特許第6237272号(P6237272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

特許6237272転写ローラ及びそれを用いた衛生薄葉紙ロールの製造方法
<>
  • 特許6237272-転写ローラ及びそれを用いた衛生薄葉紙ロールの製造方法 図000002
  • 特許6237272-転写ローラ及びそれを用いた衛生薄葉紙ロールの製造方法 図000003
  • 特許6237272-転写ローラ及びそれを用いた衛生薄葉紙ロールの製造方法 図000004
  • 特許6237272-転写ローラ及びそれを用いた衛生薄葉紙ロールの製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237272
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】転写ローラ及びそれを用いた衛生薄葉紙ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20171120BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F16C13/00 Z
   A47K10/16 A
   A47K10/16 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-15209(P2014-15209)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-140895(P2015-140895A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】伊神 雅
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−23965(JP,A)
【文献】 特開2013−256131(JP,A)
【文献】 特開平11−348500(JP,A)
【文献】 特開2008−290826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 13/00
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状又は円柱状の芯体(10)の表面(11)に当接しながら回転し,当該芯体(10)の表面(11)に接着剤を塗布する転写ローラ(100)であって,
前記転写ローラ(100)は,
前記芯体の表面に接触する周面(110)に,前記転写ローラの周方向(Y方向)に沿って帯状に形成された一又は複数の溝形成領域(120)を有し,
前記溝形成領域(120)は,
前記転写ローラの軸方向(X方向)に対して第1角度(θ)で傾斜し,前記周方向(Y方向)に沿って第1間隔(P)をおいて並んだ,複数の直線状の第1直線溝(121)と,
前記転写ローラの軸方向(X方向)に対して前記第1角度(θ)とは反対方向に第2角度(θ)で傾斜し,前記周方向(Y方向)に沿って第2間隔(P)をおいて並んだ,複数の直線状の第2直線溝(122)と,を含み,
前記第1角度(θ)及び前記第2角度(θ)は,90度未満であり,
前記第1直線溝(121)と前記第2直線溝(122)とが交差するパターンで形成されており,
前記第1直線溝(121)及び前記第2直線溝(122)の両方又はいずれか一方の底部に,上方に向かって突出した隆起部(123)が形成されている
転写ローラ。
【請求項2】
前記第1角度(θ)及び前記第2角度(θ)は,10度以上45度未満である
請求項1に記載の転写ローラ。
【請求項3】
前記第1角度(θ)と前記第2角度(θ)は等しく,
前記第1間隔(P)と前記第2間隔(P)は等しい
請求項1又は請求項2に記載の転写ローラ。
【請求項4】
前記溝形成領域(120)には,
前記第1直線溝(121)が,その両端部において,前記第2直線溝(122)の端部との交点を形成しているパターンが含まれる
請求項1から請求項3のいずれかに記載の転写ローラ。
【請求項5】
前記第1直線溝(121)及び前記第2直線溝(122)の深さは,0.25mm〜0.50mmである
請求項1から請求項4のいずれかに記載の転写ローラ。
【請求項6】
円筒状又は円柱状の芯体(10)の表面(11)に,長尺の原紙(20)を複数層巻き付けてペーパーログ(30)を得て,
前記ペーパーログ(30)を軸方向に所定間隔をおいて切断することで,複数の衛生薄葉紙ロール(60)を製造する方法であって,
前記芯体(10)の表面(11)に前記原紙(20)を接着するために,当該芯体(10)の表面(11)に接着剤を塗布する工程を含み,
前記接着剤を塗布する工程は,請求項1から請求項5のいずれかに記載の転写ローラによって行われる
衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,円筒状又は円柱状の芯体の表面に接着剤を塗布するための転写ローラに関する。また,本発明は,転写ローラを用いて,トイレットロールなどの衛生薄葉紙ロールを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,家庭用の衛生薄葉紙として,トイレットペーパやキッチンペーパなどが知られている。これらの衛生薄葉紙は長尺であるため,通常,円筒状の巻芯に巻き付けてロール状とされ,個別の製品として販売されている。
【0003】
衛生薄葉紙をロール状に形成するためには,一般的に,巻芯の基となる芯体の表面に接着剤(「ピックアップ糊」とも称される)を塗布し,この接着剤によって衛生薄葉紙の原紙を巻芯に接着して,芯体を高速で回転させる処理が行われる。このように,ピックアップ糊を用いることで,衛生薄葉紙の原紙と芯体が接着するため,芯体を高速で回転させることにより,原紙が芯体の表面に多重に巻き付くようになる。また,芯体に衛生薄葉紙の原紙を巻き付けて形成された中間体を,ペーパーログともいう。原紙を芯体に巻き付けてペーパーログを得た後,このペーパーログを軸方向に所定間隔をおいて切断することで,一本のペーパーログから複数個の衛生薄葉紙ロールが製造される。一般的には,このようにして,巻芯に衛生薄葉紙を巻き付けた衛生薄葉紙ロールが製造される。
【0004】
また,従来から,巻芯の基となる芯体に接着剤を塗布する工程において,転写ローラという装置を用いることが知られている。転写ローラの周面には,接着剤が供給される。このため,転写ローラの周面を芯体の表面に当接させた状態で,この転写ローラを回転させることで,芯体の表面に接着剤を塗布することができる。転写ローラを用いて芯体の表面に接着剤を塗布する方法は,例えば特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−213953号公報
【特許文献2】特開2011−131464号公報
【特許文献3】特開2013−256131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,芯体の表面に衛生薄葉紙の原紙を適切に接着するためには,芯体の表面に接着剤を塗布するパターンや,芯体の表面に接着剤を塗布する量が重要となる。
【0007】
例えば,転写ローラを用いて芯体の表面全体に接着剤を塗布してしまうと,衛生薄葉紙の原紙が芯体から剥がれなくなり,トイレットロールなどの製品とした場合に,衛生薄葉紙の最後の一周分を使用できなくなる。また,転写ローラを用いて芯体の表面に部分的に接着剤を塗布した場合であっても接着剤を塗布する量が多過ぎると,トイレットロールなどの製品とした場合に,衛生薄葉紙の最後の一周分が部分的に破れて巻芯に残り,使用しにくくなる。
【0008】
反対に,転写ローラを用いて芯体の表面に塗布する接着剤の面積や量が少な過ぎると,衛生薄葉紙ロールの製造過程において,原紙が芯体にうまく巻き付かなかったり,また芯体から原紙が剥がれてしまうなど,製造時にエラーが発生する恐れがある。
【0009】
しかしながら,上掲した特許文献1〜3のいずれにおいても,芯体の表面に接着剤を塗布するパターンや,芯体の表面に接着剤を塗布する量などが検討されていない。そこで,現在では,上記の問題が発生しないように,芯体の表面に対して適切なパターンと適切な塗布量で接着剤を塗布することのできる転写ローラが求められている。また,現在では,この転写ローラを用いて適切に衛生薄葉紙ロールを製造するための方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで,本発明の発明者は,上記の従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,斜めに傾斜した複数の直線が互いに交差する格子状のパターンで,転写ローラの周面に溝を彫刻することとした。すなわち,この格子状のパターンの溝に接着剤を供給し,この溝内の接着剤を芯体に転写(塗布)することで,製造過程においては衛生薄葉紙の原紙をしっかりと接着することができ,製品となった後には衛生薄葉紙を剥がし易くすることができるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。
具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0011】
本発明の第1の側面は,転写ローラ100に関する。
本発明の転写ローラ100は,円筒状又は円柱状の芯体10の表面11に当接しながら回転し,当該芯体10の表面11に接着剤を塗布するための装置である。
転写ローラ100は,芯体10の表面11に接触する周面110に,転写ローラの周方向(Y方向)に沿って帯状に形成された一又は複数の溝形成領域120を有する。
この溝形成領域120は,複数の直線状の第1直線溝121と,複数の直線状の第2直線溝122とが交差するパターンで,複数の溝が形成されている。
すなわち,複数の第1直線溝121は,転写ローラの軸方向(X方向)に対して第1角度(θ)(但しθ<90度)で傾斜し,周方向(Y方向)に沿って第1間隔(P)をおいて並んでいる。
また,複数の第2直線溝122は,転写ローラの軸方向(X方向)に対して第1角度(θ)とは反対方向に第2角度(θ)(但しθ<90度)で傾斜し,周方向(Y方向)に沿って第2間隔(P)をおいて並んでいる。
そして,複数の第1直線溝121のそれぞれは,複数の第2直線溝122の少なくとも一本以上と交差する。
【0012】
上記構成のように,転写ローラ100の周面110に,上記のパターンで複数の第1直線溝121と複数の第2直線溝122を形成した溝形成領域120を設けることで,芯体10の表面11に接着剤を適切に塗布できる。すなわち,第1直線溝121と第2直線溝122は,転写ローラ100の軸方向(X方向)と周方向(Y方向)の両方に対して所定角度で傾斜しており,このようなパターンで接着剤を塗布することで,芯体10と原紙20が強く接着し過ぎることを防止できる。また,上記のパターンで接着剤を塗布することで,転写ローラ100から芯体10に転写される接着剤の塗布量を均一化できる。これにより,トイレットロールなどの製品となった後には,衛生薄葉紙を巻芯から剥がし易くなる。他方,第1直線溝121と第2直線溝122とが互いに交差する交点においては,交点以外の部分と比較して接着剤の塗布量が多くなる。このため,この交点においては芯体10と原紙20がしっかりと接着する。このように,芯体10と原紙20がしっかりと接着する点を設けることで,製造過程において原紙20が芯体10から不用意に剥がれてしまうようなエラーを防止できる。また,芯体10と原紙20がしっかりと接着する部分が“点”で形成されているため,トイレットロールなどの製品となった後に,衛生薄葉紙が巻芯から剥がれにくくなることを防止できる。
【0013】
本発明の転写ローラ100において,第1角度(θ)及び第2角度(θ)は,10度以上45度未満であることが好ましい。
【0014】
上記構成のように,第1角度(θ)及び第2角度(θ)を10度以上45度未満とすることで,芯体10の表面11に接着剤をより適切に塗布できる。すなわち,第1角度(θ)及び第2角度(θ)が10度未満であると,接着剤の塗布面積が増え過ぎてしまい,製品となった後に衛生薄葉紙が巻芯から剥がれにくくなる。他方,第1角度(θ)及び第2角度(θ)が45度を超える(すなわちθ+θが90度を超える)と,転写ローラから芯体に接着剤を塗布するときに,この転写ローラの回転に伴った遠心力の影響を受けて,接着剤が溝から流れ出たりはみ出したりする事態が生じ易くなる。このため,θ+θが90度を超えると,転写ローラから芯体に対して接着剤を均一且つ綺麗に転写できない恐れがある。また,θ+θが90度を超えると,芯体に転写する接着剤の塗布量が少なくなり過ぎてしまい,製造時にエラーが発生する恐れもある。このため,本発明の転写ローラにおいては,第1角度(θ)及び第2角度(θ)は共に10度以上45度未満であることが好ましい。
【0015】
本発明の転写ローラ100において,第1角度(θ)と第2角度(θ)は等しいことが好ましい。また,本発明の転写ローラ100において,第1間隔(P)と第2間隔(P)は等しいことが好ましい。
【0016】
上記構成のように,第1角度(θ)と第2角度(θ)を等しくし,且つ,第1間隔(P)と第2間隔(P)を等しくすることで,芯体の表面に対して接着剤をより均一に塗布することができる。
【0017】
本発明の転写ローラ100において,溝形成領域120には,第1直線溝121の両端部に,第2直線溝122の端部との交点が形成されているパターンが含まれることが好ましい。
【0018】
上記構成のように,溝形成領域120では,第1直線溝121の端部と第2直線溝122の端部が一致していることが好ましい。すなわち,第1直線溝121と第2直線溝122の交点では,他の部分と比較して,接着剤の塗布量が増加する。このため,第1直線溝121と第2直線溝122の交点を,第1直線溝121の端部と第2直線溝122の端部に一致させることで,芯体に接着剤を塗布した領域の両端部分を,しっかりと原紙に付着させることができる。これにより,さらに適切に,芯体と原紙を接着することができるようになる。
【0019】
本発明において,第1直線溝121及び第2直線溝122の深さは,0.25mm以上0.50mm以下であることが好ましい。
【0020】
上記構成のように,第1直線溝121及び第2直線溝122の深さを0.25mm〜0.50mmとすることで,上記のパターンにより,適切な量の接着剤を芯体に塗布できる。
【0021】
本発明において,第1直線溝121及び第2直線溝122の両方又はいずれか一方の底部に,上方に向かって突出した隆起部123が形成されていることとしてもよい。
【0022】
上記構成のように,溝121,122の中に隆起部123を形成することで,溝121,122内に保持されている接着剤を,芯体10の表面に迅速に移行させることができる。また,溝121,122の中に隆起部123を形成しておくことで,転写ローラ100が芯体10に接触した後に,溝121内に残存する接着剤の量を減らすことができ,溝121内の接着剤のほぼ全量を芯体10の表面に移行させることができるようになる。さらに,隆起部123により,溝121の劣化を防止することもできる。
【0023】
本発明の第2の側面は,衛生薄葉紙ロールを製造する方法に関する。
本発明の製造方法では,まず,円筒状又は円柱状の芯体10の表面11に,長尺の原紙20を複数層巻き付けてペーパーログ30を得える。その後,ペーパーログ30を軸方向に所定間隔をおいて切断することで,複数の衛生薄葉紙ロール60を製造する
ここで,本発明の製造方法は,芯体10の表面11に原紙20を接着するために,当該芯体10の表面11に接着剤を塗布する工程を含む。
そして,この接着剤を塗布する工程は,上記第1の側面に係る転写ローラ100によって行われる。
【0024】
上記のように,本発明の第1の側面に係る転写ローラ100を利用して衛生薄葉紙ロールを製造することで,その製造過程においては衛生薄葉紙の原紙をしっかりと接着することができ,製品となった後には衛生薄葉紙を剥がし易くすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は,芯体の表面に対して適切なパターンと塗布量で接着剤を塗布することのできる転写ローラを提供することができる。また,本発明は,転写ローラを用いて適切に衛生薄葉紙ロールを製造するための方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は,衛生薄葉紙ロールの製造方法の概要を模式的に示した工程図である。
図2図2は,転写ローラと巻芯を抽出して模式的に示した斜視図である。
図3図3は,転写ローラの表面に形成された溝の好ましいパターン示したパターン図である。
図4図4は,転写ローラの表面に形成された溝を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0028】
なお,本願明細書において,「A〜B」とは,特に断りのない限り「A以上B以下」であることを意味する。
また,本願明細書において,転写ローラの「周方向」とは,転写ローラの回転方向及び逆回転方向を含む方向を意味する。また,転写ローラの「軸方向」とは,転写ローラの回転軸が延びる方向を意味する。このため,転写ローラの周面を平面視した場合に,周方向と軸方向とは平面的に直交する方向となる。
【0029】
図1は,衛生薄葉紙ロール60の製造工程の概要を模式的に示している。衛生薄葉紙ロール60は,円筒状の巻芯40に長尺の衛生薄葉紙50を多重に巻きつけることにより形成されたロール状の製品である。衛生薄葉紙ロール60には,例えば,トイレットロールやキッチンロールなどの家庭用衛生紙が含まれる。
【0030】
図1に示されるように,衛生薄葉紙ロールの製造工程では,まず,筒状の芯体10を用意する。芯体10は,最終的には衛生薄葉紙ロール60の巻芯40となる部材である。芯体10は,巻芯40を軸方向に複数個繋げた構造となっている。つまり,芯体10を複数に切断することで,複数個の巻芯40を得ることができる。芯体10は,例えば巻芯40の長さの10倍〜30倍程度の長さを有していることが好ましい。
【0031】
次に,図1に示されたAパートにおいて,芯体10の筒の中に,マンドレルシャフト210を挿し込み,芯体10をマンドレルシャフト210に固定する。マンドレルシャフト210は,円柱状又は円筒状の芯棒であり,一般的には鉄やステンレス等の金属により構成されている。
【0032】
次に,図1に示されたBパートにおいて,芯体10の表面に,接着剤を塗布する。ここで,芯体10の表面に塗布する接着剤は,ピックアップ糊とも呼ばれる。ピックアップ糊の塗布装置は,図1に示されるように,接着剤の貯留槽220と,供給ローラ230と,転写ローラ100と,を備えている。
【0033】
貯留槽220には,芯体10の表面に塗布するための接着剤(ピックアップ糊)が所定量溜められている。ピックアップ糊として用いる接着剤の種類は特に限定されないが,原紙20を芯体10に迅速に接着固定することができ,原紙20を巻き取る際の引張力にも耐え得る接着強度を有する接着剤を用いることが好ましい。例えば,このようなピックアップ糊としては,セルロース誘導体接着剤を用いることが好ましい。
【0034】
また,供給ローラ230は,貯留槽220内の接着剤を,転写ローラ100に供給するための装置である。供給ローラ230は,その周面の一部分が貯留槽220に漬かっており,その周面の他部分が転写ローラ100の周面に当接している。供給ローラ230と転写ローラ100の回転は連動しており,供給ローラ230の回転に伴って転写ローラ100も回転する。このとき,供給ローラ230の周面に付着した接着剤が,転写ローラ100の周面へと移転される。
【0035】
また,転写ローラ100は,供給ローラ230から供給を受けた接着剤を,芯体10の表面に転写(塗布)するための装置である。このため,転写ローラ100の周面の一部分は,芯体10の表面に当接するようになっている。転写ローラ100と芯体10の回転は連動しており,転写ローラ100の回転に伴って芯体10も回転する。このとき,転写ローラ100の周面に付着した接着剤が,芯体10の表面へと転写(塗布)される。転写ローラ100の具体的な構成については,図2図3を参照して後述する。
【0036】
次に,図1に示されたCパートにおいて,芯体10の表面に塗布された接着剤(ピックアップ糊)を利用して,芯体10の表面に衛生紙薄葉紙の原紙20を接着する。図1に示されるように,このCパートでは,原反ロール240から衛生薄葉紙の原紙20が繰り出されて,搬送ローラ250によって引っ張られるようにして搬送されている。そして,マンドレルシャフト210を移動させることで,原反ロール240から繰り出された原紙20に対して,芯体10の表面を圧着させる。このとき,芯体10の表面に付着している接着剤(ピックアップ糊)により,芯体10の表面に原紙20が固定される。
【0037】
次に,図1に示されたDパートにおいて,芯体10の表面に原紙20を巻きつける。Dパートでは,マンドレルシャフト210を,回転装置(図示省略)によって周方向に回転させる。この回転により,原紙20が芯体10に対して巻き取られる。ここで,原紙20は,製造結果物である衛生薄葉紙ロール60と同一の巻径(製品径)となるまで,芯体10に対して巻き付けられる。所望の巻径に達した段階で,原紙20は原反ロール240から切り離される。この切断によって,原紙20の終端部が形成される。
【0038】
次に,図1に示されたEパートにおいて,原紙20の終端部に接着剤を塗布する。ここで,原紙20の終端部に塗布する接着剤を,テール糊ともいう。テール糊は,公知のコータ260を用いて塗布すればよい。テール糊としては,上述したピックアップ糊と同一種類の接着剤を用いることができる。その後,テール糊が塗布された終端部を,芯体10に巻き付けられた原紙20の表面に圧着させる。この圧着には,図1に示されるような圧着ローラ270を用いればよい。圧着ローラ270によって,芯体10に巻き付けられた原紙20を押圧することで,テール糊が塗布された終端部が原紙20の表面に固定される。これにより,原紙20の終端部がヒラヒラすることを防止する。これらの工程を経て,原紙20が芯体10巻き付けられたペーパーログ30が形成される。
【0039】
次に,図1に示されたFパートにおいて,ペーパーログ30は,軸方向の所定間隔ごとに,ログソー等の切断刃(図示省略)によって切断される。すなわち,ペーパーログ30は,製造結果物である衛生薄葉紙ロール60と同一の軸方向長さ(製品長さ)となるように切断される。これにより,一本のペーパーログ30から,複数個の衛生薄葉紙ロール60が得られる。すなわち,衛生薄葉紙ロール60は,芯体10を製品長さに切断して得られた巻芯40と,原紙20を製品長さに切断して得られた衛生薄葉紙50と,を有するものとなる。
【0040】
以上の工程により,トイレットロールなどの衛生薄葉紙ロール60を製造することができる。その他,衛生薄葉紙ロール60の製造工程としては,公知の好適を適宜参酌することも可能である。
【0041】
続いて,図2〜4を参照して,図1に示された転写ローラ100の具体的な構成について説明する。
【0042】
まず,図2は,転写ローラ100と芯体10を概念的に抽出して描画した斜視図である。図2に示されるように,転写ローラ100の周面110には,転写ローラ100の周方向に沿って帯状に形成された一又は複数の溝形成領域120が設けられている。溝形成領域120は,接着剤(ピックアップ糊)を保持する溝が彫刻される領域である。この溝形成領域120は,転写ローラ100の周方向に沿って,その全周に亘って形成されていることが好ましい。また,溝形成領域120は,転写ローラ100の軸方向に間隔をおいて,複数箇所に設けられる。図2に示された実施形態のように,溝形成領域120は,転写ローラ100の軸方向に間隔をおいて,3箇所以上に形成されていることが好ましい。
【0043】
また,図2に示されるように,転写ローラ100の周面110と芯体10の表面11は,一部接触している。このため,転写ローラ100の回転に伴って,芯体10も連動して回転する。このとき,転写ローラ100の溝形成領域120に保持されている接着剤(A)(ピックアップ糊)が,芯体10の表面11に転写(塗布)される。これにより,芯体10の表面11に,接着剤(A)(ピックアップ糊)が付着するようになっている。
【0044】
次に,図3は,転写ローラ100の溝形成領域120に形成された溝の好ましいパターンを模式的に示している。図3には,X軸とY軸の直交座標系を設定している。X方向は,転写ローラ100の軸方向に相当し,Y方向は,転写ローラ100の周方向に相当する。
【0045】
図3に示されるように,溝形成領域120に形成される複数の溝は,その傾きに応じて,第1直線溝121と,第2直線溝122に分類することができる。第1直線溝121は,転写ローラの軸方向(X方向)に対して第1角度(θ)(但しθ<90度)で傾斜した直線状の溝である。第1直線溝121は,複数形成されており,転写ローラの周方向(Y方向)に沿って第1間隔(P)をおいて並んでいる。他方,第2直線溝122は,転写ローラの軸方向(X方向)に対して第1角度(θ)とは反対方向に第2角度(θ)(但しθ<90度)で傾斜した直線状の溝である。第2直線溝122は,複数形成されており,転写ローラの周方向(Y方向)に沿って第2間隔(P)をおいて並んでいる。
【0046】
図3に示された例において,第1直線溝121の傾きである第1角度(θ)と,第2直線溝122の傾きである第2角度(θ)は,等しい値に設定されている。ここで,第1角度(θ)と第2角度(θ)は,10度以上45度未満であることが好ましい。また,第1角度(θ)と第2角度(θ)は,15〜40度,又は20度〜35度であることが好ましく,30度(±1度)であることが特に好ましい。
【0047】
このように,第1角度(θ)及び第2角度(θ)を10度以上45度未満とすることで,芯体10の表面11に接着剤をより適切に塗布できる。すなわち,第1角度(θ)及び第2角度(θ)が10度未満であると,接着剤の塗布量が増加し過ぎてしまい,製品となった後に衛生薄葉紙が巻芯から剥がれにくくなる。他方,第1角度(θ)及び第2角度(θ)が45度を超える(すなわちθ+θが90度を超える)と,転写ローラから芯体に接着剤を塗布するときに,この転写ローラの回転に伴った遠心力の影響を受けて,接着剤が溝から流れ出たりはみ出したりする事態が生じやすくなる。このため,θ+θが90度を超えると,転写ローラから芯体に対して接着剤を均一且つ綺麗に転写できない恐れがある。また,θ+θが90度を超えると,芯体に転写する接着剤の塗布量が少なくなり過ぎてしまい,製造時にエラーが発生する恐れもある。このため,本発明の転写ローラ100においては,第1角度(θ)及び第2角度(θ)は共に10度以上45度未満であることが好ましい。
【0048】
なお,第1角度(θ)と第2角度(θ)を,それぞれ異なる値とすることも可能である。この場合には,θ+θの値が20度以上90度未満となるように,第1角度(θ)と第2角度(θ)と調節するとよい。
【0049】
また,図3に示された例において,第1直線溝121の間隔である第1間隔(P)と,第2直線溝122の間隔である第2間隔(P)は,等しい値に設定されている。ここで,第1間隔(P)と第2間隔(P)は,0.5mm〜3.0mm,1.0mm〜2.5mm,又は1.5mm〜2.2mmであることが好ましい,特に,第1間隔(P)と第2間隔(P)は,1.8mm(±0.1mm)であることが好ましい。第1間隔(P)と第2間隔(P)を上記の値に設定することで,原紙に対して接着剤を適切に塗布できる。
【0050】
また,図3では,複数の第1直線溝121と第2直線溝122によって形成された溝形成領域120の幅(軸方向の幅)を,符号Wで示している。この場合,溝形成領域120の幅(W)は,3mm〜10mm,4mm〜8mm,又は5mm〜7mmであることが好ましい。特に,溝形成領域120の幅(W)は,6mm(±0.5mm)であることが好ましい。溝形成領域120の幅(W)を上記の値に設定することで,原紙に対して接着剤を適切に塗布できる。
【0051】
また,図3に示されるように,溝形成領域120には,ある第1直線溝121に対して,少なくとも一本の第2直線溝122が交差するパターンが含まれている。特に,図3に示された形態のように,ある第1直線溝121に対して,複数本の第2直線溝122が交差していることが好ましい。例えば,ある第1直線溝121に交差する第2直線溝122の数は,2〜7本,3〜6本,又は4〜5本であることが好ましい。なお,同様に,溝形成領域120には,ある第2直線溝122に対して,複数の第1直線溝121が交差するパターンが含まれていることが好ましい。
【0052】
また,図3に示されるように,溝形成領域120には,第1直線溝121が,その両端部において,第2直線溝122の端部との交点を形成しているパターンが含まれることが好ましい。同様に,溝形成領域120には,第2直線溝122が,その両端部において,第1直線溝121の端部との交点を形成しているパターンが含まれることが好ましい。
【0053】
すなわち,図3に示されるように,ある第1直線溝121を見ると,その一端部において,ある第2直線溝122の端部との交点を形成し,その他端部において,他の第2直線溝122との交点を形成している。また,同様に,ある第2直線溝122を見ると,その一端部において,ある第1直線溝121の端部との交点を形成し,その他端部において,他の第1直線溝121との交点を形成している。このように,溝形成領域120では,第1直線溝121の端部と第2直線溝122の端部が一致しているパターンが形成されていることが好ましい。つまり,第1直線溝121と第2直線溝122の交点では,他の部分と比較して,接着剤の塗布量が増加する。このため,第1直線溝121と第2直線溝122の交点を,第1直線溝121の端部と第2直線溝122の端部に一致させることで,芯体10に接着剤を塗布した領域の両端部分を,しっかりと原紙20に付着させることができる。これにより,さらに適切に,芯体10と原紙20を接着することができるようになる。
【0054】
また,図3に示されるように,溝形成領域120には,長さの等しい第1直線溝121と第2直線溝122が交差することによって形成されたパターンが含まれることが好ましい。つまり,ある第1直線溝121を見ると,この第1直線溝121には,複数の第2直線溝12が交差している。このとき,ある第1直線溝121の長さと,この第1直線溝121と交差した複数の第2直線溝122の長さは,すべて一致していることが好ましい。これにより,接着剤塗布量のバランスが良いパターンを形成できる。
【0055】
次に,図4(a)は,図3に示されたC−Cの線分における断面図を示している。つまり,図4(a)の断面図は,一実施形態に係る転写ローラ100の周面110に形成された溝121(又は122)の断面形状を示している。
図4に示されるように,溝121には接着剤が溜まるようになっている。溝121の深さ(D)は,0.25mm〜0.50mmであることが好ましい。特に,溝121の深さ(D)は,0.3mm〜0.4mmであることが好ましい。上記のように,溝121の深さ(D)を0.25mm〜0.50mmとすることで,上記のパターンにより,適切な量の接着剤を芯体10に対して塗布できる。
【0056】
また,溝121の幅(B)は,0.2mm〜1.0mmであることが好ましい。特に,溝121の幅(B)は,0.3mm〜0.5mmであることが好ましい。上記のように,溝121の幅(B)を0.2mm〜1.0mmとすることで,上記のパターンにより,適切な量の接着剤を芯体10に対して塗布できる。
【0057】
図4(b)は,別の実施形態に係る転写ローラ100の周面110に形成された溝121(又は122)の断面形状を示している。図4(b)に示されるように,溝121の底部には,上方に向かって突出した隆起部123が形成されていてもよい。隆起部123は,第1直線溝121と第2直線溝122の両方の底部に形成されたものであってもよいし,第1直線溝121と第2直線溝122のいずれか一方の底部に形成されたものであってもよい。また,隆起部123の形状は,角がない丸みを帯びた断面がドーム状であることが好ましい。また,隆起部123の形状は,先端に角が形成された断面が多角形(三角形,四角形等)であってもよい。例えば,隆起部123の高さ(H)は,溝121の深さ(D)を100%とした場合に,10%〜100%,20%〜60%とすることができる。特に,図4(b)に示されるように,隆起部123の高さ(H)は,溝121の深さ(D)に対して30%〜50%であることが好ましい。このように,溝121の中に隆起部123を形成することで,溝121内に保持されている接着剤を,芯体10の表面に迅速に移行させることができる。また,溝121の中に隆起部123を形成しておくことで,転写ローラ100が芯体10に接触した後に,溝121内に残存する接着剤の量を減らすことができ,溝121内の接着剤のほぼ全量を芯体10の表面に移行させることができるようになる。さらに,溝121の中に隆起部123を形成することで,溝121の劣化を防止することもできる。
【0058】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
トイレットロールなどの衛生薄葉紙ロールの製造方法や,その製造に用いられる転写ローラに関する。従って,本発明は,衛生薄葉紙ロールの製造業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0060】
10…芯体 11…表面 20…原紙
30…ペーパーログ 40…巻芯 50…衛生薄葉紙
60…衛生薄葉紙ロール 100…転写ローラ 110…周面
120…溝形成領域 121…第1直線溝 122…第2直線溝
123…隆起部 210…マンドレルシャフト 220…貯留槽
230…供給ローラ 240…原反ロール 250…搬送ローラ
260…コータ 270…圧着ローラ
図1
図2
図3
図4