特許第6237261号(P6237261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237261
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】密封装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3232 20160101AFI20171120BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20171120BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F16J15/3232 101
   B29C33/02
   B29C35/02
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-10339(P2014-10339)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-137729(P2015-137729A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【弁理士】
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹島 聖
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−192571(JP,A)
【文献】 特開2000−225649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3232
B29C 33/02
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の胴体部から軸方向の一方側かつ内周側に伸びて内周側の先端でシールする内周リップと、前記胴体部から軸方向の一方側かつ外周側に伸びて外周側の先端でシールする外周リップとを備え、前記内周リップの軸方向の先端には、径方向の内側から外側に連通する溝が設けられているゴム状弾性体製の密封装置の製造方法であって、
前記密封装置を形成するキャビティと、前記密封装置における前記外周リップに接続される非製品部を形成する空間部とを有する金型を用いて成形を行う成形工程と、
成形工程により得られた成形品から非製品部と成形品に残るゲートとを切断により除去する除去工程と、を有する密封装置の製造方法において、
前記成形工程においては、前記内周リップの軸方向の先端のうち前記溝が設けられない位置から前記キャビティにゴム材料を流し込み、該キャビティにゴム材料を充填させつつ、前記外周リップの軸方向の先端と該外周リップにおける外周側の先端との間のテーパ部分が形成される位置から前記空間部にゴム材料を流し出した後に、加熱により成形品を成形することを特徴とする密封装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材間の環状隙間をシールするゴム状弾性体製の密封装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なカップシールの場合、例えば、外周リップに接続する非製品部を有する成形品を成形し、この成形品から非製品部と成形品に残るゲートとを切断により除去するカット仕上げが行われる。より具体的には、内周リップの軸方向の先端側からキャビティにゴム材料を流し込み、かつ外周リップの軸方向の先端側からゴム材料を流出させて、外周リップに接続する非製品部を有する成形品を成形する。その後、成形品に対して、上記のカッ
ト仕上げが行われる。こうすることで、シール性に影響を与える内周リップ及び外周リップに、バリなどが残らないようにすることができる。
【0003】
しかしながら、内周リップの軸方向の先端に溝が設けられている場合、上記のような一般的な製法を採用することができない。つまり、上記の製法によるカット仕上げでは、溝を形成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−273714号公報
【特許文献2】特開2012−210905号公報
【特許文献3】特開2006−168429号公報
【特許文献4】特開2002−192571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、内周リップの軸方向の先端に溝が設けられていても、一般的な製法と同等の製造工程によって、密封装置の製造を可能とする密封装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
本発明の密封装置の製造方法は、
環状の胴体部から軸方向の一方側かつ内周側に伸びて内周側の先端でシールする内周リップと、前記胴体部から軸方向の一方側かつ外周側に伸びて外周側の先端でシールする外周リップとを備え、前記内周リップの軸方向の先端には、径方向の内側から外側に連通する溝が設けられているゴム状弾性体製の密封装置の製造方法であって、
前記密封装置を形成するキャビティと、前記密封装置における前記外周リップに接続される非製品部を形成する空間部とを有する金型を用いて成形を行う成形工程と、
成形工程により得られた成形品から非製品部と成形品に残るゲートとを切断により除去する除去工程と、を有する密封装置の製造方法において、
前記成形工程においては、前記内周リップの軸方向の先端のうち前記溝が設けられない位置から前記キャビティにゴム材料を流し込み、該キャビティにゴム材料を充填させつつ、前記外周リップの軸方向の先端と該外周リップにおける外周側の先端との間のテーパ部分が形成される位置から前記空間部にゴム材料を流し出した後に、加熱により成形品を成形することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、内周リップの軸方向の先端のうち溝が設けられない位置からキャビティにゴム材料を流し込み、成形品を成形した後に、成形品に残るゲートを切断により除去する製法を採用している。これにより、内周リップの先端に対して、溝が設けられる部位と溝が設けられない部位とを適切に設けることができる
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、内周リップの軸方向の先端に溝が設けられていても、一般的な製法と同等の製造工程によって、密封装置の製造をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施例に係る密封装置の側面図である。
図2図2は本発明の実施例に係る密封装置の模式的断面図である。
図3図3は本発明の実施例に係る密封装置の模式的断面図である。
図4図4は本発明の実施例に係る密封装置の使用時の状態を示す模式的断面図である。
図5図5は本発明の実施例に係る密封装置の製造方法における成形工程を説明する説明図である。
図6図6は本発明の実施例に係る密封装置の製造方法における成形工程を説明する説明図である。
図7図7は本発明の実施例に係る密封装置の製造方法における除去工程を説明する説明図である。
図8図8は本発明の実施例に係る密封装置の製造方法における除去工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
(実施例)
図1図8を参照して、本発明の実施例に係る密封装置及び密封装置の製造方法について説明する。本実施例においては、密封装置が、マスターシリンダーに備えられるゴム状弾性体製のカップシールとして用いられる場合を例にして説明する。従って、本実施例においては、マスターシリンダーにおける2部材(相対的に往復移動するピストンとシリンダ)間の環状隙間を密封装置によってシールする。なお、以下の説明において、「軸方向」とは、ピストンや密封装置における中心軸線方向を意味する。
【0013】
<密封装置>
図1図4を参照して、本実施例に係る密封装置について説明する。図1は本発明の実施例に係る密封装置の側面図(軸方向に見た図)である。図2は本発明の実施例に係る密封装置の模式的断面図である。なお、図2図1中のAA断面図である。図3は本発明の実施例に係る密封装置の模式的断面図である。なお、図3図1中のBB断面図である。図4は本発明の実施例に係る密封装置の使用時の状態を示す模式的断面図である。なお、図4中の密封装置は図1中のBB断面図である。
【0014】
本実施例に係る密封装置100は、環状の胴体部130と、内周リップ110と、外周リップ120とから構成される。内周リップ110は、胴体部130から軸方向の一方側かつ内周側に伸びるように構成されている。そして、内周リップ110における内周側の先端112がピストン200に密着することによりシール機能を発揮する。また、外周リップ120は、胴体部130から軸方向の一方側かつ外周側に伸びるように構成されている。そして、外周リップ120における外周側の先端122がシリンダ300に密着することによりシール機能を発揮する。
【0015】
た、内周リップ110の軸方向の先端には、径方向の内側から外側に連通する溝111が設けられている。なお、本実施例においては、この溝111は周方向に等間隔に3か所設けられている。
【0016】
<密封装置の使用時の状態>
特に、図4を参照して、本実施例に係る密封装置100の使用時の状態について説明する。密封装置100は、シリンダ300に設けられた環状溝310に装着される。そして、密封装置100における内周リップ110の内周側の先端112がピストン200の外
周面に密着し、外周リップ120の外周側の先端122が環状溝310の溝底面に密着する。これにより、密封装置100によって、ピストン200とシリンダ300との間の環状隙間がシールされる。なお、密封装置100は、内周リップ110及び外周リップ120側が圧力室P側を向き、胴体部130側がリザーバタンクに通じる流路R側を向くように環状溝310内に装着される。
【0017】
<密封装置の製造方法>
一般的なカップシールの場合、例えば、外周リップに接続する非製品部を有する成形品を成形し、この成形品から非製品部と成形品に残るゲートとを切断により除去するカット仕上げが行われる。より具体的には、内周リップの軸方向の先端側からキャビティにゴム材料を流し込み、かつ外周リップの軸方向の先端側からゴム材料を流出させて、外周リップに接続する非製品部を有する成形品を成形する。その後、成形品に対して、上記のカット仕上げが行われる。こうすることで、シール性に影響を与える内周リップ及び外周リップに、バリなどが残らないようにすることができる。
【0018】
しかしながら、本実施例に係る密封装置100の場合には、内周リップ110の軸方向の先端には、溝111が設けられている。そのため、上記のような一般的な製法を採用することができない。つまり、上記の製法によるカット仕上げでは、溝111を形成することができない。そこで、一般的な製法と同等の製造工程によって、本実施例に係る密封装置100を製造する方法を以下に説明する。
【0019】
図5図8を参照して、本実施例に係る密封装置100の製造方法について説明する。図5及び図6は本発明の実施例に係る密封装置の製造方法における成形工程を説明する説明図である。なお、図5及び図6は金型の一部を断面にて示しており、図5図1中のAA断面部分を成形する部位を示し、図6図1中のBB断面部分を成形する部位を示している。図7及び図8は本発明の実施例に係る密封装置の製造方法における除去工程(カット仕上げ工程)を説明する説明図である。なお、図7及び図8は成形品の一部を断面にて示しており、図7図1中のAA断面部分に相当し、図8図1中のBB断面部分に相当する。
【0020】
<<成形工程>>
図5及び図6を参照して、成形工程について説明する。本実施例に係る成形工程に用いる金型は、第1型510と第2型520と第3型530とを備えている。なお、図5及び図6においては型締めした状態を示している。そして、この金型により、製品である密封装置100を形成するキャビティCと、密封装置100における外周リップ120に接続される非製品部を形成する空間部521が形成される。
【0021】
そして、本実施例においては、密封装置100の内周リップ110の軸方向の先端のうち溝111が設けられない位置からキャビティCにゴム材料を流し込むようにしている。すなわち、本実施例における金型においては、図5に示すように、スプル511からゲート512を介して、上記の位置からキャビティCにゴム材料を流す構成を採用している。
【0022】
また、本実施例においては、キャビティCにゴム材料を充填させつつ、外周リップ120の軸方向の先端と外周リップ120における外周側の先端122との間のテーパ部分123が形成される位置から空間部521にゴム材料を流し出すようにしている。すなわち、本実施例における金型においては、図5に示すように、外周リップ120のテーパ部分123が形成される位置から流出路522を介して空間部521にゴム材料を流し出す構成を採用している。
【0023】
以上のように構成された金型により、ゴム材料をキャビティC及び空間部521に充填
させた後に、加熱することにより成形品を成形する。
【0024】
<<除去工程(カット仕上げ工程)>>
図7及び図8を参照して、除去工程(カット仕上げ工程)について説明する。上記成形工程によって得られた成形品を金型から取り出した後に、成形品から非製品部150と成形品に残るゲート140とを切断により除去する。図7中のC1は、ゲート140を除去するための切断位置を示している。また、図7及び図8中のC2は、非製品部150を除去するための切断位置を示している。
【0025】
密封装置100における内周リップ110の軸方向の先端のうち、溝111は金型(より具体的には第1型510)によって形成される。そして、内周リップ110の軸方向の先端のうちゲート140に繋がる部分は、上記のカット仕上げによって、バリが残ることはない。また、密封装置100における外周リップ120の軸方向の先端は、金型(より具体的には第1型510)によって形成される
【0026】
なお、外周リップ120の形成に関しては、非製品部150を形成させずに、除去工程をなくすことも可能である。しかしながら、この場合には、キャビティC内において、外周リップ120を形成する部分がゴム材料の最終合流箇所となるため、成形不良が多発し易くなってしまうという他の問題が生じてしまう。
【0027】
<本実施例に係る密封装置の製造方法の優れた点>
実施例に係る密封装置100は、内周リップ110の軸方向の先端に溝111が設けられた構成を採用している。従って、従来のように、成形品を成形後にリップの軸方向の先端にカット仕上げを行う製法を採用することはできない。しかしながら、上述した本実施例に係る製造方法を用いることによって、成形品を成形後に内周リップ110側のゲート140と外周リップ120側の非製品部150を切断により除去するといった、従来と同等の製法により密封装置100を製造することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
100 密封装置
110 内周リップ
111 溝
112 先端
120 外周リップ
122 先端
123 テーパ部分
130 胴体部
131 端面
140 ゲート
150 非製品部
200 ピストン
300 シリンダ
310 環状溝
311 側壁面
510 第1型
511 スプル
512 ゲート
520 第2型
521 空間部
522 流出路
530 第3型
C キャビティ
P 圧力室
R 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8