(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
<包装容器の層構成>
本発明の包装容器の層構造の一例を示す
図1を参照して、全体として20で示す容器壁は、液拡散防止層1及び酸素バリア層3を中間層として有しており、酸素バリア層3は、液拡散防止層1の外面側に位置していると共に、この容器壁20の内表面には、液層5が形成されている。
さらに、この層構造においては、液層5は、下地層7上に形成されており、液層5と液拡散防止層1との間に下地層7が存在するようになっている。また、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間には、中間介在層9が存在しており、酸素バリア層3の外側には所定の容器基材樹脂からなる外面層11が設けられている。
【0021】
液拡散防止層1;
液拡散防止層1は、液層5を形成する液体の浸透・拡散を遮断するものであり、このような層を形成することにより、液層5により付与される表面特性が長期間にわたって安定に維持されることとなる。
即ち、液層5は、種々の手段によって形成されるが(この手段については後述する)、どのような手段により液層5が形成されていたとしても、液層5を形成する液体が下地層7を通って容器壁20の内部に浸透・拡散してしまう。即ち、一定の量の液体で液層5が形成されていたとしても、該液体が容器壁20の内部に徐々に移行していくため、その液量が経時と共に減少し、この結果、液層5により付与される表面特性が経時と共に失われていくこととなる。しかるに、本発明では、液拡散防止層1の存在により、液層5からの液の浸透拡散が遮断されるため、液層5の液量減少が有効に抑制され、表面特性の経時的損失を回避することが可能となる。
【0022】
このような液拡散防止層1の材質は、液層5からの液の浸透拡散を防止し得るように緻密な熱可塑性樹脂(例えば密度が1.00g/cm
3以上でガラス転移点Tgが35℃以上の樹脂)であればよいが、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物)を含み、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体のみによって液拡散防止層1が形成されていてもよいし、浸透拡散防止能が損なわれない限り、他の熱可塑性樹脂とのブレンド物であってもよい。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体を60質量%以上の量で含むブレンド物により液拡散防止層1を形成することができる。このようなブレンド物により形成された液拡散防止層1は、液層5の下地層7或いは中間介在層9に対する接着性が良好であり、これらの層と液拡散防止層1との間に格別の接着剤層(以下、接着層とも記載する)を設ける必要が無いという利点がある。
【0023】
本発明において、液の浸透拡散を防止するという観点からいえば、金属箔、金属蒸着膜或いはガラスやセラミックス類などの無機材料から液拡散防止層1が形成されていてもよいのであるが、このような無機材料により液拡散防止層1では、成形手段が限定され、多層構造の形態がフィルムなどに限定されてしまうため、容器の形態に成形することが困難となってしまう。しかるに、上記のようにエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む熱可塑性樹脂により液拡散防止層1を形成する場合には、種々の成形手段により容器の形態とすることができ、例えばブロー成形容器などの形態も採り得る。
【0024】
また、上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある)としては、一般に、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適であり、これらの中から、密度且つガラス転移点(Tg)が前述した範囲にあるものが選択的に使用するのがよい。
【0025】
上述した液拡散防止層1は、液層5からの液体の容器壁20内への浸透拡散を防止するための層であるが、本発明においては、後述する酸素バリア層3の水分による酸素バリア性の劣化を防止するという機能をも有する。即ち、液拡散防止層1の存在により、後述する酸素バリア層3と容器内面との間隔を大きくすることができ、容器内の水分に対する影響を緩和することができると同時に、液拡散防止層1を形成するEVOHが水分を吸収し、水分遮断層としても機能することとなる。
【0026】
このような液拡散防止層1は、液層5からの液体の浸透を確実に防止し且つ酸素バリア層3の水分による劣化を防止するため、その厚みを比較的厚くする必要がある。その厚みは、液体の浸透を防止が必要な期間によって異なるが、少なくとも2μm以上であり、特に後述する酸素バリア層3の厚みの50〜300%程度とすることが、容器壁20の厚みを必要以上に厚くしないという点で好適である。
【0027】
酸素バリア層3;
酸素バリア層3は、酸素の容器内への透過を遮断し、これにより内容物の酸化劣化を防止するというものである。
このような酸素バリア層3は、酸素バリア性樹脂の中でも特に優れた酸素バリア性を示すエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成される。このEVOHは、前述した液拡散防止層1の形成に使用されるEVOHと同じである。例えば、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適に使用される。
【0028】
また、かかる酸素バリア層3においても、EVOHの優れた酸素バリア性が損なわれない程度の量、例えばEVOHが60質量%以上の量となるような範囲で、他の樹脂がブレンドされていてもよい。即ち、前述した液拡散防止層1と同様、この酸素バリア層3に、これに隣接する中間介在層9や外面層11を形成する樹脂(例えば容器基材樹脂)をブレンドしておくことにより、これらの隣接層9、11と酸素バリア層3との接着性を高めることができる。
【0029】
本発明において、このような酸素バリア層3の厚みは、通常、4μm以上は必要であり、好ましくは、10μm乃至40μm、更に好ましくは10μm乃至30μmの範囲にある。
【0030】
また、本発明においては、上記の酸素バリア層3は、液拡散防止層1から可及的に離れていることが好ましく、例えば、容器の全体厚みをD(液層の厚みを除く)、酸素バリア層3と液拡散防止層1との間隔d
1としたとき、これらの値の比d
1/Dが、30%以上、特に35乃至70%の範囲にあることが望ましい。即ち、このような範囲となるようにd
1およびDを設定することは、液層5を形成しており且つ水分を吸収し易い液体を遮断する液拡散防止層1から酸素バリア層3を引き離し、該酸素バリア層3を内面側よりも外面側に近い位置に配置することにより、水分の影響を抑制し、酸素バリア層3を形成しているEVOHの水分によるガスバリア性低下をより効果的に防止することが可能となる。
【0031】
液層5;
容器壁20の内表面に形成される液層5は、この容器内容物の種類に応じて滑り性や撥水性が付与されるように、適宜の液体により形成されるが、当然のことながら、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体、例えば沸点が200℃以上の高沸点液体により液層5が形成されることとなる。揮発性液体により液層5が形成されていると、使用形態によっても異なるが、この液層5が容易に揮散して経時と共に消失し、或いは液層5を形成することが困難となってしまうからである。
【0032】
液層5を形成する液体の具体例としては、上記のような高沸点液体であることを条件として、種々のものを挙げることができるが、特に水や水を含む親水性の内容物に対する撥水性や滑り性を付与するために、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、脂肪酸トリグリセライド、各種の植物油などが代表的である。植物油としては、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、アボガド油、ココナッツ油、アーモンド油、クルミ油、はしばみ油、サラダ油などが挙げられる。
【0033】
このような液体から形成される液層5は、目的とする表面特性や液体の種類によっても異なるが、一般に、液量が0.2乃至50g/m
2、好ましくは0.2乃至30g/m
2、さらに好ましくは0.5至30g/m
2、格段に好ましくは0.5乃至10g/m
2の範囲となるように形成される。即ち、液量が少ないと、十分な表面特性を付与することができず、一方、液量が過度に多いと、液の脱落などを生じ易くなり、液量の変動が大きくなり、安定した表面特性を確保することができなくなるおそれがあるからである。
【0034】
また、本発明においては、このような液層5は、液体による表面特性を安定に且つムラなく付与するために、下記式(1):
F=(cosθ−cosθ
B)/(cosθ
A−cosθ
B) (1)
式中、
θは、前記容器壁20の内表面での水接触角であり、
θ
Aは、前記液層5を形成する液体上での水接触角であり、
θ
Bは、液層5を支持する層(後述する下地層7)を形成するプラスチック単体上
での水接触角である、
で算出される液層の被覆率Fが0.5以上、好ましくは0.6以上となるように形成されるべきである。即ち、容器壁20の内表面での水接触角θと液層5上での水の接触角水θ
Aが同じである場合には、被覆率Fは1.0であり、下地層7の全体が液層5で覆われていることになる。
例えば、被覆率Fが上記範囲よりも小さいと、液量が多量にあっても、表面に液体が点在するような形態で液層5が形成され、十分な表面特性を発揮することが困難となってしまう。
【0035】
ここで、上述の式(1)は、表面が2種類の成分(A、B)から形成された複合表面の場合には、見かけの接触角θを表現するCassie−Baxterの式を変形して得られる。これは下記式で表現される。
cosθ=F
Acosθ
A+F
Bcosθ
B
=F
Acosθ
A+(1−F
A)cosθ
B
式中、
A成分の割合はF
A、B成分の割合はF
B、F
A+F
B=1
A成分単体上での接触角はθ
A、B成分単体上での接触角はθ
Bである。
【0036】
下地層7;
上述した液層5を支持する下地層7は、液拡散防止層1の内面側に隣接しており、表面に形成される液層5が脱落しないように保持するための層である。即ち、液拡散防止層1の上に直接液層5を形成してしまうと、液層5を形成する液体が浸透しないため、液層5の脱落を生じ易くなってしまい、一定の被覆率で液層5を安定に形成することが困難となってしまう。このため、下地層7を設け、この上に液層5を形成することが望ましい。
【0037】
このように、下地層7は、液層5からの液の浸透をある程度許容し、液層5に対してアンカー効果を示すものである。従って、液拡散防止層1と比較すると、比較的ルーズな樹脂により形成され、例えば密度が1.0g/cm
3未満の熱可塑性樹脂により形成される。
【0038】
このような下地層7を形成するための熱可塑性樹脂としては、層を形成し得る程度の分子量を有し、密度が上記範囲内であれば特に制限されないが、一般的には、オレフィン系樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどを挙げることができる。勿論、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよい。また、液層5からの液の浸透をある程度許容しうる限り、これらのオレフィン系樹脂に他の樹脂をブレンドしてもよい。本発明において、特に好適に使用される下地層7形成用オレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンであり、ポリエチレンが最適である。特に、この容器壁20を有する容器を、内容物を絞り出すスクイズ容器として使用する場合には、低密度ポリエチレンや直鎖低密度ポリエチレンを用いて下地層7を形成することが好ましい。
【0039】
また、この下地層7の厚みd
2は、5乃至200μm、好ましくは10乃至150μm、更に好ましくは20乃至100μmの範囲にあることが好ましい。即ち、この厚みd
2が薄すぎると、液層5に対するアンカー効果が不十分となり、液層5からの液体の脱落を生じ易くなる。また、この厚みd
2が過度に厚いと、液拡散防止層1により液の浸透拡散が防止されるとしても、下地層7に浸透し得る液量が多くなってしまい、液層5の経時的消失を抑制することが困難となるおそれがある。
【0040】
尚、この下地層7の表面(液層5との界面)は、液層5の形成手段によっても異なるが、液層5の脱落を効果的に防止し、液層5を安定に保持するために、液層5の液が有効に浸透しうるような適度な凹凸面とすることもできる。即ち、液体が下地層7の表面に効果的に浸透し得る凹凸面は、液体の接触角θが90度未満であり、毛管現象が重力に比して支配的となる面である。
【0041】
毛管現象が支配的である範囲は毛管長(τ
−1)と呼ばれ、下記式で表される。
τ
−1=(γa/ρg)
1/2
式中、γaは、液体と気体(空気)との間の界面張力であり、
ρは液体の密度であり、
gは重力加速度である。
即ち、毛管長(τ
−1)以下の範囲内においては重力に比べ、毛管現象(毛管力)が支配的となる。この毛管長は、上記式から理解されるように、下地層7の材質にかかわらず、液によって一定であり、例えば、水では約2.7mmである。従って、例えば、液浸透性の凹凸面とするためには、凹部の内径を毛管長(τ
−1)以下に設定すればよい。この毛管長は、液層5を形成する液体の種類によって異なるが、多くの液体で1mmを超える範囲にあるので、1mm以下の内径を有する凹部を下地層7の表面全体にわたって分布しておけばよい。この場合、凹部の深さやピッチ及び凹部の密度(単位面積当りの凹部の数)などは、液層5を形成する液体の種類によっても異なるが、通常、液層5を形成している液体の量が0.2乃至50g/m
2、好ましくは0.2乃至30g/m
2、さらに好ましくは0.5至30g/m
2、格段に好ましくは0.5乃至10g/m
2の範囲に維持されるように設定しておけばよい。
特に、下地層7を形成した後、液体の噴霧や塗布等により液層5を形成する場合には、上記のような凹凸面の形成は特に効果的である。
【0042】
上記のような凹凸面を形成する手段としては、金型、ロール転写、エンボス加工等の機械的手段、フォトリソグラフィーやレーザー光を用いてのエッチング等の光学的手段が代表的である。また、下地層7の表面に、微粒子(金属酸化物微粒子やポリマー微粒子)や多孔質体、結晶性添加剤などをコートして凹凸面を形成することもできるし、このような剤を、下地層7を形成する樹脂に練り込み等により混合して下地層7を成形することにより凹凸面を形成することもできる。
【0043】
さらに、本発明においては、上記のような下地層7に液層5を形成する液体をブレンドし、この下地層7を、液層5を形成する液体の供給源とすることもできる。即ち、前述した液体の浸透拡散性の高い低密度の樹脂により形成されている下地層7にブレンドしておくことにより、液層5を形成することができる。下地層7の他方側は液拡散防止層1が形成されているために、下地層7にブレンドされている液体は、下地層7の表面に滲出し、これにより、液層5を形成することができる。下地層7にブレンドする液体の量は、上記でも述べたが、一般に、表面に滲出して液層5を形成する液体の量が0.2乃至50g/m
2、好ましくは0.2乃至30g/m
2、さらに好ましくは0.5至30g/m
2、格段に好ましくは0.5乃至10g/m
2の範囲に維持されるように設定しておけばよい。
【0044】
中間介在層9;
中間介在層9は、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間に設けられるものであり、酸素バリア層3をできるだけ容器壁20の内面(或いは液拡散防止層1)から引き離すことにより、水分によるEVOHの酸素バリア性の低下をより一層効果的に抑制するためのものである。
即ち、この中間介在層9の厚みは、前述した液拡散防止層1と酸素バリア層3との間隔d
1に相当する。従って、この厚みは、先の説明から理解されるように、容器の全体厚みDに対し、厚み比d
1/Dが、30%以上、特に35乃至70%の範囲にあることが望ましい。
【0045】
このような中間介在層9は、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間に適当な間隔d
1を形成するために設けられるものであるため、その材質は、特に制限されず、成形可能な任意の樹脂で形成されていてよく、さらに、単層構造に限定されるものではなく、中間介在層9が2層以上の多層であってもよい。
【0046】
一般的には、成形性等の観点から、後述する外面層11の形成に使用される容器基材樹脂や前述した下地層7の形成に使用されるオレフィン系樹脂(例えばポリエチレンやポリプロピレン)を用いて中間介在層9を形成することが好ましい。さらに、かかる中間介在層9は、容器を成形する際に生じるバリ等のスクラップ樹脂がブレンドされたリグラインドにより形成することがコストの低減の点でより好ましい。このようなリグラインドは、通常、60質量%以下の量で上記スクラップ樹脂を含むものである。
さらに、この中間介在層9は、それ自体公知の酸素吸収性樹脂層を含む多層構造となっていてもよい。この酸素吸収性樹脂層は、酸素バリア性を補足するものであり、特開2002−240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒を含む層であり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002−240813号等に詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン−1等、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエン等のポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。このような酸素吸収性樹脂層は、中間介在層9の厚みd
2の25%以下の厚みを有しており、この酸素吸収性樹脂層と前述したリグラインドの層とにより中間介在層9が形成されていることが、コストと酸素バリア性との点でさらに好適である。
【0047】
外面層11;
外面層11は、この容器の形態や用途に応じて、そのような容器を形成するための各種の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンイソフタレート或いはこれらの共重合体などのポリエステル、前述した下地層7の形成にも使用されるオレフィン系樹脂が代表的であり、粘稠な内容物が収容され、このような内容物を排出するという容器の特性を考慮すると、オレフィン系樹脂が最適である。
【0048】
また、このような外面層11の厚みは特に制限されないが、外面側からの水分による酸素バリア性層(EVOH)の酸素バリア性の低下を抑制するという観点から、その厚みは20μm以上であることが好ましく、さらに容器壁20の厚みが過度に厚くなり、コストや軽量性等が不満足になるという問題を回避するという観点から、その厚みは、酸素バリア層3が内面よりも外面側に近い位置に配置されることを条件として、10〜80μmの厚みを有していることが望ましい。
【0049】
その他の層;
本発明の包装容器は、前述した各層を基本層として有する多層構造により容器壁20が形成されるが、前述した液拡散防止層1や酸素バリア層3の隣接する層に対する接着性を向上し、デラミネーションを防止するという観点から、これらの層1,3の両側には、それぞれ、接着樹脂層(接着層)を設けることが望ましい。即ち、これらの層1,3の形成に使用されるエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、他の熱可塑性樹脂(例えばオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂など)に対する接着性が乏しい。従って、接着樹脂層を設けることにより、層間接着性を高め、デラミネーションを防止することができる。特に、液拡散防止層1や酸素バリア層3がEVOH単独で形成されている場合には、接着樹脂層を設けることが必要である。
【0050】
このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。このような接着樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には、0.5乃至20μm、好適には1乃至8μm程度の厚みでよい。
また、この包装容器がフィルムを貼り合せた袋状の形態を有するような場合には、接着剤樹脂として、例えば、ドライラミネーション用やアンカーコート用、プライマー用として一般に用いられるものも使用することもできる。例えばそれ自体公知である、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、イソシアネート樹脂などを用いることができる。これら接着剤樹脂は単独で使用してもよいし、また必要に応じ、ブレンドしてもよい。また、基材との密着や濡れが確保できる限り、水系と溶剤系のどちらでも使用できる。また上記成分の他に、接着剤としての性能を損なわない限り、それ自体公知である、硬化促進触媒、充填剤、軟化剤、老化防止剤、シランカップリング剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂などが配合されていてもよい。
【0051】
尚、このような袋状の形態を有する包装容器においては、接着樹脂層の厚みは、通常、0.01〜10μm、特には0.1〜5.0μmとかなり薄くてよいが、かかる層は緻密であり、液拡散防止層1としての機能も有している。従って、液拡散防止層1の両側に接着樹脂層を設けた場合には、両側の接着樹脂層と液拡散防止層1との合計厚みの内の70%以上が液拡散防止層1の厚みであることを条件として、該合計厚みが、前述した液拡散防止層1の厚みの範囲(2μm以上、特に5〜80μm程度)となるように厚み設定することが望ましい。さらに、液拡散防止層1の外面側及び酸素バリア層3の内側に接着樹脂層が設けられている場合には、これらの接着樹脂層も中間介在層9として機能することとなり、これら接着樹脂層の厚みを考慮して、前述した中間介在層9の厚みd
1を設定する。
【0052】
さらに、上述した各層からなる本発明の包装容器においては、その用途等に応じて、それ自体公知の各種配合剤、例えば顔料等の着色剤などが配合されていてもよいことは勿論である。
【0053】
<包装容器の特性、形態及び製造>
本発明の包装容器は、液層5を保持している下地層7の下側に液拡散防止層1が設けられているため、このような液層5の経時的消失が有効に防止されており、液層5を形成し、大気圧下に保持しての液層持続試験を行ったとき、下記式(2):
ΔF=100×(F
0−F
1)/F
0 (2)
式中、
F
0は、試験開始から1日後の液層5の被覆率Fであり、
F
1は、試験開始から14日経過後での液層5の被覆率Fである、
で表される被覆低下率ΔFが40%以下、特に20%以下、さらに10%以下に抑制されている。即ち、液層5を形成した直後は勿論のこと、液層5を形成してから長期間経過後に上記の液層持続試験を行った場合にも上記のように抑制された被覆低下率ΔFを示す。
従って、本発明では、長期間にわたって液層5により表面特性を安定に発揮させることが可能となり、後述する各種の粘稠な内容物に対する滑り性が長期間にわたって維持され、このような内容物を速やかに排出することができる。
【0054】
また、液拡散防止層1がエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含み、さらに、この液拡散防止層1から離れてEVOHを含む酸素バリア層3が形成されている。このため、水分の影響による酸素バリア層3(EVOH)の酸素バリア性を有効に回避することができ、空容器の状態は勿論のこと、容器内に水分を含む粘稠な内容液が充填された後においても、優れた酸素バリア性が長期間にわたって安定に発揮され、粘稠な内容物の酸化劣化や、酸化劣化による内容物のフレーバ−の低下などを有効に回避することができる。
【0055】
本発明の包装容器は、種々の形態を有することができ、その形態に応じて液層5を形成する液体を選択して所望の表面特性を発揮させることができる。
例えば、容器の形態は特に制限されず、カップ乃至コップ状、ボトル状、袋状(パウチ)、シリンジ状、ツボ状、トレイ状等、容器材質に応じた形態を有していてよく、延伸成形されていてもよい。
このような容器は、前述した各層を含む層構造の前成形体をそれ自体公知の方法により成形し、これを、ヒートシールによるフィルムの貼り付け、プラグアシスト成形等の真空成形、ブロー成形などの後加工に付して容器の形態とし、さらに、その形態に応じて、液層5を形成する液体を、スプレー噴霧、浸漬等の手段で内面の下地層7の表面に施すことにより、液層5を内面に備えた多層構造の容器の形態とすることができる。
勿論、下地層7を形成する樹脂に液層5を形成する液体が内添されているのであれば、液体を施す作業は省略することができる。また、ブロー容器にあっては、ブローと同時に液体を供給することにより、下地層7の表面(容器の内面)全体にわたってムラなく液層5の薄膜を形成することもできる。
【0056】
上述した本発明の包装容器は、液層5による表面特性を十分に発揮させることができるため、特に、粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な内容物、例えば、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、マスタード、ドレッシング、ジャム、チョコレートシロップ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス等の粘稠な内容物が充填された容器として最も好適である。即ち、内容物の種類に応じて適宜の液により液層5を形成しておくことにより、容器を傾斜或いは倒立させることにより、これらの内容物が容器内壁に付着することなく、速やかに排出できる。
例えば、ケチャップ、各種ソース類、蜂蜜、マヨネーズ、マスタード、ジャム、チョコレートシロップ、乳液などは、水分を含む親水性物質であり、液層5を形成する液体としては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、食用油などの食品添加物として認可されている油性液体が好適に使用される。
さらには、上述した内容物の酸化劣化も有効に防止することができる。
【実施例】
【0057】
本発明を次の実験例にて説明する。
尚、以下の実験例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び包装容器(ボトル)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
【0058】
1.容器の層構成の測定;
後述の方法で成形した包装容器(ボトル)の底から50mmの位置での胴部水平断面における層構成を偏光顕微鏡にて観察し、各層の厚みを求めた。断面に対し、0°、90°、180°、270°の位置での構成を観察し、4方向での平均値を容器の層構成とした。得られた値から、全体厚みDに対する、液拡散防止層(A)と酸素バリア性樹脂層(B)との間隔d
1の比(d
1/D)、ならびに、酸素バリア性樹脂層(B)に対する液拡散防止層(A)の厚み比を算出した。
【0059】
2.酸素透過度測定;
後述の方法で成形した包装容器(ボトル)の酸素透過度を評価するため、ボトル内に蒸留水2mLを入れ、初期酸素濃度を0.06%以下とした窒素雰囲気下で、ポリエチレン(内層)/アルミ箔/ポリエステル(外層)からなる蓋材でヒートシールして密封し、30℃−80%RHで14日間保存した。14日後のこの容器内の酸素濃度をガスクロマトグラフィー(GC−14A、(株)島津製作所製)を用いて測定した。容器内の酸素濃度が小さい程、酸素バリア性が優れている。
【0060】
3.液層被覆量の測定;
後述の方法で作製した包装容器(ボトル)を用いて、容器内面に形成された液層を、液層と混和性の溶剤(ヘプタン)30mLで回収し、エバポレーターを用いて濃縮した後、残留物を蒸発皿へ移し取り、液層成分の重さを求めた。得られた重さを容器内面の面積で除し、ボトル内面における液層被覆量(g/m
2)とした。この値が小さい程、容器内面には薄い液層が形成されている。
【0061】
4.液層の被覆率の測定;
後述の方法で作製した包装容器(ボトル)の胴部から10mm×60mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、3μLの純水を試験片にのせ、水接触角θを測定した。得られた水接触角を用いて、下記式(1)より、容器壁内面での液層の被覆率Fを求めた。
F=(cosθ−cosθ
B)/(cosθ
A−cosθ
B) (1)
式中、θは、ボトル内表面での水接触角であり、
θ
Aは、液層を形成する液体上での水接触角であり、
θ
Bは、ボトル内面下地層を形成するプラスチック単体上での水接触角であ
る。
液層の被覆率Fを求めるにあたり、θ
Aとθ
Bの値として、下記水接触角の値を用いた。
θ
B:100.1°
(高圧法低密度ポリエチレン(MFR=0.3)単体での値)
θ
A:80.3°
(中鎖脂肪酸トリグリセライド(液体)上での値)
なお、液層被覆率Fが0の場合は、液層が全く形成されていないことを示し、1の場合は、樹脂が表面に露出せずに完全に液体で被覆されていることを示している。
液層の性能を最大限発揮するためには、液層被覆率Fは1に近いことが望ましい。
【0062】
5.液層持続試験、および液層の被覆低下率ΔFの算出;
後述の方法で作製した包装容器(ボトル)を22℃60%RH(大気圧下)で所定の期間保管した。所定の時間経過した容器を用いて前述の液層の被覆率の測定を行った。
特に、1日後、および14日後における液層の被覆率Fから、下記式(2)より被覆低下率ΔFを求めた。
ΔF=100×(F
0−F
1)/F
0 (2)
式中、
F
0は、試験開始から1日後の前記液層の被覆率Fであり、
F
1は、試験開始から14日経過後での前記液層の被覆率Fである。
ここで、被覆低下率ΔFが小さいものほど、液層の持続性が高い。
【0063】
6.粘稠性を有する内容物の滑落速度測定(滑落速度測定);
後述の方法で作製した包装容器(ボトル)の胴部から20mmx70mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、70mgの粘稠性を有する内容物を試験片にのせ、45°の傾斜角における滑落挙動をカメラで撮影し、滑落挙動を解析し、移動距離−時間のプロットから滑落速度を算出した。この滑落速度を滑落性の指標とした。前記滑落速度の値が大きい程、粘稠性を有する内容物の滑落性が優れている。用いた内容物は下記の通りである。なお、内容物の粘度として、音叉型振動式粘度系SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて25℃で測定した値も共に示す。
用いた粘稠性を有する内容物;
キユーピーハーフ(キユーピー(株)製、粘度=1260mPa・s)
お好みソース(オタフクソース(株)製、粘度=560mPa・s)
【0064】
<液層形成用液体>
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力;28.8mN/m (23℃)
粘度;33.8mPa・s (23℃)
沸点;210℃以上
引火点;242℃(参考値)
尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
【0065】
<内面下地層形成用樹脂>
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg)
密度;0.922g/cm
3
<液拡散防止層形成用樹脂>
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
密度;1.20g/cm
3
Tg=60℃
エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物
(EVOH/POブレンド、EVOH/変性ポリオレフィン=7/3(重量比)から
なる組成物)
<接着剤層形成用樹脂>
無水酸変性ポリエチレン
<酸素バリア性層形成用樹脂>
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
密度1.20g/cm
3
Tg=60℃
エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物
(EVOH/POブレンド、EVOH/変性ポリオレフィン=7/3(重量比)から
なる組成物)
<ポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂>
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg)
密度;0.922g/cm
3
<外面層形成用樹脂>
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg)
密度;0.922g/cm
3
【0066】
<実験例1>
内面下地層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、接着剤層形成用樹脂として無水酸変性ポリエチレン、酸素バリア層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、液拡散防止層と酸素バリア層の間に存在するポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、さらに、包装容器の最内面樹脂層を被覆するための液層形成用材料として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をポンプにて供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成(樹脂層の構成)を上述の方法で測定した。層構成、および各層厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(24)/接着層(3)/液拡散防止層(4)/接着層(2)/ポリオ
レフィン系樹脂層(50)/接着層(3)/酸素バリア層(4)/接着層(2)/
外面層(8)
全体厚み;510μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0067】
<実験例2>
内面下地層形成用樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)の重量比が95/5からなる樹脂組成物、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、接着層形成用樹脂として無水酸変性ポリエチレン、酸素バリア性層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、液拡散防止層と酸素バリア層の間に存在するポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(23)/接着層(3)/液拡散防止層(4)/接着層(2)/ポリオ
レフィン系樹脂層(48)/接着層(3)/酸素バリア層(6)/接着層(3)/
外面層(8)
全体厚み;515μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0068】
<実験例3>
各層の構成比を変更した以外は実験例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(15)/接着層(3)/液拡散防止層(6)/接着層(2)/ポリオ
レフィン系樹脂層(62)/接着層(2)/酸素バリア層(3)/接着層(1)/
外面層(6)
全体厚み;550μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0069】
<実験例4>
液拡散防止層形成用樹脂をエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド)に変更し、各層の構成比を変更した以外は実験例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(34)/接着層(3)/液拡散防止層(10)/接着層(3)/ポリ
オレフィン系樹脂層(31)/接着層(3)/酸素バリア層(4)/接着層(4)
/外面層(8)
全体厚み;585μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0070】
<実験例5>
内面下地層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド)、酸素バリア性層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド)、液拡散防止層と酸素バリア性層の間に存在するポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、さらに、包装容器の最内面樹脂層を被覆するための液層形成用材料として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をポンプにて供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(26)/液拡散防止層(10)/ポリオレフィン系樹脂層(52)/
酸素バリア層(8)/外面層(4)
全体厚み;520μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0071】
<実験例6>
各層の構成比を変更した以外は実験例5と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(27)/液拡散防止層(6)/ポリオレフィン系樹脂層(58)/酸
素バリア層(4)/外面層(5)
全体厚み;510μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0072】
<実験例7>
各層の構成比を変更した以外は実験例5と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(21)/液拡散防止層(6)/ポリオレフィン系樹脂層(14)/酸
素バリア層(5)/外面層(54)
全体厚み;535μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0073】
<実験例8>
内面下地層形成用樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)の重量比が97/3からなる樹脂組成物、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、接着層形成用樹脂として無水酸変性ポリエチレン、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(15)/接着層(2)/液拡散防止層(5)/接着層(2)/外面層
(76)
全体厚み;420μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0074】
<実験例9>
内面下地層形成用樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)の重量比が97/3からなる樹脂組成物、ポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、接着層形成用樹脂として無水酸変性ポリエチレン、酸素バリア性層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(15)/ポリオレフィン系樹脂層(60)/接着層(2)/酸素バリ
ア層(5)/接着層(3)/外面層(15)
全体厚み;400μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1の液層被覆量の測定および滑落試験の結果から、液拡散防止層を設けた実験例1から8では、液層が0.5g/m
2以上被覆されていることが確認でき、キユーピーハーフの滑落速度の値が4mm/min以上、オタフクお好みソースの値で9mm/min以上と高い滑落性を示していることが分かる。一方、液拡散防止層を設けない実験例9では、液層が0.2g/m
2以下の被覆量であり、キユーピーハーフの滑落速度の値で0.2mm/min、オタフクお好みソースで2.1mm/minと滑落性が低いことが分かる。
また、液層持続試験の結果から、液拡散防止層を設けた実験例1から8においては、14日後の被覆率が0.6以上、かつ、被覆低下率ΔFが20%以下であることが分かる。一方、液拡散防止層を設けない実験例9においては、試験1日後の段階で被覆率が0.34と急激に低下していることが分かる。
さらに、酸素透過度測定の結果から、酸素バリア性樹脂層を設けない実験例8では酸素濃度が1%以上と非常に高く、酸素バリア性が非常に悪いのに対し、酸素バリア性樹脂層を設けた実験例1から7および9では、酸素濃度が1%未満とバリア性が改善されていることが分かる。この中でも、容器の全体厚みDに対する、酸素バリア性樹脂層と液拡散防止層との間隔d
1との比d
1/Dが30%以上である実験例1から6においては、酸素濃度が0.4%以下と非常に良好な値を示していることが確認できる。
これらのことから、液層を表面に形成し、液拡散防止層を酸素バリア性樹脂層よりも内面側に配置することで、粘稠性内容物の滑落性に優れ、かつ液層の持続性を長期にわたり保てるとともに、高い酸素バリア性を包装容器に同時に付与できることが分かる。