特許第6237140号(P6237140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237140ダイヤフラム式アクチュエータ及び過給機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237140
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ダイヤフラム式アクチュエータ及び過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20171120BHJP
   F02B 37/16 20060101ALI20171120BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F02B37/18 B
   F02B37/16 B
   F02B39/00 T
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-235012(P2013-235012)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-94313(P2015-94313A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森 淳
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和明
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−073839(JP,U)
【文献】 実開昭60−089482(JP,U)
【文献】 特開2013−213554(JP,A)
【文献】 実開昭58−165306(JP,U)
【文献】 実開昭60−082529(JP,U)
【文献】 米国特許第04322948(US,A)
【文献】 特開2000−046008(JP,A)
【文献】 米国特許第06352019(US,B1)
【文献】 実開昭54−081089(JP,U)
【文献】 実開昭64−029508(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
F02B 37/16
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンハウジング又は前記タービンハウジングに連通した状態で接続した接続体の内部に、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とすためのガス流量可変通路が形成された過給機に用いられ、
前記タービンハウジング又は前記接続体の外壁形成した支持穴に正逆方向へ回転可能に設けられたステムと、基端部が前記ステム連結された取付部材と、前記取付部材の先端部に設けられかつ前記ガス流量可変通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能なバルブと、基端部が前記ステムの基端部連結されたリンク部材とを備え流量可変バルブ機構を作動させダイヤフラム式アクチュエータにおいて、
内側に第1アクチュエータ室及び第2アクチュエータ室を有し、前記第1アクチュエータ室及び前記第2アクチュエータ室のうち少なくともいずれかが圧力源から負圧又は正圧を印加可能な圧力室になる筒状のアクチュエータ本体と、
前記アクチュエータ本体内に前記第1アクチュエータ室と前記第2アクチュエータ室に区画するように設けられ、中央部がアクチュエータ軸方向へ変位可能なダイヤフラムと、
前記第1アクチュエータ室及び前記第2アクチュエータ室のうちの低圧側のアクチュエータ室内に設けられ、前記圧力室に印加される負圧又は正圧に抗する方向へ前記ダイヤフラムを付勢する復帰スプリングと、
前記ダイヤフラムの前記低圧側のアクチュエータ室側の面に設けられたリテーナと、
基端部が前記ダイヤフラムの中央部連結され、先端部が前記リンク部材の先端部に回転可能に連結された作動ロッドと、
前記リテーナと前記復帰スプリングとの間又は前記復帰スプリングと前記アクチュエータ本体の内壁面との間の少なくともいずれかに設けられた座金と、
前記リテーナと前記座金との間又は前記座金と前記アクチュエータ本体の内壁面との間の少なくともいずれかに設けられ、弾性体からなり、前記作動ロッドの振動を吸収する防振シートと、を具備したダイヤフラム式アクチュエータ。
【請求項2】
前記座金は、前記リテーナと前記復帰スプリングとの間及び前記復帰スプリングと前記アクチュエータ本体の内壁面との間にそれぞれ設けられ、前記防振シートは、前記リテーナと前記座金との間及び前記座金と前記アクチュエータ本体の内壁面との間にそれぞれ設けられている請求項1記載のダイヤフラム式アクチュエータ。
【請求項3】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する過給機において、
請求項1又は請求項2記載のダイヤフラム式アクチュエータを具備した過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路を備えた車両用過給機等の過給機に用いられ、ガス流量可変通路の開口部を開閉する流量可変バルブ機構を作動させるためのダイヤフラム式アクチュエータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用過給機による過給圧の過度の上昇を防止する対策として、通常、車両用過給機におけるタービンハウジングの内部には、排気ガスの一部をタービンインペラをバイパスさせるためのバイパス通路が形成される。また、タービンハウジングの適宜位置には、バイパス通路の開口部を開閉するウェイストゲートバルブが設けられている。ここで、バイパス通路は、エンジン側からタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするガス流量可変通路の1つであって、ウェイストゲートバルブは、ガス流路可変通路の開口部を開閉する流量可変バルブ機構の1つである。そして、流量可変バルブ機構の1つであるウェイストゲートバルブの構成は、次のようになる。
【0003】
即ち、タービンハウジングの外壁に貫通形成した支持穴には、ステム(回転軸)が正逆方向へ回転可能に設けられており、このステムの基端部は、タービンハウジングの外側へ突出してある。また、ステムの先端部には、取付部材の基端部が一体的に連結されており、この取付部材の先端部には、バイパス通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能なバルブが設けられている。更に、ステムの基端部には、リンク部材の基端部(一端部)が一体的に連結されている。ここで、リンク部材をステムの軸心周りに正逆方向へ揺動させることによって、バルブがステム及び取付部材を介して正逆方向(開閉方向)へ揺動するようになっている。
【0004】
コンプレッサハウジングの外壁には、ウェイストゲートバルブを作動させるためのダイヤフラム式アクチュエータが設けられている。そして、ダイヤフラム式アクチュエータの構成は、次のようになる。
【0005】
即ち、ダイヤフラム式アクチュエータは、筒状のアクチュエータ本体を備えており、このアクチュエータ本体は、内側(内部)に、大気に連通した大気室としての第1アクチュエータ室、及び負圧ポンプ(負圧の圧力源)から負圧を印加可能(供給可能)な圧力室としての第2アクチュエータ室を有している。また、アクチュエータ本体内には、ダイヤフラムが第1アクチュエータ室と第2アクチュエータ室を区画するように設けられており、このダイヤフラムの中央部は、アクチュエータ軸方向へ変位可能である。そして、低圧側のアクチュエータ室としての第2アクチュエータ室内には、第1アクチュエータ室側へ付勢する復帰スプリングが設けられている。更に、ダイヤフラムの中央部には、作動ロッドの基端部が一体的に連結されており、作動ロッドの先端部は、リンク部材の先端部に回転可能に連結されている。
【0006】
従って、車両用過給機の運転中に、過給圧(コンプレッサインペラの出口側の圧力)が設定圧に達して、負圧ポンプからの負圧の印加状態が解除されると、復帰スプリングの付勢力によってダイヤフラムの中央部がアクチュエータ軸方向の一方側へ変位する。すると、作動ロッドがアクチュエータ軸方向の一方側へ移動して、リンク部材を正方向へ揺動させる。これにより、バルブがステム及び取付部材を介して正方向(開方向)へ揺動して、バイパス通路の開口部を開くことができ、排気ガスの一部をタービンインペラをバイパスさせて、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を減少させることができる。
【0007】
また、バイパス通路の開口部を開いた後に、過給圧が設定圧未満になって、負圧ポンプから圧力室に負圧が印加されると、ダイヤフラムの中央部が復帰スプリングの付勢力に抗してアクチュエータ軸方向の他方側へ変位する。すると、作動ロッドがアクチュエータ軸方向の他方側へ移動して、リンク部材を逆方向へ揺動させる。これにより、バルブがステム及び取付部材を介して逆方向(閉方向)へ揺動して、バイパス通路の開口部を閉じることができ、バイパス通路内の排気ガスの流れを遮断して、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を増加させることができる。
【0008】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1及び特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−236088号公報
【特許文献2】特開2008−101589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、車両用過給機の運転中、負圧ポンプ側から負圧の脈動(脈動圧力)及びエンジン側からの排気ガスの脈動(脈動圧力)によって、作動ロッド及びバルブがリンク部材等を介して微小振動することがある。このような場合に、バルブがバイパス通路の開口部側のバルブシート又は取付部材に接触して、ウェイストゲートバルブからチャタリング音が発生して、ウェイストゲートバルブの静音性の低下を招くことが懸念される。
【0011】
なお、前述の問題は、第1アクチュエータ室に正圧の圧力源から正圧が印加されるタイプのウェイストゲートバルブ、ウェイストゲートバルブ以外の流量可変バルブ機構においても同様に生じるものである。
【0012】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のダイヤフラム式アクチュエータ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、タービンハウジング又は前記タービンハウジングに連通した状態で接続した接続体の内部に、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とすためのガス流量可変通路が形成された過給機に用いられ、前記タービンハウジング又は前記接続体の外壁形成した支持穴に正逆方向へ回転可能に設けられたステム(回転軸)と、基端部が前記ステム連結された取付部材と、前記取付部材の先端部に設けられかつ前記ガス流量可変通路の開口部側のバルブシート(周縁部)に当接離隔可能なバルブと、基端部が前記ステムの基端部連結されたリンク部材とを備え流量可変バルブ機構を作動させダイヤフラム式アクチュエータにおいて、内側(内部)に第1アクチュエータ室及び第2アクチュエータ室を有し、前記第1アクチュエータ室及び前記第2アクチュエータ室のうち少なくともいずれか圧力源(負圧の圧力源又は正圧の圧力源)から負圧又は正圧を印加可能(供給可能)な圧力室になる筒状のアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体内に前記第1アクチュエータ室と前記第2アクチュエータ室に区画するように設けられ、中央部がアクチュエータ軸方向へ変位可能なダイヤフラムと、前記第1アクチュエータ室及び前記第2アクチュエータ室のうちの低圧側のアクチュエータ室内に設けられ、前記圧力室に印加される負圧又は正圧に抗する方向へ前記ダイヤフラムを付勢する復帰スプリングと、前記ダイヤフラムの前記低圧側のアクチュエータ室側の面に設けられたリテーナと、基端部が前記ダイヤフラムの中央部連結され、先端部が前記リンク部材の先端部に回転可能(揺動可能)に連結された作動ロッドと、前記リテーナと前記復帰スプリングとの間又は前記復帰スプリングと前記アクチュエータ本体の内壁面との間の少なくともいずれかに設けられた座金と、前記リテーナと前記座金との間又は前記座金と前記アクチュエータ本体の内壁面との間の少なくともいずれかに設けられ、弾性体からなり、前記作動ロッドの振動(前記作動ロッド及び前記ダイヤフラムの振動)を吸収(ダンピング)する防振シートと、を具備したことである。
【0014】
ここで、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「タービンハウジングに連通した状態で接続した接続体」とは、タービンハウジングのガス導入口又はガス排出口に連通した状態で接続した配管、マニホールド、ケーシング等を含む意である。また、「ガス流量可変通路」とは、排気ガスの一部をタービンインペラをバイパスさせるためのバイパス通路を含む意であって、「流量可変バルブ機構」とは、バイパス通路の開口部を開閉するウェイストゲートバルブを含む意である。更に、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意であって、「連結され」とは、直接的に連結されたことの他に、別部材を介して間接的に連結されたことを含む意である。
【0015】
「アクチュエータ軸方向」とは、アクチュエータ本体の軸方向のことをいう。また、「低圧側のアクチュエータ室」とは、第1アクチュエータ室及び前記第2アクチュエータ室のうち一方のアクチュエータ室が圧力源から負圧を印加可能な圧力室である場合には、一方のアクチュエータ室のことをいい、一方のアクチュエータ室が圧力源から正圧を印加可能な圧力室である場合には、他方のアクチュエータ室のことをいう。更に、「弾性体」とは、ゴム、制振合金等を含む意である。
【0016】
本発明の第1の態様によると、前記過給機の運転中に、前記圧力源(前記負圧の圧力源)からの負圧の印加状態が解除されると、前記復帰スプリングの付勢力によって前記ダイヤフラムの中央部がアクチュエータ軸方向の一方側へ変位する。又は、前記圧力源(前記正圧の圧力源)から前記圧力室に正圧が印加されると、前記ダイヤフラムの中央部が前記復帰スプリングの付勢力に抗してアクチュエータ軸方向の一方側へ変位する。すると、前記作動ロッドがアクチュエータ軸方向の一方側へ移動して、前記リンク部材を正方向へ揺動させる。これにより、前記バルブが前記ステム及び前記取付部材を介して正方向へ揺動して、前記ガス流量可変通路の開口部を開くことができる。なお、前記ガス流量可変通路の開口部を開くことによって、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を減少させる場合と増加させる場合がある。
【0017】
また、前記ガス流量可変通路の開口部を開いた後に、前記圧力源(前記負圧の圧力源)から前記圧力室に負圧が印加されると、前記ダイヤフラムの中央部が前記復帰スプリングの付勢力に抗してアクチュエータ軸方向の他方側へ変位する。又は、前記圧力源(前記正圧の圧力源)からの正圧の印加状態が解除されると、前記復帰スプリングの付勢力によって前記ダイヤフラムの中央部がアクチュエータ軸方向の他方側へ変位する。すると、前記作動ロッドアクチュエータ軸方向の他方側移動して、前記リンク部材を逆方向へ揺動させる。これにより、前記バルブが前記ステム及び前記取付部材を介して逆方向(閉方向)へ揺動して、前記ガス流量可変通路の開口部を閉じることができる。なお、前記ガス流量可変通路の開口部を閉じることによって、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を増加させる場合と減少させる場合がある。
【0018】
そして、前記ダイヤフラムと前記復帰スプリングとの間又は前記復帰スプリングと前記アクチュエータ本体の内壁面との間の少なくともいずれかに弾性体からなる前記防振シートが設けられているため、前記過給機の運転中に、前記圧力源側からの脈動(脈動圧力)等が発生しても、前記防振シートによって前記脈動による前記作動ロッドの振動を吸収(ダンピング)することができる。これにより、前記過給機の運転中における前記バルブの振動を抑えることができる。
【0019】
本発明の第2の態様は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する過給機において、本発明の第1の態様からなるダイヤフラム式アクチュエータを具備したことである。
【0020】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記過給機の運転中における前記バルブの振動を抑えることができるため、前記流量可変バルブ機構からのチャタリング音を低減して、前記流量可変バルブ機構の静音性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータの断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータと負圧の圧力源としての負圧ポンプとの関係を示す図である。
図3図3(a)(b)は、本発明の実施形態の変形例に係るダイヤフラム式アクチュエータの部分断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る車両用過給機の正面図である。
図5図5は、図4におけるV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る車両用過給機の正断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータの断面図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータと正圧の圧力源としての空気排出口との関係を示す図である。
図9図9(a)(b)は、本発明の他の実施形態の変形例に係るダイヤフラム式アクチュエータの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図1から図6を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「L」は、左方向、「R」は、右方向である。
【0024】
図4及び図6に示すように、本発明の実施形態に係る車両用過給機(過給機の一例)1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、車両用過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0025】
車両用過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、一対のラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0026】
ベアリングハウジング3の右側には、コンプレッサハウジング11が設けられている。また、コンプレッサハウジング11内には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ13が回転可能に設けられており、このコンプレッサインペラ13は、ロータ軸9の右端部に同心上に一体的に連結されている。
【0027】
コンプレッサハウジング11におけるコンプレッサインペラ13の入口側(空気の流れ方向の上流側)には、空気を導入するための空気導入口(空気導入通路)15が形成されており、この空気導入口15は、空気を浄化するエアクリーナー(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング11との間におけるコンプレッサインペラ13の出口側(空気の流れ方向の下流側)には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路17が形成されている。更に、コンプレッサハウジング11の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路19がコンプレッサインペラ13を囲むように形成されており、このコンプレッサスクロール流路19は、ディフューザ流路17に連通してある。そして、コンプレッサハウジング11の外壁の適宜位置には、圧縮された空気を排出するための空気排出口(空気排出通路)21が形成されており、この空気排出口21は、コンプレッサスクロール流路19に連通しており、エンジンの給気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0028】
ベアリングハウジング3の左側には、タービンハウジング23が設けられている。また、タービンハウジング23内には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ25が回転可能に設けられており、このタービンインペラ25は、ロータ軸9の左端部に同心上に一体的に連結されている。
【0029】
図4から図6に示すように、タービンハウジング23の外壁の適宜位置には、排気ガスを導入するためのガス導入口(ガス導入通路)27が形成されており、このガス導入口27は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング23の内部におけるタービンインペラ25の入口側(排気ガスの流れ方向の上流側)には、渦巻き状のタービンスクロール流路29が形成されている。そして、タービンハウジング23におけるタービンインペラ25の出口側(排気ガスの流れ方向の下流側)には、排気ガスを排出するためのガス排出口(ガス排出通路)31が形成されており、このガス排出口31は、排気ガスを浄化する触媒(図示省略)に接続管(図示省略)等を介して接続可能である。
【0030】
図4及び図5に示すように、タービンハウジング23の内部には、ガス導入口27から導入した排気ガスの一部をタービンインペラ25をバイパスさせてガス排出口31側へ導出するためバイパス通路33が形成されている。ここで、バイパス通路33は、タービンインペラ25側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路の1つであって、特開2013−185552号公報に示す公知のバイパス通路と同様の構成を有している。
【0031】
タービンハウジング23の適宜位置には、バイパス通路33の開口部を開閉する流量可変バルブ機構の1つとしてのウェイストゲートバルブ35が設けられている。そして、ウェイストゲートバルブ35の具体的な構成は、次のようになる。
【0032】
即ち、タービンハウジング23の外壁に貫通形成した支持穴37には、ステム(回転軸)39がブッシュ41を介して正逆方向へ回転可能に設けられており、このステム39の基端部(一端部)は、タービンハウジング23の外側へ突出してある。また、ステム39の先端部(他端部)には、取付部材(取付板)43の基端部が隅肉溶接によって一体的に連結されており、この取付部材43の先端部には、二面幅形状又は円形状の取付穴(図示省略)が貫通形成されている。なお、取付部材43の基端部が隅肉溶接の代わりにTIG溶接、レーザビーム溶接、又はかしめ等によってステム39の先端部に一体的に連結されても構わない。
【0033】
取付部材43の取付穴には、バルブ45が嵌合して設けられており、このバルブ45は、取付部材43に対するガタ(傾動及び微動含む)が許容されている。また、バルブ45は、バイパス通路33の開口部側のバルブシート(周縁部)に当接離隔可能なバルブ本体47、及びバルブ本体47の中央部に一体形成されかつ取付部材43の取付穴に嵌合したバルブ軸49を備えている。ここで、取付部材43に対するバルブ45のガタが許容されることによって、バイパス通路33の開口部側のバルブシートに対するバルブ本体47の追従性(密着性)を確保している。更に、バルブ軸49の先端部には、環状の止め金(座金)51が隅肉溶接によって一体的に設けられている。なお、止め金51が隅肉溶接の代わりにTIG溶接、レーザビーム溶接、又はかしめ等によってバルブ軸49の先端部に一体的に連結されても構わない。
【0034】
ここで、バルブ軸49がバルブ本体47の中央部に一体形成されかつ止め金51がバルブ軸49の先端部に隅肉溶接等によって一体的に設けられる代わりに、バルブ軸49がバルブ本体47の中央部にかしめによって一体的に設けられかつ止め金51がバルブ軸49の先端部に一体形成されても構わない。なお、バルブ軸49がかしめの代わりに隅肉溶接、TIG溶接、又はレーザビーム溶接によってバルブ本体47の中央部に一体的に設けられても構わない。
【0035】
ステム39の基端部には、リンク部材(リンク板)53の基端部(一端部)が隅肉溶接によって一体的に連結されている。ここで、リンク部材53をステム39の軸心周りに正逆方向へ揺動させることによって、バルブ45がステム39及び取付部材43を介して正逆方向(開閉方向)へ揺動するようになっている。なお、リンク部材53の基端部が隅肉溶接の代わりにTIG溶接、レーザビーム溶接、又はかしめ等によってステム39の基端部に一体的に連結されても構わない。
【0036】
図4及び図5に示すように、コンプレッサハウジング11の外壁には、ウェイストゲートバルブ35を作動させるためのダイヤフラム式アクチュエータ55がブラケット57を介して設けられている。そして、ダイヤフラム式アクチュエータ55の具体的な構成は、以下のようになる。
【0037】
即ち、図1図2、及び図4に示すように、ダイヤフラム式アクチュエータ55は、コンプレッサハウジング11の外壁にブラケット57を介して設けられた筒状のアクチュエータ本体59を備えおり、このアクチュエータ本体59は、第1アクチュエータカップ61と第2アクチュエータカップ63を接合してなるものである。なお、アクチュエータ本体59がコンプレッサハウジング11の外壁に設けられる代わりに、ベアリングハウジング3又はタービンハウジング23の外壁等の車両用過給機1の適宜箇所に設けられても構わない。
【0038】
アクチュエータ本体59は、内側(内部)に、第1アクチュエータ室65及び第2アクチュエータ室67をアクチュエータ軸方向(アクチュエータ本体59の軸方向)に沿って有している。ここで、本発明の実施形態にあっては、第1アクチュエータ室65は、大気に連通した大気室であって、第2アクチュエータ室67は、負圧の圧力源としての負圧ポンプ69から負圧を印加可能(供給可能)な圧力室でかつ低圧側のアクチュエータ室である。また、第2アクチュエータ室67は、配管経路(経路)71を介して負圧ポンプ69に接続されている。更に、第2アクチュエータ室67に印加する負圧は、配管経路71の途中に配設された圧力制御弁としてのEVRV(エレクトリック・バキューム・レギュレーティング・バルブ)73をECU(Electronic Control Unit)75によって制御することにより調節可能になっている。なお、EVRV73に代えて、DSV(デューティ・ソレノイド・バルブ)等の別の圧力制御弁を用いても構わない。
【0039】
アクチュエータ本体59内には、ダイヤフラム77が第1アクチュエータ室65と第2アクチュエータ室67を区画するように設けられており、このダイヤフラム77の周縁部は、第1アクチュエータカップ61と第2アクチュエータカップ63により挟持されている。また、ダイヤフラム77の中央部は、アクチュエータ軸方向へ変位可能(移動可能)になっている。そして、ダイヤフラム77の第1アクチュエータ室65側の面には、カップ状の第1リテーナ79が設けられており、ダイヤフラム77の第2アクチュエータ室67側の面には、カップ状の第2リテーナ81が設けられている。また、第2アクチュエータ室67内における第2リテーナ81と第2アクチュエータカップ63の内壁面との間には、ダイヤフラム77を第1アクチュエータ室65側(換言すれば、第2アクチュエータ室67に印加される負圧に抗する方向)へ付勢する復帰スプリング(コイルスプリング)83が設けられている。
【0040】
アクチュエータ本体59には、作動ロッド85がブッシュ87を介してアクチュエータ軸方向へ移動可能に設けられており、この作動ロッド85は、アクチュエータ本体59から外側へ突出してある。また、作動ロッド85の基端部は、ダイヤフラム77の中央部に一体的に連結されており、作動ロッド85の先端部は、リンク部材53の先端部に連結ピン89を介して回転可能(揺動可能)に連結されている。
【0041】
第2アクチュエータ室67内における第2リテーナ81と復帰スプリング83との間には、座金91が設けられている。そして、第2アクチュエータ室67内における第2リテーナ81と座金91との間には、作動ロッド85の振動(作動ロッド85及びダイヤフラム77の振動)を吸収(ダンピング)する環状の防振シート93が設けられている。換言すれば、第2アクチュエータ室67内におけるダイヤフラム77と復帰スプリング83との間には、防振シート93が第2リテーナ81及び座金91を介して設けられている。また、防振シート93は、シリコンゴム、クロロプレンゴム等の耐熱性のゴム(弾性体の一例)からなるものであって、第2リテーナ81の内側に座金91と共に収容されている。なお、座金91が第2リテーナ81の内側に収容されていなくても構わない。座金91と防振シート93を一体化したり、座金91をダイヤフラム式アクチュエータ55の構成から省略したりしても構わない。
【0042】
第2アクチュエータ室67内におけるダイヤフラム77と復帰スプリング83との間に、防振シート93が設けられる代わりに、或いは防振シート93が設けられる他に、次のような構成を採っても構わない。
【0043】
即ち、図3(a)(b)に示すように、第2アクチュエータ室67内における復帰スプリング83と第2アクチュエータカップ63の内壁面の間には、座金95が設けられている。また、第2アクチュエータ室67内における座金95と第2アクチュエータカップ63の内壁面の間には、作動ロッド85の振動を復帰スプリング83を介して吸収する環状の防振シート97が設けられている。換言すれば、第2アクチュエータ室67内における復帰スプリング83と第2アクチュエータカップ63の内壁面との間には、防振シート97が座金95を介して設けられている。また、防振シート97は、シリコンゴム、クロロプレンゴム等の耐熱性のゴム(弾性体の一例)からなるものであって、第2アクチュエータカップ63の内壁面に設けられた環状の収容部99に座金95と共に収容されている。なお、座金95が収容部99の内側に収容されていなくても構わない。座金95と防振シート97を一体化したり、座金95又は収容部99をダイヤフラム式アクチュエータ55の構成から省略したりしても構わない。
【0044】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
ガス導入口27から導入した排気ガスがタービンスクロール流路29を経由してタービンインペラ25の入口側から出口側へ流通することにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ13をタービンインペラ25と一体的に回転させることができる。これにより、空気導入口15から導入した空気を圧縮して、ディフューザ流路17及びコンプレッサスクロール流路19を経由して空気排出口21から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給することができる。
【0046】
車両用過給機1の運転中に、過給圧(空気排出口21の圧力)が設定圧に達して、負圧ポンプ69からの負圧の印加状態が解除されると、復帰スプリング83の付勢力によってダイヤフラム77の中央部がアクチュエータ軸方向の一方側(左方向)へ変位する。すると、作動ロッド85がアクチュエータ軸方向の一方側へ移動して、リンク部材53を正方向(図1及び図4において時計回り方向)へ揺動させることができる。これにより、バルブ45がステム39及び取付部材43を介して正方向(開方向)へ揺動して、バイパス通路33の開口部を開くことができる。これにより、ガス導入口27から導入した排気ガスの一部をタービンインペラ25をバイパスさせて、タービンインペラ25側へ供給される排気ガスの流量を減少させることができる。
【0047】
また、バイパス通路33の開口部を開いた後に、過給圧が設定圧未満になって、負圧ポンプ69から第2アクチュエータ室67に負圧が印加されると、ダイヤフラム77の中央部が復帰スプリング83の付勢力に抗してアクチュエータ軸方向の他方側(右方向)へ変位する。すると、作動ロッド85がアクチュエータ軸方向の他方側へ移動して、リンク部材53を逆方向(図1及び図4において反時計回り方向)へ揺動させる。これにより、バルブ45がステム39及び取付部材43を介して逆方向(閉方向)へ揺動して、バイパス通路33の開口部を閉じることができる。これにより、バイパス通路33内の排気ガスの流れを遮断して、タービンインペラ25側へ供給される排気ガスの流量を増加させることができる。
【0048】
更に、過給圧が設定圧未満である場合に、EVRV73を制御して第2アクチュエータ室67に印加する負圧を調節することにより、ダイヤフラム77の中央部がアクチュエータ軸方向へ適宜に変位する。すると、作動ロッド85がアクチュエータ軸方向へ移動して、リンク部材53を正逆方向へ適宜に揺動させることができる。これにより、バルブ45の開度を連続的又は断続的に調節することができ、エンジンの運転状況に応じて、タービンインペラ25側へ供給される排気ガスの流量を可変(調節)することができる。
【0049】
そして、図1図2、及び図3(b)に示すように、第2アクチュエータ室67内におけるダイヤフラム77と復帰スプリング83との間に耐熱性のゴム等の弾性体からなる防振シート93が設けられているため、車両用過給機1の運転中に、負圧ポンプ69側からの脈動(脈動圧力)及びエンジン側からの排気ガスの脈動(脈動圧力)が発生しても、防振シート93によって前記脈動による作動ロッド85の振動を吸収(ダンピング)することができる。又は、図3(a)(b)に示すように、第2アクチュエータ室67内における復帰スプリング83と第2アクチュエータカップ63の内壁面との間に耐熱性のゴム等の弾性体からなる防振シート97が設けられているため、車両用過給機1の運転中に、防振シート97によって前記脈動による作動ロッド85の振動を吸収することができる。これにより、車両用過給機1の運転中におけるバルブ45の振動を抑えることができる。
【0050】
特に、図3(b)に示すように、第2アクチュエータ室67内におけるダイヤフラム77と復帰スプリング83との間、及び第2アクチュエータ室67内における復帰スプリング83と第2アクチュエータカップ63の内壁面との間に防振シート93,97がそれぞれ設けられている場合には、車両用過給機1の運転中に、防振シート93,97によって前記脈動による作動ロッド85の振動を効果的に吸収して、バルブ45の振動をより十分に抑えることができる。
【0051】
また、第2リテーナ81と復帰スプリング83との間に座金91が設けられているため、復帰スプリング83の付勢力によって防振シート93に働く面圧を低下させて、防振シート93の劣化(へたり)を抑えることができる。同様に、防振シート97をダイヤフラム式アクチュエータ55に用いた場合にも、復帰スプリング83と第2アクチュエータカップ63の内壁面の間に座金95が設けられているため、復帰スプリング83の付勢力によって防振シート97に働く面圧を低下させて、防振シート97の劣化(へたり)を抑えることができる。
【0052】
以上の如く、本発明の実施形態によれば、車両用過給機1の運転中におけるバルブ45の振動を抑えることができるため、ウェイストゲートバルブ35からのチャタリング音を低減して、ウェイストゲートバルブ35の静音性を向上させることができる。
【0053】
また、防振シート93の劣化を抑えると共に、防振シート97をダイヤフラム式アクチュエータ55に用いた場合にも、防振シート97の劣化を抑えることができるため、ダイヤフラム式アクチュエータ55の耐久性を向上させることができる。
【0054】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態について図7から図9(a)(b)を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「L」は、左方向、「R」は、右方向である。
【0055】
図7及び図8に示すように、本発明の他の実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータ101は、本発明の実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータ55(図1参照)と同様に、ウェイストゲートバルブ35(図5参照)を作動させるためのアクチュエータである。また、ダイヤフラム式アクチュエータ101は、ダイヤフラム式アクチュエータ55と同様の構成を有しており、ダイヤフラム式アクチュエータ101の構成のうち、ダイヤフラム式アクチュエータ55の構成と異なる部分についてのみ説明する。なお、ダイヤフラム式アクチュエータ101における複数の構成要素のうち、ダイヤフラム式アクチュエータ55と対応するものについては、図面中に同一符号を付してある。
【0056】
本発明の他の実施形態においては、第2アクチュエータ室67は、負圧の圧力源としての負圧ポンプ69(図2参照)から負圧を印加可能な圧力室ではなく、正圧の圧力源としての空気排出口21から正圧を印加可能な圧力室になっており、大気室である第1アクチュエータ室65は、低圧側のアクチュエータ室になっている。また、第2アクチュエータ室67は、配管経路(経路)103を介して空気排出口21に接続されており、第2アクチュエータ室67に印加する正圧は、配管経路103の途中に配設されかつ連絡用の配管経路105を介して空気導入口15に接続されたDSV107をECU75によって制御することにより調節可能になっている。なお、DSV107に代えて、EVRVを用いても構わない。
【0057】
第2アクチュエータ室67内に復帰スプリング83(図2参照)が設けられる代わりに、第1アクチュエータ室65内における第1アクチュエータカップ61の内壁面と第1リテーナ79との間には、ダイヤフラム77を第2アクチュエータ室67側(換言すれば、第2アクチュエータ室67に印加される正圧に抗する方向)へ付勢する復帰スプリング109が設けられている。ここで、車両用過給機1の運転中に、過給圧が設定圧に達して、空気排出口21から正圧が印加されると、ダイヤフラム77の中央部が復帰スプリング109の付勢力に抗してアクチュエータ軸方向の一方側(左方向)へ変位することになる。また、過給圧が設定圧未満になって、空気排出口21からの印加状態が解除されると、復帰スプリング109の付勢力によってダイヤフラム77の中央部がアクチュエータ軸方向の他方側(右方向)へ変位することになる。
【0058】
第2アクチュエータ室67内に防振シート93等(図2参照)が設けられる代わりに、次のような構成を採っている。
【0059】
即ち、第1アクチュエータ室65内における第1リテーナ79と復帰スプリング109との間には、座金111が作動ロッド85を貫通させた状態で設けられている。そして、第1アクチュエータ室65内における第1リテーナ79と座金111との間には、作動ロッド85の振動(作動ロッド85及びダイヤフラム77の振動)を吸収する環状の防振シート113が作動ロッド85を貫通させた状態で設けられている。換言すれば、第1アクチュエータ室65内におけるダイヤフラム77と復帰スプリング109との間には、防振シート113が第1リテーナ79及び座金111を介して設けられている。また、防振シート113は、シリコンゴム、クロロプレンゴム等の耐熱性のゴム(弾性体の一例)からなるものであって、第1リテーナ79の内側に座金111と共に収容されている。なお、座金111が第1リテーナ79の内側に収容されていなくても構わない。座金111と防振シート113を一体化したり、座金111をダイヤフラム式アクチュエータ101の構成から省略したりしても構わない。
【0060】
第1アクチュエータ室65内におけるダイヤフラム77と復帰スプリング109との間に、防振シート113が設けられる代わりに、或いは防振シート113が設けられる他に、次のような構成を採っても構わない。
【0061】
即ち、図9(a)(b)に示すように、第1アクチュエータ室65内における復帰スプリング109と第1アクチュエータカップ61の内壁面の間には、座金115が作動ロッド85を貫通させた状態で設けられている。また、第1アクチュエータ室65内における座金115と第1アクチュエータカップ61の内壁面の間には、作動ロッド85の振動を復帰スプリング109を介して吸収する環状の防振シート117が作動ロッド85を貫通させた状態で設けられている。換言すれば、第1アクチュエータ室65内における復帰スプリング109と第1アクチュエータカップ61の内壁面との間には、防振シート117が座金115を介して設けられている。また、防振シート117は、シリコンゴム、クロロプレンゴム等の耐熱性のゴム(弾性体の一例)からなるものであって、第1アクチュエータカップ61の内壁面に設けられた環状の収容部119に座金115と共に収容されている。なお、座金115が収容部119の内側に収容されていなくても構わない。座金115と防振シート117を一体化したり、座金115又は収容部119をダイヤフラム式アクチュエータ101の構成から省略したりしても構わない。
【0062】
従って、車両用過給機1の運転中に、空気排出口21側からの脈動(脈動圧力)及びエンジン側からの排気ガスの脈動(脈動圧力)が発生しても、防振シート113等によって前記脈動による作動ロッド85の振動を吸収することができる。よって、本発明の他の実施形態においても、前述の本発明の実施形態と同様の効果を奏するものである。
【0063】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、次のように種々の態様で実施可能である。
【0064】
即ち、例えば、タービンハウジング23の適宜位置にバイパス通路33を開閉するウェイストゲートバルブ35が設けられる代わりに、タービンハウジング23のガス導入口27に連通した状態で接続した排気マニホールド(図示省略)の適宜位置に、排気マニホールドに形成したバイパス通路(図示省略)の開口部を開閉するウェイストゲートバルブ(図示省略)が設けられても構わない。また、本発明の他の実施形態において、第1アクチュエータ室65を大気室にする代わりに、負圧の圧力源(図示省略)から負圧を印加可能な別の圧力室にしても構わない。更に、防振シート93,97,113,117が耐熱性のゴムからなる代わりに、Mg系合金、Ti−Ni系合金、Al−Zn系合金、Mn−Cn系合金、Cu−Al−Mn系合金等の制振合金(弾性体の一例)からなるようにしても構わない。また、制振合金からなる制振シート93等を中空構造とし、制振シート93等の内部に空気、油、ゴム等を充填又は介在させても構わない。
【0065】
そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【0066】
即ち、本願の流量可変バルブ機構は、前述のウェイストゲートバルブ35に限定されるものでなく、例えば、実開昭61−33923号公報及び特開2001−263078号公報等に示すように、タービンハウジング(図示省略)内に形成された複数のタービンスクロール流路(図示省略)のうちのいずれかのタービンスクロール流路に対して排気ガスの供給状態と供給停止状態とを切り替える切替バルブ機構(図示省略)にも適用可能である。また、本願の流量可変バルブ機構は、例えば、特開2010−209688号公報、特開2011−106358号公報等に示すように、複数段のタービンハウジング(図示省略)のうちいずれかの段のタービンハウジングに対して排気ガスの供給状態と供給停止状態とを切り替える切替バルブ機構(図示省略)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1:車両用過給機、3:ベアリングハウジング、5:ラジアルベアリング、9:ロータ軸、11:コンプレッサハウジング、13:コンプレッサインペラ、15:空気導入口、19:コンプレッサスクロール流路、21:空気排出口(正圧の圧力源)、23:タービンハウジング、25:タービンインペラ、27:ガス導入口、29:タービンスクロール流路、31:ガス排出口、33:バイパス通路(ガス流量可変通路)、35:ウェイストゲートバルブ(流量可変バルブ機構)、37:支持穴、39:ステム、41:ブッシュ、43:取付部材、45:バルブ、53:リンク部材、55:ダイヤフラム式アクチュエータ、59:アクチュエータ本体、61:第1アクチュエータカップ、63:第2アクチュエータカップ、65:第1アクチュエータ室、67:第2アクチュエータ室、69:負圧ポンプ(負圧の圧力源)、77:ダイヤフラム、79:第1リテーナ、81:第2リテーナ、83:復帰スプリング、85:作動ロッド、91:座金、93:防振シート、95:座金、97:防振シート、101:ダイヤフラム式アクチュエータ、109:復帰スプリング、111:座金、113:防振シート、115:座金、117:防振シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9