【実施例】
【0040】
実施例1
(1)無機粒子の表面処理
シランカップリング剤(スルフィド系、信越シリコーン社製「KBE−846」)1質量部をエタノール500質量部に添加し、羽根撹伴機(300rpm)で30min撹拌した。得られた溶液に501質量部に、無機粒子としてのアルミナ微粒子(日本軽金属株式会社製「A32」,平均粒径:1μm)100質量部を添加し、羽根撹拌機(300rpm)で30min撹拌した。得られた分散液601質量部を100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、温度40℃・減圧下で有機溶媒を除去し、冷却し、濾過し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。次いで、80℃で2時間真空乾燥を行い、表面処理した無機粒子を得た。
【0041】
(2)基材層の形成
窒素流通下、N−メチル−2−ピロリドン488gに、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)47.6gを加え、50℃に保温、撹拌して完全に溶解させた。この溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)70gを徐々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量は17000、粘度は35ポイズ、固形分濃度は18.0重量%であった。
次に、このポリアミック酸溶液450gに、カーボンブラック(以下、「CB」と記す,pH3.0)21gとN−メチル−2−ピロリドン80gを加えて、ボールミルにてCBの均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は、固形分濃度18.5重量%、該固形分中のCB濃度は20.6重量%であった。そして、このマスターバッチ溶液から276gを採取し、基材成型用円筒状金型を用いて基材層を成形した。
基材成型用金型として、内径301.5mm、幅540mm、膜厚200μmの表面鏡面仕上げのスリーブ状フレキシブル金型を用い、この金型を2本の回転ローラー上に載置し、回転ローラーの回転によって回転するよう配置した。そして、加熱装置を、前記金型の外側面に遠赤外線ピークが位置するように配置し、前記金型の内面温度が120℃に制御されるようにした。
前記金型が回転した状態で276gの前記溶液を金型表面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は、昇温速度1℃/minで120℃まで昇温して、120℃で60min間行った。前記金型及び溶液の回転及び加熱が終了した後、冷却せずそのまま金型を取り外し、熱風滞留式オーブン中に静置してイミド化のための加熱を行った。加熱は徐々に昇温し320℃で30分間行った。その後常温に冷却して、前記金型表面に形成された半導電性管状ポリイミドベルトを剥離し取り出した。なお、ポリイミドベルトは厚さ82μm、外周長944.3mm、表面抵抗率12.72(logΩ/□)、体積抵抗率10.61(LogΩ・cm)であった。
【0042】
(3)弾性層の形成
トルエン2000kgにクロロプレンゴム(電気化学工業社製)500gを添加し、羽根撹拌機(300rpm)にて溶解しクロロプレンゴムの塗布液を作製した。そして、前記作製した基材層の表面に次の条件で弾性層を成形した。
基材層を2本の回転ローラー上に載置し、ローラーの回転によって回転するように配置した。そして、加熱装置を、基材層の外側面に遠赤外線ピークが位置するように配置し、基材層の外側面の温度が80℃に制御されるようにした。
まず、基材層を回転した状態で、500gの前記クロロプレンゴムの塗布液を基材層の表面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は、昇温速度1℃/minで80℃まで昇温して、80℃で60min間行い、基材層の表面に弾性層を形成した。
【0043】
(4)無機粒子のドライ塗布
前記作製した、シランカップリング剤で表面処理したアルミナ微粒子を、前記作製した弾性層の表面に満遍なくドライ塗布した後、弾性層を加硫した。具体的には、昇温速度2℃/minで170℃まで昇温して、170℃で15分間維持し加硫した。
【0044】
(5)清掃工程
加硫終了後、弾性層の表面に付着している未反応の無機粒子をエアーガンにより除去し中間転写ベルトを得た。
【0045】
得られた中間転写ベルトの接触角、2次転写後の色差、無機粒子の残留率を下記方法でそれぞれ測定評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0046】
(接触角の測定)
中間転写ベルトの任意5箇所から10mm×10mmサイズのサンプルを切り取り、アルコールで表面に付着している異物を拭き取って測定サンプルとした。そして、全自動接触角計「DM−901」(協和界面科学株式会社製)を用いて、下記の測定条件にて接触角を測定し、それらの平均値を中間転写ベルトの接触角とした。
測定方法:液滴法
測定液体:純水
測定回数:4回
【0047】
(2次転写後の色差の測定)
作製した中間転写ベルトをコニカミノルタ社製「bizhub PRESS C8000」に装着し、マゼンタ単色パターンを平滑性の高い普通紙(コニカミノルタ社製「CF80ペーパー」)に2次転写させた直後に装置を停止させ、転写範囲内に任意5箇所において、2次転写せず中間転写ベルト上に残ったトナーを透明な粘着テープ(株式会社キハラ製、商品名:アメニティ Bコード(Tタイプ))で剥がし取り、粘着テープを白い紙に貼り付けて測定サンプルとした。また、リファレンスサンプルとして、同じ白い紙に粘着テープを単に張り付けたものを作製した。次いで、分光測色計(コニカミノルタ社製「CM2002」)を用いて下記の測定条件にて測定サンプルとリファレンスサンプルの色をそれぞれ測定し、それらの差を算出し平均値化した。算出した色差の評価基準は次の通りである。
(測定条件)
測定光源:D65
測定系 :SCE(正反射光除去)
測定視野:2°
(色差の評価基準)
5未満 :問題なし
5以上10未満 :画像濃度は少し低下するが、問題ないレベル
10以上40未満:画像濃度が顕著に低下し、転写不良発生
40以上 :転写不良が酷く、深刻な問題
【0048】
(無機粒子の残留率の測定)
中間転写ベルトの任意5箇所から10mm×10mmサイズのサンプルを切り取り、アルコールで表面に付着している異物を拭き取った後、白金蒸着処理をし測定サンプルとした。また、未使用の中間転写ベルトについて同様の処理を行ってリファレンスサンプルとした。次に、作製したサンプルを、「FE−SEM」(日立製作所製)に取り付け、測定電圧20kV、5万倍でEDXによる表面元素分析を行い、無機粒子由来の元素(アルミナ:Al、水酸化アルミ:Al、シリカ:Si、窒化ホウ素:B、ガラス粒子:Si、シリコーン微粒子:Si)含有率を測定し、無機粒子の含有率とした。
なお、後述の比較例6については、中間転写ベルト表面に存在する微粒子がアクリル樹脂のため、EDXによる元素分析ができなかった。このため、測定サンプルをFE−SEM(日立製作所製)に取り付け、測定電圧20kV、5万倍で、測定サンプル表面の写真を撮影し、写真の全体面積に対するアクリル樹脂粒子の面積の割合を粒子残留率として算出した。
【0049】
(実施例2〜4)
表1に示す弾性層の材料、無機粒子、シランカップリング剤を用いて、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製した。そして、作製した中間転写ベルトの接触角、2次転写後の色差、無機粒子の残留率を実施例1と同様にして測定評価した。結果を表1にまとめて示す。なお、使用した材料及び種類の詳細は以下の通りである。
アクリルニトリル−ブタジエンゴム:株式会社竹原ゴム加工社製
窒化ホウ素:電気化学工業社製「SP−2」(平均粒径:3μm)
メルカプト系シランカップリング剤:信越シリコーン社製「KBM−802」
【0050】
(比較例1〜6)
特開2013-92667の実施例1〜6の製造方法に従って中間転写ベルトを作製し、作製した中間転写ベルトの接触角、2次転写後の色差、無機粒子の残留率を実施例1と同様にして測定評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から明らかなように、実施例1〜4の中間転写ベルトでは、40万枚通紙しても中間転写ベルト表面の接触角は80°以上を維持していた。また、中間転写ベルトにおける無機粒子の残留率は高かった。このため、2次転写後の色差が小さい、すなわち2次転写率が高く、優れたトナー離型性を維持していた。
【0053】
これに対して、比較例1〜10の中間転写ベルトでは、20万枚通紙すると、中間転写ベルト表面の接触角が70°前後まで低下した。また、中間転写ベルト表面から微粒子が半分近く離脱した。更に40万枚まで通紙すると、中間転写ベルト表面の微粒子の残留率は20%ぐらいまで低下した。このため、2次転写後の色差が大きくなり、すなわち2次転写率が大きく低下し、深刻な画質不良が発生した。
【0054】
以上説明した実施形態は中間転写ベルトについてであったが、本発明に係る転写ベルトはこれに限定されるものではなく、例えば二次転写ベルトとして使用することも出来る。