特許第6237280号(P6237280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237280
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車両用自動ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20171120BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20171120BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20171120BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20171120BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20171120BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20171120BHJP
   B60W 10/184 20120101ALI20171120BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B60W10/00 120
   G08G1/16 C
   F02D29/02 301Z
   F02D29/02 K
   B60W30/09
   B60W10/06
   B60W10/184
   B60T7/12 C
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-17724(P2014-17724)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-145139(P2015-145139A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】常清 悠介
(72)【発明者】
【氏名】西條 友馬
(72)【発明者】
【氏名】安松 洋仁
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−298171(JP,A)
【文献】 特開2005−001500(JP,A)
【文献】 特開2000−052809(JP,A)
【文献】 特開2005−225277(JP,A)
【文献】 特開2010−274887(JP,A)
【文献】 特開2003−228800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 50/16
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
G08G 1/00 − 99/00
F02D 29/00 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の先行車両との衝突が予測される場合にブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段を作動させる車両用自動ブレーキ制御装置であって、
先行車両と自車両との車間距離を検出する第1車間距離検出手段と、
先行車両と自車両との相対速度を検出する第1相対速度検出手段と、
前記第1車間距離検出手段によって検出された車間距離と前記第1相対速度検出手段によって検出された相対速度とに基づいて先行車両と自車両との衝突予測時間を算出する第1衝突予測時間算出手段と、
アクセル開度に応じたエンジン出力を設定するエンジン出力設定手段と、
前記第1衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が第1所定時間以下になると、前記ブレーキ手段を作動させるブレーキ制御手段と、
前記第1衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が第1所定時間以下になると、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を所定の割合で低下させたエンジン出力となるようにエンジンを制御し、前記衝突予測時間が第1所定時間よりも短い第2所定時間以下になると、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を前記所定の割合で低下させたエンジン出力よりもさらに低下させたエンジン出力となるようにエンジンを制御するエンジン制御手段と、
を備えていることを特徴とする車両用自動ブレーキ制御装置。
【請求項2】
先行車両の位置を検出する先行車両位置検出手段と、
前記先行車両位置検出手段によって検出された先行車両の位置に基づいて先行車両と自車両との車幅方向におけるオーバーラップ量を算出するオーバーラップ量算出手段と、
を備え、
前記エンジン制御手段は、前記オーバーラップ量算出手段によって算出された前記オーバーラップ量に基づいて、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を低下させる前記割合を変化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用自動ブレーキ制御装置。
【請求項3】
自車両前方の先行車両との衝突が予測される場合にブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段を作動させる車両用自動ブレーキ制御装置であって、
先行車両と自車両との車間距離を検出する第1車間距離検出手段と、
先行車両と自車両との相対速度を検出する第1相対速度検出手段と、
前記第1車間距離検出手段によって検出された車間距離と前記第1相対速度検出手段によって検出された相対速度とに基づいて先行車両と自車両との衝突予測時間を算出する第1衝突予測時間算出手段と、
アクセル開度に応じたエンジン出力を設定するエンジン出力設定手段と、
前記第1衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が所定時間以下になると、前記ブレーキ手段を作動させるブレーキ制御手段と、
前記第1衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が所定時間以下になると、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を所定の割合で低下させたエンジン出力となるようにエンジンを制御するエンジン制御手段と、
自車両後方の後方車両の位置を検出する後方車両位置検出手段と、
後方車両と自車両との車両走行方向における車間距離を検出する第2車間距離検出手段と、
後方車両と自車両との車両走行方向における相対速度を検出する第2相対速度検出手段と、
前記後方車両位置検出手段によって検出された後方車両の位置が自車両の走行車線に隣接する隣接走行車線内にある場合、前記第2車間距離検出手段によって検出された車間距離と前記第2相対速度検出手段によって検出された相対速度とに基づいて、自車両が前記隣接走行車線に車線変更した場合における後方車両と自車両との衝突予測時間を算出する第2衝突予測時間算出手段と、
を備え、
前記エンジン制御手段は、前記後方車両位置検出手段によって検出された後方車両の位置が自車両の走行車線に隣接する隣接走行車線内にあると共に、前記第2衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が所定時間以下であるときは、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を低下させる前記割合を大きくする、
ことを特徴とする車両用自動ブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自車両前方の先行車両との衝突が予測される場合にブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段を作動させる車両用自動ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両においては、自車両の前方に先行車両が走行しているときに、先行車両と自車両との車間距離及び相対速度を検出して先行車両と自車両とが衝突すると予測される衝突予測時間を算出し、算出した衝突予測時間が短く先行車両と自車両との衝突が予測される場合にブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自動的に自車両のブレーキ手段(自動ブレーキ)を作動させて、先行車両と自車両との衝突を回避するようにした自動ブレーキ制御装置が知られている。
【0003】
また、例えば特許文献1には、自動ブレーキの作動時に、ドライバがアクセルペダルを踏み込んで衝突回避動作を行ったときには、ドライバの意図である衝突回避動作を優先して自動ブレーキの作動を解除し、ドライバが衝突回避動作を行うことができるようにした自動ブレーキ制御装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−196997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載にされるように、自動ブレーキの作動時に、ドライバがアクセルペダルを踏み込んだときに自動ブレーキの作動を解除する場合、ドライバの意図に追従して車両の走行を制御して衝突回避動作を行うことができるものの、例えば自動ブレーキの作動に伴ってドライバが前方へ移動してアクセルペダルの踏込みが大きくなる場合など、ドライバの意図ではないアクセルペダルの踏込みに対しても自動ブレーキの作動を解除することとなる。
【0006】
このように、先行車両と自車両との衝突が予測される場合に、ドライバの意図ではないアクセルペダルの踏込みに対して自動ブレーキの作動を解除させると、自動ブレーキの作動を解除させない場合に比して、自車両を先行車両に対して十分に減速させることができないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、自車両の先行車両に対する減速とドライバの意図に追従した車両の走行制御とを両立させることができる車両用自動ブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、本願の請求項1に係る発明は、自車両前方の先行車両との衝突が予測される場合にブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段を作動させる車両用自動ブレーキ制御装置であって、先行車両と自車両との車間距離を検出する第1車間距離検出手段と、先行車両と自車両との相対速度を検出する第1相対速度検出手段と、前記第1車間距離検出手段によって検出された車間距離と前記第1相対速度検出手段によって検出された相対速度とに基づいて先行車両と自車両との衝突予測時間を算出する第1衝突予測時間算出手段と、アクセル開度に応じたエンジン出力を設定するエンジン出力設定手段と、前記第1衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が第1所定時間以下になると、前記ブレーキ手段を作動させるブレーキ制御手段と、前記第1衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が第1所定時間以下になると、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を所定の割合で低下させたエンジン出力となるようにエンジンを制御し、前記衝突予測時間が第1所定時間よりも短い第2所定時間以下になると、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を前記所定の割合で低下させたエンジン出力よりもさらに低下させたエンジン出力となるようにエンジンを制御するエンジン制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項2に係る発明は、前記請求項1に係る発明において、先行車両の位置を検出する先行車両位置検出手段と、前記先行車両位置検出手段によって検出された先行車両の位置に基づいて先行車両と自車両との車幅方向におけるオーバーラップ量を算出するオーバーラップ量算出手段と、を備え、前記エンジン制御手段は、前記オーバーラップ量算出手段によって算出された前記オーバーラップ量に基づいて、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を低下させる前記割合を変化させることを特徴とする。
【0011】
更に、本願の請求項3に係る発明は、自車両前方の先行車両との衝突が予測される場合にブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段を作動させる車両用自動ブレーキ制御装置であって、先行車両と自車両との車間距離を検出する第1車間距離検出手段と、先行車両と自車両との相対速度を検出する第1相対速度検出手段と、前記第1車間距離検出手段によって検出された車間距離と前記第1相対速度検出手段によって検出された相対速度とに基づいて先行車両と自車両との衝突予測時間を算出する第1衝突予測時間算出手段と、アクセル開度に応じたエンジン出力を設定するエンジン出力設定手段と、前記第1衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が所定時間以下になると、前記ブレーキ手段を作動させるブレーキ制御手段と、前記第1衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が所定時間以下になると、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を所定の割合で低下させたエンジン出力となるようにエンジンを制御するエンジン制御手段と、自車両後方の後方車両の位置を検出する後方車両位置検出手段と、後方車両と自車両との車両走行方向における車間距離を検出する第2車間距離検出手段と、後方車両と自車両との車両走行方向における相対速度を検出する第2相対速度検出手段と、前記後方車両位置検出手段によって検出された後方車両の位置が自車両の走行車線に隣接する隣接走行車線内にある場合、前記第2車間距離検出手段によって検出された車間距離と前記第2相対速度検出手段によって検出された相対速度とに基づいて、自車両が前記隣接走行車線に車線変更した場合における後方車両と自車両との衝突予測時間を算出する第2衝突予測時間算出手段と、を備え、前記エンジン制御手段は、前記後方車両位置検出手段によって検出された後方車両の位置が自車両の走行車線に隣接する隣接走行車線内にあると共に、前記第2衝突予測時間算出手段によって算出された衝突予測時間が所定時間以下であるときは、前記エンジン出力設定手段によって設定されたエンジン出力を低下させる前記割合を大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0013】
まず、本願の請求項1に係る発明によれば、先行車両と自車両との車間距離及び相対速度に基づいて算出された先行車両と自車両との衝突予測時間が第1所定時間以下になると、ブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段が作動されることにより、自車両を先行車両に対して減速させることができる。
【0014】
また、先行車両と自車両との車間距離及び相対速度に基づいて算出された先行車両と自車両との衝突予測時間が第1所定時間以下になると、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力が所定の割合で低下されることにより、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力を低下させない場合に比して、自車両を先行車両に対してさらに減速させることができ、先行車両との衝突回避あるいは衝突による被害軽減を図ることができる。
【0015】
ドライバによるアクセルペダルの踏込みが大きくなってアクセル開度が大きくなる場合、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力を低下させない場合に比して、エンジン出力が所定の割合で低下されるものの、アクセル開度が大きくなることに伴ってアクセル開度に応じてエンジン出力が大きくなることから、ドライバの意図に追従して車両を走行させることができる。ドライバがアクセルペダルを踏込んで先行車両との衝突を回避することができると判断した場合に、ドライバが先行車両との衝突を回避する衝突回避動作を行うことを可能にする。
【0016】
したがって、自車両を先行車両に対して減速させることができると共にドライバの意図に追従して車両を走行させることができ、自車両の先行車両に対する減速とドライバの意図に追従した車両の走行制御とを両立させることができる。
【0017】
例えば、ドライバの意図ではなくアクセルペダルの踏込みが大きくなった場合においても、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力が所定の割合で低下されることにより、アクセルペダルの踏込みに対して自動ブレーキの作動を解除する場合に比して、自車両を先行車両に対してより減速させることができ、先行車両との衝突回避あるいは衝突による被害軽減を図ることができる。
また、衝突予測時間が第1所定時間よりも短い第2所定時間以下になると、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力が前記所定の割合で低下させたエンジン出力よりもさらに低下されることにより、自車両を先行車両に対してさらに減速させることができ、先行車両との衝突回避あるいは衝突による被害軽減をさらに図ることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0018】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、先行車両と自車両との車幅方向におけるオーバーラップ量に基づいて、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力を低下させる割合を変化させることにより、オーバーラップ量が小さいときは大きいときに比してエンジン出力を低下させる割合を小さくしてエンジン出力を大きくすることで、先行車両に対する減速を抑制してドライバによる衝突回避動作を優先させることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0019】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、請求項1に係る発明と同様、先行車両と自車両との車間距離及び相対速度に基づいて算出された先行車両と自車両との衝突予測時間が所定時間以下になると、ブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段が作動されることにより、自車両を先行車両に対して減速させることができる。
また、先行車両と自車両との車間距離及び相対速度に基づいて算出された先行車両と自車両との衝突予測時間が所定時間以下になると、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力が所定の割合で低下されることにより、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力を低下させない場合に比して、自車両を先行車両に対してさらに減速させることができ、先行車両との衝突回避あるいは衝突による被害軽減を図ることができる。
ドライバによるアクセルペダルの踏込みが大きくなってアクセル開度が大きくなる場合、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力を低下させない場合に比して、エンジン出力が所定の割合で低下されるものの、アクセル開度が大きくなることに伴ってアクセル開度に応じてエンジン出力が大きくなることから、ドライバの意図に追従して車両を走行させることができる。ドライバがアクセルペダルを踏込んで先行車両との衝突を回避することができると判断した場合に、ドライバが先行車両との衝突を回避する衝突回避動作を行うことを可能にする。
したがって、自車両を先行車両に対して減速させることができると共にドライバの意図に追従して車両を走行させることができ、自車両の先行車両に対する減速とドライバの意図に追従した車両の走行制御とを両立させることができる。
また、後方車両の位置が自車両の走行車線に隣接する隣接走行車線内にあると共に、後方車両と自車両との車両走行方向における車間距離及び相対速度に基づいて算出された自車両が隣接走行車線に車線変更した場合における後方車両と自車両との衝突予測時間が所定時間以下であるときは、アクセル開度に応じて設定されたエンジン出力を低下させる割合を大きくすることにより、ドライバによる衝突回避動作によって後方車両との衝突が予測される場合にエンジン出力を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させることができ、ドライバによる衝突回避動作を抑制して後方車両との衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の制御システム図である。
図2】前記自動ブレーキ制御装置の作動を説明するための説明図である。
図3】所定のアクセル開度における衝突予測時間に対する相対速度、スロットル開度、エンジン出力、自動ブレーキ圧及び警報装置の変化を示す図である。
図4】前記自動ブレーキ制御装置の作動時におけるアクセル開度とスロットル開度との関係を示すグラフである。
図5】前記自動ブレーキ制御装置の制御フローチャートを示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の作動を説明するための説明図である。
図7】前記自動ブレーキ制御装置の作動時におけるアクセル開度とスロットル開度との関係を示すグラフである。
図8】本発明の第3実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の作動を説明するための説明図である。
図9】前記自動ブレーキ制御装置の作動時におけるアクセル開度とスロットル開度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の制御システム図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る自動ブレーキ制御装置を備えた車両1には、自車両の前方に先行車両が走行している場合に先行車両を検出する先行車両検出センサ2と、自車両の車速を検出する車速センサ3と、ドライバによるアクセルペダルの踏込量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ4と、自車両の後方に後方車両が走行している場合に後方車両を検出する後方車両検出センサ5とが備えられている。
【0023】
先行車両検出センサ2は、例えばミリ波レーダやCCDカメラなどを用いることができ、先行車両の位置、先行車両と自車両との車間距離、及び先行車両と自車両との相対速度を検出するように構成されている。後方車両検出センサ5についても同様に、後方車両検出センサ5は、例えばミリ波レーダやCCDカメラなどを用いることができ、後方車両の位置、後方車両と自車両との車間距離、及び後方車両と自車両との相対速度を検出するように構成されている。
【0024】
なお、先行車両検出センサ2は、特許請求の範囲における「第1車間距離検出手段」、「第1相対速度検出手段」及び「先行車両位置検出手段」に相当し、後方車両検出センサ5は、特許請求の範囲における「第2車間距離検出手段」、「第2相対速度検出手段」及び「後方車両位置検出手段」に相当する。
【0025】
前記車両1にはまた、自車両前方の先行車両と自車両との衝突が予測される場合にブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段に所定のブレーキ圧(自動ブレーキ圧)を供給して前記ブレーキ手段を作動させる自動ブレーキ装置6と、アクセル開度に応じて開閉されてエンジンへ供給される吸入空気量を絞るスロットル弁7と、ドライバに先行車両と自車両との衝突が予測されることを知らせる警報ブザーなどの警報装置8とが備えられている。
【0026】
前記車両1にはまた、自車両前方の先行車両と自車両との衝突が予測される場合に自動ブレーキ装置6の作動を制御するコントロールユニット9が設けられている。コントロールユニット9は、自動ブレーキ装置6やエンジンなどを含む自車両1に関係する構成を総合的に制御するものであり、コントロールユニット9には、図1に示すように、先行車両検出センサ2からの信号、車速センサ3からの信号、アクセル開度センサ4からの信号、後方車両検出センサ5からの信号などが入力されるようになっている。
【0027】
コントロールユニット9はまた、先行車両検出センサ2からの信号、車速センサ3からの信号、アクセル開度センサ4からの信号、後方車両検出センサ5からの信号などに基づいて、自動ブレーキ装置6、スロットル弁7及び警報装置8などの各種制御を行うようになっている。なお、コントロールユニット9は、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0028】
前記車両1には、図示されていないが、エンジンへ供給される吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段としてのエアフローセンサが設けられ、コントロールユニット9は、エアフローセンサからの信号に基づいて吸入空気量に応じてインジェクタに所定の燃料を供給してスロットル開度に応じてエンジン出力を制御するようになっている。
【0029】
本実施形態では、コントロールユニット9は、車速センサ3によって検出される車速が、例えば15km/hなどの所定車速以上であるときに、先行車両検出センサ2によって検出される先行車両と自車両との車間距離及び相対速度に基づいて、具体的には、先行車両と自車両との車間距離を先行車両と自車両との相対速度で除して、先行車両と自車両との衝突が予測される衝突予測時間(TTC:Time To Collision)を算出することができるようになっている。
【0030】
また、コントロールユニット9には、アクセル開度に応じたエンジン出力として、アクセル開度に応じたスロットル開度が予め設定されて記憶されている。コントロールユニット9には、後述する図4の実線L1で示すように、アクセル開度に比例してスロットル開度が大きくなるように設定されたスロットル開度特性が予め設定されて記憶されている。
【0031】
次に、本発明の第1実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の作動について説明する。
図2は、前記自動ブレーキ制御装置の作動を説明するための説明図であり、図3は、所定のアクセル開度における衝突予測時間に対する相対速度、スロットル開度、エンジン出力、自動ブレーキ圧及び警報装置の変化を示す図である。図2に示すように、走行区分線15によって区画された走行車線16内を所定のアクセル開度α1で走行する自車両1の前方に先行車両21が走行している場合に、先行車両21と自車両1との車間距離が短くなって先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t1、例えば3秒以下になると、コントロールユニット9は、図3に示すように、警報装置8を作動させてオフ状態からオン状態にしてドライバに先行車両21と自車両1との衝突が予測されることを知らせる。
【0032】
図2に示すように、先行車両21と自車両1との車間距離がさらに短くなって衝突予測時間が所定時間t2、例えば2秒以下になると、コントロールユニット9は、図3に示すように、ドライバのアクセルペダルの踏込みにかかわらず自車両のブレーキ手段に所定ブレーキ圧P1を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御する。また、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させてエンジン出力を所定の割合で低下させるようにスロットル弁7の作動を制御する。
【0033】
図4は、前記自動ブレーキ制御装置の作動時におけるアクセル開度とスロットル開度との関係を示すグラフである。コントロールユニット9には、図4の実線L1で示すように、アクセル開度に応じたスロットル開度が予め設定されて記憶されている。本実施形態では、アクセル開度に比例して大きくなるスロットル開度が設定されている。
【0034】
そして、衝突予測時間が所定時間t2以下になると、図4の破線L1'に示すように、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させる。例えば、アクセル開度α1であるときに設定されたスロットル開度X1を、所定の割合A、例えば0.5倍で低下させてスロットル開度X1'にする。スロットル開度X1'は、(X1−X1・A)にされる。
【0035】
図3に示すように、衝突予測時間が所定時間t2以下になるときにアクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させてエンジン出力を所定の割合で低下させる。
【0036】
このように、衝突予測時間が所定時間t2以下になると、所定ブレーキ圧P1を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御すると共に、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させてエンジン出力を所定の割合で低下させるようにスロットル弁9の作動を制御することにより、先行車両21と自車両1との相対速度が低下することとなる。
【0037】
そして、図2に示すように、先行車両21と自車両1との車間距離がさらに短くなって衝突予測時間が所定時間t3、例えば1秒以下になると、コントロールユニット9は、図3に示すように、ドライバのアクセルペダルの踏込みにかかわらず自車両のブレーキ手段に所定ブレーキ圧P1より高い所定ブレーキ圧P2を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御する。
【0038】
また、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を全閉状態にしてエンジン出力をさらに低下させるようにスロットル弁7の作動を制御する。なお、車両1では、スロットル弁7の全閉状態においてもスロットル弁7をバイパスして吸入空気が流れるバイパス通路が設けられている。
【0039】
このように、衝突予測時間がt3以下になると、所定ブレーキ圧P2を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御すると共に、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を全閉状態にしてエンジン出力をさらに低下させるようにスロットル弁9の作動を制御することにより、先行車両21と自車両1との相対速度がさらに低下することとなる。
【0040】
図5は、前記自動ブレーキ制御装置の制御フローチャートを示す図である。図5に示すように、自車両前方の先行車両21と自車両1との衝突が予測される場合にブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両のブレーキ手段を作動させる自動ブレーキ制御装置の制御動作は、コントロールユニット9によって実行される。
【0041】
前述したように、コントロールユニット9には、アクセル開度に対するスロットル開度の特性が予め設定されて記憶され、コントロールユニット9には先ず、各種信号が読み込まれる(ステップS1)。具体的には、先行車両21と自車両1との車間距離及び相対速度、車速、アクセル開度などが読み込まれる。
【0042】
次に、ステップS1において読み込まれた車速が所定車速V1、例えば15km/h以上であるか否かが判定される(ステップS2)。ステップS2での判定結果がノー(NO)の場合、すなわち車速が所定車速V1未満である場合、ステップS1〜S2が繰り返される。
【0043】
一方、ステップS2での判定結果がイエス(YES)の場合、すなわち車速が所定車速V1以上である場合、ステップS1において読み込まれた先行車両21と自車両1との車間距離及び相対速度に基づいて先行車両21と自車両1との衝突予測時間(TTC)が算出される(ステップS3)。
【0044】
そして、ステップS3において算出された衝突予測時間が所定時間t1以下であるか否かが判定される(ステップS4)。ステップS4での判定結果がノーの場合、すなわち衝突予測時間が所定時間t1より長い場合、ステップS1〜S4が繰り返されるが、ステップS4での判定結果がイエスになると、すなわち衝突予測時間が所定時間t1以下になると、警報装置8を作動させる(ステップS5)。
【0045】
次に、ステップS3において算出された衝突予測時間が所定時間t2以下であるか否かが判定される(ステップS6)。ステップS6での判定結果がノーの場合、すなわち衝突予測時間が所定時間t2より長く所定時間t1以下の場合、ステップS1〜S6が繰り返されるが、ステップS6での判定結果がイエスになると、すなわち衝突予測時間が所定時間t2以下になると、衝突予測時間が所定時間t3以下であるか否かが判定される(ステップS7)。
【0046】
ステップS7での判定結果がノーの場合、すなわち衝突予測時間が所定時間t3より長く所定時間t2以下の場合、第1ブレーキ作動制御を行う(ステップS8)。ドライバのアクセルペダルの踏込みにかかわらず自車両1のブレーキ手段に所定ブレーキ圧P1を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御する。
【0047】
また、衝突予測時間が所定時間t3より長く所定時間t2以下の場合、第1エンジン出力制限制御を行う(ステップS9)。アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させてエンジン出力を所定の割合で低下させるようにスロットル弁7の作動を制御してエンジンを制御する。
【0048】
一方、ステップS7での判定結果がイエスの場合、すなわち衝突予測時間が所定時間t3以下の場合、第2ブレーキ作動制御を行う(ステップS10)。ドライバのアクセルペダルの踏込みにかかわらず自車両1のブレーキ手段に所定ブレーキ圧P1より高い所定ブレーキ圧P2を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御する。
【0049】
また、衝突予測時間が所定時間t3以下の場合、第2エンジン出力制限制御を行う(ステップS11)。アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を全閉状態にしてエンジン出力をさらに低下させるようにスロットル弁7の作動を制御してエンジンを制御する。
【0050】
このように、先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t1以下になると、警報作動を行い、衝突予測時間が所定時間t2以下になると、第1ブレーキ制御を行うと共に第1エンジン出力制限制御を行い、衝突予測時間が所定時間t3以下になると、第2ブレーキ制御を行うと共に第2エンジン出力制限制御を行う。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る自動ブレーキ制御装置では、衝突予測時間が所定時間t2以下になると、ブレーキペダルの踏込み動作にかかわりなく自車両1のブレーキ手段が作動されることにより、自車両1を先行車両21に対して減速させることができる。
【0052】
また、衝突予測時間が所定時間t2以下になると、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度が所定の割合で低下されてエンジン出力が所定の割合で低下されることにより、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させずエンジン出力を低下させない場合に比して、自車両1を先行車両21に対してさらに減速させることができ、先行車両との衝突回避あるいは衝突による被害軽減を図ることができる。
【0053】
ドライバによるアクセルペダルの踏込みが大きくなってアクセル開度が大きくなる場合、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させずエンジン出力を低下させない場合に比して、スロットル開度が所定の割合で低下されてエンジン出力が所定の割合で低下されるものの、アクセル開度が大きくなることに伴ってアクセル開度に応じて設定されるスロットル開度が大きくなってエンジン出力が大きくなることから、ドライバの意図に追従して車両を走行させることができる。
【0054】
図4に示されるように、ドライバのアクセルペダルの踏込みが大きくなってアクセル開度がα1からα2に大きくなる場合、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度X2を低下させない場合に比してスロットル開度が所定の割合Aで低下されてスロットル開度X2’にされるものの、アクセル開度がα1からα2に大きくなることに伴ってスロットル開度をX1’からX2’に大きくしてエンジン出力を大きくする。これにより、ドライバがアクセルペダルを踏込んで先行車両21との衝突を回避することができると判断した場合に、ドライバが先行車両21との衝突を回避する衝突回避動作を行うことを可能にする。
【0055】
したがって、自車両1を先行車両21に対して減速させることができると共にドライバの意図に追従して車両を走行させることができ、自車両1の先行車両21に対する減速とドライバの意図に追従した車両の走行制御とを両立させることができる。
【0056】
例えば、ドライバの意図ではなくアクセルペダルの踏込みが大きくなった場合においても、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度が所定の割合で低下されてエンジン出力が所定の割合で低下されることにより、アクセルペダルの踏込みに対して自動ブレーキの作動を解除する場合に比して、自車両1を先行車両21に対してより減速させることができ、先行車両21との衝突回避あるいは衝突による被害軽減を図ることができる。
【0057】
前述した第1実施形態では、エンジンとしてスロットル弁7を有するガソリンエンジンを備えた自車両1の自動ブレーキ制御装置について記載しているが、スロットル弁を有しないディーゼルエンジンの場合、コントロールユニット9には、アクセル開度に応じたエンジン出力として、アクセル開度に応じた燃料噴射量が予め設定されて記憶され、先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t2以下になると、コントロールユニット9によって、アクセル開度に応じて予め設定された燃料噴射量が所定の割合で低下させられてエンジン出力が所定の割合で低下させられるようにエンジンが制御される。
【0058】
なお、後述する第2及び第3実施形態に係るスロットル弁を有するガソリンエンジンを備えた自車両の自動ブレーキ制御装置についても同様に、ディーゼルエンジンの場合には、アクセル開度に応じて予め設定されたスロットル開度が制御されることに代えて、アクセル開度に応じて予め設定された燃料噴射量が制御される。
【0059】
図6は、本発明の第2実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の作動を説明するための説明図である。本発明の第2実施形態に係る自動ブレーキ制御装置は、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させてエンジン出力を低下させる割合を、先行車両と自車両の車幅方向におけるオーバーラップ量に基づいて変化させることを除き、本発明の第1実施形態に係る自動ブレーキ制御装置と同様であるので、これ以外の説明については省略する。
【0060】
第2実施形態では、コントロールユニット9は、先行車両検出センサ2によって検出される先行車両21の位置に基づいて先行車両21と自車両1との車幅方向におけるオーバーラップ量を算出することができるようになっている。オーバーラップ量は、自車両1の車幅に対する先行車両21と自車両1との車幅方向における重なり量の割合である。
【0061】
コントロールユニット9はまた、先行車両21と自車両1との車幅方向におけるオーバーラップ量に基づいて、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を変化させてエンジン出力を低下させる割合を変化させるようにスロットル弁7の作動を制御してエンジンを制御する。具体的には、オーバーラップ量が小さいときは大きいときに比してアクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を小さくしてエンジン出力を低下させる割合を小さくすることによりスロットル開度を大きくしてエンジン出力を大きくするようにスロットル弁7の作動を制御する。
【0062】
図6に示すように、所定のアクセル開度α1で走行する自車両1の前方に先行車両21が走行している場合に、先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t2以下になると、第1実施形態と同様に、ドライバのアクセルペダルの踏込みにかかわらず自車両のブレーキ手段に所定ブレーキ圧P1を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御すると共に、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させてエンジン出力を低下させるようにスロットル弁7の作動を制御する。
【0063】
第2実施形態では、先行車両21と自車両1との車幅方向におけるオーバーラップ量W1に基づいて、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を変化させるようにスロットル弁7の作動を制御する。
【0064】
前述したように、オーバーラップ量W1は、自車両1の車幅に対する先行車両21と自車両1との車幅方向における重なり量の割合であり、先行車両21と自車両1とが車幅方向において同位置であるときは1であり、先行車両21と自車両1とが車幅方向において重なっていないときはゼロである。
【0065】
図7は、前記自動ブレーキ制御装置の作動時におけるアクセル開度とスロットル開度との関係を示すグラフである。第1実施形態と同様に、コントロールユニット9には、図7の実線L1で示すように、アクセル開度に応じたスロットル開度が予め設定されて記憶されている。
【0066】
第1実施形態では、先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t2以下になると、図7の破線L1'に示すように、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度X1を所定の割合Aで低下させてスロットル開度X1’にしているが、第2実施形態では、図7の一点鎖線L1''に示すように、先行車両21と自車両1との車幅方向におけるオーバーラップ量W1に基づいて、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を変化させてエンジン出力を低下させる割合を変化させる。
【0067】
具体的には、アクセル開度α1であるときに設定されたスロットル開度X1を低下させる割合Aにオーバーラップ量W1を乗じてスロットル開度X1''にする。スロットル開度X1''は、(X1−X1・A・W1)にされる。
【0068】
このように、先行車両21と自車両1との車幅方向におけるオーバーラップ量W1に基づいて、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を変化させてエンジン出力を低下させる割合を変化させることにより、オーバーラップ量W1が小さいときは大きいときに比してスロットル開度を低下させる割合を小さくしてエンジン出力を低下させる割合を小さくし、スロットル開度を大きくしてエンジン出力を大きくすることで、先行車両21に対する減速を抑制してドライバによる衝突回避動作を優先させることができる。
【0069】
図8は、本発明の第3実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の作動を説明するための説明図である。本発明の第3実施形態に係る自動ブレーキ制御装置は、後方車両の位置が自車両の走行車線に隣接する隣接走行車線内にあると共に後方車両と自車両との衝突予測時間が所定時間以下であるときは、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させる割合を大きくすることを除き、本発明の第1実施形態に係る自動ブレーキ制御装置と同様であるので、これ以外の説明については省略する。
【0070】
第3実施形態では、コントロールユニット9は、後方車両検出センサ5によって検出される後方車両と自車両との車間距離及び相対速度に基づいて、具体的には、後方車両と自車両との車間距離を後方車両と自車両との相対速度で除して、後方車両と自車両との車両走行方向における車間距離がゼロとなる後方車両と自車両との衝突が予測される衝突予測時間TTC’を算出することができるようになっている。
【0071】
また、コントロールユニット9は、後方車両検出センサ5によって検出される後方車両の位置が自車両の走行車線に隣接する隣接走行車線内にあると共に後方車両と自車両との衝突予測時間が所定時間以下であるときは、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させる割合を大きくし、スロットル開度を小さくしてエンジン出力を小さくするようにスロットル弁7の作動を制御する。
【0072】
図8に示すように、所定のアクセル開度α1で走行する自車両1の前方に先行車両21が走行している場合に、先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t2以下になると、第1実施形態と同様に、ドライバのアクセルペダルの踏込みにかかわらず自車両のブレーキ手段に所定ブレーキ圧P1を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御すると共に、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させてエンジン出力を所定の割合で低下させるようにスロットル弁7の作動を制御してエンジンを制御する。
【0073】
第3実施形態では、自車両1後方の後方車両31の位置が自車両1の走行車線16に隣接する隣接走行車線17内にあると共に、後方車両31と自車両1との車間距離及び相対速度に基づいて算出された後方車両31と自車両1との衝突予測時間TTC’が所定時間t4、例えば3秒以下であるときは、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させる割合を大きくし、スロットル開度を小さくしてエンジン出力を小さくするようにスロットル弁7の作動を制御してエンジンを制御する。
【0074】
図9は、前記自動ブレーキ制御装置の作動時におけるアクセル開度とスロットル開度との関係を示すグラフである。第1実施形態と同様に、コントロールユニット9には、図9の実線L1で示すように、アクセル開度に応じたスロットル開度が予め設定されて記憶されている。
【0075】
第1実施形態では、先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t2以下になると、図9の破線L1'に示すように、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度X1を所定の割合Aで低下させてスロットル開度X1’にしているが、第3実施形態では、図9の二点鎖線L1'''に示すように、後方車両31が自車両1の走行車線16に隣接する隣接走行車線17内にあると共に後方車両31と自車両1との衝突予測時間TTC’が所定時間t4以下であるときは、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させる割合を大きくする。
【0076】
具体的には、アクセル開度α1であるときに設定されたスロットル開度X1を低下させる割合Aに、所定倍率Bを乗じてスロットル開度X1''’にする。スロットル開度X1'''は、(X1−X1・A・B)にされる。ここで、所定倍率Bは、例えば1.4など1よりも大きい値に設定される。
【0077】
このように、後方車両31の位置が自車両1の走行車線16に隣接する隣接走行車線17内にあると共に、後方車両31と自車両1との衝突予測時間TTC’が所定時間t4以下であるときは、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させる割合を大きくすることにより、ドライバによる衝突回避動作によって後方車両31との衝突が予測される場合にスロットル開度を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させることができ、ドライバによる衝突回避動作を抑制して後方車両31との衝突を回避することができる。自車両1のドライバが、前方車両21との衝突を回避するためにハンドルをきって隣接走行車線17を走行させようとした場合に隣接走行車線17を走行する後方車両31との衝突を回避することができる。
【0078】
前述したように、第2実施形態では、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を先行車両21と自車両1の車幅方向におけるオーバーラップ量W1に基づいて変化させてエンジン出力を低下させる割合を変化させ、第3実施形態では、後方車両31が自車両1の走行車線16に隣接する隣接走行車線17内にあると共に後方車両31と自車両1との衝突予測時間TTC’が所定時間t4以下であるときはアクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させる割合を大きくしているが、これら第2及び第3実施形態を組み合わせるようにしてもよい。
【0079】
すなわち、自車両1の前方に先行車両21が走行していると共に自車両1の後方に後方車両31が走行している場合に、先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t2以下になると、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を先行車両21と自車両1の車幅方向におけるオーバーラップ量W1に基づいて変化させてエンジン出力を低下させる割合を変化させ、且つ後方車両31が自車両1の走行車線16に隣接する隣接走行車線17内にあると共に後方車両31と自車両1との衝突予測時間TTC’が所定時間t4以下であるときはアクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を大きくしてエンジン出力を低下させる割合を大きくするようにしてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、図4図7及び図9の実線L1で示されるように、アクセル開度に比例して直線状に大きくなるスロットル開度が設定されているが、これに限定されるものではなく、例えばアクセル開度に比例して曲線状に大きくなるスロットル開度を設定するようにしてもよい。
【0081】
また、本実施形態において、路面状態(路面の摩擦係数)を検出する路面状態検出手段としての路面μセンサを備え、路面μセンサによって検出される路面の摩擦係数に基づいて、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を変化させてエンジン出力を低下させる割合を変化させるようにすることも可能である。
【0082】
具体的には、路面μセンサによって検出される路面の摩擦係数が高摩擦係数のときは、低摩擦係数の場合に比して、アクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を低下させる割合を小さくしてエンジン出力を低下させる割合を小さくし、スロットル開度を高くしてエンジン出力を大きくするようにスロットル弁7の作動を制御することも可能である。
【0083】
前述した実施形態では、先行車両21と自車両1との衝突予測時間が所定時間t2になると、所定ブレーキ圧P1を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御すると共にアクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させてエンジン出力を所定の割合で低下させるようにスロットル弁7の作動を制御しているが、衝突予測時間が所定時間t1になると所定ブレーキ圧P1を供給してブレーキ手段を作動させるように自動ブレーキ装置6の作動を制御し、衝突予測時間が所定時間t2になるとアクセル開度に応じて設定されたスロットル開度を所定の割合で低下させてエンジン出力を所定の割合で低下させるようにスロットル弁7の作動を制御するようにしてもよい。
【0084】
また、前述した実施形態において、自車両の操舵角度を検出する舵角センサや自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサを備え、舵角センサやヨーレートセンサからの信号に基づいてドライバが急ハンドルをきったことを検出した場合に、ドライバの意図を優先して第1、第2ブレーキ作動制御及び第1、第2エンジン出力制限制御を解除するようにすることも可能である。
【0085】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明に係る車両用自動ブレーキ制御装置によれば、自車両の先行車両に対する減速とドライバの意図に追従した車両の走行制御とを両立させることができ、車両の安全技術の分野において、好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0087】
1 自車両
2 先行車両検出センサ
3 車速センサ
4 アクセル開度センサ
5 後方車両検出センサ
6 自動ブレーキ装置
7 スロットル弁
8 警報装置
9 コントロールユニット
16 走行車線
17 隣接走行車線
21 先行車両
31 後方車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9