特許第6237265号(P6237265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237265
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】プリント基板および配線配置方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   H05K1/02 J
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-11480(P2014-11480)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-138953(P2015-138953A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】河合 憲一
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−210760(JP,A)
【文献】 特許第3954640(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0118790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 〜 1/02
H01P 3/00 〜 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の信号線および前記第1の信号線に離間して設けられた第2の信号線が曲げられている曲がり領域を有する伝送線路を備え、
前記第2の信号線は、前記曲がり領域において前記第1の信号線の内側に設けられ、且つ前記曲がり領域の一方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた第1の配線部分と、前記曲がり領域の他方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた第2の配線部分と、前記第1の配線部分と前記第2の配線部分との間に設けられ且つ前記第1の信号線から遠ざかるように曲げられた第3の配線部分と、を含み、
前記第3の配線部分の配線幅が、前記第1の配線部分および前記第2の配線部分の配線幅よりも大きいプリント基板。
【請求項2】
前記伝送線路は、前記曲がり領域に隣接し且つ前記第1の信号線および前記第2の信号線が直線状に伸長している直線領域を更に含む
請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
曲がり領域に所定の方向に曲げられた第1の信号線の配線部分を配置する第1の工程と、
前記曲がり領域に前記第1の信号線に沿って曲げられた第2の信号線の配線部分を、前記第1の信号線の内側に配置する第2の工程と、を含み、
前記第2の工程は、
前記曲がり領域の一方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた前記第2の信号線の第1の配線部分を前記曲がり領域に配置する工程と、
前記曲がり領域の他方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた前記第2の信号線の第2の配線部分を前記曲がり領域に配置する工程と、
前記第1の配線部分と前記第2の配線部分との間に前記第1の信号線から遠ざかるように曲げられた前記第2の信号線の第3の配線部分を前記曲がり領域に配置する工程と、
を含み、
前記第3の配線部分の配線幅を、前記第1の配線部分および前記第2の配線部分の配線幅よりも大きくする配線配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、プリント基板および配線配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
差動伝送は、2本の信号線に互いに逆相の電流を流し、信号線間の電位差を利用して信号伝送を行う伝送方式である。差動伝送は、シングルエンド伝送と比較して高いデータ伝送速度が得られる、ノイズに強い、EMI(Electro-Magnetic Interference)ノイズが放射されにくいといった利点がある。
【0003】
差動伝送において、2つの信号の位相、パルス幅、振幅にずれが生じると、スキューと呼ばれる不平衡成分が発生する。この不平衡成分がコモンモード電流というノイズ電流を生じさせ、システムの誤動作の原因となる。従って、差動伝送線路では、不平衡成分の発生を抑制するための構成がとられている。
【0004】
例えば、伝送線路の曲がり領域における不要モード変換を抑制する技術が提案されている。この技術では、差動伝送線路は、基板と、基板の裏側に形成された接地導体層と、基板の表側に並行に配置された第一信号導体および第二信号導体とを備えている。第一信号導体は接地導体層と第一の伝送線路を構成し、第二信号導体は接地導体層と第二の伝送線路を構成している。第一の伝送線路および第二の伝送線路から差動伝送線路が形成される。差動伝送線路は、曲げ領域を含んでおり、曲げ領域の両端には直線領域が接続されている。曲げ領域における第一信号導体の線路幅をWb1、第二信号導体の線路幅をWb2、第一信号導体と第二信号導体との間の間隙幅をGb、直線領域における第一信号導体の線路幅をWs1、第二信号導体の線路幅をWs2とする。第一信号導体と第二信号導体との間の間隙幅をGs、曲げ領域の曲率中心から曲げ領域の第一信号導体の曲率中心側の線縁までの最短距離をRb1、曲げ領域の曲率中心から直線領域の第一信号導体の曲率中心側の線縁の延長直線までの垂線距離をRs1とする。この技術では、Wb1はWs1よりも狭く、Wb2はWs2よりも狭く、GbはGsよりも狭く、Rb1はRs1よりも大きな値に設定することにより、伝送線路の曲げ領域における不要モード変換を抑制している。
【0005】
また、誘電体層と接する配線層に、第1の配線及び第2の配線から成る差動伝送線路及び差動伝送線路が接続される素子が設けられたプリント配線基板において、差動伝送線路の差動インピーダンスの不整合による伝送品質の劣化を抑える技術が提案されている。この技術では、第1の配線および第2の配線の一端側の幅を、所定幅になるまで漸次的に減少させ、第1の配線と第2の配線が、漸次的に減少する区間において線対称に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/000934号
【特許文献2】特開2005−340506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1は、差動伝送線路を形成する一対の信号線の配線パターンの一例を示す図である。差動伝送線路100は、第1の信号線101および第2の信号線102を含む。第1の信号線101および第2の信号線102は、曲がり領域103において伸長方向が90°曲げられている。曲がり領域103の内側に配置されている第2の信号線102は、第1の信号線101から遠ざかる方向に蛇行させたミアンダ配線とされており、第1の信号線101と第2の信号線102との線長差が低減されている。第1の信号線101と第2の信号線102との間の線長差が大きくなると、第1の信号線101と第2の信号線102にそれぞれ伝送される2つ信号に位相差が生じ不平衡成分が生じる結果となる。従って、第1の信号線101と第2の信号線102との間の線長差は、小さい方が好ましい。
【0008】
しかしながら、差動伝送線路においてミアンダ配線を設けると、信号線の占有面積が大きくなり、差動伝送線路のパターン設計が困難となる場合がある。ここで、図2は、ミアンダ配線を有する差動伝送線路(上段)と、ミアンダ配線を有しない差動伝送線路(下段)とで占有領域を比較した図である。図2に示す例では、ミアンダ配線を有する4対の差動伝送線路100A〜100Dおよびミアンダ配線を有しない4対の差動伝送線路100E〜100Hを、それぞれ、信号線の伸長方向と交差する方向に並置した場合が示されている。差動伝送線路100A〜104Dは、それぞれ、対をなす一方の信号線において他方の信号線から遠ざかる方向に蛇行するミアンダ部101A〜104Aを有する。ミアンダ配線を有する差動伝送線路100A〜100Dと、ミアンダ配線を有しない差動伝送線路100E〜100Hの配線間距離(配線ピッチ)Lは互いに等しく、隣接する差動伝送線路間の距離Mも互いに等しいものとする。図2に示すように、ミアンダ配線を有する4対の差動伝送線路100A〜100Dを配置するための必要とされる領域R1は、ミアンダ配線を有しない4対の差動伝送線路100E〜100Hを配置するために必要とされる領域R2よりも大きい。また、図3に示すように、4対の差動伝送線路100A〜100Dの伸長方向を曲げた場合には、差動伝送線路100A〜100Dの占有領域が更に拡大することとなる。
【0009】
このように、差動伝送線路においてミアンダ配線を形成すると信号線の占有面積が拡大する。これを抑制するために、ミアンダ部における蛇行幅を小さくすることが考えられる。しかしながら、この場合、他方の信号線との線長差を低減するためには蛇行回数を多くする必要があり、必要な蛇行回数を確保できない場合には、線長差を十分に低減することができない。
【0010】
開示の技術は、伝送線路を形成する一対の信号線の線長差を低減させる際の信号線の占有面積の拡大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示の技術に係るプリント基板は、第1の信号線および前記第1の信号線に離間して設けられた第2の信号線が曲げられている曲がり領域を有する伝送線路を備える。前記第2の信号線は、前記曲がり領域において前記第1の信号線の内側に設けられ、且つ前記曲がり領域の一方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた第1の配線部分と、前記曲がり領域の他方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた第2の配線部分と、前記第1の配線部分と前記第2の配線部分との間に設けられ且つ前記第1の信号線から遠ざかるように曲げられた第3の配線部分と、を含み、前記第3の配線部分の配線幅が、前記第1の配線部分および前記第2の配線部分の配線幅よりも大きい。
【発明の効果】
【0012】
開示の技術は、伝送線路を形成する一対の信号線の線長差を低減させる際の信号線の占有面積の拡大を抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】差動伝送線路を形成する一対の信号線の配線パターンの一例を示す図である。
図2】ミアンダ配線を有する差動伝送線路およびミアンダ配線を有しない差動伝送線路の占有領域を示す図である。
図3】伸長方向が曲げられた複数の差動伝送線路を配置した配線パターン図である。
図4】開示の技術の実施形態に係るプリント基板の断面図である。
図5】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路の部分的な配線パターンを示す図である。
図6】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路のパターン設計を行う際の手順の一例を示すフローチャートである。
図7】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路を4対配置した場合の配線パターンを示す図である
図8】比較例に係る差動伝送線路の配線パターンを示す図である。
図9A】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路および比較例に係る差動伝送線路のScd21特性を示す図である。
図9B】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路および比較例に係る差動伝送線路のScd21特性を示す図である。
図10】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路の部分的な配線パターンを示す図である。
図11】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路の部分的な配線パターンを示す図である。
図12A】差動伝送線路を形成する一対の信号線の配線幅と差動インピーダンスとの関係を示す図である。
図12B】差動伝送線路を形成する一対の信号線の配線間距離と差動インピーダンスとの関係を示す図である。
図13】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路の部分的な配線パターンを示す図である。
図14】開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路の部分的な配線パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図4は、開示の技術の実施形態に係るプリント基板10の断面図である。プリント基板10は、誘電体層11と、誘電体層11の表面および裏面を覆う導電体膜12、13と、誘電体層11の内部に設けられた導電体によって形成される第1の信号線21および第2の信号線22と、を有する。すなわち、プリント基板10においてストリップラインが形成されている。また、第1の信号線21と第2の信号線22とによって差動伝送線路20が形成されている。プリント基板10において、導電体膜12、13に接地電位を与えるとともに、第1の信号線21および第2の信号線22に互いに逆相の信号を入力することにより、差動伝送方式による信号伝送を行うことが可能である。プリント基板10において、第1の信号線21および第2の信号線22から導電体膜12、13に向かう方向の電界と、第1の信号線21および第2の信号線22の周囲を囲む方向の磁界とによって電磁波が伝送される。
【0016】
導電体膜12、13、第1の信号線21および第2の信号線22の材料として、例えば、銅などの金属を用いることが可能である。また、誘電体層11として、例えば、ガラスエポキシ材を用いることが可能である。本実施形態では、プリント基板10においてストリップラインを形成しているが、プリント基板10は、マイクロストリップラインを形成するものであってもよい。マイクロストリップラインは、誘電体層の一方の面に導電体膜を形成し、誘電体層の他方の面に信号線を形成した構造を有する伝送線路である。
【0017】
なお、プリント基板10は、開示の技術のプリント基板の一例である。差動伝送線路20は、開示の技術の伝送線路の一例である。第1の信号線21は開示の技術の第1の信号線の一例である。第2の信号線22は、開示の技術の第2の信号線の一例である。
【0018】
図5は、開示の技術の第1の実施形態に係る差動伝送線路20の部分的な配線パターンを示す図である。差動伝送線路20は、第1の信号線21および第2の信号線22が直線状に伸長している第1の直線領域31を有する。また、差動伝送線路20は、第1の信号線21および第2の信号線22が、第1の直線領域31における伸長方向に対して直交する方向に直線状に伸長している第2の直線領域33を有する。第1の直線領域31および第2の直線領域33において、第1の信号線21と第2の信号線22とは平行となるように配置され、第1の信号線21と第2の信号線22との配線間距離(配線ピッチ)L1は、一例として450μmとされている。なお、本明細書において、配線間距離(配線ピッチ)とは、第1の信号線21と第2の信号線22との中心線間の距離をいうものとする。なお、第1の直線領域31における配線間距離と、第2の直線領域33における配線間距離は互いに異なっていてもよい。第1の実施形態において、第1の信号線21と第2の信号線22の配線幅Wは、第1の直線領域31、第2の直線領域33および後述する曲がり領域32の全域に亘り一定とされており、一例として120μmとされている。第1の直線領域31、第2の直線領域33および後述する曲がり領域32の配線幅は互いに異なっていてもよい。
【0019】
差動伝送線路20は、第1の直線領域31と第2の直線領域33との間に設けられ、第1の信号線21および第2の信号線22が曲げられている曲がり領域32を有する。すなわち、曲がり領域32の一端側に第1の直線領域31が隣接して設けられ、曲がり領域32の他端側に第2の直線領域33が隣接して設けられている。曲がり領域32において、第1の信号線21および第2の信号線22は、第1の直線領域31および第2の直線領域33における伸長方向と整合するように、伸長方向が全体として90°曲げられている。なお、第1の直線領域31および第2の直線領域33は、開示の技術の直線領域の一例である。曲がり領域32は、開示の技術の曲がり領域の一例である。
【0020】
第1の信号線21は曲がり領域32において、第2の信号線22に対して外側に配置され、第2の信号線22は曲がり領域32において、第1の信号線21に対して内側に配置されている。換言すれば、第1の信号線21は、第2の信号線22に対して曲がり領域32における曲げ方向(本実施形態では右方向)とは反対側(本実施形態では左側)に配置されている。第2の信号線22は、第1の信号線21に対して曲がり領域32における曲げ方向(本実施形態では右方向)と同じ側(本実施形態では右側)に配置されている。
【0021】
第1の信号線21は、曲がり領域32において、第1の直線領域31に接続され且つ第1の直線領域31における伸長方向と同じ方向に伸長する配線部分21aを有する。また、第1の信号線21は、曲がり領域32において、配線部分21aに接続され且つ配線部分21aの伸長方向に対して右斜め45°の方向に直線状に伸長する配線部分21bを有する。更に、第1の信号線21は、曲がり領域32において、配線部分21bに接続され、配線部分21bの伸長方向に対して右斜め45°の方向に直線状に伸長し且つ第2の直線領域33に接続された配線部分21cを有する。配線部分21cの伸長方向は、第2の直線領域33における伸長方向と同一である。このように、第1の信号線21は、曲がり領域32に2つの屈曲部A1およびA2を有し、曲がり領域32において2段階で曲げられてその伸長方向が90°変化している。
【0022】
一方、第2の信号線22は、曲がり領域32において、全体として第1の信号線21に沿って曲げられている。第2の信号線22は、曲がり領域32において、第1の直線領域31との接続点B1から第1の信号線21に近接する方向に向かう配線部分22aを有する。また、第2の信号線22は、曲がり領域32において、配線部分22aに接続され且つ第1の信号線21の配線部分21aと平行な方向に伸長する配線部分22bを有する。第1の信号線21の配線部分21aと、第2の信号線22の配線部分22bとの配線間距離L2は、第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1よりも小さく、一例として、200μmとされている。第2の信号線22の配線部分22aおよび配線部分22bを含む配線部分は、第1の信号線21に近接するように遠回りさせた開示の技術の第1の配線部分の一例である。
【0023】
また、第2の信号線22は、曲がり領域32において、第2の直線領域33との接続点B2から第1の信号線21に近接する方向に向かう配線部分22cを有する。また、第2の信号線22は、曲がり領域32において、配線部分22cに接続され且つ第1の信号線21の配線部分21cと平行な方向に伸長する配線部分22dを有する。第1の信号線21の配線部分21cと、第2の信号線22の配線部分22dとの配線間距離L2は、第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1よりも小さく、一例として、200μmとされている。第2の信号線22の配線部分22cおよび配線部分22dを含む配線部分は、第1の信号線21に近接するように遠回りさせた開示の技術の第2の配線部分の一例である。なお、第1の信号線21の配線部分21aと第2の信号線22の配線部分22bとの配線間距離と、第1の信号線21の配線部分21cと第2の信号線22の配線部分22dとの配線間距離は、互いに異なっていてもよい。
【0024】
このように、第2の信号線22は、曲がり領域32において、第1の信号線21に近接するように遠回りさせた迂回経路Pを形成している。第2の信号線22は、曲がり領域32に形成される迂回経路P上で第1の信号線21から遠ざかるように曲げられた配線部分22eを有する。すなわち、配線部分22eは、第1の信号線21からの距離L3が、上記の配線間距離L2よりも大きくなる点Qを通過する。配線部分22eは、配線部分22bとの接続点B3から点Qを通り、点Qにおいて屈曲されて配線部分22dとの接続点B4に至る。なお、配線部分22eは、開示の技術の第3の配線部分の一例である。なお、距離L3の上限を、一例として、第1および第2の直線領域31および33における第1の信号線21と第2の信号線22の配線間距離L1に相当する長さに規制してもよい。
【0025】
以下に、差動伝送線路20の配線配置方法について説明する。図6は、差動伝送線路20を形成する第1の信号線21および第2の信号線22の配線パターンの設計を行う際の手順の一例を示すフローチャートである。
【0026】
ステップS1において、第1の直線領域31、曲がり領域32および第2の直線領域33にそれぞれ、第1の信号線21の配線部分を配置する。第1の信号線21の配線幅Wは、一例として120μmとすることができる。なお、ステップS1は、開示の技術の第1の工程の一例である。
【0027】
ステップS2において、第1の直線領域31および第2の直線領域33に、それぞれ第1の信号線21と平行となるように第2の信号線22の配線部分を配置する。第1の直線領域31および第2の直線領域33において、第1の信号線21と第2の信号線22との配線間距離L1は、一例として450μmとすることができる。また、第2の信号線22の配線幅Wは、一例として120μmとすることができる。
【0028】
ステップS3において、曲がり領域32に第2の信号線22の配線部分22a〜22dを配置する。具体的には、曲がり領域32において、第1の信号線21の配線部分21aに対して平行であり且つ第1の信号線21の配線部分21aとの配線間距離L2が、一例として200μmとなるように、第2の信号線22の配線部分22bを配置する。その後、第2の信号線22の配線部分22aを配置して曲がり領域32と第1の直線領域31とを接続する。
【0029】
また、曲がり領域32において、第1の信号線21の配線部分21cに対して平行であり且つ第1の信号線21の配線部分21cとの配線間距離L2が、一例として200μmとなるように、第2の信号線22の配線部分22dを配置する。その後、第2の信号線22の配線部分22cを配置して曲がり領域32と第2の直線領域33とを接続する。このようにして、曲がり領域32の両端から第1の信号線21に近接するように遠回りさせた第2の信号線22の配線部分を曲がり領域32に配置する。
【0030】
ステップS4において、第2の信号線22の配線部分22bと配線部分22dとの間の区間において、第1の信号線21からの距離L3がL2よりも大きくなる任意の位置を点Qの位置として決定する。
【0031】
ステップS5において、一端が配線部分22bに接続され、他端が配線部分22dに接続され、且つ一端と他端の間の区間において点Qを通過する第2の信号線22の配線部分22eを配置する。なお、ステップS2〜S5は、開示の技術の第2の工程の一例である。
【0032】
ステップS6において、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を導出する。なお、本ステップにおいては、電磁界解析などにより、第1の信号線21および第2の信号線22を介して伝送される電磁波のディレイを求めてもよい。
【0033】
ステップS7において、ステップS6で導出された第1の信号線21と第2の信号線の線長差が許容範囲内であるか否かを判定する。ステップS7において、線長差が許容範囲内にないと判定された場合には、ステップS8に移行し、許容範囲内であると判定された場合には本ルーチンは終了となる。なお、ステップS6においてディレイを求めた場合には、ステップS7において当該ディレイの大きさが許容範囲内であるか否かを判定する。
【0034】
ステップS8において、点Qの位置を再設定する。例えば、第2の信号線22の配線長が第1の信号線21の配線長よりも許容範囲を超えて短いことが判明した場合には、点Qの位置を第1の信号線21から遠ざける方向(すなわち、距離L3が大きくなる方向)に移動させる。一方、第2の信号線22の配線長が第1の信号線21の配線長よりも許容範囲を超えて長いことが判明した場合には、点Qの位置を第1の信号線21に近づける方向(すなわち、距離L3が小さくなる方向)に移動させる。ステップS8において点Qの位置を再設定した後、ステップS5に戻る。
【0035】
ステップS5において、再設定された点Qを通過するように第2の信号線22の配線部分22eの経路を修正する。続いて、ステップS6において第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を再度導出する。ステップS7において、再度導出された線長差が許容範囲内であるか否かを判定する。このような試行を、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差が許容範囲内に収まるまで繰り返し実施する。なお、上記の手順は一例にすぎず、各ステップにおける処理の入れ替え等を適宜行うことが可能である。例えば、第2の信号線22を第1の信号線21よりも先に配置してもよい。また、第2の信号線22の配線部分22a〜22eの配置順序を適宜入れ替えてもよい。また、第1の直線領域31、曲がり領域32、第2の直線領域33の順で第2の信号線22の各配線部分を配置してもよい。
【0036】
本実施形態に係る差動伝送線路20では、曲がり領域32において、内側に配置される第2の信号線22を、外側に配置される第1の信号線21に近接するように遠回りさせることで第1の信号線21と第2の信号線22との線長差が低減される。本実施形態に係る差動伝送線路20は、直線領域において一方の信号線を他方の信号線から遠ざかる方向に蛇行させる図1に示すようなミアンダ配線を有しないので、信号線の占有面積が拡大することがない。すなわち、本実施形態に係る差動伝送線路20によれば、蛇行部を全く有しない差動伝送線路と同等の配置スペースで足りる。
【0037】
図7は、本実施形態に係る差動伝送線路20を4対配置した場合の配線パターンを示す図である。本実施形態に係る差動伝送線路20によれば、上記の如く信号線の占有面積が拡大することがなく、他の伝送線路の配置スペースを確保しやすいので、図7に示すように複数の差動伝送線路を配置する場合でもパターン設計が容易となる。
【0038】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る差動伝送線路20を含むプリント基板10によれば、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を低減する際に信号線の占有面積の拡大を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る差動伝送線路20において、第2の信号線22は、曲がり領域32において、第1の信号線21に近接するように遠回りさせた迂回経路Pを形成し、この迂回経路P上に第1の信号線21から遠ざかるように曲げられた配線部分22eを有する。このように、迂回経路P上に屈曲した配線部分22eを設けることで、第2の信号線21の配線長をより長くすることができる。従って、第2の信号線22の配線長の調整範囲をより大きくすることができ、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差をより縮小することが可能となる。
【0040】
また、第2の信号線22の配線部分22eにおいて点Qの位置を、第1の信号線21に近づける方向または第1の信号線21から遠ざかる方向に移動させることで(距離L3の大きさを変えることで)、第2の信号線22の配線長を容易に調整することができる。つまり、図6に示すように第1の信号線21と第2の信号線22の線長差を縮小するべく第2の信号線22の配線長の調整を繰り返し実施する際に、第2の信号線22のパターン修正の規模が小さくて済む。従って、差動伝送線路20のパターン設計を効率的に行うことができる。
【0041】
ここで、図8に、比較例に係る差動伝送線路200の配線パターンを示す。図8において、開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路20と同一または対応する構成要素については同一の参照符号を付与し、その詳細な説明は省略する。比較例に係る差動伝送線路200は、曲がり領域32において第2の信号線22によって形成される迂回経路P上に第1の信号線21から遠ざかる方向に曲げられた配線部分を有しない。
【0042】
図9Aおよび図9Bは、開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路20および比較例に係る差動伝送線路200のScd21特性を示す図である。Scd21は、差動モードの信号を伝送線路に入力した場合にコモンモード成分に変換される割合を示す。すなわち、Scd21の値は、差動伝送線路を形成する一対の信号線の線長差が小さい程小さくなる。従って、開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路20と比較例に係る差動伝送線路200とのScd21特性を比較することによって、これら2つの差動伝送線路における信号線間の線長差を比較することができる。
【0043】
図9Aは、第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1を450μm、曲がり領域32における配線間距離L2を200μmとし、第1の信号線21および第2の信号線22の配線幅Wを120μmとした場合のScd21特性を示す。図9Bは、図9Aの場合に対して、第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1を400μmに縮小した場合のScd21特性を示す。
【0044】
図9Aおよび図9Bにおいて、実線が開示の技術の実施形態に係る差動伝送線路20に対応し、破線が比較例に係る差動伝送線路200に対応する。なお、本実施形態に係る差動伝送線路20においては、第1の信号線21の配線長と第2の信号線22の配線長とが等しくなるように、第2の信号線22における点Qの位置(距離L3)が調整されている。
【0045】
図9Aおよび図9Bに示すように、本実施形態に係る差動伝送線路20の方が、比較例に係る差動伝送線路200よりもScd21の値が小さく、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差が小さいことが理解できる。すなわち、比較例に係る差動伝送線路200は、迂回経路P上に第1の信号線21から遠ざかる方向に曲げられた配線部分を有しないので(図8参照)、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を縮小するにも限界がある。また、比較例に係る差動伝送線路200の構成では、第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1が小さくなる程、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を縮小することが困難となる。すなわち、図9A図9Bとを比較して明らかなように、比較例に係る差動伝送線路200では、第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1を縮小すると第1の信号線21と第2の信号線22との線長差が大きくなりScd21の値が大きくなる。
【0046】
一方、本実施形態に係る差動伝送線路20によれば、第1の信号線21に近接するように遠回りさせた迂回経路P上で第1の信号線21から遠ざかるように曲げられた配線部分22eを有する。これにより、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を、比較例に係る差動伝送線路200よりも小さくすることが可能となる。また、第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1を縮小した場合でも、曲がり領域32において第2の信号線22の点Qの位置を調整することで、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を低減できる。このように、本実施形態に係る差動伝送線路20において、第2の信号線22の配線部分22eは、第2の信号線22の配線長を調整するための調整部としての機能を有する。なお、点Qの位置の移動に加えて、図10に示すように、第1の信号線21の配線部分21bを平行移動させることで、第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を低減させてもよい。このように、第1の信号線21と第2の信号線22の配線長の調整を行う部分を曲がり領域32に集約することで、第1および第2の直線領域31、33においてはパターンを確定させることができ、差動伝送線路20のパターン設計を効率的に行うことが可能となる。
【0047】
[第2の実施形態]
図11は、開示の技術の第2の実施形態に係る差動伝送線路20Aの部分的な配線パターンを示す図である。図11において、第1の実施形態に係る差動伝送線路20と同一または対応する構成要素については、同一の参照符号を付与し、その詳細な説明は省略する。なお、第2の実施形態に係る差動伝送線路20Aを含むプリント基板の構成は、図4に示す第1の実施形態に係るプリント基板10と同様である。
【0048】
第2の実施形態に係る差動伝送線路20Aにおいて、第1の信号線21および第2の信号線22の、曲がり領域32における配線幅W2は、第1および第2の直線領域31、33における配線幅W1よりも小さい。一例として、第1の信号線21および第2の信号線22の、曲がり領域32における配線幅W2を100μmとし、第1および第2の直線領域231、33における配線幅W1を120μmとしてもよい。第2の実施形態に係る差動伝送線路20Aにおける他の構成は、第1の実施形態に係る差動伝送線路20と同様である。
【0049】
ここで、図12Aは、差動伝送線路を形成する一対の信号線の配線幅Wと差動インピーダンスZとの関係を示す図である。なお、一対の信号線の配線間距離Lは、450μm一定とした。図12Aに示すように、一対の信号線の配線幅Wが大きくなる程、差動インピーダンスZは小さくなる傾向にある。
【0050】
一方、図12Bは、差動伝送線路を形成する一対の信号線の配線間距離Lと差動インピーダンスZとの関係を示す図である。なお、一対の信号線の配線幅Wは、120μm一定とした。図12Bに示すように、一対の信号線の配線間距離Lが大きくなる程、差動インピーダンスZは大きくなる傾向にある。
【0051】
一般的に、伝送線路の特性インピーダンスZは、下記の(1)式によって表すことができる。
=(L/C)1/2 ・・・(1)
差動伝送線路においは、一対の信号線の配線幅W及び配線間距離Lにより、キャパシタンスCを調整することができる。例えば、配線幅Wを大きくすることでキャパシタンスCが大きくなり特性インピーダンスZは小さくなる。また、配線間距離Lを小さくすると、信号線間の結合が強くなり、キャパシタンスCが大きくなり特性インピーダンスZは小さくなる。
【0052】
第1および第2の実施形態に係る差動伝送線路20および20Aにおいて、第1の信号線21と第2の信号線22との、曲がり領域32における配線間距離L2は、第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1よりも小さい。従って、第1の信号線21と第2の信号線22の配線幅Wが全域に亘り一定である第1の実施形態に係る差動伝送線路20では、曲がり領域32における差動インピーダンスが、第1および第2の直線領域31、33における差動インピーダンスより小さくなる。差動伝送線路上に差動インピーダンスの変化点が存在すると、当該変化点において信号の反射が起こり得る。
【0053】
第2の実施形態に係る差動伝送線路20Aにおいては、図11に示すように、第1の信号線21および第2の信号線22の、曲がり領域32における配線幅W2は、第1および第2の直線領域31、33における配線幅W1よりも小さい。これにより、曲がり領域32における配線間距離L2を第1および第2の直線領域31、33における配線間距離L1よりも小さくしたことよる差動インピーダンスの低下分を相殺することできる。つまり、第2の実施形態に係る差動伝送線路20Aの構成によれば、曲がり領域32における差動インピーダンスと、第1および第2の直線領域31、33における差動インピーダンスとの差分を、第1の実施形態に係る差動伝送線路20よりも小さくできる。
【0054】
第2の実施形態に係る差動伝送線路20Aを含むプリント基板によれば、第1の実施形態に係るプリント基板と同様、信号線の占有面積の拡大を抑制しつつ第1の信号線21と第2の信号線22との線長差を低減することができる。更に第2の実施形態に係る差動伝送線路20Aを含むプリント基板によれば、第1および第2の直線領域31、33における差動インピーダンスと曲がり領域32における差動インピーダンスとの差を小さくすることができ、伝送品質の向上を図ることができる。しかしながら、差動伝送線路20Aは、迂回経路P上に第1の信号線21から遠ざかる方向に曲げられた配線部分22eを含むので、曲がり領域32における第1の信号線21と第2の信号線22との配線間距離は均一ではない。従って、曲がり領域32における差動インピーダンスは、厳密には均一ではない。
【0055】
ここで、図13は、変形例に係る差動伝送線路20Bの部分的な配線パターンを示す図である。図13において、上記した差動伝送線路20と同一または対応する構成要素については、同一の参照符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
差動伝送線路20Bにおいて、曲がり領域32における第2の信号線22の配線部分22eおよびこれに対向する第1の信号線21の配線部分21bの配線幅W3は、曲がり領域32における他の配線部分における配線幅W2よりも大きい。このように、曲がり領域32において配線間距離が他の部分より大きくなる配線部分22eおよび21bの配線幅を、他の配線部分の配線幅よりも大きくすることで、曲がり領域32における差動インピーダンスの不均一を是正することができる。これにより、伝送品質の更なる向上を図ることが可能となる。なお、差動伝送線路20Bにおいて、第2の信号線22の配線部分22eおよび第1の信号線21の配線部分22bのいずれか一方の配線幅を他の配線部分における配線幅よりも大きくしてもよい。
【0057】
開示の技術は、上記した各実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。上記の第1および第2の実施形態では、第1の信号線21および第2の信号線22の伸長方向を曲がり領域32において90°曲げる場合を例示したが、これに限定されるものではなく、曲がり領域における曲げ角度を任意の大きさにすることができる。図14は、変形例に係る差動伝送線路20Cの部分的な配線パターンを示す図である。図14において、上記した差動伝送線路20と同一または対応する構成要素については、同一の参照符号を付与し、その詳細な説明は省略する。図14は、第1の信号線21と第2の信号線22の曲がり領域32における曲げ角度を一例として45°とした場合である。差動伝送線路20Cにおいて、第2の信号線22は、曲がり領域に32において、第1の信号線21に近接するように遠回りする配線部分22a、22cと、第1の信号線21から遠ざかるように曲げられた配線部分22eと、を有する。
【0058】
また、上記の各実施形態では、第1の信号線21および第2の信号線の各配線部分を直線状とし、曲がり領域32における第1の信号線21および第2の信号線22を屈曲させる場合を例示したがこれに限定されるものではない。第1の信号線21および第2の信号線22は、曲がり領域32において、曲線状に湾曲していてもよい。
【0059】
また、上記の各実施形態に係る第1の直線領域31、曲がり領域32および第2の直線領域33を有する差動伝送線路20、20A、20Bおよび20Cを例示したがこれに限定されるものではない。差動伝送線路は、曲がり領域のみを有していてもよいし、曲がり領域と当該曲がり領域の一端側にのみ設けられた直線領域とを含んでいてもよい。
【0060】
以上の各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0061】
(付記1)
第1の信号線と前記第1の信号線に離間して設けられた第2の信号線が曲げられている曲がり領域を有する伝送線路を備え、
前記第2の信号線は、前記曲がり領域において前記第1の信号線の内側に設けられ、且つ前記曲がり領域において前記第1の信号線に近接するように遠回りさせた経路上に前記第1の信号線から遠ざかる部分を有するプリント基板。
【0062】
(付記2)
前記伝送線路は、前記曲がり領域に隣接し且つ前記第1の信号線および前記第2の信号線が直線状に伸長している直線領域を更に含み、
前記第1の信号線および前記第2の信号線の前記曲がり領域における配線幅は、前記直線領域における配線幅よりも小さい付記1に記載のプリント基板。
【0063】
(付記3)
前記伝送線路は、前記曲がり領域の一方の端部側に隣接し且つ前記第1の信号線および前記第2の信号線が第1の方向に直線状に伸長している第1の直線領域と、前記曲がり領域の他方の端部側に隣接し且つ前記第1の信号線および前記第2の信号線が前記第1の方向とは異なる第2の方向に直線状に伸長している第2の直線領域と、を更に含み、
前記第1の信号線および前記第2の信号線の前記曲がり領域における配線幅は、前記第1の直線領域および前記第2の直線領域における配線幅よりも小さい付記1に記載のプリント基板。
【0064】
(付記4)
前記第2の信号線は、前記曲がり領域の一方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた第1の配線部分と、前記曲がり領域の他方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた第2の配線部分と、前記第1の配線部分と前記第2の配線部分との間に設けられ且つ前記第1の信号線から遠ざかるように曲げられた第3の配線部分と、を含み、
前記第3の配線部分の配線幅が、前記第1の配線部分および前記第2の配線部分の配線幅よりも大きい付記2または付記3に記載のプリント基板。
【0065】
(付記5)
前記第3の配線部分は、前記第1の信号線からの距離が、前記第1の配線部分と前記第1の信号線との最短距離および前記第2の配線部分と前記第1の信号線との最短距離よりも大きくなる点を通過する付記4に記載のプリント基板。
【0066】
(付記6)
前記第1の信号線および前記第2の信号線を埋設する誘電体層と、前記誘電体層の表面および裏面を覆う導電体膜と、を更に含む付記1から付記5のいずれか1つに記載のプリント基板。
【0067】
(付記7)
曲がり領域に所定の方向に曲げられた第1の信号線の配線部分を配置する第1の工程と、
前記曲がり領域に前記第1の信号線に沿って曲げられた第2の信号線の配線部分を、前記第1の信号線に対して前記曲がり領域における曲げ方向と同じ側に配置する第2の工程と、を含み、
前記第2の工程は、
前記曲がり領域の一方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた前記第2の信号線の第1の配線部分を前記曲がり領域に配置する工程と、
前記曲がり領域の他方の端部側から前記第1の信号線に近接するように曲げられた前記第2の信号線の第2の配線部分を前記曲がり領域に配置する工程と、
前記第1の配線部分と前記第2の配線部分との間に前記第1の信号線から遠ざかるように曲げられた前記第2の信号線の第3の配線部分を前記曲がり領域に配置する工程と、
を含む配線配置方法。
【0068】
(付記8)
第1の工程および前記第2の工程の後に、前記第1の信号線と前記第2の信号線の線長差を導出する第3の工程と、
前記線長差が許容範囲内であるか否かを判定する第4の工程と、
前記線長差が許容範囲内ではないと判定された場合に、前記第3の配線部分を修正する第5の工程と、を更に含む付記7に記載の配線配置方法。
【0069】
(付記9)
前記第3の配線部分は、前記第1の信号線からの距離が、前記第1の配線部分と前記第1の信号線との最短距離および前記第2の配線部分と前記第1の信号線との最短距離よりも大きくなる点を屈曲点として含み、前記第5の工程において、前記屈曲点の位置を前記第1の信号線に近づける方向または前記第1の信号線から遠ざける方向に移動させる付記8に記載の配線配置方法。
【0070】
(付記10)
前記曲がり領域に隣接する直線領域に直線状に伸長するように前記第1の信号線の配線部分を配置する工程と、
前記直線領域に前記第1の信号線と平行な方向に伸長する前記第2の信号線の配線部分を配置する工程と、を更に含み、
前記第1の信号線および前記第2の信号線の前記曲がり領域における配線幅を前記直線領域における配線幅よりも小さくする付記7から付記9のいずれか1つに記載の配線配置方法。
【0071】
(付記11)
前記第3の配線部分の配線幅を前記第1の配線部分および前記第2の配線部分の配線幅よりも大きくする付記10に記載の配線配置方法。
【符号の説明】
【0072】
10 プリント基板
20、20A、20B、20C 差動伝送線路
21 第1の信号線
21a〜22c 配線部分
22 第2の信号線
22a〜22e 配線部分
31 第1の直線領域
32 曲がり領域
33 第2の直線領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14