特許第6237289号(P6237289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237289
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】転写ベルト
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G03G15/16
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-20156(P2014-20156)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-148660(P2015-148660A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】張 万里
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】神田 順治
(72)【発明者】
【氏名】大田 和督
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−328165(JP,A)
【文献】 特開2002−006643(JP,A)
【文献】 特開2013−092667(JP,A)
【文献】 特開2014−238472(JP,A)
【文献】 特開2014−126788(JP,A)
【文献】 特開2002−214927(JP,A)
【文献】 特開2011−242724(JP,A)
【文献】 特開平11−174706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式を用いた画像形成装置に用いる転写ベルトであって、
基材層と、この基材層上に積層された弾性層とを有し、
シランカップリング剤で表面処理された無機粒子が、前記弾性層の表面に少なくとも一部が露出するように埋設されており、
前記弾性層がクロロプレンゴム又はアクリルニトリル−ブタジエンゴムを含み、
前記シランカップリング剤が、前記弾性層の素材の主鎖又は側鎖と反応する官能基を有し、
前記シランカップリング剤の有する官能基がジスルフィド基又はメルカプト基である
ことを特徴とする転写ベルト。
【請求項2】
前記無機粒子が、表面に水酸基を有するものである請求項記載の転写ベルト。
【請求項3】
前記弾性層の表面に対する純水の接触角が80°以上である請求項1又は2記載の転写ベルト。
【請求項4】
像担持体と、この像担持体の表面を一様に帯電させる帯電装置と、帯電された前記像担持体に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナーで可視像化する現像装置と、可視像化されたトナー像が一次転写される中間転写ベルトと、この中間転写ベルト上に転写されたトナー像を被転写部材に二次転写する転写装置とを備え、
前記中間転写ベルトとして、請求項1〜のいずれかに記載の転写ベルトを用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写ベルトに関し、より詳細には、電子写真方式を用いた画像形成装置の中間転写ベルトや二次転写ベルトなどに用いられる転写ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー画像を中間転写ベルト上に重ね合わせてフルカラー画像とした後、用紙などの被転写部材に転写する方式がある。また、用紙などの被転写部材にトナー画像を転写する際の転写部材として転写ベルトを用いる方式もある。
【0003】
従来、これらの転写ベルトの材料として、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂などが用いられていたが、これらの樹脂は表面硬度が高く、転写する際にトナー画像に高い圧力がかかり、トナー画像の一部が凝集して転写せず、中抜け画像が生じることがあった。また、エンポス紙や和紙、クラフト紙など表面性の荒い凹凸のある被転写部材にトナー画像を転写する場合、被転写部材の凹凸上の濃淡ムラや色調ムラが生じることがあった。
【0004】
そこで、中抜け画像や凹凸被転写部材の転写ムラを防止するため、基材層の表面に柔軟性のある弾性層を積層した転写ベルトが提案され使用されている。ところが、弾性層を設けた転写ベルトでは、図5に示すように、弾性層52の粘着性が高いため、トナーが転写ベルト5aから離れ難く転写不良という新たな不具合が生じる。
【0005】
特許文献1では、微小粒子を含有する表面層をベルト表面に形成し、中抜け画像の防止や転写性の向上を図る技術が提案されている。また、特許文献2では、弾性層の表面に樹脂微粒子を埋設させて、トナーの離型性を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-161036号公報
【特許文献2】特開2013-92667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案の技術では、図6に示すように、中間転写ベルト5bの比較的に硬い表面層55が、柔らかい弾性層54の変形に追従できずに割れてしまい、表面層55の効果が薄れて画質が悪くなることがある。
【0008】
また、特許文献2に提案では、図7に示すように、樹脂微粒子56と弾性層52との接着性が弱いため、転写ベルト5cが曲がるときなどの弾性層52の変形により、樹脂微粒子56を保持する弾性層52の穴が広がって、樹脂微粒子56が穴から剥がれ落ちることがある。長期間の使用により樹脂微粒子56の離脱が多くなると、転写ベルト5c表面の粘着性が高<なってトナーの離型性が低下し画質が悪<なる。
【0009】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベルトの割れや微粒子の弾性層からの離脱を抑制し、長期間にわたってトナー画像が安定して良好に転写される転写ベルトを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、中抜け画像などの画像不良が生じず、表面性の荒い凹凸のある被転写部材であっても、濃淡ムラや色調ムラが生じることのない画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、電子写真方式を用いた画像形成装置に用いる転写ベルトであって、基材層と、この基材層上に積層された弾性層とを有し、シランカップリング剤で表面処理された無機粒子が、前記弾性層の表面に少なくとも一部が露出するように埋設されていることを特徴とする転写ベルトが提供される。
【0012】
前記弾性層は、クロロプレンゴム又はアクリルニトリル−ブタジエンゴムを含むものが好ましい。
【0013】
また、前記無機粒子としては、表面に水酸基を有するものが好ましい。
【0014】
シランカップリング剤としては、前記弾性層の素材の主鎖又は側鎖と反応する官能基を有するものが好ましい。
【0015】
前記シランカップリング剤の前記官能基は、ジスルフィド基又はメルカプト基であるのが好ましい。
【0016】
前記弾性層の表面に対する純水の接触角が80°以上であるのが好ましい。
【0017】
また、本発明によれば、像担持体と、この像担持体の表面を一様に帯電させる帯電装置と、帯電された前記像担持体に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナーで可視像化する現像装置と、可視像化されたトナー像が一次転写される中間転写ベルトと、この中間転写ベルト上に転写されたトナー像を被転写部材に二次転写する転写装置とを備え、前記中間転写ベルトとして、前記のいずれかに記載の転写ベルトを用いることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の転写ベルトでは、ベルトの割れや無機粒子の弾性層からの離脱が大幅に抑えられ、長期間にわたってトナー画像が安定して良好に転写される。
【0019】
また、本発明の画像形成装置では、中抜け画像などの画像不良が生じず、表面性の荒い凹凸のある被転写部材であっても、濃淡ムラや色調ムラが生じることのない高画質画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概説図である。
図2】本発明に係る転写ベルトの部分断面図である。
図3】シランカップリング剤による無機粒子と弾性層との結合機構を説明する図である
図4】無機粒子による中間転写ベルトのトナー離型性向上機構を説明する図である。
図5】従来の中間転写ベルトの問題を説明する図である。
図6】従来の中間転写ベルトの問題を説明する図である。
図7】従来の中間転写ベルトの問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る転写ベルト及び画像形成装置について図に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0022】
図1に、本発明に係る画像形成装置の一例を示す所謂タンデム方式のカラープリンターの概説図を示す。この図に示すプリンター1は、無端状の中間転写ベルト5を有する。中間転写ベルト5は、ローラ31,32,33に張架されている。ローラ31は不図示のモータに連結されており、モータの駆動によってローラ31は反時計回りに回転し、これによって中間転写ベルト5とこれに接するローラ32,33は従動回転する。ローラ33は、不図示の付勢手段によって中間転写ベルト5を外方へ付勢し中間転写ベルト5に張力を与えている。ローラ31に支持されているベルト部分の外側には、2次転写ローラ34が圧接している。この2次転写ローラ34と中間転写ベルト5とのニップ部(2次転写領域)において中間転写ベルト5上に形成されたトナー画像が、搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0023】
また、ローラ32に支持されているベルト部分の外側には、中間転写ベルト5の表面をクリーニングするベルトクリーニングブレード35が設けられている。ベルトクリーニングブレード35は、中間転写ベルト5を介してローラ32に圧接し、中間転写ベルト5との当接部で未転写トナーを除去する。除去された未転写トナーは不図示の回収容器に搬送され回収される。
【0024】
中間転写ベルト5の下側には、中間転写ベルト5の回転方向上流側から順に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの作像ユニット10Y,10M,10C,10K(以下、「作像ユニット10」と総称することがある)が、装置本体に対して着脱自在に配置されている。これらの作像ユニット10では、各色の現像剤をそれぞれ用いて対応する色のトナー画像が作成される。
【0025】
また、作像ユニット10の下部には、給紙装置として給紙カセット41が着脱可能に配置されている。給紙カセット41内に積載収容された用紙Pは、給紙カセット41の近傍に配置された給紙ローラの回転によって最上紙から順に1枚ずつ搬送路Rに送り出される。給紙カセット41から送り出された用紙Pは、レジストローラ対42に搬送され、ここで所定のタイミングで2次転写領域に送り出される。
【0026】
画像形成装置は、1色のトナー(例えばブラック)を用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードと、4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードとに切り替え可能となっている。
【0027】
カラーモードにおける画像形成動作例について簡単に説明すると、まず、各作像ユニット10において、所定の周速度で回転駆動される感光体11の表面に各色のトナー画像が形成され、感光体11の回転によって1次転写領域に達すると、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体11から中間転写ベルト5上へ転写(1次転写)されて重ねられる。
【0028】
重ね合わされた4色のトナー画像は、中間転写ベルト5によって2次転写領域に搬送される。一方、そのタイミングに合わせて、レジストローラ対42から2次転写領域に用紙Pが搬送される。そして、4色のトナー画像が、2次転写領域において中間転写ベルト5から用紙Pに転写(2次転写)される。4色のトナー画像が転写された用紙Pは、定着ローラ対43へ搬送される。定着ローラ対43において用紙Pは、定着ローラと加圧ローラとのニップ部を通過する。この間に用紙Pは加熱・加圧され、用紙P上のトナー画像は用紙Pに溶融定着する。トナー画像が定着した用紙Pは排出ローラ対によって排紙トレイに排出される。
【0029】
図2に、中間転写ベルト5の部分断面図を示す。中間転写ベルト5は、基材層51と、基材層51上に積層された弾性層52とを有し、弾性層52の表面には、少なくとも一部が露出するように無理粒子53が埋設されている。以下、中間転写ベルト5の各構成についてそれぞれ説明する。
【0030】
基材層51としては、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリアルキレンフタレートのような熱可塑性樹脂材料;PC(ポリカーボネート)/PAT(ポリアルキレンテレフタレート)のブレンド材料;ETEF(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)/PCのブレンド材料;ETFE/PATのブレンド材料のような熱可塑性樹脂材料などの材料にカーボンブラックや各種金属粉などの導電剤粒子を配合して、その体積抵抗率を10Ω・cm〜1012Ω・cmの範囲に調整した材料からなるものを挙げることができる。
【0031】
基材層51の層厚としては、強度上の観点から、70μm〜200μmの範囲のものを例示でき、例えば100μm程度を挙げることができる。
【0032】
弾性層52としては、例えば、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、EPDM、アクリルゴム、シリコンゴムのようなゴム材料にカーボンブラックや各種金属粉などの導電剤粒子を配合して、その体積抵抗率を10Ω・cm〜1012Ω・cmの範囲に調整した材料からなるものが挙げられる。難燃性やオゾン耐性の観点からはクロロプレンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴムの使用が推奨される。
【0033】
弾性層52の層厚としては、十分に弾性の効果を発揮させる観点から、例えば、概ね50μm〜500μmの範囲、或いは150μm〜500μmの範囲の層厚とすればよい。
【0034】
本発明で使用する無機粒子53は、シランカップリング剤で表面されていることが重要である。これにより、中間転写ベルト5の弾性層52と無機粒子53との結合が強くなり、長期間の使用によっても無機粒子53が弾性層52から離脱することが大幅に抑えられる。
【0035】
シランカップリング剤は、無機粒子53の表面と化学結合する加水分解性基と、弾性層52の素材の主鎖又は側鎖と反応する反応性官能基とを有する。加水分解性基としてはアルコキシ基などの官能基が挙げられる。反応性官能基としては、メルカプト基やアミノ基、エポキシ基、メタクリル基などが挙げられる。使用するシランカップリング剤は、無機粒子53の種類や中間転写ベルト5の弾性層52の材質などを考慮し適宜決定すればよい。例えば、弾性層52として、クロロプレンゴムなどのエラストマーを使用する場合、シランカップリング剤は、反応性官能基としてジスルフィド基又はメルカプト基を有するものが好適に使用される。シランカップリング剤のこれらの反応性官能基がエラストマー中の不飽和二重結合と化学反応し結合する。
【0036】
図3に、シランカップリング剤による無機粒子53と弾性層52との結合機構の説明図を示す。この図は、無機粒子53としてアルミナ粒子、シランカップリング剤としてTESPT(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)、弾性層52の素材としてクロロプレンゴムを用いた場合の説明図である。アルミナ粒子をTESPTで表面処理すると、TESPTのエトキシ基が水分によって加水分解してシラノール基が生成した後、アルミナ粒子表面の水酸基との水素結合を介してシランカップリング剤はアルミナ粒子表面に移行し、さらに脱水縮合反応を経てアルミナ粒子表面と強固な共有結合を生成する。この反応と並行してシラノール基同士が縮合し、シロキサンオリゴマーが生成される。一方、シランカップリング剤のスルフィド基が、クロロプレンゴムの不飽和二重結合と反応し、シランカップリング剤とクロロプレンゴムとが強く結合する。
【0037】
無機粒子53の種類としては、例えば、ガラス微粒子、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、窒化ホウ素微粒子などが挙げられる。これらの中でも、シランカップリング剤と結合性を高める観点からは、表面に水酸基を有するものが好ましい。また、耐摩耗性やトナー離型性などの観点からは、アルミナ微粒子、窒化ホウ素微粒子が好ましい。
【0038】
また、無機粒子53の粒径に特に限定はないが、通常、トナー粒子の粒径よりも小さい粒径であるのが望ましい。例えば、50nm〜5μmの範囲が好ましい。無機粒子の粒径が50nmよりも小さいと、十分なトナー離型性を得ることができないおそれがある。一方、無機粒子の粒径が5μmを超えると、無機粒子の弾性層から離脱や弾性層の割れなどが起こりやすくなる。無機粒子のより好ましい粒径は200nm〜3μmの範囲である。
【0039】
また、無機粒子53は、弾性層52の表面に少なくとも一部が露出するように埋設されていることも重要である。図4に示すように、無機粒子53によってトナーと弾性層52とを接触させないことにより、中間転写ベルト5のトナー離型性が向上し用紙への転写が起こりやすくなる。弾性層52表面の無機粒子53による被覆割合は、トナーの離型性を確保できる範囲で特に限定はないが、図2に例示したような、弾性層52の表面全体を均一に被覆しているのが望ましい。加えて、無機粒子53は単層であるのが望ましい。
【実施例】
【0040】
実施例1
(1)無機粒子の表面処理
シランカップリング剤(スルフィド系、信越シリコーン社製「KBE−846」)1質量部をエタノール500質量部に添加し、羽根撹伴機(300rpm)で30min撹拌した。得られた溶液に501質量部に、無機粒子としてのアルミナ微粒子(日本軽金属株式会社製「A32」,平均粒径:1μm)100質量部を添加し、羽根撹拌機(300rpm)で30min撹拌した。得られた分散液601質量部を100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、温度40℃・減圧下で有機溶媒を除去し、冷却し、濾過し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。次いで、80℃で2時間真空乾燥を行い、表面処理した無機粒子を得た。
【0041】
(2)基材層の形成
窒素流通下、N−メチル−2−ピロリドン488gに、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)47.6gを加え、50℃に保温、撹拌して完全に溶解させた。この溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)70gを徐々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量は17000、粘度は35ポイズ、固形分濃度は18.0重量%であった。
次に、このポリアミック酸溶液450gに、カーボンブラック(以下、「CB」と記す,pH3.0)21gとN−メチル−2−ピロリドン80gを加えて、ボールミルにてCBの均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は、固形分濃度18.5重量%、該固形分中のCB濃度は20.6重量%であった。そして、このマスターバッチ溶液から276gを採取し、基材成型用円筒状金型を用いて基材層を成形した。
基材成型用金型として、内径301.5mm、幅540mm、膜厚200μmの表面鏡面仕上げのスリーブ状フレキシブル金型を用い、この金型を2本の回転ローラー上に載置し、回転ローラーの回転によって回転するよう配置した。そして、加熱装置を、前記金型の外側面に遠赤外線ピークが位置するように配置し、前記金型の内面温度が120℃に制御されるようにした。
前記金型が回転した状態で276gの前記溶液を金型表面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は、昇温速度1℃/minで120℃まで昇温して、120℃で60min間行った。前記金型及び溶液の回転及び加熱が終了した後、冷却せずそのまま金型を取り外し、熱風滞留式オーブン中に静置してイミド化のための加熱を行った。加熱は徐々に昇温し320℃で30分間行った。その後常温に冷却して、前記金型表面に形成された半導電性管状ポリイミドベルトを剥離し取り出した。なお、ポリイミドベルトは厚さ82μm、外周長944.3mm、表面抵抗率12.72(logΩ/□)、体積抵抗率10.61(LogΩ・cm)であった。
【0042】
(3)弾性層の形成
トルエン2000kgにクロロプレンゴム(電気化学工業社製)500gを添加し、羽根撹拌機(300rpm)にて溶解しクロロプレンゴムの塗布液を作製した。そして、前記作製した基材層の表面に次の条件で弾性層を成形した。
基材層を2本の回転ローラー上に載置し、ローラーの回転によって回転するように配置した。そして、加熱装置を、基材層の外側面に遠赤外線ピークが位置するように配置し、基材層の外側面の温度が80℃に制御されるようにした。
まず、基材層を回転した状態で、500gの前記クロロプレンゴムの塗布液を基材層の表面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は、昇温速度1℃/minで80℃まで昇温して、80℃で60min間行い、基材層の表面に弾性層を形成した。
【0043】
(4)無機粒子のドライ塗布
前記作製した、シランカップリング剤で表面処理したアルミナ微粒子を、前記作製した弾性層の表面に満遍なくドライ塗布した後、弾性層を加硫した。具体的には、昇温速度2℃/minで170℃まで昇温して、170℃で15分間維持し加硫した。
【0044】
(5)清掃工程
加硫終了後、弾性層の表面に付着している未反応の無機粒子をエアーガンにより除去し中間転写ベルトを得た。
【0045】
得られた中間転写ベルトの接触角、2次転写後の色差、無機粒子の残留率を下記方法でそれぞれ測定評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0046】
(接触角の測定)
中間転写ベルトの任意5箇所から10mm×10mmサイズのサンプルを切り取り、アルコールで表面に付着している異物を拭き取って測定サンプルとした。そして、全自動接触角計「DM−901」(協和界面科学株式会社製)を用いて、下記の測定条件にて接触角を測定し、それらの平均値を中間転写ベルトの接触角とした。
測定方法:液滴法
測定液体:純水
測定回数:4回
【0047】
(2次転写後の色差の測定)
作製した中間転写ベルトをコニカミノルタ社製「bizhub PRESS C8000」に装着し、マゼンタ単色パターンを平滑性の高い普通紙(コニカミノルタ社製「CF80ペーパー」)に2次転写させた直後に装置を停止させ、転写範囲内に任意5箇所において、2次転写せず中間転写ベルト上に残ったトナーを透明な粘着テープ(株式会社キハラ製、商品名:アメニティ Bコード(Tタイプ))で剥がし取り、粘着テープを白い紙に貼り付けて測定サンプルとした。また、リファレンスサンプルとして、同じ白い紙に粘着テープを単に張り付けたものを作製した。次いで、分光測色計(コニカミノルタ社製「CM2002」)を用いて下記の測定条件にて測定サンプルとリファレンスサンプルの色をそれぞれ測定し、それらの差を算出し平均値化した。算出した色差の評価基準は次の通りである。
(測定条件)
測定光源:D65
測定系 :SCE(正反射光除去)
測定視野:2°
(色差の評価基準)
5未満 :問題なし
5以上10未満 :画像濃度は少し低下するが、問題ないレベル
10以上40未満:画像濃度が顕著に低下し、転写不良発生
40以上 :転写不良が酷く、深刻な問題
【0048】
(無機粒子の残留率の測定)
中間転写ベルトの任意5箇所から10mm×10mmサイズのサンプルを切り取り、アルコールで表面に付着している異物を拭き取った後、白金蒸着処理をし測定サンプルとした。また、未使用の中間転写ベルトについて同様の処理を行ってリファレンスサンプルとした。次に、作製したサンプルを、「FE−SEM」(日立製作所製)に取り付け、測定電圧20kV、5万倍でEDXによる表面元素分析を行い、無機粒子由来の元素(アルミナ:Al、水酸化アルミ:Al、シリカ:Si、窒化ホウ素:B、ガラス粒子:Si、シリコーン微粒子:Si)含有率を測定し、無機粒子の含有率とした。
なお、後述の比較例6については、中間転写ベルト表面に存在する微粒子がアクリル樹脂のため、EDXによる元素分析ができなかった。このため、測定サンプルをFE−SEM(日立製作所製)に取り付け、測定電圧20kV、5万倍で、測定サンプル表面の写真を撮影し、写真の全体面積に対するアクリル樹脂粒子の面積の割合を粒子残留率として算出した。
【0049】
(実施例2〜4)
表1に示す弾性層の材料、無機粒子、シランカップリング剤を用いて、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製した。そして、作製した中間転写ベルトの接触角、2次転写後の色差、無機粒子の残留率を実施例1と同様にして測定評価した。結果を表1にまとめて示す。なお、使用した材料及び種類の詳細は以下の通りである。
アクリルニトリル−ブタジエンゴム:株式会社竹原ゴム加工社製
窒化ホウ素:電気化学工業社製「SP−2」(平均粒径:3μm)
メルカプト系シランカップリング剤:信越シリコーン社製「KBM−802」
【0050】
(比較例1〜6)
特開2013-92667の実施例1〜6の製造方法に従って中間転写ベルトを作製し、作製した中間転写ベルトの接触角、2次転写後の色差、無機粒子の残留率を実施例1と同様にして測定評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から明らかなように、実施例1〜4の中間転写ベルトでは、40万枚通紙しても中間転写ベルト表面の接触角は80°以上を維持していた。また、中間転写ベルトにおける無機粒子の残留率は高かった。このため、2次転写後の色差が小さい、すなわち2次転写率が高く、優れたトナー離型性を維持していた。
【0053】
これに対して、比較例1〜10の中間転写ベルトでは、20万枚通紙すると、中間転写ベルト表面の接触角が70°前後まで低下した。また、中間転写ベルト表面から微粒子が半分近く離脱した。更に40万枚まで通紙すると、中間転写ベルト表面の微粒子の残留率は20%ぐらいまで低下した。このため、2次転写後の色差が大きくなり、すなわち2次転写率が大きく低下し、深刻な画質不良が発生した。
【0054】
以上説明した実施形態は中間転写ベルトについてであったが、本発明に係る転写ベルトはこれに限定されるものではなく、例えば二次転写ベルトとして使用することも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の転写ベルトでは、ベルトの割れや無機粒子の弾性層からの離脱が大幅に抑えられ、長期間にわたってトナー画像が安定して良好に転写される。
【符号の説明】
【0056】
1 プリンター(画像形成装置)
5 中間転写ベルト
P 用紙(被転写部材)
11 感光体(像担持体)
51 基材層
52 弾性層
53 無機粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7