(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置の一例を
図1〜
図9に従って説明する。なお図中に示す矢印Vは、鉛直方向であって装置上下方向を示し、矢印Hは水平方向であって装置幅(装置左右)方向を示し、矢印Dは水平方向であって装置奥行方向を示す。
【0017】
(全体構成)
本実施形態に係る画像形成装置10では、
図9に示されるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)による画像形成を行う画像形成手段の一例としての画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kが、画像形成装置10の筐体11内の中央側で装置幅方向に対して斜め左下方向へ向けて配列されている。なお、画像形成ユニット12の配置順は、右上から左下へ向けて、Y、M、C、Kとなっている。
【0018】
また、各画像形成ユニット12Y〜12Kは、収容される各色のトナーを除いて同様の構成となっている。したがって、以後の説明では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色を区別するときには、数字の後にY、M、C、Kの英字を付加した符号で説明するが、各色を区別する必要がない場合は、数字の後のY、M、C、Kの英字は省略する。
【0019】
各画像形成ユニット12Y〜12Kの上方には、各画像形成ユニット12Y〜12Kで形成されたトナー像(画像)を記録媒体の一例としてのシート部材Pに転写させる転写ユニット14が設けられている。転写ユニット14は、無端状の中間転写ベルト16と、中間転写ベルト16の内側に配置され、各画像形成ユニット12Y〜12Kの各トナー像を中間転写ベルト16に転写させるための4つの一次転写ロール18Y、18M、18C、18Kと、中間転写ベルト16上で重ねられたトナー像をシート部材Pに転写させるための二次転写ロール20とを含んで構成されている。
【0020】
中間転写ベルト16は、二次転写ロール20と対向して配置され、図示しないモータで駆動される駆動ロール26と、回転可能に支持された支持ロール22とに巻き掛けられており、駆動ロール26が、図示しないモータで駆動されて回転することにより、中間転写ベルト16が矢印A方向(図示の時計回り方向)に循環移動されるようになっている。
【0021】
各一次転写ロール18Y〜18Kは、中間転写ベルト16を挟んで、それぞれの画像形成ユニット12Y〜12Kの後述する像保持体28と対向して配置されている。そして、各一次転写ロール18Y〜18Kには、トナー極性とは逆極性(本実施形態では一例として正極性)の転写電圧が印加されるようになっている。
【0022】
また、二次転写ロール20にも、トナー極性とは逆極性の転写電圧が付与されるようになっている。なお、中間転写ベルト16の支持ロール22が設けられている位置の外周面には、図示しないクリーニング装置が設けられており、このクリーニング装置によって、中間転写ベルト16上の残留トナーや紙粉等が除去されるようになっている。
【0023】
一方、画像形成ユニット12の下方には、シート部材Pが収納された給紙部46が設けられている。また、給紙部46の左端部から鉛直上方向には、シート部材Pが搬送される用紙搬送路50が設けられている。
【0024】
用紙搬送路50には、シート部材Pを給紙部46から送り出す送出ロール48と、シート部材Pを搬送する一対のロールで構成された搬送ロール52と、中間転写ベルト16上の画像の移動タイミングとシート部材Pの搬送タイミングとを合わせる一対のロールで構成された位置合わせロール54とが設けられている。
【0025】
そして、給紙部46から送出ロール48によって順次送り出されたシート部材Pは、用紙搬送路50を経由し、位置合わせロール54によって中間転写ベルト16の二次転写位置まで搬送されるようになっている。
【0026】
用紙搬送路50上における二次転写ロール20の下流側(上方)には、定着装置60が設けられている。定着装置60は、シート部材Pに転写されたトナー画像をシート部材Pに定着させるようになっている。なお、定着装置60については、詳細を後述する。
【0027】
また、用紙搬送路50上で定着装置60の下流側には、定着後のシート部材Pを筐体11の外側へ排出する一対のロールで構成された排出ロール66が設けられており、排出ロール66で排出されたシート部材Pは、筐体11の上面に形成された排出部67に排出されるようになっている。なお、筐体11内で、転写ユニット14の上方には、画像形成装置10の各部の駆動制御を行う制御部36が設けられている。
【0028】
次に、画像形成ユニット12について説明する。
【0029】
図8で示すように、画像形成ユニット12は、矢印B方向(図示の反時計回り方向)に回転駆動される像保持体28と、像保持体28の外周面に接触して像保持体28を帯電させる帯電ロール72と、像保持体28の外周面に露光光を照射して静電潜像を形成する露光手段の一例としての露光ユニット70と、像保持体28の外周面の静電潜像をトナーで現像する現像ロール78と、転写後の像保持体28の外周面に光を照射して除電を行う除電ランプ74と、除電後の像保持体28の外周面を清掃するクリーニングブレード76とを有している。
【0030】
また、帯電ロール72、露光ユニット70、現像ロール78、除電ランプ74、クリーニングブレード76は、それぞれ像保持体28の外周面と対向して、像保持体28の回転方向上流側から下流側へ向けて、この順番で配置されている。
【0031】
さらに、帯電ロール72に対して像保持体28と反対側には、帯電ロール72の外周面に付着したトナーの外添剤などを取り除くためのクリーニングロール68が回転可能に設けられている。帯電ロール72は、図示しない通電手段に接続されており、従動回転しながら画像形成時に通電され、像保持体28の外周面を帯電させるようになっている。
【0032】
現像ロール78の下側には、図示しないトナー供給部から供給された現像剤(一例として、樹脂製のトナーと金属製のキャリアの混合物)を撹拌(混合)して現像ロール78に供給する螺旋状の2本の搬送部材38が設けられている。また、現像ロール78の外周面と対向して薄層形成ロール24が設けられている。
【0033】
薄層形成ロール24は、像保持体28よりも現像ロール78の回転方向の上流側で、現像ロール78の外周面と間隔を空けて配置されており、現像ロール78の外周面上における現像剤の通過量を規制して、現像ロール78上に予め決められた厚さの現像剤層(薄層)を形成するようになっている。
【0034】
現像ロール78は、固定されたマグネットロール(図示省略)と、マグネットロールの外側で回転可能に設けられた筒状の現像スリーブ(図示省略)とで構成されている。なお、現像ロール78と像保持体28との間には、現像時に電圧が付与されて電界が形成され、現像ロール78は、回転しながら現像剤中のトナーを像保持体28の静電潜像に向けて移動させるようになっている。
【0035】
また、画像形成ユニット12は、下ハウジング13と上ハウジング15とで構成される本体部を有している。下ハウジング13には、現像ロール78、搬送部材38、薄層形成ロール24が設けられており、上ハウジング15には、像保持体28、露光ユニット70、帯電ロール72、クリーニングロール68、クリーニングブレード76、除電ランプ74が設けられている。
【0036】
(全体構成の作用)
次に、本実施形態に係る画像形成装置10の作用について説明する。
【0037】
まず、画像形成装置10の画像形成工程について説明する。
図9で示されるように、画像形成装置10の各ユニットが作動状態になると、制御部36で画像処理が施された画像データは、各色の色材階調データに変換され、露光ユニット70に順次出力される。
【0038】
各色の色材階調データに応じて露光ユニット70が各露光光を出射し、帯電ロール72によって帯電した各像保持体28の外周面を露光する。これにより、各像保持体28の外周面に静電潜像が形成される。
【0039】
各像保持体28の外周面に形成された静電潜像は、現像ロール78によってそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像(現像剤像)として現像(顕在化)される。そして、各画像形成ユニット12Y〜12Kの像保持体28上に順次形成された各色のトナー像は、4つの一次転写ロール18Y〜18Kによって中間転写ベルト16上に順次多重転写される。
【0040】
中間転写ベルト16上に多重転写された各色のトナー像は、給紙部46から搬送されてきたシート部材P上に二次転写ロール20によって二次転写される。そして、シート部材P上の各色のトナー像が定着装置60で定着され、定着後のシート部材Pは、排出ロール66によって排出部67に排出される。
【0041】
なお、トナー像の一次転写が終了した後の像保持体28の外周面は、クリーニングブレード76によって残留トナーや紙粉等が除去される。
【0042】
(定着装置)
次に、定着装置60について説明する。
【0043】
図1に示されるように、定着装置60は、シート部材Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体122を備えている。さらに、定着装置60は、筐体112の内部に配置される加圧ロール104と、加圧ロール104と接触し、回転する加圧ロール104と従動して周回する円筒状(無端状)の加熱部材の一例としての定着ベルト102と、を備えている。
【0044】
定着ベルト102は、
図7に示されるように、内周面側から外周面側に向けて非磁性金属層の一例としての基層134、発熱金属層の一例としての発熱層132、非磁性金属層の一例としての保護層130、弾性層128、及び離型層126で構成されており、これらが積層され一体となっている。そして、保護層130、発熱層132、及び基層134の3層で金属層146が構成されている。
【0045】
基層134は、定着ベルト102の強度を保持するベースとなるもので、本実施形態では、非磁性のオーステナイト系のステンレス鋼(非磁性SUS)で構成されている。
【0046】
発熱層132は、後述する磁界H(
図1参照)を打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料であり、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン、又はこれらの合金の金属材料を用いることができる。
【0047】
また、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、
図1に示されるように、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。そして、このボビン108と定着ベルト102との間隔は1〜3mm程度となっている。さらに、ボビン108は、装置奥行方向から見て、定着ベルト102の外周面に倣った略円弧状に形成されており、周方向の中央側には、筐体122の内壁面に向って突出する凸部108Aが形成されている。
【0048】
さらに、ボビン108の凸部108Aを中心としてボビン108に複数回巻き回された励磁コイル110が配置されている。また、励磁コイル110を挟んで定着ベルト102の反対側には、ボビン108の円弧状に倣って形成されたフェライト系の磁性体からなる磁性コア112が配置され、ボビン108に支持されている。
【0049】
一方、定着ベルト102の内側には、非磁性体であるアルミニウムからなる支持部材114が、定着ベルト102と非接触で配置され、装置奥行方向の両端が筐体122に固定されている。
【0050】
この支持部材114は、装置奥行方向から見て、定着ベルト102と対向して円弧状に形成された円弧部114Aと、矩形状に形成された柱部114Bとで構成され、円弧部114Aと柱部114Bは一体成形されている。
【0051】
また、支持部材114の円弧部114Aには、この円弧部114Aに沿って、磁性コア112と同様の材質から構成される磁性コア116が設けられている。磁性コア116は、定着ベルト102と非接触状態となっている。この磁性コア116と磁性コア112との間に、定着ベルト102を貫通した磁界Hによる閉磁路が形成されるようになっている。
【0052】
また、支持部材114の柱部114Bにおいて、円弧部114Aに対して反対側の端面には、加圧ロール104から加圧された定着ベルト102を定着ベルト102の内周面と接触して支持する接触部材118が固定されている。
【0053】
詳細には、この接触部材118は耐熱性を有する樹脂材料で成形され、テフロン(登録商標)シート(図示省略)が設けられた接触部材118の一端面が定着ベルト102の内周面と接触して定着ベルト102の内周面を支持するようになっている。
【0054】
一方、加圧ロール104は、定着ベルト102を接触部材118に向けて加圧すると共に、図示しないモータ及びギアからなる駆動機構により矢印E方向に回転するようになっている。また、加圧ロール104は、図示しないソレノイド等の電磁スイッチ、又はカム機構を用いて矢印J、K方向に移動可能となっており、矢印J方向に移動したときは定着ベルト102の外周面と接触して定着ベルト102を押圧し、矢印K方向に移動したときは定着ベルト102の外周面から離間するようになっている。この加圧ロール104については、詳細を後述する。
【0055】
この構成において、定着装置60では、加圧ロール104が矢印E方向への回転駆動を開始し、定着ベルト102がそれに従動して矢印D方向へ周回する。このとき、励磁コイル110に交流電流が供給されると、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界Hが生成消滅を繰り返す。
【0056】
そして、磁界Hが定着ベルト102の発熱層132を横切ると、磁界Hの変化を妨げる磁界が生じるように発熱層132に渦電流(図示せず)が発生する。これによって定着ベルト102が加熱される。
【0057】
定着ベルト102の表面の温度が予め決められた温度範囲になると、表面にトナー画像が形成されたシート部材Pが、定着ベルト102と加圧ロール104との接触部(ニップ部)に搬送され、トナー画像がシート部材Pに定着されるようになっている。
【0058】
〔要部構成〕
次に、加圧ロール104について説明する。
【0059】
加圧ロール104は、
図1に示されるように、装置奥行方向に延びる円柱状の回転部材の一例としてのシャフト150と、シャフト150が内部に挿入される円筒状の円筒部材の一例としてのロール部材152と、を備えている。
【0060】
[シャフト]
シャフト150は、硫黄複合快削鋼鋼材(SUM材)で形成され、φ18〔mm〕とされている。そして、このシャフト150に回転力が伝達され、加圧ロール104が回転するようになっている。このため、シャフト150から回転力が伝達されるロール部材152の内周面側では、応力が集中するようになっている。
【0061】
[ロール部材]
ロール部材152は、弾性材料で形成される円筒状とされ、本実施形態では、中空体が含有される熱硬化性シリコーンゴムで形成されている。
【0062】
このロール部材152の外径はφ28〔mm〕とされ、内径はφ18〔mm〕とされている。そして、ロール部材152の内部にシャフト150が貫通し、ロール部材152の内周面とシャフト150の外周面とは、図示せぬ接着剤で接着されている。また、ロール部材152の外周面には、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)の表面層154が形成されている。
【0063】
ロール部材152に含有される中空体は、定着ベルト102の熱がロール部材152に吸収されるのを抑制することを目的(断熱性を向上させることを目的)とするものであり、本実施形態では、中空体として、無機材料から形成される中空体であるガラスバルーン(中空シリカ)が用いられている。
【0064】
そして、中空体は、粒子状とされ、粒子中空体の平均粒子径は、15〔μm〕以上110〔μm〕以下とされる。中空体の平均粒子径が15〔μm〕より小さいと、中空体の密度が高くなるため、断熱性の向上度合が少なくなる。一方、中空体の平均粒子径が110〔μm〕より大きいと、中空体の存在によってロール部材152の表面硬度が、ロール部材152に中空体が含有されない場合と比して変化し、トナー画像をシート部材Pに定着する際に、定着不良が発生することがある。なお、平均粒子径とは、所謂メジアン径であって、複数の中空体の粒子径における分布の中央値に対応する粒子径である。なお、ロール部材152に含有される中空体の粒子径については、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
【0065】
また、中空体の耐圧強度は、90%残存強度で5〔MPa〕以上とされている。中空体の耐圧強度が90%残存強度で5〔MPa〕より小さいと、ロール部材152を成形する際の材料練り時に中空体に生じる圧力、又は成型時に中空体に生じる圧力により、中空体が破壊されることがある。なお、ロール部材152に含有される中空体の耐圧強度については、ASTM D−3102に基づき中空体に圧力を加えた際、中空体の90vol%が破壊されずに残る圧力を求めることにより測定することができる。
【0066】
さらに、ロール部材152の単位体積当たりの中空体の含有率は、ロール部材152の内周面側から外周面側にかけて徐々に高くなるようになっている(所謂傾斜構造)。なお、徐々にとは、段階的に含有率が変化することである。
【0067】
定着ベルト102の近くに位置する外周面側では、ロール部材152に中空体が含有されているため、定着ベルト102の熱がロール部材152に吸収されるのが抑制されるようになっている。さらに、シャフト150から回転力が伝達されることで応力が集中する内周面側では、中空体の含有率が外周面側に比して低いため、中空体の破壊により生じるゴム材の破断が抑制されるようになっている。
【0068】
〔加圧ロールの製造方法〕
次に、加圧ロール104の製造方法の一例について、
図2〜
図4を用いて説明する。
【0069】
[材料の調整]
先ず、信越化学社製KE−1950−10A(A液)、及びKE−1950−10B(B液)を用意する(材料粘度はA液、B液共に55〔Pa・s〕、比重1.01、硬化後の硬度14°)。
【0070】
そして、A液、B液夫々に、ガラスバルーンとしての3M社製グラスバブルズK37(平均粒子径45〔μm〕、90%残存耐圧強度21〔MPa〕、比重0.37)を25体積パーセント(vol%)の割合で含有し、プラネタリーミキサー(株式会社井上製作所製PLM−5)にて30分間攪拌・混練りを行う。
【0071】
その後、等量(等体積)のA液とB液とを混ぜ、再度プラネタリーミキサーで30分間攪拌・混練りを行い、中空体が均一に分散された中空体分散シリコーンゴム材184を得る。
【0072】
この中空体分散シリコーンゴム材184の粘度を、B型粘度計(東機産業 RB−80L)にて、25〔℃〕、M4ロータ(中粘度用ロータ)を使用し、3〔rpm〕、30〔s〕の条件で測定した結果、中空体分散シリコーンゴム材184の粘度は、75〔Pa・s〕であった。
【0073】
また、同材料を50〔ml〕のビーカーに入れ、温浴漕中で50〔℃〕まで加温し、同様に粘度を測定した結果、中空体分散シリコーンゴム材184の粘度は、45〔Pa・s〕であった。
【0074】
[加圧ロールの成型]
先ず、シャフト150のシリコーンゴム被覆部(
図2(A)に示す範囲L)に、接着剤として機能する東レ・ダウコーニング社製のプライマーDY39−051A/Bを塗布し、シャフト150を30分風乾する。その後、150℃のオーブン中で、シャフト150を30分間加熱処理する。
【0075】
次に、
図2(B)に示されるように、外径φ30〔mm〕、内径φ28〔mm〕、長さ400〔mm〕の円筒状の金属金型180に、外径φ27〔mm〕、厚み0.05〔mm〕、長さ500〔mm〕のグンゼ社製の導電PFAチューブ182(以下単に「チューブ182」と記載する)を挿入する。
【0076】
さらに、
図2(C)に示されるように、チューブ182の両端を、金属金型180の両端で折り返す。また、金属金型180の外周面に満遍なく形成された複数の貫通孔(図示省略)から真空引きし、チューブ182を金属金型180の内周面に密着させる。
【0077】
さらに、チューブ182の内周面に東レ・ダウコーニング社製のプライマーDY39−125A/Bを塗布し、チューブ182の内周面を10分風乾する。その後、
図3(A)に示されるように、シャフト150を金属金型180内に挿入する。さらに、
図3(B)に示されるように、金属金型180の両端を一対のキャップ型186を用いて閉止する。なお、キャップ型186には、シャフト150を支持する凹部186Aが形成されており、キャップ型186を用いて金属金型180の両端を閉止することで、シャフト150が予め決められた位置に支持される。
【0078】
次に、
図3(C)に示されるように、一方のキャップ型186に形成されたゲート186Bから、調整した中空体分散シリコーンゴム材184をチューブ182とシャフト150との間に注入し、注入後、ゲート186Bを閉止する。
【0079】
さらに、中空体分散シリコーンゴム材184が注入された金属金型180を、
図4に示すゴム硬化装置188に取り付ける。
【0080】
具体的には、ゴム硬化装置188は、25〔℃〕の冷水が内部に満たされる冷水槽190と、冷水槽190の上方に配置される加熱ベルト192と、を備えている。
【0081】
加熱ベルト192は、内部に加熱手段を備えて水平方向に離間して配置される一対の加熱ロール194に掛け回されている。一対の加熱ロール194の軸方向が長手方向となるように金属金型180がゴム硬化装置188に取り付けられる。
【0082】
金属金型180がゴム硬化装置188に取り付けられた状態で、加熱ベルト192の下面に金属金型180の上側部分が接触する。そして、この接触長さ(
図4に示す長さM)は、25〔mm〕とされ、金属金型180の長手方向(紙面奥行方向)に亘って、金属金型180と加熱ベルト192とが接触している。さらに、加熱ベルト192と接触する部分の金属金型180の外周面が、50〔℃〕になるように、加熱ベルト192の温度が管理されている。
【0083】
一方、金属金型180がゴム硬化装置188に取り付けられた状態で、金属金型180の下側の2/3部分が、冷水槽190内の冷水に浸される。
【0084】
この状態で、金属金型180を、1〔rpm〕の回転数で、30分間回転させる(ガラスバルーン分離工程)。
【0085】
その後、水平に延びるように横置状態とされる金属金型180を、150〔℃〕のオーブン中で、10〔rpm〕の回転数で1時間回転させ、中空体分散シリコーンゴム材184の一次加硫を行う。
【0086】
次に、チューブ182、中空体分散シリコーンゴム材184、及びシャフト150を、金属金型180から脱型する。さらに、余剰なチューブ182の両端部、及び中空体分散シリコーンゴム材184の両端部をカットして、チューブ182及び中空体分散シリコーンゴム材184の長さを、350〔mm〕とする。
【0087】
また、余剰なチューブ182の端部、及び中空体分散シリコーンゴム材184の両端部がカットされた部材を、200〔℃〕のオーブン中で、4時間加熱し、二次加硫を行う。
【0088】
以上の工程により、加圧ロール104が製造される。
【0089】
〔評価〕
次に、実施例に係る加圧ロール104と、比較例に係る加圧ロールとを評価した評価方法、及び評価結果等を、
図6に示される表を用いて説明する。
【0090】
[評価した加圧ロールの構成]
実施例1:前述した加圧ロールの製造方法で製造された加圧ロール104を用いた。
【0091】
実施例2:ガラスバルーンとして、ポッターズバロティーニ社製のSphericel 25P45(平均粒子径45〔μm〕、90%残存耐圧強度5〔MPa〕、比重0.25)を用いた以外は、実施例1と同様の加圧ロール104を用いた。
【0092】
実施例3:ガラスバルーンとして、ポッターズバロティーニ社製のSphericel 60P18(平均粒子径18〔μm〕、90%残存耐圧強度55〔MPa〕、比重0.60)を用い、前述したガラスバルーン分離工程で金属金型180を回転させる時間を2時間とした以外は、実施例1と同様の加圧ロール104を用いた。
【0093】
実施例4:ガラスバルーンとして、ポッターズバロティーニ社製のExtendospheres TG(平均粒子径95〔μm〕、90%残存耐圧強度19〔MPa〕、比重0.70)を用い、前述したガラスバルーン分離工程で金属金型180を回転させる時間を2時間とした以外は、実施例1と同様の加圧ロール104を用いた。
【0094】
実施例5:ガラスバルーンとして、ポッターズバロティーニ社製のExtendospheres SG(平均粒子径110〔μm〕、90%残存耐圧強度19〔MPa〕、比重0.70)を用い、前述したガラスバルーン分離工程で金属金型180を回転させる時間を2時間とした以外は、実施例1と同様の加圧ロール104を用いた。
【0095】
比較例:前述したガラスバルーン分離工程を行わず、そのまま一次加硫を行った以外は、実施例1と同様の加圧ロールを用いた。
【0096】
[評価項目]
1.比重評価:加圧ロールのロール部材を外周面側から内周面側にかけて厚さ1〔mm〕で順に板状に切り出し(
図5参照)、厚さ1〔mm〕、幅4〔mm〕、長さ10〔mm〕の5枚の測定サンプルを得た。このサンプルの質量を測定して比重を導出し、中空体の含有率(分散状態)を評価した。
2.出力画像評価:夫々の加圧ロールを富士ゼロックス社製Apeos C4300に取り付け、A3サイズの富士ゼロックス社製カラーペーパー(J紙)の両面に、予め決められた色(B色)によるエリアカバレッジ100%(ベタ画像)の画像を形成させた(Dup画像)。この出力画像を目視にて評価した。
3.耐久評価:夫々の加圧ロールを富士ゼロックス社製Apeos C4300に取り付け、A3サイズの富士ゼロックス社製カラーペーパー(J紙)用いて連続通紙を行い、1万枚毎に50万枚まで、夫々の加圧ロールの状態(表面の硬度)を評価した。
【0097】
[評価結果]
1.比重評価:
図6に示されるように、実施例1〜実施例5については、比重が、ロール部材152の内周面側から外周面側にかけて徐々に低くなっている。換言すれば、ロール部材152に含有される中空体の単位体積当たりの含有率は、ロール部材152の内周面側から外周面側にかけて徐々に高くなっている(所謂傾斜構造)。
【0098】
一方、比較例については、比重が各部位で同様となっており、ロール部材に含有される中空体の単位体積当たりの含有率は、各部位で同様となっている。
2.出力画像評価:
図6に示されるように、実施例5を除き、画像不良は確認されなかった。実施例5では、商品性上は問題とされないが、画像に微小なグロスムラが生じた。これは、中空体の粒子径が他の実施例に比して大きいため生じたものと考えられる。
3.耐久評価:
図6に示されるように、実施例1〜実施例5については、50万枚の通紙を行い、加圧ロールに異常は見られなかった。
【0099】
一方、比較例1については、40万枚通紙時点で、加圧ロールの表面の硬度に大きな低下が見られ、加圧ロールを切断して確認した結果、ロール部材の内周面側で中空体が割れており、ロール部材の内周面側で破壊(亀裂)が進んでいる箇所が見られた。耐久評価前の確認では、割れた中空体は確認されなかった事から、耐久評価の際に、ロール部材の内周面側に応力集中が生じ、これにより中空体が割れ、この割れた中空体を起点にロール部材の破壊(亀裂)が進んだものと考えられる。
【0100】
(まとめ)
以上の各評価結果からも分かるように、ロール部材152における外周面側における中空体の含有率が、ロール部材152における内周面側における中空体の含有率より大きくなっている。これにより、耐久性が低下するのが抑制されている。また、前述したように、ロール部材152に含有される中空体は、定着ベルト102の熱がロール部材152に吸収されてしまうのを抑制するようになっている。これより、定着装置60では、ロール部材152に中空体が含有される構成において、耐久性能が低下するのが抑制される。
【0101】
また、ロール部材152に含有される中空体の単位体積当たりの含有率は、ロール部材152の内周面側から外周面側にかけて徐々に高くなっている(所謂傾斜構造)。これにより、ロール部材152に生じる応力が部分的に集中するのが抑制される。
【0102】
また、ロール部材152に含有される中空体の単位体積当たりの含有率は、ロール部材152の内周面側から外周面側にかけて徐々に高くなっている(所謂傾斜構造)。これにより、ロール部材152に生じる応力が部分的に集中するのが抑制される。
【0103】
また、ロール部材152に生じる応力が部分的に集中するのが抑制されることで、ロール部材152の耐久性が低下するのが効果的に抑制される。
【0104】
また、中空体の平均粒子径は、15〔μm〕以上とされている。このため、中空体の平均粒子径が15〔μm〕より小さい場合と比して、ロール部材152の断熱性が向上する。
【0105】
また、中空体の平均粒子径は、110〔μm〕以下とされている。このため、中空体の平均粒子径が110〔μm〕より大きい場合と比して、ロール部材152の表面硬度の変化が抑制されることで、トナー画像をシート部材Pに定着する際に、トナー画像の定着不良が抑制される。
【0106】
また、画像形成装置10においては、定着装置60を用いることで、定着装置の交換頻度が低くなる。
【0107】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、中空体の平均粒子径を15〔μm〕以上110〔μm〕以下としたが、特にこの範囲に限定されず、平均粒子径が15〔μm〕より小さく、又は110〔μm〕より大きくてもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、ロール部材152に含有される中空体の単位体積当たりの含有率は、ロール部材152の内周面側から外周面側にかけて徐々に高くなっていたが、特に徐々に高くなる必要は無く、ロール部材152における外周面側の中空体の含有率が、ロール部材152における内周面側の中空体の含有率より大きければよい。
【0109】
また、上記実施形態では、定着ベルト102を、電磁誘導作用により加熱したが、例えば、円筒状の定着ロールを発熱体により加熱してもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、中空体として、ガラスバルーン(中空シリカ)を用いたが、ガラスバルーンに限定されることなく、他の中空体を用いてもよい。