(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分離機能層が多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合により得られるポリアミドであって、前記ポリアミドを構成する前記多官能アミン成分と前記多官能酸ハロゲン化物成分の存在比が下式の関係にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合半透膜。
多官能アミン成分のモル数/多官能酸ハロゲン化物成分のモル数≧1.6
前記分離機能層の任意の10箇所において、ナノインデンテーション法による硬さ試験で変位が50nmになるように押し込んだときの平均荷重が0.50μN以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合半透膜。
NaClの濃度が3.5重量%、温度が25℃、pHが6.5の水溶液を、5.5MPaの操作圧力で複合半透膜に供給することで、24時間に渡ってろ過処理を行った後に、
5.5MPaの操作圧力において1分間保持、次いで30秒間で0MPaまで降圧、さらに1分間保持後、30秒間で5.5MPaまで昇圧するサイクルで前記複合半透膜によるろ過処理を5000回繰り返し、
さらにその後4.0MPaの操作圧力で水溶液を前記複合半透膜に透過させた際の造水量が、1.00m3/m2/日以上、かつ脱塩率が99.80%以上である、請求項1〜
9のいずれか1項に記載の複合半透膜。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0013】
1.複合半透膜
複合半透膜は、基材および前記基材上に設けられた多孔性支持層を含む多孔性支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを備える。
【0014】
(1−1)分離機能層
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層である。分離機能層の組成および厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
一般に、分離機能層上の突起(以下、「ひだ」と称することもある。)の高さを拡大すると、透水性は向上するものの塩透過性も大きくなる。しかも、過度に拡大したひだの存在は、加圧時に変形しやすいので、加圧時に、膜表面積の低下および部分的な破壊により、透水性および塩除去性を低下させる原因となる。特に、比較的高い圧力で運転される海水淡水化用の複合半透膜の場合は、この傾向が性能に現れやすい。
【0015】
そこで本発明者らは、表面の突起構造に着目し、鋭意検討を行った。その結果、突起の数密度と高さを精密に制御することにより、高い塩除去性と透水性を両立できることを見出した。しかも、頻繁に運転および停止が繰り返されるろ過装置に用いられる場合など、圧力が変動する系においては、突起の数密度が低く、高さが高い膜よりも、突起の数密度が高く、高さが低い膜のほうが透水性の変化が少ないことを見出した。
【0016】
本発明における分離機能層の突起の平均高さは、好ましくは100nm未満、より好ましくは90nm未満である。突起の高さが100nm未満であることで、複合半透膜を含むろ過装置において頻繁に運転および停止が繰り返されるなどの、圧力が変動する条件下でも、ひだが変形したり潰れたりすることなく、安定した膜性能を得ることができる。
【0017】
また、分離機能層の突起の平均数密度は、好ましくは10.0個/μm以上であり、より好ましくは13.0個/μm以上である。平均数密度が10.0個/μm以上であることで、複合半透膜の表面積が増大して十分な透水性を得られ、さらには加圧時の突起の変形を抑えることもでき、安定した膜性能を得られる。
また、分離機能層の突起の平均数密度は、好ましくは30.0個/μm以下である。平均数密度が30.0個/μm以下であることで、突起同士が接触することで実効的な表面積が減少することを抑制できる。
【0018】
突起の高さおよび数密度とは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する突起について測定される値である。
【0019】
10点平均面粗さとは、次のような算出方法で得られる値である。
まず電子顕微鏡により、膜面に垂直な方向の断面を下記の倍率で観察する。得られた断面画像には、分離機能層(
図1に符号“1”で示す。)の表面が、複合半透膜の膜面方向(膜の表面に平行な方向)に凸部と凹部が連続的に繰り返される、ひだ構造の曲線として表れる。この曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される粗さ曲線を求める。
上記粗さ曲線の平均線の方向に2.0μmの幅で断面画像を抜き取る(
図1)。ここで、平均線とは、ISO4287:1997に基づき定義される直線であり、測定長さにおいて、平均線と粗さ曲線とで囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
抜き取った幅2.0μmの画像において、上記平均線を基準線として、分離機能層における突起の山頂の高さと、谷底の深さをそれぞれ測定する。最も高い山頂から5番目までの5つの山頂の高さH1〜H5の絶対値について平均値を算出し、最も深い谷底から5番目まで5つの谷底の深さD1〜D5の絶対値について平均値を算出して、さらに、得られた2つの平均値の絶対値の和を算出する。こうして得られた和が、10点平均面粗さである。なお、
図1では説明の便宜上、基準線を水平方向に平行に描いている。
【0020】
分離機能層の断面は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、複合半透膜サンプルに白金、白金−パラジウムまたは四酸化ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)を用いて観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。観察倍率は5,000〜100,000倍が好ましく、突起の高さを求めるには10,000〜50,000倍が好ましい。得られた電子顕微鏡写真において、観察倍率を考慮して、突起の高さをスケールなどで直接測定することができる。
【0021】
突起の平均数密度は次のようにして測定される。複合半透膜において、任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、上述の10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する突起を数える。各断面での数密度(つまり1μm当たりの突起数)を算出し、さらに10箇所の断面における数密度から、相加平均値を算出することで、平均数密度が得られる。ここで、各断面は、上記粗さ曲線の平均線の方向において、2.0μmの幅を有する。
【0022】
また、突起の平均高さは次のようにして測定される。複合半透膜において、任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、上述の10点平均面粗さの5分の1以上である突起の高さを測定して、1個の突起当たりの高さ平均を算出する。さらに、10箇所の断面についての算出結果に基づいて、相加平均を算出することで、平均高さが得られる。ここで、各断面は、上記粗さ曲線の平均線の方向において、2.0μmの幅を有する。
【0023】
突起の高さの標準偏差は、平均高さと同様に、10箇所の断面において測定された、10点平均面粗さの5分の1以上である突起の高さに基づいて、算出される。
【0024】
分離機能層の突起の高さの標準偏差は70nm以下であることが好ましい。標準偏差がこの範囲内であれば、突起の高さが均一であることで、複合半透膜を高圧で運転して使用する際にも安定した膜性能を得ることができる。
【0025】
分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有してもよい。分離機能層を構成するポリアミドは、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能アミンまたは多官能酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
【0026】
なお、本明細書において、「XがYを主成分として含有する」とは、YがXの60重量%以上であることを意味しており、中でも80重量%以上が好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、Xが実質的にYのみを含有する構成が特に好ましい。
【0027】
ポリアミドを主成分とする分離機能層(ポリアミド分離機能層)の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内が好ましく、0.1〜0.5μmの範囲内がより好ましい。
【0028】
ここで、多官能アミンとは、一分子中に少なくとも2個の、第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいう。例えば、多官能アミンとして、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン;1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン;等を挙げることができる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、多官能アミンは、一分子中に2〜4個の、第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基である芳香族多官能アミンであることが好ましい。このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、「m−PDA」と称する。)を用いることが好ましい。
【0029】
これらの多官能アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
【0030】
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができる。2官能酸ハロゲン化物としては、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物;アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物;シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物;を挙げることができる。多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましい。また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、多官能酸塩化物は一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることがより好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドが好ましい。これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
【0031】
ポリアミド分離機能層が多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合により得られるポリアミドである事が好ましい。この場合、該ポリアミド分離機能層を構成する多官能アミン成分と多官能酸ハロゲン化物成分の存在比は、「1.6≦多官能アミン成分のモル数/多官能酸ハロゲン化物成分のモル数≦1.9」の関係を満足することがより好ましい。前記存在比がこの範囲であることで、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物の間に十分な架橋が形成され、圧力が変動する条件下でも形状を維持できる十分な物理的耐久性を実現できる。また、ポリアミド中に残存するカルボキシ基の数が十分に低減されるので、カルボキシ基同士の電荷反発に起因する構造変化を抑制できる。前記存在比は1.7以上1.9以下であるとさらに好ましい。
【0032】
また、ポリアミド分離機能層の官能基として存在するアミノ基を後処理によって他の官能基に置換してもよい。例えば、亜硝酸ナトリウムと酸性下で接触させることにより、イオン性のアミノ基を低減することで、アミノ基同士の電荷反発を抑制する等の処理を行ってもよい。後処理後のポリアミド分離機能層においても、元の成分である多官能アミン成分由来の成分と、多官能酸ハロゲン化物成分由来の存在比を用いて、「多官能アミン成分のモル数/多官能酸ハロゲン化物成分のモル数」で表した際の存在比が1.6以上1.9以下であることが好ましい。
【0033】
ポリアミド分離機能層における多官能アミン成分と多官能酸ハロゲン化物成分の存在比は、多孔性支持膜から剥離した分離機能層を
13C−NMR測定することや、多孔性支持膜から剥離した分離機能層を強アルカリ水溶液で加水分解した試料を用いて
1H−NMR測定することで分析できる。
【0034】
分離機能層をナノインデンテーション法による硬さ試験で変位が50nmになるように押し込んだときの平均荷重は、0.50μN以上であることが、物理的耐久性の観点から好ましい。ここで、硬さ試験の具体的な手法は実施例に記載のとおりであるが、分離機能層の任意の10箇所において測定した際の荷重の平均を「平均荷重」とする。
分離機能層は、少なくとも実施例に記載の手法で測定された結果として、0.50μNの平均荷重を示せばよいが、特に頻繁かつ高圧の運転・停止が繰り返される運転条件下での物理的耐久性の点から平均荷重が1.00μN以上であることがより好ましい。
【0035】
(1−2)多孔性支持膜
多孔性支持膜(以下、単に「支持膜」と称することもある。)は、基材と多孔性支持層とを備えるものであり、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する分離機能層に強度を与えることができる。
【0036】
支持膜の厚みは、複合半透膜の強度およびそれを膜エレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。
【0037】
なお、本書において、特に付記しない限り、各層および膜の厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、各層および膜の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
【0038】
[多孔性支持層]
多孔性支持層は、下記素材を主成分として含有することが好ましい。多孔性支持層の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなどが使用され、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用される。中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられる。これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが特に好ましくに使用できる。
【0039】
具体的には、多孔性支持層の素材として、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンは、孔径の制御が容易であり、寸法安定性が高いため好ましい。
【0041】
多孔性支持層は、例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以下、単に「DMF」と称する。)溶液を、基材上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって得られる。この方法によって、表面の大部分が直径1〜30nmの微細な孔を有する多孔性支持層を得ることができる。
【0042】
また、多孔性支持層の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜100μmの範囲内である。なお、基材の厚みは10〜250μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜200μmの範囲内である。
【0043】
多孔性支持層は基材上に設けられ、多孔性支持層の表面(つまり分離機能層に対向する面)は粒状の構造を有するが、粒密度が高いほど、分離機能層における突起の数密度は高くなる。これは、以下の理由によると考えられる。
【0044】
分離機能層の形成においては、支持膜に上記の多官能アミン水溶液が接触し、多官能アミン水溶液は重縮合時に多孔性支持層の内部から表面へと移送される。多孔性支持層の表面は重縮合の反応場として機能し、多孔性支持層内から反応場へと多官能アミン水溶液が供給されることで、分離機能層の突起が成長する。反応場である多孔性支持層の表面における粒の数密度が大きいと、突起の成長点が多くなり、結果として突起の数密度は高くなる。一般的に、表面における粒の数密度が高い多孔性支持層は、緻密で空隙率が小さく、孔径が小さい。
【0045】
その一方で、多孔性支持層の空隙率が高く、孔径が大きく、連続性が高いと、孔径が大きくなり、モノマーの供給速度が大きくなるので、突起は高く成長しやすい。
【0046】
このように、多孔性支持層の多官能アミン水溶液保持容量、放出速度および供給量によって突起の高さや厚みが決定し、表面構造によって突起の数密度を制御することができる。具体的には、多孔性支持層において、上述の突起の高さおよび数密度を両立するために、基材側の部分は空隙率が高く、孔径が大きく、連続性が高いことが好ましく、分離機能層側の部分は粒の数密度が高いことが好ましい。
そのような構造の例として、多孔性支持層は、多官能アミン水溶液を効率的に移送する第1層と、第1層よりも分離機能層寄りに位置し、突起の数密度を制御する第2層とを備える、多層構造をとることが好ましい。特に、第1層は基材に接することが好ましく、第2層は分離機能層に接するように、多孔性支持層の最表層に位置することが好ましい。
なお、上記第1層と第2層は、いずれも高分子溶液を基材上に塗布することにより形成されるが、その製造方法については後述する。
【0047】
第1層は、分離機能層の形成に必要なモノマーである多官能アミン水溶液を重合場へ移送する役割を果たす。モノマーを効率的に移送するためには連続した細孔を有していることが好ましい。特に、その孔径は0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0048】
第2層は、上述したように、重合の場となり、かつモノマーを保持および放出することで、形成する分離機能層へモノマーを供給する役割を果たすと共に、突起成長の起点としての役割も果たす。
【0049】
ここで、表面における粒の数密度が高い多孔性支持層は数密度の高い突起を形成できるが、緻密であるため重合場へのモノマーの移送速度が小さく、形成される突起の高さが小さく不均一になる課題がある。このとき、連続した細孔を有する層である前記の第1層を基材側に、この緻密な層を第2層として第1層の上に薄く積層させ、多孔性支持層とすることにより、モノマーの移送速度を補うことができるので、高さが大きく均一な突起を形成できる。このように、突起の高さ、均一性および数密度を同時に制御するためには、多孔性支持層が、第1層とその上に形成された第2層とを備えることが好ましい。
【0050】
さらに、多孔性支持層に含まれる層の界面は、連続構造であることが好ましい。ここで多孔性支持層に含まれる層の界面とは、例えば、前記第1層と第2層との界面である。
連続構造とは、層間にスキン層を形成しない構造を指す。ここでいうスキン層とは、高い密度を有する部分を意味する。具体的には、スキン層の表面細孔は、1nm以上50nm以下の範囲内にある。層間にスキン層が形成された場合には、多孔性支持層中に高い抵抗が生じるため、透過流速は劇的に低下する。
【0051】
多孔性支持層の平均膜厚をdとしたとき、分離機能層との界面からの距離が0〜0.1dの部分の多孔性支持層の平均空隙率φ
1は0.35未満であることが好ましい。平均空隙率がこの範囲であることで表面における粒の数密度が大きい多孔性支持層が得られ、その結果、分離機能層の突起の数密度も高くなることから、圧力変動に耐えうる突起構造が実現される。
分離機能層との界面からの距離が0.1d〜dの部分の多孔性支持層の平均空隙率φ
2は0.70よりも大きいことが好ましい。平均空隙率が前記の範囲であることで、反応場へのモノマー供給速度が十分に大きく、かつ均一になる。
【0052】
平均空隙率φ
1及びφ
2が上記範囲であることにより、表面積が大きく、かつ高さが均一な突起が得られることから、造水量と、圧力変動に対する物理的強度を両立した突起構造が得られる。また、モノマーである多官能アミンの供給速度が十分に大きくなることでポリアミド分離機能層に多官能アミンが十分に取り込まれ、先述したポリアミド分離機能層を構成する多官能アミン成分と多官能酸ハロゲン化物成分の存在比を1.6以上とすることが可能となる。
【0053】
上記平均空隙率φ
1、φ
2は次のように求める。まず、多孔性支持層全体の空隙率φ
0を以下の手順により測定する。
10cm四方の多孔性支持層を基材から剥離させる。剥離した多孔性支持層の任意の10箇所の平均膜厚dを、膜厚計を用いて測定することで、剥離した多孔性支持層の体積を求める。剥離した多孔性支持層を6時間真空乾燥させた後の重量を、精密天秤を用いて求める。得られた体積及び重量から、多孔性支持層の空隙率φ
0は、次の式を用いて計算される。
φ
0=1−{(多孔性支持層の重量)/(多孔性支持層の体積)}/(多孔性支持層を形成する樹脂の比重)
【0054】
次に平均空隙率φ
2を求める。
φ
2は、剥離した多孔性支持層の断面の電子顕微鏡画像から求める。まず、基材から剥離した多孔性支持層について、クライオミクロトームを用いて超薄切片を作成し、走査透過型電子顕微鏡(STEM)−エネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて元素マッピングの測定を行う。走査透過型電子顕微鏡は日本電子製JEM−ARM200Fなどを、EDX検出器は日本電子製JED−2300などを用いることができる。多孔性支持層の表面から深さ0.1d〜dの部位の像について、樹脂に特徴的な元素(例えばポリスルホンならば硫黄原子)の分布をEDXによるマッピング画像から抽出し、樹脂が占める部位の面積を求める。樹脂が占める部位の面積と、STEMより得られた空隙を含む断面像の面積の比を測定することで、φ
2を計算することができる。
【0055】
深さ0〜0.1dの部位の平均空隙率φ
1は、多孔性支持層の構造が緻密であることが多く、STEM−EDXの測定では樹脂と空隙を判別することが難しいので、全体の空隙率φ
0と深さ0.1d〜dの平均空隙率φ
2を用いて次の式で計算することによって求めることができる。
φ
1=1−{(1−φ
0)−0.9×(1−φ
2)}/0.1
【0056】
[基材]
支持膜を構成する基材としては、例えば、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等が挙げられるが、機械的強度、耐熱性、耐水性等により優れた支持膜を得られることから、ポリエステル系重合体であることが好ましい。これらは単独で用いても、複数種を同時に用いてもよい。
【0057】
ポリエステル系重合体とは、酸成分とアルコール成分からなるポリエステルである。酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸およびフタル酸などの芳香族カルボン酸;アジピン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;およびシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;などを用いることができる。また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールなどを用いることができる。
【0058】
ポリエステル系重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂およびポリブチレンサクシネート樹脂等が挙げられ、またこれらの樹脂の共重合体も挙げられる。
【0059】
基材に用いられる布帛には、強度、凹凸形成能、流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は基材として高分子重合体の溶液を流延した際の浸透性に優れ、多孔性支持層が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、及びピンホール等の欠点が生じることを抑制できる。基材は特に、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることが好ましい。また、半透膜を連続製膜するときに、製膜方向に対し張力がかけられることからも、基材にはより寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
【0060】
長繊維不織布は、成形性、強度の点で、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維が、多孔性支持層側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造によれば、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現されるだけでなく、半透膜に凹凸を付与する際の、多孔性支持層と基材とを含む積層体としての成形性も向上し、半透膜表面の凹凸形状が安定するので好ましい。より具体的には、前記長繊維不織布の、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度は、0°〜25°であることが好ましく、また、多孔性支持層側表層における繊維配向度との配向度差が10°〜90°であることが好ましい。
以上より、本発明における支持膜を構成する基材としては、ポリエステルを含む、長繊維不織布であることが好ましい。
【0061】
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性支持層または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において、収縮は顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と多孔性支持層側表層における繊維配向度との差が10°〜90°であると、熱による幅方向の変化を抑制することもでき、好ましい。
【0062】
ここで、繊維配向度とは、多孔性支持層を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標である。具体的には、繊維配向度とは、連続製膜を行う際の製膜方向、つまり不織布基材の長手方向と、不織布基材を構成する繊維との間の角度の平均値である。すなわち、繊維の長手方向が製膜方向と平行であれば、繊維配向度は0°である。また、繊維の長手方向が製膜方向に直角であれば、すなわち不織布基材の幅方向に平行であれば、その繊維の配向度は90°である。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
【0063】
繊維配向度は以下のように測定される。まず、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取する。次に、そのサンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影する。撮影像の中で、各サンプルあたり繊維を10本選び、不織布の長手方向(縦方向、製膜方向)を0°としたときの角度を測定する。つまり1つの不織布あたり計100本の繊維について、角度の測定が行われる。こうして測定された100本の繊維についての角度から平均値を算出する。得られた平均値の小数点以下第一位を四捨五入して得られる値が、繊維配向度である。
【0064】
(1−3)造水量および脱塩率
複合半透膜は、NaCl濃度3.5重量%、温度25℃、pH6.5である水溶液を、5.5MPaの操作圧力で、24時間透過させた後の造水量が、1.0m
3/m
2/日以上であり、かつ脱塩率が99.5%以上であることが、逆浸透膜エレメントとして水処理プラントにおいて用いられる際に十分な造水量と高水質を実現できる点から好ましい。また、NaCl濃度3.5重量%、温度25℃、pH6.5である水溶液を、4.0MPaの操作圧力で、複合半透膜に24時間透過させた後の造水量が、1.00m
3/m
2/日以上、かつ脱塩率が99.8%以上であると、より省エネルギーでの運転が可能となるため、さらに好ましい。
【0065】
また、複合半透膜は、
(i)NaClの濃度が3.5重量%、温度が25℃、pHが6.5の水溶液を、5.5MPaの操作圧力で複合半透膜に供給することで、24時間に渡ってろ過処理を行った後に、
(ii)5.5MPaの操作圧力において1分間保持、次いで30秒間で0MPaまで降圧、さらに1分間保持した後、30秒間で5.5MPaまで昇圧するサイクルで前記複合半透膜によるろ過処理を5000回繰り返し、
(iii)さらに、その後5.5MPaの操作圧力で水溶液を前記複合半透膜に透過させた際の造水量が、0.85m
3/m
2/日以上、かつ脱塩率が99.5%以上であることが好ましい。
また、上記(iii)において、操作圧力を4.0MPaとしたときの造水量が、1.00m
3/m
2/日以上、かつ脱塩率が99.80%以上であるとより省エネルギーでの運転が可能となるため、さらに好ましい。
【0066】
2.複合半透膜の製造方法
次に、上記複合半透膜の製造方法について説明する。製造方法は、支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。
【0067】
(2−1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、多孔性基材に高分子溶液を塗布する工程、多孔性基材に高分子溶液を含浸させる工程、および前記溶液を含浸した前記多孔性基材を、高分子の良溶媒と比較して前記高分子の溶解度が小さい凝固浴に浸漬させて前記高分子を凝固させ、三次元網目構造を形成させる工程を含んでもよい。また、支持膜の形成工程は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して高分子溶液を調製する工程を、さらに含んでいてもよい。
【0068】
高分子溶液の基材への含浸を制御することで、所定の構造をもつ支持膜を得ることができる。高分子溶液の基材への含浸を制御するためには、例えば、基材上に高分子溶液を塗布した後、非溶媒に浸漬させるまでの時間を制御する方法、或いは高分子溶液の温度または濃度を制御することにより粘度を調整する方法が挙げられ、これらの方法を組み合わせることも可能である。
【0069】
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、通常0.1〜5秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
【0070】
本発明者らによる鋭意検討の結果、高分子溶液におけるポリマー濃度(すなわち固形分濃度)が高いほど、多孔性支持層の表面における粒の数密度が大きい多孔性支持層が得られ、その結果、分離機能層の突起の数密度も高くなることがわかった。圧力変動に耐えうる突起構造を実現するために、多孔性支持層において、少なくとも分離機能層側の表層が、第2層を形成する固形分濃度を有する高分子溶液を用いて形成されることが好ましい。
【0071】
上述したように、多孔性支持層が第1層および第2層を含む多層構造を備える場合、第1層を形成する高分子溶液Aの組成と第2層を形成する高分子溶液Bとは、互いに組成が異なっていてもよい。ここで「組成が異なる」とは、含有する高分子の種類およびその固形分濃度、添加物の種類およびその濃度、並びに溶媒の種類のうち、少なくとも1つの要素が異なることを意味する。
【0072】
高分子溶液Aの固形分濃度aは、好ましくは12重量%以上であり、より好ましくは13重量%以上である。固形分濃度aが12重量%以上であることで、連通孔が比較的小さく形成されるので、所望の孔径が得られやすい。
また、固形分濃度aは、好ましくは18重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下である。固形分濃度aが18重量%以下であることで、高分子の凝固前に相分離が十分に進行するので、多孔性構造が得られやすい。
【0073】
高分子溶液Bの固形分濃度bは、好ましくは14重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上であり、さらに好ましくは20重量%以上であり、特に好ましくは26重量%以上である。高分子溶液Bのポリスルホン濃度が14重量%以上であることで、運転圧力が大きく変動した際にも、多孔質構造の変形が抑制される。第2層は分離機能層を直接支えるので、第2層の変形は分離機能層の破損の原因となりうる。
また、固形分濃度bは、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下である。高分子溶液Bのポリスルホン濃度が35重量%以下であることで、分離機能層形成時のモノマー供給速度が小さくなりすぎない程度に、多孔性支持層の表面細孔径が調整される。よって、分離機能層形成時に、適切な高さを持つ突起が形成される。
【0074】
固形分濃度aと固形分濃度bとは、a/b≦1.0の関係式を満たすことが、突起の高さを精密に制御し、均一な大きさの突起を作ることによって、より高い塩除去性と透水性を両立することができることから好ましい。また、固形分濃度aと固形分濃度bとが、上述の好ましい数値範囲をそれぞれ満たしつつ、かつ上記関係式を満たすことがより好ましい。
【0075】
以上に述べた「固形分濃度」は、「高分子濃度」に置き換えることができる。また、多孔性支持層を形成する高分子がポリスルホンである場合、以上に述べた「固形分濃度」は、「ポリスルホン濃度」に置き換えることができる。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、例えばポリスルホンであれば、通常10〜60℃の範囲内が好ましい。この範囲内であれば、高分子溶液が析出することなく、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により支持膜が基材に強固に接合し、本発明の支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の温度範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
【0076】
支持膜の形成においては、基材上に第1層を形成する高分子溶液Aを塗布すると同時に第2層を形成する高分子溶液Bを塗布することが好ましい。高分子溶液Aの塗布後に硬化時間を設けた場合には、高分子溶液Aの相分離によって第1層の表面に密度の高いスキン層が形成され、透過流速を大幅に低下させる場合がある。そのため、高分子溶液Aが相分離により密度の高いスキン層を形成しない程度に同時に、高分子溶液Bを塗布することが好ましく、その後凝固浴に接触し相分離することで多孔性支持層が形成されることが好ましい。例えば、「同時に塗布される」とは、高分子溶液Aが、基材に到達する前に、高分子溶液Bと接触している状態、つまり、高分子溶液Aが基材に塗布されたときには、高分子溶液Bが高分子溶液A上に塗布されている状態である。
【0077】
基材上への高分子溶液の塗布は、種々のコーティング法によって実施できるが、正確な量のコーティング溶液を供給できるダイコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング法が好ましく適用される。さらに、本発明の多層構造を有する多孔性支持層の形成においては、第1の層を形成する高分子溶液と第2の層を形成する高分子溶液を同時に塗布する二重スリットダイ法がさらに好ましく用いられる。
【0078】
なお、高分子溶液Aおよび高分子溶液Bが含有する高分子は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。適宜、製造する支持膜の強度特性、透過特性、表面特性などの諸特性をより広い範囲で調整することができる。
【0079】
なお、高分子溶液Aおよび高分子溶液Bが含有する溶媒は、高分子の良溶媒であれば同一の溶媒でも、異なる溶媒でも良い。適宜、製造する支持膜の強度特性、高分子溶液の基材への含浸を勘案して、より広い範囲で調整することができる。
【0080】
良溶媒とは、多孔性支持層を形成する高分子を溶解するものである。良溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP);テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;テトラメチル尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン等の低級アルキルケトン;リン酸トリメチル、γ−ブチロラクトン等のエステルおよびラクトン;並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0081】
前記高分子の非溶媒としては、例えば水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0082】
また、上記高分子溶液は、支持膜の孔径、空孔率、親水性、弾性率などを調節するための添加剤を含有してもよい。孔径および空孔率を調節するための添加剤としては、水;アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子またはその塩;塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸リチウム等の無機塩;ホルムアルデヒド、ホルムアミド等が例示されるが、これらに限定されるものではない。親水性や弾性率を調節するための添加剤としては、種々の界面活性剤が挙げられる。
【0083】
凝固浴としては、通常水が使われるが、高分子を溶解しないものであればよい。また、凝固浴の温度は、−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜30℃である。温度が100℃以下であることで、熱運動による凝固浴面の振動の大きさが抑えられ、膜表面を平滑に形成することができる。また、温度が−20℃以上であることで、凝固速度を比較的大きく保つことができ、良好な製膜性が実現される。
【0084】
次に、このような好ましい条件下で得られた支持膜を、膜中に残存する製膜溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は50〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60〜95℃である。この範囲より高いと、支持膜の収縮度が大きくなり、透水性が低下する。逆に、低いと洗浄効果が小さい。
【0085】
(2−2)分離機能層の形成
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程の一例として、ポリアミドを主成分とする層(ポリアミド分離機能層)の形成を挙げて説明する。
ポリアミド分離機能層の形成工程は、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド骨格を形成することを含む。
【0086】
多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は、0.1重量%以上20重量%以下の範囲内であることが好ましく、0.5重量%以上15重量%以下の範囲内であることがより好ましい。この範囲であると、十分な透水性と塩およびホウ素の除去性能を得ることができる。
【0087】
多官能アミン水溶液は、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などを含んでいてもよい。界面活性剤には、支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。有機溶媒は、界面重縮合反応の触媒として働くことがあるので、有機溶媒の添加により界面重縮合反応を効率よく行える場合がある。
【0088】
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、上述の多官能アミン水溶液を支持膜に接触させる。接触は、支持膜面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、多官能アミン水溶液を支持膜にコーティングする方法や支持膜を多官能アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。
支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。
【0089】
多官能アミン水溶液を支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。液滴が残存していた部分は、複合半透膜形成後に欠点となることがあり、この欠点は複合半透膜の除去性能を低下させる。十分に液切りすることで、欠点の発生を抑制することができる。
液切りの方法としては、例えば、日本国特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などが挙げられる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
【0090】
次いで、多官能アミン水溶液接触後の支持膜に、多官能酸ハロゲン化物を含む、水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層を形成させる。
【0091】
水と非混和性の有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物濃度は、0.01重量%以上10重量%以下の範囲内であると好ましく、0.02重量%以上2.0重量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。多官能酸ハロゲン化物濃度が0.01重量%以上であることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下であることで副反応の発生を抑制することができる。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
【0092】
水と非混和性の有機溶媒は、多官能酸ハロゲン化物を溶解し、支持膜を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
【0093】
多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を支持膜へ接触させる方法は、多官能アミン水溶液を支持膜へ被覆する方法と同様に行うことができる。
【0094】
本発明の界面重縮合工程においては、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆い、かつ、接触させた多官能酸ハロゲン化物を含む、水と非混和性の有機溶媒溶液を支持膜上に残存させておくことが肝要である。このため、界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。界面重縮合を実施する時間が0.1秒以上3分以下であることで、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆うことができ、かつ多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を支持膜上に保持することができる。
【0095】
界面重縮合によって支持膜上にポリアミド分離機能層を形成した後は、余剰の溶媒を液切りする。液切りの方法としては、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下であることが好ましく、1分以上3分以下であるとより好ましい。把持する時間が短すぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となってポリアミド分離機能層に欠損部が発生し、膜性能が低下する。
【0096】
3.複合半透膜の利用
このようにして製造される複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントを形成することができる。さらに、このエレメントは、直列または並列に接続されて圧力容器に収納されることで、複合半透膜モジュールを構成することもできる。
【0097】
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
【0098】
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去性は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、1.0MPa以上、10MPa以下が好ましい。なお、操作圧力とはいわゆる膜間圧力差(trans membrane pressure)である。供給水温度は、高くなると塩除去性が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
【0099】
複合半透膜によって処理される原水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「重量÷体積」で表されるか、1Lを1kgと見なして「重量比」で表される。定義によれば、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分から換算する。
【実施例】
【0100】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0101】
<複合半透膜の作製>
(実施例1)
溶質であるポリスルホンと溶媒であるDMFとを混合し、攪拌しながら90℃で2時間加熱保持することで、ポリスルホン15重量%のDMF溶液(高分子溶液A)およびポリスルホン25重量%のDMF溶液(高分子溶液B)をそれぞれ調製した。
【0102】
調製した高分子溶液A及びBはそれぞれ室温まで冷却し、別々の押出機に供給して高精度濾過した。その後、濾過した高分子溶液は二重スリットダイを介し、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.3mL/cm
2/sec)上に高分子溶液Aを110μmの厚みで、高分子溶液Bを50μmの厚みで同時にキャストし、直ちに25℃の純水中に浸漬して5分間洗浄することによって多孔性支持膜を得た。
【0103】
得られた支持膜を、m−PDAの4.0重量%水溶液中に2分間浸漬した後、膜面が鉛直になるようにゆっくりと引き上げた。エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.12重量%を含む25℃のn−デカン溶液を膜表面が完全に濡れるように塗布した。1分間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を1分間鉛直に保持して液切りした。その後、45℃の水で2分間洗浄することで、基材、多孔性支持層、およびポリアミド分離機能層を備える複合半透膜を得た。
【0104】
(実施例2)
高分子溶液Aとしてポリスルホン18重量%のDMF溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例2における複合半透膜を得た。
【0105】
(実施例3)
高分子溶液Bとしてポリスルホン28重量%のDMF溶液を調製し、浸漬する純水の温度を10℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3における複合半透膜を得た。
【0106】
(実施例4)
高分子溶液Bとしてポリスルホン30重量%のDMF溶液を調製し、浸漬する純水の温度を10℃とし、高分子溶液Bを25μmの厚みでキャストした以外は、実施例1と同様にして、実施例4における複合半透膜を得た。
【0107】
(実施例5)
実施例1において、高分子溶液Aとしてポリスルホン15重量%のNMP溶液を用い、高分子溶液Bとしてポリスルホン25重量%のNMP溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例5における複合半透膜を得た。
【0108】
(実施例6)
実施例1において、高分子溶液Aとしてポリスルホン18重量%のDMF溶液を用い、高分子溶液Bとしてポリスルホン20重量%のDMF溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6における複合半透膜を得た。
【0109】
(実施例7)
実施例1において、基材として糸径1デシテックス、厚み約90μm、通気度0.7mL/cm
2/secの短繊維不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7における複合半透膜を得た。
【0110】
(比較例1)
高分子溶液Bは用いず、高分子溶液Aとしてポリスルホン25重量%のDMF溶液のみを、二重スリットダイではなく単スリットダイを用いて、160μmの厚みで不織布上に塗布した以外は、実施例1と同様の手順によって多孔性支持膜を得た。得られた多孔性支持膜上に、実施例1と同様の手順によって分離機能層を形成し、比較例1における複合半透膜を得た。
【0111】
(比較例2)
高分子溶液Aとしてポリスルホン15重量%のDMF溶液を調製した以外は、比較例1と同様にして、比較例2における複合半透膜を得た。
【0112】
(比較例3)
高分子溶液Aとしてポリスルホン15重量%のNMP溶液を用いた以外は、比較例1と同様にして、比較例3における複合半透膜を得た。
【0113】
(比較例4)
高分子溶液Aとしてポリスルホン13重量%のDMF溶液を用い、高分子溶液Bとしてポリスルホン20重量%のDMF溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4における複合半透膜を得た。
【0114】
(比較例5)
高分子溶液Aとしてポリスルホン25重量%のDMF溶液を用い、高分子溶液Bとしてポリスルホン15重量%のDMF溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例5における複合半透膜を得た。
【0115】
(比較例6)
高分子溶液Aとしてポリスルホン20重量%のDMF溶液を用い、高分子溶液Bとしてポリスルホン18重量%のDMF溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例6における複合半透膜を得た。
【0116】
(比較例7)
高分子溶液Aとしてポリスルホン18重量%のDMF溶液を用いた以外は、比較例1と同様の手順によって多孔性支持膜を得た。
得られた多孔性支持膜上に、m−PDA3.0重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%、トリエチルアミン3.0重量%、カンファースルホン酸6.0重量%を含有した水溶液を塗布した。1分間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を2分間鉛直に保持して液切りし、エアーノズルから窒素を吹き付け、多孔性支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、トリメシン酸クロリド0.20重量%を含む25℃のヘキサン溶液を、膜表面が完全に濡れるように塗布した。1分間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を1分間鉛直に保持して液切りした。その後120℃の熱風乾燥機の中で3分間保持して分離機能層を形成し、比較例7における複合半透膜を得た。
【0117】
(比較例8)
高分子溶液Aとしてポリスルホン17重量%のDMF溶液を用いた以外は、比較例1と同様の手順によって多孔性支持膜を得た。
得られた多孔性支持膜上に、m−PDA3.0重量%を含有した水溶液を塗布した。1分間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を2分間鉛直に保持して液切りし、エアーノズルから窒素を吹き付け、多孔性支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、トリメシン酸クロリド0.13重量%を含む25℃のIsopar L(エクソンモービル社(ExxonMobil Corp.)から入手可能)溶液を、膜表面が完全に濡れるように噴霧した。1分間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を1分間鉛直に保持して液切りした。その後室温の水での洗浄を経て、比較例8における複合半透膜を得た。
【0118】
(比較例9)
高分子溶液Aとしてポリスルホン15重量%のDMF溶液を110μmの厚みで不織布上に塗布し、以降は比較例1と同様の手順によって単層の多孔性支持層を備える多孔性支持膜を得た。こうして得られた多孔性支持層上に、高分子溶液Bとしてポリスルホン25重量%のDMF溶液を50μmの厚みで塗布し、再び比較例1と同様の手順を経て2層の多孔性支持層を形成した。つまり、多孔性支持層に含まれる第1層および第2層が、同時にではなく、順次塗布および凝固された。
こうして得られた2層の多孔性支持層を備える多孔性支持膜上に、実施例1と同様の手順によって分離機能層を形成し、比較例9における複合半透膜を得た。
【0119】
<多孔性支持層空隙率の測定>
得られた複合半透膜中の多孔性支持層サンプルについて、上述の方法でφ
0、φ
2を測定し、φ
1を算出した。
【0120】
<突起数密度、高さおよび標準偏差の測定>
複合半透膜サンプルをエポキシ樹脂で包埋し、断面観察を容易にするためOsO
4で染色して、これをウルトラミクロトームで切断し超薄切片を10個作製した。得られた超薄切片について、透過型電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影した。観察時の加速電圧は100kVであり、観察倍率は10,000倍であった。
得られた断面写真について、多孔性支持膜の膜面方向の幅2.0μmの距離における突起の数をスケールを用いて測定し、上述した方法で10点平均面粗さを算出した。この10点平均面粗さに基づいて、10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する部分を突起として、その数を数え、分離機能層の突起の平均数密度を求めた。また、断面写真中の全ての突起の高さをスケールで測定し、突起の平均高さを求めると共に、標準偏差を計算した。
【0121】
<分離機能層の硬さ試験>
複合半透膜から基材を剥離した後、DMF溶液に浸漬させて多孔性支持膜の成分を溶解し、分離機能層を得た。得られた分離機能層を、シリコンウエハ上に広げた状態で乗せて固定したものを、分離機能層のサンプルとした。作製した分離機能層のサンプルについて、ナノインデンテーション法による硬さ試験を行った。具体的な方法を以下に示す。
サンプルに対し、正三角錐型のBerkovich圧子(ダイヤモンド製、稜間角度115°、圧子先端の曲率半径20nm)を分離機能層の任意の10箇所に深さ50nmまで垂直に押し込んだときの荷重を、MTSシステムズ社製 Nanoindenter DCMにより測定した。得られた値を平均して、平均荷重を求めた。なお、測定は室温で行った。
【0122】
<塩除去性(TDS除去率)・発停試験>
NaClの濃度が3.5重量%、温度が25℃、pHが6.5の水溶液を、5.5MPaの操作圧力で複合半透膜に供給することで、24時間に渡って水処理操作を行った後に、5.5MPaの操作圧力で得られた透過水を用いて、塩除去性の測定を行った。その後、5.5MPaの操作圧力において1分間保持、次いで30秒間で0MPaまで降圧し、さらに1分間保持後、30秒間で5.5MPaまで昇圧するサイクルで複合半透膜によるろ過処理を5000回繰り返した後に、塩除去性能の測定を行った。
塩除去性能測定時の操作圧力は5.5MPaまたは4.0MPaとし、それ以外の条件はサイクル運転時と同様とした。それぞれ得られた透過水を用いて、塩除去性の測定を行った。
【0123】
東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で供給水および透過水の電気伝導度を測定することにより、実用塩分を得た。この実用塩分を換算して得られるTDS濃度から、次の式により塩除去性すなわちTDS除去率を求めた。
TDS除去率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}
【0124】
<膜透過流束>
24時間の上記ろ過処理により得られた透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)に換算し、膜透過流束(m
3/m
2/日)として表した。
【0125】
以上の結果を表1〜3に示す。実施例1〜7より、本発明の複合半透膜は、高い透水性・塩除去性を有し、頻繁に運転・停止が繰り返され圧力が変動する運転条件下におけるこれらの性能の維持性に優れることが分かる。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は2012年6月27日出願の日本特許出願(特願2012−143919)、2012年8月31日出願の日本特許出願(特願2012−190730)及び2012年9月26日出願の日本特許出願(特願2012−211935)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。