特許第6237138号(P6237138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237138情報処理装置、画像形成装置、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237138
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】情報処理装置、画像形成装置、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20171120BHJP
   G06F 17/30 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04N1/00 106C
   G06F17/30 170B
   G06F17/30 340A
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-234369(P2013-234369)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-95776(P2015-95776A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(72)【発明者】
【氏名】森 研二
【審査官】 豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−218563(JP,A)
【文献】 特開2013−123823(JP,A)
【文献】 特開2013−046967(JP,A)
【文献】 特開2010−158824(JP,A)
【文献】 特開2011−197088(JP,A)
【文献】 特開2005−309985(JP,A)
【文献】 特開2008−078724(JP,A)
【文献】 特開2009−206580(JP,A)
【文献】 特開2004−110741(JP,A)
【文献】 特開2005−31499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G06F 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが取った行動の回数に基づき、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザの関心度が高い評価項目を把握する把握手段と、
前記複数の評価項目のうちの、前記把握手段により把握された関心度が高い評価項目について設定された基準が満たされるように、画像形成手段の調整処理を行う調整手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記把握手段は、前記複数の評価項目のうち、ユーザの関心度が最も高い評価項目を把握し、
前記調整手段は、前記関心度が最も高い評価項目について設定された基準が満たされるように調整処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記関心度が高い前記評価項目以外の他の評価項目への前記調整処理の影響も考慮して、前記基準の設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記把握手段は、前記複数の評価項目のうち、ユーザの関心度が最も高い評価項目を把握し、
前記調整手段は、前記関心度が最も高い評価項目について設定された基準を満たすための調整処理のみを行い、前記複数の評価項目に含まれる他の評価項目について設定された基準を満たすための調整処理は行わない請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
画像処理を含む処理を行って、記録材への画像形成を行う画像形成手段と、
ユーザが取った行動の回数に基づき、前記画像形成手段により形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザの関心度が高い評価項目を把握する把握手段と、
前記複数の評価項目のうちの、前記把握手段により把握された関心度が高い評価項目について設定された基準が満たされるように、前記画像形成手段の調整を行う調整手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項6】
ユーザが取った行動の回数に基づき、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザの関心度が高い評価項目を把握する把握機能と、
前記複数の評価項目のうちの、前記把握機能により把握された関心度が高い評価項目について設定された基準が満たされるように、画像形成手段の調整処理を行う調整機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、画像形成装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、特定のホストPCの印刷要求がテキスト文書の場合、コントローラは過去の印刷要求履歴から印刷結果を優先すべきホストPCか否かを自動的に判断し、キャリブレーション実行を回避する技術が開示されている。
特許文献2には、パラメータの基準値を予め設定する基準値設定部と、パラメータを計測するパラメータ計測部と、パラメータの計測値にもとづき基準値を更新する基準値更新部と、計測したパラメータが基準値に達したときに所定の報知処理を行う報知部とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−130779号公報
【特許文献2】特開2012−68458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザが関心を有している評価項目におけるユーザの満足度、または画像読み取り機器を用いてユーザが画像読み取りを行う際のユーザの満足度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ユーザが取った行動の回数に基づき、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザの関心度が高い評価項目を把握する把握手段と、前記複数の評価項目のうちの、前記把握手段により把握された関心度が高い評価項目について設定された基準が満たされるように、画像形成手段の調整処理を行う調整手段と、を備える情報処理装置である。
請求項2に記載の発明は、前記把握手段は、前記複数の評価項目のうち、ユーザの関心度が最も高い評価項目を把握し、前記調整手段は、前記関心度が最も高い評価項目について設定された基準が満たされるように調整処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項3に記載の発明は、前記調整手段は、前記関心度が高い前記評価項目以外の他の評価項目への前記調整処理の影響も考慮して、前記基準の設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項4に記載の発明は、前記把握手段は、前記複数の評価項目のうち、ユーザの関心度が最も高い評価項目を把握し、前記調整手段は、前記関心度が最も高い評価項目について設定された基準を満たすための調整処理のみを行い、前記複数の評価項目に含まれる他の評価項目について設定された基準を満たすための調整処理は行わない請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項に記載の発明は、画像処理を含む処理を行って、記録材への画像形成を行う画像形成手段と、ユーザが取った行動の回数に基づき、前記画像形成手段により形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザの関心度が高い評価項目を把握する把握手段と、前記複数の評価項目のうちの、前記把握手段により把握された関心度が高い評価項目について設定された基準が満たされるように、前記画像形成手段の調整を行う調整手段と、を備える画像形成装置である。
請求項に記載の発明は、ユーザが取った行動の回数に基づき、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザの関心度が高い評価項目を把握する把握機能と、前記複数の評価項目のうちの、前記把握機能により把握された関心度が高い評価項目について設定された基準が満たされるように、画像形成手段の調整処理を行う調整機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、4の発明によれば、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザが関心を有している評価項目におけるユーザの満足度を高めることが可能になる。
請求項2の発明によれば、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザが最も関心を有している評価項目におけるユーザの満足度を高めることが可能になる。
請求項3の発明によれば、ユーザが関心を有している評価項目以外の他の評価項目におけるユーザの満足度の低下を抑えつつ、ユーザが関心を有している評価項目におけるユーザの満足度を高めることが可能になる。
請求項の発明によれば、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザが関心を有している評価項目におけるユーザの満足度を高めることが可能になる。
請求項の発明によれば、形成される画像についての複数の評価項目のうちのユーザが関心を有している評価項目におけるユーザの満足度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態が適用される画像形成システムの構成を示した図である。
図2】本実施形態の画像形成システムにて実施される処理の一例を説明する図である。
図3図2にて説明した処理の流れを示したフローチャートである。
図4】診断部にて生成される診断テーブルの他の一例を示した図である。
図5図4にて説明した処理の流れを示したフローチャートである。
図6】診断部に格納された診断テーブルの他の一例を示した図である。
図7】測色値を示した図である。
図8図6図7にて示した処理の流れを示したフローチャートである。
図9】診断部に格納された診断テーブルの他の一例を示した図である。
図10】エンジニアの派遣、調整の実施、警告を行うか否かを決定する際に用いる閾値を、ユーザの関心度に応じて決定する処理の流れを示したフローチャートである。
図11】エンジニアの派遣、調整の実施、警告について設定される閾値を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成システムの構成を示した図である。
図1に示すように、本実施形態における画像形成システム1には、記録材の一例としての用紙に対しカラーの画像を形成する画像形成装置100が設けられている。また、PC(Personal Computer)などにより構成され、画像形成装置100を管理する管理装置200が設けられている。さらに、通信回線(公衆通信回線)300を介して管理装置200に接続されるレポート表示部400が設けられている。なお、このレポート表示部400も、PCなどにより構成される。
【0009】
ここで、管理装置200については、画像形成装置100の傍に設けてもよいし、画像形成装置100から離れた遠隔地に設け、通信回線300を介して、画像形成装置100と管理装置200とを接続するようにしてもよい。また、管理装置200は、画像形成装置100内に組み込み、画像形成装置100が有する複数の機能部のうちの一つの機能部として機能させるようにしてもよい。
【0010】
画像形成装置100には、画像形成手段の一部として機能する画像形成部110が設けられている。画像形成部110は、記録材である用紙に対して電子写真方式を用いて画像を形成する。ここで、電子写真方式では、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、中間転写体などを用いて用紙への画像の形成を行う。
【0011】
また、画像形成装置100は、予め設定された設定値を記録する設定値記憶部120を備える。この設定値記憶部120には、現像電位など、画像形成に用いられる各種の設定値(パラメータ)が記憶される。さらに、画像形成装置100には、外部のPCなどから送信されてきた画像データに対して予め定められた画像処理を行うとともに、画像処理後の画像データを画像形成部110に出力する画像処理部130が設けられている。
【0012】
画像処理部130には、トーン再現曲線(TRC(Tone Reproduction Curve))を用いて階調補正を行う第1画像処理部131、画質の調整(階調の調整)に用いられるキャリブレーションLUTを用いて画像処理を行う第2画像処理部132が設けられている。さらに、色変換プロファイルを用い、画像データを異なる色空間の画像データに変換する色変換部133が設けられている。画像処理部130では、入力されてきた画像データに対して、トーン再現曲線、キャリブレーションLUT、色変換プロファイルが用いられて画像処理が行われ、この画像処理が行われた後の画像データが画像形成部110へ出力される。
【0013】
情報処理装置の一例としての管理装置200には、機器情報記憶部201、機器使用状況診断部202、運用情報記憶部203、色補正パラメータ作成部204が設けられている。さらに、画質検査情報管理部205、レポート閲覧情報記憶部206、レポート作成部207が設けられている。
【0014】
機器情報記憶部201は、キャリブレーションLUT、色変換プロファイル、設定値記憶部120に記憶されている設定値など、画像形成装置100に格納されている情報を記憶する。
機器使用状況診断部202(以下、「診断部202」と称する)は、機器情報記憶部201、運用情報記憶部203、レポート閲覧情報記憶部206に記憶されている情報に基づき、画像形成装置100の使用状況を診断する。
【0015】
運用情報記憶部203は、画像形成装置100や測色器などに関する情報を記憶する。例えば、画像形成装置100の名称および画像形成装置100のシリアル番号、画像形成装置100の設置場所、画像形成装置100にて使用される用紙の種類、測色器の種類および測色器のシリアルナンバー、画像形成装置100を運用するグループのグループ名、ターゲット色、画像形成装置100の管理者名を記憶する。
色補正パラメータ作成部204は、色補正に関連するパラメータを生成する。具体的には、キャリブレーションLUTの補正(更新)に用いられる補正パラメータを生成したり、新たな色変換プロファイルの生成に用いられる補正パラメータを生成したりする。
【0016】
画質検査情報管理部205は、色管理チャートを測色器で読み取ることにより得られた測色値を取得するとともに、この測色値を診断部202へ出力する。なお、色管理チャートとは、画像形成装置100にて出力されるチャートであって、画像形成装置100にて形成される画像が予め定められた条件を満たしているか否かの検査に用いられるチャートである。この色管理チャートでは、図1に示すように、濃度および色が異なる複数のパッチ状画像が用紙に形成される。
【0017】
レポート作成部207は、診断部202から出力された診断結果に基づき、レポートを作成し、このレポートをレポート表示部400へ送信する。そして、レポート表示部400では、レポート作成部207が作成したレポートの内容が表示される。
【0018】
レポート閲覧情報記憶部206は、レポートの閲覧履歴を記憶するとともに、必要に応じ、この閲覧履歴を診断部202に出力する。付言すると、本実施形態では、レポート表示部400にて表示されたレポートがユーザにより閲覧されるが、この閲覧についての履歴情報が、レポート表示部400からレポート閲覧情報記憶部206に送信され、そして、この履歴情報が、レポート閲覧情報記憶部206内に格納される。
【0019】
なお、管理装置200が有するこれらの各機能部は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、ROMやハードディスク装置などの記憶装置に、オペレーティングシステム、オペレーティングシステムと協働して各構成部の特定の機能を実行するアプリケーションソフト等のプログラムが記憶されている。
そして、CPUが、これらのプログラムをROM等から主記憶装置であるRAMに読み込み、実行することで、診断部202、色補正パラメータ作成部204、レポート作成部207の各機能部が実現される。また、管理装置200に設けられた記憶装置(不図示)によって、機器情報記憶部201、運用情報記憶部203、画質検査情報管理部205、レポート閲覧情報記憶部206が実現される。
【0020】
なお、CPUによって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、通信回線300を用いて管理装置200にダウンロードさせてもよい。
【0021】
以下、本実施形態の画像形成システム1にて実施される処理を説明する。
図2は、本実施形態の画像形成システム1にて実施される処理の一例を説明する図である。
本実施形態では、管理装置200に設けられた診断部202にて、図2(A)にて示す診断テーブルが生成される。
この診断テーブルの生成に際しては、図中上段に表示されている4つの管理項目(以下、上段に表示されている各管理項目を「基本管理項目」と称する)についての情報が集められる。具体的には、「Webでの閲覧レベル(閲覧頻度)」、「調整頻度」、「プロファイル作成」、「ジョブ保持設定」についての情報が集められる。
【0022】
また、本実施形態では、図2(A)にて最も左側に表示している3つの評価項目のそれぞれについて、「Webでの閲覧レベル」、「調整頻度」、「プロファイル作成」、「ジョブ保持設定」についての情報が集められる。詳細には、「ターゲットからの色差」、「機器間の色差」、「経時の色変動」の3つの評価項目(以下、この3つの評価項目を「色評価項目」と称する)のそれぞれについて、「Webでの閲覧レベル」、「調整頻度」、「プロファイル作成」、「ジョブ保持設定」についての情報が集められる。
【0023】
ここで、上記4つの基本管理項目のうちの、「Webでの閲覧レベル」とは、レポート表示部400にて表示されたレポートのうちの何れの項目をユーザがより多く見ているかを示す情報である。「Webでの閲覧レベル」は、5段階の評価になっており、この数値が高いほど、見られた回数が多いことを示し、ユーザの関心度が高いことを示している。なお、この「Webでの閲覧レベル」は、レポート閲覧情報記憶部206から診断部202へ出力された、レポートの閲覧履歴に基づき、診断部202にて決定される。
【0024】
本実施形態では、「ターゲットからの色差」、「機器間の色差」、「経時の色変動」の3つの色評価項目の各々についての情報が診断部202に集められる。次いで、診断部202に集められた情報が、レポート作成部207に出力される。そして、「ターゲットからの色差」、「機器間の色差」、「経時の色変動」の3つの要素の各々についてのレポートがレポート作成部207にて作成され、このレポートがレポート表示部400に表示される。
その後、本実施形態では、レポート表示部400にて表示されるレポートについてのユーザによる閲覧履歴(閲覧情報)が、レポート閲覧情報記憶部206に格納される。そして、本実施形態では、この閲覧履歴に基づき、診断部202が、「Webでの閲覧レベル」を決定する。
【0025】
また、4つの基本管理項目のうちの、「調整頻度」とは、「ターゲットからの色差」、「機器間の色差」、「経時の色変動」の3つの要素のそれぞれについて行われた調整の頻度を5段階で示しており、この数値が高いほど、ユーザによる調整が多く行われたことを示している。なお、「調整頻度」は、診断部202によって把握され、診断部202は、把握したこの「調整頻度」を5段階評価する。そして、頻繁に調整が行われているものは評価を「5」とし、調整の頻度が少ないかあるいは調整が行われていないものについては、評価を「1」とする。
【0026】
なお、「ターゲットからの色差」の調整は、例えば、色管理チャート(図1参照)の測色値と目標とする色値との差が小さくなるように、キャリブレーションLUTを更新(補正)することで行われる。
また、「機器間の色差」の調整は、例えば、不図示のサーバ装置を介して他の機器から送信されてくる測色値と、自装置にて得られた測色値との差が小さくなるように、キャリブレーションLUTを更新することで行われる。
さらに、「経時の色変動」の調整は、例えば、色管理チャートから得られた測色値であって過去の測色値と、色管理チャートから得られた最新の測色値との差が小さくなるように、キャリブレーションLUTを更新することで行われる。
【0027】
また、4つの基本管理項目のうちの、「プロファイル作成」とは、画像処理部130にて用いられる画像処理のためのプロファイル(ユーザに応じた個別のプロファイル)がユーザにより作成されているか否かを示す情報であり、作成されている場合、本実施形態では、評価を「5」としている。ここで、図2(A)に示す例では、色評価項目の一つである「ターゲットからの色差」に関連するプロファイルが作成されており、ユーザは、「ターゲットからの色差」に関心が高いことを示している。
【0028】
また、4つの基本管理項目のうちの、「ジョブ保持設定」とは、「経時の色変動」を把握するために用いられる基準の画像データのメモリ(不図示)への登録をユーザが行っているか否かを示す情報であり、本実施形態では、メモリへの登録が行われている場合、評価を「5」とする。
【0029】
ここで、経時の色変動を確認する際には、色管理チャートを出力するとともに、測色を行う。そして、過去の測色値との比較を行う。このような場合に、色管理チャートの元となる画像データがその都度異なると、評価を正しく行うことができなくなるおそれがある。「ジョブ保持設定」がなされていると、経時の色変動が起きているか否かを判断する際の判断精度を高められるようになる。
【0030】
また、本実施形態では、診断部202が、上記の評価の結果に基づき、3つの色評価項目のそれぞれについて、ユーザの関心度が高いか或いは低いかを示す「倍率」を算出する(診断テーブルの最右欄参照)。ここで、本実施形態では、倍率の値が大きいほどユーザの関心が高いことを示しており、また、倍率の値が小さいほどユーザの関心が低いことを示している。付言すると、本実施形態では、把握手段として機能する診断部202によって、3つの色評価項目の各々についてのユーザの関心度が把握され、さらに、3つの色評価項目のうちのユーザが最も関心を有している色評価項目が把握される。
【0031】
なお、倍率は、図2(B)で示す(式1)により算出される。
即ち、各基本管理項目の最大値の和を分母とし、評価結果の合計値を分子として割り算を行い、倍率を算出する。付言すると、3つの色評価項目毎に、この割り算を行い、色評価項目毎に倍率を算出する。これにより、各色評価項目についてのユーザの関心度が分かるようになる。なお、図2(A)では、4つの基本管理項目しか図示していないが、不図示の他の基本管理項目も存在しており、図2(A)にて示す倍率の各数値は、この不図示の基本管理項目も含めて上記割り算を行って得られた結果である。
【0032】
さらに具体的に説明すると、例えば、「ターゲットからの色差」についての倍率を求める際、分母は、(5(Webでの閲覧レベル)+5(調整頻度)+5(プロファイル作成)+5(ジョブ保持設定)+不図示の他の基本管理項目の最大値)となる。一方で、分子は、(5(Webでの閲覧レベル)+5(調整頻度)+5(プロファイル作成)+0(ジョブ保持設定)+不図示の他の基本管理項目の評価結果)となる。そして、この分子を上記分母で割ることで、倍率0.87が得られる。
【0033】
また、例えば、「機器間の色差」についての倍率を求める際には、分母は、同様に、(5(Webでの閲覧レベル)+5(調整頻度)+5(プロファイル作成)+5(ジョブ保持設定)+不図示の他の基本管理項目の最大値)となる。一方で、分子は、(1(Webでの閲覧レベル)+5(調整頻度)+0(プロファイル作成)+0(ジョブ保持設定)+不図示の他の基本管理項目の評価結果)となる。そして、この分子を分母で割ることで、倍率0.60が得られる。
【0034】
さらに、本実施形態では、診断部202にて、倍率が最も高い色評価項目が、最重要色評価項目として指定される。そして、本実施形態では、最重要色評価項目として指定された色評価項目については、診断部202にて、閾値(基準)が決定(設定)される。そして、決定されたこの閾値により設定される条件を満たしているか否かを判断する。これにより、ユーザの関心が高い色評価項目については、条件を満たしているか否かの判断処理がなされるようになる。
【0035】
ここで、図3は、図2にて説明した処理の流れを示したフローチャートである。
本実施形態では、まず、色管理チャートを出力し、次いで、色管理チャートの読み取り結果である測色値を取得する(ステップ101)。
【0036】
具体的には、色および濃度が互いに異なる複数のパッチ状画像が形成された色管理チャート(図1参照)を画像形成装置100にて出力する。次いで、ユーザにより、測色器を用いた測色が行われ、各パッチ状画像についての測色値が取得される。なお、本実施形態では、測色器を用い手動で測色値が取得される場合を一例に説明するが、画像形成装置100内にスキャナ装置を設け、自動で測色値が取得されるようにしてもよい。
【0037】
次いで、診断部202が、必要データの収集を行い、ユーザの使用状況を診断する(ステップ102)。具体的には、図2にて示した基本管理項目についての情報を、色評価項目毎に収集する。次いで、この情報に基づき倍率を算出するとともに、倍率の最大値を把握し、最重要色評価項目を決定する(ステップ103)。付言すると、ユーザの関心度が最も高い色評価項目を把握する。
次いで、この最重要色評価項目について閾値を設定し(ステップ104)、この最重要色評価項目が、この閾値によって設定される条件を満たしている否かの診断処理を実行する(ステップ105、106)。
【0038】
ステップ104〜106の処理について具体的に説明すると、例えば、最重要色管理項目が「ターゲットからの色差」であった場合、この「ターゲットからの色差」についての閾値を設定する。次いで、ステップ101にて得られた測色値と、ターゲットとして予め設定されている色値との差(以下、「色差」と称する)を取得する。そして、取得したこの色差と、設定した上記閾値とに基づき、「ターゲットからの色差」に関し、予め定められた条件を満たしているか否かを判断する。
【0039】
そして、ステップ106にて、最重要色評価項目が、閾値によって設定される条件を満たしていると判断された場合、処理を終了する。一方で、最重要色評価項目が、閾値によって設定される条件を満たしていると判断されなかった場合は、この条件を満たすための調整処理(補正処理)を実施する(ステップ107)。
【0040】
調整処理について具体例を挙げて説明すると、例えば、「ターゲットからの色差」が大きく、「ターゲットからの色差」が閾値を超えている場合(ステップ101にて得られた測色値とターゲットとなる色値との色差が閾値よりも大きい場合)、調整手段の一部として機能する色補正パラメータ作成部204にて、キャリブレーションLUTを補正(更新)するための補正パラメータを生成する。付言すると、「ターゲットからの色差」を小さくする補正パラメータを生成する。
【0041】
そして、この補正パラメータが画像形成装置100に送信される。次いで、画像形成装置100の画像処理部130にて、この補正パラメータが用いられ、キャリブレーションLUTの補正が行われる。そして、以後の処理では、補正後のキャリブレーションLUTが用いられるようになり、これにより、形成される画像の色値が、ターゲットとして設定されていた色値に近づくようになる。
なお、「機器間の色差」や「経時の色変動」が最重要色管理項目とされた場合も、同様に、キャリブレーションLUTの補正処理を行うことで、閾値により設定される条件が満たされるようになる。
【0042】
ところで、このように補正処理を実施すると、この補正処理が他の色評価項目に影響を与え、この他の色評価項目についての値が変化してしまうことがある。ここで、この他の色評価項目についてユーザが関心を抱いていない場合は問題が生じにくいが、この他の色評価項目についてもある程度関心を有している場合には、問題が生じうる。
【0043】
具体的に説明すると、図2(A)に示すとおり、本実施形態では、一つの色評価項目の倍率が際立って大きいわけではなく、例えば、「経時の色変動」については、倍率が「0.73」となっており、ユーザは、この「経時の色変動」についても、関心を有していることが分かる。かかる場合に、最も関心を抱いている「ターゲットからの色差」のみについて、上記のように補正処理を行うと、「経時の色変動」が、ユーザの希望する条件を外れてしまうことが起こりうる。
【0044】
このため、最重要色評価項目以外の項目についてもユーザが関心を頂いている場合には、この項目も加味したうえで、上記の補正処理を行うことが好ましい。具体的には、最重要色評価項目以外の項目にて不具合が生じないレベルの補正処理を、最重要色評価項目について行うことが好ましい。付言すると、ユーザの関心度が最も高い色評価項目以外の他の色評価項目への補正処理の影響も考慮して閾値を設定し、この閾値により設定される条件を満たす補正処理を行うことが好ましい。
なお、最重要色評価項目以外の項目についてもユーザが関心を抱いているか否かは、例えば、図2(C)で示す(式2)で重視度を算出し、例えば、この重視度が「0.5」以上の場合に、ユーザが関心を抱いていると判断する。
【0045】
なお、本実施形態では、このように、基本的には、最重要色評価項目についてのみ閾値を設定し、最重要色評価項目以外の色評価項目については、閾値を設定しない。これは、最重要色評価項目についてのユーザの満足度を高めるためである。ここで、例えば、全ての色評価項目のそれぞれに閾値を設定してしまうと、全ての色評価項目を満足するための調整処理が行われることとなる。
【0046】
ところで、この場合、最重要色評価項目のように一つの色評価項目についてのみ調整処理を行う場合に比べ、各々の色評価項目では、調整処理の程度が小さくなることが起こりうる。付言すると、この場合、全ての色評価項目を満足するためにバランスをとりながら調整処理を行うため、一つの色評価項目についてのみ調整処理を行う場合に比べ、評価項目の各々では、調整処理の程度が小さくなるおそれがある。
【0047】
また、ユーザは、色評価項目の全てに関心を抱いているとは限らず、関心が低い色評価項目(重要視していない色管理項目)が存在し、このような状況下においては、全ての色評価項目を満足するための調整処理を行うよりも、ユーザが重要視している色評価項目についての調整処理を行った方が、ユーザの満足度が高まりやすい。このため、本実施形態では、上記のように、最重要色管理項目についてのみ調整処理を行うようにしている。
【0048】
本実施形態の画像形成システム1にて実施される他の処理例を説明する。
図4は、診断部202にて生成される診断テーブルの他の一例を示した図である。
上記にて説明した例では、色評価項目(「ターゲットからの色差」、「機器間の色差」、「経時の色変動」)についての評価を行ったが、本実施形態では、図4(A)に示すように、レジ(位置合わせ)評価項目、むら評価項目についての評価も行なう。なお、レジ評価項目では、リード・サイドレジ、および、カラーレジについての評価を行う。
【0049】
ここで、本実施形態でも、同図(A)に示すように、また、上記と同様の手法により、倍率を算出する。付言すると、把握手段として機能する診断部202が、色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目の各評価項目についての倍率(ユーザの関心度)を把握する。そして、本実施形態では、決定手段としても機能する診断部202が、各評価項目の各々の倍率(関心度)に基づき、各評価項目の各々に関して設定される設定内容を決定する。具体的には、情報収集頻度、および、情報収集内容を決定する。
さらに、具体的に説明すると、倍率が高く、ユーザの関心度が高いものについては、情報収集頻度を高くし、且つ、詳細な情報まで収集する設定を行う。その一方で、倍率が低く、ユーザの関心度が低いものについては、情報収集頻度を減らし、且つ、収集する情報を減らす設定を行う。
【0050】
さらに、具体的に説明すると、本実施形態では、図4(B)に示す決定用テーブルが診断部202に格納されており、倍率と、倍率に応じた処理内容が予め決められている。本実施形態では、この決定用テーブルに基づき、処理の内容を決定する。
具体的には、倍率が0〜0.4と小さく、ユーザの関心度が低いものについては、情報収集頻度を「月に1回」、情報収集内容を「最低限」に決定する。また、倍率が0.4〜0.7であり、ユーザの関心が比較的ある場合は、情報収集頻度を「週に1回」、情報収集内容を「標準」に決定する。また、倍率が0.7〜1であり、ユーザの関心が高い場合は、情報収集頻度を「毎日」、情報収集内容を「詳細」に決定する。なお、本実施形態では、倍率に基づき、情報収集内容および情報収集頻度の二つの要素を決定する場合を説明したが、この二つの要素のうちの一方の要素のみを決定するようにしてもよい。
【0051】
ここで、本実施形態では、ユーザの関心度が高いものについては、より詳細な情報が蓄積されるようになる。これにより、例えば、レポート表示部400を通じ、ユーザに対し、より詳細な情報が提供される。
その一方で、ユーザの関心度が低いものについては、情報収集があまり行われないようになり、この場合は、画像形成動作の中断など情報収集に起因する不具合が生じにくくなる。また、情報収集には、色管理チャートの出力が必要となったりし、この際、ユーザは手間を要するようになる。情報収集があまり行われない場合は、情報収集が数多く行われる場合に比べ、ユーザの手間が低減される。
【0052】
図5は、図4にて説明した処理の流れを示したフローチャートである。
図5にて示す処理では、まず、必要データの収集を行い、ユーザの使用状況を診断する(ステップ201)。具体的には、図4(A)にて示している基本管理項目についての情報を、色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目毎に収集する。次いで、この情報に基づき倍率を算出する。次いで、図4(B)にて示した決定用テーブルを参照し、算出した倍率に基づき、情報収集頻度、情報収集内容を決定する(ステップ202)。
【0053】
他の処理例をさらに説明する。
図6は、診断部202に格納された診断テーブルの他の一例を示した図である。
この例では、同図(A)に示すように、ユーザにより行われる測色についての診断テーブルが診断部202に格納されている。この診断テーブルでは、画像形成装置100や測色器の管理を行う管理者の数である管理者数、測色の異常が検知された頻度である測色異常頻度、測色に用いられる測色器についての情報(画像読み取り機器についての情報)が格納される。なお、この例では、管理者数が2人であり、測色異常頻度が10回に1回の割合で発生し、手動測色器が用いられる場合を例示している。
【0054】
さらに、この診断テーブルでは、管理者数、測色異常頻度、測色器の各々について、診断部202によって、5段階評価がなされ、さらに、管理者数、測色異常頻度、測色器のそれぞれについてなされた評価結果に基づき、上記と同様の手法で倍率が算出されている。ここで、本例では、管理者数については評価「3」、測色異常頻度については評価「3」、測色器については評価「5」となっており、さらに、倍率は「0.73」となっている。
【0055】
なお、本実施形態では、管理者数、測色異常頻度、測色器の3つの要素についての情報を収集した例を説明したが、この3つの要素は一例であり、例えば測色異常頻度、測色器の2つの要素についての情報を収集したり、この3つの要素のうちの1つの要素についての情報を収集したり、4つ以上の要素についての情報を収集したりしてもよい。なお、このように3つ以外の要素についての情報を収集する場合も、上記と同様の手法により、倍率が算出される。
【0056】
なお、管理者数については、評価の数値が大きいほど、管理者数が多く、測定ミスが発生しやすい状況にあることを示している。また、測色異常頻度については、評価の数値が大きいほど、測色ミスが多く発生していることを示している。さらに、測色器については、評価の数値が大きいほど、測色ミスが発生しやすい機器であることを示している。なお、以下の説明では、図6(A)に示す診断テーブルを、第1診断テーブルと称する。
【0057】
図6(B)は、他の画像形成装置100についてのテーブル(以下、「第2診断テーブル」と称する)を示した図である。この他の画像形成装置100においては、管理者数が1人であり、測色ミスが発生する確率が小さくなるため、評価「1」となっている。また、測色異常頻度については、一度も測色ミスが発生しておらず(図中、「履歴無し」と表示)、評価「1」となっている。さらに、測色器は、スキャナ装置であり、評価「3」となっている。さらに、この第2診断テーブルでは、倍率が「0.33」となっている。
【0058】
ここで、この処理例では、算出した倍率に基づき、測色ミスの発生の有無の判断に用いる閾値(測色異常の発生の有無の判断に用いる閾値)を変更する。詳細には、倍率が大きく測色ミス(測色異常)が発生しやすい状況にあるときには、閾値を小さくし、測色ミスが検知されやすくなるようにする。また、倍率が小さく測色ミスが発生しにくい状況にあるときには、閾値を大きくし、測色ミス以外の他の要因に起因して測色ミスと判断されてしまうことを生じにくくする。付言すると、誤検知を生じにくくする。
【0059】
ここで、閾値の変更は、例えば、階調特性が予め定められた階調特性となっているか否かの判断である階調特性判断時に行われる。階調特性判断時には、エリアカバレッジを異ならせた複数のパッチ状画像が形成された色管理チャートを出力し、且つ、各々のパッチ状画像の測色を行う。そして、この測色により得られた測色値が予め定められた条件を満たしているかの判断を行う。
【0060】
ここで、パッチ状画像の読み取りにより得られた測色値をグラフ化すると、通常、図7(測色値を示した図)の(A)に示すように、図中右上がりのグラフが得られるようになる。その一方で、測色ミスが発生すると、同図の符号7Aに示すように、測色値の一部の値が大きく変化する。
【0061】
ここで、本実施形態では、測色値の変化量についての閾値を設定しており、変化量がこの閾値を超えた場合に(測色値についての情報が予め定められた条件を満たしていない場合に)、検知手段としても機能する診断部202にて、測色ミス(読み取り異常)が発生したと判断(検知)するが、上記のとおり、倍率が大きく測色ミスが発生しやすい状況にあるときには、この閾値を小さくし、倍率が小さく測色ミスが発生しにくい状況にあるときには、この閾値を大きくする。
【0062】
具体的に説明すると、上記第1診断テーブルのように、測色ミスが発生しやすい状況にあるときは、図6(C)に示すように閾値を4.1とし、上記第2診断テーブルのように測色ミスが発生しにくい状況下にあるときは、図6(C)に示すように閾値を4.1よりも大きい9.0とする。これにより、上記のとおり、測色ミスが発生しやすい状況にあるときには、測色ミスが検知されやすくなり、測色ミスが発生しにくい状況にあるときには、誤検知が起きにくくなる。
【0063】
なお、本実施形態では、図6(C)に示すように、倍率が1の場合の閾値が予め設定されており、この倍率が1の場合の閾値に基づき、各倍率の閾値を算出する。具体的には、図6(D)に示す(式1)を用いて算出する。
【0064】
なお、閾値の変更は、各パッチ状画像が予め定められた色で形成されているか否かの判断である色相判断時に行ってもよい。色管理チャート上に形成される各パッチ状画像の測色値には、ある程度のばらつきが生じるものの、測色ミスが発生していない場合には、ある一定の色範囲内に収まるようになる。このため、測色値が、この色範囲内から外れる場合には、測色ミスが発生していると考えることができる。
【0065】
具体的には、例えば、通常、測色値は、図7(B)にて示すLabの色空間内において、符号7Bで示す破線により囲まれた領域内に収まるが、測色ミスが発生した場合には、測色値がこの領域から外れるようになる。
【0066】
ここで、色相判断時にも、測色ミスの発生しやすさに応じて、閾値を変更する。具体的には、上記領域(符号7Bで示した破線)の外延を定める中心(0,0)からの距離Lを閾値とし、この距離Lを変更する。さらに具体的に説明すると、測色ミスが発生しやすい第1診断テーブルの場合は、図6(C)に示すように距離Lを6.8とし、測色ミスが発生しにくい第2診断テーブル場合は、図6(C)に示すように、距離Lを6.8よりも大きい15.0とする。これにより、上記と同様、測色ミスが発生しやすい状況にあるときには、測色ミスが検知されやすくなり、測色ミスが発生しにくい状況にあるときには、誤検知が起きにくくなる。
【0067】
また、閾値の変更は、過去の測色値との比較処理のときに行ってもよい。
ここで、測色値は、機器の経時的な変化等に起因して、図7(C)に示すように変化する。但し、このように変化しても、その変化量には限度があり、変化量がこの限度よりも大きい場合には、測色ミスが発生していると考えることができる。
【0068】
なお、過去の測色値との比較処理が行われる際には、パッチ状画像が形成された色管理チャートが出力され、さらに、各パッチ状画像の測色が行われることで、測色値が得られる。そして、新たな測色値が得られる度に、過去の測色値と比較し、新たな測色値と過去の測色値との差を取得する。そして、この差が予め定められた閾値を超えている場合には、測色ミスがあったと判断する。
【0069】
ここで、この例でも、この閾値を、測色ミスの発生しやすさに応じて変更する。図6(C)を参照して具体的に説明すると、測色ミスが発生しやすい第1診断テーブルの場合は、閾値を6.8とし、測色ミスが発生しにくい第2診断テーブルの場合は、図6(C)に示すように閾値を15.0とする。これにより上記と同様、測色ミスが発生しやすい状況にあるときには、測色ミスが検知されやすくなり、測色ミスが発生しにくい状況にあるときには、誤検知が起きにくくなる。
【0070】
図8は、図6図7にて示した処理の流れを示したフローチャートである。
図6図7にて示した上記処理では、まず、色管理チャートを出力し、次いで、色管理チャートの読み結果である測色値を取得する(ステップ301)。具体的には、色および濃度が互いに異なる複数のパッチ状画像が形成された色管理チャート(図1参照)を画像形成装置100にて出力する。次いで、ユーザによる測色器を用いた測色が行われ、各パッチ状画像についての測色値が取得される。
【0071】
次いで、診断部202が、必要データの収集を行い、ユーザの使用状況を診断する(ステップ302)。具体的には、取得手段としても機能する診断部202が、第1診断テーブル等にて示した、管理者数、測色異常頻度、測色器についての情報を取得し、さらに、これらの情報に基づき倍率を算出する。
【0072】
次いで、診断部202が、測色異常検知方法の確定処理を行う(ステップ303)。
具体的には、診断部202が、測色ミスが発生しているか否かの判断に用いられる上記閾値を決定する。さらに具体的に説明すると、図6(C)にて示したテーブルに格納されている、倍率が1の場合の閾値と、図6(D)にて示した(式1)とを用いて、倍率に応じた閾値を決定する。付言すると、変更手段として機能する診断部202が、倍率に基づき、倍率が1の場合の閾値を、倍率に応じた新たな閾値に変更する。なお、階調特性判断、色相判断、過去の測色値との比較判断のように、判断対象が複数ある場合は、判断対象毎に新たな閾値を決定する。
【0073】
次いで、診断部202が、測色ミスが発生しているか否かの診断処理を実施する(ステップ304、ステップ305)。具体的には、ステップ301にて得られた測色値と、ステップ303にて決定した閾値とに基づき、測色ミスが発生しているか否かを判断する。なお、上記のように判断対象が複数ある場合には、判断対象毎に測色ミスが発生しているか否かを判断する。そして、ステップ305にて、測色ミスが発生していないと判断された場合は、ステップ306の処理に進む。
【0074】
ステップ306の処理では、ステップ301にて得られた測色値が、予め定められた基準(色補正処理を実施するか否かの基準)の範囲内にあるか否かを判断する。そして、ステップ301にて得られた測色値がこの基準の範囲内にある場合には処理を終了する。一方で、ステップ306にて、測色値が、予め定められた基準の範囲外にある場合は、補正処理を実施する(ステップ307)。具体的には、ステップ301にて得られた測色値と、目標とする色値との差が小さくなるように、キャリブレーションLUTの更新(補正)処理を実施する。
【0075】
一方、ステップ305にて測色ミスが発生していると判断された場合は、同じ種類の検査(同じ判断対象)にて過去に測色ミスが発生しており、且つ、同じ内容の測色ミスが過去に発生しているか否かを判断する(ステップ308)。そして、同じ種類の検査にて過去に測色ミスが発生し且つ同じ内容の測色ミスが過去に発生していると判断された場合は、それまでに得られた取得データおよびエラー内容(測色ミスの内容)が、エンジニアに送信され(ステップ309)、エンジニアの派遣が行われる(ステップ310)。
【0076】
ここで、本実施形態では、このように、同じ種類の検査にて過去に測色ミスが発生し且つ同じ内容の測色ミスが過去に発生していると判断された場合に、エンジニアの派遣が行われる。即ち、同じ測色ミスが2回発生した場合に、エンジニアの派遣が行われる。測色ミスが発生しているか否かの検知においても誤検知が発生することが考えられ、本実施形態のように、同じ測色ミスが2回発生したか否かを判断する場合、この誤検知の発生が抑制されるようになる。
【0077】
他の処理例をさらに説明する。
図9は、診断部202に格納された診断テーブルの他の一例を示した図である。
図9に示す診断テーブルを用いての処理では、倍率に加え、使用機器の性能も考慮に入れて、閾値(各評価項目についての評価が行われる際に用いられる基準)を決定する。付言すると、倍率に加え、使用機器の性能も考慮に入れ、調整実施を行うか否かの判断に用いられる基準を決定する。
【0078】
詳細に説明すると、画像形成装置100には様々な種類が存在し、種類に応じて性能が異なる。例えばある種類の画像形成装置100では、面内むらについての精度が他の装置に比べ悪く面内むらが起きやすくなる。このような装置では、面内むらの検知のための閾値が小さくなるようにし、面内むらについての数値が少しでも変化すれば、面内むらが発生したと判断されるようにする。
【0079】
具体的に説明すると、この処理例では、図9(A)に示すように、使用機器調整という欄を設け、色評価項目(「ターゲットからの色差」、「機器間の色差」、「経時の色変動」)、レジ評価項目(「リード・サイドレジ」、「カラーレジ」)、むら管理項目(「面内むら」)の各評価項目について、使用機器(画像形成装置100)の種類に応じた数値(以下、「機器調整値」と称する)を設定する。付言すると、画像形成装置100についての性能情報(性能を示す値)であって評価項目の各々に対して影響を与える性能情報を評価項目毎に予め設定しておく。そして、本実施形態では、この評価項目毎に設定したこの性能情報も加味して、閾値を決定する。
【0080】
なお、この例では、面内むらのついての精度が他の画像形成装置100に比べ悪い画像形成装置100についての診断テーブルを例示しており、面内むらについては、機器調整値が、「1.3」となっている。付言すると、色管理項目、レジ管理項目についての機器調整値は、「1」又は「1.1」となっているが、面内むらについては、「1」や「1.1」よりも大きい、「1.3」となっている。なお、機器調整値は、工場からの出荷段階等のときに運用情報記憶部203(図1参照)に格納され、診断部202は、診断テーブルを生成する際、運用情報記憶部203から機器調整値を取得する。
【0081】
また、この処理では、上記と同様、図9(A)に示すように、倍率が1の場合の閾値(各評価項目についての評価が行われる際に用いられる基準)が予め設定されており、この倍率が1の場合の閾値を、各倍率で割り、色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目の各々について、新たな閾値(新たな基準)を設定する。なお、本実施形態では、閾値を倍率で単に割るのではなく、図9(B)の(式1)で示すように、倍率に対して機器調整値を乗じたもので、倍率が1の場合の閾値を割り、新たな閾値を設定する。
【0082】
ここで、このような処理を行う場合、例えば、面内むらについての精度が悪い画像形成装置100では、倍率に対して1.3が乗じられたもので、割り算が行われる。この結果、面内むらについての精度が悪い装置では、面内むらについての精度が良い装置に比べ、閾値が小さくなる(判断の基準が厳しくなる)。そして、この場合は、面内むらが発生しやすい状況にある画像形成装置100にて、この面内むらがより高い確率で検出されるようになる。一方で、面内むらについての精度がよい画像形成装置100では、閾値が大きくなるため、誤検知が生じにくくなる。
【0083】
他の処理例をさらに説明する。
図10は、エンジニアの派遣、調整の実施、警告を行うか否かを決定する際に用いる閾値を、ユーザの関心度(倍率)に応じて決定する処理の流れを示したフローチャートである。
【0084】
ここで、エンジニアの派遣、調整の実施(画像形成装置100の調整処理)、警告などの処理を行うか否かは、色管理チャートを読み取ることにより得られた読み取りデータと、色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目などの評価項目毎に予め設定された閾値とを比較することで決定することができる。
【0085】
この際、本実施形態では、ユーザの関心度が低い評価項目については、例えば閾値を大きくし、エンジニアの派遣、調整の実施、警告を行うか否かの判断を行う際の条件を緩める。一方で、ユーザの関心度が高い評価項目については、例えば閾値を小さくし、エンジニアの派遣、調整の実施、警告を行うか否かの判断を行う際の条件を厳しくする。
【0086】
図10を参照し、処理の詳細を説明する。
この処理では、上記と同様、まず、診断部202が、必要データの収集を行い、ユーザの使用状況を診断する(ステップ401)。具体的には、上記にて説明した基本管理項目についての情報を、色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目毎に取得し、さらに、上記と同様、評価項目毎に、5段階の評価を行う。次いで、評価結果に基づき、上記と同様、倍率を算出する。これにより、例えば、図4(A)にて示した診断テーブルと同様の診断テーブルが生成される。付言すると、図4(A)における「情報収集頻度」、「情報収集内容」の欄を除いた状態の診断テーブルが生成される。
【0087】
次いで、診断部202にて、閾値の変更処理(更新処理)が実施される(ステップ402)。付言すると、本実施形態では、エンジニアの派遣、調整の実施、警告の3つの項目のそれぞれについて、これらを実施するか否かの基準となる閾値が予め設定されているが、ステップ402では、倍率に基づき、この閾値の値を変更する。詳細には、上記のとおり、例えば、ユーザの関心度が高いものについては閾値が小さくなるようにし、ユーザの関心度が低いものについては閾値が大きくなるようにする。
【0088】
さらに詳細に説明すると、本実施形態では、図11(エンジニアの派遣、調整の実施、警告について設定される閾値を説明する図)に示すように、診断部202に、閾値の決定に用いられる決定用テーブルが格納されている。この決定用テーブルでは、エンジニアの派遣、調整の実施、警告のそれぞれについて、倍率が1の場合の閾値が予め設定されている。さらに、エンジニアの派遣、調整の実施、警告の各々では、色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目のそれぞれについて、予め閾値が設定されている。
【0089】
そして、本実施形態では、上記のとおり、閾値の変更処理を行うが、この変更処理は、上記と同様に、倍率が1の場合の閾値を、各倍率で割ることにより算出する。これにより、エンジニアの派遣、調整実施、警告の3つの処理毎に、且つ、色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目毎の3つの評価項目毎に、新たな閾値(倍率に応じた新たな閾値)が設定される。
【0090】
次いで、本実施形態では、色管理チャートを出力するとともに、出力したこの色管理チャートの読み取りを行い、色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目の判断に用いる読み取りデータを取得する。次いで、読み取りデータと設定された上記新たな閾値との比較処理を行う(ステップ403)。
【0091】
そして、ステップ404では、エンジニアの派遣に関し設定された3つの閾値(色評価項目、レジ評価項目、むら評価項目のそれぞれについて設定された閾値)であって、倍率による上記変更処理が施された後の新たな3つの閾値(図11にて枠11Aで囲まれた部分に位置する3つの閾値)により設定された条件を満たしているか否かを判断する。そして、この条件を満たしている場合には、ステップ408の処理に進む。
【0092】
一方、上記3つの新たな閾値により設定された条件を満たしていない場合には、例えば、画像形成装置100に設けられた不図示のUIを通じて、ユーザに対し、エラーメッセージを表示する(ステップ405)。次いで、Eメール等を用いたエンジニアへの通知処理などを行って、エンジニアの派遣処理が実施される(ステップ406)。これにより、エンジニアによる画像形成装置100の修理等が行われるようになる。
【0093】
ステップ408以降の処理について説明する。
ステップ408の処理では、調整の実施に関し設定された3つの閾値であって変更処理が行われた後の新たな3つの閾値(図11にて枠11Bで囲まれた部分に位置する3つの閾値)により設定された条件を満たしているか否かを判断する。そして、この条件を満たしている場合には、ステップ412の処理に進む。
【0094】
一方、上記新たな3つの閾値により設定された条件を満たしていない場合には、上記と同様、例えば、画像形成装置100に設けられた不図示のUIを通じて、ユーザに対し、エラーメッセージを表示する(ステップ409)。次いで、画像形成装置100にて、予め定められた調整処理が実施される(ステップ410)。
【0095】
ステップ412以降の処理について説明する。
ステップ412以降の処理では、警告に関し設定された3つの閾値であって変更処理が行われた後の新たな3つの閾値(図11にて枠11Cで囲まれた部分に位置する3つの閾値)により設定された条件を満たしているか否かを判断する。そして、この条件を満たしている場合には、処理を終了する。
【0096】
一方で、上記新たな3つの閾値により設定された条件を満たしていない場合には、上記と同様、例えば、画像形成装置100に設けられた不図示のUIを通じて、ユーザに対し、エラーメッセージを表示する(警告表示を行う)(ステップ413)。
【0097】
(その他)
本実施形態では、上記のとおり、倍率が1の場合の閾値を、倍率(図9にて示した例では倍率に機器調整値を乗じたもの)で割って、新たな閾値を得るが、倍率が小さい場合には、閾値が極めて大きくなり、閾値を用いての判断が実質的になされないなどの不具合(閾値が、閾値として機能しない不具合)が起こりうる。
【0098】
このため、閾値には、上限値を設定しておき、倍率を用いて算出した新たな閾値がこの上限値を超える場合には、この上限値を閾値とすることが好ましい。
ここで、上記では説明を省略したが、図9(A)では、上限値を設定した診断テーブルを示しており、倍率を用いて算出した新たな閾値がこの上限値を超える場合には、この上限値が新たな閾値として設定される。より具体的に説明すると、同図(A)では、リード・サイドレジについての倍率は0.2であり、この倍率を用いて閾値を算出すると、閾値は500となる。しかしながら、リード・サイドレジについては、300という上限値が設定されており、閾値は、この300となる。
【符号の説明】
【0099】
100…画像形成装置、110…画像形成部、200…管理装置、202…機器使用状況診断部、204…色補正パラメータ作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11