(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大、縮小、あるいは誇張して表示している。また、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
【0027】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0028】
(第1の実施形態)
<電気光学装置>
ここでは、電気光学装置として、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、後述する投射型表示装置(プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0029】
まず、第1の実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置について、
図1、
図2、および
図3を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る液晶装置の構成を示す概略平面図である。
図2は、第1の実施形態に係る液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
図3は、第1の実施形態に係る液晶装置の構成を示す概略断面図である。詳しくは、
図3は、
図1のA−A’線に沿った概略断面図である。
【0030】
図1および
図3に示すように、第1の実施形態に係る液晶装置1は、第1の基板としての素子基板20と、素子基板20に対向配置された第2の基板としての対向基板30と、シール材42と、電気光学層としての液晶層40とを備えている。
図1に示すように、素子基板20は対向基板30よりも大きく、両基板は、対向基板30の縁部に沿って額縁状に配置されたシール材42を介して接合されている。
【0031】
液晶層40は、素子基板20と対向基板30とシール材42とによって囲まれた空間に封入された、正または負の誘電異方性を有する液晶で構成されている。シール材42は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤からなる。シール材42には、素子基板20と対向基板30との間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0032】
額縁状に配置されたシール材42の内側には、素子基板20に設けられた遮光層22,26と、対向基板30に設けられた遮光層32とが配置されている。遮光層22,26,32は、額縁状の周縁部を有し、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などで形成されている。額縁状の遮光層22,26,32の内側は、複数の画素Pが配列された表示領域Eとなっている。画素Pは、例えば、略矩形状を有し、マトリックス状に配列されている。
【0033】
表示領域Eは、液晶装置1において、実質的に表示に寄与する領域である。素子基板20に設けられた遮光層22,26は、表示領域Eにおいて、複数の画素Pを平面的に区画するように、例えば格子状に設けられている。なお、液晶装置1は、表示領域Eの周囲を囲むように設けられた、実質的に表示に寄与しないダミー領域を備えていてもよい。
【0034】
素子基板20の第1辺に沿って形成されたシール材42の表示領域Eと反対側には、第1辺に沿ってデータ線駆動回路51および複数の外部接続端子54が設けられている。また、その第1辺に対向する他の第2辺に沿ったシール材42の表示領域E側には、検査回路53が設けられている。さらに、これらの2辺と直交し互いに対向する他の2辺に沿ったシール材42の内側には、走査線駆動回路52が設けられている。
【0035】
検査回路53が設けられた第2辺のシール材42の表示領域E側には、2つの走査線駆動回路52を繋ぐ複数の配線55が設けられている。これらデータ線駆動回路51、走査線駆動回路52に繋がる配線は、複数の外部接続端子54に接続されている。また、対向基板30の角部には、素子基板20と対向基板30との間で電気的導通をとるための上下導通部56が設けられている。なお、検査回路53の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路51と表示領域Eとの間のシール材42の内側に沿った位置に設けてもよい。
【0036】
以下の説明では、データ線駆動回路51が設けられた第1辺に沿った方向をX方向とし、この第1辺と直交し互いに対向する他の2辺に沿った方向をY方向とする。X方向は、
図1のA−A’線に沿った方向である。遮光層22,26は、X方向とY方向とに沿った格子状に設けられている。画素Pは、遮光層22,26によって格子状に区画され、X方向とY方向とに沿ったマトリックス状に配列されている。
【0037】
また、X方向およびY方向と直交し
図1における上方に向かう方向をZ方向とする。なお、本明細書では、液晶装置1の対向基板30側表面の法線方向(Z方向)から見ることを「平面視」という。
【0038】
図2に示すように、表示領域Eには、走査線2とデータ線3とが互いに交差するように形成され、走査線2とデータ線3との交差に対応して画素Pが設けられている。画素Pのそれぞれには、画素電極28と、スイッチング素子としてのTFT24とが設けられている。
【0039】
TFT24のソース電極(図示しない)は、データ線駆動回路51から延在するデータ線3に電気的に接続されている。データ線3には、データ線駆動回路51(
図1参照)から画像信号(データ信号)S1,S2,…,Snが線順次で供給される。TFT24のゲート電極(図示しない)は、走査線駆動回路52から延在する走査線2の一部である。走査線2には、走査線駆動回路52から走査信号G1,G2,…,Gmが線順次で供給される。TFT24のドレイン電極(図示しない)は、画素電極28に電気的に接続されている。
【0040】
画像信号S1,S2,…,Snは、TFT24を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線3を介して画素電極28に所定のタイミングで書き込まれる。このようにして画素電極28を介して液晶層40に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板30に設けられた共通電極34(
図3参照)との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。
【0041】
なお、保持された画像信号S1,S2,…,Snがリークするのを防止するため、走査線2に沿って形成された容量線4と画素電極28との間に蓄積容量5が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、各画素Pの液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶の配向状態が変化する。これにより、液晶層40(
図3参照)に入射した光が変調されて階調表示が可能となる。
【0042】
液晶層40を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少する。ノーマリーブラックモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加し、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が射出される。
【0043】
図3に示すように、第1の実施形態に係る対向基板30は、マイクロレンズアレイ基板10と、光路長調整層31と、遮光層32と、保護層33と、共通電極34と、配向膜35とを備えている。
【0044】
マイクロレンズアレイ基板10は、基板11と、レンズ層13とを備えている。基板11は、例えば、ガラスや石英などの光透過性を有する無機材料からなる。基板11の液晶層40側の面を、第1面としての上面11aとする。基板11は、上面11aに形成された複数の凹部12を有している。各凹部12は、画素Pに対応して設けられている。凹部12は、その中央部に配置された平坦部12aと、平坦部12aの周囲に配置された曲面部12bおよび周縁部12c(
図5(a)参照)とを有している。凹部12の形状の詳細については後述する。
【0045】
レンズ層13は、基板11の上面11a側を覆うように設けられている。レンズ層13は、凹部12の深さよりも厚く形成されており、複数の凹部12を埋め込むように形成されている。レンズ層13は、光透過性を有し、基板11とは異なる屈折率を有する材料からなる。より具体的には、レンズ層13は、基板11よりも光屈折率の高い無機材料からなる。このような無機材料としては、例えばSiON、Al
2O
3などが挙げられる。
【0046】
レンズ層13を形成する材料で凹部12を埋め込むことにより、凸状のマイクロレンズML1が構成される。したがって、各マイクロレンズML1は、画素Pに対応して設けられている。また、複数のマイクロレンズML1によりマイクロレンズアレイMLAが構成される。マイクロレンズアレイ基板10の表面、すなわちレンズ層13の表面は、略平坦な面となっている。
【0047】
光路長調整層31は、マイクロレンズアレイ基板10を覆うように設けられている。光路長調整層31は、光透過性を有し、例えば、基板11とほぼ同じ屈折率を有する無機材料からなる。光路長調整層31は、マイクロレンズML1から遮光層26までの距離を所望の値に合わせる機能を有する。したがって、光路長調整層31の層厚は、光の波長に応じたマイクロレンズML1の焦点距離などの光学条件に基づいて適宜設定される。
【0048】
遮光層32は、光路長調整層31上に設けられている。遮光層32は、マイクロレンズML1が配置された表示領域E(
図1参照)の周囲を囲むように設けられている。遮光層32は、表示領域E内にも設けられ、素子基板20の遮光層22および遮光層26に平面視で重なるように格子状、島状、またはストライプ状などに形成されていてもよい。
【0049】
保護層33は、光路長調整層31と遮光層32とを覆うように設けられている。共通電極34は、保護層33を覆うように設けられている。共通電極34は、複数の画素Pに跨って形成されている。共通電極34は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなる。配向膜35は、共通電極34を覆うように設けられている。
【0050】
なお、保護層33は共通電極34の液晶層40側の表面が平坦となるように、遮光層32を覆うものであって、必須な構成要素ではなく、例えば、導電性の遮光層32を直接覆うように共通電極34を形成してもよい。
【0051】
素子基板20は、基板21と、遮光層22と、絶縁層23と、TFT24と、絶縁層25と、遮光層26と、絶縁層27と、画素電極28と、配向膜29とを備えている。基板21は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料からなる。
【0052】
遮光層22は、基板21上に設けられている。遮光層22は、上層の遮光層26に平面視で重なるように格子状に形成されている。遮光層22および遮光層26は、素子基板20の厚さ方向(Z方向)において、TFT24を間に挟むように配置されている。遮光層22は、TFT24の少なくともチャネル領域と平面視で重なっている。
【0053】
遮光層22および遮光層26が設けられていることにより、TFT24への光の入射が抑制される。遮光層22に囲まれた領域(開口部22a内)、および、遮光層26に囲まれた領域(開口部26a内)は、平面視で互いに重なっており光が透過する領域となる。画素Pにおいて開口部22aおよび開口部26aと重なる領域を、画素Pの開口領域という。
【0054】
絶縁層23は、基板21と遮光層22とを覆うように設けられている。絶縁層23は、例えば、SiO
2などの無機材料からなる。
【0055】
TFT24は、絶縁層23上に設けられている。TFT24は、画素電極28を駆動するスイッチング素子である。TFT24は、図示しない半導体層、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極で構成されている。半導体層には、ソース領域、チャネル領域、およびドレイン領域が形成されている。チャネル領域とソース領域、又は、チャネル領域とドレイン領域との界面にはLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
【0056】
ゲート電極は、素子基板20において平面視で半導体層のチャネル領域と重なる領域に絶縁層25の一部(ゲート絶縁膜)を介して形成されている。図示を省略するが、ゲート電極は、下層側に配置された走査線にコンタクトホールを介して電気的に接続されており、走査信号が印加されることによってTFT24をオン/オフ制御している。
【0057】
絶縁層25は、絶縁層23とTFT24とを覆うように設けられている。絶縁層25は、例えば、SiO
2などの無機材料からなる。絶縁層25は、TFT24の半導体層とゲート電極との間を絶縁するゲート絶縁膜を含む。絶縁層25により、TFT24によって生じる表面の凹凸が緩和される。絶縁層25上には、遮光層26が設けられている。そして、絶縁層25と遮光層26とを覆うように、無機材料からなる絶縁層27が設けられている。
【0058】
画素電極28は、絶縁層27上に、画素Pに対応して設けられている。画素電極28は、遮光層22の開口部22aおよび遮光層26の開口部26aに平面視で重なる領域に配置されている。画素電極28は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなる。配向膜29は、画素電極28を覆うように設けられている。液晶層40は、素子基板20側の配向膜29と対向基板30側の配向膜35との間に封入されている。
【0059】
なお、TFT24と、TFT24に電気信号を供給する電極や配線など(図示しない)とは、平面視で遮光層22および遮光層26に重なる領域に設けられている。これらの電極や配線などが遮光層22や遮光層26を兼ねる構成であってもよい。
【0060】
第1の実施形態に係る液晶装置1では、例えば、光源などから発せられた光は、マイクロレンズML1を備える対向基板30(基板11)側から入射し、マイクロレンズML1によって集光される。基板11側から上面11aの法線方向に沿ってマイクロレンズML1に入射する光のうち、凹部12の平坦部12aに入射した入射光L1は、マイクロレンズML1をそのまま直進し、液晶層40を通過して素子基板20側に射出される。
【0061】
入射光L1よりも外側の平面視で遮光層26と重なる領域からマイクロレンズML1の平坦部12aの外側(曲面部12bおよび周縁部12c)に入射した入射光L2は、仮にそのまま直進した場合、破線で示すように遮光層26で遮光されてしまうが、基板11とレンズ層13との間の光屈折率の差により、画素Pの平面的な中心側へ屈折する。液晶装置1では、このように直進した場合に遮光層26で遮光されてしまう入射光L2も、マイクロレンズML1の作用により遮光層26の開口部26a内に入射させて液晶層40を通過させることができる。この結果、素子基板20側から射出される光の量を多くできるので、光の利用効率を高めることができる。
【0062】
<マイクロレンズ>
続いて、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10が備えるマイクロレンズML1の構成および作用について、
図4、
図5、および
図6を参照して説明する。
図4は、第1の実施形態に係るマイクロレンズの構成を示す概略平面図である。
図5は、第1の実施形態に係るマイクロレンズの構成を示す概略断面図である。詳しくは、
図5(a)は
図4のB−B’線に沿った概略断面図であり、
図5(b)は
図4のC−C’線に沿った概略断面図である。
【0063】
また、
図6は、第1の実施形態に係るマイクロレンズの集光効果を説明する模式図である。詳しくは、
図6(a)は第1の実施形態に係るマイクロレンズの集光状態を模式的に示す図であり、
図6(b)は従来のマイクロレンズの集光状態を模式的に示す図である。なお、
図15は、従来のマイクロレンズの構成および製造方法の一例を示す概略断面図である。
図15の各図は、
図4のB−B’線に沿った概略断面図に相当する。
【0064】
図4には、1つの画素Pを示している。
図4に示すように、画素Pは、略矩形の平面形状を有している。このような形状を有する複数の画素Pは、X方向およびY方向において隣り合う画素P同士が互いに接するように配列されている。
図4には図示しないが、X方向およびY方向において隣り合う画素P同士の境界に沿うように、遮光層22,26(
図3参照)が配置されている。
【0065】
画素Pの対角線の長さをP1とし、画素PのX方向の1辺の長さをP2とする。X方向における画素Pの配置ピッチはP2となる。例えば、画素Pの平面形状が正方形であり、画素Pの配置ピッチP2が10μmであると、画素Pの対角線の長さP1は14μm程度となる。画素Pの対角線に沿った方向をW方向とする。W方向は、X方向およびY方向で構成される平面において、X方向およびY方向と交差する方向である。
【0066】
第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10が備えるマイクロレンズML1のレンズ形状を構成する凹部12は、仮想的には2点鎖線で示す略円形の平面形状を有している。この凹部12の仮想的な外形は、例えば、画素Pの内接円よりも大きく外接円よりも小さい。
【0067】
なお、マイクロレンズアレイ基板10において、複数の凹部12は、X方向およびY方向において隣り合う凹部12同士が互いに接するように配列されている。したがって、X方向およびY方向において隣り合う凹部12同士は、互いに接続されている。一方、W方向において隣り合う凹部12同士は互いに離間されている。
【0068】
凹部12は、中央部に配置された平坦部12aと、平坦部12aの周囲に配置された曲面部12bと、曲面部12bの周囲に配置された周縁部12cとを有している。平坦部12aと曲面部12bと周縁部12cとは、連続して形成されている。平坦部12aは、凹部12の底部であり、略円形の平面形状を有している。平坦部12aの径をR1とする。平坦部12a、曲面部12b、および周縁部12cの仮想的な外形は、画素Pの平面的な中心を凹部12の中心として同心円状に形成されている。
【0069】
画素Pの領域内において凹部12の径が最大となるW方向(対角線)に沿った方向における、平坦部12aから周縁部12cの外縁までの距離をR2とする。凹部12の最大径は、R1+R2×2となり、画素Pの対角線の長さP1よりも小さい。また、画素Pの領域内において凹部12の径が最小となるX方向に沿った方向における平坦部12aから周縁部12cの外縁(画素Pの外縁)までの距離をR3とすると、R3はR2よりも小さく、R3=(P2−R1)/2となる。
【0070】
図5(a)は、
図4におけるW方向に沿った断面を示している。
図5(b)は、
図4におけるX方向に沿った断面を示しており、
図1のA−A’線に沿った断面に相当する。
図5(a)および(b)は、画素Pの平面的な中心を通る断面である。
図5(a)および(b)は、
図3と上下方向(Z方向)が反転している。したがって、図示はしないが、光は
図5(a)および(b)の下方側から上方側に向かってマイクロレンズML1に入射する。
【0071】
図5(a)および(b)に示すように、平坦部12aは、基板11の上面11aに略平行で略平坦な面となっている。平坦部12aは、集光機能を有していない。したがって、上面11aの法線方向に沿って平坦部12aに入射する光は、そのまま直進する。画素Pの中央部に位置する平坦部12aに入射する光は、そのまま直進しても遮光層26(
図3参照)で遮光されないので、画素Pの中心側へ集光しなくてもよい。
【0072】
また、平坦部12aに入射する光を画素Pの平面的な中心側へ集光しないことにより、全域において集光機能を有する従来の略球面状の凹部16を有するマイクロレンズML4(
図15(c)参照)と比べて、画素Pの中央部において液晶層40(
図3参照)を通過する光の角度のばらつきが抑えられる。これにより、液晶層40の液晶分子の配向方向に対する、光の角度のばらつきが小さく抑えられるので、液晶装置1のコントラストが向上する。
【0073】
曲面部12bは、平坦部12aに連続して設けられており、円弧状の断面形状を有している。曲面部12bは、集光機能を有しており、上面11aの法線方向に沿って曲面部12bに入射する光は、画素Pの平面的な中心側へ集光される。したがって、曲面部12bにより、画素Pの中央部よりも外側に入射して、そのまま直進すれば遮光層26で遮光される光を、画素Pの開口領域内に入射させることができる。
【0074】
周縁部12cは、曲面部12bに連続して設けられている。周縁部12cは、W方向においては上面11aに接続されており、X方向においては隣り合う凹部12の周縁部12cに接続されている。周縁部12cは、上面11aから曲面部12bに向かって傾斜する傾斜面、いわゆるテーパー状の面となっている。したがって、上面11aの法線方向に沿って周縁部12cに入射する光は、画素Pの平面的な中心側へ屈折するので、そのまま直進すれば遮光層26で遮光される光を、画素Pの開口領域内に入射させることができる。
【0075】
また、周縁部12cは、集光機能を有していない。したがって、上面11aの法線方向に沿って周縁部12cに入射する光は略同一の角度で屈折するので、液晶層40に入射する光の角度のばらつきを抑えることができる。
【0076】
図5(a)に示すように、周縁部12cと上面11aとがなす角度をθ1とする。
図5(a)に、曲面部12bを上面11a側へ延長した仮想曲面12dを2点鎖線で示す。仮想曲面12dは、一般的な等方性エッチングにより形成される略球面状の曲面である。この仮想曲面12dの端部における接線と上面11aとがなす角度をθ2とすると、θ1はθ2よりも小さい。本実施形態では、θ1は、例えば35°〜70°程度である。一方、θ2は、例えば、90°に近い角度になっている。また、従来の略球面状の凹部16を有するマイクロレンズML4においても、その端部における接線と上面11aとがなす角度は90°に近い角度となる。なお、θ1は、基板11の屈折率とレンズ層13の屈折率との差に基づいて適宜設定される。
【0077】
周縁部12cと上面11aとがなす角度θ1が大きいほど、上面11aの法線方向に沿って周縁部12cに入射する光は大きく屈折する。光の屈折角度が大きくなると、屈折した光が隣の画素Pとの間の遮光層26で遮光されてしまうことや、隣の画素Pの開口領域内に入射してしまう場合がある。θ1がθ2よりも小さいことで、周縁部12cに入射する光の過度の屈折が抑えられる。また、θ1がθ2よりも小さいことで、周縁部12cで屈折する光の角度と曲面部12bで屈折する光の角度との差を小さくできる。
【0078】
このように、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10が備えるマイクロレンズML1の構成によれば、従来の略球面状の凹部16を有するマイクロレンズML4と比べて、遮光層26で遮光されてしまう光をより多く画素Pの開口領域内に入射させることができるので、液晶装置1の光の利用効率を向上させることができる。また、従来のマイクロレンズML4と比べて、マイクロレンズML1を通過して液晶層40に入射する光の角度のばらつきを小さく抑えることができる。これにより、第1の実施形態に係る液晶装置1において、従来よりも明るい表示と良好なコントラストとを得ることができる。
【0079】
ここで、凹部12の平坦部12aの最大の長さである径R1は、画素Pの配置ピッチP2の10%以上であることが好ましい。例えば、画素Pの配置ピッチP2が10μmである場合、凹部12の平坦部12aの径R1は1μm以上であることが好ましい。平坦部12aの最大径R1を画素Pの配置ピッチP2の10%以上とすることで、光が集光されずに通過する平坦部12aの領域を確保することができる。
【0080】
なお、画素Pの配置ピッチP2に対して、平坦部12aの領域が大きいほど集光されずに通過する光の量が多くなるが、その一方で集光機能を有する曲面部12bが小さくなると光の利用効率の低下を招くこととなり、画素Pの配置ピッチP2によってその度合いが異なってくる。平坦部12aの領域の大きさと光利用効率との関係については、第2の実施形態において説明する。
【0081】
凹部12の深さ、すなわち、基板11の上面11aと平坦部12aとのZ方向における距離をD1とする。本実施形態では、D1<P1/2である。例えば、画素Pの対角線の長さP1が14μmである場合、D1は7μm未満となる。そして、D1<(R1+R2×2)/2であることが好ましい。D1<(R1+R2×2)/2とすることで、平坦部12aを設けることが可能となる。また、凹部12の深さD1を浅くすることで、マイクロレンズアレイ基板10の製造工程における負荷を低減することが可能となる。この点については、マイクロレンズアレイ基板10の製造方法において説明する。
【0082】
続いて、第1の実施形態に係るマイクロレンズML1の集光効果を説明する。
図6(a)に、第1の実施形態に係るマイクロレンズML1の画素Pの領域内における照度の分布を模式的に示す。
図6(a)は、平坦部12aの最大の長さR1が画素Pの配置ピッチP2の50%の場合である。
図6(a)において、照度をS1a、S2a、S3a、S4a、S5aの5段階で示しており、S1aが最も照度が高く、S2a、S3a、S4a、S5aの順に照度が低くなっている。
【0083】
また、
図6(b)に、従来の略球面状のマイクロレンズML4の画素Pの領域内における照度の分布を模式的に示す。
図6(b)において、照度をS1b、S2b、S3b、S4b、S5bの5段階で示しており、S1bが最も照度が高く、S2b、S3b、S4b、S5bの順に照度が低くなっている。
【0084】
図6(b)に示すように、従来の略球面状のマイクロレンズML4では、画素Pの中央部の略円形の領域が最も照度が高く、中央部から外縁側に向かって順に照度が低い領域が環状に分布している。このように画素Pの中央部に光が集中すると、画素Pの領域内において明るい領域が中央部に偏ることとなる。そのため、このようなマイクロレンズML4を備えた液晶装置をプロジェクターの液晶ライトバルブとして用いる場合、スクリーンに表示される画像の明るさが不均一となってしまう。また、画素Pの中央部に光が集中することで、対向基板30と素子基板20との相互の組ずれが生じた場合に目立ち易くなるとともに、液晶層40の液晶の劣化が生じ易くなる。
【0085】
これに対して、
図6(a)に示すように、第1の実施形態に係るマイクロレンズML1では、マイクロレンズML1の中央部(平坦部12a)が集光機能を有していないので、画素Pの中央部はS3a、S4aと比較的照度が低くなっている。そして、中央部の周囲にそれよりも照度が高いS2aの領域が環状に分布しており、従来の略球面状のマイクロレンズML4と比べてS2aの領域が広くなっている。そのため、従来の略球面状のマイクロレンズML4と比べて、画素Pの領域内における明るさの分布がより均一となるので、スクリーンに表示される画像の明るさがより均一となる。また、特定領域への光の集中が緩和されるので、組ずれが生じた場合に目立ちにくくなり、液晶層40の液晶の劣化が抑えられる。
【0086】
<マイクロレンズアレイ基板の製造方法>
次に、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10の製造方法を説明する。
図7および
図8は、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板の製造方法を示す概略断面図である。詳しくは、
図7および
図8の各図は、
図4のB−B’線に沿った概略断面図に相当する。
【0087】
まず、
図7(a)に示すように、石英などからなる光透過性を有する基板11の上面11aに、例えば、SiO
2などの酸化膜からなる制御膜70を形成する。制御膜70は、等方性エッチングにおけるエッチングレートが基板11と異なっており、凹部12を形成する際の深さ方向(Z方向)のエッチングレートに対して幅方向(W方向)のエッチングレートを調整する機能を有する。
【0088】
制御膜70を形成した後、所定の温度で制御膜70のアニールを行う。制御膜70のエッチングレートは、アニール時の温度により変化する。したがって、アニール時の温度を適宜設定することにより、制御膜70のエッチングレートを調整することができる。
【0089】
次に、
図7(b)に示すように、制御膜70上にマスク層71を形成する。続いて、
図7(c)に示すように、マスク層71をパターニングして、マスク層71に開口部72を形成する。開口部72は、形成される凹部12における平坦部12aと同様に平面視で略円形であり、その径72aは平坦部12aの径R1と略同一に設定される。換言すれば、マスク層71の開口部72によって、形成される凹部12における平坦部12aの形状と径とが決まる。
【0090】
次に、
図7(d)に示すように、マスク層71の開口部72を介して、制御膜70で覆われた基板11に等方性エッチングを施す。等方性エッチングには、制御膜70のエッチングレートの方が基板11のエッチングレートよりも大きくなるようなエッチング液(例えば、フッ酸溶液)を用いる。等方性エッチングにより、開口部72から制御膜70と基板11とがエッチングされ、制御膜70に開口部70aが形成されるとともに、基板11に凹部12が形成される。
【0091】
次に、
図8(a)に示すように、等方性エッチングの進行に伴って凹部12が拡大され、凹部12のうち平面視でマスク層71の開口部72に対応する部分が略平坦な面となる。これにより、凹部12の中央部に平坦部12aが形成される。また、平坦部12aの周囲を囲むように曲面部12bが形成される。
【0092】
ここで、基板11とマスク層71との間に制御膜70が設けられていない場合は、
図8(a)に破線で示すように、曲面部12bが基板11の上面11aに到達するまで形成されることとなる。本実施形態では、基板11とマスク層71との間に制御膜70が設けられており、等方性エッチングにおける制御膜70の単位時間当たりのエッチング量は基板11の単位時間当たりのエッチング量よりも多い。
【0093】
したがって、制御膜70の開口部70aの拡大量は凹部12の深さ方向の拡大量よりも多くなるので、開口部70aの拡大に伴って、凹部12の幅方向も拡大することとなる。そのため、基板11の幅方向における単位時間当たりのエッチング量は、深さ方向における単位時間当たりのエッチング量よりも多くなる。これにより、曲面部12bの周囲を囲むようにテーパー状の周縁部12cが形成される。
【0094】
上述したように、凹部12における平坦部12aの形状および径は、マスク層71の開口部72の形状および径により制御することができる。また、凹部12における曲面部12bおよび周縁部12cのそれぞれの大きさは、基板11の深さ方向のエッチングレートに対する幅方向のエッチングレートにより制御され、このエッチングレートの差は制御膜70のアニール時の温度設定により調整できる。
【0095】
次に、
図8(b)に示すように、基板11からマスク層71を除去した後、基板11の上面11a側を覆い凹部12を埋め込むように、光透過性を有し、基板11よりも高い屈折率を有する無機材料を堆積してレンズ層13を形成する。レンズ層13は、例えばCVD法を用いて形成することができる。レンズ層13は凹部12を埋め込むように形成されるため、レンズ層13の表面は基板11の凹部12に起因する凹凸が反映された凹凸形状となる。
【0096】
続いて、レンズ層13に対して平坦化処理を施す。平坦化処理では、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理などを用いて、レンズ層13の上層の凹凸が形成された部分(
図8(b)に示す2点鎖線より上方の部分)を研磨して除去することにより、レンズ層13の上面が平坦化される。
【0097】
レンズ層13に平坦化処理を施した結果、
図8(c)に示すように、レンズ層13の上面が平坦化されて、マイクロレンズアレイ基板10が完成する。マイクロレンズアレイ基板10において、凹部12にレンズ層13の材料が埋め込まれてマイクロレンズML1が構成される。
【0098】
なお、
図15に従来のマイクロレンズML4の製造方法の一例を示す。
図15(a)に示すように、マスク層71に開口部74を形成し、開口部74を介して基板11に等方性エッチング処理を施すことにより、略球面状の凹部16が形成される。マスク層71に形成される開口部74の径は、例えば、画素Pの配置ピッチP2の10%未満である。
【0099】
このとき、形成される凹部16の径が凹部12の最大径(R1+R2×2)と同じであるとすると、凹部16の深さD2≒(R1+R2×2)/2となり、
図15(a)に破線で示す本実施形態の凹部12の深さD1よりも大きい(深い)。そのため、基板11のエッチング量が本実施形態よりも多くなるので、等方性エッチング処理工数の増大を招くこととなる。
【0100】
そして、
図15(b)に示すように、基板11の凹部16を埋め込むようにレンズ層13を形成すると、凹部16を埋めるためのレンズ層13の使用量が本実施形態よりも多くなるので、CVD法によりレンズ層13を堆積する工程における工数の増大を招くこととなる。また、凹部16に起因するレンズ層13の表面の凹凸形状が本実施形態よりも大きくなるので、レンズ層13のCMP処理工程における研磨量が多くなり工数の増大を招くこととなる。
【0101】
このように、第1の実施形態に係るマイクロレンズML1の構成によれば、凹部12の深さD1を浅くすることで、マイクロレンズアレイ基板10の製造工程における工数や材料の使用量を低減することができる。また、堆積したレンズ層13の膜厚がより均一になり表面の凹凸形状が小さくなるので、レンズ層13の表面の平坦性を向上させることができる。
【0102】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板は、第1の実施形態に対して、マイクロレンズの構成が異なる点以外はほぼ同様の構成を有している。ここでは、主にマイクロレンズの構成について、第1の実施形態に対する相違点を説明する。
図9は、第2の実施形態に係るマイクロレンズの構成を示す概略平面図である。
図10は、第2の実施形態に係るマイクロレンズの構成を示す概略断面図である。詳しくは、
図10(a)は
図9のB−B’線に沿った概略断面図であり、
図10(b)は
図9のC−C’線に沿った概略断面図である。また、
図11は、第2の実施形態に係るマイクロレンズの集光効果を説明する模式図である。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0103】
<マイクロレンズ>
図9に示すように、第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aは、凹部14で構成されるマイクロレンズML2を備えている。凹部14は、中央部に配置された平坦部14aと、平坦部14aの周囲に配置された曲面部14bと、曲面部14bの周囲に配置された周縁部14cとを有している。平坦部14aと曲面部14bと周縁部14cとは、連続して形成されている。平坦部14aは、矩形の平面形状を有している。平坦部14aの矩形形状の4つの角は丸く形成されていてもよい。曲面部14bおよび周縁部14cは、矩形の平面形状を有し、それぞれの4つの角は丸く形成されている。
【0104】
凹部14の平坦部14aの最大の長さである対角線の長さは、第1の実施形態の凹部12の平坦部12aの径と同じR1とする。平坦部14aの平面形状が正方形であると、平坦部14aのX方向およびY方向における長さはR1/√2となる。平坦部14aに対して第1の実施形態の凹部12の平坦部12aは外接円となるので、平坦部14aの面積は凹部12の平坦部12aの面積よりも小さくなる。
【0105】
図10(a)に示すように、画素Pの領域内において凹部14の径が最大となるW方向(対角線)に沿った方向における、平坦部14aから周縁部14cの外縁までの距離を、第1の実施形態の凹部12と同じR2とする。周縁部14cと基板11の上面11aとがなす角度も、第1の実施形態の凹部12と同じθ1とする。すなわち、W方向においては、凹部14の断面形状は、第1の実施形態の凹部12の断面形状と同じである。
【0106】
また、
図10(b)に示すように、画素Pの領域内において凹部14の径が最小となるX方向に沿った方向における平坦部14aから周縁部14cの外縁(画素Pの外縁)までの距離をR4とすると、R4はR2よりも小さく、R4=(P2−R1/√2)/2となる。したがって、平坦部14aから周縁部14cの外縁までの距離R4は、第1の実施形態の凹部12における平坦部12aから周縁部12cの外縁までの距離R3よりも大きい。すなわち、X方向においては、凹部14の断面形状は、第1の実施形態の凹部12の断面形状と異なっている。
【0107】
第2の実施形態に係るマイクロレンズML2(凹部14)では、X方向とW方向とにおける平坦部14aから周縁部14cの外縁までの距離の差(R2−R4)が、第1の実施形態の凹部12のX方向とW方向とにおける平坦部12aから周縁部12cの外縁までの距離の差(R2−R3)よりも小さくなる。すなわち、凹部14では、画素Pの領域内の全周における周縁部14cの幅(長さ)の差が凹部12よりも小さくなる。
【0108】
そのため、第1の実施形態の凹部12と比べて、画素Pの領域の周縁部に入射する光を集光せず画素Pの中心側へ屈折させる周縁部14cが、画素Pの領域内の全周においてより均一に配置される。これにより、第2の実施形態に係るマイクロレンズML2(凹部14)を備える液晶装置1において、より明るい表示と、より良好なコントラストとを得ることができる。
【0109】
図11に、第2の実施形態に係るマイクロレンズML2の画素Pの領域内における照度の分布を模式的に示す。
図11は、平坦部14aの最大の長さR1が画素Pの配置ピッチP2の50%の場合である。
図11において、照度をS1c、S2c、S3c、S4c、S5cの5段階で示しており、S1cが最も照度が高く、S2c、S3c、S4c、S5cの順に照度が低くなっている。
【0110】
図11に示すように、第2の実施形態に係るマイクロレンズML2では、照度が高いS2cの領域が、平坦部14aの4つの角部に対応して広がるように分布している。そのため、第2の実施形態に係るマイクロレンズML1と同様に、従来の略球面状のマイクロレンズML4と比べて、画素Pの領域内における明るさの分布がより均一となり、特定領域への光の集中が緩和されるので、組ずれが生じた場合に目立ちにくくなり、液晶層40の液晶の劣化が抑えられる。
【0111】
ここで、第1の実施形態に係るマイクロレンズML1および第2の実施形態に係るマイクロレンズML2における平坦部14aの領域の大きさと光利用効率との関係について、
図12を参照して説明する。
図12は、マイクロレンズの平坦部の領域の大きさと光利用効率との関係を示す図である。なお、ここでいう「光利用効率」とは、マイクロレンズML1またはマイクロレンズML2を備えた液晶装置1をプロジェクターの液晶ライトバルブとして用いてスクリーンに表示される画像の明るさを指す。
【0112】
図12(a)は、従来の球面状のマイクロレンズML4を基準として、略円形の平坦部12aを有する第1の実施形態に係るマイクロレンズML1(凹部12)と、略矩形の平坦部14aを有する第2の実施形態に係るマイクロレンズML(凹部14)との光利用効率をシミュレーションにより比較したグラフである。横軸は、画素Pの配置ピッチP2(以下では、単に画素ピッチという)である。縦軸は、光利用効率であり、従来の球面状のマイクロレンズML4(平坦部なし)を「1」としている。
【0113】
図12(a)では、画素ピッチを異ならせて、平坦部12aおよび平坦部14aの最大の長さR1が各画素ピッチの25%である場合と50%である場合とを比較している。画素ピッチが10μmであると、平坦部14aの最大の長さR1は、25%である場合に2.5μmとなり、50%である場合に5μmとなる。
【0114】
略円形の平坦部12aおよび略矩形の平坦部14aのいずれも、画素ピッチが大きくなるほど光利用効率が高くなる傾向が見られ、この傾向は最大の長さR1が画素ピッチの50%である場合の方が25%である場合よりも強い。一方、画素ピッチが小さいと、最大の長さR1が画素ピッチの25%である場合の方が50%である場合よりも光利用効率が高くなる。略円形の平坦部12aと略矩形の平坦部14aとを比較すると、最大の長さR1が各画素ピッチの25%である場合には大きな差はないが、最大の長さR1が各画素ピッチの50%である場合には、略矩形の平坦部14aの方が光利用効率が高い。
【0115】
上述のように、第1の実施形態に係るマイクロレンズML1および第2の実施形態に係るマイクロレンズML2では、画素ピッチが大きい場合に、従来の球面状のマイクロレンズML4よりも高い光利用効率を得ることができる。また、第2の実施形態に係るマイクロレンズML2の方が、第1の実施形態に係るマイクロレンズML1よりもこの効果が大きい。これは、第1の実施形態の凹部12と比べて、第2の実施形態の凹部14の方が、画素Pの領域の周縁部に入射する光を集光せず画素Pの中心側へ屈折させる周縁部14cを画素Pの領域内の全周においてより均一に配置できるためと考えられる。
【0116】
図12(b)は、従来の球面状のマイクロレンズML4を基準として、第2の実施形態に係るマイクロレンズML(凹部14)の略矩形の平坦部14aの大きさを異ならせたときの光利用効率をシミュレーションにより比較したグラフである。横軸は、画素ピッチ(P2)に対する平坦部14aの最大の長さR1の比率である。縦軸は、光利用効率であり、従来の球面状のマイクロレンズML4(平坦部なし)を「1」としている。P(1)、P(2)、P(3)、P(4)、P(5)、P(6)は、それぞれ異なる画素ピッチの値に対応しており、この順に画素ピッチが大きくなっている。
【0117】
画素ピッチがいずれの場合も、画素ピッチに対する平坦部14aの大きさが大きくなるにつれて光利用効率が大きくなるが、画素ピッチに対する平坦部14aの大きさがさらに大きくなると光利用効率が低下する傾向がある。したがって、いずれの画素ピッチにおいても、平坦部14aの大きさに好適な範囲が存在する。画素ピッチがP(1)、P(2)、P(3)、P(4)、P(5)、P(6)のそれぞれの場合を比較すると、画素ピッチが大きくなるほど光利用効率が高くなる。また、画素ピッチが大きくなるほど、平坦部14aの大きさの好適な範囲(光利用効率が高くなる範囲)が広くなり、平坦部14aが大きい方が光利用効率が高くなる。
【0118】
<マイクロレンズアレイ基板の製造方法>
第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10Aの製造方法は、第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10の製造方法に対して、
図7(c)に示すマスク層71の開口部72の形状が異なる点が異なる。第2の実施形態では、開口部72は平面視で略矩形であり、開口部72の対角線の長さは平坦部14aの対角線R1と略同一に設定される。上記の点以外は第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10の製造方法とほぼ同じであるので、説明を省略する。
【0119】
(第3の実施形態)
<電子機器>
次に、第3の実施形態に係る電子機器について
図13を参照して説明する。
図13は、第3の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクターの構成を示す概略図である。
【0120】
図13に示すように、第3の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクター(投射型表示装置)100は、偏光照明装置110と、2つのダイクロイックミラー104,105と、3つの反射ミラー106,107,108と、5つのリレーレンズ111,112,113,114,115と、3つの液晶ライトバルブ121,122,123と、クロスダイクロイックプリズム116と、投射レンズ117とを備えている。
【0121】
偏光照明装置110は、例えば超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とを備えている。ランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とは、システム光軸Lxに沿って配置されている。
【0122】
ダイクロイックミラー104は、偏光照明装置110から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー105は、ダイクロイックミラー104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0123】
ダイクロイックミラー104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー106で反射した後にリレーレンズ115を経由して液晶ライトバルブ121に入射する。ダイクロイックミラー105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ114を経由して液晶ライトバルブ122に入射する。ダイクロイックミラー105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ111,112,113と2つの反射ミラー107,108とで構成される導光系を経由して液晶ライトバルブ123に入射する。
【0124】
光変調素子としての透過型の液晶ライトバルブ121,122,123は、クロスダイクロイックプリズム116の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ121,122,123に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調され、クロスダイクロイックプリズム116に向けて射出される。
【0125】
クロスダイクロイックプリズム116は、4つの直角プリズムが貼り合わされて構成されており、その内面には赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ117によってスクリーン130上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0126】
液晶ライトバルブ121は、上述した実施形態のマイクロレンズアレイ基板10,10Aのいずれかを備える液晶装置1が適用されたものである。液晶ライトバルブ121は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ122,123も同様である。
【0127】
第3の実施形態に係るプロジェクター100の構成によれば、複数の画素Pが高精細に配置されていても、明るい表示と良好なコントラストとを得ることができる液晶装置1を備えているので、品質が高く明るいプロジェクター100を提供することができる。
【0128】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
【0129】
(変形例1)
上記の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10,10Aは、凹部12,14の曲面部12b,14bの周囲にテーパー状の周縁部12c,14cを備える構成を有していたが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、周縁部がテーパー状ではなく曲面状である構成であってもよい。
図14は、変形例1に係るマイクロレンズの構成を示す概略断面図である。上記実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0130】
図14に示すように、変形例1に係るマイクロレンズアレイ基板10Bは、凹部15で構成されるマイクロレンズML3を備えている。凹部15は、中央部に配置された平坦部15aと、平坦部15aの周囲に配置された曲面部15bと、曲面部15bの周囲に配置された周縁部15cとを備えている。平坦部15aと曲面部15bと周縁部15cとは連続して形成されている。周縁部15cは、曲面状であるが曲面部15bよりも曲率半径が大きい。曲面部15bを上面11a側へ延長した仮想曲面15dを2点鎖線で示す。この仮想曲面15dの端部における接線と上面11aとがなす角度をθ2とし、周縁部15cの端部における接線と上面11aとがなす角度をθ3とすると、θ3はθ2よりも小さい。
【0131】
凹部15は、第1の実施形態の凹部12または第2の実施形態の凹部14と同様にして形成されるが、
図8(c)に示すエッチング工程において、曲面部15bから外縁側に向かって曲率半径が大きくなるように凹部15が形成される。このような凹部15の形状は、基板11の深さ方向における単位時間当たりのエッチング量に対する幅方向における単位時間当たりのエッチング量を制御することにより形成できる。
【0132】
変形例1のマイクロレンズML3のように周縁部15cがテーパー状ではなく曲面状であっても、θ3をθ2よりも小さくすることで、従来の略球面状の凹部16を有するマイクロレンズML4と比べて、周縁部15cに入射する光が屈折する角度を小さくすることができる。したがって、従来よりも明るい表示と良好なコントラストとを得ることができる。
【0133】
(変形例2)
上記の実施形態に係るマイクロレンズアレイ基板10,10Aの製造方法は、マスク層71の開口部72の形状、および制御膜70を設けることで等方性エッチングを施す工程において幅方向と深さ方向とのエッチングレートの差を制御することにより凹部12,14を形成する構成であったが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、基板11上にレジスト層を形成し、グレースケールマスクを用いた露光や多段階露光などにより、レジスト層に凹部12,14の元となる形状を形成し、レジスト層と基板11とに略同一のエッチング選択比で異方性エッチングを施すことにより、基板11に凹部12,14の形状を転写して形成することができる。なお、この場合、制御膜70は不要となる。
【0134】
(変形例3)
上述した液晶装置1では、マイクロレンズアレイ基板10を対向基板30に備えていたが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、マイクロレンズアレイ基板10を素子基板20に備えた構成としてもよい。また、マイクロレンズアレイ基板10を素子基板20および対向基板30の双方に備えた構成としてもよい。
【0135】
(変形例4)
上記の実施形態に係る液晶装置1を適用可能な電子機器は、プロジェクター100に限定されない。液晶装置1は、例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。