dとを有するセルフアライン構造のトランジスターである。さらに、p型トランジスター310−1,310−2,310−3は、第2静電気保護回路302のn型トランジスター330−2と同じく、ソース314−1,314−2,314−3(高濃度ソース領域311−1d,311−2d,311−3d)とチャネル領域311−1a,311−2a,311−3aとの間に低濃度不純物領域を設けた片側LDD構造のトランジスターであってもよい。さらに、p型トランジスター310−1,310−2,310−3は、第3静電気保護回路303のn型トランジスター330−3と同じく、チャネル領域311−1a,311−2a,311−3aの両端に低濃度不純物領域を設けた両側LDD構造のトランジスターであってもよい。
【0117】
「n型トランジスターの電気特性」
図9は、静電気保護回路に配置されているn型トランジスターの電気特性を示す図である。横軸にはゲート電位が示されている。縦軸にはドレイン電流(ソース・ドレイン間電流)Idが対数で示されている。同図の破線は、第1静電気保護回路301に配置されているn型トランジスター330−1の電気特性である。同図の実線は、第2静電気保護回路302に配置されているn型トランジスター330−2の電気特性である。同図の一点鎖線は、第3静電気保護回路303に配置されているn型トランジスター330−3の電気特性である。さらに、
図9には、ゲートにさらに低い負の電位が印加された場合のドレイン電流Idの状態が、模式的に図示されている。また、
図9の横軸における「高」は−15Vよりも低い負の電位の状態を示し、「低」は「高」よりも低い負の電位の状態を示している。
【0118】
図9に示すように、ゲート333−1a,333−2a,333−3aに正の電位を印加すると、n型トランジスター330−1,330−2,330−3は、導通状態(オン状態)となり、ゲート電位の増加と共にドレイン電流Idが増加する。詳しくは、ゲート電位が概略0V〜3Vの範囲でドレイン電流Idは急激に増加し、ゲート電位が概略3Vより高くなるとドレイン電流Idの増加率は徐々に小さくなる。
以降の説明では、ゲートに正の電位が印加された場合にソース334−1,334−2,334−3とドレイン335−1,335−2,335−3との間に流れるドレイン電流Idをオン電流と称す。
【0119】
ゲート333−1a,333−2a,333−3aに概略−1V〜概略−7Vの範囲の負の電位を印加すると、n型トランジスター330−1,330−2,330−3は、非導通状態(オフ状態)となる。
以降の説明では、ゲートに負の電位が印加された場合にソース334−1,334−2,334−3とドレイン335−1,335−2,335−3との間に流れるドレイン電流Idをオフ電流と称す。
【0120】
セルフアライン構造のn型トランジスター330−1では、ゲート313−1aに概略−7Vよりも低い負の電位を印加すると、オフ電流が増加するようになる。片側LDD構造のn型トランジスター330−2も同様の挙動を示し、ゲート313−2aに概略−7Vよりも低い負の電位を印加すると、オフ電流が増加するようになる。すなわち、ゲート313−1a,313−2aにより低い負の電位を印加すると、n型トランジスター330−1,330−2におけるオフ電流が増加し、ソース334−1,334−2及びドレイン335−1,335−2間に電流が流れるようになる。換言すれば、ゲートにより低い負の電位を印加すると、n型トランジスター330−1,330−2は導通状態になる。オフ電流は、ゲート313−1a,313−2aに印加される負の電位が低くなるに従って増加し、最終的にオン電流の飽和電流値と同等の電流が流れるようになる。
【0121】
n型トランジスター330−1,330−2は、半導体層331−1,331−2のチャネルとなる側とドレインとなる側との間に、低濃度不純物領域(高抵抗領域)が設けられていない構造のトランジスターである。この場合、ゲート313−1a,313−2aにより低い負の電位を印加すると、半導体層331−1,331−2のドレインとなる側(ドレイン335−1,335−2)の近傍に高電界領域が形成される。この高電界領域に流れ込んだ(侵入した)キャリア(電子または正孔)は、高電界によって加速され大きなエネルギーを得て、一部のキャリアは半導体層331−1,331−2とゲート絶縁膜2との間の電位障壁を乗り越えるような大きなエネルギーを有するホットキャリアとなる。当該ホットキャリアは、ゲート絶縁膜2や半導体層331−1,331−2などに存在する局在準位をトンネリングすることによって、ソース334−1,334−2とドレイン335−1,335−2との間に電流(オフ電流)が流れるようになる。また、ゲート333−1a,333−2aに印加する負の電位を低くする程、ドレイン335−1,335−2の近傍に形成される高電界領域の電界強度が大きくなり、ホットキャリアの影響が高められるため、オフ電流が増加する。
【0122】
一方、両側LDD構造のn型トランジスター330−3では、ゲート313−3aに概略−7Vよりも低い負の電位を印加しても、オフ電流は殆ど増加しない。両側LDD構造のn型トランジスター330−3は、半導体層331−3のチャネルとなる側とドレインとなる側との間に、低濃度不純物領域(高抵抗領域)が設けられた構造のトランジスターである。この場合、ゲート313−3aにより低い負の電位を印加しても、低濃度不純物領域によって半導体層331−3のドレインとなる側(ドレイン335−3)の近傍における電界集中が弱められ、ホットキャリアの発生が抑制される。よって、n型トランジスター330−3では、ゲート313−3aにより低い負の電位を印加してもホットキャリアによるオフ電流の増加が抑制される。
【0123】
このように、ゲートにより低い負の電位を印加すると、n型トランジスター330−1及びn型トランジスター330−2では、n型トランジスター330−3と比べて大きなオフ電流が流れるようになる。
【0124】
さらに、チャネル領域331−3aの両端に低濃度不純物領域(高抵抗領域)を有するn型トランジスター330−3では、低濃度不純物領域(高抵抗領域)を有していないn型トランジスター330−1、及びチャネル領域331−2aの片側に低濃度不純物領域(高抵抗領域)を有するn型トランジスター330−2と比べて、電流が流れる部分の抵抗が大きくなるので、オフ電流が小さくなる。
【0125】
「静電気保護回路の動作」
図10及び
図11は、
図5に対応する静電気保護回路の回路図であり、静電気によって外部回路接続端子に付加された電荷の流れが破線で示されている。詳しくは、第1静電気保護回路301における正の電荷PCの電荷の流れが
図10(a)に、第2静電気保護回路302における正の電荷PCの電荷の流れが
図10(b)に、第3静電気保護回路303における正の電荷PCの流れが
図10(c)に、それぞれ図示されている。第1静電気保護回路301における負の電荷NCの電荷の流れが
図11(a)に、第2静電気保護回路302における負の電荷NCの電荷の流れが
図11(b)に、第3静電気保護回路303における負の電荷NCの流れが
図11(c)に、それぞれ図示されている。
以下、
図10及び
図11を参照して、静電気によって外部回路接続端子102に付加された正または負の電荷の流れを説明する。
【0126】
液晶装置100の動作時には、第2配線322−1,322−2,322−3には低電電源配線VSSの電位が供給され、第3配線323−1,323−2,323−3には高電位電源配線VDDの電位が供給され、第1配線321−1,321−2,321−3には低電電源配線VSSの電位と高電位電源配線VDDの電位との間の電位が供給される。つまり、第2配線322−1,322−2,322−3の電位、第1配線321−1,321−2,321−3の電位、第3配線323−1,323−2,323−3の電位の順に、各配線の電位が高くなる。このような電位が供給されると、ゲート313−1a,313−2a,313−3aは、ドレイン315−1,315−2,315−3に対して正の電位を有するので、p型トランジスター310−1,31−2,310−3は非導通状態(オフ状態)となる。さらに、ゲート333−1a,333−2a,333−3aはドレイン335−1,335−2,335−3に対して負の電位を有するので、n型トランジスター330−1,330−2,330−3も非導通状態(オフ状態)となる。つまり、p型トランジスター310−1,310−2,310−3及びn型トランジスター330−1,330−2,330−3の両方が、全てオフ状態(非導通状態)となるので、第1配線321−1,321−2,321−3と、第2配線322−1,322−2,322−3と、第3配線323−1,323−2,323−3とは、電気的に干渉することがなく、液晶装置100は正常に動作する。
【0127】
上述したように、第1配線321−1,321−2,321−3及び第2配線322−1,322−2,322−3は、n型トランジスター330−1,330−2,330−3に接続されている。さらに、非導通状態(オフ状態)において、n型トランジスター330−3のオフ電流は、n型トランジスター330−1及びn型トランジスター330−2のオフ電流よりも小さくなっている。このため、非導通状態(オフ状態)において、n型トランジスター330−3を介して流れる第1配線321−3と第2配線322−3との間のリーク電流は、n型トランジスター330−1を介して流れる第1配線321−1と第2配線322−1との間のリーク電流、及びn型トランジスター330−2を介して流れる第1配線321−2と第2配線322−2との間のリーク電流よりも小さくなる。このように第3静電気保護回路303のオフ電流が小さいので、第3静電気保護回路303を配置しても配線間のリーク電流の増加、すなわち液晶装置100における消費電流の増加が抑制される。
【0128】
液晶装置100の非動作時には、第1配線321−1,321−2,321−3、第2配線322−1,322−2,322−3、及び第3配線323−1,323−2,323−3は、電位が確定しないフローティング状態になる。
なお、上述したように付加容量70,75を大容量化するために、付加容量70,75を構成する誘電体層72が薄膜化され、付加容量70,75は静電気の影響を受けやすくなっている。このため、本実施形態では、液晶装置100の非動作時において、付加容量70,75に回復不能な静電ダメージを生じにくくすることが重要である。
【0129】
図10(a)に示すように、第1静電気保護回路301では、静電気によって正の電荷PCが外部回路接続端子102に付加されると、正の電荷PCは配線96,97(映像信号線96、共通電極配線97)を介して第1配線321−1の側に流れ、ゲート313−1aはドレイン315−1に対して負の電位を有するようになり、p型トランジスター310−1は導通状態となる。このため、第1配線321−1に付加された正の電荷PCは、導通状態となったp型トランジスター310−1及び第3配線323−1を介して、高電位電源配線VDDの側に放電(分配)される。
【0130】
さらに、ゲート333−1aもドレイン335−1に対して負の電位を有し、n型トランジスター330−1は、
図9における領域Dの電気特性で動作するようになる。すなわち、n型トランジスター330−1は、ゲート333−1aにより低い負の電位が印加された状態となり、ホットキャリアによるオフ電流が流れるようになる。このため、第1配線321−1に付加された正の電荷PCは、導通状態となったn型トランジスター330−1及び第2配線322−1を介して、低電位電源配線VSSの側にも放電(分配)される。
【0131】
このように、第1静電気保護回路301では、静電気によって正の電荷PCが付加されると、p型トランジスター310−1及びn型トランジスター330−1の両方が導通状態となり、第1配線321−1に付加された正の電荷PCを高電位電源配線VDD及び低電位電源配線VSSの両側に放電することができる。従って、p型トランジスター310−1だけが導通状態となる場合と比べて、静電気による正の電荷PCをより迅速に放電し、静電気による正の電荷PCの影響をより強く抑制することができる。よって、静電気によって付加された正の電荷PCによる配線96,97の電位変動が小さくなり、配線96,97に電気的に接続されている付加容量70,75に回復不能な静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じにくくなる。
すなわち、付加容量70,75を構成する誘電体層72を薄膜化しても、付加容量70,75に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。
【0132】
図10(b)に示すように、第2静電気保護回路302では、静電気によって正の電荷PCが外部回路接続端子102に付加されると、正の電荷PCは配線96,97を介して第1配線321−2の側に流れ、ゲート313−2aはドレイン315−2に対して負の電位を有するようになり、p型トランジスター310−2は導通状態となる。このため、第1配線321−2に付加された正の電荷PCは、導通状態となったp型トランジスター310−2及び第3配線323−2を介して、高電位電源配線VDDの側に放電(分配)される。
【0133】
さらに、ゲート333−2aもドレイン335−2に対して負の電位を有する。n型トランジスター330−2は、
図9における領域Dの電気特性で動作するようになる。すなわち、n型トランジスター330−2は、ゲート333−2aにより低い負の電位が印加された状態となり、ホットキャリアによるオフ電流が流れるようになる。このため、第1配線321−2に付加された正の電荷PCは、導通状態となったn型トランジスター330−2及び第2配線322−2を介して、低電位電源配線VSSの側にも放電(分配)される。
【0134】
このように、第2静電気保護回路302では、静電気によって正の電荷PCが付加されると、p型トランジスター310−2及びn型トランジスター330−2の両方が導通状態となり、正の電荷PCを高電位電源配線VDD及び低電位電源配線VSSの両側に放電することができる。従って、p型トランジスター310−2だけが導通状態となる場合と比べて、静電気による正の電荷PCをより迅速に放電することができ、静電気によって印加された正の電荷PCの影響をより強く抑制することができる。よって、静電気によって付加された正の電荷PCによる配線96,97の電位変動が小さくなり、配線96,97に電気的に接続されている付加容量70,75などに静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じにくくなる。
すなわち、付加容量70,75を構成する誘電体層72を薄膜化しても、付加容量70,75に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。
【0135】
図10(c)に示すように、第3静電気保護回路303では、静電気によって正の電荷PCが外部回路接続端子102に付加されると、正の電荷PCは配線92,95(データ線駆動回路用信号配線92、走査線駆動回路用信号配線95)を介して第1配線321−3の側に流れ、ゲート313−3aはドレイン315−3に対して負の電位を有するようになり、p型トランジスター310−3は導通状態となる。このため、負の電荷NCは、導通状態となったp型トランジスター310−3及び第3配線323−3を介して、高電位電源配線VDDの側に放電(分配)される。
【0136】
一方、n型トランジスター330−3は、両側LDD構造のトランジスターであり、ホットキャリアの影響が抑制されているので、ゲート333−3aにより低い負の電位が印加されてもオフ電流は増加せず、非導通状態となる(
図9参照)。
【0137】
このように、第3静電気保護回路303では、p型トランジスター310−3だけが導通状態となり、第1配線321−3に付加された正の電荷PCは、導通状態となったp型トランジスター310−3及び第3配線323−3を介して、高電位電源配線VDDの側に放電される。よって、静電気によって付加された正の電荷PCによる配線92,95の電位変動が小さくなり、配線92,95に電気的に接続されている付加容量70,75などに静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じにくくなる。
すなわち、付加容量70,75を構成する誘電体層72を薄膜化しても、付加容量70,75に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。
【0138】
図11(a)に示すように、第1静電気保護回路301では、静電気によって負の電荷NCが外部回路接続端子102に付加されると、負の電荷NCは配線96,97(映像信号線96、共通電極配線97)を介して第1配線321−1の側に流れ、ゲート313−1aはドレイン315−1に対して正の電位を有し、p型トランジスター310−1は非導通状態となる。ゲート333−1aはドレイン335−1に対して正の電位を有し、n型トランジスター330−1は導通状態となる。このため、第1配線321−1に付加された負の電荷NCは、導通状態となったn型トランジスター330−1及び第2配線322−1を介して、低電位電源配線VSSの側に放電(分配)される。よって、静電気によって付加された負の電荷NCによる配線96,97の電位変動が小さくなり、配線96,97に電気的に接続されている付加容量70,75などに静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じにくくなる。
よって、付加容量70,75を構成する誘電体層72を薄膜化しても、付加容量70,75に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。
【0139】
図11(b)に示すように、第2静電気保護回路302において、静電気によって負の電荷NCが外部回路接続端子102に付加されると、負の電荷NCは配線96,97を介して第1配線321−2の側に流れ、ゲート313−2aはドレイン315−2に対して正の電位を有し、p型トランジスター310−2は非導通状態となる。ゲート333−2aはドレイン335−2に対して正の電位を有し、n型トランジスター330−2は導通状態となる。このため、第1配線321−2に付加された負の電荷NCは、導通状態となったn型トランジスター330−2及び第2配線322−2を介して、低電位電源配線VSSの側に放電(分配)される。よって、静電気によって付加された負の電荷NCによる配線96,97の電位変動が小さくなり、配線96,97に電気的に接続されている付加容量70,75などに静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じにくくなる。
すなわち、付加容量70,75を構成する誘電体層72を薄膜化しても、付加容量70,75に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。
【0140】
図11(c)に示すように、第3静電気保護回路303において、静電気によって負の電荷NCが外部回路接続端子102に付加されると、負の電荷NCは配線92,95(データ線駆動回路用信号配線92、走査線駆動回路用信号配線95)を介して第1配線321−3の側に流れ、ゲート313−3aはドレイン315−3に対して正の電位を有し、p型トランジスター310−3は非導通状態となる。ゲート333−3aはドレイン335−3に対して正の電位を有し、n型トランジスター330−3は導通状態となる。このため、第1配線321−2に付加された負の電荷NCは、導通状態となったn型トランジスター330−3及び第3配線323−3を介して、低電位電源配線VSSの側に放電(分配)される。よって、静電気によって付加された負の電荷NCによる配線92,95の電位変動が小さくなり、配線92,95に電気的に接続されている付加容量70,75などに静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じにくくなる。
すなわち、付加容量70,75を構成する誘電体層72を薄膜化しても、付加容量70,75に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。
【0141】
以上述べたように、本実施形態では以下の効果を得ることができる。
1)第1静電気保護回路301に配置されているn型トランジスター330−1、及び第2静電気保護回路302に配置されているn型トランジスター330−2では、半導体層331−1,331−2のチャネルとなる側(チャネル領域331−1a,331−2a)と、ドレインとなる側(高濃度ドレイン領域331−1e,331−2e)との間に低濃度不純物領域を設けていないため、ゲート333−1a,333−2aにより低い負の電位を印加すると、ドレイン335−1,335−2の近傍が高電界領域となる。この高電界領域によってホットキャリアが発生し、当該ホットキャリアによってソース314−1,314−2とドレイン315−1,315−2との間に電流(オフ電流)が流れるようになる。すなわち、n型トランジスター330−1及びn型トランジスター330−2は、ゲート333−1a,333−2aに正の電位を印加した場合と、ゲート333−1a,333−2aにより低い負の電位を印加した場合との両方で、ソース334−1,334−2とドレイン335−1,335−2との間に電流が流れるようになる。
【0142】
2)第3静電気保護回路303に配置されているn型トランジスター330−3は、半導体層331−3のチャネルとなる側(チャネル領域331−3a)と、ドレインとなる側(高濃度ドレイン領域331−3e)との間に低濃度不純物領域(低濃度ドレイン領域331−3c)が設けられているので、ホットキャリアの影響が抑制され、ゲート333−3aにより低い負の電位を印加した場合でもオフ電流の増加が抑制される。さらに、チャネル領域331−3aの両側に低濃度不純物領域(高抵抗領域)を設けることで、n型トランジスター330−1及びn型トランジスター330−2と比べて電流が流れる部分の抵抗が大きくなり、オフ電流が小さくなる。従って、n型トランジスター330−3を介して流れる第1配線321−3と第2配線322−3との間のリーク電流は、n型トランジスター330−1を介して流れる第1配線321−1と第2配線322−1との間のリーク電流、及びn型トランジスター330−2を介して流れる第1配線321−2と第2配線322−2との間のリーク電流よりも小さくなる。よって、第3静電気保護回路303を設けることによる液晶装置100の消費電流の増加が抑制される。
【0143】
3)第1静電気保護回路301及び第2静電気保護回路302では、第1配線321−1,321−2に付加された静電気に起因する正の電荷PCによって、ゲート313−1a,313−2a,333−1a,333−2aに負の電位が印加されると、p型トランジスター310−1,310−2及びn型トランジスター330−1,330−2の両方が導通状態となり、第1配線321−1,321−2に付加された正の電荷PCを高電位電源配線VDD及び低電位電源配線VSSの両側に放電することができる。従って、静電気に起因する正の電荷によってp型トランジスター504だけが導通状態となる公知技術(特開2006−18165号公報)の静電気保護回路500(
図13参照)と比べて、正の電荷PCの放電能力(除電能力)に優れ、静電気に起因する正の電荷PCによる配線96,97(映像信号線96、共通電極配線97)の電位変動をより小さくし、配線96,97に電気的に接続されている付加容量70,75などに静電ダメージ(例えば、静電破壊)をより生じにくくすることができる。
すなわち、付加容量70,75を構成する誘電体層72を薄膜化しても、付加容量70,75に回復不能な静電ダメージが生じにくくなる。従って、付加容量70を大容量化し、画素電極9aにおける電位保持特性を高めることで、本実施形態に係る液晶装置100では高品位な表示が提供される。
【0144】
(実施形態2)
「電子機器」
図12は、電子機器としての投射型表示装置(液晶プロジェクター)の構成を示す概略図である。
図12に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0145】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0146】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0147】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0148】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0149】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230には、上述した液晶装置100が適用されている。液晶装置100は、静電気保護回路301,302,303を有し、半導体回路(データ線駆動回路101、サンプリング回路7、走査線駆動回路104など)や付加容量70,75などに静電ダメージ(例えば、静電破壊)が生じにくくなっている。従って、当該液晶装置100が適用された投射型表示装置1000は、静電気の影響を受けにくく、高い信頼性を有する。
【0150】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置及び該液晶装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0151】
(変形例1)
第1静電気保護回路301、第2静電気保護回路302、及び第3静電気保護回路303は、液晶装置100に適用させることに限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子を有する発光装置に適用させることができる。第1静電気保護回路301、第2静電気保護回路302、及び第3静電気保護回路303によって、静電気の影響を受けにくい高い信頼性の発光装置を提供することができる。
【0152】
さらに、第1静電気保護回路301、第2静電気保護回路302、及び第3静電気保護回路303は、半導体回路を有する電子デバイスに適用させてもよい。例えば、半導体基板に形成したMOSトランジスターで構成された集積回路における静電気保護回路も本発明の適用範囲である。
【0153】
(変形例2)
静電気保護回路301,302,303(第1静電気保護回路301、第2静電気保護回路302、第3静電気保護回路303)は、第2配線322−1,322−2,322−3、第2配線322−1,322−2,322−3の電位よりも高い電位の第1配線321−1,321−2,321−3、及び第1配線321−1,321−2,321−3の電位よりも高い電位の第3配線323−1,323−2,323−3に接続すればよく、このような電位が供給されている配線が存在すれば、静電気保護回路301,302,303を液晶装置(電気光学装置)の任意の場所に配置することができる。
【0154】
具体的には、実施形態1では、静電気保護回路301,302,303は、外部回路接続端子102と半導体回路(データ線駆動回路101、サンプリング回路7、走査線駆動回路104)との間の配線92,95,96,97に配置(接続)されていたが、これに限定されない。例えば、静電気保護回路301,302,303の内部の配線に配置(接続)してもよいし、静電気保護回路301,302,303を半導体回路と表示領域Eとの間の配線に配置(接続)してもよい。
【0155】
さらに、実施形態1では、第2配線322−1,322−2,322−3を低電位電源配線VSSに接続し、第3配線323−1,323−2,323−3を高電位電源配線VDDに接続し、第1配線321−1,321−2,321−3を低電位電源配線VSSの電位と高電位電源配線VDDとの間の電位が供給されている配線92,95,96,97に接続したが、これに限定されない。例えば、配線92,95,96,97のうち、最も低い電位が供給されている配線を上記第2配線322−1,322−2,322−3に接続し、最も高い電位が供給されている配線を上記第3配線323−1,323−2,323−3に接続し、他の配線を上記第1配線321−1,321−2,321−3に接続する構成であってもよい。
【0156】
(変形例3)
実施形態1に係る液晶装置100が適用される電子機器は、実施形態2の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型表示装置1000の他に、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、POSなどの情報端末機器、及び電子手帳などの電子機器に、実施形態1に係る液晶装置を適用させることができる。