(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る駆動制御装置を搭載したハイブリッド車両(以下、単に「車両」という)100は、駆動機構1と、ECU(Electronic Control Unit)32とを備えている。
【0015】
駆動機構1は、内燃機関型のエンジン2と、エンジン2の出力軸3と、電力から駆動力を生成するとともに駆動されることにより電力を生成する第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5と、車両100の駆動輪6に接続される駆動軸7と、動力伝達機構10を構成する第1遊星歯車機構8及び第2遊星歯車機構9とを含んで構成される。
【0016】
エンジン2は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うとともに、圧縮行程及び膨張行程の間に点火を行う4サイクルのエンジンによって構成されている。エンジン2の出力軸3は、第1遊星歯車機構8と第2遊星歯車機構9とに接続されている。
【0017】
出力軸3には、ワンウェイクラッチ40が設けられており、ワンウェイクラッチ40は、エンジン2の出力軸3が逆回転した場合に、この逆回転のトルクを第1遊星歯車機構8及び第2遊星歯車機構9に伝達させないように構成されている。
【0018】
第1モータジェネレータ4は、ロータ軸13と、ロータ14と、ステータ15とを有している。ロータ14には、複数の永久磁石が埋め込まれている。ステータ15は、ステータコア及びステータコアに巻き掛けられた三相コイルを有している。ステータ15の三相コイルは、第1インバータ19に接続されている。
【0019】
このように構成された第1モータジェネレータ4において、ステータ15の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ15によって回転磁界が形成され、この回転磁界にロータ14に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ14がロータ軸13周りに回転駆動される。すなわち、第1モータジェネレータ4は、電動機として機能し、車両100を駆動する駆動力を生成することができるようになっている。
【0020】
また、ロータ14がロータ軸13周りに回転すると、ロータ14に埋め込まれた永久磁石によって回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ15の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相コイルの両端に電力が発生する。すなわち、第1モータジェネレータ4は、発電機としても機能し、バッテリ21を充電する電力を生成することができるようになっている。
【0021】
第2モータジェネレータ5は、ロータ軸16と、ロータ17と、ステータ18とを有している。ロータ17には、複数の永久磁石が埋め込まれている。ステータ18は、ステータコア及びステータコアに巻き掛けられた三相コイルを有している。ステータ18の三相コイルは、第2インバータ20に接続されている。
【0022】
このように構成された第2モータジェネレータ5において、ステータ18の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ18によって回転磁界が形成され、この回転磁界にロータ17に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ17がロータ軸16周りに回転駆動される。すなわち、第2モータジェネレータ5は、電動機として機能し、車両100を駆動する駆動力を生成することができるようになっている。
【0023】
また、ロータ17がロータ軸16周りに回転すると、ロータ17に埋め込まれた永久磁石によって回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ18の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相コイルの両端に電力が発生する。すなわち、第2モータジェネレータ5は、発電機としても機能し、バッテリ21を充電する電力を生成することができるようになっている。
【0024】
第1遊星歯車機構8は、サンギヤ22と、サンギヤ22に噛み合う複数のプラネタリギヤ23と、複数のプラネタリギヤ23に噛み合うリングギヤ25とを有し、プラネタリギヤ23を自転可能に支持するプラネタリキャリア24が設けられている。
【0025】
第2遊星歯車機構9は、サンギヤ26と、サンギヤ26に噛み合う複数のプラネタリギヤ27と、複数のプラネタリギヤ27に噛み合うリングギヤ29とを有し、プラネタリギヤ27を自転可能に支持するプラネタリキャリア28が設けられている。
【0026】
第1遊星歯車機構8のサンギヤ22は、第1モータジェネレータ4のロータ14と一体に回転するように、ロータ軸13に接続されている。第1遊星歯車機構8のプラネタリキャリア24と、第2遊星歯車機構9のサンギヤ26とは、エンジン2の出力軸3にワンウェイクラッチ40を介して一体に回転するように接続されている。
【0027】
第1遊星歯車機構8のリングギヤ25は、第2遊星歯車機構9のプラネタリギヤ27にプラネタリキャリア28を介してロータ軸13周りに公転可能に接続されている。また、第1遊星歯車機構8のリングギヤ25は、デファレンシャルギヤ及びその他のギヤを含む出力伝達機構31を介して駆動軸7を回転させるように形成されている。
【0028】
第2遊星歯車機構9のリングギヤ29には、第2モータジェネレータ5のロータ17と一体に回転するようにロータ軸16に接続されている。このように、動力伝達機構10は、エンジン2と、第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5と、駆動軸7との間で駆動力を授受させるようになっている。例えば、動力伝達機構10は、エンジン2と、第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5とによって生成された動力を駆動軸7に伝達するようになっている。
【0029】
ECU32は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0030】
ECU32のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU32として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、ECU32において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、ECU32として機能する。
【0031】
ECU32の入力ポートには、アクセルペダルの開度(以下、単に「アクセル開度」という)Accを検出するアクセル開度センサ41と、車速Vを検出する車速センサ42と、エンジン2の機関回転速度(以下、単に「エンジン回転速度」という)Neを検出するエンジン回転速度センサ43と、シフト位置Spを検出するシフト位置センサ44とが接続されている。
【0032】
また、ECU32の出力ポートには、第1インバータ19と第2インバータ20とに加えて、エンジン2の燃焼室内に向けて燃料を噴射するインジェクタ45と、エンジン2の吸入空気量を調整するスロットルバルブの開度を調整するスロットルバルブアクチュエータ46とが接続されている。
【0033】
本実施の形態において、ECU32は、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の少なくとも一方で車両100を駆動するEVモードと、エンジン2で車両100を駆動しつつ、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の少なくとも一方でエンジン回転速度を調整するMG回転フィードバックモードと、駆動輪7にトルクを伝達させずにエンジン2を駆動させるISCモードとを含む複数の運転モードのなかで、いずれかの運転モードで車両100を制御するようになっている。
【0034】
ECU32は、エンジン2の回転速度が目標回転速度になるように第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の少なくとも一方を制御するフィードバック制御を実行するフィードバック制御部50を構成する。
【0035】
具体的には、ECU32は、車両100に要求される駆動力(以下、単に「要求駆動力」という)Freqを決定するようになっている。詳細には、ECU32のROMには、アクセル開度Accと車速Vとに対して要求駆動力Freqが対応付けられた要求駆動力マップがシフト位置Sp毎に格納されている。
【0036】
ECU32は、シフト位置センサ44によって検出されたシフト位置Spに対応する要求駆動力マップを参照し、アクセル開度センサ41によって検出されたアクセル開度Accと、車速センサ42によって検出された車速Vとに基づいて要求駆動力Freqを決定するようになっている。
【0037】
また、ECU32は、車両100に要求されるパワー(以下、単に「車両要求パワー」という)Preqを決定するようになっている。本実施の形態において、ECU32は、要求駆動力Freqと車速Vと所定定数とを乗算することにより、車両要求パワーPreqを算出するようになっている。ここで、所定定数は、出力伝達機構31のギヤ比に応じた定数である。
【0038】
また、ECU32は、エンジン2が目標とする目標エンジンパワーPeを算出するようになっている。本実施の形態において、ECU32は、バッテリ21の充電及び補機に要するパワーを車両要求パワーPreqに加算することにより、目標エンジンパワーPeを算出するようになっている。
【0039】
ECU32のROMには、エンジン2が最適な燃費で駆動する動作マップが格納されている。動作マップは、エンジン2が最適な燃費で駆動するための目標エンジン回転速度と目標エンジントルクとの関係を表す最適燃費線が規定されている。
【0040】
ECU32は、MG回転フィードバックモードにおいて、動作マップ上で最適燃費線と目標エンジンパワーPeを表す等出力線との交点にあたる目標エンジン回転速度と、エンジン回転速度Neとが一致するように、第1インバータ19と第2インバータ20とを制御することにより、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の出力トルクを調整するフィードバック制御を実行するようになっている。
【0041】
また、ECU32は、ISCモードにおいて、第1インバータ19と第2インバータ20とを制御することにより、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の出力トルクを0にするとともに、動作マップ上で最適燃費線と目標エンジンパワーPeを表す等出力線との交点にあたる目標エンジン回転速度と、エンジン回転速度Neとがアイドル運転時の目標アイドル回転速度で一致するように、例えば、スロットルバルブアクチュエータ46を制御することにより、エンジン2の吸入空気量を制御するようになっている。
【0042】
本実施の形態において、ECU32は、車両100の運転モードをMG回転フィードバックモードからISCモードに移行させることを要求するISCモード移行要求があったことを条件として、車両100の運転モードをMG回転フィードバックモードからISCモードに移行させるようになっている。
【0043】
ここで、ECU32は、車両100を駆動させないニュートラルレンジ及びパーキングレンジ等の非駆動レンジに対応するシフト位置Spに切り替えられたことを条件として、ISCモード移行要求があったと判断するようになっている。なお、ECU32は、車速Vが予め定められた速度より低い状態が所定時間継続したことを条件として、ISCモード移行要求があったと判断するようにしてもよい。
【0044】
また、ECU32は、動作マップ上で最適燃費線と目標エンジンパワーPeを表す等出力線との交点にあたる目標エンジン回転速度と、エンジン回転速度Neとが一致するように、エンジン2に生成させるトルクを設定するエンジントルク設定部51を構成する。
【0045】
具体的には、ECU32は、車両100の運転モードをMG回転フィードバックモードからISCモードに移行させることを条件として、エンジン2の指示トルクを0に設定し、エンジン2の自立運転が可能な状態とする。これより、ECU32は、エンジン2によって生成されたエンジントルクTeが規定トルク未満になるように、エンジン2に生成させるトルクを設定するようになっている。
【0046】
ここで、規定トルクは、エンジン2がアイドル運転時にあるときの目標アイドルトルク以下で予め定められた適合値である。
【0047】
また、ECU32は、車両100の運転モードをMG回転フィードバックモードからISCモードに移行させることを条件として、フィードバック制御を中止するようになっている。
【0048】
図2は、ISCモード移行要求があったときに車両100の運転モードをMG回転フィードバックモードからISCモードに移行させる従来の制御によるエンジン回転速度Ne、エンジントルクTe及び第1モータジェネレータ4の出力トルク(図中、「MG1トルク」と記す)を時間軸上に表している。
【0049】
図2に示すように、エンジントルクTeが十分に低下していない時刻t1で、ISCモード移行要求があったときに、車両100の運転モードをISCモードに移行させると、第1モータジェネレータ4の出力トルクが0に制御されるため、エンジン回転速度Neが一時的に上昇することがある。
【0050】
このため、ECU32は、ISCモード移行要求があった場合には、エンジントルクTeが規定トルク未満であることを条件として、車両100の運転モードをMG回転フィードバックモードからISCモードに移行させるようになっている。
【0051】
すなわち、ECU32は、シフト位置センサ44によって検出されたシフト位置Spが非駆動レンジに対応している状態で、エンジントルクTeが規定トルク未満であることを条件として、フィードバック制御を中止するようになっている。
【0052】
ECU32は、エンジントルクTeを検出するエンジントルク検出部52を構成する。ここで、第1遊星歯車機構8のサンギヤ22の歯数をZS1とし、第1遊星歯車機構8のリングギヤ25の歯数をZR1とし、第2遊星歯車機構9のサンギヤ26の歯数をZS2とし、第2遊星歯車機構9のリングギヤ29の歯数をZR2とする。
【0053】
また、k1=ZR1/ZS1とし、k2=ZR2/ZS2とし、第1モータジェネレータ4の出力トルクをTmg1とし、第2モータジェネレータ5の出力トルクをTmg2とすると、エンジントルクTeは、以下の式(1)を演算することによって求めることができる。
【0054】
Te=−(1+k1)Tmg1+k2×Tmg2 (1)
【0055】
すなわち、ECU32は、式(1)を演算することにより、エンジントルクTeを検出するようになっている。なお、第1モータジェネレータ4の出力トルクTmg1と、第2モータジェネレータ5の出力トルクTmg2とは、各モータジェネレータの三相コイルに流れる電流の値と、各モータジェネレータのトルクとの関係を表すマップを参照することにより、特定することができる。
【0056】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る駆動制御装置による駆動力制限動作について
図3を参照して説明する。なお、以下に説明する駆動力制限動作は、車両100の運転モードがMG回転フィードバックモードにあるときに、繰り返し実行される。
【0057】
まず、ECU32は、ISCモード移行要求があったか否かを判断する(ステップS1)。ここで、ISCモード移行要求がなかったと判断した場合には、ECU32は、駆動力制限動作を終了する。
【0058】
一方、ISCモード移行要求があったと判断した場合には、ECU32は、エンジン2の指示トルクを0に設定する(ステップS2)。次いで、ECU32は、エンジントルクTeが規定トルク未満であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0059】
ここで、エンジントルクTeが規定トルク未満でないと判断した場合には、ECU32は、駆動力制限動作をステップS3に戻す。一方、エンジントルクTeが規定トルク未満であると判断した場合には、ECU32は、車両100の運転モードをISCモードに移行させ(ステップS4)、駆動力制限動作を終了する。
【0060】
図4は、本発明の実施の形態に係る駆動制御装置によって、ISCモード移行要求があったときのエンジン回転速度Ne、エンジントルクTe及び第1モータジェネレータ4の出力トルク(図中、「MG1トルク」と記す)を時間軸上に表している。
【0061】
図4に示すように、本実施の形態は、エンジントルクTeが十分に低下していない時刻t11で、ISCモード移行要求があった場合に、エンジントルクTeが規定トルク未満に低下し、第1モータジェネレータ4の出力トルクも0に近づいた時刻t12で、車両100の運転モードをMG回転フィードバックモードからISCモードに移行させるため、エンジン回転速度Neが一時的に上昇することが抑制される。
【0062】
なお、本実施の形態において、ECU32は、エンジントルクTeを検出するエンジントルク検出部52を構成し、式(1)を演算することにより、エンジントルクTeを検出し、検出したエンジントルクTeが規定トルク未満であるか否かを判断するものとして説明した。
【0063】
これに代えて、ECU32は、ISCモード移行要求に応じてエンジントルクTeが0になるように設定してから規定時間が経過したことを条件として、エンジントルクTeが規定トルク未満であると判断するようにしてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が特許請求の範囲に記載された請求項に含まれることが意図されている。