(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記照明効率の時間変化と降雨量の時間変化を用いて、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽光照明管理装置。
前記判定部は、前記照明効率が一定期間低下し続け、かつ、降雨後に上昇しなかったかを判定することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の太陽光照明管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽光照明システムは、採光部等の汚れ、各種部材の経年劣化及び故障等によって得られる照度が低下する場合がある。しかし、特許文献1に示されたシステムでは、照度のモニタリングは成されていても、汚れ等に応じたメンテナンスの必要性の有無は考慮されていない。従って、メンテナンスは利用者の判断に委ねられており、適切なメンテナンスを行うことが難しかった。
【0006】
本発明は、前述した目的を鑑みてなされたもので、太陽光照明の管理を行い、適切なメンテナンスに資する太陽光照明管理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、太陽光による屋内照明の照明効率として、屋内と屋外の明るさの比を算出する照明効率算出部と、前記照明効率の時間変化を用いて、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行う判定部と、を有することを特徴とする太陽光照明管理装置である。
【0008】
本発明により、太陽光照明の照明効率を算出し、その推移から、汚れの堆積等を定量的に評価して照明効率低下の検知と原因の判定を行うことができる。これにより、照明効率低下やその原因をユーザに通知等して適切なメンテナンス時期が来たことを知らせることができ、太陽光照明のメンテナンスに役立ち、太陽光照明を継続的に高効率で使用することができる。
【0009】
照明効率低下の原因に応じて、メンテナンスを行った場合の前記照明効率の上昇幅をメンテナンス効果として算出するメンテナンス効果算出部と、前記メンテナンス効果と前記メンテナンスにかかるメンテナンス費用を表示させる通知部と、を更に有することが望ましい。
これにより、メンテナンスの効果と費用をユーザに通知でき、ユーザによる太陽光照明のメンテナンスに役立つ。
【0010】
前記判定部は、前記照明効率の時間変化と降雨量の時間変化を用いて、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行うことが望ましい。
照明効率低下の検知や原因の判定に降雨量を用いることで、雨で落ちるような軽微な汚れをその他の汚れ等と区別できる。
【0011】
前記判定部は、前記照明効率が一定期間低下し続け、かつ、降雨後に上昇したかを判定することが望ましい。また、前記判定部は、前記照明効率が一定期間低下し続け、かつ、降雨後に上昇しなかったかを判定することが望ましい。さらに、前記判定部は、前記照明効率が所定時間の間に所定幅以上低下したかを判定することが望ましい。
これにより、雨で落ちる軽微な汚れの堆積による照明効率の低下、雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等、雨で回復しない原因による照明効率の低下、システム故障や落ち葉による日陰等に伴う照明効率の低下等を検知でき、ユーザによる太陽光照明のメンテナンスに役立つ。
【0012】
第2の発明は、屋内と屋外の明るさを計測する明るさ計測装置と、太陽光照明管理装置と、を有し、前記太陽光照明管理装置は、太陽光による屋内照明の照明効率として、屋内と屋外の明るさの比を算出する照明効率算出部と、前記照明効率の時間変化を用いて、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行う判定部と、を有することを特徴とする太陽光照明管理システムである。
【0013】
第3の発明は、コンピュータが、太陽光による屋内照明の照明効率として、屋内と屋外の明るさの比を算出するステップと、前記照明効率の時間変化を用いて、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行うステップと、を実行することを特徴とする太陽光照明管理方法である。
【0014】
第4の発明は、コンピュータに、太陽光による屋内照明の照明効率として、屋内と屋外の明るさの比を算出するステップと、前記照明効率の時間変化を用いて、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行うステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0015】
第5の発明は、コンピュータに、太陽光による屋内照明の照明効率として、屋内と屋外の明るさの比を算出するステップと、前記照明効率の時間変化を用いて、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行うステップと、を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、太陽光照明の管理を行い、適切なメンテナンスに資する太陽光照明管理装置等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
(1.太陽光照明管理システム1)
図1を参照して本発明の実施形態に係る太陽光照明管理システム1について説明する。この太陽光照明管理システム1は、太陽光照明システム10の管理を行うために設けられる。
【0020】
太陽光照明システム10は建屋20に設けられ、外部の太陽光を建屋20の屋内へと導き屋内照明として利用するものである。太陽光照明システム10は、採光部11、導光部13、散光部15等を有する。
【0021】
採光部11は、例えば内部に反射板等を設けた透明のシェル状部材であり、太陽光を反射させて導光部13へ導く。ただし採光部11がこれに限ることはなく、太陽光を導光部13へ導ければよい。
【0022】
導光部13は、採光部11からの光を屋内まで伝達するものである。導光部13としては、例えば内部に反射板等を設けた筒状部材が使用されるが、これに限ることはない。光ファイバなども使用可能である。
【0023】
散光部15は、導光部13で伝達された光を、照明として適した光になるように拡散させるものである。散光部15としては、例えば半透明のガラスやプラスチックからなる拡散板を用いることができるが、これに限ることはない。
【0024】
太陽光照明管理システム1は、以上のような太陽光照明システム10の管理を行うために設けられる。太陽光照明管理システム1は、照度計2、4、降雨計5、データロガー7、太陽光照明管理装置9等を有する。
【0025】
照度計2、4は、それぞれ屋内と屋外の明るさを照度によって計測する明るさ計測装置である。本実施形態では、照度計2が散光部15の下方に設けられ、太陽光照明による照度を計測する。照度計4は屋外の建屋20近傍に設けられ、太陽光による照度を計測する。照度計2、4で計測した照度は、それらの比をとることで照明効率の算出に用いられる。なお、明るさ計測装置としては、屋内と屋外の明るさを計測できれば、照度計2、4に限ることはない。
【0026】
降雨計5は、降雨量を計測する降雨量計測装置である。降雨計5は屋外の建屋20近傍に設けられる。降雨量計測装置としては、単位時間当たりの降雨量を計測できれば、降雨計5に限ることはない。
【0027】
照度計2、4、降雨計5は、所定間隔で経時的に計測を行い、計測したデータをデータロガー7に送信する。データロガー7はこれらのデータを取得し、記録する。
【0028】
太陽光照明管理装置9は、照度計2、4、降雨計5で計測したデータに基づいて、照明効率低下の検知と原因の判定を行うとともに、照明効率低下の原因に応じたメンテナンス情報をユーザへ通知する。
【0029】
(2.太陽光照明管理装置9)
図2に太陽光照明管理装置9のハードウェア構成の例を示す。太陽光照明管理装置9は、例えば、制御部91、記憶部92、メディア入出力部93、通信制御部94、入力部95、表示部96、周辺機器インタフェース部97等がバス98を介して接続された一般的なコンピュータで実現できる。
【0030】
制御部91は、CPU、ROM、RAM等で構成される。
CPUは、記憶部92、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス98を介して接続された各部を駆動制御し、太陽光照明管理装置9の処理を実行する。ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部92、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部91が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0031】
記憶部92は、ハードディスクドライブ等であり、制御部91が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS等が格納される。プログラムとしては、例えば、後述する手順で照明効率低下の検知と原因の判定を行ったり、メンテナンス情報の通知を行うためのプログラムが格納される。
【0032】
メディア入出力部93はデータの入出力を行うものであり、例えばDVDドライブ等のメディア入出力装置を有する。
通信制御部94は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワークを介して他の装置との通信制御を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
入力部95はデータの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
【0033】
表示部96は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置である。
周辺機器インタフェース部97は、周辺機器を接続するポートなどである。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
バス98は、各部間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0034】
図3は太陽光照明管理装置9の機能構成を示す図である。太陽光照明管理装置9は、照明効率算出部901、判定部902、メンテナンス効果算出部903、通知部904等を有する。
【0035】
照明効率算出部901は、太陽光照明管理装置9の制御部91が、下式(1)により、屋内の照度計2で計測した照度Eiと屋外の照度計4で計測した照度Eoとの比を照明効率αとして算出するものである。
α=Ei/Eo…(1)
【0036】
判定部902は、太陽光照明管理装置9の制御部91が、照明効率αや降雨量の時間変化により、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行うものである。
【0037】
メンテナンス効果算出部903は、太陽光照明管理装置9の制御部91が、照明効率低下の原因に応じて、メンテナンスによる照明効率αの上昇幅をメンテナンス効果として算出するものである。
【0038】
通知部904は、太陽光照明管理装置9の制御部91が、照明効率低下の原因に応じたメンテナンスについて、上記のメンテナンス効果とメンテナンス費用等をメンテナンス情報として表示部96等に表示させるものである。
【0039】
また、本実施形態では、記憶部92に、メンテナンス費用911、電気料金912等が予め記憶されている。
【0040】
メンテナンス費用911は、太陽光照明システム10のメンテナンスにかかる費用であり、照明効率低下の原因ごとに、対応するメンテナンスにかかる費用として定められる。
電気料金912は、単位電力あたりの料金である。
【0041】
(3.太陽光照明管理方法の概略)
続いて、太陽光照明管理システム1による太陽光照明管理方法の概略について説明する。
図4は太陽光照明管理方法の概略を示すフローチャートであり、図の各ステップは太陽光照明管理装置9の制御部91によって実行される。
【0042】
本実施形態では、前記したように照度計2、4、降雨計5によって屋内照度Ei、屋外照度Eo、降雨量をそれぞれ計測する。各データは所定間隔で計測され、データロガー7で記録される。太陽光照明管理装置9は、各データをデータロガー7から取得する(S1)。
【0043】
太陽光照明管理装置9は、前記した式(1)を用いて、屋内照度Eiと屋外照度Eoの比を照明効率αとして算出する(S2)。太陽光照明管理装置9は、S1で取得した降雨量と、S2で算出した照明効率αから、
図5に示すような照明効率αおよび降雨量Rの時間変化を記録する。
図5は、横軸を時間T、縦軸を照明効率αおよび降雨量Rとし、照明効率αおよび降雨量Rの時間変化を模式的に示す図である。
【0044】
なお、照明効率αの時間変化としては、1日、あるいは1日の所定時間(例えば日中の午前9時から午後5時など)の間の照明効率αの値から日毎の代表値を求め、その変化を記録することが望ましい。これにより、太陽位置の日変化による照明効率αの変化や、照明効率αの瞬間的な異常値の影響を除外できる。上記の代表値としては平均値や中央値などが考えられる。この場合には、降雨量Rも、照明効率αに対応して日毎の代表値を記録する。代表値としては、1日の総降雨量などを用いることができる。さらに、必要に応じて照明効率αの時間変化から異常値を省き、異常値の前後の照明効率αから補間等した値をその代わりに記録してもよい。
【0045】
太陽光照明管理装置9は、照明効率αと降雨量Rの時間変化から、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行う(S3)。S3の詳細については後述する。なお、S3以降の処理を行うタイミングは様々に定められ、例えば2週間毎などとすることができる。
【0046】
太陽光照明管理装置9は、S3において照明効率低下を検知しなかった場合(S4;NO)、そのまま処理を終了するが、照明効率低下を検知した場合(S4;YES)、照明効率低下の原因に応じて、メンテナンス情報としてメンテナンス効果とメンテナンス費用等をユーザに通知し(S5)、処理を終了する。S5の詳細については後述する。
【0047】
(4.照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定)
本実施形態では、照明効率低下の原因として、以下示す3つを主に考慮し、各ケースに対応した照明効率低下の検知を行う。
図6は照明効率低下の様子を模式的に示す図であり、縦軸を照明効率α、もしくは照明効率αおよび降雨量Rとし、横軸を時間Tとしたグラフである。なお、図の「現在」はS3の処理を実行するタイミングを示している。
【0048】
(4−1.システム故障、落ち葉による日陰等)
例えば、太陽光照明システム10の故障や、落ち葉等により採光部11に日陰が発生した場合には、
図6(a)に示すように照明効率の急激な低下が発生する。
【0049】
(4−2.雨で落ちる軽微な汚れの堆積)
埃など、雨で落ちる軽微な汚れが太陽光照明システム10の採光部11に堆積している場合、
図6(b)に示すように照明効率αが一定期間低下しつづける。しかし、降雨量Rに示すように雨が降ると汚れは除去されて照明効率αが上昇する。
【0050】
(4−3.雨で落ちない汚れの堆積、経年劣化等)
一方、火山灰など、雨が降っても落ちない汚れが太陽光照明システム10の採光部11に堆積していたり、ある程度の経年劣化が太陽光照明システム10に生じていたりする場合にも、
図6(c)に示すように照明効率αが低下しつづける。この場合、降雨量Rに示すように雨が降っても照明効率αは上昇しない。
【0051】
前記のS3では、太陽光照明管理装置9が、直近の所定の計測時間の間の照明効率αと降雨量Rの時間変化に基づいて、上記のような照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行う。
図7は照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を示すフローチャートであり、図の各ステップは太陽光照明管理装置9の制御部91によって実行される。
【0052】
太陽光照明管理装置9は、照明効率αと降雨量Rの時間変化に基づいて、前記の
図6(a)に示すように、照明効率αが所定時間の間に所定幅以上低下した場合(S31;Yes)、システム故障や落ち葉による日陰等による照明効率低下が生じていると判定し(S32)、S3の処理を終了する。上記の所定時間や所定幅は予め設定し、太陽光照明管理装置9の記憶部92等に記憶しておく。所定時間は例えば1日とする。S31においてNoの場合は後述するS33の処理に移る。
【0053】
太陽光照明管理装置9は、前記の
図6(b)に示すように、一定期間持続して照明効率αが低下しつづけ、かつ、降雨後において照明効率αが上昇した場合(S33;Yes)は、雨で落ちる軽微な汚れの堆積による照明効率低下が生じていると判定し(S34)、S3の処理を終了する。S33においてNoの場合は後述するS35に移る。
【0054】
太陽光照明管理装置9は、前記の
図6(c)に示すように、一定期間持続して照明効率αが低下しつづけ、かつ、降雨後に照明効率αが上昇しなかった場合(S35;Yes)は、雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等による照明効率低下が生じていると判定し(S36)、S3の処理を終了する。S35においてNoの場合は、照明効率低下はなく正常と判定し(S37)、S3の処理を終了する。
【0055】
上記した一定期間は予め設定し、太陽光照明管理装置9の記憶部92等に記憶しておく。降雨後に照明効率αが上昇したかしなかったかの判定も同じく、例えば閾値以上の降雨量Rを観測した場合に降雨があったとし、その後に照明効率αが一定幅以上増加していれば降雨後に照明効率αが上昇したと判定でき、そうでなければ降雨後に照明効率αが上昇しなかったと判定できる。この場合の閾値や一定幅も予め設定し、太陽光照明管理装置9の記憶部92等に記憶しておく。
【0056】
(4.メンテナンス情報の通知)
次に、上記のS5におけるメンテナンス情報の通知について説明する。
図8はメンテナンス情報の通知を示すフローチャートであり、図の各ステップは太陽光照明管理装置9の制御部91によって実行される。
【0057】
太陽光照明管理装置9は、S3で判定した照明効率低下の原因に応じて、メンテナンス効果を算出する(S41)。メンテナンス効果としては、照明効率低下の原因に応じて、メンテナンスを行った場合の照明効率αの上昇幅を算出する。
【0058】
本実施形態では、
図9(a)に示すように、システム故障や落ち葉による日陰などの原因により、照明効率αが急激に低下した場合、メンテナンスによってこの低下分41が回復するものとする。従って、メンテナンス効果MEとしては、低下分41を、下式(2)によって照明効率低下前の照明効率α
低下前と照明効率低下後の照明効率α
低下後の差として算出する。
ME=α
低下前−α
低下後…(2)
【0059】
また、
図9(b)に示すように、雨で落ちる軽微な汚れの堆積によって照明効率αが一定期間低下しつづけ、降雨後に上昇した場合、メンテナンスによって、このような軽微な汚れによる照明効率αの低下分42が回復し、
図9(b)の43で示す雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等による照明効率αの低下については回復しないとする。従って、メンテナンス効果MEとしては、低下分42を下式(3)によって算出する。
ME=(α
降雨後−α
降雨前)×(T
現在−T
降雨後)/ΔT
降雨間隔…(3)
【0060】
式(3)において、α
降雨前は直近の降雨前の照明効率、α
降雨後は直近の降雨後の照明効率、T
現在は太陽光照明システム10の設置時から現在までの経過時間、T
降雨後は太陽光照明システム10の設置時から直近の降雨後までの経過時間である。また、ΔT
降雨間隔は直近の降雨時とその前回の降雨時との間の時間とする。
【0061】
式(3)は、照明効率α
降雨後と照明効率α
降雨前との差42’と、ΔT
降雨間隔とを用いて、ΔT
降雨間隔の間の軽微な汚れの堆積による照明効率αの低下速度を算出し、これと同じ速度で降雨後から現在まで照明効率αが低下し、この低下分42がメンテナンスで回復するとしたものである。
【0062】
また、
図9(c)に示すように、雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等により照明効率αが一定期間低下しつづけ、降雨後に上昇しなかった場合、メンテナンスによって、このような雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等による初期値α
0からの低下分44が回復するものとする。初期値α
0は例えば太陽光照明システム10の設置時の照明効率であり、メンテナンス効果としては、低下分44を下式(4)によって算出する。
EM=(α
0−α
降雨後)×T
現在/T
降雨後…(4)
【0063】
式(4)では、
図9(c)の44’に示すように一度初期値α
0と照明効率α
降雨後との差を算出したうえで、これに経過時間T
降雨後と経過時間T
現在との比を乗じて低下分44を求めている。
【0064】
低下分44は単に初期値α
0から現在の照明効率αを引いて求めてもよいが、上記の式(4)によって求めることで、微量の軽微な汚れの影響も除外し、雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等による照明効率αの低下を正確に評価することができる。
【0065】
図10は、
図9(c)の照明効率αの降雨後付近を拡大した図であるが、式(4)において照明効率α
降雨後を用いることで、軽微な汚れが降雨により除去され微量にも存在しない時点の値を利用して、
図10の43に示す雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等による照明効率αの低下を正確に評価することができる。なお、
図10に示す照明効率αの上昇幅は微量であり、前記したS33において降雨後に照明効率αが上昇したと判定されない程度のものである。
【0066】
図8の説明に戻る。太陽光照明管理装置9は、以上のようにしてメンテナンス効果MEを算出するとともに、S3で特定した照明効率低下の原因に応じて、メンテナンス費用を取得する(S42)。本実施形態では、前記した通り、照明効率低下の原因に応じたメンテナンスにかかるメンテナンス費用が予め記憶部92に記憶されており、その中から、S3で判定した原因に応じたメンテナンス費用を取得する。例えば雨によって落ちる軽微な汚れの堆積の場合、その原因に応じたメンテナンスとして、採光部11等の簡単な清掃にかかる費用が取得される。
【0067】
最後に、太陽光照明管理装置9は、メンテナンス情報として、S41で算出したメンテナンス効果と、S42で取得したメンテナンス費用を表示部96等に表示させ(S43)、S4の処理を終了する。
【0068】
メンテナンス情報のユーザへの通知方法は種々考えられ、特に限定はされない。本実施形態では、太陽光照明管理装置9の表示部96に表示する他、太陽光照明管理装置9とネットワーク(不図示)を介して接続された家庭内の端末で表示させてもよい。これらと併せてランプを点灯するなどして警報を発することも可能である。あるいは、太陽光照明管理装置9からユーザの移動端末にメールを送信したりしてもよい。
【0069】
また、通知するメンテナンス情報としては、上記したメンテナンス効果やメンテナンス費用の他、現在の照明効率及び適当なコメント等を含んでもよい。
【0070】
コメントとしては、例えばシステム故障や落ち葉による日陰などの原因により、照明効率αが急激に低下した場合には、早急にメンテナンスを行う旨のメッセージ表示等を行う。また、雨で落ちる軽微な汚れの堆積によって照明効率αが低下する場合には、降雨によって照明効率αが回復する旨のメッセージ表示等を行う。この場合、ユーザはメンテナンス費用等や天気予報などを勘案し、メンテナンスを行うのか、あるいは近日の雨によって汚れが落ちるのでメンテナンスを行わないのか等を判断することができる。
【0071】
その他、太陽光照明と人工照明とを併用して屋内照度を一定に保つようなシステムの場合には、メンテナンスを実施することで照明効率αが上昇する分、人工照明による照度を低下できることにより削減される電気代、費用対効果などをメンテナンス情報に含めてもよい。上記の電気代としては、人工照明の照度低下により削減できるエネルギーを電気料金912により費用換算したものを用いることができる。また、費用対効果は、例えば、上記の電気代と前記したメンテナンス費用との比などを用いて算出できる。
【0072】
以上により、太陽光照明管理システム1によって太陽光照明システム10の管理が行われ、照明効率低下の検知や照明効率低下の原因の判定、メンテナンス効果やメンテナンス費用などのメンテナンス情報のユーザへの通知等が行われる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、太陽光照明の照明効率αを算出し、その推移から、汚れの堆積等を定量的に評価して照明効率低下の検知と原因の判定を行うことができる。これにより、照明効率低下やその原因をユーザに通知等して適切なメンテナンス時期が来たことを知らせることができ、太陽光照明のメンテナンスに役立ち、太陽光照明を継続的に高効率で使用することができる。特に本実施形態では、メンテナンス情報としてメンテナンスの効果と費用をユーザに通知でき、ユーザによる太陽光照明のメンテナンスに役立つ。
【0074】
また、本実施形態では、照明効率αと降雨量Rの時間変化を用いて、照明効率低下の検知と照明効率低下の原因の判定を行うので、雨で落ちるような軽微な汚れをその他の汚れ等と区別できるようになる。
【0075】
例えば、照明効率αが一定期間低下し続け、かつ、降雨後に上昇した場合、雨で落ちるような軽微な汚れの堆積による照明効率低下が生じていると判定できる。また、照明効率αが一定期間低下し続け、かつ、降雨後に上昇しなかった場合、雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等、雨で回復しない原因による照明効率低下が生じていると判定できる。さらに、照明効率αが所定時間の間に所定幅以上低下した場合、システム故障や落ち葉による日陰等に伴う照明効率低下が生じていると判定できる。太陽光照明管理装置9は、これらの原因に応じたメンテナンス情報をユーザに通知でき、ユーザによる太陽光照明のメンテナンスに役立つ。
【0076】
しかしながら、本発明はこれに限ることはない。例えば、現在の照明効率αを、前年あるいはそれ以前の同時期の照明効率αと比較することにより照明効率αの低下の検知を行うことも可能である。この場合では、季節変化に伴う太陽位置の差異の照明効率αへの影響を除外できる利点がある。この比較は、日単位での比較でもよいが、より広い期間、例えば月単位で比較を行ってもよい。例えば、本年と前年の同月の照明効率αの代表値を比較し、その差が所定幅以上であれば、雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等による照明効率低下が生じていると判定できる。代表値は月間の平均値などでもよいが、期間内の異常値の影響を除外できるとより望ましく、月間の中央値、あるいは異常値を除外した上での平均値などを用いることができる。
【0077】
さらに、前記のS3において雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等により照明効率αが低下していると判定された場合、採光部11等の状況を確認して雨で落ちない汚れが生じているか否かの入力を促す旨を表示部96等で表示し、ユーザへの通知を行ってもよい。この場合、S42では、ユーザの入力結果に応じて、雨で落ちない汚れの場合と、そうでない場合、すなわち経年劣化の場合とで異なるメンテナンス費用を取得することができる。例えば、雨で落ちない汚れの場合にはメンテナンス費用として採光部11等の高度な清掃にかかる費用を取得し、経年劣化の場合には、メンテナンス費用として部品交換等にかかる費用を取得する。
【0078】
あるいは、採光部11の近傍に雨で落ちない汚れを除去するための洗浄装置を設置しておき、前記のS3において雨で落ちない汚れの堆積や経年劣化等により照明効率αが低下していると判定された場合に、太陽光照明管理装置9の制御により上記洗浄装置を稼働させ、採光部11の洗浄を行ってもよい。この場合、洗浄後に照明効率αが上昇しなければ経年劣化による照明効率αの低下が生じていると判定し、S4以降の処理を行うことができる。
【0079】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、太陽光照明管理システム1によって太陽光照明システム10の管理を行う例を説明したが、管理対象は太陽光照明システム10に限ることはない。
【0080】
図11に、第2の実施形態として、太陽光照明管理システム1による管理対象の別の例を示す。
図11に示す例では、太陽光照明管理システム1により、天窓18による太陽光照明を第1の実施形態と同様の手順で管理する。この場合も前記と同様、天窓18への汚れの堆積、天窓18への落ち葉等による照明効率αの低下などを検知でき、照明効率低下の原因に応じたメンテナンス効果、メンテナンス費用などのメンテナンス情報を通知することで天窓18のメンテナンスに資することができる。このように、本発明の適用対象は太陽光を照明に利用するものであれば特に限定されない。
【0081】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。