(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237222
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】荷重検出センサ用カバー及び荷重検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/22 20060101AFI20171120BHJP
G01G 19/12 20060101ALI20171120BHJP
G01G 19/52 20060101ALI20171120BHJP
G01G 3/14 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
G01L1/22 F
G01G19/12 A
G01G19/52 F
G01G3/14
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-269382(P2013-269382)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-125055(P2015-125055A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】桐田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 久義
【審査官】
眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−063494(JP,A)
【文献】
特開2005−254926(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0122854(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/00−19/64
G01G 3/14
G01L 1/22
B60L 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の起歪体と、前記起歪体の第1主表面および第2主表面を貫通するとともに車両用シートからの荷重を受ける荷重入力部材と、前記起歪体の第1主表面に設けられた歪検出素子と、前記歪検出素子からの信号を増幅する増幅回路を収納するハウジングと、前記歪検出素子および前記増幅回路を接続するフレキシブル基板と、前記ハウジング及び前記起歪体を前記起歪体の両端部でそれぞれ連結して固定する固定部材とを備える荷重検出センサに着脱可能に取り付けられる荷重検出センサ用カバーであって、
前記起歪体の第1主表面に対向するカバー部と、
前記カバー部と一体に形成され、前記起歪体の一側面に対向する側部と、
前記起歪体の第2主表面に対向し、前記側部から前記ハウジングに向かって延在し、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙を覆うとともに、前記カバー部と協働して前記荷重検出センサを挟持する挟持部と、を備え、
前記カバー部は、
前記荷重入力部材に対応するように形成された開口部と、
前記固定部材に対応するように形成された切欠きと、
前記開口部の縁部から突出し、前記荷重検出センサの一部と接する突部とを有し、
前記ハウジング、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙に延在し、前記歪検出素子及び前記フレキシブル基板を覆うことを特徴とする荷重検出センサ用カバー。
【請求項2】
前記カバー部は、前記切欠きの角部から前記挟持部側に向かって突出し、取り付けたときに前記ハウジング側で前記荷重検出センサの一部と接する一対の突出部を有することを特徴とする請求項1に記載の荷重検出センサ用カバー。
【請求項3】
前記突部は、前記開口部から離れる方向に向かって傾斜するテーパ面を有し、
前記一対の突出部は、前記カバー部の周縁に向かうとともに前記突部側に向かって傾斜するテーパ面を有することを特徴とする請求項2に記載の荷重検出センサ用カバー。
【請求項4】
前記挟持部の根元には、前記側部の前記カバー部側に、前記挟持部に沿って窪んで延びる凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の荷重検出センサ用カバー。
【請求項5】
前記側部は、その両端部に、前記カバー部に張り出し、取り付けたときに前記起歪体の一部と接する一対の段部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の荷重検出センサ用カバー。
【請求項6】
前記一対の段部には、前記側部に沿って窪んで延びる溝が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の荷重検出センサ用カバー。
【請求項7】
前記挟持部は、取り付けたときに鉛直方向上側となる面に、周縁に亘って連続して延在するリブを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の荷重検出センサ用カバー。
【請求項8】
前記カバー部は、取り付けたときに鉛直方向下側となる面の前記荷重検出センサを挿入する挿入側の縁部に、外方に向かって傾斜するテーパ面を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の荷重検出センサ用カバー。
【請求項9】
板状の起歪体と、前記起歪体の第1主表面および第2主表面を貫通するとともに車両用シートからの荷重を受ける荷重入力部材と、前記起歪体の第1主表面に設けられた歪検出素子と、前記歪検出素子からの信号を増幅する増幅回路を収納するハウジングと、前記歪検出素子および前記増幅回路を接続するフレキシブル基板と、前記ハウジング及び前記起歪体を前記起歪体の両端部でそれぞれ連結して固定する固定部材とを備える荷重検出センサに着脱可能に取り付けられる荷重検出センサ用カバーであって、
前記起歪体の第1主表面に対向するカバー部と、
前記カバー部と一体に形成され、前記起歪体の一側面に対向する側部と、
前記起歪体の第2主表面に対向し、前記側部から前記ハウジングに向かって延在し、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙を覆うとともに、前記カバー部と協働して前記荷重検出センサを挟持する挟持部と、を備え、
前記カバー部は、
前記荷重入力部材に対応するように形成された開口部と、
前記固定部材に対応するように形成された切欠きと、
前記開口部の縁部から突出し、前記荷重検出センサの一部と接する突部と、
前記切欠きの角部から前記挟持部側に向かって突出し、取り付けたときに前記ハウジング側で前記荷重検出センサの一部と接する一対の突出部とを有し、
前記ハウジング、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙に延在し、前記歪検出素子及び前記フレキシブル基板を覆い、
前記側部は、その両端部に、前記カバー部に張り出し、取り付けたときに前記起歪体の一部と接する一対の段部を有し、
前記一対の段部は、前記一対の突出部と対向する側に、前記カバー部に向かって傾斜するテーパ面をそれぞれ有することを特徴とする荷重検出センサ用カバー。
【請求項10】
前記一対の突出部の角部は、曲面形状であることを特徴とする請求項2、3または9のいずれか1項に記載の荷重検出センサ用カバー。
【請求項11】
板状の起歪体と、前記起歪体の第1主表面および第2主表面を貫通するとともに車両用シートからの荷重を受ける荷重入力部材と、前記起歪体の第1主表面に設けられた歪検出素子と、前記歪検出素子からの信号を増幅する増幅回路を収納するハウジングと、前記歪検出素子および前記増幅回路を接続するフレキシブル基板と、前記ハウジング及び前記起歪体を前記起歪体の両端部でそれぞれ連結して固定する固定部材とを備える荷重検出センサ、及び前記荷重検出センサに着脱可能に取り付けられる荷重検出センサ用カバーを有する荷重検出装置であって、
前記荷重検出センサ用カバーは、
前記起歪体の第1主表面に対向するカバー部と、
前記カバー部と一体に形成され、前記起歪体の一側面に対向する側部と、
前記起歪体の第2主表面に対向し、前記側部から前記ハウジングに向かって延在し、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙を覆うとともに、前記カバー部と協働して前記荷重検出センサを挟持する挟持部と、を備え、
前記カバー部は、
前記荷重入力部材に対応するように形成された開口部と、
前記固定部材に対応するように形成された切欠きと、
前記開口部の縁部から突出し、前記荷重検出センサの一部と接する突部とを有し、
前記ハウジング、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙に延在し、前記歪検出素子及び前記フレキシブル基板を覆うことを特徴とする荷重検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの荷重検出センサ用カバー及び荷重検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの荷重を受けて変形する起歪体を用いて、車両用シートの荷重を検出する荷重検出センサが開発されている。特許文献1では、起歪体の変形を検出する歪検出素子からの出力誤差を低減する変位検出装置が提案されている。この変位検出装置は、荷重入力部材からの入力を受ける起歪体に貼付された歪ゲージを備え、起歪体に作用した荷重に応じた撓みにより生じた歪を電気信号で出力する。この変位検出装置は、アッパブラケット、第1ロアブラケット、及び第2ロアブラケットを用いて起歪体及びアンプ装置を連結している。この第1ロアブラケット及び第2ロアブラケットの支持部の外端部を起歪体に溶接し、アッパブラケットの外端部を起歪体に溶接して固定することによって、溶接位置に基づく歪が発生することを抑制することについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−63494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、歪ゲージ及びアンプ基板がフレキシブル基板を介して接続されており、歪ゲージとフレキシブル基板との接続部がコーディング部で被覆されて保護されている。しかしながら、コーディング部で被覆されていないフレキシブル基板の部分は、作業者等による手扱い時、搬送時、及び車両用シートへの組付時に接触することによりダメージを受けてしまうおそれがある。また、このようなフレキシブル基板の部分は外部異物によってダメージを受けるおそれもある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、手扱い時、搬送時、車両用シートへの組付け時、及び外部異物からフレキシブル基板を保護することの可能な荷重検出センサ用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成すべく、本発明の第1の態様に係る荷重検出センサ用カバーによれば、板状の起歪体と、前記起歪体の第1主表面および第2主表面を貫通するとともに車両用シートからの荷重を受ける荷重入力部材と、前記起歪体の第1主表面に設けられた歪検出素子と、前記歪検出素子からの信号を増幅する増幅回路を収納するハウジングと、前記歪検出素子および前記増幅回路を接続するフレキシブル基板と、前記ハウジング及び前記起歪体を前記起歪体の両端部でそれぞれ連結して固定する固定部材とを備える荷重検出センサに着脱可能に取り付けられる荷重検出センサ用カバーであって、前記起歪体の第1主表面に対向するカバー部と、前記カバー部と一体に形成され、前記起歪体の一側面に対向する側部と、前記起歪体の第2主表面に対向し、前記側部から前記ハウジングに向かって延在し、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙を覆うとともに、前記カバー部と協働して前記荷重検出センサを挟持する挟持部と、を備え、前記カバー部は、前記荷重入力部材に対応するように形成された開口部と、前記固定部材に対応するように形成された切欠きと、前記開口部の縁部から突出し、前記荷重検出センサの一部と接する突部とを有し、前記ハウジング、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙に延在し、前記歪検出素子及び前記フレキシブル基板を覆うことを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様に係る荷重検出装置によれば、板状の起歪体と、前記起歪体の第1主表面および第2主表面を貫通するとともに車両用シートからの荷重を受ける荷重入力部材と、前記起歪体の第1主表面に設けられた歪検出素子と、前記歪検出素子からの信号を増幅する増幅回路を収納するハウジングと、前記歪検出素子および前記増幅回路を接続するフレキシブル基板と、前記ハウジング及び前記起歪体を前記起歪体の両端部でそれぞれ連結して固定する固定部材とを備える荷重検出センサ、及び前記荷重検出センサに着脱可能に取り付けられる荷重検出センサ用カバーを有する荷重検出装置であって、前記荷重検出センサ用カバーは、前記起歪体の第1主表面に対向するカバー部と、前記カバー部と一体に形成され、前記起歪体の一側面に対向する側部と、前記起歪体の第2主表面に対向し、前記側部から前記ハウジングに向かって延在し、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙を覆うとともに、前記カバー部と協働して前記荷重検出センサを挟持する挟持部と、を備え、前記カバー部は、前記荷重入力部材に対応するように形成された開口部と、前記固定部材に対応するように形成された切欠きと、前記開口部の縁部から突出し、前記荷重検出センサの一部と接する突部とを有し、前記ハウジング、前記荷重入力部材及び前記固定部材の間の空隙に延在し、前記歪検出素子及び前記フレキシブル基板を覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カバー部がハウジング、荷重入力部材及び固定部材の間の空隙を延在し、カバー部と挟持部とが協働して荷重検出センサの一部を挟持する。これにより、荷重検出センサはカバー部及び挟持部で挟持されるので、車両用シートの移動や車両の振動等によるカバー部の脱落が防止され、手扱い時、搬送時、車両用シートへの組付時、及び外部異物からフレキシブル基板を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】スライド機構に取り付けられた本発明の実施形態に係る荷重検出装置の部分拡大図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る荷重検出センサ用カバーの斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る荷重検出センサ用カバーを下側から見た斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る荷重検出センサ用カバーの上面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る荷重検出センサ用カバーの下面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る荷重検出センサ用カバーの正面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る荷重検出センサ用カバーの側面図である。
【
図13】
図3のXIII−XIII線に沿う断面の部分拡大図である。
【
図15】荷重検出センサ用カバーの側面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、車両用シートの概略図、
図2はスライド機構に取り付けられた荷重検出装置の部分拡大図である。なお、
図1において前後の矢印は、車両用シート1に着座した乗員から見た方向を示している。本発明に係る荷重検出センサ用カバーを備える荷重検出装置は、車両用シート1に取り付けられて、車両用シート1に着座する乗員の荷重を測定するものである。車両用シート1のシート本体2は、車体のフロア4に取り付けられたスライド機構3によってスライド可能に取り付けられている。
【0011】
スライド機構3は、車体のフロア4に固定され、前後方向に延びて設けられる一対のロアレール31と、ロアレール31にスライド可能に支持される一対のアッパレール32とから構成される。
図2はアッパレール32の前端部に設けられた荷重検出装置5を示している。アッパレール32には鉛直方向に突出した固定軸33、34が形成され、荷重検出装置5の両端部5a、5bが固定軸33、34によってアッパレール32に固定される。図示しないが、荷重検出装置5はアッパレール32の後端部においても同様に取り付けられている。
【0012】
図3は荷重検出装置5の上面図、
図4は荷重検出装置5の側面図、
図5は荷重検出装置5の下面図、
図6は下側から見た荷重検出装置5の組立図である。以下、荷重検出装置5がアッパレール32に取り付けられたとき、シート本体2と対向する側を上と定義して説明する。荷重検出装置5は、荷重検出センサ50と、荷重検出センサ50に取り付けられる荷重検出センサ用カバー6とを備えている。
図3に示すように、荷重検出装置5は、アッパレール32の延在方向に沿って取り付けられる。
【0013】
荷重検出センサ50は、起歪体51、シート本体2からの荷重を受ける荷重入力部材52、入力された信号を増幅する増幅回路(図示せず)を収納するハウジング53、起歪体51とハウジング53とを連結する連結板54、起歪体51と連結板54とを固定する固定部材55、56、起歪体51の撓みを検出する歪検出素子57a、57b、及び歪検出素子57a、57bと増幅回路とを電気的に接続するフレキシブル基板58を備えている。
【0014】
起歪体51は、略長方形状の板状に形成されており、曲げ剛性を有する部材、例えばステンレス鋼から構成される。起歪体51の中央部には、荷重入力部材52の軸部522が貫通して突出する孔(図示せず)が設けられている。起歪体51の両端部には、固定部材55、56が起歪体51に連結板54を固定するための貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0015】
荷重入力部材52は、起歪体51の中央部に配置される。荷重入力部材52は、頭部521と、頭部521の一端面側から突出する軸部522とから構成される。荷重入力部材52の軸部522は、起歪体51の下面51a側から上記孔を貫通し、起歪体51の上面51b側へ突出する。荷重入力部材52の頭部521は、起歪体51の下面51aに当接される。起歪体51の第2主表面としての上面51bにはブラケット523が設けられている。荷重入力部材52の軸部522がブラケット523に嵌め合わされることによって、起歪体51が頭部521及びブラケット523によって挟持される。荷重入力部材52は、シート本体2に取り付けられて固定される。
【0016】
ハウジング53は、起歪体51の長手方向に沿った一方の側面に配置されるように連結板54で起歪体51と連結されている。連結板54には、起歪体51の両端側に設けられた貫通孔と対応する位置に貫通孔(図示せず)が形成されている。連結板54には、ハウジング53に対応する所定の位置にハウジング53と連結するための孔(図示せず)が形成されている。連結板54は、上述した孔を介して、例えばねじ等の固定部材541、542によってハウジング53に固定される。
【0017】
固定部材55、56は、起歪体51の両端部で連結板54を固定する。固定部材55は、起歪体51の第1主表面としての下面51aに当接する環状頭部551と、環状頭部551の中央部から突出して延びる筒状の筒部552とから構成されている。固定部材56は、起歪体51の下面51bに当接する環状頭部561と、環状頭部561の中央部から突出して延びる筒状の筒部562とから構成されている。筒部552、562は、起歪体51に設けられた貫通孔と連結板54に設けられた貫通孔とを通って起歪体51と連結板54とを嵌め合わせて固定する。図示しないが、アッパレール32に荷重検出装置5を取り付けるための締結部材が、筒部552、562内を貫通してアッパレール32と荷重検出装置5とを締結する。
【0018】
歪検出素子57a、57bは、起歪体51の下面51aに設けられ、荷重入力部材52の頭部521と固定部材55、56の環状頭部551、561との間にそれぞれ配置されている。歪検出素子57a、57bは起歪体51の撓みを検出して測定する。起歪体51の撓みの大きさは、シート本体2に着座する乗員の荷重に応じて変化する。歪検出素子57a、57bが測定した撓みは、フレキシブル基板58にパターニングされている配線581を介してハウジング53に収納されている増幅回路へ信号として入力される。歪検出素子57a、57bとフレキシブル基板58との接続部は、樹脂などのコーティング部59a、59bによって覆われて保護されている。歪検出素子57a、57b、及びフレキシブル基板58は、荷重検出センサ用カバー6によって覆われる。
【0019】
図7は荷重検出センサ用カバー6の斜視図、
図8は荷重検出センサ用カバー6を下側から見た斜視図、
図9は荷重検出センサ用カバー6の上面図、
図10は荷重検出センサ用カバー6の下面図、
図11は荷重検出センサ用カバー6の正面図、
図12は荷重検出センサ用カバー6の側面図、
図13は
図3のXIII−XIII線に沿う断面の部分拡大図、
図14は荷重検出装置5の部分拡大図、
図15は荷重検出センサ用カバー6の側面の部分拡大図である。
【0020】
荷重検出センサ用カバー6は、例えばプラスチックなどの樹脂から構成され、例えば射出成型によって形成される。荷重検出センサ用カバー6は、歪検出素子57a、57bとフレキシブル基板58とを覆うカバー部61、起歪体51の側面の一部を覆う側部62、及びカバー部61と荷重検出センサ50の一部を挟持する挟持部63、64を備えている。荷重検出センサ用カバー6は、着脱可能に荷重検出センサ50の一部を挟持している。
【0021】
図4、
図12に示すように、荷重検出センサ用カバー6の高さHcは、荷重検出センサ50に取り付けたときに、荷重検出センサ50の高さHs、即ち固定部材55、56から起歪体51及び連結板54までの高さHsよりも低くなるように形成されている。詳しくは、荷重検出センサ50に取り付けられたときに、カバー部61の下面61aの位置は、固定部材55、56の環状頭部551、561の位置より高い位置であり、且つ荷重入力部材52の頭部521の位置以上の高さである。このような構成とすることにより、荷重検出センサ用カバー6は荷重検出センサ50の高さ内に収まるので、スライド機構3への荷重検出センサ50の取り付けに影響しない。従って、荷重検出センサ50を取り付けることができるスライド機構であれば、いずれのスライド機構でも取り付けることが可能になる。
【0022】
カバー部61は、荷重入力部材52の頭部521を収容する開口部611、固定部材55、56の環状頭部551、561と対向する切欠き612、613、荷重検出センサ50の一部を支持する突部614、及び切欠き612、613の両端部にそれぞれ形成された突起615、616、荷重検出センサ50の一部を支持する一対の突出部としての突出部617、618を有している。
【0023】
開口部611は、カバー部61の長手方向中央部に荷重入力部材52の頭部521よりも大きく形成されている。開口部611の直径は、荷重検出センサ50に荷重検出センサ用カバー6を取り付けたときに頭部521を収容可能な大きさである。
【0024】
切欠き612は固定部材55の環状頭部551に対応するように切り欠かれている。切欠き613は固定部材56の環状頭部561に対応するように切り欠かれている。切欠き612は、荷重検出センサ50に荷重検出センサ用カバー6を取り付けたときに、固定部材55の環状頭部551の部分、すなわち歪検出素子57b側の環状頭部551の部分に対向する。切欠き613は、固定部材56の環状頭部561の部分、すなわち歪検出素子57a側の環状頭部562の部分に対向する。このような構成にすることによって、荷重入力部材52の頭部521及び固定部材55、56の環状頭部551、561の間はカバー部61によって覆われる。また、荷重検出センサ50から荷重検出センサ用カバー6を引き離す方向に力が加わる場合でも、切欠き612、613が環状頭部551、561で係止されるので、荷重検出センサ用カバー6の脱落を防止できる。
【0025】
突部614は、荷重検出センサ50を挿入する挿入側となる開口部611の縁部から挟持部63、64側に向かって突出している。突部614には、挟持部63、64と対向する面に荷重検出センサ50の一部を支持する支持面614aが形成され、開口部611から離間する方向に傾斜するテーパ面614bが形成されている。
【0026】
突起615、616は、歪検出素子57a、57b及びフレキシブル基板58が配置されていない位置に向かって延在している。突出部617は、突起615から挟持部63側に向かって突出して形成されている。突出部617には挟持部63、64と対向する面に荷重検出センサ50の一部を支持する第1の支持面617aが形成され、側部62から離れる方向に支持面617aから傾斜する略三角形状のテーパ面617bが形成されている。突出部618は、突起616から挟持部64側に向かって突出して形成されている。突出部618には挟持部63、64と対向する面に荷重検出センサ50の一部を支持する第2の支持面618aが形成され、側部62から離れる方向に支持面618aから傾斜する略三角形状のテーパ面618bが形成されている。突出部617、618の第1の支持面617a及び第2の支持面618aは、歪検出素子57a、57b及びフレキシブル基板58が配置されていない荷重検出センサ50の部分を支持する。
【0027】
このような構成とすることにより、荷重検出センサ50に荷重検出センサ用カバー6を取り付けるときに、荷重検出センサ50を挿入するように側部62から力を加えることによってテーパ面617b、618bが環状頭部551、561の角部をスライドする。これによってカバー部61と挟持部63、64との間の間隔が広がるので、荷重検出センサ50に荷重検出センサ用カバー6を容易に取り付けることができる。また、突部614にはテーパ面614bが形成されているので、突部614が荷重入力部材52の頭部521に引っかかることなく、荷重検出センサ用カバー6に荷重検出センサ50を挿入できる。従って、荷重検出センサ用カバー6を荷重検出センサ50に取り付けるときの操作性を向上させることができる。
【0028】
また、
図13に示すように、荷重検出センサ50に荷重検出センサ用カバー6を取り付けた後、側部62の方向に力が加わる場合でも、つまり荷重検出センサ用カバー6を外す方向に力が加わる場合でも、突部614が荷重入力部材52の頭部521で係止される。これにより、荷重検出センサ用カバー6が荷重検出センサ50から脱落してしまうことを防止できる。
【0029】
荷重検出センサ50から荷重検出センサ用カバー6を取り外すためには、カバー部61の突部614が荷重入力部材52の頭部521を超えて側部62側に引き出される必要がある。また、カバー部61の両端部に形成されている突出部617、618も固定部材55、56の環状頭部551、561を超えて側部62側に引き出される必要がある。このためには、荷重検出センサ50からカバー部61を引き離す方向にカバー部61の周縁の2点から応力を加える必要がある。従って、荷重検出センサ用カバー6は、荷重検出センサ50に容易に取り付けることができるものの、荷重検出センサ50から取り外し難い構造となっている。つまり、荷重検出センサ用カバー6はアッパレール32の移動や車両の振動等では脱落し難い構造である。
【0030】
図7、
図9に示すように、突出部617、618の角部には、曲面617c、618cが形成されている。
図14は荷重検出装置5における突出部617を部分的に拡大した図である。
図14に示すように、荷重検出センサ用カバー6が荷重検出センサ50に取り付けられると、突出部617は外部からの異物の侵入を阻止する防御壁として機能する。また、突出部617、618に形成された曲面617c、618cによって、外部からの異物はその周囲に避けられる。従って、突出部617、618によって外部からの異物が荷重検出センサ用カバー6内に侵入することを防ぐことができる。
【0031】
荷重検出センサ50に取り付けるときに挟持体63、64と共に挿入部となるカバー部61は、荷重検出センサ50に取り付けたときに、挿入端部619及びハウジング53の間の隙間が最小限となるように形成されている。これにより、荷重検出センサ50に荷重検出センサ用カバー6を取り付けたときに、荷重入力部材52、ハウジング53及び固定部材55、56の間の空隙がカバー部61で覆われるので、ハウジング53に向かって延びるフレキシブル基板を保護することができる。
【0032】
カバー部61の挿入端部619には、下面61aに外方へ向かって上方へ傾斜するテーパ面61cがその縁部に形成されている。
【0033】
側部62は、カバー部61と一体に形成され、荷重検出センサ50に取り付けられたときに起歪体51の長手方向に沿った他方の側面と対向する。側部62には両端部からカバー部61に向かって突出した一対の段部としての段部622、623が設けられている。段部622には、荷重検出センサ50に取り付けられたときに起歪体51を支持する支持面622aと、突出部617と対向する面に傾斜したテーパ面622bと、側部62に沿って窪んで延びる溝624とが形成されている。段部623には、荷重検出センサ50に取り付けられたときに起歪体51を支持する支持面623aと、突出部618と対向する面に傾斜したテーパ面623bと、側部62に沿って窪んで延びる溝625とが形成されている。
図12に示すように、突出部617、618の高さH1及び段部622、623の高さH2は略等しく形成され、荷重入力部材52から荷重を受けた起歪体51が撓んでも起歪体51がカバー部61の上面61bに接しない高さである。
【0034】
荷重検出センサ50に荷重検出センサ用カバー6を取り付けるときに、起歪体51が段部622、623のテーパ面622b、623bに当接することがある場合でも、起歪体51がテーパ面622b、623bをスライドすることによって側部62まで挿入可能となる。このような構成とすることによって、荷重検出センサ50の挿入性を向上させることが可能となる。
【0035】
挟持部63、64は、ブラケット523と固定部材55、56の筒部552、562との間に配置されるように形成され、挟持部63、64の間隔Dは起歪体51を固定するブラケット523の直径よりも大きく形成される。挟持部63、64の上側には、その周縁に補強部材としてのリブ631、641が設けられている。挟持部63、64の下側には、挟持部63、64の根元に沿って窪んで延びる凹部626、627が側部62に形成されている。
【0036】
図15に示すように、溝624、625、及び凹部626、627を設けることによって、射出成型後の荷重検出センサ用カバー6が冷え固まることにより生じる収縮等により段部622、623と側部62とで形成される角部及び側部62と挟持部63、64とで形成される角部が丸くなってしまうことを防止する。これにより、起歪体51が側部62の内壁面62aに当接するように挿入することができる。従って、起歪体51と側部62の内壁面62aとの間に形成される隙間を最小限に抑えることができるので、荷重検出センサ用カバー6を取り付けるときの挿入性が向上する。また、この隙間を最小限に抑えることによって、カバー部61の挿入端部619とハウジング53との間に形成される隙間も小さくなるので、作業者等による手扱い時、搬送時、及び車両用シートへの組付時にフレキシブル基板58へ接触してしまうことを防止できる。また、外部からの異物が荷重検出センサ用カバー6内に侵入することを防止できる。
【0037】
このような構成の荷重検出センサ用カバー6を取り付けた荷重検出装置5について以下に説明する。荷重検出センサ50は、カバー部6の突部614の支持面614aと挟持部63、64とによってその一部が挟持されている。つまり、荷重検出センサ50は、荷重検出センサ50の下面中央部に接する突部614と、荷重検出センサ50の上面に接し、荷重入力部材52及び固定部材55、56の間をそれぞれ延びる挟持部63、64とによって挟持されている。このように、荷重検出センサ50の上面及び下面を異なる位置で支持することによって、荷重検出センサ50を確実に挟持できる。これにより、図示しない車両の振動や、スライド機構3を用いてシート本体2を移動させるときに発生する振動などによって荷重検出センサ用カバー6と荷重検出センサ50とが互いに接触することによる異音の発生を抑制できる。また、荷重検出センサ50は、突出部617、618の支持面617a、618a、及び段部622、623の支持面622a、623aでもその一部が支持されるので、より確実に挟持される。これにより、異音の発生を確実に抑制できる。
【0038】
また、突出部617、618の支持面617a、618aで起歪体51を含む荷重検出センサ50の一部を支持し、段部622、623の支持面622a、623aで起歪体51を支持している。これにより、荷重入力部材52に荷重が入力されて起歪体51が撓んでも、その撓みを阻害しない。すなわち、突出部617、618の支持面617a、618a、及び段部622、623の支持面622a、623aは、荷重入力部材52側の固定部材55、56周辺で起歪体51を支持するので、起歪体51の撓みに影響を与えることはない。従って、荷重入力部材52に入力された荷重は歪検出素子57a、57bによって正確に検出される。
【0039】
このように、本実施形態によれば、荷重検出センサ50に荷重検出センサ用カバー6を取り付けると、荷重入力部材52、ハウジング53及び固定部材55、56の間の空隙がカバー部61で覆われ、カバー部61及び挟持部63、64が協働することによって荷重検出センサ50の一部が挟持される。詳しくは、カバー部61の突部614及び挟持部63、64によって荷重検出センサ50の一部が挟持される。これにより、フレキシブル基板58全体がカバー部61によって覆われるので、シート本体2がスライド機構3上を移動しても、荷重検出センサ用カバー6の脱落が防止される。従って、手扱い時、搬送時、車両用シートへの組付時、及び外部異物からフレキシブル基板58を保護する効果が継続される。
【0040】
また、荷重検出センサ50から荷重検出センサ用カバー6を引き離す方向に力が加わる場合でも、突部614が荷重入力部材52の頭部521で係止されると共に、切欠き612、613が固定部材55、56の環状頭部551、561で係止される。従って、荷重検出センサ50からの荷重検出センサ用カバー6の脱落を防止できる。
【0041】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、開口部611は略円形であり、切欠き612、613は弧状に形成されているが、荷重入力部材52の頭部521及び固定部材55、56の環状頭部551、561の形状に合わせて変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 車両シート
5 荷重検出装置
6 荷重検出センサ用カバー
50 荷重検出センサ
58 フレキシブル基板
61 カバー部
62 側部
63、64 挟持部
611 開口部
612、613 切欠き
614 突部