特許第6237240号(P6237240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237240
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】モールドパッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20171120BHJP
   H01L 25/04 20140101ALI20171120BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01L23/02 B
   H01L25/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-932(P2014-932)
(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公開番号】特開2015-130394(P2015-130394A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】冨永 隆行
(72)【発明者】
【氏名】福田 太助
【審査官】 鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/076830(WO,A1)
【文献】 特開2007−258343(JP,A)
【文献】 特開平08−064709(JP,A)
【文献】 特開2009−111205(JP,A)
【文献】 特公昭48−031699(JP,B1)
【文献】 特開平10−065036(JP,A)
【文献】 特開2013−120762(JP,A)
【文献】 特開平05−267628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/54
H01L 23/00−23/10、23/16−23/26
H01L 25/04、25/18
H03H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(31a)を有し、前記一面に凹部(31b、31c)が形成され、筐体状とされたケース(31)と、
前記ケースの凹部内に収容された電子部品(32)と、
前記ケースの凹部内を密封する蓋(33)と、
前記ケースと前記蓋とを接合する接合部(34)と、
前記ケース、前記電子部品、前記蓋、および、前記接合部を覆って封止するモールド樹脂(4)と、を有するモールドパッケージであって、
前記ケースに形成された凹部は、前記ケースの一面の内方に形成された第1凹部(31b)、および、前記第1凹部の底面(31ba)の内方に形成された第2凹部(31c)で構成されており、
前記蓋は、一面(33a)、前記一面と反対側の他面(33b)、前記一面および前記他面に挟まれた側面(33c)、前記他面に形成された凸部(33d)を有する構成とされており、
前記第1凹部の側壁面(31bb)、前記第1凹部の底面、前記第2凹部の側壁面(31cb)、前記蓋の側面、前記蓋の他面、および、前記蓋の凸部の側面(33da)が、いずれも平面とされており、
前記第1凹部の側壁面と前記蓋の側面が互いに平行とされ、前記接合部により接合されており、前記第1凹部の底面と前記蓋の他面が互いに平行とされ、前記接合部により接合されており、前記第2凹部の側壁面と前記蓋の凸部の側面が互いに平行とされて、前記接合部により接合されており、
前記ケースおよび前記蓋は、それぞれ一体に構成されていることを特徴とするモールドパッケージ。
【請求項2】
前記第2凹部内に前記電子部品が収容されていることを特徴とする請求項1に記載のモールドパッケージ。
【請求項3】
前記第1凹部の側壁面に対して、前記第1凹部の底面が垂直とされ、前記第2凹部の側壁面が平行とされ、
前記蓋の側面に対して、前記蓋の他面が垂直とされ、前記蓋の凸部の側面が平行とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモールドパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部を有して筐体状とされたケースと、ケースの凹部内に収容された電子部品と、ケースの凹部内を封止する蓋と、ケースと蓋とを接合する接合部と、これらを覆って封止するモールド樹脂とを有する構成とされたモールドパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケースの内部に形成された中空部に電子部品が備えられると共に、蓋などによって中空部が封止された構成とされたパッケージ部品を、モールド樹脂で覆って封止した構成とされたモールドパッケージ(例えば、特許文献1に記載のモールドパッケージ)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−147982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モールド樹脂は、一般に、熱膨張率および熱収縮率が大きい材料で構成される。従って、上記したようなモールドパッケージにおいて、例えばモールド樹脂の成形後の冷却時やモールドパッケージの使用環境が変化した時など、大きな温度変化が生じた時に、モールド樹脂が大きく熱収縮することとなる。このため、上記モールドパッケージでは、ケースの内部に中空部が形成された中空構造とされているため、モールド樹脂が熱収縮したときに、この熱収縮に起因して生じる熱応力によってケースや蓋が凹まされることとなる。
【0005】
ここで、図7に示すように、凹部S31aを有するケースS31と、凹部S31a内を封止する蓋S33と、ケースS31と蓋S33とを接合する接合部S34と、これらを覆って封止するモールド樹脂(図示しない)とを有するモールドパッケージS1を想定する。モールドパッケージS1では、ケースS31が、凹部S31aの底面S31cの外縁において立設する側壁S31bを有し、側壁S31bの頂面S31dにおいて、接続部S34を介して、蓋S33に対して接合させられた構成とされている。
【0006】
図8に示すように、このモールドパッケージS1においては、モールド樹脂が熱収縮したときに、側壁S31bや蓋S33に熱収縮に伴う熱応力がかかり、側壁S31bの中央部および蓋S33の中央部が凹まされるように変形する。より具体的には、側壁S31bのうち図8の紙面の上下方向における中央部、および、蓋S33のうち図8の紙面の左右方向における中央部が凹まされ、側壁S31bおよび蓋S33が、それぞれの中央部を境に屈曲するように変形する。これにより、図8に示すように、側壁S31bのうち接合部S34が接合されている面の角度、および、蓋S33のうち接合部S34が接合されている面の角度が、それぞれ変化することとなる。このため、接合部S34のうち凹部S31aから遠い側の部分(図8の符号Aを参照)が図8の紙面の上下方向の両方向に引っ張られるように、熱応力がかかることとなり、この部分においてクラックが生じることがある。そして、このクラックが広がっていき、凹部S31aとモールドパッケージS1の外部とを連通させるように接合部S34が貫通してしまうと、凹部S31a内の気密性が損なわれることとなる。このように、このモールドパッケージS1では、モールド樹脂の熱収縮によって、接合部S34が貫通してしまい、凹部S31a内の気密性が損なわれ易いという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、凹部を有して筐体状とされたケース内に電子部品を収容して蓋にて密封し、それをモールド樹脂で封止したモールドパッケージにおいて、モールド樹脂の熱収縮に伴うケースや蓋の変形が生じてもケース内の気密性が損なわれ難い構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、一面(31a)を有し、一面に凹部(31b、31c)が形成され、筐体状とされたケース(31)と、ケースの凹部内に収容された電子部品(32)と、ケースの凹部内を封止する蓋(33)と、ケースと蓋とを接合する接合部(34)と、ケース、電子部品、蓋、および接合部を覆って封止するモールド樹脂(4)と、を有するモールドパッケージであって、以下の特徴を有する。
【0009】
すなわち、ケースに形成された凹部は、ケースの一面の内方に形成された第1凹部(31b)、および、第1凹部の底面(31ba)の内方に形成された第2凹部(31c)で構成されている。また、蓋は、一面(33a)、一面と反対側の他面(33b)、一面および他面に挟まれた側面(33c)、他面の内方に形成された凸部(33d)を有する構成とされている。また、第1凹部の側壁面(31bb)、第1凹部の底面、第2凹部の側壁面(31cb)、蓋の側面、蓋の他面、および、蓋の凸部の側面(33da)が、いずれも平面とされている。そして、第1凹部の側壁面と蓋の側面が互いに平行とされ、接合部により接合されており、第1凹部の底面と蓋の他面が互いに平行とされ、接合部により接合されており、第2凹部の側壁面と蓋の凸部の側面が互いに平行とされて、接合部により接合されており、ケースおよび蓋は、それぞれ一体に構成されていることを特徴とする。
【0010】
このため、第1凹部の側壁面と蓋の側面がそれぞれの一部で互いに押し合う状態となることにより、以下の作用1、2が生じる。すなわち、作用1として、第1凹部の側壁面と蓋の側面は、さらなる変形をし難くなり、この結果、接合部を引っ張るように作用する応力がかかり難くなり、接合部にクラックが入ることが生じ難くなる。また、作用2として、クラックが入ったとしても、接合部のうち第1凹部の側壁面の上記一部と蓋の側面の上記一部に挟まれた部分においては、押し合う力が作用しているため、クラックの進行が止められ易くなる。また、第1凹部の底面と蓋の他面、および、第2凹部の側壁面と蓋の凸部の側面においても、第1凹部の側壁面と蓋の側面の場合と同様にして、上記した作用1、2が生じる。このように、3箇所において、互いに押し合う状態となり、作用1、2が生じる。このため、モールド樹脂が熱収縮したときでも、第1、2凹部とモールドパッケージの外部とを連通させるように接合部が貫通することとなり難く、ケース(第1、2凹部)内の気密性が損なわれ難くなる。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るモールドパッケージの断面構成を模式的に示す図である。
図2図1に示すモールドパッケージにおけるパッケージ部品(および電極)の断面構成を模式的に示す図である。
図3図2に示すパッケージ部品(および電極)の平面構成を模式的に示す図である。
図4図2に示すパッケージ部品において、モールド樹脂が熱収縮した場合におけるパッケージ部品の状態を模式的に示す図である。
図5】比較例、第1実施形態に係るモールドパッケージ、他の実施形態に係るモールドパッケージのそれぞれについて、パッケージ部品を構成する接合部にかかる熱応力の一例を示した図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るモールドパッケージの平面構成を模式的に示す図(ケースと蓋のみを示してある)である。
図7】従来のモールドパッケージにおけるパッケージ部品(および電極)の断面構成を模式的に示す図である。
図8図7に示すパッケージ部品(および電極)において、モールド樹脂が熱収縮した場合におけるパッケージ部品の状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るモールドパッケージ1について図1図6を参照して説明する。図1に示すように、モールドパッケージ1は、基板2と、基板2上に積載されたパッケージ部品3と、パッケージ部品3を覆って封止するモールド樹脂4とを有する構成とされている。パッケージ部品3は、凹部31b、31cが形成されたケース31と、ケース31(凹部31b、31c)内に収容された電子部品32と、凹部31b、31c内を密閉する蓋33と、ケース31と蓋33とを接合する接合部34とを有する構成とされている。モールドパッケージ1は、例えば、自動車などの車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されるものである。
【0015】
図1に示すように、基板2は、一面2aと、一面2aと反対側の他面2bを有する構成とされた板状部材である。基板2は、エポキシ樹脂等の樹脂をベースとしたプリント基板や、セラミックをベースとしたセラミック基板などによって構成され得る。基板2の一面2aには、パッケージ部品3や他の部品5が実装されている。より具体的には、パッケージ部品3や他の部品5は、図示しないはんだや導電性接着剤などの接合部材を介して、Cu等の金属で構成された電極6に接続されており、この電極6を介して外部と電気的および機械的に接続されている。なお、他の部品5は、特に限定されるものではないが、例えば、チップ抵抗、チップコンデンサ、水晶振動子などの受動部品、もしくはベアチップなどで構成され得る。パッケージ部品3および他の部品5は、それぞれ、電極6を介して回路を構成している。
【0016】
図2に示すように、パッケージ部品3は、凹部31b、31cが形成されたケース31と、凹部31b、31c内に収容された電子部品32と、凹部31b、31c内を密閉する蓋33と、ケース31と蓋33とを接合する接合部34とを有する構成とされている。
【0017】
図2図3に示すように、ケース31は、一面31aを有し、一面31aの内方において凹部(以下、第1凹部という)31bが形成され、第1凹部31bの底面31baの内方において凹部(以下、第2凹部という)31cが形成された筐体状に構成されている。すなわち、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、第1凹部31bが一面31aの外縁から離された位置に設けられている。同様に、第2凹部31cが底面31baの外縁から離された位置に設けられている。
【0018】
ケース31は、第1、2凹部31b、31c内の気密性の確保に加え,小型化・生産性を考慮し、ガラスで構成されている。また、ケース31を構成する材料としては、熱応力を小さくするため、モールド樹脂4と熱膨張率や熱収縮率が近似(例えば、7〜15ppm/℃)する材料が採用されることが好ましい。
【0019】
電子部品32は、第1凹部31bおよび第2凹部31cにより形成される空間内に収容されており、ここでは一例として、図2に示すように、第2凹部31cの底面31caに固定されている。本実施形態に係るモールドパッケージ1は、一例として、電子部品32としての半導体素子が、第2凹部31cの底面31caに載置、固定された構成とされている。この半導体素子は、AuやAl等よりなるボンディングワイヤ32aによって電極6に電気的に接続されており、電極6を介して外部と電気的に接続されている。
【0020】
このように、本実施形態に係るモールドパッケージ1は、ケース31(第1、2凹部31b、31c)内に電子部品32が収容され、蓋33にて密封された構成とされ、第1、2凹部31b、31cが中空部を形成する中空構造とされている。
【0021】
図2図3に示すように、蓋33は、一面33aと、一面33aと反対側の他面33bと、一面33aおよび他面33bに挟まれた側面33cと、他面33bに形成された凸部33dとを有する構成とされている。蓋33の他面33bは、一面33aに対する法線の方向から見て、一面33aと同一の位置もしくは一面33aの内方に形成されている。凸部33dは、図2中紙面下側に向かって凸形状となるように、パッケージ部品3において内方に形成されている。
【0022】
蓋33は、第1、2凹部31b、31c内の気密性の確保に加え,小型化・生産性を考慮し、ガラスで構成されている。蓋33を構成する材料としては、熱応力を小さくするため、熱膨張率や熱収縮率がモールド樹脂4のそれと近似(例えば、7〜15ppm/℃)する材料が採用されることが好ましい。また、図3に示すように、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、一面33aに対する法線から見て、蓋33が四角形に構成されている。
【0023】
図2に示すように、蓋33は、第1凹部31bの底面31baにより支持されている。このため、このモールドパッケージ1が図2の紙面と同じ向きで使用された場合には、蓋33が第1、2凹部31b、31cの深部(底面31ca)に落ちずに維持される。
【0024】
図2に示すように、接合部34は、第1凹部31bの側壁面31bbと蓋33の側面33cとの間、第1凹部31bの底面31baと蓋33の他面33bとの間、および、第2凹部31cの側壁面31cbと凸部33dの側面33daとの間に設けられている。接合部34は、少なくともこれらの間において連続的に形成されており、一面33aに対する法線の方向から見て、蓋33を囲むように全周に亘って形成されている。接合部34は、第1、2凹部31b、31c内の気密性を高くするため、ガラスを主とする接着剤にて構成され得るが、エポキシ樹脂からなる接着剤にて構成されてもよい。
【0025】
ここで、図2に示すように、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、第1凹部31bの側壁面31bb、第1凹部31bの底面31ba、および、第2凹部31cの側壁面31cbが、いずれも平面とされている。また、蓋33の側面33c、蓋33の他面33b、および、蓋33の凸部33dの側面33daも、いずれも平面とされている。そして、第1凹部31bの側壁面31bbと蓋33の側面33cが互いに平行とされ、接合部34により接合されている。また、第1凹部31bの底面31baと蓋33の他面33bが互いに平行とされ、接合部34により接合されている。また、第2凹部31cの側壁面31cbと凸部33dの側面33daが互いに平行とされ、接合部34により接合されている。
【0026】
このように構成されることで、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、モールド樹脂4が熱収縮したときに、熱応力によってケース31の中央部や蓋33の中央部が凹まされるように変形する。この結果、モールドパッケージ1は、図4に示す状態となる。具体的には、モールドパッケージ1は、ケース31の側壁(ケース31のうち側壁面31cbを含む部分)31dのうち図4の紙面の上下方向における中央部、および、蓋33のうち図4の紙面の左右方向における中央部が凹まされるように変形する。すなわち、図4に示すように、側壁31dおよび蓋33は、それぞれの中央部を境に屈曲するように変形する。これにより、側壁31dのうち接合部34が接合されている面である第1凹部31bの側壁面31bb、底面31ba、第2凹部31cの側壁面31cbの角度がそれぞれ変化することとなる。同様に、蓋33のうち接合部34が接合されている面である蓋33の側面33c、他面33b、凸部33dの側面33daの角度がそれぞれ変化することとなる。
【0027】
このとき、互いに平行とされていた側壁面31bbおよび側面33cは、平行関係が崩されるように、すなわち側壁面31bbを延長した面と側面33cを延長した面とが交差する状態となるように変形する。このため、図4に示すように、側壁面31bbの一部(図4の符号P1を参照)と側面33cの一部(図4の符号P2を参照)とが、互いに押し合う状態となる。これにより、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、ケース31と蓋33がさらなる変形をし難くなり、この結果、接合部34を引っ張るように作用する応力がかかり難くなり、接合部34にクラックが生じ難くなる(作用1)。また、クラックが生じたとしても、接合部34のうち側壁面31bbの上記一部と側面33cの上記一部に挟まれた部分(以下、押し合い部という)においては、押し合う力が作用しているため、クラックの進行が止められ易くなる(作用2)。以上説明した側壁面31bbと側面33cの場合と同様、底面31baと他面33b、および、側壁面31cbと側面33daについても、一部(図4の符号P3〜P6を参照)で互いに押し合う状態となり、上記作用1、2と同様の作用が生じる。このように、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、3箇所(P1とP2、P3とP4、P5とP6)において、互いに押し合う状態となる。このため、本実施形態では、モールド樹脂4が熱収縮したときでも、第1、2凹部31b、31cとモールドパッケージ1の外部とを連通させるように接合部34が貫通することとなり難く、ケース31(第1、2凹部31b、31c)内の気密性が損なわれ難い。
【0028】
これに対して、特許文献1に記載のモールドパッケージS1では、上記のように互いに押し合う状態となる部分が1箇所(図8の符号P7を参照)のみとなる。このため、特許文献1に記載のモールドパッケージS1では、本実施形態に係るモールドパッケージ1に比べて、上記作用1、2を得難く、接合部S34が貫通し易い。
【0029】
なお、図5は、特許文献1に記載のモールドパッケージS1を比較例として、本実施形態に係るモールドパッケージ1について、接合部34にかかる熱応力を測定した結果の一例である。図5に示すように、比較例では、接合部S34にかかる熱応力が約6MPaであったのに対して、本実施形態では、接合部34にかかる熱応力が約3MPaであり、比較例よりも小さい結果となった。
【0030】
また、上記の説明から明らかなように、本実施形態では、第1凹部31bの側壁面31bbに対して、第1凹部31bの底面31baが垂直とされ、第2凹部31cの側壁面31cbが平行とされている。また、蓋33の側面33cに対して、蓋33の他面33bが垂直とされ、蓋33の凸部33dの側面33daが平行とされている。
【0031】
本実施形態では、ケース31および蓋33がこのように単純な構造であるため、モールドパッケージ1の製造において、ケース31および蓋33を容易に成形することができる。
【0032】
モールド樹脂4は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などで構成されるものであり、金型を用いたトランスファーモールド法やコンプレッションモールド法などにより形成される。図1に示すように、本実施形態に係るモールドパッケージ1は、基板2の一面2a側がモールド樹脂4で封止され、他面2b側がモールド樹脂4で封止されずに露出させられた、いわゆるハーフモールド構造によって構成されている。
【0033】
上記で説明したように、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、第1凹部31bの側壁面31bb、第1凹部31bの底面31ba、および、第2凹部31cの側壁面31cbを、いずれも平面としている。また、蓋33の側面33c、蓋33の他面33b、および、蓋33の凸部33dの側面33daを、いずれも平面としている。そして、第1凹部31bの側壁面31bbと蓋33の側面33cを互いに平行とし、接合部34により接合させている。また、第1凹部31bの底面31baと蓋33の他面33bを互いに平行とし、接合部34により接合させている。また、第2凹部31cの側壁面31cbと凸部33dの側面33daを互いに平行とし、接合部34により接合させている。
【0034】
このため、側壁面31bbと側面33cがそれぞれの一部で互いに押し合う状態となることにより、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、以下の作用1、2が生じる。すなわち、作用1として、側壁面31bbと側面33cは、さらなる変形をし難くなり、この結果、接合部34を引っ張るように作用する応力がかかり難くなり、接合部34にクラックが入ることが生じ難くなる。また、作用2として、クラックが入ったとしても、接合部34のうち側壁面31bbの上記一部と側面33cの上記一部に挟まれた部分においては、押し合う力が作用しているため、クラックの進行が止められ易くなる。また、底面31baと他面33b、および、側壁面31cbと側面33daにおいても、側壁面31bbと側面33cの場合と同様にして、上記した作用1、2が生じる。このように、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、3箇所において、互いに押し合う状態となり、作用1、2が生じる。このため、本実施形態では、モールド樹脂4が熱収縮したときでも、第1、2凹部31b、31cとモールドパッケージ1の外部とを連通させるように接合部34が貫通することとなり難く、ケース31(第1、2凹部31b、31c)内の気密性が損なわれ難くなる。
【0035】
また、本実施形態に係るモールドパッケージ1では、第1凹部31bの側壁面31bbに対して、第1凹部31bの底面31baが垂直とされ、第2凹部31cの側壁面31cbが平行とされている。また、蓋33の側面33cに対して、蓋33の他面33bが垂直とされ、蓋33の凸部33dの側面33daが平行とされている。
【0036】
このため、本実施形態では、モールドパッケージ1の製造において、ケース31および蓋33を容易に成形することができる。
【0037】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0038】
例えば、第1実施形態では、ケース31を、2つの凹部(第1、2凹部31b、31c)が形成された構成としていた。また、蓋33を、ケース31の第1、2凹部31b、31cを構成する面(側壁面31bb、底面31ba、側壁面31cb)それぞれに平行とされた面(側面33c、他面33b、側面33da)を有する構成としていた。そして、これらの面が接合部34により接合させられ、第2凹部31cにおいて電子部品32が収容された構成としていた。しかしながら、本発明に係るモールドパッケージ1は、この構成に限られるものではない。すなわち、ケース31を、3つ以上の凹部が形成された構成としてもよく、例えば、第1実施形態において、ケース31を、第1、2凹部31b、31cに加えて、第2凹部31cの内方に形成された第3凹部を有する構成としてもよい。この場合、蓋33を、第1、2凹部31b、31cに平行する面に加えて、第3凹部を構成する面に平行する面を有する構成とすればよい。また、これらの面が接合部34により接合させられ、第3凹部内において電子部品32が収容された構成とすればよい。このような構成とすることにより、モールド樹脂4が熱収縮したときに、4箇所において、互いに押し合う状態となり、第1実施形態で説明した作用1、2が得られることとなる。よって、この場合では、さらに、ケース31内の気密性が損なわれ難くなる。もちろん、さらに、第3凹部の内方に形成された第4凹部を有する構成としてもよい。
【0039】
また、第1実施形態では、蓋33の一面33aに対する法線から見て、蓋33を四角形に構成していた。しかしながら、蓋33の形状は四角形状に限られない。すなわち、第1実施形態において、蓋33の形状を、例えば、五角形、六角形などとしてもよく、図6に示すように八角形としてもよい。応力は角に集中し易いため、蓋33が多角形となればなるほど、熱応力が分散され易く、より好ましい。なお、熱応力の分散を考慮すると、蓋33の形状としては、円形が最も好ましい。
【0040】
なお、図5において、特許文献1に記載のモールドパッケージS1を比較例として、上記他の実施形態に係るモールドパッケージ1(蓋33の形状を八角形とした形態)について、接合部にかかる熱応力を測定した結果の一例を示してある。図5に示すように、上記他の実施形態では、接合部34にかかる熱応力が約2MPaと、比較例よりも小さいだけでなく、第1実施形態よりも小さい結果となった。
【符号の説明】
【0041】
3 パッケージ部品
31 ケース
31b ケースの第1凹部
31c ケースの第2凹部
32 電子部品
33 蓋
33d 蓋の凸部
34 接合部
4 モールド樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8