特許第6237077号(P6237077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237077
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   F04D29/30 C
   F04D29/30 E
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-208091(P2013-208091)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-71972(P2015-71972A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】湯田 盛仁
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−084394(JP,U)
【文献】 特開2013−040587(JP,A)
【文献】 特開昭59−090797(JP,A)
【文献】 国際公開第99/036701(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0301287(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0189557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力を利用してガスを圧縮する遠心圧縮機において、
内側にシュラウドを有したハウジングと、
前記ハウジング内に回転可能に設けられ、ハブ面が軸方向一方側から径方向外側に向かって延びたディスク、及び前記ディスクのハブ面に周方向に間隔を置い設けられかつ先端縁が前記ハウジングの前記シュラウドに沿うように軸方向の一方側から径方向外側に向かって延びた複数のブレードを備えたインペラと、を具備し、
各ブレード後縁におけるハブ側の羽根厚中心線とシュラウド側の羽根厚中心線が前記インペラの径方向に対して互いに反対方向へ傾斜するように構成されている遠心圧縮機。
【請求項2】
各ブレード後縁におけるハブ側の羽根厚中心線が前記径方向に対して前記インペラの回転方向側へ傾斜しかシュラウド側の羽根厚中心線が前記径方向に対して前記回転方向の反対方向側へ傾斜するように構成されている請求項1に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用して空気等のガスを圧縮する産業用遠心圧縮機、ガスタービン用遠心圧縮機等の遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠心圧縮機の高圧力比化の要請に伴い、遠心圧縮機の開発が活発化しており、本願の出願人も高圧力比化を図ることができる遠心圧縮機を出願し、その内容は公開さている(特許文献1参照)。そして、その先行技術に係る遠心圧縮機の構成等は、次のようになる。
【0003】
先行技術に係る遠心圧縮機は、ハウジングを具備しており、このハウジングは、内側に、シュラウド(収容壁)を有している。また、ハウジングのシュラウド内には、インペラが回転可能に設けられており、このインペラは、ハブ面(外周面)がインペラの軸方向一方側から径方向外側に向かって延びたディスクを備えている。更に、ディスクのハブ面には、インペラの構成部材である複数のブレードが周方向に間隔を置いて一体的に設けられており、各ブレードの先端縁は、ハウジングのシュラウドに沿うように延びている。ここで、各ブレードは、後縁の羽根厚中心線がインペラの径方向に対してインペラの回転方向側へ傾斜するように構成されている。
【0004】
ハウジングの内部には、環状のトリートメント空洞部が形成されており、ハウジングのシュラウドにおけるブレードの前縁よりも下流側には、空気を抽気するための抽気開口部がトリートメント空洞部に連通して形成されている。また、ハウジングのシュラウドにおけるブレードの前縁よりも上流側には、ガスをインペラの入口側へ流出させるための流出開口部がトリートメント空洞部に連通して形成されている。そして、ハウジングの流出開口部内には、複数のフィンが周方向に沿って間隔を置いて設けられており、各フィンは、前記径方向に対して前記回転方向の反対側へ傾斜するように構成されている。
【0005】
前述の構成により、遠心圧縮機の運転を開始して、インペラを回転させることにより、ハウジング内に吸入したガスを遠心力を利用して圧縮する。なお、圧縮されたガスは、ハウジングの外側へ排出される。
【0006】
遠心圧縮機の運転中に、ハウジング内に吸入されるガスの流量(実際の流量)が少なくなると、インペラ側へ流入したガスの一部が抽気開口部によって抽気され、トリートメント空洞部内に流入する。そして、トリートメント空洞部内に流入したガスは、抽気開口部側から流出開口部側へ流れて、流出開口部からインペラの入口側へ流出する。これにより、インペラ側へ流入したガスの一部を流出開口部と抽気開口部との間で循環させて、インペラ側へ流入するガスの見かけの流量を実際の流量よりも多くすることができる。
【0007】
更に、後縁の羽根厚中心線が前記径方向に対して前記回転方向側へ傾斜するように各ブレードが構成されているため、インペラの外径を縮小して、インペラの高周速化を抑えつつ、設計点付近(設計点を含む)における断熱ヘッド(インペラの仕事量に相当)を十分に確保することができる。これにより、ハウジングのシュラウド又はインペラの背面とガスとの摩擦損失の増大、ガスとの摩擦によるインペラの温度上昇を抑えつつ、遠心圧縮機の高圧力比化を図ることができる。
【0008】
各フィンが前記径方向に対して前記回転方向の反対側へ傾斜するように構成されているため、インペラの入口側の流れに前記回転方向と反対方向の旋回(旋回流)を与えて、サージ近傍における断熱ヘッドの低下を十分に抑えることができる。これにより、遠心圧縮機の低流量側の作動範囲を十分に確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−40587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述のように、遠心圧縮機の低流量側の作動範囲を十分に確保した上で、ハウジングのシュラウド等とガスとの摩擦損失の増大等を抑えつつ、遠心圧縮機の高圧力比化を図るには、インペラの入口側の流れに前記回転方向と反対方向の旋回を与える複数のフィンが必要になる。そのため、遠心圧縮機の部品点数が増えて、遠心圧縮機の構成の複雑化及び製造コストの増大を招くことになる。
【0011】
つまり、遠心圧縮機の低流量側の作動範囲を十分に確保した上で、ハウジングのシュラウド等とガスとの摩擦損失の増大等を抑えつつ、遠心圧縮機の高圧力比、構成の簡略化、及び製造コストの低減を図ることは容易でないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様は、遠心力を利用してガスを圧縮する遠心圧縮機において、内側にシュラウド(収容壁)を有したハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に設けられ、ハブ面(外周面)が軸方向一方側から径方向外側に向かって延びたディスク、及び前記ディスクのハブ面に周方向に間隔を置い設けられかつ先端縁が前記ハウジングの前記シュラウドに沿うように軸方向の一方側から径方向外側に向かって延びた複数のブレードを備えたインペラと、を具備し、各ブレード後縁におけるハブ側の羽根厚中心線とシュラウド側(チップ側)の羽根厚中心線が前記インペラの径方向に対して互いに反対方向へ傾斜するように構成され、換言すれば、各ブレードの後縁におけるハブ側の羽根厚中心線とシュラウド側の羽根厚中心線のうちの一方の羽根厚中心線が前記径方向に対して前記回転方向側へ傾斜し、かつ各ブレードの後縁におけるハブ側の羽根厚中心線とシュラウド側の羽根厚中心線のうちの他方の羽根厚中心線が前記径方向に対して前記回転方向の反対側へ傾斜するように構成されていることである。
【0014】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、「ガス」とは、空気、窒素ガス、水素ガス等を含む意である。また、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意であって、「一体的に設けられ」とは、一体形成されたことを含む意である。
【0015】
本発明の態様によると、前記遠心圧縮機の運転を開始して、前記インペラを回転させることにより、前記ハウジング内に吸入したガスを遠心力を利用して圧縮する。なお、圧縮されたガスは、前記ハウジングの外側へ排出される。
【0016】
前述の作用の他に、各ブレードの後縁における前記一方の羽根厚中心線が前記径方向に対して前記回転方向側へ傾斜するように構成されているため、前記インペラの外径を縮小して、前記インペラの高周速化を抑えつつ、各ブレードのハブ側又はシュラウド側のいずれかにおいて、設計点付近(設計点を含む)における断熱ヘッド(前記インペラの仕事量に相当)を十分に確保することができる。
【0017】
各ブレードの後縁における前記他方の羽根厚中心線が前記径方向に対して前記回転方向の反対側へ傾斜するように構成されているため、前記インペラの入口側の流れに前記回転方向と反対方向の旋回を与える複数のフィンを用いなくても、各ブレードのシュラウド側又はハブ側のいずれかにおいて、サージ近傍における断熱ヘッドを十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記インペラの外径を縮小して、前記インペラの高周速化を抑えつつ、各ブレードのハブ側又はシュラウド側のいずれかにおいて、設計点付近における断熱ヘッドを十分に確保できるため、前記ハウジングの前記シュラウド又は前記インペラの背面とガスとの摩擦損失の増大、ガスとの摩擦による前記インペラの温度上昇を抑えつつ、前記遠心圧縮機の高圧力比化を図ることができる。また、複数の前記フィンを用いなくても、各ブレードのシュラウド側又はハブ側のいずれかにおいて、サージ近傍における断熱ヘッドを十分に確保できるため、前記遠心圧縮機の低流量側の作動範囲を十分に確保しつつ、前記遠心圧縮機の部品点数を削減して、前記遠心圧縮機の構成の簡略化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0019】
つまり、本発明によれば、前記遠心圧縮機の低流量側の作動範囲を十分に確保した上で、前記ハウジングの前記シュラウド等とガスとの摩擦損失等の増大を抑えつつ、前記遠心圧縮機の高圧力比化、構成の簡略化、及び製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機におけるインペラの正面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機におけるインペラの斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機の模式的な側断面図である。
図4図4(a)は、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機におけるハブ側のブレード出口の速度三角形を示す図、図4(b)は、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機におけるシュラウド側のブレード出口の速度三角形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図1から図4(a)(b)を参照して説明する。なお、図面中において、「F」は、前方向、「R」は、後方向をそれぞれ指してある。
【0022】
図1から図3に示すように、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機1は、ガスタービン又は産業用空気設備等に用いられ、遠心力を利用して空気(ガスの一例)Aを圧縮するものである。そして、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機1の具体的な構成は、以下のようになる。
【0023】
本発明の実施形態に係る遠心圧縮機1は、ハウジング3を具備しており、このハウジング3は、内側にシュラウド(収容壁)5sを有したハウジング本体5と、このハウジング本体5の後側に設けられたシールプレート7とを備えている。なお、シールプレート7は、ガスタービン又は産業用空気設備等における別のハウジング(図示省略)に一体的に連結されている。
【0024】
ハウジング本体5内には、インペラ9がその軸心9c周りに回転可能に設けられており、このインペラ9は、別のハウジングに回転可能に設けられたロータ軸11に固定ナット13を介して一体的に連結されている。また、インペラ9は、ディスク15を備えており、このディスク15のハブ面15hは、軸方向(インペラ9の軸方向)AD一方側(前側)から径方向(インペラ9の径方向)RD外側に向かって延び、かつディスク15の背面15bは、シールプレート7に対向してある。更に、ディスク15のハブ面15hには、インペラ9の構成部材である複数のブレード(羽根)17が周方向に間隔を置いて設けられており、各ブレード17の先端縁17tは、ハウジング本体5のシュラウド5sに沿うように延びている。ここで、各ブレード17の軸長、具体的には、各ブレード17の前縁17fのシュラウド側端(チップ側端)17fsから後縁17rのハブ側端17rhまでのインペラ9の軸方向ADの長さは、同じ長さに設定されている。なお、軸長の同じブレード17を用いる代わりに、軸長の異なる複数種のブレード(図示省略)を用いても構わない。
【0025】
ハウジング本体5におけるインペラ9の入口側(空気Aの主流の流れ方向から見て上流側)には、ハウジング3内に空気Aを吸入するための吸入口19が形成されている。また、ハウジング本体5内におけるインペラ9の出口側(空気Aの主流の流れ方向から見て下流側)には、圧縮した空気Aを減速させて昇圧する環状のディフューザ流路21が形成されている。更に、ハウジング本体5の適宜位置には、ハウジング3内から圧縮した空気Aを排出するための排出口(図示省略)が形成されており、この排出口は、ディフューザ流路21に連通してある。
【0026】
続いて、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機1の要部について説明する。
【0027】
図1及び図4(a)(b)に示すように、各ブレード17は、後縁17rにおけるハブ側(基端側)の羽根厚中心線17cとシュラウド側(チップ側)の羽根厚中心線17cが径方向RDに対して互いに反対方向へ傾斜するように構成されている。ここで、後縁17rにおけるハブ側とは、後縁17rのうちディスク15のハブ面15h側に位置する部分のことをいい、後縁17rにおけるシュラウド側とは、後縁17rのうちハウジング本体5(ハウジング3)のシュラウド5s側に位置する部分のことをいう。
【0028】
具体的には、各ブレード17は、後縁17rにおけるハブ側の羽根厚中心線17cが径方向RDに対して回転方向(インペラ9の回転方向)SD側へ傾斜するように構成されており、各ブレード17におけるハブ側の出口羽根角βhの符号は、正になっている。また、各ブレード17は、後縁17rにおけるシュラウド側の羽根厚中心線17cが径方向RDに対して回転方向SDの反対方向側へ傾斜するように構成されており、各ブレード17におけるシュラウド側の出口羽根角βsの符号は、負になっている。ここで、ブレード17におけるハブ側の出口羽根角βhとは、径方向RDとブレード17の後縁17rにおけるハブ側の羽根厚中心線17cとのなす角のことをいう。ブレード17におけるシュラウド側の出口羽根角βsとは、径方向RDとブレード17の後縁17rにおけるシュラウド側の羽根厚中心線17cとのなす角のことをいう。
【0029】
なお、各ブレード17が前述のように構成される代わりに、後縁17rにおけるハブ側の羽根厚中心線17cが径方向RDに対して回転方向SDの反対方向側へ傾斜しかつ後縁17rにおけるシュラウド側の羽根厚中心線17cが径方向RDに対して回転方向SD側へ傾斜するように構成されても構わない。
【0030】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
(i) 通常の作用
遠心圧縮機1の運転を開始して、ロータ軸11の回転によってインペラ9を一体的に回転させることにより、吸入口19を経由してハウジング3内に吸入した空気Aを遠心力を利用して圧縮する。なお、圧縮された空気Aは、ディフューザ流路21によって昇圧され、排出口を経由してハウジング3の外側へ排出される。
【0032】
(ii) 特有の作用
遠心圧縮機1の圧力比に相関するものとして断熱ヘッドHがあり、断熱ヘッドHが大きくなると遠心圧縮機1の圧力比が大きくなるようになっている。そして、断熱ヘッドHは、次式によって示される。
【0033】
H=η(U2Cu2−U1Cu1)G ‥‥式(1)
η:圧縮機効率
2:ブレード出口周速(インペラ出口周速)
Cu2:ブレード出口絶対速度(インペラ出口絶対速度)の周方向成分
1:ブレード入口周速(インペラ出口周速)
Cu1:ブレード入口絶対速度(インペラ入口絶対速度)の周方向成分
G:空気の流量
インペラ9の入口で旋回流がない場合には、ブレード入口絶対速度の周方向成分Cu1を無視することができ、式(1)を次式に置き換えることができる。
【0034】
H=ηU2Cu2G ‥‥式(2)
ここで、図4(a)(b)において、実線矢印で示すU2は、大流量側(設計点付近)におけるブレード出口周速(インペラ出口周速)、点線矢印で示すU2は、小流量側(サージ付近)におけるブレード出口周速である。また、実線矢印で示すV2は、大流量側におけるブレード出口相対速度(インペラ出口相対速度)、点線矢印で示すV2は、小流量側におけるブレード出口相対速度である。更に、実線矢印で示すC2は、大流量側におけるブレード出口絶対速度(インペラ出口絶対速度)、点線矢印で示すC2は、小流量側におけるブレード出口絶対速度、実線矢印で示すCu2は、大流量側におけるブレード出口絶対速度の周方向成分、点線矢印で示すCu2は、小流量側におけるブレード出口絶対速度の周方向成分である。
【0035】
各ブレード17の後縁17rにおけるハブ側の羽根厚中心線17cが径方向RDに対して回転方向SD側へ傾斜するように構成されているため、前述の断熱ヘッドHの式(2)を適用すると、インペラ9の外径を縮小して、インペラ9の高周速化を抑えつつ、各ブレード17のハブ側において、大流量側におけるブレード出口絶対速度の周方向成分Cu2を大きくして、設計点付近(設計点を含む)における断熱ヘッド(インペラ9の仕事量に相当)を十分に確保することができる。
【0036】
各ブレード17の後縁17rにおけるシュラウド側の羽根厚中心線17cが径方向RDに対して回転方向SDの反対側へ傾斜するように構成されているため、インペラ9の入口側の流れに回転方向SDと反対方向の旋回を与える複数のフィンを用いなくても、前述の断熱ヘッドHの式(2)を適用すると、各ブレード17のシュラウド側において、小流量側におけるブレード出口絶対速度の周方向成分Cu2を大きくして、サージ近傍における断熱ヘッドを十分に確保することができる。また、同様に、前述の断熱ヘッドHの式(2)を適用すると、各ブレード17の後縁17rにおけるシュラウド側の羽根厚中心線17cが径方向RDに対して回転方向SD側へ傾斜している場合に比べて、各ブレード17のシュラウド側の断熱ヘッドHを小さくして、各ブレード17のシュラウド側における正圧面と負圧面の圧力差を小さくすることができる。
【0037】
従って、本発明の実施形態によれば、インペラ9の外径を縮小して、インペラ9の高周速化を抑えつつ、各ブレード17のハブ側において設計点付近における断熱ヘッドを十分に確保できるため、ハウジング本体5のシュラウド5s又はインペラ9の背面と空気との摩擦損失の増大、空気との摩擦によるインペラ9の温度上昇を抑えつつ、遠心圧縮機1の高圧力比化を図ることができる。また、複数のフィンを用いなくても、各ブレード17のシュラウド側においてサージ近傍における断熱ヘッドを十分に確保できるため、遠心圧縮機1の低流量側の作動範囲を十分に確保しつつ、遠心圧縮機1の部品点数を削減して、遠心圧縮機1の構成の簡略化及び製造コストの低減を図ることができる。更に、各ブレード17のシュラウド側の断熱ヘッドHを小さくして、各ブレード17のシュラウド側における正圧面と負圧面の圧力差を小さくできるため、ブレード17の正圧面側から負圧面側へ流れるクリアランスフローを低減して、遠心圧縮機1の圧縮機効率の向上を図ることできる。
【0038】
つまり、本発明の実施形態によれば、遠心圧縮機1の低流量側の作動範囲を十分に確保した上で、ハウジング本体5のシュラウド5s等と空気との摩擦損失等の増大を抑えつつ、遠心圧縮機1の高圧力比化、構成の簡略化、製造コストの低減、及び圧縮機効率の向上を図ることができる。
【0039】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0040】
1:遠心圧縮機、3:ハウジング、5:ハウジング本体、5s:シュラウド、7:シールプレート、9:インペラ、9c:軸心、11:ロータ軸、13:固定ナット、15:ディスク、15b:背面、15h:ハブ面、17:ブレード、17c:羽根厚中心線、17f:前縁、17fs:前縁のシュラウド側端、17r:後縁、17rh:後縁のハブ側端、17t:先端縁、19:吸入口、21:ディフューザ流路、βs:ブレードにおけるシュラウド側の出口羽根角、βh:ブレードにおけるハブ側の出口羽根角
図1
図2
図3
図4