特許第6237143号(P6237143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237143
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車両用バンパー
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/03 20060101AFI20171120BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B60R19/03 C
   B60R19/04 L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-235606(P2013-235606)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-93636(P2015-93636A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田村 総
(72)【発明者】
【氏名】大附 珠美
(72)【発明者】
【氏名】大谷 学
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−190559(JP,A)
【文献】 特開平06−305377(JP,A)
【文献】 特開2007−069128(JP,A)
【文献】 特開2001−277955(JP,A)
【文献】 特開2002−205613(JP,A)
【文献】 特表2011−528296(JP,A)
【文献】 特表2013−514208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/03
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭素繊維シートの周縁部の少なくとも一部を重ねて接合し、この重ねた部位を重合部に設定するバンパーフェイシャと、
前記バンパーフェイシャの車両内方側に配置されて車幅方向に延在するエネルギー吸収体と、
を備え、
前記バンパーフェイシャの重合部を、車両前後方向から見て環状となる環状部に形成すると共に、
前記バンパーフェイシャの環状部の少なくとも一部と前記エネルギー吸収体の少なくとも一部とを車両前後方向から見てオーバーラップさせて配置し
前記バンパーフェイシャの一部に屈曲部を設け、該屈曲部に前記重合部を配置し、
前記屈曲部に配置した前記重合部は、複数の炭素繊維シートの周縁部の少なくとも一部を車両前後方向に重ねて接合していることを特徴とする車両用バンパー。
【請求項2】
前記バンパーフェイシャの環状部を複数設け、これら複数の環状部同士を上下に隣接させて配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用バンパー。
【請求項3】
前記バンパーフェイシャの背面に飛散防止シートを貼着したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用バンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数枚の炭素繊維シートを積層しつつ接合することによって作製されるバンパーフェイシャを有する車両用バンパーが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載されたバンパーフェイシャは、第1の層と、第2の層と、これらの第1の層および第2の層の間に配置した第3の層と、から3層構造に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013−514208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたバンパーフェイシャは、弾性変形しにくいため、衝突荷重を受けた場合に破損しやすいという性質があった。従って、車両衝突時にバンパーフェイシャで衝突荷重の一部を吸収することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、車両衝突時にバンパーフェイシャで衝突荷重の一部を吸収してバンパー全体として衝突荷重を効率的に吸収する車両用バンパーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用バンパーは、バンパーフェイシャとエネルギー吸収体とを備える。
【0008】
前記バンパーフェイシャにおいては、複数の炭素繊維シートの周縁部の少なくとも一部を重ねた重合部を環状部に形成すると共に、前記バンパーフェイシャの環状部と前記エネルギー吸収体とを車両前後方向から見てオーバーラップさせて配置したことを特徴とする。
前記バンパーフェイシャの一部に屈曲部を設け、該屈曲部に前記重合部を配置し、前記屈曲部に配置した前記重合部は、複数の炭素繊維シートの周縁部の少なくとも一部を車両前後方向に重ねて接合している。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両用バンパーによれば、車両衝突時に、バンパーフェイシャで衝突荷重の一部を吸収するため、車両用バンパー全体として衝突荷重を効率的に吸収することができる。
【0010】
具体的には、バンパーフェイシャにおいては、重合部が他の部位よりも厚さが大きくなり、この重合部を環状に繋げることによって、環状部全体は、環状部以外の一般部位よりも高剛性になる。
【0011】
従って、バンパーフェイシャに衝突荷重が入力され、環状部全体が車両内方に向けて変形移動し、エネルギー吸収体に当接する場合、環状部全体によって衝突荷重の一部を吸収する。また、環状部に入力された荷重は、前記環状部の周辺部にも伝播(分散)する。よって、車両衝突時に、バンパーフェイシャで衝突荷重の一部を吸収するため、車両用バンパー全体として衝突荷重を効率的に吸収することができる。
屈曲部は、平坦部よりも剛性が高くなる。従って、重合部が設けられた屈曲部は、重合部がない屈曲部よりも剛性が更に高くなる。よって、車両衝突時に、車両用バンパー全体として衝突荷重を更に効率的に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車両用バンパーを車両前方から見た正面図である。
図2図1のバンパーフェイシャを背面側から見た斜視図である。ただし、バンパーフェイシャおよび飛散防止シートの重合部を点ハッチングで示している。
図3図1のA−A線による断面図である。
図4図1のバンパーフェイシャを車両前方から見た正面図である。
図5図1のバンパーフェイシャを車両側方から見た側面図である。
図6図4のB−B線による断面図である。ただし、積層構造を明確にするために、各シート同士を離した状態を示している。
図7図4のC−C線による断面図である。ただし、積層構造を明確にするために、各シート同士を離した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本発明の実施形態においては、車両前端のフロントバンパーについて説明するが、リヤバンパーにも適用可能である。
【0014】
図1図3に示すように、本発明の実施形態に係る車両用バンパー1は、バンパーフェイシャ3とエネルギー吸収体5とバンパーレインフォース7とを備えている。
【0015】
前記バンパーフェイシャ3は、上方から見て平面視がU字状に形成されている。具体的には、図1に示すように車幅方向に沿って延在する本体部9と、該本体部9における車幅方向端部9aから屈曲して車両後方に延在する側部11(図5参照)と、から平面視がU字状に形成されている。なお、バンパーフェイシャ3には、上部と下部にそれぞれフロントグリル13,15が配設されている。
【0016】
図1,3に示すように、エネルギー吸収体5は、バンパーフェイシャ3の車両後方側(車両内方側)に配置されており、断面が矩形状に形成されている。エネルギー吸収体5は、弾性変形が可能に構成されており、断面形状が横長の矩形状になっている。
【0017】
また、バンパーレインフォース7は、エネルギー吸収体5の車両後方側(車両内方側)に配置されており、アルミニウム等の金属を押出成形することによって、縦長の断面矩形状に形成されている。そして、上下方向の中央部に車両前後方向に延在する隔壁17が設けられ、該隔壁17によってバンパーレインフォース7の内部空間を上下に2つに画成している。即ち、バンパーレインフォース7には、下側に配置された下側空間部19と、上側に配置された上側空間部21と、が配置されている。そして、エネルギー吸収体5は、バンパーレインフォース7の下側空間部19に対向する高さ位置に配置されている。なお、図1に示すように、エネルギー吸収体5の車幅方向長さの方がバンパーレインフォース7よりも長く形成されている。
【0018】
図4〜7に示すように、バンパーフェイシャ3は、複数の炭素繊維シートの周縁部同士を重ねて接合し、この重ねた部位を重合部に設定している。
【0019】
具体的には、図6に示すように、バンパーフェイシャ3は、車両前側に配置した第1の炭素繊維シート31(炭素繊維シート)と、該第1の炭素繊維シート31の後側に配置した第2の炭素繊維シート33(炭素繊維シート)と、から構成される。以下に、図6を用いてバンパーフェイシャ3および飛散防止シート49の積層構造を説明するが、後述する図7の屈曲部においても同様の構造になっている。
【0020】
前記第1の炭素繊維シート31は、上側炭素繊維シート35(炭素繊維シート)の下端部35a(周縁部)と下側炭素繊維シート37(炭素繊維シート)の上端部37a(周縁部)とを重ねて接合して構成され、この重ねた部位を上側重合部39に設定している。
【0021】
次いで、第2の炭素繊維シート33は、上側炭素繊維シート41(炭素繊維シート)の下端部41a(周縁部)と下側炭素繊維シート43(炭素繊維シート)の上端部43a(周縁部)とを重ねて接合して構成され、この重ねた部位を下側重合部45に設定している。
【0022】
これらの上側重合部39と下側重合部45とは、上下方向にオフセット配置されている。即ち、上側重合部39の下端は、下側重合部45の上端と上下方向でほぼ同一高さに配置されている。このように、本実施形態では、バンパーフェイシャ3の重合部47は、前述した上側重合部39と下側重合部45とを合わせた部分をいうものとする。従って、重合部47においては、3枚の炭素繊維シートを積層した3層構造になっている。
【0023】
また、図2に示したように、バンパーフェイシャ3には、側部11以外の本体部9の背面に飛散防止シート49を貼着している。この飛散防止シート49にも重合部が形成されており、この重合部はバンパーフェイシャ3の重合部47に対応した位置に設けられている。具体的には、図6,7に示すように、飛散防止シート49は、車両前側に配置された第1の飛散防止シート51(飛散防止シート)と、該第1の飛散防止シート51の後側に配置された第2の飛散防止シート53(飛散防止シート)と、から構成される。なお、本実施形態において、飛散防止シート49は、ポリアミド系樹脂のケブラー(登録商標)を用いて作製している。
【0024】
前記第1の飛散防止シート51は、上側飛散防止シート55(飛散防止シート)の下端部55a(周縁部)と下側飛散防止シート57(飛散防止シート)の上端部57a(周縁部)とを重ねて接合している。
【0025】
次いで、第2の飛散防止シート53は、上側飛散防止シート59(飛散防止シート)の下端部59a(周縁部)と下側飛散防止シート61(飛散防止シート)の上端部61a(周縁部)とを重ねて接合している。
【0026】
このように、飛散防止シート49においても周縁部同士を重ね合わせた重合部を形成し、バンパーフェイシャ3の重合部47と同じ部位に配置している。
【0027】
さらに、図7に示すように、バンパーフェイシャ3における上下方向に沿って延在する縦壁面63と車両後方に沿って延在する横壁面65との境界には屈曲部67が形成されている。即ち、縦壁面63の下端63aから屈曲して車両後方に向けて延在する屈曲部67が設けられている。本実施形態では、前記屈曲部67にバンパーフェイシャ3自体の重合部47および飛散防止シート49の重合部を配置している。
【0028】
ここで、図1に示すように、バンパーフェイシャ3の重合部47は、正面視において、環状に形成されている。具体的には、二点鎖線で示すように、下側に配置されて車幅方向に延在する第1の環状部71(環状部)と、該第1の環状部71の上側に配置されて車幅方向に延在する第2の環状部73(環状部)と、が上下に隣接して設けられている。
【0029】
前記第1の環状部71は、下側に配置されて車幅方向に延在する下部重合部75と、上側に配置されて車幅方向に延在する上部重合部77と、これらの上部重合部77および下部重合部75の車幅方向端同士を上下方向に沿って繋ぐ左右一対の縦部重合部79,81と、から構成されている。本実施形態では、図1,2に示すように、下部重合部75と縦部重合部79,81とを、前記エネルギー吸収体5とオーバーラップさせて配置している。
【0030】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0031】
(1)本実施形態による車両用バンパー1は、第1の炭素繊維シート31および第2の炭素繊維シート33(複数の炭素繊維シート)の周縁部同士を重ねて接合し、この重ねた部位を重合部47に設定するバンパーフェイシャ3と、前記バンパーフェイシャ3の車両後方側(車両内方側)に配置されて車幅方向に延在するエネルギー吸収体5と、前記エネルギー吸収体5の車両後方側(車両内方側)に配置されて車幅方向に延在するバンパーレインフォース7と、を備えている。
【0032】
前記バンパーフェイシャ3の重合部47を、車両前後方向から見て環状となる第1の環状部71および第2の環状部73に形成すると共に、前記バンパーフェイシャ3の第1の環状部71と前記エネルギー吸収体5とをオーバーラップさせて配置している。
【0033】
バンパーフェイシャ3においては、重合部47が他の部位よりも厚さが大きくなるため、当該他の部位よりも重合部47の剛性が高くなる。さらに、この重合部47を環状に繋げて環状部71,73に形成することによって、環状部全体は、環状部以外の一般部位よりも高剛性になる。
【0034】
従って、バンパーフェイシャ3に衝突荷重が入力され、環状部全体が車両後方に向けて変形移動し、エネルギー吸収体5に当接する場合、環状部全体によって衝突荷重の一部を吸収する。また、環状部71,73に入力された荷重は、前記環状部71,73の周辺部にも伝播および分散する。よって、車両衝突時に、バンパーフェイシャ3のみで衝突荷重の一部を吸収するため、車両用バンパー1全体として衝突荷重を効率的に吸収することができる。
【0035】
(2)前記バンパーフェイシャ3の第1の環状部71および第2の環状部73(環状部)を複数設け、これら複数の環状部同士71,73を上下に隣接させて配置している。
【0036】
前述したように、バンパーフェイシャ3に衝突荷重が入力された場合に、環状部71,73の周辺部にも衝突荷重が伝播する。従って、これらの環状部同士71,73を隣接させると、バンパーフェイシャ3における広い面積の部分で衝突荷重の一部を吸収することができる。
【0037】
(3)前記バンパーフェイシャ3の一部に屈曲部67を設け、該屈曲部67に前記重合部47を配置している。
【0038】
屈曲部67は、平坦部よりも剛性が高くなる。従って、重合部47が設けられた屈曲部67は、重合部47がない屈曲部67よりも剛性が更に高くなる。よって、車両衝突時に、車両用バンパー1全体として衝突荷重を更に効率的に吸収することができる。
【0039】
(4)前記バンパーフェイシャ3の背面に飛散防止シート49を貼着している。
【0040】
バンパーフェイシャ3に衝突荷重が入力され、バンパーフェイシャ3が割れた場合、その破損部分が飛び散ることを効果的に防止することができる。
【0041】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されずに、種々の変形および変更が可能である。
【0042】
例えば、バンパーフェイシャ3の第2の環状部73とエネルギー吸収体5とをオーバーラップさせて配置してもよい。
【符号の説明】
【0043】
3 バンパーフェイシャ
5 エネルギー吸収体
7 バンパーレインフォース
31 第1の炭素繊維シート(炭素繊維シート)
33 第2の炭素繊維シート(炭素繊維シート)
35a 下端部(周縁部)
37a 上端部(周縁部)
41a 下端部(周縁部)
43a 上端部(周縁部)
47 重合部
49 飛散防止シート
67 屈曲部
71 第1の環状部(環状部)
73 第2の環状部(環状部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7