(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る透析システムについて図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る透析システムの構成を示す系統図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る透析システム1は、原水111を供給する原水供給部110と、逆浸透膜を有し、原水111を、逆浸透膜を透過した逆浸透水141と、逆浸透膜を透過せずに不純物が濃縮された濃縮水142とに分離する逆浸透装置140と、逆浸透水141を一時的に貯える逆浸透水用タンク150とを備える。
【0015】
また、透析システム1は、逆浸透水用タンク150から送り出された逆浸透水141が調製されてなる透析液211を供給する透析液供給装置210と、透析液供給装置210から透析液211の供給を受ける複数の透析装置と、透析装置にて使用された透析液211からなる使用済透析液22を一時的に貯える使用済透析液用タンクとを備える。
【0016】
さらに、透析システム1は、原水供給部110から供給された原水111と逆浸透装置140から排出された濃縮水142とを熱交換させる第1熱交換器120と、第1熱交換器120を通過した原水111と使用済透析液用タンクから排出された使用済透析液22とを熱交換させる第2熱交換器130とを備える。
【0017】
本実施形態においては、複数の透析装置は、3つのグループに分かれて配置されている。すなわち、複数の透析装置を各々含む、第1透析装置グループ220と第2透析装置グループ221と第3透析装置グループ222とが構成されている。
【0018】
第1透析装置グループ220から排出された使用済透析液22は、第1使用済透析液用タンク230に集められて一時的に貯えられる。第2透析装置グループ221から排出された使用済透析液22は、第2使用済透析液用タンク231に集められて一時的に貯えられる。第3透析装置グループ222から排出された使用済透析液22は、第3使用済透析液用タンク232に集められて一時的に貯えられる。
【0019】
第1使用済透析液用タンク230には、第1溢水管260および第1ポンプ250が接続されている。第2使用済透析液用タンク231には、第2溢水管261および第2ポンプ251が接続されている。第3使用済透析液用タンク232には、第3溢水管262および第3ポンプ252が接続されている。
【0020】
第1使用済透析液用タンク230、第2使用済透析液用タンク231および第3使用済透析液用タンク232は、第4使用済透析液用タンク233にそれぞれ接続されている。第4使用済透析液用タンク233には、第4溢水管263および第4ポンプ253が接続されている。上記のように、本実施形態においては、使用済透析液用タンクが複数設けられている。
【0021】
原水供給部110と第1熱交換器120と第2熱交換器130と逆浸透装置140と逆浸透水用タンク150とは、機械室10に配置されている。透析液供給装置210と全ての透析装置と全ての使用済透析液用タンクとは、透析室20に配置されている。
【0022】
次に、透析システム1における一連の動作について説明する。原水供給部110から供給された、たとえば水道水からなる原水111は、第1熱交換器120、第2熱交換器130および逆浸透装置140に順に送られる。逆浸透装置140に送られた原水111は、逆浸透膜に沿って流れることにより、逆浸透膜を透過した逆浸透水141と逆浸透膜を透過せずに不純物が濃縮された濃縮水142とに分離される。
【0023】
逆浸透装置140にて生成された逆浸透水141は、逆浸透水用タンク150に送られて一時的に貯えられる。逆浸透装置140にて生成された濃縮水142は、第1熱交換器120に送られて、原水111と熱交換して冷却された後、排出される。すなわち、第1熱交換器120の第1配管121を通過する原水111は、第1熱交換器120の第2配管122を通過する濃縮水142と熱交換して加熱される。
【0024】
逆浸透水用タンク150に貯えられた逆浸透水141は、透析液供給装置210に送られて、透析液211に調製される。透析液供給装置210にて調製された透析液211は、第1透析装置グループ220、第2透析装置グループ221および第3透析装置グループ222の各々に含まれる透析装置に供給される。
【0025】
第1透析装置グループ220に含まれる透析装置から排出される使用済透析液22は、第1使用済透析液用タンク230に一時的に貯えられる。第1使用済透析液用タンク230に貯えられた使用済透析液22の一部は、第1ポンプ250によって加圧されて第4使用済透析液用タンク233に送られる。第1使用済透析液用タンク230内の使用済透析液22の液面の高さが所定の高さを超えた場合は、所定の高さを超えた分の使用済透析液22が第1溢水管260から排出される。
【0026】
第2透析装置グループ221に含まれる透析装置から排出される使用済透析液22は、第2使用済透析液用タンク231に一時的に貯えられる。第2使用済透析液用タンク231に貯えられた使用済透析液22の一部は、第2ポンプ251によって加圧されて第4使用済透析液用タンク233に送られる。第2使用済透析液用タンク231内の使用済透析液22の液面の高さが所定の高さを超えた場合は、所定の高さを超えた分の使用済透析液22が第2溢水管261から排出される。
【0027】
第3透析装置グループ222に含まれる透析装置から排出される使用済透析液22は、第3使用済透析液用タンク232に一時的に貯えられる。第3使用済透析液用タンク232に貯えられた使用済透析液22の一部は、第3ポンプ252によって加圧されて第4使用済透析液用タンク233に送られる。第3使用済透析液用タンク232内の使用済透析液22の液面の高さが所定の高さを超えた場合は、所定の高さを超えた分の使用済透析液22が第3溢水管262から排出される。
【0028】
第4使用済透析液用タンク233に送られた使用済透析液22は、一時的に貯えられる。第4使用済透析液用タンク233内の使用済透析液22の液面の高さが所定の高さを超えた場合は、所定の高さを超えた分の使用済透析液22が第4溢水管263から排出される。
【0029】
第4使用済透析液用タンク233に貯えられた使用済透析液22の一部は、第4ポンプ253によって加圧されて第2熱交換器130に送られ、原水111と熱交換して冷却された後、排出される。すなわち、第2熱交換器130の第1配管131を通過する原水111は、第2熱交換器130の第2配管132を通過する使用済透析液22と熱交換して加熱される。
【0030】
以下、使用済透析液用タンクの構成について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、第4使用済透析液用タンク233について説明するが、第1使用済透析液用タンク230、第2使用済透析液用タンク231および第3使用済透析液用タンク232の各々も同様の構成を有している。
【0031】
図2は、使用済透析液用タンクの構成を示す断面図である。
図3は、使用済透析液用タンク内に配置される仕切板の形状を示す側面図である。
【0032】
図2に示すように、第4使用済透析液用タンク233は、水平方向に延在するパイプ状の外形を有している。本実施形態においては、第4使用済透析液用タンク233は、略円筒状の形状を有している。ただし、第4使用済透析液用タンク233の形状は、略円筒状に限られず、たとえば、横断面矩形状の筒状であってもよい。
【0033】
第4使用済透析液用タンク233は、透明の塩化ビニルから形成されている。ただし、第4使用済透析液用タンク233の材料は、塩化ビニルに限られず、使用済透析液22および洗浄液などに耐性を有し、かつ、タンク内を視認可能なように少なくとも一部が透明であればよい。
【0034】
使用済透析液22に含まれる成分が第4使用済透析液用タンク233の内側に付着して、第4使用済透析液用タンク233内における使用済透析液22の流路が狭くなることがある。第4使用済透析液用タンク233を少なくとも1部が透明の部材で形成することにより、第4使用済透析液用タンク233内の状況を確認してメンテナンスすることが可能となる。
【0035】
上記のように、第4使用済透析液用タンク233には第4溢水管263が接続されており、透析室の床面2から第4使用済透析液用タンク233内の使用済透析液22の液面までの所定の高さhが最高高さHとなるように設定されている。所定の高さhは、たとえば、30cmである。
【0036】
本実施形態においては、第4使用済透析液用タンク233内にて使用済透析液22の液面が最高高さHに達した状態において、100Lの使用済透析液22が貯液されている。第1使用済透析液用タンク230内にて使用済透析液22の液面が最高高さHに達した状態において、36Lの使用済透析液22が貯液されている。第2使用済透析液用タンク231内にて使用済透析液22の液面が最高高さHに達した状態において、50Lの使用済透析液22が貯液されている。第3使用済透析液用タンク232内にて使用済透析液22の液面が最高高さHに達した状態において、36Lの使用済透析液22が貯液されている。
【0037】
上記のように使用済透析液用タンクが水平方向に延在するパイプ状の外形を有していることにより、必要な容量を確保しつつ使用済透析液用タンクを低背化できる。これにより、使用済透析液用タンクを透析装置と干渉しないように透析室20の床面2に沿うように配置することができ、透析室20内における透析装置の配置の自由度を高く維持できる。
【0038】
また、本実施形態に係る透析システムにおいては複数の使用済透析液用タンクを備えているため、必要な容量を確保しつつ各使用済透析液用タンクをさらに低背化および小型化することができる。複数の使用済透析液用タンクをそれぞれ透析室20の別の場所に配置することにより、透析室20内における透析装置の配置の自由度をさらに高くすることができる。
【0039】
第4使用済透析液用タンク233は、第4使用済透析液用タンク233の延在方向にて互いに間隔を置いて配置されて第4使用済透析液用タンク233の内部を仕切る3つの仕切板300を含む。なお、仕切板300の数は3つに限られず、1つでも複数でもよい。また、仕切板300は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0040】
図3に示すように、仕切板300には、使用済透析液22の流路となる複数の円形の貫通孔301が設けられている。本実施形態においては、仕切板300は円板状の形状を有している。複数の貫通孔301の各々の中心は、仕切板300の中心302を中心とした円303上において等間隔に位置している。ただし、貫通孔301の配置は上記に限られず、第4使用済透析液用タンク233内の使用済透析液22の流路を複数に分割できる配置であればよい。また、貫通孔301の形状は円形に限られず、多角形状などでもよい。
【0041】
仕切板300を設けることにより、仮に地震によって第4使用済透析液用タンク233に長周期地震動が作用した場合に、第4使用済透析液用タンク233内における使用済透析液22の移動を妨げることができる。これにより、第4使用済透析液用タンク233が使用済透析液22の移動に伴って発生する力によって破壊することを抑制できる。
【0042】
以下、透析システム1のシークエンスについて説明する。
図4は、逆浸透装置が運転中の状態を示す系統図である。
図5は、逆浸透装置が停止中の状態を示す系統図である。
【0043】
図4,5に示すように、逆浸透装置140は間欠運転する。
図4に示すように、逆浸透装置140の運転中においては、逆浸透水用タンク150での逆浸透水141の貯水量が増加しつつ第4使用済透析液用タンク233での使用済透析液22の貯液量が減少し、かつ、
図5に示すように、逆浸透装置140の停止中においては、逆浸透水用タンク150での逆浸透水141の貯水量が減少しつつ第4使用済透析液用タンク233での使用済透析液22の貯液量が増加する。
【0044】
具体的には、
図4に示すように逆浸透装置140の運転開始時においては、逆浸透水用タンク150内にて逆浸透水141の液面が最低高さLに達した状態であり、第4使用済透析液用タンク233内にて使用済透析液22の液面が最高高さHに達した状態である。
【0045】
なお、逆浸透水用タンク150内にて逆浸透水141の液面が最低高さLの状態から最高高さHの状態まで変化した際の貯水量の変化量は60Lである。同様に、第4使用済透析液用タンク233内にて使用済透析液22の液面が最高高さHの状態から最低高さLの状態まで変化した際の貯水量の変化量は60Lである。
【0046】
逆浸透装置140が運転を開始することにより、逆浸透装置140から逆浸透水141が31.5L/minの流速で逆浸透水用タンク150に送られる。逆浸透水用タンク150から逆浸透水141が30L/minの流速で透析液供給装置210に送られる。よって、逆浸透水用タンク150には、1.5L/minの速度で逆浸透水141が貯水される。
【0047】
透析液供給装置210にて調製された透析液が各透析装置にて使用されて、使用済透析液22として30L/minの流速で第4使用済透析液用タンク233に送られる。第4使用済透析液用タンク233から使用済透析液22が31.5L/minの流速で第2熱交換器130に送られて排出される。よって、第4使用済透析液用タンク233からは、1.5L/minの速度で使用済透析液22が放出される。
【0048】
逆浸透装置140の運転開始時から40分経過後に、
図5に示すように、逆浸透水用タンク150内にて逆浸透水141の液面が最高高さLに達し、第4使用済透析液用タンク233内にて使用済透析液22の液面が最低高さLに達している。この時点において、逆浸透装置140の運転を停止する。
【0049】
図5に示すように、逆浸透装置140の運転停止中においても、逆浸透水用タンク150から逆浸透水141が30L/minの流速で透析液供給装置210に送られる。よって、逆浸透水用タンク150からは、30L/minの速度で逆浸透水141が放出される。
【0050】
また、逆浸透装置140の運転停止中においても、透析液供給装置210にて調製された透析液が各透析装置にて使用されて、使用済透析液22として30L/minの流速で第4使用済透析液用タンク233に送られる。よって、第4使用済透析液用タンク233には、30L/minの速度で使用済透析液22が貯液される。
【0051】
逆浸透装置140の運転停止時から2分経過後に、
図4に示すように、逆浸透水用タンク150内にて逆浸透水141の液面が最低高さLに達し、第4使用済透析液用タンク233内にて使用済透析液22の液面が最高高さHに達している。
【0052】
上記のように、本実施形態に係る透析システム1は、
図4に示す状態と
図5に示す状態とを交互に繰り返すシークエンスで運転される。すなわち、逆浸透装置140は、40分間の連続運転と2分間の運転停止とを繰り返す。このように、逆浸透装置140を間欠運転することにより、逆浸透装置140の運転に必要なエネルギーの削減を図れる。
【0053】
また、使用済透析液22を使用済透析液用タンクに一時的に貯えることにより、上記のシークエンスを実行することが可能となり、無駄に排出される使用済透析液22を低減して熱交換効率を改善することにより省エネルギー化を図れる。
【0054】
なお、上記のシークエンスは一例であって、逆浸透装置140を間欠運転しつつ、使用済透析液22の熱量を有効利用できるシークエンスであればよい。さらに、透析システム1は、第1および第2熱交換器120,130での熱交換効率を向上するために、熱媒体を用いたヒートポンプを備えていてもよい。
【0055】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。