特許第6237301号(P6237301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237301
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】点灯装置および照明器具
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20171120BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
   H02M3/155 X
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-23614(P2014-23614)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-153473(P2015-153473A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】芝原 信一
(72)【発明者】
【氏名】船山 信介
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−219963(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/187269(WO,A1)
【文献】 特開2012−028184(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0113657(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に第1端子が接続した第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続したチョークコイルを有するバックコンバータ回路と、
一端が前記チョークコイルの他端に接続した平滑コンデンサと、
一端が前記平滑コンデンサの前記一端に接続し、前記平滑コンデンサの電荷を放電する抵抗と、
制御電源と接続し、前記第1スイッチング素子の制御端子に制御信号を供給する制御回路と、
一端が前記第2端子と接続し、前記制御回路に電源を供給するブートストラップコンデンサと、
前記制御電源より高い電圧を出力し、前記ブートストラップコンデンサの他端と接続して前記ブートストラップコンデンサを充電する充電用電源と、
前記平滑コンデンサの前記一端に接続する正極出力端子と、
前記正極出力端子と前記第1スイッチング素子の前記第2端子との間に一端が接続され他端が前記充電用電源と接続した抵抗と、
を備える点灯装置。
【請求項2】
前記充電用電源と前記ブートストラップコンデンサの間の電気的接続を導通と遮断とで切り替える第2スイッチング素子を備える請求項に記載の点灯装置。
【請求項3】
前記平滑コンデンサの他端に接続する負極出力端子を更に備え、
前記バックコンバータ回路の起動前に前記第2スイッチング素子を遮断とした状態で、前記正極出力端子および前記負極出力端子に負荷が接続されたか否かを検知する請求項に記載の点灯装置。
【請求項4】
前記ブートストラップコンデンサと並列接続したツェナーダイオードを備える請求項1〜のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項5】
発光素子と前記発光素子と並列に接続した抵抗とを備えた発光モジュールと、
前記発光モジュールと接続して前記発光素子を点灯させる点灯装置と、
を備え、
前記点灯装置は、
直流電源に第1端子が接続した第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続したチョークコイルを有するバックコンバータ回路と、
一端が前記チョークコイルの他端に接続した平滑コンデンサと、
一端が前記平滑コンデンサの前記一端に接続し、前記平滑コンデンサの電荷を放電する抵抗と、
制御電源と接続し、前記第1スイッチング素子の制御端子に制御信号を供給する制御回路と、
一端が前記第2端子と接続し、前記制御回路に電源を供給するブートストラップコンデンサと、
前記制御電源より高い電圧を出力し、前記ブートストラップコンデンサの他端と接続して前記ブートストラップコンデンサを充電する充電用電源と、
前記平滑コンデンサの前記一端に接続する正極出力端子と、
前記正極出力端子と前記第1スイッチング素子の前記第2端子との間に一端が接続され他端が前記充電用電源と接続した抵抗と、
を備える照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯装置および照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2011−155748号公報に開示されているように、ハイサイドでスイッチング素子を駆動させるコンバータ回路を備えた点灯装置が知られている。ハイサイドでスイッチング素子を駆動させるためには、スイッチング素子に制御信号を入力する制御回路の電源を確保する必要がある。その電源供給方法の典型例の一つとしてブートストラップ電源方式が知られており、上記従来の技術においてもこれを利用している。具体的には、上記従来の技術では、ローサイドにもスイッチング素子を設けて、起動時にハイサイドスイッチング素子をオフとしローサイドスイッチング素子をオンとすることでブートストラップコンデンサへの充電経路を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−155748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明用の点灯装置には、発光モジュールの着脱時における安全性確保などのために、出力側の平滑コンデンサの電荷を放電するための抵抗が設けられることがある。本願発明者は、この抵抗に流れる電流に起因してブートストラップコンデンサの一端の電位が持ち上げられてしまうことでその充電が不十分になるという問題を見出した。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ブートストラップコンデンサの充電不足を抑制することができる点灯装置および照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる点灯装置は、直流電源に第1端子が接続した第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続したチョークコイルを有するバックコンバータ回路と、一端が前記チョークコイルの他端に接続した平滑コンデンサと、一端が前記平滑コンデンサの前記一端に接続し、前記平滑コンデンサの電荷を放電する抵抗と、制御電源と接続し、前記第1スイッチング素子の制御端子に制御信号を供給する制御回路と、一端が前記第2端子と接続し、前記制御回路に電源を供給するブートストラップコンデンサと、前記制御電源より高い電圧を出力し、前記ブートストラップコンデンサの他端と接続して前記ブートストラップコンデンサを充電する充電用電源と、前記平滑コンデンサの前記一端に接続する正極出力端子と、前記正極出力端子と前記第1スイッチング素子の前記第2端子との間に一端が接続され他端が前記充電用電源と接続した抵抗と、を備える。
【0007】
本発明にかかる照明器具は、発光素子と前記発光素子と並列に接続した抵抗とを備えた発光モジュールと、前記発光モジュールと接続して前記発光素子を点灯させる点灯装置と、を備え、前記点灯装置は、直流電源に第1端子が接続した第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続したチョークコイルを有するバックコンバータ回路と、一端が前記チョークコイルの他端に接続した平滑コンデンサと、一端が前記平滑コンデンサの前記一端に接続し、前記平滑コンデンサの電荷を放電する抵抗と、制御電源と接続し、前記第1スイッチング素子の制御端子に制御信号を供給する制御回路と、一端が前記第2端子と接続し、前記制御回路に電源を供給するブートストラップコンデンサと、前記制御電源より高い電圧を出力し、前記ブートストラップコンデンサの他端と接続して前記ブートストラップコンデンサを充電する充電用電源と、前記平滑コンデンサの前記一端に接続する正極出力端子と、前記正極出力端子と前記第1スイッチング素子の前記第2端子との間に一端が接続され他端が前記充電用電源と接続した抵抗と、を備える。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、平滑コンデンサに接続した放電用の抵抗により制御電源ではブートストラップコンデンサを十分に充電できない場合であっても充電用電源でブートストラップコンデンサを充電することができるので、ブートストラップコンデンサの充電不足を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態にかかる点灯装置および照明器具を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる点灯装置の一部を部分的に抽出した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態にかかる点灯装置1およびこれを備えた照明器具10を示す回路図である。照明器具10は、点灯装置1および発光モジュール2を備えている。発光モジュール2は、少なくとも1つのLED素子2aおよびこれと並列接続した抵抗RLを備えており、典型的には直管型LEDでよく採用される構成である。点灯装置1は、正極出力端子5aおよび負極出力端子5bを介して発光モジュール2と接続し、LED素子2aを点灯させる。本実施の形態におけるLED素子2aに代えて有機EL素子を用いてもよい。
【0011】
点灯装置1は、コンデンサC1と接続するバックコンバータ回路4を備えている。バックコンバータ回路4は、いわゆる非絶縁型の降圧コンバータである。コンデンサC1は、直流電源VPFCにより充電される。直流電源VPFCからは、図示しない商用交流電源から同じく図示しない整流回路(或いはこれに加えて力率改善回路)を介して生成された直流電圧が供給される。バックコンバータ回路4は、直流電源VPFCに第1端子(例えばドレイン)が接続したスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1の第2端子(例えばソース)に一端が接続したチョークコイルL1を有する。スイッチング素子Q1はnチャネルMOSFETでありハイサイド駆動される。スイッチング素子Q1の第2端子にはダイオードD2のカソードが接続している。ダイオードD2のアノードは接地されている。平滑コンデンサC4は、その一端がチョークコイルL1に接続し、その他端が抵抗R6に接続している。つまり、チョークコイルL1、平滑コンデンサC4および抵抗R6の直列回路が設けられており、この直列回路がダイオードD2に対して並列に接続している。抵抗R6は、発光モジュール2に流れるLED電流を検出するためのものである。スイッチング素子Q1の制御端子(例えばゲート)および第2端子は、抵抗R2を介して接続されている。点灯装置1は、高耐圧集積回路である制御回路3を備えている。制御回路3は、制御電源Vcc1と接続し、スイッチング素子Q1の制御端子に抵抗R1を介して接続して制御信号を供給する。LED電流を検出するための抵抗R6で検出した電圧が制御回路3に入力され、制御回路3はこの検出電圧に基づいて、LED素子2aに流れる電流が一定電流になるようにバックコンバータ回路4のスイッチング素子Q1をオンオフする。
【0012】
点灯装置1は、平滑コンデンサC4に蓄積された電荷を放電するための抵抗R5を備えている。抵抗R5は抵抗R51および抵抗R52が直列接続された分圧回路であり後述の発光モジュール接続判定の際に利用可能であるが、便宜上、これらの抵抗R51,R52を1つの抵抗R5とも称する。抵抗R5の一端は平滑コンデンサC4の一端(すなわち正極端子)と接続し、抵抗R5の他端は接地される。平滑コンデンサC4の電荷を抵抗R5により放電できるので、発光モジュール2の着脱の際における安全性が確保される。抵抗R51、R52で分圧された電圧は、制御回路3に入力されている。なお、本発明において後述する発光モジュール接続判定を省略する場合には、この抵抗R5は一本の抵抗素子からなるものであってもよい。
【0013】
(ブートストラップ回路)
点灯装置1は、コンデンサC2を備えている。コンデンサC2は、制御回路3に接続しスイッチング素子Q1のハイサイド駆動を安定的に行うための電源となるブートストラップコンデンサである。コンデンサC2の一端は、制御回路3に接続するとともに、スイッチング素子Q1の第2端子とも接続している。コンデンサC2の他端は好ましくは高耐圧のダイオードD21のカソードと接続している。コンデンサC2の他端とダイオードD21のカソードとの接続点にはダイオードD1のカソードが接続しており、ダイオードD1のアノードは抵抗R4を介して例えば15V〜20V程度の制御電源電圧を出力する制御電源Vcc1と接続している。一端が制御電源Vcc1に接続し他端が接地されたコンデンサC3が、コンデンサC2の充電用、または制御電源Vcc1の安定用に設けられている。
【0014】
点灯装置1は、スイッチング素子Q2をオン(つまり導通)とすることでダイオードD21を介してコンデンサC2を充電する充電用電源Vdz5を備えている。充電用電源Vdz5は、直流電源VPFCから電源生成回路によって生成されたものであり、制御電源Vcc1より高い電圧(一例としては約38V)を出力する。この電源生成回路は、典型的には、図示しないが、一端が直流電源VPFCに接続し他端から電圧を出力する抵抗、およびこの抵抗の他端にアノードが接続し他端が接地されたツェナーダイオードからなる回路でもよい。充電用電源Vdz5は、抵抗R3を介してスイッチング素子Q1の第2端子と接続している。スイッチング素子Q2をオンとすることで、充電用電源Vdz5→スイッチング素子Q2→ダイオードD21→コンデンサC2→スイッチング素子Q1の第2端子(具体的にはソース)→チョークコイルL1→抵抗R5→接地電位という「充電経路」が形成され、これを図1に破線矢印で示している。
【0015】
点灯装置1は、コンデンサC2と同じく制御回路3に並列接続するツェナーダイオードDz26を備えている。ツェナーダイオードDz26のアノードがコンデンサC2の一端に接続し、ツェナーダイオードDz26のカソードがコンデンサC2の他端に接続している。充電用電源Vdz5は制御電源Vcc1よりも高い電圧であるのに対し、制御回路3の端子間電圧に制限があることも多い。そこで、ツェナーダイオードDz26により、制御回路3の端子間に過大な電圧がかかるのを保護することができる。
【0016】
(Vdz5を用いた発光モジュール接続判定)
点灯装置1は、充電用電源Vdz5とスイッチング素子Q1の第2端子との間に直列に挿入された抵抗R3を備えている。抵抗R3は、具体的には、正極出力端子5aとスイッチング素子Q1の第2端子(例えばソース)との間に一端が接続され、他端が充電用電源Vdz5と接続している。点灯装置1に発光モジュール2が接続されていない状態でバックコンバータ回路4が駆動することを防止したいので、点灯装置1は発光モジュール2が接続されているか否かを検出する機能を備えている。具体的には、発光モジュール2が接続されると抵抗RLの両端が正極出力端子5aおよび負極出力端子5bに接続することで、抵抗R5に対して抵抗RLが並列に取り付けられると、抵抗R51、R52で分圧された電圧が低下する。一方、発光モジュール2が取り外されると、抵抗R51、R52で分圧された電圧が上昇する。そこで、制御回路3は、抵抗R51、R52で分圧された電圧が予め定めた所定値以下か否かを判定することで、正極出力端子5aおよび負極出力端子5bに負荷つまり発光モジュール2が接続されたか否かを検出する。さらに本実施の形態では、この発光モジュール接続判定のために、充電用電源Vdz5が抵抗R3、チョークコイルL1を介して抵抗R5の一端に電圧を印加する。これにより、充電用電源Vdz5を発光モジュール接続判定のための電源としても併用することができる。
【0017】
なお、本発明はこれに限られず、充電用電源Vdz5を発光モジュール接続判定のための電源として用いなくとも良い。その場合には、例えばスイッチング素子Q1のドレインソース間に並列に抵抗を接続して、直流電源VPFCから発光モジュール接続判定のための電源を取り出せばよい。
【0018】
(ブートストラップコンデンサ充電と発光モジュール接続判定の切替回路)
点灯装置1は、充電用電源Vdz5とコンデンサC2の間の電気的接続を導通と遮断とで切り替えるスイッチング素子Q2を備えている。なお本実施の形態ではスイッチング素子Q2はpチャネルMOSFETとしており、スイッチング素子Q2の制御端子(例えばゲート)と第2端子(例えばソース)とを接続する抵抗R20も設けられている。スイッチング素子Q2の第1端子(例えばドレイン)は、ダイオードD21のアノードに接続している。スイッチング素子Q2の制御端子は、スイッチング素子Q3の第2端子(例えばコレクタ)に接続している。なお、本実施の形態ではスイッチング素子Q3はnpnバイポーラトランジスタであり、そのベースには抵抗R31、R32の接続点が接続され、そのエミッタは接地されている。抵抗R31、R32の直列回路の一端はトリガ電源Vtrgと接続し、その直列回路の他端は接地されている。
【0019】
トリガ電源Vtrgは、バックコンバータ回路4の起動前における一定期間ハイとなるトリガ信号を発する。なおトリガ信号を発する制御は特に限定しないが、点灯装置1のスイッチ(図示せず)がオンとされたときにこのトリガ信号を発するように制御回路3あるいは他の制御回路がトリガ電源Vtrgを制御してもよい。このトリガ信号により、点灯装置1のスイッチオンの後実際にバックコンバータ回路4の起動(すなわちスイッチング素子Q1のスイッチング動作開始)前に、スイッチング素子Q2がオフ(つまり遮断)となる期間が設けられる。このようにすることで、点灯装置1は、バックコンバータ回路4の起動前にスイッチング素子Q2を遮断とした状態で、前述した発光モジュール接続判定を行う。その後、予め定めた期間の経過後に(好ましくは発光モジュール接続判定完了後に)、トリガ信号はローとなり、スイッチング素子Q2がオンとなることで、コンデンサC2の充電が開始される。なお、好ましくは、発光モジュール接続判定の結果、発光モジュール2が未接続である場合には、バックコンバータ回路4は起動せずスイッチング素子Q2のオフが維持されてコンデンサC2も充電されないようにしてもよい。
【0020】
以上説明したように、本実施の形態では、発光モジュール接続判定時には、スイッチング素子Q2をオフとすることでブートストラップコンデンサ(つまりコンデンサC2)と充電用電源Vdz5とを遮断することができる。仮に、発光モジュール接続判定時にこの遮断を行わないと、コンデンサC2を含む充電経路(図1の破線矢印)が形成されてその充電経路を流れる電流が抵抗R5、RL側に合算されてしまう。本実施の形態ではそのような電流の合算を避けることができるので、発光モジュール接続判定の精度悪化を抑制することができる。
【0021】
図2は、点灯装置1の一部を部分的に抽出した回路図である。ブートストラップ電源方式としてよく用いられているように、ハイサイド駆動させるスイッチング素子Q1に対して制御回路3が安定的に制御信号(つまりゲート駆動信号)を供給するためにはブートストラップコンデンサであるコンデンサC2を充電して制御回路3の電源とする必要がある。コンデンサC2の充電はバックコンバータ回路4の起動時に行われる。点灯装置1は平滑コンデンサC4の放電用に抵抗R5を備えており、また発光モジュール2はLED素子2aに並列接続する抵抗RLを備えている。この抵抗R5、RLの並列回路を便宜上、図2では抵抗Rxと記載している。制御回路3の内部には制御回路3が消費する消費電流に相当する定電流源Iccが含まれており、その定電流源Iccの電流が抵抗Rxに流れ込むことで、図2の電位Vxが持ち上がる。仮に制御電源Vcc1のみでコンデンサC2を充電しようとすると(図2の電流I1)、電位Vxが持ち上がった分だけコンデンサC2の充電が抑制されてしまう。抵抗R5、RLは数百kΩという大きさを有することが典型的なので、抵抗Rxもこれに応じてある程度大きくならざるを得ない。抵抗Rxが大きければ、定電流源Iccの電流が例えば数十μA程度の僅かなものであっても、電位VxはブートストラップコンデンサであるコンデンサC2の必要な充電を行うにあたって無視できない大きさとなる。この点、本実施の形態では制御電源Vcc1より高電圧の充電用電源Vdz5を別途設けたので、電流I2によりコンデンサC2を十分に充電することができる。なお、図2の電流I3は発光モジュール接続判定の際に流れる電流を記載したものである。
【0022】
以上説明したように、点灯装置1によれば、平滑コンデンサC4に接続した残留電荷放電用の抵抗R5により制御電源Vcc1ではコンデンサC2を十分に充電できない場合であっても、別途設けた高電圧の充電用電源Vdz5で確実にコンデンサC2を充電することができる。充電用電源Vdz5でコンデンサC2を充電することができるので、より簡素化された回路でブートストラップコンデンサ(つまりコンデンサC2)の充電を行うことができる。
【0023】
なお、上記の説明では抵抗RLを含む抵抗Rxによる充電不足問題を説明したが、仮に抵抗RLを備えない発光モジュールを点灯装置1に接続した場合であっても抵抗R5による充電不足問題が生じうるので、本発明は抵抗RLの有無にかかわらずその効果を発揮することができる。なお、スイッチング素子Q2、Q3は本発明においては必ずしも必須構成ではなく、発光モジュール接続判定の精度悪化を抑制するための好ましい改良形態である。従って、スイッチング素子Q2、Q3を省略しても良い。
【0024】
なお、本実施の形態にかかる点灯装置1では充電用電源Vdz5を用いてブートストラップコンデンサ(コンデンサC2)の充電不足を抑制している。これに対して、例えば特開2011−155748号公報のようなローサイドスイッチング素子を設けてブートストラップコンデンサの充電のために起動時にこれをオンとする技術はある。このような従来技術と比較すると、本実施の形態にかかる点灯装置1では、ブートストラップコンデンサ充電のためにスイッチング素子の個数が増加したり起動時の制御が複雑化したりという問題を抑制することもできる。
【0025】
上述した点灯装置1におけるコンデンサC2の充電に関する計算結果を下記に示す。
Vcc1=R4×I1+Rx(I1+I3)+Vfd1+Vc2
Vdz5=R3×I3+Rx(I1+I3)
I1=Icc
Rx=1/(1/R5+1/RL)
I3=(Vdz5−Rx×I1)/(R3+Rx)
Vc2=Vcc1−(R4+Rx)×I1−Vfd1−Rx×(Vdz5−Rx×I1)/(R3+Rx)
ここで、Vfd1はダイオードD1の順方向電圧であり、Vc2はコンデンサC2の電圧である。上記の電圧Vc2の値が、ブートストラップコンデンサであるコンデンサC2に充電すべき電圧(つまり制御回路3の駆動に必要な電圧)よりも高い値になるように、上記数式内の各素子の抵抗値などを決定すればよい。
【符号の説明】
【0026】
1 点灯装置、2 発光モジュール、2a LED素子、3 制御回路、4 バックコンバータ回路、5a 正極出力端子、5b 負極出力端子、10 照明器具、C2 コンデンサ(ブートストラップコンデンサ)、C4 平滑コンデンサ、Vcc1 制御電源、Vdz5 充電用電源、VPFC 直流電源
図1
図2