特許第6237158号(P6237158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237158
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】内燃機関の排水制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 29/04 20060101AFI20171120BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20171120BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20171120BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20171120BHJP
【FI】
   F02B29/04 P
   F02M35/10 301J
   F02M35/10 311C
   F02M35/10 311Z
   F02M26/05
   F02M26/06 301
   F02M26/06 311
   F02M26/06 331
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-242842(P2013-242842)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-102010(P2015-102010A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】磯部 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋之
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−124563(JP,A)
【文献】 特開2002−303146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/00−29/08、47/08−47/10
F02M 26/00−26/74、35/00−35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が内燃機関の吸気側に接続された吸気通路と、
一端が前記内燃機関の排気側に接続された排気通路と、
前記吸気通路に配置されたインタークーラと、
前記排気通路に設けられた触媒と、
前記インタークーラの下流側の前記吸気通路に一端を、前記触媒の上流側の前記排気通路に他端をそれぞれ接続し、前記インタークーラによって結露した凝縮水を前記排気通路に排出する排水路と、
前記排水路の途中に設けられた開閉弁と、
前記排水路と前記排気通路との接続部より下流の前記排気通路に設けられた酸素濃度センサと、
前記酸素濃度センサによって検出された排気中の酸素濃度出力に基づいて前記開閉弁の閉制御を行う開閉弁制御部とを有する内燃機関の排水制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関の排水制御装置において、
前記開閉弁制御部は前記凝縮水を排出する際に前記開閉弁を開制御し、前記酸素濃度センサによって検出された酸素濃度がリーン側に変化した際に前記開閉弁を閉制御することを特徴とする内燃機関の排水制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の内燃機関の排水制御装置において、
前記開閉弁を開制御した際に、前記酸素濃度センサによって検出された酸素濃度が所定期間経過後においてリーン側に変化しない場合には前記開閉弁が閉固着されていると判定する故障判定制御部を有することを特徴とする内燃機関の排水制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の内燃機関の排水制御装置において、
前記故障判定制御部は前記開閉弁を閉制御したにも拘わらず前記酸素濃度がリッチ側に変化しない場合には前記開閉弁が開固着されていると判定することを特徴とする内燃機関の排水制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載の内燃機関の排水制御装置において、
前記酸素濃度センサと、前記排水路と前記排気通路との接続位置との間には前記触媒が設けられていることを特徴とする内燃機関の排水制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の内燃機関の排水制御装置において、
前記インタークーラの上流側の前記吸気通路に設けられた過給機と、前記排気通路と前記吸気通路とに接続され排気の一部を前記吸気通路に戻す排気再循環装置と、前記触媒の上流側の前記排気通路に設けられた排気フィルタとを有し、前記排気再循環装置は前記排気フィルタと前記排水路接続位置との間の前記排気通路から前記過給機の上流側の前記吸気通路に排気の一部を戻すことを特徴とする内燃機関の排水制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の内燃機関に関し、詳しくは吸排気中から水分を排水する排水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法として、NOxトラップ触媒を用いたものが知られている。NOxトラップ触媒は、排気中のNOxを酸化雰囲気中で捕捉し、捕捉したNOxを還元雰囲気中で放出してN等に還元することでNOxの排出濃度を低減している。また、ディーゼルエンジン搭載車には、排気中の粒子状物質を除去するフィルタ装置が設けられており、NOxトラップ触媒はその耐熱性や配置スペースの観点から、一般的にフィルタ装置の下流側に配置されている。
【0003】
さらに、排気の一部を吸気側に戻すことで燃焼室の燃焼温度を下げ、排気中のNOxを低減させる排気再循環(EGR)方式が知られている。EGR方式には、過給機のタービン上流側排気通路からコンプレッサ下流側吸気通路に排気を戻す高圧EGR方式と、タービン下流側で酸化触媒及びフィルタ装置下流側の排気通路からコンプレッサ上流側吸気通路に排気を戻す低圧EGR方式とがある。低圧EGR装置及びインタークーラ等の冷却手段を備えた内燃機関では、排気を含む吸気が冷却手段を通過して冷却される際に結露して凝縮水が発生する。この凝縮水が吸気と共に吸気通路から燃焼室に送られると、ウォータハンマを引き起こしてしまう虞がある。
【0004】
上述の問題を解決すべく、インタークーラで発生した凝縮水を貯留する貯留タンクと、凝縮水を加熱して水蒸気とする加熱装置と、貯留タンクと触媒上流側の排気通路とに接続された水蒸気供給路とを有し、凝縮水を水蒸気に変えて触媒の上流側排気通路に供給する内燃機関が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−124563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の技術では、水蒸気供給路に流量調整弁が設けられているものの、この流量調整弁が制御装置によって開閉動作制御されることが開示されているのみであり、開閉動作の詳細については不明である。開閉動作は、貯留タンクに貯留された水の量を精度よく求めることが困難であるため、開弁時間を長めに設定せざるを得ない。ところが、開弁時間が長すぎると水排出完了後に吸気ガスも排出されることとなり、内燃機関のトルク低下や出力低下を引き起こしてしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は上述の問題点を解決し、排水路の途中に設けられた開閉弁の開閉動作を適正に制御し、トルク低下や出力低下を防止することが可能な内燃機関の排水制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、一端が内燃機関の吸気側に接続された吸気通路と、一端が前記内燃機関の排気側に接続された排気通路と、前記吸気通路に配置されたインタークーラと、前記排気通路に設けられた触媒と、前記インタークーラの下流側の前記吸気通路に一端を、前記触媒の上流側の前記排気通路に他端をそれぞれ接続し、前記インタークーラによって結露した凝縮水を前記排気通路に排出する排水路と、前記排水路の途中に設けられた開閉弁と、前記排水路と前記排気通路との接続部より下流の前記排気通路に設けられた酸素濃度センサと、前記酸素濃度センサによって検出された排気中の酸素濃度出力に基づいて前記開閉弁の閉制御を行う開閉弁制御部とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関の排水制御装置において、さらに前記開閉弁制御部は前記凝縮水を排出する際に前記開閉弁を開制御し、前記酸素濃度センサによって検出された酸素濃度がリーン側に変化した際に前記開閉弁を閉制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の内燃機関の排水制御装置において、さらに前記開閉弁を開制御した際に、前記酸素濃度センサによって検出された酸素濃度が所定期間経過後においてリーン側に変化しない場合には前記開閉弁が閉固着されていると判定する故障判定制御部を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の内燃機関の排水制御装置において、さらに前記故障判定制御部は前記開閉弁を閉制御したにも拘わらず前記酸素濃度がリッチ側に変化しない場合には前記開閉弁が開固着されていると判定することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の内燃機関の排水制御装置において、さらに前記酸素濃度センサと、前記排水路と前記排気通路との接続位置との間には前記触媒が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一つに記載の内燃機関の排水制御装置において、さらに前記インタークーラの上流側の前記吸気通路に設けられた過給機と、前記排気通路と前記吸気通路とに接続され排気の一部を前記吸気通路に戻す排気再循環装置と、前記触媒の上流側の前記排気通路に設けられた排気フィルタとを有し、前記排気再循環装置は前記排気フィルタと前記排水路接続位置との間の前記排気通路から前記過給機の上流側の前記吸気通路に排気の一部を戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排水路内から凝縮水が抜けた適正なタイミングで開閉弁を閉弁制御することができるので、排水路内からの凝縮水排出完了後に吸気ガスが排出されることを防止でき、これにより内燃機関のトルク低下や出力低下が発生することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を適用した内燃機関の排水制御装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に用いられる制御部のブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態における排水制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図4】本発明の第1の実施形態における酸素濃度センサの検出値の変化を示す線図である。
図5】本発明の第2の実施形態における開弁制御時における酸素濃度センサの検出値の変化を示す線図である。
図6】本発明の第2の実施形態における閉弁制御時における酸素濃度センサの検出値の変化を示す線図である。
図7】本発明の第2の実施形態における排水制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態の変形例を適用した内燃機関の排水制御装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を示す図1において、内燃機関である車載用ディーゼルエンジン(以下エンジンという)1のシリンダブロック2の上部にはシリンダヘッド3が設けられており、シリンダヘッド3の吸気側には吸気通路を構成する吸気管4が、排気側には排気通路を構成する排気管5がそれぞれ接続されている。またシリンダヘッド3には、コモンレール13を介して燃料噴射ポンプ14が接続されている。さらにシリンダヘッド3には、一端をエアフィルタ6よりも下流側の吸気管4に接続されたブローバイガスを排出するブローバイガス通路21の他端が接続されている。
【0017】
吸気管4には、吸気の上流側からエアフィルタ6、低圧スロットル弁7、低圧EGRバルブ8、過給機であるターボチャージャ9の図示しないコンプレッサ、インタークーラ10、高圧スロットル弁11、高圧EGRバルブ12等が設けられている。
【0018】
排気管5には、シリンダブロック2側からターボチャージャ9の図示しないタービン、酸化触媒15及び排気フィルタとしてのフィルタ装置16が設けられている。酸化触媒15は、例えば白金のような貴金属触媒を担持しており、排気中のNOをNOに転換する作用と、排気中のHCやCO等の有害成分を酸化させる作用とを有している。NOはNOよりも酸化作用が強く、NOによってフィルタ装置16に捕獲された粒子状物質の酸化反応が促進され、また後述するNOxトラップ触媒で還元される。フィルタ装置16は排気中の粒子状物質を捕獲するフィルタ装置であり、捕獲された粒子状物質はNOの強力な酸化作用で燃焼除去される。
【0019】
フィルタ装置16の下流側には、排気中の酸素濃度量を検知する酸素濃度センサ(LAFS)17が設けられており、その下流側に触媒であるNOxトラップ触媒18を内蔵した触媒コンバータ19が、さらにその下流側に酸素濃度センサ20が設けられている。NOxトラップ触媒18は、酸化雰囲気においてNOxを捕捉し、捕捉したNOxを例えばHCやCO等を含む還元雰囲気中で放出してN等に還元する浄化装置である。つまり、酸化触媒15で生成されたNO及び酸化触媒15で酸化されずに排気ガス中に残存するNOを捕捉し、N等に還元して放出する。
【0020】
高圧EGRバルブ12の下方には、高圧EGR管23と高圧EGRクーラ24とを有する高圧EGR装置22が配設されている。高圧EGR管23は、その一端を高圧スロットル弁11とシリンダヘッド3との間の吸気管4に、その他端をシリンダヘッド3とターボチャージャ9のタービンとの間の排気管5にそれぞれ接続されており、その途中には高圧EGRクーラ24が設けられている。高圧EGR管23の一端は、高圧EGRバルブ12によって開閉される。
【0021】
低圧EGRバルブ8の下方には、低圧EGR管26と低圧EGRクーラ27とを有する排気再循環装置としての低圧EGR装置25が配設されている。低圧EGR管26は、その一端を低圧スロットル弁7とターボチャージャ9のコンプレッサとの間の吸気管4に、その他端をフィルタ装置16とNOxトラップ触媒18との間の排気管5にそれぞれ接続されており、その途中には低圧EGRクーラ27が設けられている。低圧EGR管26の一端は、低圧EGRバルブ8によって開閉される。
【0022】
インタークーラ10と高圧スロットル弁11との間の吸気管4には排水路を形成する排水管28の一端が接続されており、排水管28の他端はNOxトラップ触媒18の上流側近傍に位置する排気管5に接続されている。排水管28の途中には開閉弁29が配設されている。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に用いられるエンジン1の開閉弁制御部として機能する制御手段30のブロック図である。制御手段30は、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する周知のマイクロコンピュータによって構成されており、酸素濃度センサ20を含む各種センサからの検知信号に基づいて、各スロットル弁7,11、各EGR用バルブ8,12及び開閉弁29の動作を制御する。
【0024】
上述の構成において、シリンダヘッド3から排出された排気はターボチャージャ9のタービンを回転させ、同時にターボチャージャ9のコンプレッサを回転させて吸気を吸気管4に吸入する。各センサの検出値は制御手段30に入力され、各スロットル弁7,11、各EGRバルブ8,12及び開閉弁29の動作が制御される。エンジン1の運転中、シリンダヘッド3から排出された排気中のNOは酸化触媒15でNOに転換され、フィルタ装置16に捕獲された粒子状物質はNOの酸化作用で燃焼除去される。その下流側の触媒コンバータ19では、NOxトラップ触媒18に吸着されたNOxが還元されて無害化される。
【0025】
さらに、高圧EGRバルブ12を開くことで、ターボチャージャ9の上流側の排気管5を流れる排気の一部が高圧EGR管23に導入され、高圧EGR管23に導入された排気ガスは高圧EGRクーラ24で冷却されてインタークーラ10の下流側の吸気管4に供給される。また、低圧EGRバルブ8を開くことで、フィルタ装置16の下流側の排気管5を流れる排気ガスの一部が低圧EGR管26に導入され、低圧EGR管26に導入された排気ガスは低圧EGRクーラ27で冷却されてターボチャージャ9の上流側の吸気管4に供給される。
【0026】
高圧EGR装置22及び低圧EGR装置25により排気ガスの一部を吸気に還流させることで、エンジン1の燃焼室内の燃焼温度を低下させてNOxの排出量を低減することができる。高圧EGR装置22はターボチャージャ9の上流側の排気ガスの一部を循環させるため、ターボチャージャ9による過給が十分に必要となる運転状態(空気量を確保する必要がある運転状態)の場合には低圧EGR装置25を用いてNOxの排出量を低減する。つまり、負荷(トルク)が小さくエンジン回転速度が低い領域で高圧EGR装置22が用いられる高圧EGR領域となり、負荷が高圧EGR領域よりも大きくエンジン回転速度が高い領域で低圧EGR装置25が用いられる低圧EGR領域(空気量を確保する必要がある運転領域)となる。
【0027】
エンジン1の運転中、特に低圧EGR装置25使用時にはインタークーラ10の出口部に多量の凝縮水が発生する。発生した凝縮水は、排水管28を通ってNOxトラップ触媒18の上流側近傍に位置する排気管5に送られ、触媒コンバータ19を介して車外に排出されるが、排水管28の途中に設けられた開閉弁29が閉じられているときには排水管28内に貯留される。開閉弁29は、排水管28内に設けられた図示しない水位センサによって貯留された凝縮水の量が一定量に達したとき、あるいはエンジン1の運転時間や走行距離が一定値に達したときに開弁され、これによって排水管28内の凝縮水が触媒コンバータ19を介して車外に排出される。
【0028】
ここで開閉弁29の開弁時間が長すぎると、排水管28内からの凝縮水排出完了後に吸気ガスも排出されることとなり、内燃機関のトルク低下や出力低下を引き起こしてしまうため、本発明の第1の実施形態では開閉弁29を適正に閉弁する制御を行っている。以下にこの閉弁制御について説明する。
【0029】
図3は、制御手段30による開閉弁29の開閉制御動作を説明するフローチャートである。制御手段30は、先ず上述したように、排水管28内に設けられた図示しない水位センサによって貯留された凝縮水の量が一定量に達したか、あるいはエンジン1の運転時間や走行距離が一定値に達したかを判断し、一定量または一定値に達した場合に開閉弁29を開弁する(ST01)。
【0030】
開閉弁29が開弁されたことを確認すると、次に制御手段30は酸素濃度センサ20の出力値を確認する(ST02)。ここで、排水管28内を通じて凝縮水を排出している間は、酸素濃度センサ20は凝縮水により吸気ガス内に含まれている酸素を検出することができず、図4に示すように出力値はガス内の酸素濃度が理論空燃比に対して低く、燃料成分が多い状態であるリッチ側に位置している。そして、排水管28から凝縮水が抜けると共に酸素濃度センサ20が徐々に排水管28を通じて漏出する吸気ガス内に含まれる酸素を検出して出力値がガス内の酸素濃度が理論空燃比に対して高く、燃料成分が少ない状態であるリーン側に変化し、完全に凝縮水が抜けて所定期間が経過すると出力値がリーン側の所定値に落ち着く。これにより制御手段30は排水管28から凝縮水が完全に抜けたと判断し、開閉弁29を閉弁させる(ST03)。ここで、排水管28を通じて凝縮水が排出されているときの酸素濃度と、開閉弁29が閉弁しているときの酸素濃度とはほぼ同じ値である。当該酸素濃度に比して、排水管28から凝縮水が抜けた際に酸素濃度センサ20が検出する値は、相対的にリーン側の値をとる。
【0031】
上述の構成により、排水管28内から凝縮水が抜けた適正なタイミングで開閉弁29を閉弁制御することができるので、排水管28内からの凝縮水排出完了後に吸気ガスが排出されることを防止でき、これによりエンジン1のトルク低下や出力低下が発生することを確実に防止することができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、排水管28に設けられた開閉弁29を制御手段30によって開閉制御する構成を示した。しかし、異物が詰まったり弁が破損したりして開閉弁29が故障していると、制御手段30による開閉制御が不能となり不具合が生じてしまう。そこで、開閉弁29が故障しているか否かを判定する故障判定制御を本発明の第2の実施形態として以下に説明する。
【0033】
開閉弁29が閉じられている状態から制御手段30により開弁指令が送られると、開閉弁29が開弁されて排水管28を通じて凝縮水が排出される。所定期間経過後、排水管28から凝縮水が抜けきると吸気を伴う排気ガスを検出することから酸素濃度センサ20はリーン側の値を示す。そして制御手段30より閉弁指令が送られると、閉弁に伴い酸素濃度センサ20は吸気を伴わない排気ガスを検出することからその検出値はリッチ側に変化して定常値に戻る。しかし開閉弁29が何等かの理由により閉状態から開放されない閉固着の状態となっていると、図5に実線で示すように、所定期間が経過しても酸素濃度センサ20の検出値が定常値から変化しない。
【0034】
一方、開閉弁29が開放されている状態から制御手段30により閉弁指令が送られると、図6に破線で示すように、閉弁に伴い酸素濃度センサ20の検出値が吸気を伴う排気ガスの流出停止により吸気を伴わない排気ガスを検出することからリッチ側に変化して定常値に戻る。しかし開閉弁29が何等かの理由により開状態から閉塞されない開固着の状態となっていると、図6に実線で示すように、酸素濃度センサ20の検出値が所定の値から定常値に戻らない。
【0035】
上述した第2の実施形態における制御動作を、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。先ず、開閉弁29の開弁制御が行われたか否かが制御手段30によって判断され(ST11)、開弁制御が行われたと判断されると次に酸素濃度センサ20の検出値が変化したか否かが判断される(ST12)。そして酸素濃度センサ20の検出値が変化したと判断されると正常であるとして制御動作が終了し、検出値が変化しないと判断されると開閉弁29の故障であると判定してエンジン警告灯を点灯または点滅させてドライバに故障であることを警告する(ST13)。
【0036】
また、ステップST11において開弁制御が行われていないと判断されると、次に閉弁制御が行われたか否かが制御手段30によって判断され(ST14)、閉弁制御が行われたと判断されると次に酸素濃度センサ20の検出値が定常値か否かが判断される(ST15)。そして酸素濃度センサ20の検出値が定常値であると判断されると正常であるとして制御動作が終了し、検出値が所定の値から定常値に変化していないと判断されるとステップST13に進み、開閉弁29の故障であると判定してエンジン警告灯を点灯または点滅させてドライバに故障であることを警告する。
【0037】
この第2の実施形態において、制御手段30は故障判定制御部として機能する。この構成により、センサを増設することなく開閉弁29の故障判定を行うことができるので、コストアップすることなく正確に排水制御装置の故障判定を行うことができる。
【0038】
上記実施形態において、排水管28と排気管5との接続位置と酸素濃度センサ20との間にNOxトラップ触媒18が設けられているので、酸素濃度センサ20は凝縮水が被水しない位置に設けることができるためセンサの故障を防止することができる。また、低圧EGR装置25はフィルタ装置16と排水路接続位置との間の排気管5からターボチャージャ9の上流側の吸気管4に排気の一部を戻すので、戻される排気はフィルタ装置16を通過しており不純物が少ないため、エンジン1の燃焼効率を低下させることを防止できる。
【0039】
図8は、上述した各実施形態の変形例を示している。この変形例は、図1に示した実施形態と比較すると、排水管28及び開閉弁29に代えて排水路である排水管31及び開閉弁32を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0040】
排水管31は、その両端部を排水管28と同じ箇所に接続されると共に途中部を曲折形成されている。曲折部は、ターボチャージャ9とインタークーラ10との間の吸気管4(区間A)、及びフィルタ16と酸素濃度センサ17との間の排気管5に接触するように配置されている。また開閉弁32は、シリンダブロック2の近傍に位置するように配設されている。エンジン1の暖機後、区間Aの温度は35〜170℃の比較的高温となる。
【0041】
上述の構成により、エンジン1の暖機後において排水管31及び開閉弁32の設置先が暖かい状態となるので、排水管31内及び開閉弁32及び各バルブ8,12内の凝縮水が加熱される。これにより、寒冷地等において凝縮水凍結による吸気管4及び排気管5及び排水管31の閉塞が防止されると共に開閉弁32の凍結が防止され、良好な運転状態を継続することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 内燃機関(エンジン)
4 吸気通路(吸気管)
5 排気通路(排気管)
9 過給機(ターボチャージャ)
10 インタークーラ
16 排気フィルタ(フィルタ装置)
18 触媒(NOxトラップ触媒)
20 酸素濃度センサ
25 排気再循環装置(低圧EGR装置)
28 排水路(排水管)
29 開閉弁
30 開閉弁制御部、故障判定制御部(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8