(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮断部の下方を切断して、前記食品を充填密封した収容部と、前記ドリップを貯留する貯留部とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の食品包装容器。
【背景技術】
【0002】
従来から、包装食品の製造においては、一般に、食品を容器に充填密封した後、加熱することにより、包装食品を殺菌する処理が行われている。例えば、レトルト食品の製造にあたっては、食品を容器に充填密封した後に加圧して、110〜130℃程度の温度で数分〜数十分間、熱水や蒸気等による加熱殺菌が行われる。
このような殺菌処理の条件としては、包装食品の原料を十分に殺菌できる条件を選択する必要があるが、一方で、殺菌処理後にその食品の品質が劣化しないように処理することが重要である。
【0003】
特に、レトルト殺菌処理は高温高圧で行われるため、原料に与える影響は無視できず、原料の種類によっては硬化するものや、あるいは脆い食感を呈するものがあった。
レトルト食品は、鳥獣類や魚介類を含む動物性の食品など幅広い食品を対象に提供されている。特に、魚介類の中でもエビは、種々の食品に利用されるものであり、そのレトルト食品も提案されている(特許文献1,2)。
エビは2分〜8分間程度の煮沸(ボイル)を行うと、筋肉タンパク質が変性して、その食感が非加熱のものよりも一層良好となる。しかし、レトルト殺菌処理のように過度の加熱を行う場合、エビの筋肉組織は脆弱化して、エビに特有の弾力性のある食感(プリプリ感)がなくなり、噛むとボロボロと崩れるような脆い食感(ボソボソ感)を呈するようになる。また、食感だけでなく、外観(色調)、香り、味、及びテクスチャーなども劣化するという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、このような問題を解消するべく研究を行い、エビなどの食品を、ヘッドスペースを設けて容器に密封した後に、レトルト殺菌処理を行い、これによって食品から生じるドリップを容器内に分散させることで、優れた食感を有し、その外観、香り及び味なども良好なレトルト食品を製造することに成功し、このレトルト食品の製造方法に係る発明について、既に特許出願を行っている(特許文献3)。
【0005】
また、優れた食感を有し、その外観、香り及び味なども良好なレトルト食品を消費者の方々に提供するためには、食品の製造方法に適した食品包装容器の開発も重要であり、本発明に関連する様々な技術が提案されている。
例えば、煮魚等のようないわゆる煮汁付き加工食品を包装するための容器として、固形物(煮魚)と煮汁とを分離して煮汁が固形物に過度に浸透して味覚や風味が低下することを防ぐために、非溶着部を有する熱溶着ラインによって、主収納部と副収納部とに区画した包装用袋が提案されている(特許文献4)。
また、商品と商品から出たドリップが共存することによる見た目や日持ちの悪さを回避するために、仕切り部によって製品収納部とドリップ受入れ部が形成された袋が提案されている(特許文献5)。
【0006】
【特許文献1】特開2009−240210号公報
【特許文献2】特開2009−50173号公報
【特許文献3】特願2012−106930号公報
【特許文献4】特開平5−278751号公報
【特許文献5】特開平10−120060号公報
【発明を実施するための形態】
【0012】
[食品包装容器の一実施形態]
(包装容器)
図1、2において、本発明の食品包装容器に用いる包装容器1は、ドリップ51を生じる食品(本実施形態では、例えばエビ5)の包装容器であって、
図1は本実施形態の食品包装容器10の前段階の状態、すなわち、エビ5が充填密封される前の状態を示している。
この包装容器1は、ほぼ矩形状の一対のフィルム材11からなり、フィルム材11は、例えば内層にポリプロピレン、外層にポリエステル(PET)等の合成樹脂や、アルミ箔を中間層として積層した多層フィルム材等からなるパウチである。また、対向して重ねられた一対のフィルム材11は、右側、左側及び下側の縁部が熱溶着されており、これにより、包装容器1は、溶着部12を有している。
また、包装容器1としては、高温で加熱殺菌するため耐熱性を有し、常温流通ができる態様であり、酸素ガス、光を遮断するバリア性を有し、密封性と実用強度がある前述した多層フィルム材等からなる袋状のレトルトパウチ等を用いることができる。
【0013】
包装容器1は、上側にエビ5を充填する収容部2を有し、また、下側にエビ5から生じたドリップ51を貯留する貯留部3を有している。そして、収容部2と貯留部3の間に、ドリップ51の流路を有する境界部4を形成してある。
この境界部4は、四つのシール部41と、上記流路となる五つの未シール部42で形成されている。シール部41は、ほぼ細長い矩形状としてあり、包装容器1の下部と平行に配設してある。また、未シール部42は、溶着部12とシール部41との間、及び、隣り合うシール部41どうしの間に形成され、ドリップ51の流路となる。
なお、シール部41及び未シール部42の数量、形状及び位置等は、上記に限定されるものではない。
【0014】
また、包装容器1は、上部に、レトルト殺菌を行う際、包装容器1を吊り下げるための一対の吊り下げ孔13が形成されていても良い。このようにすると、容器1を吊り下げてレトルト殺菌を行うことにより、食品からのドリップの分離を行う際の作業性等を向上させることができる。
さらに、食品が包装された容器1を容易に開封するための切欠14が容器1の上部に形成されていても良い。
【0015】
ここで、包装容器1を用いた本実施形態の食品包装容器10は、上述したように、本出願人が提案した食品の食感の劣化を抑制する包装食品の製造方法によって、製造することができる。
次に、この包装食品の製造方法などについて説明する。
【0016】
(包装食品の製造方法)
食品包装容器10を製造可能な包装食品の製造方法は、食品(例えばエビ5)を食品包装容器10の収容部2に充填して密封する充填密封工程と、前記充填密封した食品を加熱殺菌するとともに、前記食品から生じるドリップ51を分離して貯留部3に貯留する加熱殺菌工程と、食品包装容器10を冷却する冷却工程と、貯留部3に貯留されたドリップ51の前記食品への接触を阻止する遮断部を形成する遮断部形成工程と、を有する方法としてある。
【0017】
また、本実施形態の食品包装容器10によれば、特にコラーゲンを含む肉が表皮膜によって被覆されてなる食品の食感が、加熱殺菌により劣化することを抑制することができる。
すなわち、このような食品の食感には、表皮膜を噛み破る際などに生じる特有の弾力性があるが、この食品を水分存在下でレトルト殺菌のような高温で過度に加熱すると、食品中に含まれるコラーゲンは同じく食品中に含有される水分の存在により可溶化され、その弾力性が失われて脆い食感を呈するようになり、食感が大きく劣化するという問題がある。
本実施形態の食品包装容器10によれば、加熱殺菌時に食品から生じるドリップを食品から分離し、食品が水分存在下で過加熱されることを防止してコラーゲンが可溶化することを抑制するため、このような食品の弾力性低下を抑制することが可能になる。
【0018】
(食品包装容器)
次に、食品が包装された本実施形態の食品包装容器10について、図面を参照して説明する。
図2において、食品包装容器10は、充填密封工程によって、食品としてのエビ5が充填され、上部に密封用シール部15が形成されることにより、エビ5を密封している。
【0019】
次に、食品包装容器10は、加熱殺菌工程によって、充填密封したエビ5が加熱殺菌されるとともに、エビ5から生じるドリップ51を分離して貯留部3に貯留する。この際、食品包装容器10は、通常、吊り下げ孔13にフック(図示せず)が掛けられ、吊るされた状態で加熱殺菌されるので、エビ5から生じたドリップ51は、未シール部42を通って貯留部3に落下する。
【0020】
ここで、本実施形態の食品包装容器10に使用する包装容器1は、上述したように、流路を形成した境界部4(
図1参照)を介して収容部2と貯留部3を備えている。このため、加熱殺菌によってエビ5から生じたドリップ51は、この境界部4に形成された流路を経由して、収容部2から貯留部3へ移動する。
これにより、収容部2のエビ5が、水分に接触した状態で過加熱されることを防止することができる。その結果、エビ5に含まれるコラーゲンが分解されるのを抑制でき、エビ5の食感が劣化するのを抑制することが可能になる。
【0021】
次に、食品包装容器10は、冷却工程を経た後に遮断部形成工程に移る。ここで、この冷却工程は、加熱殺菌が行われた食品包装容器10を冷却する工程であり、例えばシャワー冷却方式を用いることができる。このようにレトルト殺菌後の容器を直ちに冷却することで、食品を高温にさらす時間を短時間化でき、食品の品質が劣化することを防止することが可能になる。
この冷却工程においても、食品包装容器10を、収容部2が上方に位置し、貯留部3が下方に位置するように配置する。これにより、収容部2にドリップ51が残存している場合に、これを貯留部3へ移動させることができる。
【0022】
また、遮断部形成工程は、貯留部3に貯留されたドリップ51のエビ5への接触を阻止する遮断部16を形成する工程である。この遮断部形成工程は、包装容器1を、収容部2が上方に位置し、貯留部3が下方に位置するように配置した状態で行われる。
このようにすると、収容部2と貯留部3が水平方向になるように食品包装容器10を配置しても、貯留部3に分離されたドリップ51は、収容部2内の食品に接触できない。したがって、この遮断部形成工程によって、エビ5にドリップ51が接触することによる品質の劣化の防止が可能となる。
【0023】
なお、遮断部16の形成方法は、特に限定されず、市販のヒートシーラーなどを用いて、容器1の収容部2と貯留部3の間をシールすることにより行うことができる。この遮断部16の形成は、冷却工程の後に行えば良く、製品としての食品包装容器10を箱詰めする前に行うことができる。また、遮断部16を形成する前に食品包装容器10を搬送する場合には、貯留部3から収容部2へドリップ51が流入しないように、食品包装容器10を吊した状態など縦方向にして行うことが好ましい。
【0024】
また、遮断部16は、少なくとも、境界部4の流路が形成された位置に設けることができる。このとき、境界部4の流路(未シール部42)上のみに設けても良く、また境界部4全体を覆うように設けても良い。本実施形態では、遮断部16は、シール部41とほぼ同じ幅を有し、未シール部42及びシール部41を覆うように形成してある。このため、
図2では、未シール部42及びシール部41の上に遮断部16を図示してある。このように遮断部16と境界部4を一体化すると、食品包装容器10を、エビ5とドリップ51を一体の製品として提供する際の外観を向上させることができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の食品包装容器10は、上記の包装食品の製造方法によって製造でき、食感等に優れたエビ等の食品を提供することができる。
【0026】
<食品包装容器の第一応用例>
図3において、第一応用例の食品包装容器10aは、上述した食品包装容器10と比べると、遮断部16aが、収容部2の境界部4側の位置に設けられている点等が相違する。なお、本応用例の他の構成は、食品包装容器10とほぼ同様としてある。
したがって、
図3において、
図2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0027】
遮断部16aは、境界部4より上方に形成され、エビ5は、密封用シール部15と遮断部16aとの間に収容されることとなる。
なお、遮断部16aは、
図3において、シール部41より数mmだけ上方に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、図示してないが、吊り下げ孔13のある箇所を、密封用シール部15の位置で切断し、食品が収容された収容部2のみとすることができる。例えば他には、エビ5を上方に移動させ、ヘッドスペース17の上部が密封用シール部15に接する、あるいは、接近する状態とし、ヘッドスペース17の下部の近傍に遮断部16aを形成しても良い。このようにすると、エビ5に対して、切断した食品包装容器10aが大き過ぎるといった不具合を回避でき、また、包装食品10aの下部に境界部4のシール部41及び未シール部42の後が残らないため、製品として提供する際の外観を向上させることができる。
【0028】
このように、本応用例の食品包装容器10aによれば、実施形態の食品包装容器10とほぼ同様の効果を奏するとともに、切断した食品包装容器10aを、充填する食品の量に適したサイズに調整できる。
【0029】
<食品包装容器の第二応用例>
図4において、第二応用例の食品包装容器10bは、上述した食品包装容器10と比べると、遮断部16bが、貯留部3の境界部4側の位置に設けられている点等が相違する。なお、本応用例の他の構成は、食品包装容器10とほぼ同様としてある。
したがって、
図4において、
図2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0030】
遮断部16bは、境界部4より下方に形成され、エビ5は、密封用シール部15と境界部4との間に収容されることとなる。このようにすると、エビ5の一部がドリップ51の流路である未シール部42に侵入している場合であっても、支障なく遮断部16bを形成することができ、品質や生産性などを向上させることができる。
このように、本応用例の食品包装容器10bは、実施形態の食品包装容器10とほぼ同様の効果を奏することができ、さらに、品質や生産性などをも向上させることができる。
【0031】
<食品包装容器の第三応用例>
図5において、第三応用例の食品包装容器10cは、上述した食品包装容器10と比べると、遮断部16cの下方を切断して、エビ5を充填密封した収容部2と、ドリップ51を貯留する貯留部3とする点等が相違する。なお、本応用例の他の構成は、食品包装容器10とほぼ同様としてある。
したがって、
図5において、
図2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0032】
食品包装容器10cは、遮断部16cの下方を切断してあり、エビ5を充填密封した収容部2を有する食品入り包装容器101cと、ドリップ51を貯留する貯留部3を有するドリップ入り包装容器102cとからなっている。
このようにすると、エビ5の加工工場において、食品入り包装容器101cの形態で出荷することができる。また、ドリップ入り包装容器102cは、上部が開口しているので、ドリップ51を別の容器に容易に回収することができる。なお、回収したドリップ51は、調味料の原料等として利用することができる。
【0033】
このように、本応用例の食品包装容器10cは、実施形態の食品包装容器10とほぼ同様の効果を奏するとともに、ドリップ51を取り外した状態で出荷することができる。これにより、商品としての利便性を向上させることができ、また、運送費用等を低減することができる。
【0034】
<食品包装容器の第四応用例>
図6において、本応用例の食品包装容器10dは、上述した食品包装容器10と比べると、遮断部16dを切断して、エビ5を充填密封した収容部2と、ドリップ51を貯留密封した貯留部3とする点等が相違する。なお、本応用例の他の構成は、食品包装容器10とほぼ同様としてある。
したがって、
図6において、
図2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0035】
食品包装容器10dは、遮断部16dを切断してあり、エビ5を充填密封した収容部2を有する食品入り包装容器101dと、ドリップ51を貯留密封する貯留部3を有するドリップ入り包装容器102dとからなっている。
このようにすると、エビ5の加工工場において、食品入り包装容器101dと調味料の原料等に使用されるドリップ入り包装容器102dの形態としてそれぞれ出荷することができる。
なお、遮断部16dは、シール部41のほぼ二倍の幅を有し、未シール部42及びシール部41を覆うように形成してある。これにより、遮断部16dは、遮断部16の約2倍の幅を有しており、切断されても密封性が低下しない構造としてある。
【0036】
このように、本応用例の食品包装容器10dは、実施形態の食品包装容器10とほぼ同様の効果を奏するとともに、ドリップ51を取り外した状態で出荷することができ、商品としての利便性を向上させることができ、また、運送費用等を低減することができる。さらに、ドリップ入り包装容器102dを調味料の原料等として出荷することができ、ドリップ51を有効活用することが可能となる。
【0037】
本発明は、以上の実施形態や応用例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、実施形態ではエビ5を用いているが、肉が表皮膜により被覆されてなるその他の食品、例えば甲殻類、貝類、魚類、肉類、ソーセージのような羊腸で覆われた加工肉のような食品を用いて、加熱殺菌による食感の劣化を抑制させるなど適宜変更することが可能である。
また、境界部4は、本実施形態においてはシール部41及び未シール部42の形態としたが、ドリップ51の流路を形成できる形態であれば特に限定はなく、株式会社クラレのマジロック(登録商標)のようなジッパー形状でジッパーの間を水が通る形態のものや、フィルター状のろ紙のような役割を担う形態のものを用いても良い。
【0038】
更に、遮断部16は貯留部3に分離されたドリップが貯留部2に流入しないように形成されていれば良く、その幅は適宜選択すればよい。
また、遮断部16を切断工程で切断せず、遮断部16に沿ってミシン目、スリット、スコア等、あるいは上記記遮断部16、遮断部16の下方、又は遮断部16の上方の側部の溶着部12にミシン目、スリット、スコア、切欠等からなる易切断部を設けて、食品入り包装容器とドリップ入り包装容器を一つの形態とした商品とすることもできる。この場合、消費者は易開封部によって各容器を手で容易に切り離すことができ、ドリップ51を調味料等として利用したい消費者にとっては、商品としての付加価値を大幅に向上させることができる。
更には、本発明においては、
図1に示すようにパウチに予めシール部41と未シール部42からなる境界部4を形成してパウチ上部を収容部2としていたが、通常一般的に用いられる境界部4が形成されていないパウチを用い、パウチ下部に食品を充填した後、食品の上方にヒートシーラー等で境界部4を設けて収容部と貯留部を作成し、真空密着を行った後に収容部に気体を注入して貯留部上端を密封し、パウチの上下を逆にして加熱殺菌工程に供しても良い。