(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下部フランジ及び前記上部フランジは、各々の周方向の一部が切り欠かれ、前記下部杭に設けられた螺旋状羽根の螺旋ピッチと略同一の螺旋ピッチで、螺旋状に形成されること
を特徴とする請求項1記載の杭の継手構造。
前記下部フランジ及び前記上部フランジは、各々にボルト孔が形成され、前記下部フランジの上面と前記上部フランジの下面とを面当接させた状態で、ボルト接合されること を特徴とする請求項1又は2記載の杭の継手構造。
前記下部フランジ及び前記上部フランジは、前記下部フランジの上面及び前記上部フランジの下面の何れか一方又は両方に、上下方向に突出させて形成された凸部と、前記下部フランジの上面と前記上部フランジの下面とを面当接させた状態で、前記凸部が挿入される凹部とを有すること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の杭の継手構造。
前記下部フランジ及び前記上部フランジは、上面側の端面が切り欠かれた下部溝が前記下部フランジの側面に形成されるとともに、下面側の端面が切り欠かれた上部溝が前記上部フランジの側面に形成され、前記下部フランジの上面と前記上部フランジの下面とを面当接させた状態で、前記下部溝と前記上部溝とにキー部材が架設されること
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の杭の継手構造。
前記圧入工程の後で、さらに、地盤中に一体に回転圧入された下部杭と上部杭及び中間杭の何れか一方又は両方との内側に一括して経時硬化性材料を注入して杭を補強する補強工程を備えること
を特徴とする請求項6又は7記載の杭の立設方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、鋼管杭の端部を溶接によって接合する方法は、地盤中に打ち込まれた鋼管杭の端部と、この鋼管杭に連接される他の鋼管杭の端部とを、現場溶接により接合するものであるため、鋼管杭の杭径、板厚の大きさに比例して、溶接作業に要する時間が増大することになり、杭の打ち込みの工期が長期化するだけでなく、杭の打ち込みの施工コストが増大することになるという問題点があった。また、鋼管杭の端部を溶接によって接合する方法は、屋外で鋼管杭が打ち込まれる場合に、雨天や強風等の荒天時に溶接を実施すると、溶接個所で溶接不良を発生させることになり、溶接個所が所定の強度(圧縮・引張・せん断等)を満たさないおそれがあるため、この溶接不良の発生を回避するために施工を中断する必要があり、杭の打ち込みの工期が長期化するおそれがあるという問題点があった。
【0010】
また、特許文献1に開示された杭の継手構造は、溶接による接合を必要としないで、鋼管杭の端部に機械式継手を設けて接合するものであるため、溶接による接合より短い工期での施工を実現するものである。しかし、特許文献1に開示された杭の継手構造は、鋼管杭の雄側端部及び雌側端部の構造が複雑であり、また、外向き係合凸部と内向き係合凸部とを係合させて、鋼管杭に作用する押込荷重、引張荷重、曲げ荷重に抵抗させるものであることから、全体的に、又は継手部分においてのみ、鋼管杭の板厚が増大するおそれがある。
【0011】
このため、特許文献1に開示された杭の継手構造は、全体的に、又は継手部分においてのみ、鋼管杭の板厚が内側に向けて増大し、鋼管杭の内径が小さいものとなることから、
図12に示すハンマグラブ19を用いることが困難となるか、又は小径のハンマグラブ19を用いざるを得ないことになる。このとき、特許文献1に開示された杭の継手構造は、鋼管杭の打ち込みとともに、鋼管杭の内側からの排土をハンマグラブ19によって効率的に実施することができず、杭の打ち込みの工期が長期化するだけでなく、杭の打ち込みの施工コストが増大することになるという問題点があった。
【0012】
さらに、特許文献2に開示された杭の継手構造は、杭本体よりも外径の大きい端板が、軸芯方向に対して直角に設けられるため、杭が地盤に打ち込まれるときの進行方向に対して、端板が直角に抵抗することになり、杭の地盤に対する打ち込みに要する荷重が増大することから、杭の打ち込みの施工コストが増大するだけでなく、杭の打ち込みの工期が長期化するおそれがあるという問題点があった。
【0013】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、溶接による接合よりも短時間で杭の端部を接合できるとともに、杭の打ち込みを効率的に実施することができ、杭の打ち込みの施工コストの増大と、杭の打ち込みの工期の長期化とを回避することのできる杭の継手構造及び杭の立設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係る杭の継手構造は、下端部及び中間部の何れか一方又は両方に螺旋状羽根が設けられた杭に他の杭を連接するための杭の継手構造であって、下部杭又は中間杭の上端部で外周面から外側に延びるように形成された下部フランジと、上部杭又は中間杭の下端部で外周面から外側に延びるように形成された上部フランジとを備え、前記下部フランジ及び前記上部フランジは、螺旋状に形成され、前記下部フランジの上面と前記上部フランジの下面とを面当接させた状態で、相互に接合され、前記下部フランジの軸心直交方向の幅及び前記上部フランジの軸心直交方向の幅は、前記螺旋状羽根の軸心直交方向の幅よりも小さく形成され
、前記下部フランジ及び前記上部フランジは、相互に接合された状態で、杭の回転圧入による回転力と、軸芯方向に作用する圧縮力及び引張力の何れか一方又は両方とを、下部杭の上端及び上部杭の下端における螺旋状羽根の終端部から軸芯方向に所定の長さを有する杭の端面である下部係止部及び上部係止部から、杭本体に伝達することができるように、互いに湾曲した前記下部係止部と前記上部係止部とが相互に係合して食い込むように係止されることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る杭の継手構造は、第1発明において、前記下部フランジ及び前記上部フランジは、各々の周方向の一部が切り欠かれ、前記下部杭に設けられた螺旋状羽根の螺旋ピッチと略同一の螺旋ピッチで、螺旋状に形成されることを特徴とする。
【0016】
第3発明に係る杭の継手構造は、第1発明又は第2発明において、前記下部フランジ及び前記上部フランジは、各々にボルト孔が形成され、前記下部フランジの上面と前記上部フランジの下面とを面当接させた状態で、ボルト接合されることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係る杭の継手構造は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記下部フランジ及び前記上部フランジは、前記下部フランジの上面及び前記上部フランジの下面の何れか一方又は両方に、上下方向に突出させて形成された凸部と、前記下部フランジの上面と前記上部フランジの下面とを面当接させた状態で、前記凸部が挿入される凹部とを有することを特徴とする。
【0018】
第5発明に係る杭の継手構造は、第1発明〜第4発明の何れかにおいて、前記下部フランジ及び前記上部フランジは、上面側の端面が切り欠かれた下部溝が前記下部フランジの側面に形成されるとともに、下面側の端面が切り欠かれた上部溝が前記上部フランジの側面に形成され、前記下部フランジの上面と前記上部フランジの下面とを面当接させた状態で、前記下部溝と前記上部溝とにキー部材が架設されることを特徴とする。
【0023】
第
6発明に係る杭の立設方法は、下端部及び中間部の何れか一方又は両方に螺旋状羽根が設けられた杭に他の杭を連接して地盤中に立設する杭の立設方法であって、下部杭又は中間杭の上端部で外周面から外側に延びて螺旋状に形成されるとともに軸心直交方向の幅が前記螺旋状羽根の軸心直交方向の幅よりも小さく形成された下部フランジと、上部杭又は中間杭の下端部で外周面から外側に延びて螺旋状に形成されるとともに軸心直交方向の幅が前記螺旋状羽根の軸心直交方向の幅よりも小さく形成された上部フランジとを、前記下部フランジの上面と前記上部フランジの下面とを面当接させて相互に接合させた状態で、
杭の回転圧入による回転力と、軸芯方向に作用する圧縮力及び引張力の何れか一方又は両方とを、下部杭の上端及び上部杭の下端における螺旋状羽根の終端部から軸芯方向に所定の長さを有する杭の端面である下部係止部及び上部係止部から、杭本体に伝達することができるように、互いに湾曲した前記下部係止部と前記上部係止部とが相互に係合して食い込むように係止させ、下部杭と上部杭及び中間杭の何れか一方又は両方とを一体に地盤中に回転圧入する圧入工程を備えることを特徴とする。
【0024】
第
7明に係る杭の立設方法は、第
6発明において、前記圧入工程の後で、さらに、地盤中に一体に回転圧入された下部杭と上部杭及び中間杭の何れか一方又は両方との内側から土砂を排出する排土工程を備えることを特徴とする。
【0025】
第
8発明に係る杭の立設方法は、第
6発明又は第
7発明において、前記圧入工程の後で、さらに、地盤中に一体に回転圧入された下部杭と上部杭及び中間杭の何れか一方又は両方との内側に一括して経時硬化性材料を注入して杭を補強する補強工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
第1発明〜第
5発明によれば、下部フランジと、上部フランジとを相互に接合した状態で、杭の継手構造が螺旋状に形成されるため、杭の継手構造の回転圧入抵抗を小さくすることができ、下部杭及び上部杭の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することができ、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となるとともに、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0027】
また、第1発明〜第
5発明によれば、下部フランジ及び上部フランジが軸芯方向に対して傾斜しているため、下部フランジ及び上部フランジだけでなく、下部杭本体及び上部杭本体にも、圧縮力、引張力、曲げ力及びせん断力の一部を負担させることができ、継手部分の設計を容易にすることを可能とし、さらに、下部フランジの板厚及び上部フランジの板厚を薄くすることができることから、杭の継手構造による回転圧入抵抗を小さくして、下部杭及び上部杭の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することが可能となる。
【0028】
また、第1発明〜第
5発明によれば、下部杭、上部杭及び中間杭の外周面から外側に延びるように下部フランジ及び上部フランジが形成されるため、杭本体や継手部分の内径を大きくすることができ、杭の立設方法の圧入工程において、下部杭と上部杭又は中間杭との内側での土砂の移動を円滑にして、杭の回転圧入作業を容易に実施することが可能となる。
【0029】
さらに、第1発明〜第
5発明によれば、杭本体や継手部分の内径を大きくすることで、杭の立設方法の排土工程において、下部杭、上部杭及び中間杭の内側に、外径の大きいハンマグラブを用いることができ、土砂の排出作業を効率的に実施することが可能となるとともに、杭の立設方法の補強工程において、下部杭、上部杭及び中間杭の内側での経時硬化性材料の継手部分の通過を円滑にして、経時硬化性材料の充填作業を容易に実施することが可能となる。これにより、第1発明〜第
5発明によれば、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となる。
【0030】
特に、第2発明によれば、杭の継手構造の螺旋ピッチと、螺旋状羽根の螺旋ピッチとが、略同一の螺旋ピッチとなるように構成されることで、杭の継手構造の回転圧入抵抗を極小化することができるため、下部杭及び上部杭の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することができ、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となるとともに、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0031】
また、第2発明によれば、軸芯方向に所定の長さを有する下部係止部と上部係止部とが相互に係止された状態となり、下部係止部から下部杭本体に回転力の一部が伝達されるとともに、上部係止部から上部杭本体に回転力の一部が伝達され、下部フランジと上部フランジとを接合するボルトに作用する回転力を小さいものとして、ボルトの数量を少なくし、また、小径のボルトを用いることができ、簡単な作業で短時間に接合することで、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、材料コストが増大することを回避することが可能となる。
【0032】
特に、第3発明によれば、下部フランジと上部フランジとを、機械式のフランジ継手によりボルト接合するものであるため、溶接によって接合する場合と比べて、下部杭の上端部と上部杭の下端部とを短時間で接合することができ、また、簡単な作業で強固に接合することができる。これにより、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となる。
【0033】
特に、第4発明によれば、下部フランジの凸部が上部フランジの凹部に係止された状態となるため、下部フランジの凸部から下部フランジ及び上部フランジに回転力の一部が伝達され、下部フランジと上部フランジとを接合するボルトに作用する回転力を小さいものとすることができる。これにより、ボルトに作用する回転力を小さいものとして、ボルトの数量を少なくすることができ、ボルト締結の作業量を減少させて、簡単な作業で短時間に接合することができ、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0034】
特に、第5発明によれば、下部溝と上部溝とに係止されたキー部材により連結された状態となるため、回転力の一部がキー部材に伝達され、下部フランジと上部フランジとを接合するボルトに作用する回転力を小さいものとすることができる。これにより、ボルトに作用する回転力を小さいものとして、ボルトの数量を少なくすることができ、ボルト締結の作業量を減少させて、簡単な作業で短時間に接合することができ、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0035】
特に、第6発明によれば、下部係止部から下部杭本体に回転力の一部が伝達されるとともに、上部係止部から上部杭本体に回転力の一部が伝達されて、ボルトに作用する回転力を小さいものとすることができ、ボルトの数量を少なくし、また、小径のボルトを用いることができ、簡単な作業で短時間に接合することで、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、材料コストが増大することを回避することが可能となる。
【0036】
特に、第
1発明によれば、下部係止部が湾曲して形成されるとともに、上部係止部が湾曲して形成されることで、湾曲した下部係止部と上部係止部とが係合して食い込むことにより、圧縮力、引張力に対する抵抗力を増大させることが可能となる。
【0039】
第
6発明によれば、下部フランジと上部フランジとが相互に接合された状態で螺旋状に形成されるため、下部杭、上部杭及び中間杭を一体とした杭の継手構造の回転圧入抵抗を小さくして、下部杭及び上部杭の打ち込みに要する回転力の増大を抑制しながら、複数の杭を連接させて一括して回転圧入させることができ、杭の回転圧入作業と接合作業とを交互に繰り返す手間を低減させることが可能となる。
【0040】
第
7発明によれば、下部杭、上部杭及び中間杭を連接させてこれらの内側から一括して土砂を排出することができるため、土砂の排出作業と杭の接合作業とを交互に繰り返す手間を低減させることが可能となる。
【0041】
第
8発明によれば、下部杭、上部杭及び中間杭を連接させてこれらの内側に一括して経時硬化性材料を注入することができるため、経時硬化性材料の注入作業と杭の接合作業とを交互に繰り返す手間を低減させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を適用した杭の継手構造1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0044】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2と上部杭3とを軸芯方向Xに連接するために用いられる。本発明を適用した杭の継手構造1は、
図1に示すように、地盤中の支持層の深さに応じ、下部杭2と上部杭3との間に、所定の数量の中間杭4を連接させるものであり、下部杭2を所定の深さまで地盤中に打ち込むことができるものである。
【0045】
下部杭2は、
図2に示すように、下端部2aに螺旋状羽根11が設けられるとともに、上端部2bに下部フランジ12が設けられる。下部杭2は、これに限らず、地盤中で必要となる支持力に応じ、中間部2cに螺旋状羽根11を設けることもでき、下端部2a及び中間部2cの何れか一方又は両方に螺旋状羽根11を設けることができる。
【0046】
上部杭3は、
図3に示すように、下端部3aに上部フランジ13が設けられる。上部杭3は、上端部3bに下部フランジ12を設けることもでき、地盤中で必要となる支持力に応じ、中間部3cに螺旋状羽根11を設けて、地盤の中間層で螺旋状羽根11が周辺土から反力を得ることにより、上部杭3の軸芯方向Xの抵抗力を増大させることもできる。
【0047】
中間杭4は、
図4に示すように、下端部4aに上部フランジ13が設けられるとともに、上端部4bに下部フランジ12が設けられる。中間杭4は、地盤中で必要となる支持力に応じ、中間部4cに螺旋状羽根11を設けて、地盤の中間層で螺旋状羽根11が周辺土から反力を得ることにより、中間杭4の軸芯方向Xの抵抗力を増大させることもできる。
【0048】
螺旋状羽根11は、
図5に示すように、下部杭2の下端部2aにおいて、下部杭2の外周面から外側に延びるように設けられる。螺旋状羽根11は、螺旋状羽根11の上面11a及び下面11bが平面状に形成され、螺旋状羽根11の始端部11cから終端部11dまで、軸芯方向Xに所定の長さL1を有する。螺旋状羽根11は、軸芯直交方向Yに所定の幅W1を有するとともに、所定の板厚T1を有するものであり、始端部11cの端面を先鋭化したものとすることにより、杭の回転圧入抵抗を減少させることができる。
【0049】
螺旋状羽根11は、螺旋状羽根11の始端部11cから終端部11dまで、杭の周方向Zに一回転させて溶接等によって設けられるものである。螺旋状羽根11は、地盤に対して下部杭2を回転圧入させる場合に、地盤中で下部杭2を周方向Zに一回転させることにより、下部杭2を地盤中で軸芯方向Xの所定の長さL1だけ圧入させることができるものであり、軸芯方向Xで長さL1と略同一長さの所定の螺旋ピッチP1により構成されるものとなる。
【0050】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図6に示すように、下部杭2の上端部2bで外周面から外側に延びるように螺旋状に形成された下部フランジ12と、上部杭3の下端部3aで外周面から外側に延びるように螺旋状に形成された上部フランジ13とを備える。本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12の
図7に示す上面12aと、上部フランジ13の
図9に示す下面13bとを面当接させた状態で、下部フランジ12と、上部フランジ13とをボルト接合等により相互に接合させるものである。
【0051】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第1実施形態において、下部フランジ12の
図7に示す上面12a及び下面12bが平面状に形成され、また、上部フランジ13の
図9に示す上面13a及び下面13bが平面状に形成される。
【0052】
下部フランジ12は、
図7に示すように、下部フランジ12の始端部12cから終端部12dまで、下部杭2の上端部2bで、下部杭2の周方向Zに溶接等によって取り付けられる。下部フランジ12は、下部フランジ12の上面12aから下面12bまで、下部フランジ12の上面12a及び下面12bに直交する方向に貫通された複数のボルト孔12eが形成される。
【0053】
下部フランジ12は、下部杭2の上端部2bの一部を軸芯方向Xに直線状に切り欠くことにより、直線状の下部係止部14が形成される。下部フランジ12は、これに限らず、
図8に示すように、下部杭2の上端部2bの一部を軸芯方向Xに湾曲させて切り欠くことにより、湾曲した下部係止部14が形成されてもよい。
【0054】
下部フランジ12は、下部フランジ12の始端部12cから終端部12dまで、軸芯方向Xに所定の長さL2を有する。下部フランジ12は、複数のボルト孔12eを形成することができるように、軸芯直交方向Yに所定の幅W2を有するとともに、所定の板厚T2を有するものであり、始端部12cの端面を先鋭化したものとすることもできる。
【0055】
下部フランジ12は、下部フランジ12の始端部12cから終端部12dまで、杭の周方向Zに一回転させて設けられるものである。下部フランジ12は、地盤に対して下部杭2を回転圧入させる場合に、地盤中で下部杭2を周方向Zに一回転させることにより、下部杭2を地盤中で軸芯方向Xの所定の長さL2だけ圧入させることができるものであり、軸芯方向Xで長さL2と略同一長さの所定の螺旋ピッチP2により構成されるものとなる。
【0056】
上部フランジ13は、
図9に示すように、上部フランジ13の始端部13cから終端部13dまで、上部杭3の下端部3aで、上部杭3の周方向Zに溶接等によって取り付けられる。上部フランジ13は、上部フランジ13の上面13aから下面13bまで、上部フランジ13の上面13a及び下面13bに直交する方向に貫通された複数のボルト孔13eが形成される。
【0057】
上部フランジ13は、上部杭3の下端部3aの一部を軸芯方向Xに直線状に切り欠くことにより、直線状の上部係止部15が形成される。上部フランジ13は、これに限らず、
図10に示すように、上部杭3の下端部3aの一部を軸芯方向Xに湾曲させて切り欠くことにより、湾曲した上部係止部15が形成されてもよい。
【0058】
上部フランジ13は、上部フランジ13の始端部13cから終端部13dまで、軸芯方向Xに所定の長さL3を有する。上部フランジ13は、複数のボルト孔13eを形成することができるように、軸芯直交方向Yに所定の幅W3を有するとともに、所定の板厚T3を有するものであり、始端部13cの端面を先鋭化したものとすることもできる。
【0059】
上部フランジ13は、上部フランジ13の始端部13cから終端部13dまで、杭の周方向Zに一回転させて設けられるものである。上部フランジ13は、地盤に対して上部杭3を回転圧入させる場合に、地盤中で上部杭3を周方向Zに一回転させることにより、上部杭3を地盤中で軸芯方向Xの所定の長さL3だけ圧入させることができるものであり、軸芯方向Xで長さL3と略同一長さの所定の螺旋ピッチP3により構成されるものとなる。
【0060】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図11に示すように、下部フランジ12の螺旋ピッチP2と、上部フランジ13の螺旋ピッチP3とが、略同一の螺旋ピッチとなるように構成される。このため、本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状に形成された下部フランジ12の
図7に示す上面12aと、螺旋状に形成された上部フランジ13の
図9に示す下面13bとが面当接されることになる。
【0061】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12の軸芯直交方向Yの幅W2及び上部フランジ13の軸芯直交方向Yの幅W3を、螺旋状羽根11の軸芯直交方向Yの幅W1よりも小さくすることで、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を小さくすることができる。本発明を適用した杭の継手構造1は、これに限らず、下部フランジ12の軸芯直交方向Yの幅W2及び上部フランジ13の軸芯直交方向Yの幅W3を、螺旋状羽根11の軸芯直交方向Yの幅W1以上の大きさとして、回転圧入させるときの杭の継手構造1における推進力を向上させるとともに、杭の軸芯方向Xの抵抗力を増大させて、地盤の中間層で所定の支持力を得ることもできる。
【0062】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第1実施形態において、下部フランジ12の
図7に示すボルト孔12eと、上部フランジ13の
図9に示すボルト孔13eとを重ね合わせて、ボルト16を挿通して締結することにより、下部フランジ12と、上部フランジ13とがボルト接合される。本発明を適用した杭の継手構造1は、8本のボルト16を用いてボルト接合されるものであるが、これに限らず、杭を回転圧入させるときのトルクと、打ち込まれた杭に作用する
図13に示す圧縮力p、引張力q、せん断力t及び曲げ力bに抵抗することができるように、所定の数量のボルト16を用いてボルト接合される。
【0063】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12と上部フランジ13とをボルト接合した状態で螺旋状に形成されて、軸芯方向Xに所定の長さL4となるように、軸芯方向Xで長さL4と略同一長さの所定の螺旋ピッチP4となるように構成され、螺旋状羽根11の螺旋ピッチP1と、略同一の螺旋ピッチとなるように構成される。なお、本発明を適用した杭の継手構造1は、これに限らず、如何なる螺旋ピッチP4により構成されてもよく、螺旋状羽根11の螺旋ピッチP1より長い螺旋ピッチP4としてもよい。本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状に形成されるため、継手部分が地上に設けられた場合であっても、雨水等を継手部分から下方に流下させることができ、継手部分に雨水が貯留することによって継手部分が錆びて腐食することを回避することができる。
【0064】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12と上部フランジ13とを、機械式のフランジ継手によりボルト接合するものであるため、溶接によって接合する場合と比べて、下部杭2の上端部2bと上部杭3の下端部3aとを短時間で接合することができ、また、簡単な作業で強固に接合することができる。
【0065】
これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となる。
【0066】
また、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2の上端部2bで外周面から外側に延びるように下部フランジ12が形成されるとともに、上部杭3の下端部3aで外周面から外側に延びるように上部フランジ13が形成される。このため、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2本体、上部杭3本体及び継手部分の板厚が内側に向けて増大することを回避して、下部杭2本体、上部杭3本体及び継手部分の内径が小さくなることを回避することができる。
【0067】
ここで、回転圧入杭は、全周旋回機により施工されることが一般的である。この全周旋回機は、回転圧入杭を回転させるために、螺旋状羽根11と同一の螺旋ピッチで傾斜して溝切りされたスパイラルカラーが形成されたチャック部を備える。このとき、回転圧入杭は、軸芯方向Xの連接が当該チャック部の上方で実施されるものであるが、本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状のフランジ継手が用いられるため、軸芯方向Xに対して直角のフランジ継手が用いられる場合に比べて、継手部分を容易にスパイラルカラーに通過させることが可能となる。
【0068】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2及び上部杭3の内側において、外径の大きい
図12に示すハンマグラブ19を用いることができ、下部杭2及び上部杭3の打ち込みとともに、下部杭2及び上部杭3の内側からの排土をハンマグラブ19によって効率的に実施することができる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となる。
【0069】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12と、上部フランジ13とをボルト接合した状態で螺旋状に形成される。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2の上端部2bと上部杭3の下端部3aとが接合された状態で、下部杭2と上部杭3とを一体に地盤中に回転圧入するときに、下部杭2及び上部杭3の進行方向に対する杭の継手構造1の回転圧入抵抗を小さくすることができる。特に、本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状羽根11の螺旋ピッチP1と、略同一の螺旋ピッチP4となるように構成されることで、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を極小化することができるため、下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することができ、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となるとともに、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0070】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図13に示すように、下部杭2の上端部2bと上部杭3の下端部3aとが接合された部位に、圧縮力p、引張力q及びせん断力tが作用する。このとき、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12及び上部フランジ13が軸芯方向Xに対して傾斜しているため、下部フランジ12及び上部フランジ13だけでなく、下部杭2本体及び上部杭3本体にも、圧縮力p、引張力q及びせん断力tの一部を負担させることができる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12の板厚T2及び上部フランジ13の板厚T3を薄くすることができ、杭の継手構造1による回転圧入抵抗をさらに小さくして、下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することが可能となる。
【0071】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12及び上部フランジ13が軸芯方向Xに対して直角となっていないため、継手部分に曲げ力b、せん断力tが作用した場合に、継手部分のみで全ての曲げ力b、せん断力tを負担することが必要でなくなる。本発明を適用した杭の継手構造1は、例えば、継手部分と下部杭2本体及び上部杭3本体とが負担する曲げ力b、せん断力tの比率を1対9とすることにより、曲げ力b、せん断力tの一部を下部杭2本体及び上部杭3本体に負担させることができ、継手部分に必要となる曲げ力b、せん断力tに対する強度を低く設定することができるため、継手部分の設計を容易にすることが可能となる。
【0072】
本発明を適用した杭の継手構造1は、軸芯方向Xに所定の長さを有する下部係止部14と上部係止部15とが相互に係止された状態となる。このため、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部係止部14から下部杭2本体に回転力rの一部が伝達されるとともに、上部係止部15から上部杭3本体に回転力rの一部が伝達され、下部フランジ12と上部フランジ13とを接合するボルト16に作用する回転力rを小さいものとすることができる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、ボルト16の数量を少なくし、また、小径のボルト16を用いることができ、簡単な作業で短時間に接合することで、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、材料コストが増大することを回避することが可能となる。
【0073】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図14に示すように、下部係止部14が湾曲して形成されるとともに、上部係止部15が湾曲して形成されることで、湾曲した下部係止部14と上部係止部15とが係合して食い込むことにより、圧縮力p、引張力qに対する抵抗力を増大させることが可能となる。
【0074】
次に、本発明を適用した杭の継手構造1の第2実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0075】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第2実施形態において、
図15に示すように、所定の螺旋ピッチP2により構成される下部フランジ12が、第1下部フランジ121と、第2下部フランジ122とに2分割され、また、所定の螺旋ピッチP3により構成される上部フランジ13が、第1上部フランジ131と、第2上部フランジ132とに2分割されたものである。本発明を適用した杭の継手構造1は、これに限らず、如何なる数量に分割されてもよい。
【0076】
下部フランジ12は、第2実施形態において、下部杭2の上端部2bの一部を軸芯方向Xに所定の長さh14で切り欠くことにより、周方向Zに2箇所の下部係止部14が形成される。また、上部フランジ13は、第2実施形態において、上部杭3の下端部3aの一部を軸芯方向Xに所定の長さh15で切り欠くことにより、周方向Zに2箇所の上部係止部15が形成される。
【0077】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図16に示すように、下部係止部14の長さh14と、上部係止部15の長さh15とを略同一の長さとして、第1下部フランジ121と第2下部フランジ122とを併せた下部フランジ12の螺旋ピッチP2と、第1上部フランジ131と第2上部フランジ132とを併せた上部フランジ13の螺旋ピッチP3とが、略同一の螺旋ピッチとなるように構成される。このため、本発明を適用した杭の継手構造1は、第1下部フランジ121の
図15に示す上面121aと、第1上部フランジ131の
図15に示す下面131bとが面当接されるとともに、第2下部フランジ122の
図15に示す上面122aと、第2上部フランジ132の
図15に示す下面132bとが面当接され、第1下部フランジ121及び第1上部フランジ131の軸芯方向Xの長さL41と、第2下部フランジ122及び第2上部フランジ132の軸芯方向Xの長さL42とを併せて、軸芯方向Xに所定の長さL4となるように、軸芯方向Xで長さL4と略同一長さの所定の螺旋ピッチP4となるように構成される。
【0078】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、機械式のフランジ継手によりボルト接合されるため、簡単な作業で短時間に接合することができ、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となる。
【0079】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12が外側に延びるように形成されるとともに、上部フランジ13が外側に延びるように形成される。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2本体、上部杭3本体及び継手部分の板厚が内側に向けて増大し、内径が小さくなることを回避することができ、外径の大きいハンマグラブ19を用いることで、下部杭2及び上部杭3の内側からの排土を効率的に実施することが可能となる。
【0080】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12と上部フランジ13とが、ボルト接合された状態で螺旋状に形成され、下部杭2と上部杭3とを一体に地盤中に回転圧入するときに、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を小さくすることができる。特に、本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状羽根11の螺旋ピッチP1と、略同一の螺旋ピッチP4となるように構成されることで、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を極小化することが可能となる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することができ、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となるとともに、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0081】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図17に示すように、下部フランジ12及び上部フランジ13が2分割され、軸芯方向Xに任意の長さを有する下部係止部14と上部係止部15とが周方向Zの2箇所で相互に係止された状態となる。このため、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部係止部14から下部杭2本体に回転力rの一部が伝達されるとともに、上部係止部15から上部杭3本体に回転力rの一部が伝達され、下部フランジ12と上部フランジ13とを接合するボルト16に作用する回転力rを小さいものとすることができる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、ボルト16の数量を少なくし、また、小径のボルト16を用いることができ、簡単な作業で短時間に接合することで、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、材料コストが増大することを回避することが可能となる。
【0082】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12及び上部フランジ13が軸芯方向Xに対して傾斜しているため、下部杭2本体及び上部杭3本体にも、圧縮力p、引張力q、曲げ力b及びせん断力tの一部を負担させることができ、継手部分の設計を容易にすることを可能とし、さらに、下部フランジ12の板厚T2及び上部フランジ13の板厚T3を薄くすることにより、杭の継手構造1による回転圧入抵抗をさらに小さくして、下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することが可能となる。
【0083】
次に、本発明を適用した杭の継手構造1の第3実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0084】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第3実施形態において、
図18に示すように、さらに、下部フランジ12の上面12aから上方に向けて突出させて形成された凸部17aを有する。また、本発明を適用した杭の継手構造1は、第3実施形態において、上部フランジ13の一部のボルト孔13eが、凸部17aが挿入される凹部17bとして用いられる。
【0085】
凸部17aは、これに限らず、上部フランジ13の下面13bから下方に向けて突出させて形成されてもよく、下部フランジ12の上面12a及び上部フランジ13の下面13bの何れか一方又は両方に形成されてもよい。凸部17aは、略円柱状に形成されるものであるが、これに限らず、略角柱状に形成されてもよい。凸部17aは、下部フランジ12を鍛造することにより形成され、又は下部フランジ12の上面12aに対するスタッド溶接により取り付けられて形成されてもよい。
【0086】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図19に示すように、下部フランジ12の螺旋ピッチP2と、上部フランジ13の螺旋ピッチP3とが、略同一の螺旋ピッチとなるように構成され、下部フランジ12の
図18に示す上面12aと、上部フランジ13の
図18に示す下面13bとが面当接された状態で、軸芯方向Xに所定の長さL4となるように、軸芯方向Xで長さL4と略同一長さの所定の螺旋ピッチP4となるように構成されるとともに、下部フランジ12の凸部17aが上部フランジ13の凹部17bに挿入される。
【0087】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第3実施形態においても、機械式のフランジ継手によりボルト接合されるため、簡単な作業で短時間に接合することができ、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となる。
【0088】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12が外側に延びるように形成されるとともに、上部フランジ13が外側に延びるように形成される。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2本体、上部杭3本体及び継手部分の板厚が内側に向けて増大し、内径が小さくなることを回避することができ、外径の大きいハンマグラブ19を用いることで、下部杭2及び上部杭3の内側からの排土を効率的に実施することが可能となる。
【0089】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12と上部フランジ13とが、ボルト接合された状態で螺旋状に形成され、下部杭2と上部杭3とを一体に地盤中に回転圧入するときに、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を小さくすることができる。特に、本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状羽根11の螺旋ピッチP1と、略同一の螺旋ピッチP4となるように構成されることで、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を極小化することが可能となる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することができ、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となるとともに、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0090】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第3実施形態において、下部フランジ12の凸部17aが上部フランジ13の凹部17bに係止された状態となる。このため、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12の凸部17aから下部フランジ12及び上部フランジ13に回転力rの一部が伝達され、下部フランジ12と上部フランジ13とを接合するボルト16に作用する回転力rを小さいものとすることができる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、ボルト16に作用する回転力rを小さいものとして、ボルト16の数量を少なくすることができ、ボルト締結の作業量を減少させて、簡単な作業で短時間に接合することができ、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0091】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12及び上部フランジ13が軸芯方向Xに対して傾斜しているため、下部杭2本体及び上部杭3本体にも、圧縮力p、引張力q、曲げ力b及びせん断力tの一部を負担させることができ、継手部分の設計を容易にすることを可能とし、さらに、下部フランジ12の板厚T2及び上部フランジ13の板厚T3を薄くすることにより、杭の継手構造1による回転圧入抵抗をさらに小さくして、下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することが可能となる。
【0092】
次に、本発明を適用した杭の継手構造1の第4実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0093】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第4実施形態において、
図20に示すように、さらに、下部フランジ12の上面12a側の端面が切り欠かれた下部溝18aが、下部フランジ12の側面12fに形成されるとともに、上部フランジ13の下面13b側の端面が切り欠かれた上部溝18bが、上部フランジ13の側面13fに形成される。
【0094】
下部溝18a及び上部溝18bは、
図21に示すように、下部フランジ12の
図20に示す上面12aと、上部フランジ13の
図20に示す下面13bとが面当接された状態で、略矩形状に形成される溝部18を構成することになり、下部溝18aと上部溝18bとにキー部材18cを架設して、キー部材18cをネジ等で固定することにより、キー部材18cが溝部18に取り付けられる。
【0095】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12の螺旋ピッチP2と、上部フランジ13の螺旋ピッチP3とが、略同一の螺旋ピッチとなるように構成され、下部フランジ12の
図20に示す上面12aと、上部フランジ13の
図20に示す下面13bとが面当接された状態で、軸芯方向Xに所定の長さL4となるように、軸芯方向Xで長さL4と略同一長さの所定の螺旋ピッチP4となるように構成される。
【0096】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第4実施形態においても、機械式のフランジ継手によりボルト接合されるため、簡単な作業で短時間に接合することができ、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となるとともに、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となる。
【0097】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12が外側に延びるように形成されるとともに、上部フランジ13が外側に延びるように形成される。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2本体、上部杭3本体及び継手部分の板厚が内側に向けて増大し、内径が小さくなることを回避することができ、外径の大きいハンマグラブ19を用いることで、下部杭2及び上部杭3の内側からの排土を効率的に実施することが可能となる。
【0098】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12と上部フランジ13とが、ボルト接合された状態で螺旋状に形成され、下部杭2と上部杭3とを一体に地盤中に回転圧入するときに、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を小さくすることができる。特に、本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状羽根11の螺旋ピッチP1と、略同一の螺旋ピッチP4となるように構成されることで、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を極小化することが可能となる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することができ、杭の打ち込みの施工コストが増大することを回避することが可能となるとともに、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0099】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第4実施形態において、下部溝18aと上部溝18bとに係止されたキー部材18cにより連結された状態となる。このため、本発明を適用した杭の継手構造1は、回転力rの一部がキー部材18cに伝達され、下部フランジ12と上部フランジ13とを接合するボルト16に作用する回転力rを小さいものとすることができる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、ボルト16に作用する回転力rを小さいものとして、ボルト16の数量を少なくすることができ、ボルト締結の作業量を減少させて、簡単な作業で短時間に接合することができ、杭の打ち込みの工期を短縮することが可能となる。
【0100】
本発明を適用した杭の継手構造1は、下部フランジ12及び上部フランジ13が軸芯方向Xに対して傾斜しているため、下部杭2本体及び上部杭3本体にも、圧縮力p、引張力q、曲げ力b及びせん断力tの一部を負担させることができ、継手部分の設計を容易にすることを可能とし、さらに、下部フランジ12の板厚T2及び上部フランジ13の板厚T3を薄くすることにより、杭の継手構造1による回転圧入抵抗をさらに小さくして、下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する荷重の増大を抑制することが可能となる。
【0101】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第1実施形態〜第4実施形態の何れにおいても、
図22に示すように、下部フランジ12の始端部12c及び上部フランジ13の始端部13cの何れか一方又は両方の端面を、先鋭化させて形成されたものとすることができる。
【0102】
このとき、下部フランジ12及び上部フランジ13は、例えば、
図22(a)に示すように、下部フランジ12の始端部12cの端面及び上部フランジ13の始端部13cの端面が、各々の軸芯方向Xの略中央を突出させることによって先鋭化される。また、下部フランジ12及び上部フランジ13は、
図22(b)に示すように、下部フランジ12の始端部12cの端面の上端を突出させるとともに、上部フランジ13の始端部13cの端面の下端を突出させることで、これらの端面が先鋭化されてもよい。さらに、下部フランジ12及び上部フランジ13は、
図22(c)に示すように、上部フランジ13の始端部13cの端面の下端を突出させるとともに、上部フランジ13の始端部13cの端面の下端と下部フランジ12の始端部12cの端面の上端とを連続させて、下部フランジ12の始端部12cの端面の下端を突出させることで、これらの端面が先鋭化されてもよい。
【0103】
これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、第1実施形態〜第4実施形態の何れにおいても、下部フランジ12の始端部12c及び上部フランジ13の始端部13cの何れか一方又は両方の端面が先鋭化して形成されることで、杭の継手構造1の回転圧入抵抗を著しく低減させることが可能となる。
【0104】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第1実施形態〜第4実施形態の何れにおいても、
図23(a)に示すように、下部杭2や中間杭4の側面に下部フランジ12が溶接等によって取り付けられるとともに、上部杭3や中間杭4の側面に上部フランジ13が溶接等によって取り付けられる。本発明を適用した杭の継手構造1は、これに限らず、
図23(b)に示すように、下部杭2や中間杭4の上端面に下部フランジ12が溶接等によって取り付けられるとともに、上部杭3や中間杭4の下端面に上部フランジ13が溶接等によって取り付けられてもよい。
【0105】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第1実施形態〜第4実施形態の何れにおいても、
図24、
図25に示すように、下部フランジ12及び上部フランジ13の何れか一方又は両方について、挿入部21が設けられたフランジ部材20が用いられてもよい。フランジ部材20は、
図24に示すように、軸芯方向Xに所定の長さを有する挿入部21が杭の内周面に沿うように延びて設けられる。フランジ部材20は、
図25に示すように、挿入部21が杭の内側に挿入されて溶接等で取り付けられて、下部杭2本体、上部杭3本体及び中間杭4本体に固定される。
【0106】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第1実施形態〜第4実施形態の何れにおいても、下部フランジ12及び上部フランジ13の何れか一方又は両方に、フランジ部材20が用いられることで、フランジ部材20を後付けするときに挿入部21がガイドとして機能して、フランジ部材20の位置決めを容易にすることができる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状に傾斜した下部フランジ12及び上部フランジ13であっても、フランジ部材20の位置決めを容易にして、溶接等の取付作業を確実に実施することができ、迅速かつ確実にフランジ部材20を後付けすることが可能となる。
【0107】
本発明を適用した杭の継手構造1は、第1実施形態〜第4実施形態の何れにおいても、下部フランジ12及び上部フランジ13の何れか一方又は両方に、フランジ部材20が用いられることで、杭の内周面に沿って挿入部21が設けられるものとなる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、
図13に示す圧縮力p、引張力q及びせん断力tの一部を杭本体が負担する場合であっても、杭本体が変形、破損しないように、フランジ部材20の挿入部21で杭本体を部分的に補強することが可能となる。
【0108】
次に、本発明を適用した杭の立設方法について説明する。本発明を適用した杭の立設方法は、本発明を適用した杭の継手構造1が用いられて実施されるものである。
【0109】
本発明を適用した杭の立設方法は、
図26に示すように、下部杭2と上部杭3及び中間杭4の何れか一方又は両方とを軸芯方向Xに連接して、下部杭2が所定の深さに到達するまで地盤中に打ち込まれることによって、軸芯方向Xに連接された杭が地盤中に立設されるものとなる。
【0110】
本発明を適用した杭の立設方法は、下部杭2と上部杭3及び中間杭4の何れか一方又は両方とを一体に地盤中に回転圧入する圧入工程を備える。また、本発明を適用した杭の立設方法は、
図27に示すように、圧入工程の後で、必要に応じて、地盤中に一体に回転圧入された下部杭2と上部杭3及び中間杭4の何れか一方又は両方との内側から一括して土砂を排出する排土工程を備えるものとすることができる。さらに、本発明を適用した杭の立設方法は、
図28に示すように、圧入工程の後で、必要に応じて、地盤中に一体に回転圧入された下部杭2と上部杭3及び中間杭4の何れか一方又は両方との内側に一括して経時硬化性材料22を注入して杭を補強する補強工程を備えるものとすることができる。
【0111】
圧入工程では、下部フランジ12の
図7に示す上面12aと、上部フランジ13の
図9に示す下面13bとを面当接させて、下部フランジ12と上部フランジ13とをボルト接合等により相互に接合させた状態で、
図26(a)に示すように、上部杭3又は中間杭4に回転力rが付与される。これにより、圧入工程では、
図26(b)に示すように、下部杭2、上部杭3及び中間杭4が一体に地盤中に回転圧入されて立設されるものとなる。
【0112】
排土工程では、
図27(a)に示すように、下部杭2、上部杭3及び中間杭4が一体に地盤中に回転圧入された状態で、下部杭2、上部杭3及び中間杭4の内側から、ハンマグラブ19等によって土砂が排出される。これにより、排土工程では、
図27(b)に示すように、下部杭2、上部杭3及び中間杭4の内側から一括して土砂が排出されるものとなる。
【0113】
補強工程では、
図28(a)に示すように、下部杭2、上部杭3及び中間杭4が一体に地盤中に回転圧入された状態で、排土工程を経て略中空状となった下部杭2、上部杭3及び中間杭4の内側に、コンクリート等の経時硬化性材料22が注入される。補強工程では、これに限らず、排土工程を経ることなく、圧入工程で杭の内側に残留した土砂を利用して経時硬化性材料22を硬化させてもよい。これにより、補強工程では、
図28(b)に示すように、下部杭2、上部杭3及び中間杭4の内側に一括して経時硬化性材料22が注入、充填されて、この経時硬化性材料22が硬化することで、下部杭2、上部杭3及び中間杭4が一体に補強されるものとなる。
【0114】
本発明を適用した杭の立設方法は、
図26に示すように、下部フランジ12と上部フランジ13とが相互に接合された状態で螺旋状に形成されるため、下部杭2、上部杭3及び中間杭4を一体とした杭の継手構造1の回転圧入抵抗を小さくすることができる。これにより、本発明を適用した杭の立設方法は、圧入工程で下部杭2及び上部杭3の打ち込みに要する回転力rの増大を抑制しながら、複数の杭を連接させて一括して回転圧入させることができ、杭の回転圧入作業と接合作業とを交互に繰り返す手間を低減させることが可能となる。
【0115】
本発明を適用した杭の立設方法は、
図27に示すように、排土工程で下部杭2、上部杭3及び中間杭4を連接させてこれらの内側から一括して土砂を排出することができるため、土砂の排出作業と杭の接合作業とを交互に繰り返す手間を低減させることが可能となる。また、本発明を適用した杭の立設方法は、
図28に示すように、補強工程で下部杭2、上部杭3及び中間杭4を連接させてこれらの内側に一括して経時硬化性材料22を注入することができるため、経時硬化性材料22の注入作業と杭の接合作業とを交互に繰り返す手間を低減させることが可能となる。
【0116】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図26に示すように、下部杭2、上部杭3及び中間杭4の外周面から外側に延びるように下部フランジ12及び上部フランジ13が形成されるため、杭本体や継手部分の内径が小さくなることを回避することができる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、杭本体や継手部分の内径を大きくすることで、本発明を適用した杭の立設方法の圧入工程において、下部杭2、上部杭3及び中間杭4の内側での土砂の移動を円滑にして、杭の回転圧入作業を容易に実施することが可能となる。
【0117】
本発明を適用した杭の継手構造1は、
図27に示すように、杭本体や継手部分の内径を大きくすることで、本発明を適用した杭の立設方法の排土工程において、下部杭2、上部杭3及び中間杭4の内側に外径の大きいハンマグラブ19を用いることができ、土砂の排出作業を効率的に実施することが可能となる。本発明を適用した杭の継手構造1は、
図28に示すように、杭本体や継手部分の内径を大きくすることで、本発明を適用した杭の立設方法の補強工程において、下部杭2、上部杭3及び中間杭4の内側での経時硬化性材料22の継手部分の通過を円滑にして、経時硬化性材料22の充填作業を容易に実施することが可能となる。
【0118】
なお、本発明を適用した杭の継手構造1は、
図25に示すように、下部フランジ12及び上部フランジ13の何れか一方又は両方にフランジ部材20が用いられることで、杭の内周面に沿ってフランジ部材20の挿入部21が設けられるものとなる。これにより、本発明を適用した杭の継手構造1は、杭の内周面からある程度の高さでフランジ部材20の挿入部21が突出するものとなり、下部杭2、上部杭3及び中間杭4の内側において、硬化した経時硬化性材料22の付着性能を向上させることが可能となる。
【0119】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0120】
例えば、本発明を適用した杭の継手構造1は、螺旋状羽根11とともに、上方から下方に向けて左回転の螺旋状に形成された例について詳細に説明したが、これに限らず、螺旋状羽根11とともに、上方から下方に向けて右回転の螺旋状に形成されてもよい。本発明を適用した杭の継手構造1は、杭の円周方向に2〜3分割された先端翼を備える先端翼付回転貫入鋼管杭や、杭の円周方向に2分割された傾斜板の先端翼を備える閉端型の鋼管杭等に用いられてもよい。