【実施例】
【0014】
〔実施例1〕
〔実施例1の構成〕
実施例1の構成を
図1〜6を用いて説明する。
実施例1では、本発明を減速型スタータ1に搭載されたマグネットスイッチ2に採用した一例を説明する。
なお、マグネットスイッチ2の断面図は
図2のI−O−I断面図である。
【0015】
減速型スタータ1は、
図1に示す様に、回転力を発生するモータ3と、このモータ3の電機子軸4と平行に配置されるピニオン軸5と、このピニオン軸5の外周上に支持されてピニオン軸5と一体に回転するピニオン6と、モータ3の回転速度を減速して駆動トルクを増幅する減速装置(後述する)と、この減速装置で増幅された駆動トルクをピニオン軸5に伝達するクラッチ7と、ピニオン軸5と同軸線上に配置されるマグネットスイッチ等より構成される。
【0016】
モータ3は、磁界を形成する電磁石界磁(以下に説明する)と、電機子軸4の後端側の軸上に整流子8を備える電機子9と、整流子8の外周上に配置されるブラシ10等より構成される周知の整流子電動機である。
電磁石界磁は、磁気回路を形成すると共に、モータ3のハウジングを兼ねるヨーク11の内周にスクリュ12で固定される界磁磁極13と、その界磁磁極13の周囲に平角線を巻回した界磁コイル14とで構成される。なお、電磁石界磁に代えて、複数の永久磁石をヨーク11の内周に配置した永久磁石界磁を採用することもできる。
【0017】
ピニオン軸5は、後述するスプラインチューブ15の内周に挿通されてヘリカルスプライン結合され、スプラインチューブ15に対し軸方向(図示左右方向)へ回転しながら移動可能に設けられている。
以下、ピニオン軸5とマグネットスイッチ2を含む軸方向の図示左側を軸方向一端側、図示右側を軸方向他端側と呼ぶ。なお、ピニオン軸5が軸方向一端側に移動することによって、ピニオン6がリングギヤGに噛み合う。
【0018】
ピニオン軸5には、軸方向他端側の端面から軸方向一端側に向かって陥没する穴が形成されており、この穴内にスチールボール16が配設されている。
【0019】
ピニオン6は、スプラインチューブ15の軸方向一端面より突き出るピニオン軸5の外周に直スプライン嵌合して支持され、且つ、ピニオン軸5とピニオン6との間に配設されるピニオンスプリング17によってスプラインチューブ15の軸方向一端面に押し付けられている。
【0020】
スプラインチューブ15は、軸方向一端側の端部がボールベアリング18を介してスタータハウジング19に回転自在に支持され、軸方向他端側の端部がボールベアリング20を介してセンタケース21に回転自在に支持されている。センタケース21は、スタータハウジング19の軸方向他端側に隣接して配置される。
【0021】
減速装置は、電機子軸4の反整流子側の端部に形成されたドライブギヤ23と、このドライブギヤ23に噛み合うアイドルギヤ24と、このアイドルギヤ24に噛み合うクラッチギヤ25から成る歯車列によって構成される。
【0022】
クラッチ7は、例えば、ローラ式の一方向クラッチであり、内周に複数のカム面を形成するクラッチアウタ7aと、このクラッチアウタ7aの内周側に配置されるクラッチインナ(下述する)と、クラッチアウタ7aのカム面とクラッチインナの外周面との間に配設されるローラ7bと、このローラ7bをカム面に向けて付勢するスプリング7cなどより構成される。
【0023】
クラッチアウタ7aにはモータ3の回転駆動力がクラッチギヤ25を介して伝達される。
クラッチインナは、上述のスプラインチューブ15によって形成される。つまり、スプラインチューブ15がクラッチインナを兼ねている。
ローラ7bは、クラッチアウタ7aの回転をクラッチインナ(スプラインチューブ15)へ伝達する一方、クラッチインナからクラッチアウタ7aへの動力伝達を遮断する。
【0024】
〔本発明に係るマグネットスイッチ2の構成〕
マグネットスイッチ2の構成を主に
図3を用いて説明する。
マグネットスイッチ2は、電磁石の吸引力を利用してピニオン軸5を軸方向一端側へ押し出すとともに、モータ3の電源回路に接続されるメイン接点(後述する)を開閉するソレノイドをスイッチケースに収容してなっている。
【0025】
スイッチケースは、センタケース21と一体的に設けられてソレノイドの軸方向一端部の外周を囲う金属フレーム28と、金属フレーム28の軸方向他端側に接続されてソレノイドの軸方向他端部の外周を囲う樹脂フレーム29と、樹脂フレーム29の軸方向他端側の開口を閉塞する金属製のエンドカバー30とで構成されている。
【0026】
ソレノイドは、通電によって電磁石を形成するコイル35と、このコイル35の内周を軸方向(図示左右方向)に可動するプランジャ36と、電磁石により磁化されてプランジャ36を吸着する固定鉄心37と、コイル35の軸方向一端側に配置される円環状のコアプレート38と、プランジャ36の動きをスチールボール16を介してピニオン軸5に伝達するシャフト39と、コイル通電停止時にプランジャ36を押し戻すリターンスプリング40と、ピニオン6をエンジンのリングギヤGに押し込むための反力を蓄えるドライブスプリング41等を備える。
【0027】
コイル35は、例えば、絶縁被覆された銅線を樹脂製のボビン42に巻回して構成される。ボビン42の内周には、プランジャ36の移動を案内する非磁性金属製(例えばステンレス製)の円筒スリーブ43が挿入されている。
【0028】
プランジャ36は、軸方向他端部が径小となるように径方向の外周面に段差が形成された段付き形状に設けられており、コイル35の内周に収容される摺動部36aと、この摺動部36aの軸方向他端側で段部36bを介して摺動部36aより径小に形成される径小部36cとを有している。
【0029】
また、プランジャ36には、径方向の中央部を長手方向に貫通する中空孔44が形成され、中空孔44の軸方向一端側には、孔径を小さく形成した小径孔部44aを有する。中空孔44の軸方向他端の開口を開口44bとする。
プランジャ36の軸方向他端面36dには、径小部36cよりも外径が大きいワッシャ45が固定されている。ワッシャ45の穴45aは開口44bよりも小さい。
【0030】
固定鉄心37は、径方向の中央部が筒状に開口する円環状に設けられて、円筒スリーブ43の軸方向一端部の内周に挿入され、プランジャ36と軸方向に対向して配置される。
コアプレート38は、固定鉄心37にかしめ固定されて磁気的に連結されている。
なお、コアプレート38には、コイル35の外周に配されるコアステーショナリ50が磁気的に接続して共に磁気回路を形成している。
【0031】
シャフト39は、プランジャ36の小径孔部44aを挿通してプランジャ36に組み付けられる。小径孔部44aより中空孔44の軸方向他端側へ入り込むシャフト39の端部には、小径孔部44aの孔径より大きい外径を有するフランジ部39aが設けられている。また、中空孔44より突き出るシャフト39の軸方向一端側は、固定鉄心37の内周を通り抜けて、スチールボール16に当接するように突出している(
図1参照)。
【0032】
リターンスプリング40は、シャフト39の外周に配され、軸方向一端がスチールボール16に、軸方向他端が小径孔部44aの軸方向一端側の周縁に支持されている。
【0033】
ドライブスプリング41は、中空孔44内に配され、軸方向一端が小径孔部44aの軸方向一端側の周縁に、軸方向他端がワッシャ45に支持されている。
【0034】
メイン接点は、2本の端子ボルト54、55を介してモータ3の電源回路に接続される一組の固定接点56と、この一組の固定接点56の間を電気的に断続する可動接点57とで形成され、この可動接点57が一組の固定接点56に当接して両固定接点56の間が可動接点57を通じて導通することによりメイン接点が閉成(オン)し、可動接点57が一組の固定接点56から離れて両固定接点56の間が電気的に遮断されることでメイン接点が開成(オフ)する。
【0035】
2本の端子ボルト54、55は、外周に雄ねじ部が形成されたB端子ボルト54とM端子ボルト55である。B端子ボルト54には、バッテリBのプラス端子に繋がるバッテリケーブルのターミナルが接続され、M端子ボルト55には、モータ3のプラス側ブラシ10に繋がるモータリード線のターミナルが接続される。
【0036】
一組の固定接点56は、B端子ボルト54およびM端子ボルト55と別体に設けられており、一方の固定接点56がB端子ボルト54に、他方の固定接点56がM端子ボルト55に電気的に接続するように固定される。
【0037】
可動接点57は、径小部36cが挿通可能な孔を有する板状を呈しており、径小部36cの外周に樹脂製の絶縁板63と絶縁ブッシュ64とを介して保持されている。
絶縁板63は、円環状を呈しており、段部36bと可動接点57との間において径小部36cの外周に配される。
【0038】
絶縁ブッシュ64は、径小部36cの外周面を囲って可動接点57との間を絶縁するブッシュ部64aと、ブッシュ部64aの軸方向他端側にブッシュ部64aよりも大きい外径で形成され、可動接点57の軸方向他端側に配される頭部64bとを有する。
頭部64bは軸方向他端側にむかって径小となるテーパ部を有しており、このテーパ部はエンドカバー30に当接可能となっている。
【0039】
なお、可動接点57は、メイン接点の閉成時に接点圧を付与するための接点圧スプリング65によって付勢されている。
接点圧スプリング65は、径小部36cの外周に配され、軸方向一端が絶縁ブッシュ64に、軸方向他端がワッシャ45に支持されている。
【0040】
エンドカバー30は、径小部36cを覆う有底のカップ部30aを有しており、カップ部30aの底面30bがプランジャ36の軸方向他端面36dに対向している。
そして、カップ部30aの軸方向一端部には、頭部64bのテーパ部が面接触可能なテーパ状の規制部30cが設けられている。
【0041】
プランジャ36の戻り位置、つまり、コイル35への通電を停止して電磁石の吸引力が失われた時に、プランジャ36がリターンスプリング40の付勢力により押し戻されて停止する位置は、頭部64bと規制部30cとの当接によって規制される。
【0042】
〔本実施例の特徴〕
本実施例のマグネットスイッチ2は、プランジャ36の軸方向他端面36dに固定された弾性部材70を備える。
弾性部材70は、例えば、ゴム材料等クッション材として用いられる材料によって円板状に形成されている。
本実施例では、例えば、弾性部材70が接着剤によってワッシャ45に固定されており、弾性部材70がワッシャ45を介して軸方向他端面36dに固定されている。
【0043】
弾性部材70の寸法は、プランジャ36の軸方向他端面36dが弾性部材70を介してエンドカバー30の底面30bに当接した際に、頭部64bと規制部30cとが離間しているように設定されている。
また、プランジャ36が軸方向他端へ移動する際に、プランジャ36の軸方向他端面36dが弾性部材70を介してエンドカバー30の底面30bに当接した後に、リターンスプリング40の付勢力によって弾性部材70が撓んで、次いで頭部64bが規制部30cに当接できるような弾性部材70の弾性係数が設定されている。
【0044】
〔本実施例の作用効果〕
本実施例の作用効果を
図4〜6を用いて説明する。
コイル35に通電された状態を
図4に示す。
コイル35に通電された状態では、固定鉄心37にプランジャ36が吸引され、プランジャ36が軸方向一端側に位置している。このとき、シャフト39によってピニオン軸5が押し出されるとともに、可動接点57が固定接点56に当接し、モータ3への通電がなされた状態となる。
【0045】
図4の状態から、コイル35への通電を停止すると、リターンスプリング40の付勢力によって、プランジャ36が軸方向他端側へ押し戻される。
そして、
図5に示すように、まずは、弾性部材70と底面30bとが当接する。このとき、頭部64bと規制部30cとは離間している。
次いで、
図6に示すように、弾性部材70が撓むことによって、頭部64bが規制部30cに当接する。
【0046】
これによれば、頭部64bが規制部30cに当接する前に、弾性部材70によって衝撃を吸収するため、頭部64bと規制部30cとの衝突力を低減することができる。
これにより、頭部64bと規制部30cとの衝突による衝突音を低減することができ、プランジャ36のバウンドも抑制することができる。
【0047】
〔実施例2〕
実施例2を、実施例1とは異なる点を中心に、
図7を用いて説明する。
なお、実施例1と同じ符号は、同一の機能物を示すものであって、先行する説明を参照する。
本実施例のマグネットスイッチは、弾性部材70の軸方向一端側に一体的に設けられた爪71を備え、爪71とワッシャ45との係合によって弾性部材70がプランジャ36に固定される。
【0048】
爪71は、
図6に示すように、弾性部材70の軸方向一端面から突出するブッシュ71aと、ブッシュ71aより径大な爪部71bとを有している。
ブッシュ71aはワッシャ45の穴45aに所定の寸法公差で嵌合可能となっている。爪部71bは、無負荷状態では穴45aよりも大きい外径を有して、軸方向一端に向かうにつれて径小となっている。
【0049】
爪部71bをワッシャ45の穴45aに弾性変形させながら挿入すると、爪部71bは穴45aを通過した後に穴45aの軸方向一端側で復元して、穴45aの軸方向一端側の周縁と爪部71bとが係わり合って、弾性部材70がプランジャ36に固定される。
なお、弾性部材70及び爪71には軸方向に貫通する貫通穴72が設けられており、貫通穴は中空孔44に連通している。
【0050】
本実施例によっても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
加えて、接着剤を用いず、確実に弾性部材70をプランジャ36に固定することができる。
【0051】
〔実施例3〕
実施例3を、実施例1とは異なる点を中心に、
図8を用いて説明する。
なお、実施例1と同じ符号は、同一の機能物を示すものであって、先行する説明を参照する。
本実施例では、弾性部材70の底面30bとの当接面に薄い金属板75が固定されている。
【0052】
本実施例によっても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
加えて、弾性部材70が直接的に金属製のエンドカバー30に当接するのではなく、金属板75が当接することになる。従って、弾性部材70の磨耗を抑制でき、磨耗により生じる磨耗かすが接点間に付着するのを防止できる。また、温度上昇による弾性部材70のエンドカバー30への貼り付きも防止できる。
【0053】
〔変形例〕
実施例のマグネットスイッチ2は、1つのプランジャ36によってピニオン軸5を反スイッチ方向へ押し出すとともに、モータ3の電源回路に接続されるメイン接点を開閉するものであった。
しかし、ピニオン軸5の押し出しとメイン接点の開閉をそれぞれ別のソレノイドで行うタンデムタイプのマグネットスイッチ(例えば、特許文献1参照)に本発明を適用してもいい。
【0054】
すなわち、マグネットスイッチ2は、
図9に示すようにピニオン軸5を押し出すためのソレノイドSL1と、メイン接点の開閉をするためのソレノイドSL2とを備え、ソレノイドSL2のプランジャとエンドカバー30との間に弾性部材70を設けてもよい。
ソレノイドSL2のコイル及びプランジャが実施例1のコイル35及びプランジャ36に相当する。
この場合も、実施例1と同様の作用効果を奏する。
タンデムタイプでは、固定接点56と可動接点57との距離が狭いため、プランジャのバウンドが生じると、意図せず接点が閉じてしまう場合がある。このため、プランジャのバウンドを低減できることは、特に有効な効果といえる。
【0055】
また、実施例では、プランジャ36の軸方向他端面36dに弾性部材70を固定していたが、弾性部材70をエンドカバー30の底面30bに固定してもよい。