(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発熱体に接触する前記線状構造体の各々と、前記放熱体に接触する前記線状構造体の各々は被膜に覆われ、前記第1硬質層と前記第2硬質層の硬度は、前記被膜の硬度と同じかそれ以上であることを特徴とする請求項5に記載の電子部品。
一対のシート状構造体であって、各シート状構造体が、複数の線状構造体の成長端を埋め込む金属膜と前記金属膜よりも前記線状構造体の根元側に位置し前記金属膜よりも硬度の高い硬質層とを有する一対のシート状構造体を用意し、
前記一対のシート状構造体を、前記金属膜同士を合わせて重ねた状態で発熱体と放熱体の間に配置し、
前記重ね合わせた前記一対のシート状構造体に一定の荷重下で熱を印加して前記金属膜を一体化させた接合層を形成して、前記発熱体と前記放熱体とを熱的に接続する、
ことを特徴とする電子部品の組立方法。
【背景技術】
【0002】
サーバーやパーソナルコンピュータの中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)などに用いられる電子部品は、半導体素子から発する熱を効率よく放熱するために、半導体素子の直上に銅などの熱伝導性のヒートスプレッダを配置した構成を有している。半導体素子とヒートスプレッダ間の熱的な接触には、インジウムシートなどが用いられている。しかしながら、インジウムの熱伝導度(80W/m・K)は高いとはいえず、半導体素子から生じる熱を効率的に放熱させるために、さらに高い熱伝導度を有する材料が望まれる。コスト面からも、インジウムよりも安価な代替材料が望ましい。
【0003】
インジウムよりも高い熱伝導度を有する材料として、カーボンナノチューブが注目されている。カーボンナノチューブは、高い熱伝導度(1500〜3000W/m・K)を有するだけでなく、柔軟性や耐熱性に優れた材料であり、放熱材料として高いポテンシャルを有している。
【0004】
配向カーボンナノチューブを、半導体素子とヒートスプレッダの間に介在させるサーマルインターフェイスマテリアル(TIM:Thermal Interface Material)として用いた場合、カーボンナノチューブの両端の界面コンタクトが熱特性に影響を及ぼす。近年、TIM材料として材料厚みが200μm以上のものが要求されているが、長さが200μm以上の配行カーボンナノチューブを形成した場合、長さバラツキ、コンタクト面積の低減といった課題が生じる。
【0005】
カーボンナノチューブを用いた放熱構造体として、基板上に配向成長したカーボンナノチューブ束を樹脂等によって埋め込んだ放熱構造体が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法により、カーボンナノチューブの各々を長手方向に熱伝導性の被膜層で覆って、カーボンナノチューブの束状構造体の機械的強度を高める構成が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
放熱シート以外の用途として、2つのカーボンナノチューブ構造体を噛み合わせた係止ファスナーや(たとえば、特許文献3参照)、同じく2つのカーボンナノチューブ構造体を噛み合わせた燃料電池の電極膜(たとえば、特許文献4参照)が知られている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に至る過程で考えられるシート状構造体に生じる問題を説明するための図である。
【0013】
カーボンナノチューブをサーマルインターフェイスマテリアル(TIM)として用いる場合、その熱抵抗は、カーボンナノチューブ自身の熱抵抗、カーボンナノチューブと発熱体(LSIチップ等)の間の接触熱抵抗、及びカーボンナノチューブと放熱体(ヒートスプレッダ等)の間の接触熱抵抗の和になる。カーボンナノチューブ自体の熱伝導率は高く全体の熱抵抗に占めるカーボンナノチューブの熱抵抗は小さい。全体の熱抵抗を低減するためには、接触熱抵抗を低減することが重要である。
【0014】
配向成長したカーボンナノチューブをTIM材料として使用した場合、両端の界面コンタクトが熱特性に影響する。近年TIM材料として厚みが200μm以上のものが要求されているが、200μm以上の長さの配向カーボンナノチューブは長さのばらつきが大きく、成長端と放熱体又は発熱体との間の接触熱抵抗が増大する。
【0015】
そこで考えられるのが、
図1(A)に示すように、長さばらつきが少なく接触界面への追従性に優れた2つのカーボンナノチューブ(CNT)シート110Aと110Bを金属膜115で重ね合わせることである。CNTシート110A、110Bにおいて、樹脂層113から突き出たカーボンナノチューブ111の成長端に金属膜115を形成し、金属膜115同士を接合することで、2段に重ねられたカーボンナノチューブ111を熱的に接続する。
【0016】
金属膜115は、熱インタフェースとして機能することから、熱伝導性が良好で膜厚の小さい低融点金属膜115であるのが望ましい。接合時には、低融点金属膜115を溶融してCNTシート110Aと110Bを接合する。
【0017】
カーボンナノチューブ111に機械的強度を付与する被膜112が施されている場合、
図1(B)に示すように、加熱・加圧により一体化された低融点金属の接合層120を、カーボンナノチューブ111が突き抜けてしまうという問題が生じる。カーボンナノチューブ111が接合層120を突き抜けると、TIMの厚みが低減するだけではなく、TIMの厚さ方向に沿った熱伝導の効率が低下する。
【0018】
そこで、以下の実施形態では、厚さと、厚さ方向への熱のパスを維持することのできるシート状構造体とその製造方法を提供する。
【0019】
図2は、実施形態のシート状構造体10A、10Bと、これを用いた電子部品1の概略構成図である。
図2(A)のシート状構造体10A、10Bを、発熱体30と放熱体40の間に配置して熱を印加することで、
図2(B)のように熱伝導性部材50を有する電子部品1を組み立てることができる。
【0020】
シート状構造体10Aと10Bの各々は、複数の線状構造体11と、複数の線状構造体11の成長端を埋める低融点金属膜15と、低融点金属膜15よりも線状構造体11の根元側に位置し、低融点金属膜15よりも硬度の高い硬質層25を有する。線状構造体11は、熱伝導性の元素が線状に成長した構造体であり、実施形態では、単層または多層のカーボンナノチューブ11である。
【0021】
低融点金属膜15は、線状構造体11の長さばらつきを吸収する厚さに形成されるが、熱抵抗を低減するために、なるべく薄いほうが望ましい。ここで、低融点金属とは一般に錫(Sn)の融点よりも低い融点を持つ金属をいうが、発熱体30の外部接続端子の融点及び端子周りの回路材料の融点よりも低い融点を有する金属と定義してもよい。
【0022】
図2の例では、各カーボンナノチューブ11は被膜12で覆われ、硬質層25よりも根元(基部)側に、束状のカーボンナノチューブ11の隙間を充填する樹脂層13が形成されている。被膜12を形成することで、各カーボンナノチューブ11の機械的強度が高くなる。樹脂層13を形成することで、シート状構造体10A、10Bの取り扱いが容易になる。樹脂層13は、シート状構造体10A、10Bを発熱体30と放熱体40の間に組み込んで電子部品1を作製する際の接着層としても機能し、組立時にカーボンナノチューブ11と発熱体30の界面、及びカーボンナノチューブ11と放熱体40との界面から容易に流動する熱可塑性樹脂である。
【0023】
第1のシート状構造体10Aの低融点金属膜15と、第2のシート状構造体10Bの低融点金属膜15を重ね合わせて、一定荷重の下に熱を印加することで、低融点金属膜15同士が溶融し、一体化して、
図2(B)の熱伝導性部材50が得られる。
【0024】
熱伝導性部材50は、第1部分19Aと、第2部分19Bと、第1部分19Aと第2部分19Bの間に位置して第1部分19Aと第2部分19Bを熱的に接合する接合層17を有する。第1部分19Aと第2部分19Bは接合層17に対して対称に配置されている。第1部分19Aは、成長端が接合層17の内部に位置する複数の線状構造体11と、接合層17よりも線状構造体11の根元(基部)側に位置し、接合層17よりも硬度の高い硬質層25を有する。第2部分19Bも同様に、成長端が接合層17の内部に位置する複数の線状構造体11と、接合層17よりも線状構造体11の根元(基部)側に位置し、接合層よりも硬度の高い硬質層25を有する。
【0025】
2つのカーボンナノチューブ11の束を接合層で重ね合わせ、接合層17を一対の硬質層25で挟むことで、熱伝導性部材50の厚さが確保され、かつ厚さ方向への熱のパスを維持することができる。
【0026】
熱伝導性部材50と発熱体30の界面、及び熱伝導性部材50と放熱体40の界面にはカーボンナノチューブ11の根元側が位置する。カーボンナノチューブ11の根元では長さばらつきはほとんどなく、海面での接触面積を大きくすることができる。したがって、放熱効率のよい電子部品1が実現される。
【0027】
図3〜
図5は、実施形態のシート状構造体10A、10Bの製造工程図である。まず、
図3(A)に示すように、基板2上に複数のカーボンナノチューブ11を成長する。カーボンナノチューブ11の面密度は、放熱性と電気伝導性の観点から、1×10
10本/cm
2以上であることが望ましい。カーボンナノチューブ11の長さは、熱拡散シートあるいはTIMシートの用途によって決まり、特に限定されるものではないが、100μm〜300μm程度に設定することができる。
【0028】
基板2として、シリコン基板などの半導体基板、アルミナ(サファイア)基板、MgO基板、ガラス基板などを用いることができる。あるいは、これらの基板上に薄膜が形成されたものであってもよく、一例としてシリコン基板上に膜厚300nm程度のシリコン酸化膜が形成された基板を用いてもよい。
【0029】
基板2はカーボンナノチューブ11の形成後に剥離される。したがって、基板2としては、カーボンナノチューブ11の成長温度で変質しないこと、少なくともカーボンナノチューブ11に接する面がカーボンナノチューブ11から容易に剥離できる材料またはカーボンナノチューブ11に対して選択的にエッチングできる材料で構成されていることが望ましい。
【0030】
カーボンナノチューブ11を形成するために、基板2に図示しない触媒層、たとえば厚さ2.5nmのFe(鉄)膜をスパッタ法により形成する。このとき、カーボンナノチューブ11の用途に応じて触媒金属膜の配置パターンを決定する。触媒金属としてはFeのほか、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)又はこれらのうち少なくとも一の材料を含む合金を用いてもよい。触媒金属膜に替えて、微分型静電分級器(differential mobility analyzer;DMA)等を用いて、あらかじめサイズを制御して作製した金属微粒子を用いてもよい。この場合の金属種は薄膜と同様のものでよい。触媒金属膜の下地膜として、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、TaN(窒化タンタル)、TiSi
x(チタンシリサイド)、Al(アルミニウム)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)、TiO
x(酸化チタン)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Cu(銅)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、TiN(チタンナイトライド)よりなる膜又はこれらのうち少なくとも一の材料を含む合金からなる膜を形成してもよい。例えば、Fe(2.5nm)/Al(10nm)の積層構造、Co(2.6nm)/TiN(5nm)の積層構造等を適用することができる。金属微粒子を用いる場合は、例えばCo(平均粒径3.8nm)/TiN(5nm)の積層構造を適用することができる。
【0031】
触媒金属膜を触媒として、基板2上に、たとえばホットフィラメントCVD法によりカーボンナノチューブ11を成長する。カーボンナノチューブ11の成長条件は、たとえば原料ガスとしてアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:9)を用い、成膜室内の総ガス圧を1kPa、ホットフィラメント温度を1000℃、成長時間を20分とする。これにより、層数が3〜6層(平均4層程度)、直径が4〜8nm(平均6nm)、長さが80μm(成長レート:4μm/min)の多層カーボンナノチューブを成長することができる。この成長条件で形成したカーボンナノチューブ11の面密度は、1×10
11本/cm
2程度である。
【0032】
カーボンナノチューブ11は、熱CVD法やリモートプラズマCVD法などの他の成膜方法により形成してもよい。また、成長するカーボンナノチューブ11は、単層カーボンナノチューブでもよい。また、炭素原料としては、アセチレンのほか、メタン、エチレン等の炭化水素類や、エタノール、メタノール等のアルコール類などを用いてもよい。いずれの場合も、基板2の触媒金属膜が形成された領域上に、基板2の表面に対して垂直配向した複数のカーボンナノチューブ11を形成することができる。
【0033】
次に、
図3(B)に示すように、配向成長したカーボンナノチューブ11の成長側から、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法を用いて被膜12を形成する。被膜12の材料は、カーボンナノチューブ11の熱伝導率と同等または近似する熱伝導率を有し、ALD法を適用することのできる材料であれば、特に限定されない。たとえば、金属や金属酸化物を用いることができる。金属酸化物を用いる場合は、アルミニウム酸化物(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸化物(TiO
X)、ハフニウム酸化物(RuO
X)、鉄酸化物(FeO
X)、インジウム酸化物(InO
X)、ランタン酸化物(LaO
X)、モリブデン酸化物(MoO
X)、ニオブ酸化物(NbO
X)、ニッケル酸化物(NiO)、ルテニウム酸化物(RuO
X)、シリコン酸化物(SiO
2)、バナジウム酸化物(VO
X)、タングステン酸化物(WO
X)、イットリウム酸化物(YO
X)、ジルコニウム酸化物(ZrO
X)等を用いることができる。被膜12の材料として金属を用いる場合は、例えば、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、ランタン(La)等を用いることができる。
【0034】
被膜12をアルミニウム酸化物で形成する場合は、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3)と水(H
2O)を用い、成膜温度を80℃以上とする。被膜12を酸化亜鉛で形成する場合は、原料ガスとしてジエチル亜鉛(Zn(C
2H
5)
2)と水(H
2O)を用い、成膜温度を80℃以上とする。被膜12の膜厚は特に限定されないが、カーボンナノチューブ11の弾性を向上する観点から1nm〜20nm程度とするのが望ましい。
【0035】
次に、
図4(A)で、カーボンナノチューブ11の成長端に、低融点金属膜15を形成する。低融点金属膜15は熱伝導性が良好で加熱・加圧による融着に適した材料である。たとえば、抵抗加熱蒸着装置を用いて、インジウム(In)を2〜5μmの厚さに蒸着する。このとき、低融点金属材料がカーボンナノチューブ11の内部に一定程度入り込み、カーボンナノチューブ11の成長端が低融点金属膜15の中に埋め込まれる。低融点金属膜15に埋め込まれるカーボンナノチューブ11の成長端の長さは、低融点金属膜15の表面に達しない長さであればよく、たとえば、低融点金属膜の膜厚の1/4〜3/4である。
【0036】
次に、
図4(B)で、成長端が低融点金属膜15で覆われた束状のカーボンナノチューブ11を、基板2から剥離する。
【0037】
次に、
図4(C)で、カーボンナノチューブ11の根元側から、樹脂を含浸して樹脂層13を形成する。たとえば、低融点金属膜15の融点よりも低い温度で含侵可能な塑性樹脂シートをカーボンナノチューブ11の根元側の端部に配置し、温度をコントロールして低融点金属膜15の手前まで含浸させる。より具体的には、樹脂の融点よりも10℃程度低い温度に設定したベーク炉に、樹脂シートを乗せたカーボンナノチューブ束を入れて、数十分ベークし、低融点金属膜15の1〜5μm手前まで、好ましくは数μm手前まで樹脂を含浸させる。これにより、低融点金属膜15と樹脂層13の間に所定の間隔の隙間18が形成される。
【0038】
次に、
図5(A)で、低融点金属膜15と樹脂層13との隙間18に、低融点金属膜15よりも硬度の高い硬質層25を形成する。低融点金属膜15と樹脂層13が形成されたカーボンナノチューブ11の束を、カバースペーサ4とカバーマスク5の間に配置し、隙間18部分を露出して、残りの部分を覆い隠す。低融点金属膜15の端面は露出しても被覆してもどちらでもよい。
【0039】
カバースペーサ4は、樹脂層13で保持されたカーボンナノチューブ11の束を受け取る溝6を形成する。溝6は、たとえばDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法により形成することができる。DRIE法はパッシベーション膜を形成する第1のステップと、異方性エッチングを行う第2のステップとを繰り返して行うエッチング法であり、アスペクト比の高い溝6を形成することができる。第1のステップとして、たとえば、コイルパワーを600W、プロセスチャンバー内の圧力を14.5mTorr(約1.93Pa)にして、C
4F
8ガスを130sccmの流量で導入し、6.3秒間の処理を行なう。第2のステップとして、たとえば、コイルパワーを600W、プロセスチャンバー内の圧力を14.5mTorr(約1.93Pa)、基板へのRFパワーを380kHzで23Wとした状態で、SF
6ガスを130sccmの流量で導入し、7.5秒間の処理を行なう。マスク(不図示)の開口率による調整が必要であるが、たとえば、4インチウエハのシリコン(Si)の開口率3%の場合、上述したDRIE処理を120分間行なうことで、深さ200μmの溝6を形成することができる。
【0040】
低融点金属膜15を覆うカバーマスク5として、たとえば剥離温度150℃の熱剥離シート(日東電工製のリバアルファ(商標名))を用いることができる。カバーマスク5とカバースペーサ4の間に位置する隙間18に、ALD法で硬質層25を形成する。ALD法による成膜は、樹脂層13と低融点金属膜15が動かない程度の温度で行うのが好ましい。ALD法は材料元素を一原子層ごとに堆積するためカバレッジが良く、原料ガスが樹脂層13と低融点金属膜15の隙間18で露出するカーボンナノチューブ11の間に入り込んで、カーボンナノチューブ11の間を埋める硬質層25を形成することができる。
【0041】
複数の溝6が形成されたカバースペーサ4を用いる場合は、低融点金属膜15と樹脂層13が形成されたカーボンナノチューブ11の束をそれぞれの溝6に配置し、複数のカーボンナノチューブ11の束に対して、同時に硬質層25を形成することができる。
【0042】
低融点金属膜15にインジウム(In)を用いた場合、熱伝導性が良好で、かつInよりも硬度が高い硬質層25の材料として、Ru、Pt、Ir等の金属や、酸化アルミニウムなどの金属酸化物の層をALD法で形成することができる。
【0043】
次に、
図5(B)で、カバースペーサ4から、硬質層25が形成されたカーボンナノチューブ11の束を取り出すことで、一対のシート状構造体10Aと10Bが得られる。
【0044】
図6は、シート状構造体10A、10Bを用いた電子部品1の構成を示す図である。シート状構造体10Aの低融点金属膜15と、シート状構造体10Bの低融点金属膜15を合わせて、LSIチップ(発熱体)30とヒートスプレッダ(放熱体)40の間に配置する。この状態で、LSIチップ30側とヒートスプレッダ40側から、低融点金属膜15の融点近傍の温度で熱を印加する。低融点金属膜15が溶融して一体化し、熱伝導性部材50の厚さ方向の中間に接合層17が形成される。また、樹脂層13が濡れ広がってカーボンナノチューブ11の根元側がLSIチップ30とヒートスプレッダ40の表面に接触する。図示はしないが、低融点金属膜15同士の接合の工程で、硬質層25や低融点金属膜15(あるいは接合層17)の端面が樹脂層13に覆われてもよい。
【0045】
接合層17は一対の硬質層25で挟まれ、各カーボンナノチューブ11は硬質層25で面内方向に保持されているため、接合層17に対するカーボンナノチューブ11の突き抜けを防止することができる。その結果、熱伝導性部材50の厚さを維持しつつ、厚さ方向の熱のパスを維持してコンタクトロスを低減することができる。
【0046】
実施形態では炭素元素の中空ファイバであるカーボンナノチューブを例にとって説明したが、中空内に炭素鎖を有するカーボンナノワイヤやカーボンナノロッドを用いた線状構造体にも適用可能である。また、炭素元素に限定されず、炭化ケイ素(SiC)、銀(Ag)などの熱伝導性のナノワイヤに適用することもできる。いずれの場合も、ナノワイヤの成長端を覆う低融点金属膜15の内側に、低融点金属膜15よりも硬度の高い硬質層25を配置した2つのシート状構造体10A、10Bを低融点金属膜15で接合することによって、膜厚と、厚さ方向への熱のパスを維持した熱伝導性部材50を実現することができる。
【0047】
実施形態では、カーボンナノチューブ11の間に樹脂層13を形成したが、樹脂層13を形成しない場合は、成長端に低融点金属膜15を形成した後に、カーボンナノチューブ11の束を、カバースペーサ4の溝6内に配置する。この場合、溝6の深さを、低融点金属膜15の界面から根元側に向かって1〜5μmの長さだけカーボンナノチューブ11が溝6の外に露出する深さに設定する。これにより、低融点金属膜14よりも根元側に、低融点金属膜15よりも硬度の高い硬質層をALD法で形成することができる。この方法で作製されたシート状構造体10A、10Bを電子部品1に組み込む場合は、低融点金属膜15の融点より低い含浸温度を有する接着層をあらかじめ発熱体30と放熱体40の表面に設けておいてもよい。
【0048】
以下の説明に対し、以下の付記を提示する。
(付記1)
一定方向に延びる複数の線状構造体と、
前記複数の線状構造体の成長端に形成された金属膜と、
前記金属膜よりも前記線状構造体の根元側に位置し、前記金属膜よりも硬度の高い硬質層と、
を有することを特徴とするシート状構造体。
(付記2)
前記複数の線状構造体の各々を被覆する被膜、
をさらに有し、
前記硬質層の硬度は、前記被膜の硬度と同じかそれ以上であることを特徴とする付記1に記載のシート状構造体。
(付記3)
前記複数の線状構造体の根元側に位置し、前記金属膜の融点よりも低い含浸温度を有する樹脂層、
をさらに有し、
前記硬質層は、前記樹脂層と前記金属膜の間に位置することを特徴とする付記1に記載のシート状構造体。
(付記4)
前記硬質層の厚さは1〜5μmであることを特徴とする、付記1に記載のシート状構造体。
(付記5)
前記金属膜は、錫よりも低い融点の低融点金属膜であることを特徴とする付記1に記載のシート状構造体。
(付記6)
基板上に複数の線状構造体を成長し、
前記被膜を有する線状構造体の成長端に、前記成長端を埋め込む金属膜を形成し、
前記金属膜よりも前記線状構造体の根元側に、前記金属膜よりも硬度の高い硬質層を形成する、
ことを特徴とするシート状構造体の製造方法。
(付記7)
前記硬質層の形成は、前記線状構造体を前記金属膜から前記根元側へ向かう所定の長さだけ露出し、その他の部分を覆った状態で前記原子層堆積法により形成することを特徴とする付記6に記載のシート状構造体の製造方法。
(付記8)
前記複数の線状構造体の各々に被膜を形成した後に、前記金属膜を形成することを特徴とする付記6に記載のシート状構造体の製造方法。
(付記9)
発熱体と、
放熱体と、
前記発熱体と放熱体の間に位置する熱伝導性部材と、
を有し、
前記熱伝導性部材は、前記発熱体に接触する複数の線状構造体を有する第1部分と、前記放熱体に接触する複数の線状構造体を有する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分の間に位置する低融点金属の接合部とを有し、
前記第1部分の前記線状構造体の成長端と、前記第2部分の線状構造の成長端は、前記接合層の中に埋め込まれ、
前記接合層は、前記第1部分に位置し前記接合層よりも硬度の高い第1硬質層と、前記第2部分に位置し前記接合層よりも硬度の高い第2硬質層とに挟まれている
ことを特徴とする電子部品。
(付記10)
前記発熱体に接触する前記線状構造体の各々と、前記放熱体に接触する前記線状構造体の各々は被膜に覆われ、前記第1硬質層と前記第2硬質層の硬度は、前記被膜の硬度と同じかそれ以上であることを特徴とする付記8に記載の電子部品。
(付記11)
前記第1硬質層と前記発熱体の間、及び前記第2硬質層と前記放熱体の間で、前記線状構造体の間を充填する樹脂層、
をさらに有することを特徴とする付記8に記載の電子部品。
(付記12)
一対のシート状構造体であって、各シート状構造体が、複数の線状構造体の成長端を埋め込む金属膜と前記金属膜よりも前記線状構造体の根元側に位置し前記金属膜よりも硬度の高い硬質層とを有する一対のシート状構造体を用意し、
前記一対のシート状構造体を、前記金属膜同士を合わせて重ねた状態で発熱体と放熱体の間に配置し、
前記重ね合わせた前記一対のシート状構造体に一定の荷重下で熱を印加して前記金属膜を一体化させた接合層を形成して、前記発熱体と前記放熱体とを熱的に接続する、
ことを特徴とする電子部品の組立方法。
(付記13)
前記一対のシート状構造体の前記複数の線状構造体の各々は被膜に覆われていることを特徴とする付記12に記載の電子部品の組立方法。
(付記14)
前記金属膜は、前記発熱体の外部接続端子及び前記接続端子の周辺の回路材料の融点よりも低い融点を有する金属材料で形成されることを特徴とする付記11に記載の電子部品の組立方法。
(付記15)
前記一対のシート状構造体の少なくとも一方は、前記線状構造体の根元側に前記金属膜の溶融温度よりも低い含浸温度を有する樹脂層を有し、
前記熱の印加により、前記前記線状構造体の根元が、前記発熱体及び/又は前記放熱体と接着することを特徴とする付記11に記載の電子部品の組立方法。