特許第6237288号(P6237288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237288
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20171120BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20171120BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20171120BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01R11/01 501C
   C09J7/00
   H01B5/16
   H01R11/01 501A
   H01R43/00 H
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-19860(P2014-19860)
(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公開番号】特開2015-147823(P2015-147823A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−052778(JP,A)
【文献】 特開2008−034232(JP,A)
【文献】 特開平08−148211(JP,A)
【文献】 特開2010−199087(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
C09J 7/00
H01B 5/16
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁性樹脂層、中間絶縁性樹脂層及び第2絶縁性樹脂層が順次積層している異方性導電フィルムであって、
第1絶縁性樹脂層が、光重合樹脂で形成され、
第2絶縁性樹脂層が、熱カチオン若しくは熱アニオン重合性樹脂、光カチオン若しくは光アニオン重合性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、又は光ラジカル重合性樹脂で形成され、
中間絶縁性樹脂層が重合開始剤を含まない樹脂で形成され、
第1絶縁性樹脂層の第2絶縁性樹脂層側表面に、異方性導電接続用の導電粒子が単層で配置され、該導電粒子が中間絶縁性樹脂層と接している異方性導電フィルム。
【請求項2】
中間絶縁性樹脂層の厚さが導電粒子の粒子径の1.2倍以下である請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
導電粒子が中間絶縁性樹脂層を貫通している請求項1又は2記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
中間絶縁性樹脂層がフィラーを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
中間絶縁性樹脂層が、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
第1絶縁性樹脂層において、導電性粒子が第2絶縁性樹脂層側に存在する領域の硬化率が、導電粒子が第2絶縁性樹脂層側に存在しない領域の硬化率に対して低い請求項1〜5のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
第1絶縁性樹脂層が、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合性樹脂層を光ラジカル重合させたものである請求項1〜6のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項8】
第1絶縁性樹脂層に、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤が残存している請求項7記載の異方性導電フィルム。
【請求項9】
第1絶縁性樹脂層が、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項10】
第1絶縁性樹脂層が、エポキシ化合物と、熱カチオン若しくは熱アニオン重合開始剤又は光カチオン若しくは光アニオン重合開始剤を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項11】
第2絶縁性樹脂層が、エポキシ化合物と、熱カチオン若しくは熱アニオン重合開始剤又は光カチオン若しくは光アニオン重合開始剤を含有する重合性樹脂、又はアクリレート化合物と、熱ラジカル若しくは光ラジカル重合開始剤を含有する重合性樹脂で形成されている請求項1〜10のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項12】
請求項1記載の異方性導電フィルムの製造方法であって、以下の工程(A)〜(D):
工程(A)
光ラジカル重合性樹脂層に、導電粒子を単層で配置する工程;
工程(B)
導電粒子を配置した光重合性樹脂層に対して紫外線を照射することにより光重合反応させ、表面に導電粒子が固定化された第1絶縁性樹脂層を形成する工程;
工程(C)
熱カチオン若しくは熱アニオン重合性樹脂、光カチオン若しくは光アニオン重合性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、又は光ラジカル重合性樹脂で形成された第2絶縁性樹脂層を形成する工程;
工程(D)
重合開始剤を含まない樹脂で形成された中間絶縁性樹脂層を、第1絶縁性樹脂層の導電粒子側表面に形成する工程;
を有し、
(i)工程(D)を工程(B)の後に行うことにより第1絶縁性樹脂層の導電粒子側表面に中間絶縁性樹脂層を形成し、次いで該中間絶縁性樹脂層と工程(C)で形成した第2絶縁性樹脂層を積層するか、又は
(ii)工程(C)で形成した第2絶縁性樹脂層上に、重合開始剤を含まない樹脂で形成された中間絶縁性樹脂層を形成し、次いで該中間絶縁性樹脂層を、工程(B)で形成した第1絶縁性樹脂層の導電粒子側表面に積層する製造方法。
【請求項13】
中間絶縁性樹脂層の厚みが、導電粒子の粒子径の1.2倍以下である請求項12記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項14】
中間絶縁性樹脂層がフィラーを含有する請求項12又は13に記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項15】
中間絶縁性樹脂層が、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する請求項12〜14のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項16】
工程(B)において、光重合性樹脂層に対して紫外線を導電粒子側から照射する請求項12〜15のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項17】
第1絶縁性樹脂層を形成する光重合性樹脂が、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤を含む請求項12〜16のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項18】
第1絶縁性樹脂層を形成する光重合性樹脂が、さらに熱ラジカル重合開始剤を含有する請求項12〜17のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項19】
第1絶縁性樹脂層を形成する光重合性樹脂が、エポキシ化合物と、光カチオン又は光アニオン重合開始剤を含有する請求項12〜18のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項20】
第1絶縁性樹脂層が、さらに熱カチオン又は熱アニオン重合開始剤を含有する請求項12〜19のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項21】
第2絶縁性樹脂層が、エポキシ化合物と、熱カチオン若しくは熱アニオン重合開始剤又は光カチオン若しくは光アニオン重合開始剤を含有する重合性樹脂、又はアクリレート化合物と熱ラジカル若しくは光ラジカル重合開始剤を含有する重合性樹脂で形成されている請求項12〜20のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれかに記載の異方性導電フィルムで第1電子部品を第2電子部品に異方性導電接続した接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップなどの電子部品の実装に異方性導電フィルムは広く使用されており、近年では、高実装密度への適用の観点から、接続信頼性や絶縁性の向上、導電粒子捕捉率の向上、製造コストの低減等を目的に、単層に配置された異方性導電接続用の導電粒子と2層構造の絶縁性樹脂層で形成された異方性導電フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0003】
この異方性導電フィルムは、粘着層に単層且つ密に導電粒子を配置し、その粘着層を2軸延伸処理することにより導電粒子が配列したシートを形成し、そのシート上の導電粒子を熱硬化性樹脂と潜在性硬化剤とを含有する絶縁性樹脂層に転写し、更に転写した導電粒子上に、熱硬化性樹脂を含有するが潜在性硬化剤を含有しない別の絶縁性樹脂層をラミネートすることにより製造される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4789738号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の異方性導電フィルムは、潜在性硬化剤を含有していない絶縁性樹脂層を使用しているために、異方性導電接続時の加熱により、潜在性硬化剤を含有していない絶縁性樹脂層に比較的大きな樹脂流れが生じ易く、その流れに沿って導電粒子も流れ易くなるため、2軸延伸により導電粒子を単層で均等な間隔に配列させたにもかかわらず、導電粒子捕捉率の低下、ショートの発生(絶縁性の低下)等の問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、単層に配置した導電粒子を有する多層構造の異方性導電フィルムにおいて、良好な導電粒子捕捉率、良好な接続信頼性及び良好な絶縁性を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、光重合性樹脂層の片面に導電粒子を単層で配置し、紫外線を照射することにより光重合樹脂に導電粒子を固定化し、更に固定化した導電粒子の周囲に、導電粒子に加わる応力の緩和層として中間絶縁性樹脂層を設け、その上に、熱又は光により重合する重合性樹脂層が積層している異方性導電フィルムにより、上述の本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、第1絶縁性樹脂層、中間絶縁性樹脂層及び第2絶縁性樹脂層が順次積層している異方性導電フィルムであって、
第1絶縁性樹脂層が、光重合樹脂で形成され、
第2絶縁性樹脂層が、熱カチオン若しくは熱アニオン重合性樹脂、光カチオン若しくは光アニオン重合性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、又は光ラジカル重合性樹脂で形成され、
中間絶縁性樹脂層が重合開始剤を含まない樹脂で形成され、
第1絶縁性樹脂層の第2絶縁性樹脂層側表面に、異方性導電接続用の導電粒子が単層で配置され、該導電粒子が中間絶縁性樹脂層と接している異方性導電フィルムを提供する。
【0009】
なお、第2絶縁性樹脂層は、加熱により重合反応を開始する熱重合開始剤を使用した熱重合性樹脂層であることが好ましいが、光により重合反応を開始する光重合開始剤を使用した光重合性樹脂層であってもよい。熱重合開始剤と光重合開始剤とを併用した熱・光重合性樹脂層であってもよい。
【0010】
また、本発明は、上述の異方性導電フィルムの製造方法であって、以下の工程(A)〜(D):
工程(A)
光重合性樹脂層に、導電粒子を単層で配置する工程;
工程(B)
導電粒子を配置した光重合性樹脂層に対して紫外線を照射することにより光重合反応させ、表面に導電粒子が固定化された第1絶縁性樹脂層を形成する工程;
工程(C)
熱カチオン若しくは熱アニオン重合性樹脂、光カチオン若しくは光アニオン重合性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、又は光ラジカル重合性樹脂で形成された第2絶縁性樹脂層を形成する工程;
工程(D)
重合開始剤を含まない樹脂で形成された中間絶縁性樹脂層を、第1絶縁性樹脂層の導電粒子側表面に形成する工程;
を有し、
(i)工程(D)を工程(B)の後に行うことにより第1絶縁性樹脂層の導電粒子側表面に中間絶縁性樹脂層を形成し、次いで該中間絶縁性樹脂層と工程(C)で形成した第2絶縁性樹脂層を積層するか、又は
(ii)工程(C)で形成した第2絶縁性樹脂層上に、重合開始剤を含まない樹脂で形成された中間絶縁性樹脂層を形成し、次いで該中間絶縁性樹脂層を、工程(B)で形成した第1絶縁性樹脂層の導電粒子側表面に積層する製造方法を提供する。
【0011】
加えて、本発明は、上述の異方性導電フィルムで第1電子部品を第2電子部品に異方性導電接続した接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の異方性導電フィルムは、光重合性樹脂層を光重合させた第1絶縁性樹脂層と、重合開始剤を含まない樹脂で形成された中間絶縁性樹脂層、熱又は光で重合する第2絶縁性樹脂層が順次積層を有しており、更に、第1絶縁性樹脂層の第2絶縁性樹脂層側表面には、異方性導電接続用の導電粒子が単層で配置されている。このため、導電粒子を、光重合した第1絶縁性樹脂層よってしっかりと固定化できる。しかも、導電粒子の周囲には中間絶縁性樹脂層が設けられており、この中間絶縁性樹脂層が、異方性導電フィルムの巻き取り時、巻出時、搬送時、異方性導電接続工程でのフィルムの引き出し時等に導電粒子に加わる応力を緩和する。したがって、本発明の異方性導電フィルムは、良好な導電粒子捕捉率、導通信頼性、及び低いショート発生率を実現することができる。
【0013】
特に、第1絶縁性樹脂層を形成するにあたり、光重合性樹脂に紫外線を導電粒子側から照射すると、導電粒子の下方(裏側)の光重合性樹脂は、導電粒子の影になるために紫外線が十分に照射されなくなる。そのため、導電粒子の影になった光重合樹脂は、影にならなかった光重合樹脂に対して相対的に硬化率が低くなり、異方性導電接続時に導電粒子が良好に押し込まれ、より一層、良好な導通信頼性、絶縁性を実現することができる。
【0014】
一方、第1絶縁性樹脂層を形成するにあたり、光重合性樹脂に導電粒子の反対側、ないしは両面側から紫外線を照射すると導電粒子の固定化が促進され、異方性導電フィルムの製造ラインで安定な品質を確保することができる。また、異方性導電フィルムの製造後のリールへの巻き取りや、異方導電接続時におけるフィルムのリールからの引き出し工程で異方性導電フィルムに不要な外部応力がかかっても、異方性導電接続前の導電粒子の配列に外部応力の影響が及びにくくなる。
【0015】
なお、本発明の異方性導電フィルムにおいて、第2絶縁性樹脂層が熱で反応する重合性樹脂で形成されている場合、それを用いた電子部品の異方性導電接続は、通常の異方性導電フィルムを用いる接続方法と同様に行うことができる。
一方、本発明の異方性導電フィルムにおいて、第2絶縁性樹脂層が光で反応する重合性樹脂で形成されている場合、それを用いた第1電子部品と第2電子部品の異方性導電接続は、接続ツールによる押し込みを、光反応が終了するまでに行えばよい。この場合においても、接続ツール等は樹脂流動や粒子の押し込みを促進するため加熱してもよい。また、第2絶縁性樹脂層において、熱で反応する重合性樹脂と光で反応する重合性樹脂が併用されている場合も、上記と同様に光反応が終了するまでに接続ツールによる押し込みを行い、かつ加熱を行えばよい。
【0016】
また、第1電子部品と第2電子部品を、光反応を利用して異方性導電接続する場合は、透光性を有する電子部品側から光照射すればよい
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、本発明の異方性導電フィルムの断面図である。
図1B図1Bは、本発明の異方性導電フィルムの変形態様の断面図である。
図1C図1Cは、本発明の異方性導電フィルムの変形態様の断面図である。
図2図2は、本発明の異方性導電フィルムの製造方法における工程(A)の説明図である。
図3A図3Aは、本発明の異方性導電フィルムの製造方法における工程(B)の説明図である。
図3B図3Bは、本発明の異方性導電フィルムの製造方法における工程(B)の説明図である。
図4図4は、本発明の異方性導電フィルムの製造方法における工程(C)の説明図である。
図5図5は、本発明の異方性導電フィルムの製造方法において工程(D)を方法(i)で行った場合の説明図である。
図6図6は、方法(i)で行った工程(D)の後工程の説明図である。
図7図7は、方法(i)で行った工程(D)の後工程で得られた異方性導電フィルムの断面図である。
図8図8は、本発明の異方性導電フィルムの製造において工程(D)を方法(ii)で行った場合の説明図である。
図9図9は、方法(ii)で行った工程(D)の後工程の説明図である。
図10図10は、方法(ii)で行った工程(D)の後工程で得られた異方性導電フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の異方性導電フィルムの一例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表わしている。
<<異方性導電フィルム>>
【0019】
図1Aは、本発明の一実施例の異方性導電フィルム1の断面図である。この異方性導電フィルム1では、第1絶縁性樹脂層2、中間絶縁性樹脂層4及び第2絶縁性樹脂層3が順次積層され、異方性導電接続用の導電粒子10が、第1絶縁性樹脂層2の第2絶縁性樹脂層3側の表面2aに単層で、中間絶縁性樹脂層4の少なくとも第1絶縁性樹脂層2側の面を貫くように配置され、該中間絶縁性樹脂層4と接している。
【0020】
<第1絶縁性樹脂層2>
本発明の異方性導電フィルム1を構成する第1絶縁性樹脂層2は、光重合樹脂で形成されている。より具体的には、例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合性樹脂層を光ラジカル重合させたもので形成されている。第1絶縁性樹脂層2が光重合していることにより、導電粒子10を適度に固定化できる。即ち、異方性導電接続時に異方性導電フィルム1が加熱されても第1絶縁性樹脂層2は流れ難いので、樹脂流れにより導電粒子10が不用に流されてショートが発生することを大きく抑制することができる。
【0021】
特に、本実施例の異方性導電フィルム1では、第1絶縁性樹脂層2において、導電性粒子10が第2絶縁性樹脂層3側に存在する領域2X(即ち、導電粒子10と第1絶縁性樹脂層2の外側表面2bとの間に位置する領域)の硬化率が、導電粒子10が第2絶縁性樹脂層3側に存在しない領域2Yの硬化率に比して低いことが異方性導電接続の上では好ましい。第1絶縁性樹脂層2の領域2Xには、光硬化が進行していないアクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤が残存していてもよい。異方性導電フィルム1がこのような領域2Xを有することにより、異方性導電接続時に領域2Xの絶縁性樹脂が排除されやすくなるので、導電粒子10が第1絶縁性樹脂層2の平面方向には移動しにくいが、厚み方向には良好に押し込まれるようになる。従って、導電粒子捕捉率を向上させ、さらに接続信頼性も向上させ、ショートの発生率を低下させることができる。
ここで、硬化率はビニル基の減少比率と定義される数値であり、第1絶縁性樹脂層の領域2Xの硬化率は好ましくは40〜80%であり、領域2Yの硬化率は好ましくは70〜100%である。
【0022】
一方、第1接続層部分2Xと2Yに硬化率の差が実質的にないことは、異方性導電フィルムの製品品質を安定させる上では好ましい。即ち、異方性導電フィルムの製造工程において、導電粒子の固定化が促進されると、安定な品質を確保することができる。また、異方性導電フィルムは、一般的に長尺に製造され、リールに巻き取られ、異方性導電接続に使用するときにはリールから引き出されるので、リールへの巻き始めから巻き終わりまで、導電粒子にかかる圧力を均質化させることにより、導電粒子の配列の乱れを防止することができる。
【0023】
(アクリレート化合物)
アクリレート単位となるアクリレート化合物としては、従来公知の光重合性アクリレートを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート(ここで、(メタ)アクリレートにはアクリレートとメタクリレートとが包含される)、二官能以上の多官能(メタ)アクリレートを使用することができる。本発明においては、異方性導電接続時に絶縁性樹脂層を熱硬化できるように、アクリル系モノマーの少なくとも一部に多官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0024】
第1絶縁性樹脂層2におけるアクリレート化合物の含有量は、少なすぎると異方性導電接続時に第1絶縁性樹脂層2と第2絶縁性樹脂層3との粘度差を付けにくくなる傾向があり、多すぎると硬化収縮が大きく作業性が低下する傾向があるので、好ましくは2〜70質量%、より好ましくは10〜50質量%である。
【0025】
(重合開始剤)
第1絶縁性樹脂層の形成に使用する光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、リン系光重合開始剤等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
また、光重合開始剤に加えて、熱ラジカル重合開始剤を使用してもよい。熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ系化合物等をあげる事ができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0026】
光重合開始剤の使用量は、アクリレート化合物100質量部に対し、少なすぎると光重合が十分に進行せず、多すぎると剛性低下の原因となるので、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは0.5〜15質量部である。
【0027】
(その他の樹脂と重合開始剤)
第1絶縁性樹脂層2には、必要に応じて、エポキシ化合物と、熱カチオン若しくは熱アニオン重合開始剤又は光カチオン若しくは光アニオン重合開始剤を含有させてもよい。これにより、層間剥離強度を向上させることができる。エポキシ化合物と共に使用する重合開始剤については、第2絶縁性樹脂層3で説明する。第1絶縁性樹脂層2には、必要に応じて、更にフェノキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などの膜形成樹脂を併用することができる。
【0028】
第1絶縁性樹脂層2の層厚は、薄すぎると導電粒子捕捉率が低下する傾向があり、厚すぎると導通抵抗が高くなる傾向があるので、好ましくは1.0〜6.0μm、より好ましくは2.0〜5.0μmである。
【0029】
第1絶縁性樹脂層2の形成は、光重合性樹脂と光重合開始剤とを含有する光重合性樹脂層に、フィルム転写法、金型転写法、インクジェット法、静電付着法等の手法により導電粒子を単層に付着させ、紫外線を照射することにより行うことができる。この場合、紫外線照射は、導電粒子側から照射することが好ましいが、導電粒子と反対側から照射してもよい。特に、紫外線を導電粒子側からのみ照射することが、第1絶縁性樹脂層の領域2Xの硬化率を、領域2Yの硬化率に対して相対的に低く抑制することができる点から好ましい。
【0030】
光重合後の第1絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度は、第2絶縁性樹脂層3の最低溶融粘度よりも高いことが好ましく、具体的にはレオメータで測定した[第1絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度(mPa・s)]/[第2絶縁性樹脂層3の最低溶融粘度(mPa・s)]の数値が、好ましくは1〜1000、より好ましくは4〜400である。なお、それぞれの好ましい最低溶融粘度は、第1絶縁性樹脂層2については100〜100000mPa・s、より好ましくは500〜50000mPa・sである。第2絶縁性樹脂層3については好ましくは0.1〜10000mPa・s、より好ましくは0.5〜1000mPa・sである。
【0031】
<導電粒子>
導電粒子10としては、従来公知の異方性導電フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えばニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。
【0032】
導電粒子の平均粒径としては、小さすぎると配線の高さのばらつきを吸収できず抵抗が高くなる傾向があり、大きすぎてもショートの原因となる傾向があるので、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜6μmである。
【0033】
このような導電粒子の第1絶縁性樹脂層2中の粒子量は、少なすぎると粒子捕捉数が低下して異方性導電接続が難しくなり、多すぎるとショートすることが懸念されるので、好ましくは1平方mm当たり50〜50000個、より好ましくは200〜30000個である。
【0034】
第1の絶縁性樹脂層2の厚み方向における導電粒子10の位置は、図1Aに示すように、第1の絶縁性樹脂層2内に埋没せずに中間絶縁性樹脂層4を貫通し、第2絶縁性樹脂層3に食い込んでいることが好ましい。即ち、この場合は導電粒子10が、第1の絶縁性樹脂層2と第2絶縁性樹脂層3にまたがるようになる。導電粒子10が中間絶縁性樹脂層4を貫通していることにより、異方性導電接続時の導電粒子10の変形を均一にし、不要な粒子ズレを防止することができる。
【0035】
また、図1Aに示すように、導電粒子10が中間絶縁性樹脂層4を貫通して第2絶縁性樹脂層3に食い込んでいる場合、中間絶縁性樹脂層4及び第2絶縁性樹脂層への食い込みの程度(即ち、第1絶縁性樹脂層2から突出している程度)は、導電粒子捕捉率と導通抵抗のバランスから、好ましくは導電粒子10の平均粒子径の10〜90%、より好ましくは20〜80%である。
【0036】
一方、導電粒子10の、第1絶縁性樹脂層2から突出している部分は、中間絶縁性樹脂層4で覆われていてもよく、例えば、図1Bに示すように、導電粒子10が中間絶縁性樹脂層4を貫通せずに、第1絶縁性樹脂層2と中間絶縁性樹脂層4にまたがっていてもよい。このように中間絶縁性樹脂層4が導電粒子10の上部を覆っていても、異方性導電接続の押し込みにおいて、導電粒子10の変形は阻害されにくい。この場合、導電粒子10の第1絶縁性樹脂層2側に突出している部分は、該導電粒子の粒子径の20%以下、より好ましくは10%以下が好ましい。
【0037】
また、導電粒子10の、第1絶縁性樹脂層2から突出している部分が、中間絶縁性樹脂層4で覆われている態様としては、図1Cに示すように、第1絶縁性樹脂層2から突出している導電粒子10が、導電粒子径よりも薄い厚みの中間絶縁性樹脂層4により、導電粒子10の隆起に沿って覆われていてもよい。図1Cの態様では、導電粒子10の形状に追随して中間絶縁性樹脂層4が設けられているため、異方性導電接続の押し込みにおける導電粒子10の変形阻害をより精緻に制御できる。
【0038】
これに対し、導電粒子10が第1絶縁性樹脂層2に埋没していると、電子部品を異方性導電接続する際に、導電粒子10の変形が阻害されて押し込みが不均一になる懸念が生じるため好ましくない。
【0039】
<中間絶縁性樹脂層4>
中間絶縁性樹脂層4は、異方性導電フィルム1の巻き取り時、巻出時、搬送時、異方性導電接続工程の引き出し時等に導電粒子に加わる応力を緩和する層として設けられている。中間絶縁性樹脂層4が導電粒子10の周囲に設けられ、導電粒子10に蓄積された応力が緩和されていると、異方性導電接続時に、樹脂流動や導電粒子10の圧縮で生じる導電粒子の接続平面方向の位置ズレを抑制することができる。したがって、本発明の異方性導電フィルム1は、良好な導電粒子捕捉率、導通信頼性、低いショート発生率を実現することができる。
【0040】
中間絶縁性樹脂層4の厚みは、導電粒子10の粒子径の好ましくは1.2倍以下、より好ましくは1倍以下、更により好ましくは0.7倍以下である。この範囲にあると、異方性導電接続における導電粒子10の押し込みにおいて、変形の不均一化や、バンプ端部において導電粒子の捕捉が困難になるなどの品質安定性上の問題が起こりにくい。また、長尺の異方性導電フィルムをリールなどに巻き取る場合に、導電粒子にかかる圧力を均質化させ、導電粒子の配列の乱れを予防することができる。なお、製造条件をより容易にするため、中間絶縁性樹脂層4は導電粒子10と略同一の厚みであってもよい。
【0041】
異方性導電接続時の導電粒子にかかる応力を吸収しやすくするため、中間絶縁性樹脂層4は重合開始剤を含有しない樹脂から形成する。中間絶縁性樹脂層4を形成する樹脂としては、他の層の樹脂成分と同程度の弾性率であることが好ましく、重合性樹脂であってもよい。例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等を使用することができる。
【0042】
また、中間絶縁性樹脂層4には、異方性導電接続時の不用な導電粒子の流れを効果的に抑制するため、シリカ等のフィラーを含有させることが好ましい。中間絶縁性樹脂層4におけるフィラーの含有量は、0.5〜20質量%とすることが好ましい。
【0043】
<第2絶縁性樹脂層3>
第2絶縁性樹脂層3は、熱カチオン若しくは熱アニオン重合性樹脂、光カチオン若しくは光アニオン重合性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、又は光ラジカル重合性樹脂で形成される。より具体的には、エポキシ化合物と、熱カチオン若しくは熱アニオン重合開始剤又は光カチオン若しくは光アニオン重合開始剤とを含有する、熱又は光により重合する重合性樹脂層、又はアクリレート化合物と、熱ラジカル又は光ラジカル重合開始剤とを含有する熱又は光によりラジカル重合する重合性樹脂層からなるものである。
(エポキシ化合物)
第2絶縁性樹脂層3を形成するエポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物もしくは樹脂が好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。
【0044】
(熱カチオン重合開始剤)
第2絶縁性樹脂層3を形成する熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0045】
熱カチオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0046】
(熱アニオン重合開始剤)
第2絶縁性樹脂層3を形成する熱アニオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱アニオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により塩基を発生する脂肪族アミン系化合物、芳香族アミン系化合物、二級又は三級アミン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリメルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素−アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド等を用いることができ、特に温度に対して良好な潜在性を示すカプセル化イミダゾール系化合物を好ましく使用することができる。
【0047】
熱アニオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0048】
(光カチオン重合開始剤及び光アニオン重合開始剤)
エポキシ化合物用の光カチオン重合開始剤又は光アニオン重合開始剤としては、公知のものを適宜使用することができる。
【0049】
(アクリレート化合物)
第2絶縁性樹脂層3を形成するアクリレート化合物は、第1絶縁性樹脂層2に関して説明したアクリレート化合物の中から適宜選択して使用することができる。
【0050】
(熱ラジカル重合開始剤)
また、第2絶縁性樹脂層3にアクリレート化合物を含有させる場合に、アクリレート化合物と共に使用する熱ラジカル重合開始剤としては、第1絶縁性樹脂層2に関して説明した熱ラジカル重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。
【0051】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0052】
(光ラジカル重合開始剤)
アクリレート化合物用の光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0053】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0054】
(第2絶縁性樹脂層3の層厚)
第2絶縁性樹脂層3の層厚は、異方性導電接続時の導電粒子捕捉性の点から、好ましくは3〜20μm、より好ましくは5〜15μmである。
【0055】
<<異方性導電フィルムの製造方法>>
本発明の異方性導電フィルムは、次の工程(A)〜(D)を行い、製造することができる。
【0056】
(工程(A))
図2に示すように、必要に応じて剥離フィルム30上に形成した光重合性樹脂層20に、導電粒子10を単層で配置する。導電粒子10を単層で光重合性樹脂層20に配置する方法としては、特に制限はなく、特許第4789738号の実施例1の導電粒子を粘着剤で固定した樹脂フィルムの2軸延伸操作を利用する方法や、特開2010−33793号公報の金型を使用する方法等を採用することができる。なお、導電粒子10の配置としては、縦横に所定間隔で配列させることが好ましい。また、接続対象のサイズ、導通信頼性、絶縁性、導電粒子捕捉率等を考慮し、2次元的な最近接粒子間距離を1〜100μm程度とすることが好ましい。
【0057】
(工程(B))
次に、導電粒子10が配列した光重合性樹脂層20に対して紫外線(UV)を照射することにより光重合反応させ、表面に導電粒子10が固定化された第1絶縁性樹脂層2を形成する。この場合、好ましくは図3Aに示すように、導電粒子10側から紫外線(UV)を照射する。これにより、図3Bに示すように、第1絶縁性樹脂層2において、導電性粒子10が第2絶縁性樹脂層3側に存在する領域2X(第1絶縁性樹脂層2の剥離フィルム30側表面2bと導電粒子10との間に位置する領域)の第1絶縁性樹脂層の硬化率を、導電粒子10が第2絶縁性樹脂層3側に存在しない領域2Yの硬化率よりも低くすることができる。したがって異方導電接続時の導電粒子10の押し込みが容易になり、且つ導電粒子10の接続平面方向の流動を抑制することもできる。
【0058】
(工程(C))
一方、図4に示すように剥離フィルム31上に、熱カチオン若しくは熱アニオン重合性樹脂、光カチオン若しくは光アニオン重合性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、又は光ラジカル重合性樹脂で形成された第2絶縁性樹脂層3を常法により形成する。
【0059】
(工程(D))
工程(B)で導電粒子10を固定した第1絶縁性樹脂層2の、導電粒子10側表面に中間絶縁性樹脂層4を形成する。
この工程(D)は次の(i)又は(ii)の方法で行うことができる。
【0060】
方法(i)
図5に示すように、工程(B)で導電粒子10を固定した第1絶縁性樹脂層2の、導電粒子10側表面に中間絶縁性樹脂層4を形成する。より具体的には、重合開始剤を含まず、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹枝、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有し、好ましくはシリカ等のフィラーを含有する中間絶縁性樹脂層形成用塗液を第1絶縁性樹脂層2の導電粒子10側表面に塗布又は噴霧し、中間絶縁性樹脂層4を形成する。
その後、図6に示すように、中間絶縁性樹脂層4と工程(C)で形成した第2絶縁性樹脂層3を対向させ、図7に示すように熱圧着する。この場合、熱圧着により過大な熱重合が生じないようにする。そして剥離フィルム30、31を取り除くことにより図1Aの異方性導電フィルム1を得ることができる。
【0061】
方法(ii)
工程(C)で形成した第2絶縁性樹脂層3の表面に、(i)と同様の中間絶縁性樹脂層形成用塗液を塗布又は噴霧することにより、図8に示すように、第2絶縁性樹脂層3上に中間絶縁性樹脂層4を形成する。次いで、図9に示すように、中間絶縁性樹脂層4と、工程(B)で形成した第1絶縁性樹脂層2上の導電粒子10とを対向させ、図10に示すように熱圧着する。なお、図10では、導電粒子10が中間絶縁性樹脂層4を貫通していない態様を示した。剥離フィルム30、31を取り除くことにより図1Cに示した異方性導電フィルム1を得ることができる。
【0062】
<<接続構造体>>
本発明の異方性導電フィルム1は、ICチップ、ICモジュールなどの第1電子部品と、フレキシブル基板、ガラス基板などの第2電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく適用することができる。このようにして得られる接続構造体も本発明の一部である。なお、異方性導電フィルムの第1絶縁性樹脂層2側をフレキシブル基板等の第2電子部品側に配し、第2絶縁性樹脂層3側をICチップなどの第1電子部品側に配することが、接続信頼性を高める点から好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0064】
実施例1〜10、比較例1
特許第4789738号の実施例1の操作に準じて導電粒子が単層に配列しており、表1に示す配合(質量部)に従って形成した第1絶縁性樹脂層と第2絶縁性樹脂層を有する比較例1の異方性導電フィルム、さらに中間絶縁性樹脂層を有し、導電粒子が図1Aに示すように中間絶縁性樹脂層を突き抜けている実施例1〜10の異方性導電フィルムを作製した。
【0065】
具体的には、まず、アクリレート化合物及び光ラジカル重合開始剤等を酢酸エチル又はトルエンにて固形分が50質量%となるように混合液を調製した。この混合液を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥厚が3μmとなるように塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、第1絶縁性樹脂層の前駆層である光ラジカル重合性樹脂層を形成した。
【0066】
次に、得られた光ラジカル重合性樹脂層の表面に、平均粒子径4μmの導電粒子(Ni/Auメッキ樹脂粒子、AUL704、積水化学工業(株))を、導電粒子間の最近接距離を4μmとなるように単層に格子状に配列させた。更に、この導電粒子側から光ラジカル重合性樹脂層に対し、波長365nm、積算光量4000mJ/cmの紫外線を照射することにより、表面に導電粒子が固定された第1絶縁性樹脂層を形成した。
一方、表1に示した配合で中間絶縁性樹脂層用塗料を調製し、これを導電粒子が固定されている第1絶縁性樹脂層に塗布することにより、中間絶縁性樹脂層を形成した(実施例1〜10)。なお、比較例1では、中間絶縁性樹脂層の形成を省略した。
【0067】
また、第2絶縁性樹脂層を形成するために、熱硬化性樹脂及び重合開始剤等を酢酸エチル又はトルエンにて固形分が50質量%となるように混合液を調製した。この混合液を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥厚が12μmとなるように塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、第2絶縁性樹脂層を形成した。
【0068】
このようにして得られた、導電粒子が固定されている第1絶縁性樹脂層と、第2絶縁性樹脂層とを、導電粒子が内側となるようにラミネートすることにより実施例1〜10及び比較例1の異方性導電フィルムを得た。
【0069】
実施例11
光ラジカル重合型樹脂層への紫外線照射を、導電粒子側と、導電粒子と反対側から、積算光量2000mJ/cmずつ行う以外は実施例2と同様にして異方性導電フィルムを得た。
【0070】
実施例12
中間絶縁性樹脂層の厚みを5μmとする以外は実施例2と同様にして異方性導電フィルムを得た。この異方性導電フィルムでは、導電粒子が中間絶縁性樹脂層を突き抜けていない。
【0071】
実施例13
中間絶縁性樹脂層の厚みを5μmとする以外は実施例11と同様にして異方性導電フィルムを得た。この異方性導電フィルムでは、導電粒子が中間絶縁性樹脂層を突き抜けていない。
【0072】
評価
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを用いて、0.5×1.8×20.0mmの大きさのICチップ(バンプサイズ30×85μm、バンプ高さ15μm、バンプピッチ50μm)を、0.5×50×30mmの大きさのコーニング社製のガラス配線基板(1737F)に180℃、80MPa、5秒という条件で実装して接続構造体サンプルを得た。
【0073】
得られた接続構造体サンプルについて、以下に説明するように、「実装粒子捕捉効率」、「初期導通性」、「導通信頼性」、「反り」及び「ショート発生率」を試験評価した。結果を表1に示す。
【0074】
「実装粒子捕捉効率」
“加熱・加圧前の接続構造体サンプルのバンプ上に存在する導電粒子の数”に対する、“加熱・加圧後の接続構造体サンプルのバンプ上で実際に捕捉されている導電粒子の数”の割合(%)を以下の式により求め、実装粒子捕捉効率とした。
なお、加熱加圧前の接続構造体サンプルのバンプ上に存在する導電粒子の数は、異方性導電接続の加熱・加圧前における異方性導電フィルムの導電粒子の個数密度とバンプ面積から算出し、加熱加圧後の接続構造体サンプルのバンプ上に存在する導電粒子の数は光学顕微鏡の観察により求めた。
実用上、50%以上であることが好ましい。
【0075】
【0076】
「初期導通性」
接続構造体サンプルの導通抵抗を測定した。
【0077】
「導通信頼性」
接続構造体サンプルを、85℃、85%RHの高温高湿環境下に500時間放置した後の導通抵抗を、初期導通性と同様に測定した。この導通抵抗は、接続した電子部品の実用的な導通安定性の点から、5Ω以上であると好ましくない。
【0078】
「反り」
ICチップが実装されていない側のガラス配線基板の表面の、反対面のICチップの幅に相当する巾20mmにおける反りを三次元側長機((株)キーエンス)を用いて測定した。
反りは、実用上15μm未満であることが好ましい。
【0079】
「ショート発生率」
ショート発生率の評価用ICとして、7.5μmスペースの櫛歯TEGパターンのIC(外径1.5×13mm、厚み0.5mm、Bump仕様:金メッキ、高さ15μm、サイズ25×140μm、Bump間Gap7.5μm)を用意し、各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、ショート発生率の評価用ICと、それに対応したパターンのガラス基板との間に挟み、初期導通性と同様の条件で加熱加圧して接続体を得た。そして、その接続体のショート発生率を、「ショート発生数/7.5μmスペース総数」により算出した。ショート発生率は、実用上、100ppm以下であることが望ましい。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から分かるように、実施例1〜10の異方性導電フィルムは、実装捕捉効率、初期導通性、導通信頼性、反り、ショート発生率の全ての評価項目について実用上好ましい結果を示した。
実施例11、13の接続構造体は、実施例2に対して実装粒子補足効率がやや劣っていたが、実用上問題はなく、初期導通性、導通信頼性、反り、ショート発生率については実施例2と同様に好ましい結果を示した。
また、実施例12の接続構造体では、顕微鏡観察によりバンプに接続している導電粒子の形状が、実施例2に比べるとやや不均一であったが、実装捕捉効率、初期導通性、導通信頼性、反り、ショート発生率の全ての評価項目について実用上好ましい結果を示した。
【0082】
それに対し、比較例1の異方性導電フィルムは、中間絶縁性樹脂層が無いために、実装粒子捕捉効率が低く、反りも大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の異方性導電フィルムは、光ラジカル重合性樹脂層を光ラジカル重合させた第1絶縁性樹脂層と、熱カチオン若しくは熱アニオン重合性樹脂、光カチオン若しくは光アニオン重合性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、又は光ラジカル重合性樹脂で形成された第2絶縁性樹脂層が積層され、第1絶縁性樹脂層の第2絶縁性樹脂層側表面に導電粒子が単層で配置されているので、良好な導電粒子捕捉率による優れた初期導通性、導通信頼性、低いショート発生率を示す。さらに、第1絶縁性樹脂層と第2絶縁性樹脂層の間には、中間絶縁性樹脂層が導電粒子を囲むように積層されているため、導電粒子にかかる応力が緩和され、異方性導電接続時の導電粒子捕捉率が一層向上する。よって、本発明の異方性導電フィルムは、ICチップなどの電子部品の配線基板への異方性導電接続に有用である。電子部品の配線は狭小化が進んでおり、本発明は、狭小化した電子部品を異方性導電接続する場合に特に有用となる。
【符号の説明】
【0084】
1 異方性導電フィルム
2 第1絶縁性樹脂層
2a 第1絶縁性樹脂層の表面
2b 第1絶縁性樹脂層の表面
2X 第1絶縁性樹脂層において、第2絶縁性樹脂層側に導電粒子が存在する領域
2Y 第1絶縁性樹脂層において、第2絶縁性樹脂層側に導電粒子が存在しない領域
3 第2絶縁性樹脂層
4 中間絶縁性樹脂層
10 導電粒子
20 光重合性樹脂層
30 剥離フィルム
31 剥離フィルム
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10