【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。例中、特に断わりのない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味する。また、「カーボンナノチューブ」を「CNT」と略記することがある。
【0042】
<物性の測定方法>
後述の各実施例及び比較例において製造されたカーボンナノチューブ合成用触媒およびカーボンナノチューブの物性は、以下の方法により測定した。
【0043】
<嵩密度>
スコットボリュームメータ(筒井理化学器械社製ASTM-B-329-98型)を用いて、カーボンナノチューブ合成用触媒またはカーボンナノチューブの嵩密度を測定した。カーボンナノチューブ合成用触媒またはカーボンナノチューブをふるい(75φ×20mm、目開き2000μm)を介して、上部よりステンレス製試料容器からあふれ出るまで投入し、あふれたら直ちにスライドグラスを用いて過量分をすり落とし、その質量を秤量した。下記の計算式により、嵩密度を算出した。
嵩密度(g/mL)=(測定した質量(g))÷(試料容器密度(25mL))
【0044】
<体積抵抗率>
粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体低効率測
定システムMCP−PD−51)を用い、試料重量1.2gとし、粉体用プローブユニッ
ト(四探針・リング電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5
mm)により、印加電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下のカーボンナノチューブの
体積抵抗率
(Ω・cm
)を測定した。密度1.0g/mLにおける値をカーボンナノチュ
ーブの体積抵抗率(Ω・cm)とした。
【0045】
<カーボンナノチューブ含有塗膜の表面抵抗とカーボンナノチューブの導電性評価>
カーボンナノチューブの導電性を評価するために、カーボンナノチューブを分散した塗膜を作成し、その表面抵抗を測定することにより導電性評価を行った。
三菱化学社製エポキシ樹脂グレード1256を、ブチルカルビトールアセテートに溶解して、固形分40%のエポキシ樹脂溶液を作製し、エポキシ樹脂溶液の固形分15gに対して、評価用のカーボンナノチューブ0.789gを混合し、フーバーマーラーで150lb、100回転の条件でそれぞれ1〜3回練り、評価用のカーボンナノチューブ分散体を得た。その後、東洋紡績社製PETフィルムに、アプリケーターを用いて、乾燥後の塗膜厚さが10±1μmとなるように塗工後、電気オーブン中で150±5℃にて60分間乾燥させて、カーボンナノチューブを含有する塗膜を得た。(株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体低効率測定システムMCP−PD−51を用いて、上記塗膜の表面抵抗(
Ω/□)を測定した。
カーボンナノチューブの導電性の評価基準は、上記塗膜の表面抵抗が10
4(
Ω/□)以下の場合を◎(良)、10
6(
Ω/□)以上の場合を×(不良)とした。
【0046】
<走査型電子顕微鏡による観察と平均粒径>
走査型電子顕微鏡(日本電子社製(JEOL、JSM―6700M))によって、カーボンナノチューブ合成用触媒またはカーボンナノチューブの形態観察を実施した。観察は、カーボンナノチューブ合成用触媒またはカーボンナノチューブをカーボンペーパー上にそのままの状態で散布して実施した。約100個のカーボンナノチューブ合成用触媒またはカーボンナノチューブの一次粒子の短軸と長軸の径の長さを計測し、その数平均値をもってカーボンナノチューブ合成用触媒またはカーボンナノチューブの平均粒径(nm)とした。
【0047】
<カーボンナノチューブ合成用触媒の製造>
(実施例1)[カーボンナノチューブ合成用触媒(a)の製造]
酢酸コバルト・四水和物200g、金属マンガン2.4g、および担持成分として酢酸マグネシウム・四水和物172gをビーカーに秤取り、水1488g加えて、均一になるまで撹拌した。耐熱性容器に移し替え、電気オーブンを用いて、190±5℃の温度で30分乾燥させ水分を蒸発させた後、乳鉢で粉砕して触媒(a)の前駆体を得た。得られた触媒(a)の前駆体400gを耐熱容器に秤取り、マッフル炉にて、空気中500℃±5℃雰囲気下で30分焼成した後、乳鉢で粉砕して触媒(a)を得た。
【0048】
(実施例2〜8)[カーボンナノチューブ合成用触媒(b)〜(h)の製造]
実施例1で使用した金属マンガン2.4gの替わりに、表1に掲載した原料(マンガン塩と担持成分の種類)と仕込み量に、また表2に掲載した焼成温度に変更した以外は、実施例1と同様な方法により、それぞれカーボンナノチューブ合成用触媒(b)〜(h)を得た。
【0049】
【表1】
【0050】
表2に、実施例1〜8で作製したカーボンナノチューブ合成用触媒を製造する際の焼成条件と、得られたカーボンナノチューブ合成用触媒の物性を示す。
【0051】
【表2】
【0052】
(比較例1〜4)[カーボンナノチューブ合成用触媒(i)〜(l)の製造]
実施例1で使用した金属マンガン2.4gの替わりに、表3に掲載した原料(マンガン塩と担持成分の種類)と仕込み量に、また表4に掲載した焼成温度に変更した以外は、実施例1と同様な方法により、それぞれカーボンナノチューブ合成用触媒(i)〜(l)を得た。
【0053】
【表3】
【0054】
表4に比較例1〜4で作製したカーボンナノチューブ合成用触媒を製造する際の焼成条件と、得られたカーボンナノチューブ合成用触媒の物性を示す。
【0055】
【表4】
【0056】
<カーボンナノチューブの製造>
(実施例9)
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10リットルの横型反応管の中央部に、カーボンナノチューブ合成用触媒(a)1.0gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。アルゴンガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気をアルゴンガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積%以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心部温度が700℃になるまで加熱した。700℃に到達した後、毎分0.1リットルの流速で1分間、水素ガスを反応管内に導入し、触媒を活性化処理した。その後、炭素源としてエタノールを毎分1リットルの流速で反応管内に導入し、4時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスをアルゴンガスで置換し、反応管内の温度を100℃以下になるまで冷却し、得られたカーボンナノチューブを採取した。得られたカーボンナノチューブは、導電性、分散性を比較するため、80メッシュの金網で粉砕ろ過した。
【0057】
(実施例10〜19)(比較例1〜4)
実施例9で使用したカーボンナノチューブ合成用触媒(a)の替わりに、表5に掲載したカーボンナノチューブ合成用触媒および反応条件に変更した以外は、実施例9と同様な方法により、それぞれカーボンナノチューブを得た。
【0058】
【表5】
【0059】
表6に、実施例9〜19、比較例1〜4で得られたカーボンナノチューブの体積抵抗率、嵩密度、導電性の評価結果を示す。
【0060】
【表6】
【0061】
上記結果から、本発明のカーボンナノチューブ合成用触媒を用いた場合、比較例で使用した触媒を用いた場合よりも、低い表面抵抗率を示すカーボンナノチューブおよび低い体積抵抗率を示す樹脂組成物が得られ、高い導電性を有するカーボンナノチューブが効率的に得られることが明らかとなった。