特許第6237294号(P6237294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237294
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】蓄電装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/30 20060101AFI20171120BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20171120BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M2/30 D
   H01M2/06 A
   H01G11/74
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-21546(P2014-21546)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-149193(P2015-149193A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−115114(JP,A)
【文献】 特開2015−115113(JP,A)
【文献】 実開昭59−012263(JP,U)
【文献】 特開2010−097822(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3181383(JP,U)
【文献】 特開平02−138511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/30
H01G 11/74
H01M 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極端子及び負極端子の突出端から突出方向に延びる各嵌合穴に係合する回り止め部材を備えた蓄電装置の製造装置において、
回り止め部材を成す二本の棒材と、
前記二本の棒材を支持するベース部材と、
前記二本の棒材に荷重を加える固定手段と、を備え、
前記二本の棒材は、前記ベース部材に遊嵌状態で支持される可動棒材であり、
前記可動棒材を前記各嵌合穴に挿入した状態において、前記可動棒材と前記各嵌合穴の内面との間には隙間が存在しており、
前記ベース部材には、前記可動棒材のベース部材側端部が遊嵌され、かつ、荷重の付加及び解除方向に長手方向が延びる長孔が形成され、
前記固定手段は、前記長孔内を摺動する押圧部材と、前記押圧部材を前記長孔内の一端に向けて押圧する部材とを備え、
前記固定手段により前記押圧部材が押圧され、前記可動棒材のベース部材側端部を前記長孔内の一端に向けて押圧する荷重が加わることで前記可動棒材が前記各嵌合穴の内面に係合されるとともに前記固定手段により前記押圧部材の押圧が解除され、前記可動棒材のベース部材側端部に加わる荷重解除されることで前記可動棒材と前記各嵌合穴の内面との係合が解除されることを特徴とする蓄電装置の製造装置。
【請求項2】
前記固定手段は、二本の前記押圧部材の対向部同士の間に設けられる偏心カムを備え、
前記偏心カムの回転によって前記押圧部材を押圧して前記可動棒材に荷重を加えることを特徴とする請求項に記載の蓄電装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極端子に係合する回り止め部材を備えた蓄電装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置において、ケースの蓋体に正負の電極端子が取り付けられるが、ケースの蓋体への電極端子の取付構造として、蓋体から突出した電極端子の外周面に形成した雄ねじ部にナットを螺入して電極端子を蓋体に締結する構造が知られている。このような取付構造では、電極端子をケースの蓋体に締結する際に電極端子の回り止めをする工具を用いることで作業性を改善することができる。特許文献1に開示された密閉型二次電池では、ボルト式端子のボルト部には特殊ナットの脱着に際して供回り防止工具が嵌合される嵌合孔が設けられている。この嵌合孔に供回り防止工具を挿入した状態で、ボルト式端子のボルト部に特殊ナットを装着することで、嵌合孔の内面と供回り防止工具が係合し合って、供回りを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−188787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の供回り防止工具については、電池の電極端子に用いる場合、治具とすることが好ましい。電極端子は、蓄電装置の内部で電極組立体、または電極組立体に接続された導電部材に接続されている。この接続を損なわない為には、ナットの装着作業時に、供回りを防止するだけでなく、電極端子を回転方向の所定位置・範囲に位置決めする必要がある。このような位置決めには、手作業にて工具を押えるだけでは不十分である。しかしながら、この供回り防止工具を、何らかの装置に固定された治具とした場合、特殊ナットをボルト式端子のボルト部に装着した後には、供回り防止工具を嵌合孔から引き抜くが、このとき、供回り防止工具が嵌合孔の内面に係合していると、供回り防止工具を嵌合孔から引き抜きにくく、供回り防止工具を電極端子から取り外しにくいという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、回り止め部材を電極端子から容易に取り外すことができる畜電装置の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する蓄電装置の製造装置は、正極端子及び負極端子の突出端から突出方向に延びる各嵌合穴に係合する回り止め部材を備えた蓄電装置の製造装置において、回り止め部材を成す二本の棒材と、前記二本の棒材を支持するベース部材と、前記二本の棒材に荷重を加える固定手段と、を備え、前記二本の棒材は、前記ベース部材に遊嵌状態で支持される可動棒材であり、前記可動棒材を前記各嵌合穴に挿入した状態において、前記可動棒材と前記各嵌合穴の内面との間には隙間が存在しており、前記ベース部材には、前記可動棒材のベース部材側端部が遊嵌され、かつ、荷重の付加及び解除方向に長手方向が延びる長孔が形成され、前記固定手段は、前記長孔内を摺動する押圧部材と、前記押圧部材を前記長孔内の一端に向けて押圧する部材とを備え、前記固定手段により前記押圧部材が押圧され、前記可動棒材のベース部材側端部を前記長孔内の一端に向けて押圧する荷重が加わることで前記可動棒材が前記各嵌合穴の内面に係合されるとともに前記固定手段により前記押圧部材の押圧が解除され、前記可動棒材のベース部材側端部に加わる荷重解除されることで前記可動棒材と前記各嵌合穴の内面との係合が解除されることを要旨とする。
【0007】
これによれば、固定手段によって棒材に荷重を加えて、棒材を電極端子に係合させることで電極端子の回り止めを行うことができる。そして、棒材を電極端子から取り外すときには、固定手段を操作して、二本の棒材に加わる荷重を解除する。このため、棒材を遊嵌状態に戻すことで、棒材を回転可能な状態にすることができ、電極端子から容易に棒材を取り外すことができる。
【0009】
これによれば、押圧部材を荷重の付与する方向及び荷重を解除する方向へ摺動させることができ、押圧部材を介して棒材に荷重の付与及び解除を行うことができる。
上記蓄電装置の製造装置について、前記固定手段は、二本の前記押圧部材の対向部同士の間に設けられる偏心カムを備え、前記偏心カムの回転によって前記押圧部材を押圧して前記可動棒材に荷重を加えることが好ましい。
【0010】
これによれば、偏心カムによって、二本の押圧部材を押圧できるため、各押圧部材を押圧する部材を別々に設ける場合に比べて、押圧部材の押圧を行いやすい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回り止め部材を電極端子から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の二次電池を示す分解斜視図。
図2】実施形態の二次電池を示す斜視図。
図3】実施形態の製造装置を示す斜視図。
図4】実施形態の製造装置を示す斜視図。
図5】(a)はシャフトを押圧している状態の押圧装置を示す平面図、(b)はシャフトが押圧されている状態の棒部と電極端子との関係を示す断面図。
図6】(a)はシャフトを押圧していない状態の押圧装置を示す平面図、(b)はシャフトが押圧されていない状態の棒部と電極端子との関係を示す断面図。
図7】変形例の製造装置の棒部を示す断面図。
図8】変形例の製造装置のヘッドを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、蓄電装置の製造装置の一実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、畜電装置としての二次電池10において、金属製のケース11には電極組立体20及び電解液(図示せず)が収容されている。また、ケース11は、上面開口部を有する直方体状のケース本体12と、ケース本体12の開口部を閉塞する矩形平板状の蓋体13とを有する。ケース本体12と蓋体13は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム)であり、ケース本体12と蓋体13はレーザー溶接によって接合されている。また、本実施形態の二次電池10は、その外周が角型をなす角型電池であり、リチウムイオン電池である。
【0014】
電極組立体20は、正極電極21、負極電極22、及び正極電極21と負極電極22とを絶縁するセパレータを有する。正極電極21は、正極金属箔(アルミニウム箔)の両面に正極活物質を備える。負極電極22は、負極金属箔(銅箔)の両面に負極活物質を備える。そして、電極組立体20は、複数の正極電極21と複数の負極電極22が交互に積層されるとともに、両電極の間に多孔質にて樹脂製のセパレータが介在された積層構造である。
【0015】
正極電極21は、一辺(長辺)の一部に正極集電タブ23を有し、負極電極22は、一辺(長辺)の一部に負極集電タブ24を有する。複数の正極電極21は、それぞれの正極集電タブ23が積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。同様に、複数の負極電極22は、それぞれの負極集電タブ24が、正極集電タブ23と重ならないように積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。電極組立体20は、正極集電タブ23を集めてなる正極タブ群25を備える。この正極タブ群25の少なくとも最外の正極集電タブ23が、正極導電部材26と溶接されており、正極タブ群25が電極組立体20における正極端子30への接続部となる。また、電極組立体20は、負極集電タブ24を集めてなる負極タブ群27を備える。この負極タブ群27の少なくとも最外の負極集電タブ24が負極導電部材28と溶接されており、負極タブ群27が電極組立体20における負極端子31への接続部となる。
【0016】
正極導電部材26には、電極端子としての正極端子30が溶接されるとともに、負極導電部材28には、電極端子としての負極端子31が溶接されている。正極端子30及び負極端子31は、全体形状として円柱状をなしている。正極端子30及び負極端子31は、それぞれ、円柱状の極柱部40と、四角板状をなす基部41を有する。基部41の中央から極柱部40が立設されている。正極端子30及び負極端子31は、極柱部40の外周面に雄ねじ部42を有する。
【0017】
正極端子30及び負極端子31の基部41には、樹脂製の端子カバー50が装着されている。また、基部41の上にはOリング51が極柱部40を取り囲む状態に設けられている。端子カバー50により、ケース11の蓋体13と正極端子30及び負極端子31が電気的に絶縁されているとともに、ケース本体12と、正極端子30及び負極端子31とが電気的に絶縁されている。さらに、端子カバー50により、電極組立体20と正極端子30及び負極端子31とが電気的に絶縁されている。
【0018】
正極端子30及び負極端子31の極柱部40は、ケース11の内部から蓋体13の透孔14を貫通して蓋体13の上方に突出(露出)している。透孔14の内周面と、極柱部40の外周面とは、絶縁部材52によって絶縁されている。絶縁部材52は、筒状部53と、この筒状部53の軸方向一端縁に設けられたフランジ部54を有する。筒状部53は、透孔14の内周面と極柱部40の外周面との間に介装されている。フランジ部54は、ケース11の蓋体13の外面に接している。
【0019】
正極端子30の極柱部40の雄ねじ部42にはナット55が螺合されている。同様に、負極端子31の極柱部40の雄ねじ部42にはナット56が螺合されている。ケース11の蓋体13の外面と、ナット55,56との間には、絶縁部材52のフランジ部54が挟圧され、フランジ部54によってナット55,56と蓋体13が絶縁されている。また、ナット55,56と基部41との間に、絶縁部材52のフランジ部54、ケース11の蓋体13、Oリング51及び端子カバー50が狭圧されるとともに正極端子30及び負極端子31がケース11の蓋体13に固定されている。
【0020】
このようにして、円柱状をなす正負の電極端子(30,31)が蓋体13から突出して正極端子30及び負極端子31の外周面に形成された雄ねじ部42にナット55,56が螺入されて蓋体13に締結されている。
【0021】
正極端子30及び負極端子31は、極柱部40の軸方向に延びる凹部45を有する。凹部45は、図示しないねじ溝が形成された雌ねじ穴と、軸方向に沿った雌ねじ穴よりも先端側にて、ねじ溝が形成されない六角形状の嵌合穴46とから構成されている。凹部45は、極柱部40の先端(突出端)面中央部において開口し、極柱部40の軸方向に所定の深さとなっている。
【0022】
次に、正極端子30及び負極端子31の組付のための二次電池の製造装置(治具)について説明する。
図3及び図4に示すように、二次電池の製造装置(治具)60は、下側構造体61と上側構造体62とを備える。
【0023】
下側構造体61は、長方形の板状をなし、水平方向に延びている。そして、Y方向に長手方向が延びる台座ブロック70を備え、台座ブロック70は、角柱状をなし、下側構造体61の上面におけるX方向での端部に設けられている。さらに、台座ブロック70のY方向の両端には、上側構造体62を支持するための支柱部71,72が配置されている。支柱部71,72は、X方向及びY方向に沿った断面が略コ字状をなし、Y方向のコ字状の開口を台座ブロック70側(内側)に向けるように配置され、上下方向(Z方向)に延びるように固定されている。下側構造体61の上面には、電極組立体20等が配置される。台座ブロック70の上面には、蓋体13、正極端子30及び負極端子31、ナット55,56等が配置される。
【0024】
ベース部材としての上側構造体62は、台座ブロック70の上方に位置する可動ブロック73と、可動ブロック73より下方向に延びるシャフト78,79を有している。シャフト78,79は、本発明における棒材をなす。可動ブロック73のY方向の両端には、可動ブロック73を上下方向に摺動可能に支持するための摺動部材74,75が設けられている。摺動部材74,75は、断面略四角形にて上下方向に延びる摺動部74a,75aを備える。この摺動部74a,75aが、支柱部71,72のコ字状開口の内側に配置され、上下方向に摺動可能とされている。
【0025】
可動ブロック73は、一方の摺動部材74に係合する係合部76と、他方の摺動部材75に係合する係合部77とを有する。摺動部材74,75と可動ブロック73とは固定されている。よって、可動ブロック73はY方向の両端を支持された状態で上下に移動することができる。
【0026】
可動ブロック73においてY方向に離間した位置には、一対のシャフト78,79が下方に延びるように配置されている。棒材としてのシャフト78,79は、同一構成をなし、棒部80と、棒部80の上端に設けたベース部材側端部としてのヘッド81を有している。シャフト78,79の棒部80は、六角柱状をなしており、シャフト78,79のヘッド81は、全体形状として四角柱状をなしている。棒部80は、軸方向に直交する方向の断面形状(六角形)が、極柱部40の先端面に沿い、かつ、軸方向に直交する方向での嵌合穴46の断面形状(六角形)と相似となっており、棒部80の方が断面積が小さい。すなわち、棒部80を嵌合穴46に挿入した状態では、棒部80と嵌合穴46の内面との間に隙間が形成される。
【0027】
可動ブロック73の上面における各シャフト78,79の配置箇所にはU字ブロック82,83が設けられている。U字ブロック82,83は、X方向及びY方向に沿った断面がU字状であり、Y方向へのU字の開口部82a,83aが互いに向き合うように可動ブロック73上に設けられている。U字ブロック82,83の内側には、Y方向に延びる長孔84,85が区画されている。そして、押圧装置90によりシャフト78,79は、U字ブロック82,83のY方向での閉塞端82b,83b(開口部82a,83aとは反対側の端部)に向けて押圧されることにより移動不能にロックされる。
【0028】
また、可動ブロック73の上面には、押圧装置90が設けられている。押圧装置90は、一対のU字ブロック82,83と、各U字ブロック82,83の長孔84,85内に配置された棒状の押圧部材86,87と、U字ブロック82,83上に設けられた押え板88と、偏心カム91と、を備えている。
【0029】
長孔84,85の長手方向において、開口部82a,83aとは反対側の一端(閉塞端82b,83b)側には、シャフト78,79のヘッド81が遊嵌状態で配設されている。そして、長孔84,85内で、ヘッド81よりも開口部82a,83a側には、押圧部材86,87が配設されている。ヘッド81及び押圧部材86,87は、押え板88によって長孔84,85の貫通方向への抜け出しが規制されている。また、ヘッド81及び押圧部材86,87は、長孔84,85内を長手方向に摺動可能に設けられている。すなわち、シャフト78,79は、可動ブロック73に遊嵌状態で支持され、長孔84,85の長手方向に移動可能な可動棒材である。押圧部材86,87は、軸方向の一端部が、長孔84,85の開口部82a,83aからU字ブロック82,83の外へ突出している。
【0030】
可動ブロック73の上面であって、二つのU字ブロック82,83のU字の先端部(対向部)同士及び押圧部材86,87の間には、偏心カム91が配設されている。偏心カム91は、可動ブロック73上で、一方のU字ブロック82と、他方のU字ブロック83との間に設けられている。偏心カム91は、楕円状の板材の一部を切り欠くことで形成された直線部94と、直線部94の一端から他端に向けて弧をなす弧部95とを有している。
【0031】
偏心カム91には、偏心カム91の厚み方向に貫通する回転軸93が固定され、この回転軸93は、偏心カム91の上面での中心からずれた位置に固定されている。偏心カム91の上面において、回転軸93から弧部95の外周面までの長さは、直線部94の一端から他端に向けて次第に長くなっていく。回転軸93は、可動ブロック73に設けられた貫通長孔96を貫通するとともに貫通長孔96を貫通した位置で固定部97によって可動ブロック73に固定されている。貫通長孔96は、その長手方向がY方向に延びており、回転軸93が貫通長孔96内を長手方向に移動することで、偏心カム91がY方向に移動可能に構成されている。偏心カム91には、レバー98が設けられており、レバー98によって回転軸93を中心として偏心カム91を回転させることができる。
【0032】
次に、上記の二次電池の製造装置60を用いた正極端子30及び負極端子31の組付方法について説明する。
導電部材26,28に正極端子30及び負極端子31が溶接されるとともに電極組立体20のタブ23,24が導電部材26,28に溶接され、さらに、正極端子30及び負極端子31には端子カバー50及びOリング51が装着される。また、蓋体13の透孔14には絶縁部材52が装着される。
【0033】
この状態から、図4に示すように、二次電池の製造装置(治具)60における下側構造体61の上面に、電極組立体20に蓋体13を90度開いた状態で載せるとともに上側構造体62の台座ブロック70に、蓋体13、正極端子30及び負極端子31、端子カバー50、ナット55,56を配置する。
【0034】
次に、可動ブロック73を上下動させ、シャフト78,79の棒部80を正極端子30及び負極端子31の嵌合穴46に挿入する。二本のシャフト78,79は、U字ブロック82,83の長孔84,85内を長手方向に移動可能であるため、シャフト78,79を長孔84,85内で移動させることで、正極端子30及び負極端子31の嵌合穴46に棒部80が挿入されるように調整を行う。棒部80を嵌合穴46に挿入した段階では、棒部80と嵌合穴46の間には隙間が存在し、棒部80ががたつく。
【0035】
そして、図5(a)に示すように、レバー98を操作して偏心カム91を回転させる。弧部95の外周面は、回転軸93からの長さが回転に伴って長くなっていくため、偏心カム91を回転させると、各押圧部材86,87の突出端(長孔84,85から突出している端部)が弧部95によって押圧されていく。偏心カム91は、弧部95によって両押圧部材86,87を押圧するが、このとき、偏心カム91が、貫通長孔96の長手方向に沿ってY方向へ移動可能であるため、一方の押圧部材86,87のみが偏心カム91によって押圧されることが抑制されている。そして、各押圧部材86,87がシャフト78,79のヘッド81を長孔84,85の閉塞端82b,83bに向けて押圧する。
【0036】
図5(b)に示すように、ヘッド81が押圧部材86,87によって押圧されると、棒部80は、長孔84,85の長手方向に摺動し、正極端子30及び負極端子31の嵌合穴46の内面に向けて押圧される。すなわち、棒部80に荷重が加わる。よって、長孔84,85は、その長手方向が棒部80へ荷重を加える方向に延びている。棒部80が押圧されると、棒部80の角と、嵌合穴46の内面の角とが係合し合い、シャフト78,79によって正極端子30及び負極端子31が位置決めされる。この状態で正極端子30及び負極端子31の雄ねじ部42にナット55,56を装着(螺合)することで、正極端子30及び負極端子31の供回りが抑止された状態でナット55,56を螺入することができる。したがって、シャフト78,79が回り止め部材として機能している。また、シャフト78,79に荷重を加えてシャフト78,79を位置決めする押圧装置90が固定手段として機能している。
【0037】
次に、二次電池の製造装置60の作用について説明する。
図5(a)及び(b)に示すように、ナット55,56を正極端子30及び負極端子31の雄ねじ部42に螺入するときには、棒部80が嵌合穴46の内面に押さえつけられた状態でナット55,56が螺入されていく。正極端子30及び負極端子31は、ナット55,56と共に回転しようとするが、正極端子30及び負極端子31の回転を棒部80と、正極端子30及び負極端子31の嵌合穴46の内面との係合によって規制している。このため、正極端子30及び負極端子31が回転しようとする力は、棒部80に加わり、棒部80、詳細にいえば、棒部80の角が嵌合穴46の内面に係合する。
【0038】
図6(a)及び(b)に示すように、棒部80を嵌合穴46から引き抜くときには、偏心カム91を回転させて、弧部95による押圧部材86,87の突出端の押圧を解除する。すると、棒部80が長孔84,85内を長手方向に摺動し、棒部80の嵌合穴46の内面に向けた押圧が解除される。すなわち、棒部80に対する荷重の付与を解除する。長孔84,85は、その長手方向が棒部80への荷重を解除する方向に延びている。シャフト78,79のヘッド81は、長孔84,85内にて遊嵌状態にあり、すなわち押圧部材86,87にて押圧されていない状態ではガタを有し、僅かながら回転も可能である。これにより、棒部80の嵌合穴46の内面への係合が解消、あるいは、棒部80が依然として嵌合穴46の内面に係合していたとしても、棒部80と嵌合穴46の内面との係合が解除されることで、棒部80を容易に引き抜くことができる。
【0039】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)正極端子30及び負極端子31の嵌合穴46に挿入される両方の棒部80を押圧部材86,87及び偏心カム91によって嵌合穴46の内面に押圧することができるようにしている。このため、正極端子30及び負極端子31にナット55,56を螺入するときには、シャフト78,79を嵌合穴46の内面に押圧し、係合させることができる。そして、ナット55,56を螺入したあとには、偏心カム91によって両シャフト78,79を遊嵌状態に戻すことで、棒部80を嵌合穴46から容易に引き抜くことができる。
【0040】
(2)シャフト78,79は、U字ブロック82,83の長孔84,85内を長手方向に移動可能であるため、正極端子30及び負極端子31の位置に合わせてシャフト78,79を移動させることができる。このため、正極端子30及び負極端子31の位置決めが容易となる。
【0041】
(3)偏心カム91を用いて、両方の押圧部材86,87の突出端を押圧できるようにしているため、それぞれの押圧部材86,87を別々に移動させる必要がなく、シャフト78,79の位置決めを行いやすい。
【0042】
(4)偏心カム91の回転軸93を貫通長孔96に挿通することで、偏心カム91は、押圧部材86,87の間を移動可能となっている。このため、押圧部材86,87のうち、いずれかのみが偏心カム91によって押圧されることが抑制される。
【0043】
なお、実施形態は、以下のように変更してもよい。
○棒部の形状は、嵌合穴と係合できればどのような形状であってもよい。例えば、図7に示すように、棒部101は、円柱状をなす円柱部102と、円柱部102から円柱部102の径方向に突出して円柱部102の軸方向に延びる矩形状の羽根部103とを有していてもよい。羽根部103は、円柱部の180度ずれた位置にそれぞれ設けられている。そして、棒部101の形状に合わせて、嵌合穴110の形状も変更される。具体的にいえば、嵌合穴110は、円形状の円形穴111と、円形穴111から円形穴111の径方向に延びる矩形状の角形穴112とからなる。円柱部102は、円形穴111に、羽根部103は角形穴112に、それぞれ挿入される。そして、棒部101が嵌合穴110の内面に押圧された状態で、ナット55,56が正極端子30及び負極端子31の雄ねじ部42に螺入されると、羽根部103が角形穴112の内面に係合する。
【0044】
○シャフト78,79のヘッド81は、上記実施形態では四角柱状とされているが、四角柱状に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、ヘッド120は、軸方向に直交する断面が略D字状(円の一部が直線状にカットされている形状)であってもよい。このような形状であっても、直線部121がU字ブロック82,83の開口側に配置された状態では、押圧部材86,87によって直線部121が押し付けられ、円弧面122にて外側に圧を受けることでY軸方向(外向き)、X軸方向に位置決めされる。さらに、ヘッド81を円弧状とすることで、遊嵌状態におけるシャフト78,79の回転方向の自由度が大きくなる。
【0045】
○押圧装置は、シャフト78,79をU字ブロック82,83の閉塞端82b,83bに向けて押圧できればどのような構成であってもよく、例えば、押圧部材86,87をU字ブロック82,83の閉塞端82b,83bに向けて押圧した状態で位置決めすることができる固定具によって押圧部材86,87を固定する押圧装置であってもよい。
【0046】
○押圧装置は、両方の押圧部材86,87を押圧できる構成としたが、押圧装置をそれぞれの押圧部材86,87を別々に押圧する構成としてもよい。
○偏心カム91は、両方の押圧部材86,87の突出端を押圧できれば、Y方向に移動できなくてもよい。
【0047】
○リチウムイオン電池の製造装置として発明を具体化したが、ニッケル水素二次電池や、電気二重層キャパシタの製造装置として発明を具体化してもよい。
次に、上記実施形態及び変形例から把握することができる技術的思想について以下に追記する。
【0048】
(イ)電極組立体が収容されたケースからケースの外部に向けて突出するとともに外周面に雄ねじ部を有する正負の電極端子にナットを螺合することで、前記ケースに前記電極端子を固定した蓄電装置の製造装置であって、各電極端子の突出端から前記電極端子の突出方向に延びる嵌合穴に挿入される二本の棒材と、前記二本の棒材を遊嵌状態で支持するベース部材と、前記二本の棒材に荷重を加えて前記二本の棒材を前記嵌合穴の内面に押しつけることと、前記二本の棒材に加わる荷重を解除することができる固定手段と、を備えたことを特徴とする蓄電装置の製造装置。
【符号の説明】
【0049】
10…二次電池、30…正極端子、31…負極端子、60…製造装置、62…上側構造体、73…可動ブロック、78,79…シャフト、80…棒部、81…ヘッド、82,83…U字ブロック、84,85…長孔、86,87…押圧部材、90…押圧装置、91…偏心カム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8