(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体側に非回転に取り付けられる外輪、前記外輪の内側に同心配置された内輪、前記外輪と前記内輪との間の軸受内部空間に配置された複数の転動体、及び前記軸受内部空間を車両インナ側の端部で封止するシール部材を有する軸受部と、
前記内輪の内側に挿通された胴部、及び車輪が取り付けられる車輪取付フランジ部を有し、前記胴部における車両インナ側の端部に前記内輪を加締め固定する加締め部が設けられたハブ輪と、
前記軸受部を異物から保護するカバー部材とを備えたハブユニットにおいて、
前記ハブ輪は、前記胴部の車両インナ側の端部における中心部に、車両インナ側に向かって開口する凹部が形成され、
前記カバー部材は、その中心部に設けられた固定部が前記ハブ輪及び前記内輪と一体回転するように前記凹部の円筒状の内面に固定されると共に前記加締め部の車両インナ側に延在し、前記固定部の車両インナ側の端部から外方に延在した壁部が前記軸受部の車両インナ側の端部を覆い、
前記カバー部材において、前記外輪の車両インナ側の端面と対向する部分が当該端面に対して非平行であり、
前記内輪の車両インナ側の端面と前記カバー部材の前記壁部との軸方向間隔が3〜4mmである、
ハブユニット。
車体側に非回転に取り付けられる外輪、前記外輪の内側に同心配置された内輪、前記外輪と前記内輪との間の軸受内部空間に配置された複数の転動体、及び前記軸受内部空間を車両インナ側の端部で封止するシール部材を有する軸受部と、
前記内輪の内側に挿通された胴部、及び車輪が取り付けられる車輪取付フランジ部を有し、前記胴部における車両インナ側の端部に前記内輪を加締め固定する加締め部が設けられたハブ輪と、
前記軸受部を異物から保護するカバー部材とを備えたハブユニットにおいて、
前記ハブ輪は、前記胴部の車両インナ側の端部における中心部に、車両インナ側に向かって開口する凹部が形成され、
前記カバー部材は、前記ハブ輪及び前記内輪と一体回転するように前記凹部の円筒状の内面に固定されると共に前記加締め部の車両インナ側に延在した固定部と、前記固定部の車両インナ側の端部から外方に延在して前記軸受部の車両インナ側の端部を覆う壁部と、前記外輪の車両インナ側の端部における外周面を覆う円筒部とを有し、
前記カバー部材の前記円筒部と前記外輪の前記外周面との間に隙間が形成され、
前記内輪の車両インナ側の端面と前記カバー部材の前記壁部との軸方向間隔が3〜4mmである、
ハブユニット。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
【0015】
(ハブユニット1の全体構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るハブユニット1の全体を示す断面図である。
図2は、
図1における軸受部の拡大図である。このハブユニット1は、車体に対して車輪を回転可能に支持するために用いられる。
図1及び
図2において、車輪はハブユニット1の左側に取り付けられ、ハブユニット1の右側は車体のホイールハウジング側にあたる。以下の説明では、ハブユニット1の車輪が取り付けられる側(
図1及び
図2の左側)を車両アウタ側とし、その反対側(
図1及び
図2の右側)車両インナ側とする。
【0016】
ハブユニット1は、軸受部10と、ハブ輪6と、軸受部10を異物から保護するカバー部材7とを備えている。軸受部10は、外輪2、内輪3、複数の転動体41,42、第1のシール部材51、及び第2のシール部材52を有する。複数の転動体41は、内輪3及びハブ輪6の回転軸線Oの周方向に等間隔に配置され、第1の転動体列4aを構成する。複数の転動体42は、第1の転動体列4aの車両アウタ側で回転軸線Oの周方向に等間隔に配置され、第2の転動体列4bを構成する。
【0017】
(軸受部10の構成)
図2に示すように、外輪2は、複数の転動体41を転動させる外側軌道面2aと、複数の転動体42を転動させる外側軌道面2bとを内周側に有している。また、外輪2は、第1及び第2のシール部材51,52がそれぞれ取り付けられるシール取付面2c,2dを内周側に有している。シール取付面2c,2dは、外輪2の両端部に形成されている。外側軌道面2a,2bは、外輪2の両端部に近づくほど内径が大きくなるテーパ状に形成されている。
【0018】
外輪2は、図略の懸架装置のナックルへの固定によって、車体側に非回転に取り付けられる。外輪2には、ナックルへの取り付けのための車体取付フランジ20(
図1に示す)が外周側に形成されている。また、外輪2には、回転センサ11を取り付けるためのセンサ取付孔21aが形成されている。センサ取付孔21aは、一対の外側軌道面2a,2bの間に開口している。この開口から突出した回転センサ11の先端部は、内輪3に固定されるパルサリング12に対向している。回転センサ11は、内輪3の回転をパルサリング12との相対回転による磁界の変化によって検出し、検出信号を図略のABS(Antilock Brake System)コントローラに出力する。
【0019】
内輪3は、第1の内輪部材31及び第2の内輪部材32からなる。内輪3は、外輪2の内側に同心配置されている。第1の内輪部材31及び第2の内輪部材32は、回転軸線O方向に並列している。回転軸線O方向において、第1の内輪部材31は車両インナ側に、第2の内輪部材32は車両アウタ側に、それぞれ配置されている。
【0020】
第1の内輪部材31は、外輪2の外側軌道面2aに対向して複数の転動体41を転動させる内側軌道面31aを有している。また、第1の内輪部材31は、外輪2のシール取付面2cに対向するシール取付面31bを有している。内側軌道面31aは、車両インナ側ほど外径が大きくなるテーパ状に形成されている。
【0021】
第2の内輪部材32は、外輪2の外側軌道面2bに対向して複数の転動体42を転動させる内側軌道面32aを有している。また、第2の内輪部材32は、外輪2のシール取付面2dに対向するシール取付面32bと、パルサリング12を取り付けるためのリング取付面32cとを有している。内側軌道面31aは、車両アウタ側ほど外径が大きくなるテーパ状に形成されている。
【0022】
複数の転動体41及び複数の転動体42は、外輪2と内輪3との間の軸受内部空間10aに配置されている。複数の転動体41は、環状の保持器43によって保持され、外輪2の外側軌道面2a及び第1の内輪部材31の内側軌道面31aを転動する。複数の転動体42は、環状の保持器44によって保持され、外輪2の外側軌道面2b及び第2の内輪部材32の内側軌道面32aを転動する。それぞれの転動体41,42は、円錐ころであり、その中心軸が回転軸線Oに対して傾斜するように配置されている。
【0023】
第1のシール部材51は、外輪2のシール取付面2cと第1の内輪部材31のシール取付面31bとの間に配置されている。第1のシール部材51は、軸受内部空間10aを車両インナ側の端部で封止している。第2のシール部材52は、外輪2のシール取付面2dと第2の内輪部材32のシール取付面32bとの間に配置されている。第2のシール部材52は、軸受内部空間10aを車両アウタ側の端部で封止している。
【0024】
第1のシール部材51は、芯金511、弾性部材512、及びスリンガ513を有している。芯金511は、外輪2のシール取付面2cの内側に圧入によって固定されている。弾性部材512は、例えば合成ゴムからなり、芯金511に加硫接着されている。スリンガ513は、第1の内輪部材31のシール取付面31bの外側に圧入によって固定されている。スリンガ513には、弾性部材512の複数のリップ部が摺接する。
【0025】
第2のシール部材52は、第1のシール部材51と同様に構成されている。すなわち、第2のシール部材52は、芯金521、弾性部材522、及びスリンガ523を有している。芯金521は、外輪2のシール取付面2dの内側に圧入によって固定され、芯金521に弾性部材522が加硫接着されている。スリンガ523は、第2の内輪部材32のシール取付面32bの外側に圧入によって固定され、弾性部材522の複数のリップ部が摺接する。
【0026】
軸受部10における軸受内部空間10aには、図略のグリースが潤滑剤として封入されている。第1のシール部材51及び第2のシール部材52は、グリースの漏出を防ぐと共に、軸受内部空間10a内に異物が侵入することを防止している。外輪2、内輪3(第1及び第2の内輪部材31,32)、及び転動体41,42は、例えば高炭素クロム軸受鋼や炭素鋼等の鉄系材料からなる。
【0027】
(ハブ輪6の構成)
ハブ輪6は、内輪3の内側に挿通された胴部61、車輪取付フランジ部62、及び胴部61と車輪取付フランジ部62とを連結する連結部63を一体に有している。ハブ輪6は、例えば中炭素鋼からなる。車輪取付フランジ部62には、図略の車輪が取り付けられる。胴部61は、内輪3における第1の内輪部材31の車両インナ側の端面31cから突出した端部が外方に押し広げられて加締め部611となっている。加締め部611は、連結部63における胴部61側の端面63aとの間に内輪3を加締め固定している。
【0028】
車輪取付フランジ部62には、ハブボルト13を挿通させる複数のボルト挿通孔62aが形成されている。ボルト挿通孔62aには、ハブボルト13が圧入によって固定されている。車輪取付フランジ部62の車両アウタ側には、ハブボルト13に螺合する図略のハブナットとの間に、車輪のホイールがブレーキディスクロータと共に固定される。
【0029】
また、ハブ輪6には、胴部61の車両インナ側の端部における中心部に、車両インナ側に向かって開口する凹部60が形成されている。凹部60の内面60aは円筒状である。凹部60の中心軸は回転軸線Oと一致している。
【0030】
(カバー部材7の構成)
図3は、カバー部材7を示している。
図3において、(a)はカバー部材7を車両アウタ側から見た平面図、(b)はカバー部材7の側面図である。また、(c)はカバー部材7を(a)におけるA−A線断面で示す断面図、(d)は(c)のB部拡大図である。
【0031】
カバー部材7は、固定部70と、固定部70の外周側に設けられた第1側壁部71、第1傾斜壁部72、第2側壁部73、及び第2傾斜壁部74とを一体に有している。固定部70は、車両アウタ側に突出する有底円筒状であり、カバー部材7の中心部に設けられている。第1側壁部71は、固定部70の車両インナ側の端部から外方に延在している。第1傾斜壁部72は、第1側壁部71の外周側に設けられている。第2側壁部73は、第1傾斜壁部72の外周側に設けられている。第2傾斜壁部74は、第2側壁部73の外周側に設けられている。カバー部材7の内面7aは、第1側壁部71、第1傾斜壁部72、第2側壁部73、及び第2傾斜壁部74のそれぞれの内面71a,72a,73a,74aからなる。
【0032】
カバー部材7は、例えば冷間圧延鋼板(SPCC)からなり、プレス加工によって成形され、かつカチオン塗装による防錆処理がされている。カバー部材7の厚みは、例えば0.5〜2.0mmである。
【0033】
カバー部材7は、固定部70がハブ輪6の凹部60に圧入されることにより、ハブ輪6及び内輪3と一体回転するように固定されている。カバー部材7の第1側壁部71、第1傾斜壁部72、第2側壁部73、及び第2傾斜壁部74は、軸受部10の車両インナ側の端部を覆っている。第1側壁部71、第1傾斜壁部72、第2側壁部73、及び第2傾斜壁部74と軸受部10との間には、回転軸線Oに平行な方向に幅を有する隙間が形成されている。この隙間をカバー内空間7bとする。つまり、カバー部材7の内面7aと軸受部10との間には、回転軸線Oに平行な方向に幅を有するカバー内空間7bが形成されている。
【0034】
第1側壁部71は、固定部70の車両インナ側の端部から外方に延在する板状である。第1側壁部71の内面71aは、カバー部材7の中心軸Cに平行な方向に対して直交する平坦な面である。この中心軸Cは、カバー部材7がハブ輪6に組み付けられた際に、ハブ輪6の回転軸線Oと一致する。第1傾斜壁部72は、第1側壁部71の外周側の端部から車両インナ側に向かってテーパ状に傾斜している。第1傾斜壁部72の内面72aは、第2側壁部73に近づくほど軸受部10から離間している。
【0035】
内輪3における第1の内輪部材31の車両インナ側の端面31cは、第1側壁部71の内面71a及び第1傾斜壁部72の内面72aに軸方向に対向している。つまり、第1側壁部71及び第1傾斜壁部72は、内輪3における第1の内輪部材31の車両インナ側の端面31cを車両インナ側から覆っている。
【0036】
第2側壁部73は、第1傾斜壁部72の端部から外方に延在する板状である。第2側壁部73の内面73aは、カバー部材7の中心軸Cに平行な方向に対して直交する平坦な面である。第2側壁部73は、第1のシール部材51の車両インナ側の端部のうち、内側(内輪3側)の一部を車両インナ側から覆っている。
【0037】
第2傾斜壁部74は、第2側壁部73の外周側の端部から車両アウタ側に向かってテーパ状に傾斜している。第2傾斜壁部74の内面74aは、その外周側の端部に近づくほど軸受部10に接近している。カバー部材7の中心軸Cの径方向に対する第2傾斜壁部74の傾斜角θ(
図3(d)参照)は、例えば15〜45°である。第2傾斜壁部74の内面74aは、カバー部材7の中心軸Cを含む軸方向断面において直線状である。第2傾斜壁部74における外周側の端部74bは、第1側壁部71の内面71aよりも車両アウタ側に突出している。
【0038】
図2に示すように、第2傾斜壁部74は、第1のシール部材51の車両インナ側の端部のうち、外側(外輪2側)の一部を車両インナ側から覆っている。また、第2傾斜壁部74は、外輪2の車両インナ側の端面2eに対向し、この端面2eを車両インナ側から覆っている。つまり、カバー部材7において、外輪2の端面2eと対向する部分(第2傾斜壁部74の外周部)は、この端面2eに対して非平行である。換言すれば、カバー部材7において、外輪2の車両インナ側の端面2eと対向する部分が端面2eに対して平行とならない。
【0039】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
次に、本実施の形態の作用及び効果について
図4を参照して説明する。
【0040】
図4は、ハブユニット1が車両に搭載された状態における軸受部10及びカバー部材7の下側の端部を拡大して示す断面図である。
【0041】
カバー内空間7bに浸入した泥水等の異物Fがカバー部材7の内面7aに付着した場合、この異物Fは自重によって下方に流動する。カバー部材7の第2傾斜壁部74における外周側の端部74bと外輪2における車両インナ側の端面2eとの間には、全周に亘って隙間Sが形成されている。これにより、例えば周方向の一部のみに水抜き孔等の排出孔が形成されている場合に比較して、異物Fが排出されやすくなる。
【0042】
また、車両の走行時には、車輪の回転に伴ってハブ輪6と共にカバー部材7が回転するので、カバー部材7の内面7aに付着した異物Fに遠心力が作用する。この遠心力によって異物Fがカバー部材7の外方へ移動する。異物Fは、カバー部材7の第2傾斜壁部74における外周側の端部74bと外輪2における車両インナ側の端面2eとの間の隙間Sからカバー内空間7bの外部に排出される。これにより、カバー内空間7bからの異物Fの排出が、カバー部材7の回転による遠心力によって促される。
【0043】
また、本実施の形態では、第1側壁部71と第2側壁部73との間に第1傾斜壁部72が介在している。この第1傾斜壁部72は、第1側壁部71の外周側の端部から車両インナ側に向かってテーパ状に傾斜している。これにより、第1のシール部材51とカバー部材7との最大軸方向間隔が、内輪3とカバー部材7との軸方向間隔よりも大きくなっている。ここで、「最大軸方向間隔」とは、第1のシール部材51とカバー部材7とが軸方向(回転軸線Oに平行な方向)に向かい合う範囲における両部材の最大の軸方向の間隔をいう。より詳細には、カバー内空間7bにおける第1のシール部材51の車両インナ側の端面とカバー部材7の内面7aとの軸方向の最大の間隔をいう。
【0044】
図4に示すように、第1のシール部材51とカバー部材7との最大軸方向間隔をS
1とし、内輪3とカバー部材7との軸方向間隔をS
2とすると、S
1はS
2よりも大きい。S
1は例えば5〜6mmであり、S
2は例えば3〜4mmである。ここで、S
1は、具体的には、第1のシール部材51の車両インナ側の端面と、第2側壁部73の内面73aとの間隔である。また、S
2は、第1の内輪部材31の車両インナ側の端面31cと第1側壁部71の内面71aとの間隔である。この構成により、回転軸線Oに平行な方向におけるカバー内空間7bの幅が第1のシール部材51の車両インナ側において広くなる。このため、カバー部材7の内面7aに付着した異物が振動等によってカバー部材7から離れた場合に、その異物が第1のシール部材51に再付着することが抑制される。したがって、第1のシール部材51における弾性部材512のスリンガ513との摺接部に付着した異物による弾性部材512の摩耗が抑えられる。つまり、第1のシール部材51のシール性の低下が抑制される。
【0045】
また、本実施の形態では、第2傾斜壁部74が第2側壁部73の外周側の端部から車両アウタ側に向かってテーパ状に傾斜している。このため、軸受部10の車両インナ側の端部とカバー部材7の内面7aとの間隔が、カバー部材7の外周側の端部で最も狭くなる。つまり、軸受部10とカバー部材7との間隔は、第2傾斜壁部74の外周側の端部74bと外輪2の車両インナ側の端面2eとの間において最も狭い。したがって、第2傾斜壁部74の外周側の端部74bと外輪2の車両インナ側の端面2eとの軸方向間隔をS
3とすると、S
3はS
1及びS
2よりも小さい。これにより、外輪2の車両インナ側の端面2eとカバー部材7との間からカバー内空間7bに異物が侵入することが抑制される。第2傾斜壁部74の外周側の端部74bと外輪2の車両インナ側の端面2eとの隙間の寸法(S
3)の望ましい範囲は、0.5〜1.5mmである。この寸法が0.5mm未満であると、異物が排出されにくくなる場合があり、1.0mmを越えると、隙間Sを介して外部から異物が侵入しやすくなる。
【0046】
(比較例)
図5は、比較例に係るカバー部材7Aを示す断面図である。このカバー部材7Aは、第1の実施の形態に係るカバー部材7と同様に、第1側壁部71、第1傾斜壁部72、第2側壁部73、及び第2傾斜壁部74を有している。ただし、カバー部材7Aには、第2傾斜壁部74よりも外周側に、外輪2における車両インナ側の端面2eと平行な第3の側壁部75が形成されている。この第3の側壁部75の内面75aは、外輪2の端面2eと平行に向かい合っている。つまり、この比較例に係るカバー部材7Aは、第3の側壁部75を有する構成が、第1の実施の形態に係るカバー部材7と異なる。なお、第3の側壁部75の内面75aと外輪2の端面2eとの軸方向間隔をS
0とした場合、S
0は第1の実施の形態におけるS
3(
図4参照)と同じ寸法であるものとする。
【0047】
この比較例に係るカバー部材7Aでは、第3の側壁部75の内面75aと外輪2の端面2eとが平行である。このため、異物Fが液状である場合に、その表面張力によって異物Fが外部に排出されにくくなる。つまり、異物Fは、第3の側壁部75の内面75aと外輪2の端面2eに留まることにより表面積が小さい状態が保たれる。そして、この表面積が小さい状態を維持しようとする表面張力の作用によって、異物Fが外部に排出されにくくなる。
【0048】
一方、本実施の形態では、カバー部材7における第2傾斜壁部74の外周部が外輪2の端面2eに対して非平行である。このため、比較例に係るカバー部材7Aを用いた場合に比較して、表面張力の作用が弱まり、異物Fがカバー内空間7bから排出されやすくなる。これにより、異物の排出性が向上する。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るハブユニット1Aの全体を示す断面図である。
図7は、
図6の部分拡大図である。
【0050】
本実施の形態に係るハブユニット1Aは、カバー部材8の構成が第1の実施の形態に係るカバー部材7と異なる。また、ハブユニット1Aは、外輪2の車体取付フランジ20の車体インナ側に段差が設けられている。ハブユニット1Aは、この他の構成については、第1の実施の形態に係るハブユニット1と同様に構成されている。
図6及び
図7において、第1の実施の形態について説明したものと共通する部材等については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0051】
外輪2は、車体取付フランジ20の車体インナ側の外周面に、懸架装置のナックルを取り付けるためのナックル取付面2fと、端部外周面2gとが形成されている。端部外周面2gは、ナックル取付面2fよりも車体インナ側に形成されている。ナックル取付面2fは、端部外周面2gよりも大径であり、ナックル取付面2fと端部外周面2gとの間に段差が形成されている。
【0052】
カバー部材8は、第1の実施の形態に係るカバー部材7に対し、外輪2の車両インナ側の端部における外周面である端部外周面2gを覆う円筒部85が追加されている。カバー部材8は、この他の部分については、第1の実施の形態に係るカバー部材7と大略同様に構成されている。具体的には、カバー部材8は、固定部80、第1側壁部81、第1傾斜壁部82、第2側壁部83、第2傾斜壁部84、及び円筒部85を一体に有している。固定部80は、ハブ輪6の凹部60に圧入によって固定される有底円筒状である。第1側壁部81は、固定部80の車両インナ側の端部から外方に延在する。第1傾斜壁部82は、第1側壁部81の外周側に設けられている。第2側壁部83は、第1傾斜壁部82の外周側に設けられている。第2傾斜壁部84は、第2側壁部83の外周側に設けられている。円筒部85は、外輪2の車両インナ側の端部の端部外周面2gを外周側から覆っている。
【0053】
カバー部材8は、固定部80がハブ輪6の凹部60に圧入されることにより、ハブ輪6及び内輪3と一体回転する。第1側壁部81の内面81a及び第2側壁部83の内面83aは、回転軸線Oに平行な方向に対して直交する平坦な面である。第1傾斜壁部82は、第1側壁部81の外周側の端部から車両インナ側に向かってテーパ状に傾斜し、第1側壁部81と第2側壁部83との間に介在している。
【0054】
第2傾斜壁部84は、第2側壁部83の外周側の端部から車両アウタ側に向かってテーパ状に傾斜している。第2傾斜壁部84の外周側の端部84bは、外輪2の端部外周面2gよりも径方向外側に突出している。円筒部85は、第2傾斜壁部84の外周側の端部84bから車両アウタ側に延在している。円筒部85と外輪2の端部外周面2gとの間には、隙間Sが形成されている。
【0055】
内輪3における第1の内輪部材31の車両インナ側の端面31cには、第1側壁部81の内面81a及び第1傾斜壁部82の内面82aが軸方向に対向している。第1のシール部材51には、第2傾斜壁部84の内面84aのうち径方向内側の一部、及び第2側壁部83の内面83aが軸方向に対向している。外輪2の車両インナ側の端面2eには、第2傾斜壁部84の内面84aのうち径方向外側の一部が軸方向に対向している。
【0056】
カバー部材8において、第1側壁部81、第1傾斜壁部82、第2側壁部83、及び第2傾斜壁部84は、軸受部10の車両インナ側の端部を覆う壁部800を構成する。すなわち、カバー部材8は、固定部80と、壁部800と、円筒部85とを同心状に有している。壁部800の内面(軸受部10側の面)800aと軸受部10との間には、カバー内空間800bが形成されている。
【0057】
カバー内空間800bにおいて、第1のシール部材51とカバー部材8との最大軸方向間隔は、内輪3とカバー部材8との軸方向間隔よりも大きくなっている。ここで、「最大軸方向間隔」とは、第1のシール部材51とカバー部材8とが軸方向(回転軸線Oに平行な方向)に向かい合う範囲における両部材の最大の軸方向の間隔をいう。より詳細には、カバー内空間800bにおける第1のシール部材51の車両インナ側の端面とカバー部材8の内面800aとの軸方向の最大の間隔をいう。
【0058】
図7に示すように、第1のシール部材51とカバー部材8との最大軸方向間隔をS
4とし、内輪3とカバー部材8との軸方向間隔をS
5とした場合に、S
4はS
5よりも大きい。S
4は例えば5〜6mmであり、S
5は例えば3〜4mmである。ここで、S
4は、具体的には、第1のシール部材51の車両インナ側の端面と、第2側壁部83の内面83aとの間隔である。また、S
5は、第1の内輪部材31の車両インナ側の端面31cと第1側壁部81の内面81aとの間隔である。
【0059】
本実施の形態では、円筒部85が回転軸線Oと平行に延在している。円筒部85の内周面85aと外輪2の端部外周面2gとの間には、全周に亘って実質的に一定の幅の環状の隙間Sが形成されている。これにより、隙間Sを介してカバー内空間800bから異物を排出することができる。また、カバー部材8と外輪2とが接触することなく、カバー部材8を円滑に回転させることができる。
【0060】
円筒部85の内周面85aと外輪2の端部外周面2gとの間隔(隙間Sの径方向幅)をS
6とすると、S
6の寸法の望ましい範囲は、0.5〜1.5mmである。S
6が0.5mm未満であると、カバー内空間800bから異物が排出されにくくなる場合がある。一方、S
6の寸法が1.0mmを越えると、隙間Sを介して外部から異物が侵入しやすくなる。
【0061】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係るハブユニット1Aによれば、例えば周方向の一部のみに排出孔が形成されている場合に比較して、異物が排出されやすくなる。また、車両の走行時には、車輪の回転に伴ってハブ輪6と共にカバー部材8が回転するので、カバー部材8の壁部800の内面800aに付着した異物に遠心力が作用する。このため、遠心力によって異物の排出が促される。
【0062】
また、第1のシール部材51とカバー部材8との最大軸方向間隔(S
4)は、内輪3とカバー部材8との軸方向間隔(S
5)よりも大きい。このため、壁部800の内面800aに付着した異物が振動等によってカバー部材8から離れた場合に、その異物が第1のシール部材51に再付着することが抑制される。
【0063】
またさらに、本実施の形態では、外輪2の車両インナ側の端部における端部外周面2gがカバー部材8の円筒部85に覆われている。このため、例えば車輪が跳ね上げた泥水や小石等の異物が外輪2の径方向外方から飛来した場合に、その異物を円筒部85によってブロックすることができる。したがって、異物がカバー内空間800b内に侵入することを抑制できる。
【0064】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について
図8を参照して説明する。
図8は、第3の実施の形態に係るカバー部材8Aを示し、(a)はカバー部材8Aの外周側の一部を示す断面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【0065】
本実施の形態に係るカバー部材8Aは、第2の実施の形態におけるカバー部材8の円筒部85の形状を変形したものであり、その他の構成は第2の実施の形態と同様である。以下、第2の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
【0066】
本実施の形態に係るカバー部材8Aは、円筒部85の内周面85aの少なくとも一部が車両アウタ側に向かって内径が拡大するテーパ形状である。より具体的には、本実施の形態に係る円筒部85の内周面85aは、車両インナ側の第1内周面851aと、車両アウタ側のテーパ形状の第2内周面852aとからなる。第2内周面852aは、車両アウタ側に向かって内径が拡大するテーパ形状である。第1内周面851aは、回転軸線Oに対して平行である。
【0067】
円筒部85における第2内周面852aは、車両アウタ側ほど外輪2の端部外周面2gとの間隔が広くなっている。第1内周面851aと端部外周面2gとの間隔をS
7とし、第2内周面852aの車両アウタ側の端部と端部外周面2gとの間隔をS
8とすると、S
8はS
7よりも大きい。S
8とS
7との差(S
8−S
7)は、例えば0.5〜1.0mmである。
【0068】
本実施の形態では、円筒部85の外周面85bが外輪2の端部外周面2gに平行であり、円筒部85の厚みを車両アウタ側ほど薄くしている。これにより、第2内周面852aを車両アウタ側に向かって内径が拡大するテーパ形状にしている。ただし、第2内周面852aに対応する外周面85bの外径が車両アウタ側ほど大きくなるようにし、円筒部85の厚みを一定としてもよい。
【0069】
(第3の実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態によれば、第2の実施の形態の作用及び効果が得られる。また、本実施の形態では、円筒部85の内周面85aにおける第2内周面852aが車両アウタ側に向かって内径が拡大するテーパ形状である。このため、カバー部材8Aの回転によって第2内周面852aに付着した異物に遠心力が作用し、この異物が車両アウタ側に移動して隙間Sから排出される。したがって、第2の実施の形態よりもさらに異物の排出性が向上する。
【0070】
以上、本発明を第1乃至第3の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の態様において実施することが可能である。例えば、上記各実施の形態では、転動体41,42が円錐ころである場合について説明したが、転動体として球状のものを用いることも可能である。
【0071】
また、上記各実施の形態では、エンジン等の駆動源の駆動力が伝達されない従動輪用のハブユニットに本発明を適用した場合について説明した。しかし、駆動源の駆動力が伝達される駆動輪用のハブユニットに本発明を適用することも可能である。この場合、カバー部材の中央部には、駆動軸を挿通させるための挿通孔が形成される。また、ハブ輪には、駆動軸を相対回転可能に連結するためのセレーションが内周面に形成された貫通孔が設けられる。
【0072】
また、カバー部材7,8,8Aの構成は、上記第1乃至第3の実施の形態において具体的に例示したものに限らず、適宜変形して実施することが可能である。例えば、第1の実施の形態に係るカバー部材7において、第1の傾斜壁部72の外周側に第2の傾斜壁部74を連続して形成し、第2の側壁部73を有さないようにしてもよい。この場合、第1のシール部材51の車両インナ側の端面と第1の傾斜壁部72又は第2の傾斜壁部74の内面72a,74aとの軸方向の最大の間隔が「最大軸方向間隔」となる。また、第2及び第3の実施の形態に係るカバー部材8,8Aについても同様に、第1の傾斜壁部82の外周側に第2の傾斜壁部84を連続して形成してもよい。この場合、第1のシール部材51の車両インナ側の端面と第1の傾斜壁部82又は第2の傾斜壁部84の内面82a,84aとの軸方向の最大の間隔が「最大軸方向間隔」となる。