(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
本発明が適用された逆走警報システム1は、乗用車等の車両(自車両)に搭載され、自車両が法(走行区分)によって定められた方向と反対の方向に走行する逆走を検出し、逆走を検出した場合に、自車両の運転者や自車両外の他の車両に警報を行うシステムである。
【0014】
詳細には、
図1に示すように、逆走警報システム1は、逆走警報装置10と、車載カメラ21と、ナビゲーション装置25と、音波発生装置31と、ハザード点滅装置32と、メータパネル装置33と、ハンドル振動装置34と、ステアリング制御装置35と、ブレーキ制御装置36と、エンジン制御装置37と、道路交通情報掲示板38と、を備えている。
【0015】
車載カメラ21は、進行方向を撮像する周知のカメラとして構成されている。車載カメラ21は、例えば30fps(frame per second)の周期で撮像を行い、撮像画像を逆走警報装置10に送るよう設定されている。
【0016】
ナビゲーション装置25は、周知のナビゲーション装置としての機能を備えている。また、ナビゲーション装置25は、後述する道路区分の情報や道路形態の情報を蓄積しており、現在地に対応するこれらの情報を逆走警報装置10に送る。
【0017】
音波発生装置31は、逆走警報装置10からの指令に従って、音声や警報音等の音波を発生させる。
ハザード点滅装置32は、逆走警報装置10からの指令に従って、ハザードランプを点滅させる。
【0018】
メータパネル装置33は、逆走警報装置10からの指令に従って、自車両が逆走していることの警報表示を行う。
ハンドル振動装置34は、逆走警報装置10からの指令に従って、ハンドル内に組み込まれたバイブレーション装置を作動させ、運転者に警告を与える。
【0019】
ステアリング制御装置35、ブレーキ制御装置36、およびエンジン制御装置37は、それぞれステアリング、ブレーキ、エンジンを制御することによって自車両を自動運転するための構成である。これらの各装置35〜37は、逆走警報装置10からの指令に従って、自車両を自動停止させる際に自車両を安全に停車させる。
【0020】
道路交通情報掲示板38は、逆走警報装置10から自車両が逆走している旨の信号を受けると、周囲の車両に逆走車が存在する旨を自身の電光掲示板等の表示部に表示させる。
逆走警報装置10は、CPU11と、ROM、RAM等のメモリ12とを備えたコンピュータとして構成されている。CPU11は、メモリ12の記録されたプログラムに従って、後述する逆走警報処理等の各種処理を実行する。
【0021】
また、メモリ12内には多数の道路標識のデータベースを備える。このデータベースは、道路標識をパターンマッチング等の手法で認識するためのものであり、自車両が使用される地域において設置されている道路標識の大部分の画像データが記録されている。
【0022】
また、メモリ12内には、道路標識の裏側の特徴的な模様(例えば道路標識を支持する支柱および支柱と道路標識を接続して固定する固定金具)についての画像データや、中央分離帯を識別するための画像データについても記録されている。
【0023】
[本実施形態の処理]
このように構成された逆走警報システム1において、逆走警報装置10(CPU11)は、
図2に示すように、車載カメラ21による撮像画像から、道路標識らしい物標(標識候補(有効標識51,52))を抽出し、これらの標識候補のうちの、道路標識を表す文字または記号を示す標識シンボルを認識できた文字有標識51の割合に応じて自車両が逆走しているか否かを判定する。なお、
図2において符号55は中央分離帯、符号100は自車両を示す。
【0024】
この処理は
図3,
図4に示す逆走警報処理として実施する。逆走警報処理は、例えば自車両の電源が投入され、逆走警報システム1が起動すると開始される処理であり、その後、一定周期毎に繰り返し実施される。
【0025】
この逆走警報処理では、まず、車載カメラ21による撮像画像を取得する(S110)。続いて、ナビゲーション装置25から道路区分を取得する(S120)。ここで、道路区分とは、
図5に示すように、高速道路または自動車道、これら以外の一般道に区分され、一般道においては一方通行路であるか否かについても区分される。
【0026】
また、ナビゲーション装置25からは、道路区分だけでなく、道路形態についても取得される。道路形態とは、
図5に示す道路環境、通行区分、中央分離帯の有無等の情報を示す。
【0027】
続いて、道路区分や道路形態に応じて閾値を設定する(S130)。この処理では、
図5に示すように、道路区分が高速道路または自動車道であって、道路形態が本線の交互通行である場合、閾値をmap1HHに設定する。
【0028】
また、道路形態が本線の片側複線道路で中央分離帯有である場合、閾値をmap1Mに設定する。さらに、道路形態が本線の片側複線道路で中央分離帯無である場合、閾値をmap1Hに設定する。
【0029】
また、道路形態が誘導路である場合、閾値をmap1LLに設定し、道路形態が料金所付近である場合、閾値をmap1Hに設定する。ここで、各閾値の大小関係は、map1HH > map1H > map1M > map1LLとなる。
【0030】
また、道路区分が一般道であって、道路形態が市街地の交互通行の場合、閾値をmap2HHに設定する。また、道路形態が市街地本線の片側複線道路で中央分離帯有である場合、閾値をmap2Mに設定する。さらに、道路形態が市街地本線の片側複線道路で中央分離帯無である場合、閾値をmap2Hに設定する。
【0031】
また、道路形態が郊外である場合、閾値をmap2Hに設定し、道路形態が山間部道路である場合、閾値をmap2Mに設定する。ここで、各閾値の大小関係は、map2HH > map2H > map2Mとなる。また、map1に関する閾値とmap2に関する閾値とは、全体的にmap2に関する閾値が高めの値に設定される。
【0032】
すなわち、この処理では、経験的に外乱が多くなる環境では閾値を高く設定することで逆走であると判定されにくくして誤検出を抑制する。一方で、外乱が少なくなる環境では、閾値を低く設定して確実に逆走を検出できるようにしている。
【0033】
ここで外乱とは、文字有標識の割合を演算する際に、演算の精度に悪影響を与えうる要素を示す。なお、道路区分が一方通行路において自車両が逆走している場合には、例外的に最高レベル(後述するSTEP3)の警報を行うように、極端に小さな値の閾値を設定する。
【0034】
続いて、撮像画像から道路標識らしい物標を抽出する(S210)。この処理では、例えば、撮像画像中の物標の大きさ、形状、色彩、模様等のパラメータのうちの少なくとも1つを利用して、道路標識として予め記録されたパラメータと一致する度合いが基準値よりも高いものを道路標識らしい物標(標識候補)としてメモリ12に記録させる。
【0035】
ここで、撮像画像中には含まれるものの、大きさが小さ過ぎるなどして標識候補とならなかった標識は、
図2において無効標識53と表記している。また、標識候補となったものは、
図2に示す有効標識51,52と表記しており、以下の処理でさらに分類される。
【0036】
続いて、道路端を認識する(S220)。ここで、道路端は、自車両が走行する道路の左右の端部を示し、白線や縁石等を示す。道路端は周知の画像処理技術を用いて認識される。
【0037】
続いて、中央分離帯を認識する(S230)。この処理では、中央分離帯の有無の情報や、中央分離帯を構成する構造物(ガードレールや植え込み等)をパターンマッチング等の画像処理で検出することによって認識する。
【0038】
続いて、除外エリアを設定する(S240)。ここで、除外エリアとは、標識候補を以後の処理において除外するための領域を示す。例えば、
図6(a)に示すように、両方の道路端の位置から標識が配置されると推定される範囲を隔てた部位に境界を設け、この境界の外側の領域(
図6(a)においてハッチングで示す領域)を除外エリアとする。
【0039】
続いて、標識種別を認識する(S250)。この処理では、予め道路標識としてメモリ12に記録された道路標識のデータベースに従って、標識候補が何れの道路標識に該当するか、また、何れの道路標識にも該当しないかを認識する。
【0040】
この処理において、道路標識に該当すると判定された標識候補は、
図2では有効標識(文字有)51と表記している。また、標識が裏向きであるなどして道路標識に該当しないと判定された標識候補は、
図2では有効標識(文字無)52と表記している。
【0041】
続いて、外乱の除去を行う(S260)。具体的に外乱として除去されるものとしては、(1)非常電話の位置を示す位置指示標識、(2)車両のためだけでなく歩行者のためにも設置されている標識(横断禁止、安全地帯、歩行者専用道路、横断歩道、歩行者専用信号標識、消火栓等、両面標識として予め設定されたものを含む)、(3)中央分離帯に設置された標識、(4)並行する他の道路を走行する車両に対する標識、(5)道路周辺の店舗看板等、が該当する。
【0042】
なお、高速道路等において設置されている電光式標識やカバー付標識(必要なときだけ情報が表示されるもの)も有効標識とするが、原則、情報表示している時のみ有効標識とし、情報表示していないときは外乱として除去する。ただし、標識の色合い等により表示板の表示面と裏面が明確に切り分けられる場合は、情報表示していない時も有効標識とする。
【0043】
上記(1)(2)の外乱については、外乱となる道路標識を予めメモリ12に登録しておき、これらの道路標識に該当することをパターンマッチングで認識できた場合に外乱として除去する。また、上記(3)の外乱については、中央分離帯に配置される特有の標識(例えば距離を示す標識等)をパターンマッチングによって認識して除去する。
【0044】
また、上記(3)の外乱については、中央分離帯をパターンマッチング(ガードレールの形状等による画像処理)等によって認識し、その付近の標識を中央分離帯に設置されたものとして除外してもよい。加えて、上記(4)の外乱については、前述の除外エリアに属する標識候補を除去する。
【0045】
さらに、上記(5)の外乱については、標識候補を抽出する際に標識候補として抽出されないよう色や形状を設定しておくことで除去しておくことができる。なお、本処理において除去した標識候補については、後述する処理においては有効標識でないものとして取り扱う。
【0046】
続いて、自車両が他車両の追い越し中であるかどうかを認識する(S270)。この処理では、自車両の道路上の位置や他車両との位置関係を時系列に従って監視し、自車両が走行車線から追い越し車線に移動し、走行車線に他車両がいる場合、追い越し中であると認識する。追い越し中である旨はメモリ12に記録され、追い越しが終了するとこの記録が削除される。
【0047】
続いて、自車両が他車両の追い越し中であるか否かを判定する(S280)。自車両が他車両の追い越し中であれば(S280:YES)、警報を行うことなく逆走警報処理を終了する。また、自車両が他車両の追い越し中でなければ(S280:NO)、有効標識の表裏判別を行う(S310)。
【0048】
この処理では、有効標識のうちのパターンマッチングで標識が認識できた、有効標識(文字有)に該当するものを表とする。有効標識のうちの標識シンボルが認識できなかった(表ではない)、またはパターンマッチングで標識の裏側と認識できた、有効標識(文字無)に該当するものを裏とする。例えば、標識候補の領域に、支柱と継ぎ目(金具)とが認識された場合や、全体的な色がグレーやシルバーである場合、裏側として認識する。
【0049】
続いて、表裏出現率の演算を行う(S320)。本実施形態のように、車載カメラ21が自車両の進行方向を撮像する場合には、文字無標識出現率(有効標識(文字無)の出現率)を、下記式を用いて演算する。
【0051】
なお、車載カメラ21は自車両の進行方向と反対側(自車両後方)を撮像してもよい。このように車載カメラ21が自車両の進行方向と反対側を撮像する場合には、文字無標識出現率に換えて、文字有標識出現率(有効標識(文字有)の出現率)を演算し、以下の処理において、文字無標識出現率に換えて、文字有標識出現率を利用すればよい。
【0052】
なお、撮像時刻nにおける有効標識数をVTS(n)、文字無標識数VTSNC(n)、文字無標識出現率RR(n)とすると、撮像時刻(n−3)〜(n+3)における各値は、
図7に示すように表すことができる。
【0053】
ここで、例えば、下記式(2)に示すように、フィルタリングを行うことで、文字無標識出現率RRD(n)を求める。
【0055】
上記式(2)は、文字無標識出現率RR(n)を4フレーム分平均化したものである。なお、平均化を行う際のフレーム数は、任意に設定することができる。また、下記式(3)に示すように、過去の有効標識数と文字無標識数とをそれぞれ積算してから除算するようにしてもよい。
【0057】
また、式(3)において、各項に重み付け定数w(n)を乗じるようにしてもよい。
【0059】
なお、式4において重み付け定数w(n)は、例えば、現在時刻に近いデータほど重み付けを大きく設定される。
続いて、閾値との大小比較による警報判定を行う(S330)。この処理では、前述の文字無標識出現率RRD(n)と、
図5に示す表にて設定した閾値(ここではこの閾値をrrd(100%)と表記している。)とを比較し、文字無標識出現率RRD(n)が閾値以上となる場合に、100%逆走していると判定する。
【0060】
この場合には、後述する式(7)の関係を満たす場合の処理に加えて、安全上取り得る最大限の処理を行う。例えば、クラクションを鳴らしたり、警察署等の緊急通報を行ったりするよう設定する。
【0061】
なお、車載カメラ21は自車両の進行方向と反対側(自車両後方)を撮像する場合には、文字有標識出現率を利用すればよい旨を上記に述べたが、文字有標識出現率を利用することなく、文字無標識出現率を利用して演算を行うこともできる。このようにする場合には、閾値rrdを負論理(rrd‘(後方)=1−rrd(前方))に変換し、大小比較を行う際の不等号の向きを反対にすればよい。
【0062】
続いて、閾値との大小、割合による警報段階(警報内容)を選択する(S340)。この処理では、前述の文字無標識出現率RRD(n)と、
図5に示す表にて設定した閾値の定数倍の値との関係に応じて警報内容を設定する。
【0064】
例えば、上記式(5)の関係を満たす場合には、逆走注意警告を行うよう設定する。逆走注意警告は、最も軽度な警報を示し、例えば、音波発生部31によりチャイム音やブザー音、或いは音声で「逆走の可能性があります」と警報出力すること等を示す。また、メータパネル装置33に警報の表示を行うことを示す。
【0066】
例えば、上記式(6)の関係を満たす場合には、逆走確認勧告を行うよう設定する。逆走確認勧告は、逆走注意警告よりも注意を引く警報音や音声を発することを示す。また、より注意を引く表示や、ハンドル振動装置34を利用して運転者の身体に直接働きかけを行うことを示す。
【0068】
例えば、上記式(7)の関係を満たす場合には、逆走確定警告を行うよう設定する。逆走確定警告は、逆走確認勧告における作動に加えて、ハザード点滅装置32を作動させたり、ステアリング制御装置35、ブレーキ制御装置36、エンジン制御装置37等に対して自車両を停車させるための停車指令を送信したりする。
【0069】
さらに、道路交通情報掲示板38(等のインフラ設備)に対して逆走している旨を出力し、道路交通情報掲示板38に逆走車がいる旨を表示させる。なお、逆走している旨を車外に出力した場合、運転者には例えば、「あなたの車両が逆走車であることを周囲に警報しました。あなたの安全と周囲の安全を確保してください。」というような、自車両の運転者に自身の安全確保を求めるメッセージを音声で出力する。
【0070】
なお、道路交通情報掲示板38に対して逆走している旨を出力する際には、周辺の他車両39(
図1参照)に対して車車間通信を利用した通信を行い、これらの他車両39に対して逆走している旨を出力してもよい。
【0071】
続いて、警報を実施するか否かを判定する(S350)。この処理では、文字無標識出現率と前述の閾値との大小関係に従って判定を行う。
警報を実施する場合(S350:YES)、警報を出力する(S360)。ここでの警報は、先述の設定に従う。また、警報を実施しない場合には(S350:NO)、S370の処理に移行する。
【0072】
続いて、警報停止判定を行う(S370)。この処理は、出力した警報を停止させるか否かを設定するための処理である。詳細には、運転者が警報のキャンセル操作を行った場合や、自車両が停車した場合等に、警報を停止させると判定する。
【0073】
続いて、警報を停止させるよう設定されたか否かを判定する(S380)。警報を停止させると設定されていれば(S380:YES)、警報を停止させるための信号を、警報を行うよう出力したハードウェアに対して出力し(S390)、逆走警報処理を終了する。
【0074】
また、警報を停止させると設定されていなければ(S380:NO)、警報停止処理を実行せず、逆走警報処理を終了する。
[本実施形態による効果]
上記のように詳述した逆走警報システム1において逆走警報装置10は、自車両の前方または後方を撮像した撮像画像から道路標識の形状を有する1または複数の標識候補を抽出し、標識候補の領域内のそれぞれから、道路標識を表す文字または記号を示す標識シンボルを認識し、標識シンボルが認識できた確率を演算する。そして、標識候補のうち、標識シンボルが認識できた確率に基づいて自車両が逆走しているか否かを判定する。
【0075】
このような逆走警報システム1によれば、標識候補から標識シンボルが認識できた確率を用いて逆走を検出するので、高速道路に限らず、自動車が走行する種々の環境において逆走を検出することができる。また、アルゴリズムが単純であるため、本発明を簡素かつ安価に構成することができる。
【0076】
また、逆走警報装置10は、標識シンボルが認識できた確率に基づいて自車両が逆走しているか否かを、自車両が逆走している確率(文字無標識出現率RRD(n))で出力する。
【0077】
このような逆走警報システム1によれば、逆走しているか否かを確率で出力するので、逆走している確率に基づく細やかな処理を行うことができる。
さらに、逆走警報装置10は、標識候補から予め設定された特定の標識シンボルが認識された場合、この標識候補を確率の演算対象から除外する。
【0078】
このような逆走警報システム1によれば、例えば、歩行者が視認するための標識(両面標識)等の特定の標識シンボルを外乱として除去することができる。よって、逆走の判定精度を向上させることができる。
【0079】
また、逆走警報装置10は、歩行者を対象とする道路標識および双方向から視認可能な両面標識のうちの少なくとも一方を確率の演算対象から除外する。
このような逆走警報システム1によれば、逆走の判定に支障を来す可能性がある標識を演算対象から除外するので、より精度よく自車両の逆走を判定することができる。
【0080】
さらに、逆走警報装置10は、自車両が走行する道路の左右の端部を表す道路端を認識し、標識候補から道路端によって設定される範囲外に位置するものを除外する。
このような逆走警報システム1によれば、道路端によって設定される範囲外(例えば、道路よりも外側に位置する道路標識が含まれる程度の範囲の外部)における道路標識については外乱として除去することができる。よって、自車両が走行する道路に並行する並行路における道路標識や、中央分離帯がある道路において中央分離帯を隔てて位置する道路標識等を除去した上で標識シンボルを認識できた確率を演算することができる。したがって、逆走の判定精度を向上させることができる。
【0081】
また、逆走警報装置10は、自車両が走行する道路区分を取得し、道路区分に基づいて逆走判定閾値を設定する。そして、標識シンボルが認識できた確率と逆走判定閾値とを比較することによって、自車両が逆走しているか否かを判定する。
【0082】
すなわち、道路区分によって反対車線の標識シンボルが撮像画像に含まれやすいかどうかが変化するため、標識シンボルを認識できる確率は道路区分によって変化する。このため、道路区分によって逆走をしているか否かを判定する際に利用する閾値を変化させる。
【0083】
このような逆走警報システム1によれば、走行区分に応じた適切な閾値を設定することができるので、逆走の判定精度を向上させることができる。
なお、逆走の判定結果を確率で出力する際には、1または複数の閾値との比較結果に応じて判断すればよい。
【0084】
さらに、逆走警報装置10は、逆走の判定結果に応じて警報を行うハードウェアを作動させ、自車両が逆走している確率に応じて警報の態様を設定し、この態様でハードウェアを作動させる。
【0085】
このような逆走警報システム1によれば、自車両が逆走する確率に応じて警報の態様を設定するので、確率が低い場合でも警報を行うことができ、誤警報を行った際の乗員への悪影響を軽減することができる。
【0086】
また、逆走警報装置10は、予め設定された運転者による操作を検出し、この操作を検出すると警報手段によるハードウェアの作動を停止させる。
このような逆走警報システム1によれば、運転者が所定の操作を行ったときには警報を停止させることができる。
【0087】
さらに、逆走警報装置10は、逆走の判定結果に応じて自車両内および自車両外の少なくとも何れかに判定結果に応じた信号を出力する。
このような逆走警報システム1によれば、自車両が逆走している際に自車両の内外において警報を行うことができる。例えば、自車両外に判定結果に応じた信号を送信する場合、電光掲示板や他車両のディスプレイ等に逆走車が存在する旨を表示させることができる。
【0088】
また、逆走警報装置10は、車両外の報知装置(例えば、道路において配置された電光掲示板や他車両に搭載された警報装置等)に自車両の逆走を報知させるための信号を出力する。
【0089】
このような逆走警報システム1によれば、逆走を行った場合に自車両の逆走を他車両等に報知させることができる。
さらに、逆走警報装置10は、自車両が逆走していると判定された場合に、自車両を停車させる旨の信号を出力する。
【0090】
このような逆走警報システム1によれば、逆走を行った場合に自車両を停車させることができる。
さらに、逆走警報装置10は、自車両が他車両の追い越しを行っているか否かを判定し、自車両が追い越しを行っていると判定された場合、自車両が逆走していると判定されることを禁止する。
【0091】
このような逆走警報システム1によれば、他車両の追い越し時に一時的に反対車線を走行する場合に、逆走であると誤判定されることを抑制することができる。
また、逆走警報装置10は、標識候補の領域内のそれぞれから、道路標識の裏面の特徴として予め設定された形状または色を認識し、標識候補のうちの裏面の特徴が認識できたもの、および標識候補のうちの標識シンボルが認識できなかったものを、標識シンボルが認識できなかったものとして演算を行う。
【0092】
このような逆走警報システム1によれば、標識の裏面を積極的に認識するので、文字無標識の識別精度を向上させることができる。
[その他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態によって何ら限定して解釈されない。また、上記の実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略した態様も本発明の実施形態である。また、上記の複数の実施形態を適宜組み合わせて構成される態様も本発明の実施形態である。また、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される発明の本質を逸脱しない限度において考え得るあらゆる態様も本発明の実施形態である。また、上記の実施形態の説明で用いる符号を特許請求の範囲にも適宜使用しているが、各請求項に係る発明の理解を容易にする目的で使用しており、各請求項に係る発明の技術的範囲を限定する意図ではない。
【0093】
例えば、上記実施形態において標識シンボルが認識できた確率を演算する際には、複数の撮像画像の中の1または複数の標識候補から標識シンボルが認識できた確率を採用したが、1の撮像画像の中の複数の標識候補から標識シンボルが認識できた確率を採用してもよい。
【0094】
また、上記実施形態においては、S260の処理において除外エリアに位置する標識候補を除外したが、S250の処理(標識候補に含まれる標識を認識する処理)を実施する前に、除外エリアに位置する標識候補を除外してもよい。
【0095】
さらに、上記実施形態においては、道路端の位置に応じて除外エリアを設定したが、例えば、中央分離帯が存在する道路においては、
図6(b)に示すように、中央分離帯そのものを除外エリアとしてもよい。詳細には、左右の道路端のうちの中央分離帯が存在しない道路端(
図6(b)では右側)においては、この道路端の位置から標識が配置されると推定される範囲を隔てた部位に境界を設け、この境界の外側の領域を除外エリアとする。
【0096】
また、中央分離帯が存在する道路端においては、この中央分離帯自体が除外エリアになるよう境界を設定する。すなわち、中央分離帯を隔てた位置に存在する道路標識および中央分離帯に存在する道路標識については標識候補から除外する。
【0097】
このようにするとよいのは、中央分離帯には逆走判定をする際に必要なる標識が配置されている可能性が低く、むしろ外乱となる標識が多い傾向があるためである。
このような逆走警報システム1によれば、逆走を判定する際に不要となる標識を除外できるので、より精度よく逆走を判定することができる。また、中央分離帯にある標識だけでなく、中央分離帯を隔てた位置に存在する標識についても外乱として除去するので、演算結果をより顕著な値にすることができ、逆走の判定精度を向上させることができる。
【0098】
[実施形態の構成と本発明の手段との対応関係]
上記実施形態の構成のうち、逆走警報装置10は本発明でいう逆走検出装置に相当する。また、逆走警報装置10が実行する処理のうち、上記実施形態におけるS120の処理は本発明でいう道路区分取得手段に相当し、上記実施形態におけるS130の処理は本発明でいう閾値設定手段に相当する。
【0099】
さらに、上記実施形態におけるS210の処理は本発明でいう標識候補抽出手段に相当し、上記実施形態におけるS220の処理は本発明でいう道路端認識手段に相当する。また、上記実施形態におけるS230の処理は本発明でいう分離帯情報取得手段に相当し、上記実施形態におけるS240、S260の処理は本発明でいう分離帯候補除外手段に相当に相当する。また、上記実施形態におけるS260の処理は本発明でいう特定シンボル除外手段に相当する。
【0100】
さらに、上記実施形態におけるS240、S260の処理は本発明でいう道路端外除外手段に相当し、上記実施形態におけるS250、S310、S320の処理は本発明でいうシンボル認識手段に相当する。また、上記実施形態におけるS270の処理は本発明でいう追い越し判定手段に相当し、上記実施形態におけるS280の処理は本発明でいう判定禁止手段に相当に相当する。また、上記実施形態におけるS310の処理は本発明でいう裏面認識手段に相当する。
【0101】
さらに、上記実施形態におけるS330の処理は本発明でいう逆走判定手段に相当し、上記実施形態におけるS360の処理は本発明でいう警報手段に相当し、上記実施形態におけるS360の処理は本発明でいう信号出力手段に相当する。また、上記実施形態におけるS370の処理は本発明でいう操作検出手段に相当し、上記実施形態におけるS390の処理は本発明でいう警報停止手段に相当する。