特許第6237306号(P6237306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6237306リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237306
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20171120BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20171120BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20171120BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20171120BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/525
   H01M4/36 C
   H01M4/1391
   H01M10/0566
   H01M10/052
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-24796(P2014-24796)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-153530(P2015-153530A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/088979(WO,A1)
【文献】 特開2008−311132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/36
H01M 4/525
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着材、正極活物質、導電材および有機溶媒を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物であって、前記結着材が、
アミド基含有単量体単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、前記アミド基含有単量体単位の含有割合が10〜60質量%である共重合体(P1)と、
フッ素含有重合体(P2)と
を含み、
前記共重合体(P1)と前記フッ素含有重合体(P2)の含有量の比(P1:P2)が、質量基準で5:95〜30:70である、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
【請求項2】
前記共重合体(P1)の電解液膨潤度が5倍以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
【請求項3】
前記アミド基含有単量体単位が、N−ビニルアセトアミド単量体単位およびアクリルアミド単量体単位の少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
【請求項4】
前記フッ素含有重合体(P2)がフッ化ビニリデン単量体単位を75質量%以上含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
【請求項5】
前記正極活物質が、Mg、Ca、Ti、Zr、B、Alからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を表面に有するコバルト酸リチウム粒子を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が6以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
【請求項7】
前記共重合体(P1)の前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位の含有割合が20質量%以上85質量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて得られる正極合材層を有する、リチウムイオン二次電池用正極。
【請求項9】
請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備えるリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、近年では、リチウムイオン二次電池の更なる高性能化を目的として、電極などの電池部材の改良が検討されている。
【0003】
ここで、リチウムイオン二次電池用の正極は、通常、集電体と、集電体上に形成された正極合材層(「正極活物質層」ともいう)とを備えている。この正極合材層は、例えば、正極活物質、導電材、結着材などを有機溶媒に溶解または分散させてなるスラリー組成物を集電体上に塗布し、乾燥させることにより形成される。そこで、近年では、リチウムイオン二次電池の更なる性能向上を達成すべく、正極合材層の形成に用いられるスラリー組成物の改良が試みられている。
【0004】
具体的には、例えば特許文献1では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スルホン酸基含有不飽和単量体、アミド基含有不飽和単量体およびスルホン酸基・アミド基含有不飽和単量体からなる群より選択される少なくとも一種とをフッ素系重合体よりなるシードの存在下でシード重合させてなる複合化重合体を結着材としてスラリー組成物に配合することにより、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/088979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしここで、上記従来の結着材を含むスラリー組成物を用いて調製したリチウムイオン二次電池には、電気的特性、特に出力特性およびサイクル特性を更に向上させるという点において未だに改善の余地があった。また、フッ素含有重合体を含む結着材を使用した場合には、リチウムイオン二次電池内においてフッ素含有重合体の脱フッ化水素反応や熱分解が起こり、生成するフッ化水素により集電体の腐食、活物質の劣化が生じることで、サイクル特性などの電気的特性が低下する虞があると考えられている点からも、従来のスラリー組成物を用いて調製したリチウムイオン二次電池には、電気的特性について未だに改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用正極、そして出力特性およびサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、結着材として、アミド基含有単量体単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、アミド基含有単量体単位の含有割合が特定の範囲内である共重合体と、フッ素含有重合体とを含むスラリー組成物を正極の形成に用いることで、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、結着材、正極活物質、導電材および有機溶媒を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物であって、前記結着材が、アミド基含有単量体単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、前記アミド基含有単量体単位の含有割合が10〜60質量%である共重合体(P1)と、フッ素含有重合体(P2)とを含むことを特徴とする。
このように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とアミド基含有単量体単位を含み、アミド基含有単量体単位の含有割合が上記特定の範囲内である共重合体をフッ素含有重合体と併用した結着材を含むスラリー組成物を用いて作製した正極を使用すれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることができる。
【0010】
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、前記共重合体(P1)と前記フッ素含有重合体(P2)の含有量の比(P1:P2)が、質量基準で5:95〜50:50であることが好ましい。共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)の質量比が、上記特定の範囲内であれば、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させることができる。
【0011】
また、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、前記共重合体(P1)の電解液膨潤度が5倍以下であることが好ましい。共重合体(P1)の電解液膨潤度が5倍以下であれば、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させることができる。
【0012】
更に、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、前記アミド基含有単量体単位が、N−ビニルアセトアミド単量体単位およびアクリルアミド単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。アミド基含有単量体単位がN−ビニルアセトアミドおよびアクリルアミドの少なくとも一方に由来する単量体単位を含む場合、スラリー組成物中で共重合体(P1)が有機溶媒に十分に溶解し、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させることができる。
【0013】
また、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物において、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基が、炭素数4以上の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位中の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基が、炭素数4以上の直鎖または分岐アルキル基であれば、共重合体(P1)が電解液中で好適に膨潤し、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させることができる。
【0014】
そして、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、前記フッ素含有重合体(P2)がフッ化ビニリデン単量体単位を75質量%以上含むことが好ましい。フッ素含有重合体(P2)が、フッ化ビニリデン由来の単量体単位を75質量%以上含めば、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させることができる。
【0015】
加えて、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、前記正極活物質が、Mg、Ca、Ti、Zr、B、Alからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を表面に有するコバルト酸リチウム粒子を含むことが好ましい。上述のような酸化物を表面の少なくとも一部に有するコバルト酸リチウム粒子を正極活物質として用いれば、正極活物質表面での電解液の分解が抑制され、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、上述のいずれかのリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて得られる正極合材層を有することを特徴とする。このように、上述したスラリー組成物を用いて正極合材層を形成すれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用正極が得られる。
【0017】
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のリチウムイオン二次電池は、上述のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備えることを特徴とする。このように、上述したリチウムイオン二次電池用正極を用いれば、出力特性およびサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を提供することができる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用正極、そして出力特性およびサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池の正極を形成する際に用いられる。そして、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて作製することができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を用いたことを特徴とする。
【0020】
(リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物)
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、有機溶媒を分散媒とした組成物であり、その有機溶媒中に結着材、正極活物質および導電材を含む。そして、結着材として、少なくとも以下の(1)、(2)の重合体、
(1)アミド基含有単量体単位を10〜60質量%含み、さらに(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む共重合体(P1)
(2)フッ素含有重合体(P2)
を含むことを特徴とする。
なお、本発明において「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
また、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0021】
そして、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物によれば、結着材として、上述の共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)を併用しているため、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性などの電気的特性をさらに優れたものとすることができる。
ここで、共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)を併用することによるリチウムイオン二次電池の電気的特性の向上は、フッ素含有重合体(P2)の有する諸特性(結着性、機械的強度、スラリー特性など)と、共重合体(P1)の有する以下の2つの特性とに因るものであると考えられる。
【0022】
第1に、共重合体(P1)は、アミド基含有単量体単位を所定の割合以上有しているため、正極を形成した際に共重合体(P1)中のアミド基によりハロゲンイオンなどの腐食物質をトラップし、正極活物質の劣化や集電体の腐食を抑制することでサイクル特性を向上させることができると推察される。なお、リチウムイオン二次電池において共重合体(P1)のアミド基によりトラップされるハロゲンイオンとしては、例えば、フッ素含有重合体(P2)の脱フッ化水素反応または熱分解により発生するフッ化水素由来のフッ素イオンや、各電池部材を製造する際に使用する材料に含まれているハロゲンイオン(例えば、負極などの製造に使用されるカルボキシメチルセルロースに混入している塩化物イオンなど)が挙げられる。
第2に、共重合体(P1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、そしてアミド基含有単量体単位を所定の割合以下で含むため、電解液中で適度に膨潤する。そして、共重合体(P1)が電解液中で過度に膨潤せず(即ち溶解したような状態とならず)に正極中でその形状が維持されているため、共重合体(P1)の結着力、正極活物質の劣化抑制効果および集電体の腐食抑制効果が確保され、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができると推察される。一方で、共重合体(P1)は電解液中である程度は膨潤しているため、電解液の拡散性およびアミド基によるハロゲンイオンのトラップ容易性が好適に確保されて、リチウムイオン二次電池の出力特性及びサイクル特性を向上させることができると推察される。
以下、上記リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物に含まれる各成分について説明する。
【0023】
<結着材>
結着材は、本発明のスラリー組成物を用いて集電体上に正極合材層を形成することにより製造した正極において、正極合材層に含まれる成分が正極合材層から脱離しないように保持しうる成分である。一般的に、正極合材層における結着材は、電解液に浸漬された際に、電解液を吸収して膨潤しながらも正極活物質同士、正極活物質と導電材、或いは、導電材同士を結着させ、正極活物質等が集電体から脱落するのを防ぐ。
【0024】
そして、本発明のスラリー組成物に用いる結着材は、アミド基含有単量体単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、アミド基含有単量体単位の含有割合が10〜60質量%である共重合体(P1)と、フッ素含有重合体(P2)とを少なくとも含む。なお、結着材は、従来結着材として用いられる既知の重合体をさらに含んでいてもよいが、上述した効果を良好に得る観点からは、結着材中のその他の重合体の割合は10質量%以下であることが好ましく、結着材は、共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)のみからなることが好ましい。
【0025】
[共重合体(P1)]
共重合体(P1)のアミド基含有単量体単位を形成し得るアミド基含有単量体は、アミド基と、他の単量体と共重合可能な基(例えば、ビニル基などの炭素−炭素不飽和結合を有する基)とを有する化合物であれば特に限定されないが、アミド基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(アミド基含有ビニル化合物)が好ましい。アミド基含有ビニル化合物としては、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。そして、これらの中でも、スラリー組成物中で共重合体(P1)の有機溶媒への溶解性を確保し、出力特性およびサイクル特性を向上させる観点から、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミドが好ましい。そして、リチウムイオン二次電池の出力特性を向上させる観点から、N−ビニルアセトアミドがより好ましい。即ち、共重合体(P1)は、アミド基含有単量体単位として、N−ビニルアセトアミド単量体単位およびアクリルアミド単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、N−ビニルアセトアミド単量体単位を含むことがより好ましい。
なお、これらのアミド基含有単量体は単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0026】
また、結着材として使用する共重合体(P1)は、アミド基含有単量体単位の含有割合が、10質量%以上60質量%以下である必要があり、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。アミド基含有単量体由来の単量体単位の含有割合が10質量%未満であると、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下し、また、スラリー組成物中において共重合体(P1)の有機溶媒への溶解性が低下する。一方、アミド基含有単量体由来の単量体単位の含有割合が60質量%超であると、共重合体(P1)が電解液中で過度に膨潤し、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性が低下する。
【0027】
共重合体(P1)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0028】
そして、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは14以下、より好ましくは10以下である。共重合体(P1)を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位において、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が4以上であることで、共重合体(P1)が電解液中で適度に膨潤し、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させることができる。また、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が14以下であることで、共重合体(P1)の製造が容易となる。なお、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐アルキル基であってもよい。
具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、2−エチルヘキシルアクリレート(非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が8)が特に好ましい。
【0029】
また、結着材として使用する共重合体(P1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位の含有割合が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位の含有割合を20質量%以上にすることにより、共重合体(P1)の柔軟性を高くし、本発明のスラリー組成物を用いて得た正極を割れ難くできる。また、90質量%以下にすることにより、スラリー組成物中における共重合体(P1)の有機溶媒への溶解性を向上させることができる。
【0030】
更に、共重合体(P1)は、上述のアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合可能な他の単量体由来の単量体単位を含んでいてもよい。このような他の単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和カルボン酸エステルエチレンオキシド付加物、スチレンなどの芳香族ビニル化合物等の、アミド基含有単量体および(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を除くその他のビニル化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
なお、共重合体(P1)が(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリロトリルなどの極性が高い単量体由来の単量体単位を含むことで、共重合体(P1)の接着性が向上し接触抵抗が低減され、リチウムイオン二次電池の出力特性を向上させることができる。
【0031】
そして、共重合体(P1)は、上記その他のビニル化合物由来の単量体単位の含有割合が、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。その他のビニル化合物由来の単量体単位の含有割合を50質量%以下とすることにより、アミド基含有単量体の含有割合を十分確保することができ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を確保することができる。
【0032】
ここで、共重合体(P1)は、電解液膨潤度が5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることが更に好ましい。電解液膨潤度が5倍以下であれば、共重合体(P1)の電解液に対する膨潤度を適度な大きさとして、共重合体(P1)を含むスラリー組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池のサイクル特性および出力特性を確保することができる。
また、共重合体(P1)は、電解液膨潤度が1倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。電解液膨潤度が1倍以上であれば、電解液の拡散性が確保され、共重合体(P1)を含むスラリー組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池の出力特性を確保することができる。ここで、電解液膨潤度は、共重合体(P1)の調製条件(例えば、使用する単量体、重合条件など)を変更することにより適宜調整することができる。
なお、本発明において、「電解液膨潤度」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
【0033】
また、共重合体(P1)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによるポリスチレン換算値の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜2,000,000、より好ましくは50,000〜1,000,000、特に好ましくは100,000〜500,000である。共重合体(P1)の重量平均分子量を上記範囲とすることで、スラリー組成物の粘度調整が容易になる。
【0034】
[フッ素含有重合体(P2)]
フッ素含有重合体(P2)は、フッ素含有単量体単位を含む重合体である。具体的には、フッ素含有重合体(P2)としては、1種類以上のフッ素含有単量体の単独重合体または共重合体や、1種類以上のフッ素含有単量体とフッ素を含有しない単量体(以下、「フッ素非含有単量体」と称する。)との共重合体が挙げられる。
なお、フッ素含有重合体(P2)におけるフッ素含有単量体単位の含有割合は、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上である。また、フッ素含有重合体(P2)におけるフッ素非含有単量体単位の含有割合は、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。そして、フッ素含有重合体(P2)のアミド基含有単量体単位の含有割合は、10質量%未満である。
【0035】
ここで、フッ素含有単量体単位を形成し得るフッ素含有単量体としては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、三フッ化塩化ビニル、フッ化ビニル、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、フッ素含有単量体としては、フッ化ビニリデンが好ましい。
【0036】
また、フッ素非含有単量体単位を形成し得るフッ素非含有単量体としては、フッ素含有単量体と共重合可能なフッ素を含まない単量体、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの1−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物(アミド基含有単量体);(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸などのカルボキシル基を含有するビニル化合物;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有不飽和化合物;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有不飽和化合物;3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパン硫酸などの硫酸基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−リン酸プロピル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸などのリン酸基含有不飽和化合物などが挙げられる。
【0037】
そして、フッ素含有重合体(P2)としては、フッ素含有単量体としてフッ化ビニリデンを用いた重合体およびフッ素含有単量体としてヘキサフルオロプロピレンを用いた重合体が好ましく、フッ素含有単量体としてフッ化ビニリデンを用いた重合体がより好ましい。
具体的には、フッ素含有重合体(P2)としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体およびポリフッ化ビニルが好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。
なお、上述したフッ素含有重合体(P2)は、一種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい
【0038】
また、フッ素含有重合体(P2)は、フッ化ビニリデン単量体単位の含有割合が、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更により好ましくは95質量以上、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは100質量%である。フッ化ビニリデン単量体由来の単量体単位の含有割合が75質量%以上であることで、フッ素含有重合体(P2)の電解液中での過剰な膨潤が抑制され、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池の出力特性を更に向上させることができる。
【0039】
フッ素含有重合体(P2)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによるポリスチレン換算値の重量平均分子量は、好ましくは100,000〜2,000,000、より好ましくは200,000〜1,500,000、特に好ましくは400,000〜1,000,000である。フッ素含有重合体(P2)の重量平均分子量を上記範囲とすることで、正極活物質や導電材などの正極合材層からの脱離(粉落ち)が抑制され、またスラリー組成物の粘度調整が容易になる。
【0040】
[共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)の調製方法]
そして、共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)は、例えば、それぞれ上述した単量体を含む単量体組成物を水系溶媒中で重合することにより製造される。本発明において単量体組成物中の各単量体の含有割合は、共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)における単量体単位(繰り返し単位)の含有割合に準じて定めることができる。
ここで、上述した共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)の製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。
また、重合方法としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。また、重合開始剤としては、既知の重合開始剤を用いることができる。
【0041】
なお、共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)は、何れか一方をシードとして利用して他方をシード重合することに製造する等、少なくとも一部が複合化された重合体の状態で製造して使用することもできるが、本発明のスラリー組成物では、共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)とを別々に調製して用いることが好ましい。共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)を複合化させた場合、スラリー組成物の塗布性が低下する等の問題が生じる虞があると共に、共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)とを併用することによる効果が十分に得られない虞があるからである。
【0042】
そして、共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)は、分散媒に分散された分散液または溶解された溶液の状態で使用される。共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)の分散媒としては、共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)を均一に分散または溶解し得るものであれば、特に制限されず、水や有機溶媒を用いることができ、有機溶媒を用いることが好ましい。なお、有機溶媒としては、特に限定されることなく、本発明のスラリー組成物に使用する有機溶媒を用いることができる。
【0043】
[スラリー組成物中の共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)の含有量]
ここで、本発明のスラリー組成物中において、共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)の含有量の比(P1:P2)は、質量基準で5:95〜50:50であることが好ましく、5:95〜30:70であることがより好ましく、115:85〜30:70であることが更により好ましく、20:80〜30:70であることが特に好ましい。P1:P2=5:95より共重合体(P1)が多いことで、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を十分に向上させることができる。またP1:P2=50:50よりフッ素含有重合体(P2)が多いことで、スラリー組成物中の導電材や正極活物質の凝集が抑制され、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池の出力特性を更に向上させることができる。
【0044】
なお、本発明のスラリー組成物中の結着材(共重合体P1とフッ素含有重合体P2を含む)の含有量は、固形分換算で、正極活物質100質量部当たり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。結着材の含有量を正極活物質100質量部当たり0.1質量部以上とすることにより、正極活物質同士、正極活物質と導電材および正極活物質と集電体との結着性を高めることができるので、リチウムイオン二次電池とした際に、良好な出力特性を得ると共に、電池寿命を長くすることができる。また、10質量部以下とすることにより、結着材を含むスラリー組成物を用いて得た正極をリチウムイオン二次電池に適用した際に、電解液の拡散性が確保され、良好な出力特性を得ることができる。
【0045】
<正極活物質>
スラリー組成物に配合する正極活物質としては、特に限定されることなく、例えば、特開2013−152955号公報に記載された正極活物質などの既知の正極活物質を用いることができる。中でも、正極活物質としては、Mg、Ca、Ti、Zr、B、Alからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を表面に有するコバルト酸リチウム(LiCoO)粒子が好ましい。粒子表面の少なくとも一部に、Mg、Ca、Ti、Zr、B、Alからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物が存在するコバルト酸リチウム粒子を使用することで、正極活物質表面での電解液の分解を抑制することができ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる。この効果は、特にリチウムイオン二次電池が高電圧で使用される際に顕著に現れる。
【0046】
そして、リチウムイオン二次電池のサイクル特性向上の観点から、正極活物質としては、Mg、Ti、Zr、Alからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を表面に有するコバルト酸リチウム粒子がより好ましく、Zrの酸化物を表面に有するコバルト酸リチウム粒子であることが特に好ましい。コバルト酸リチウム粒子の表面の少なくとも一部に存在しうるZrの酸化物としては、例えば、ZrO、特開2008−311132号公報に記載のZr化合物が挙げられ、中でもZrOが特に好ましい。
【0047】
ここで、正極活物質の配合量や粒径、そしてコバルト酸リチウム粒子の表面に存在する酸化物の量は、特に限定されることなく、従来使用されている正極活物質と同様とすることができる。
【0048】
<導電材>
導電材は、正極活物質同士の電気的接触を確保するためのものである。そして、導電材としては、特に限定されることなく、既知の導電材を用いることができる。具体的には、導電材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンフレーク、炭素超短繊維(例えば、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維など)等の導電性炭素材料;各種金属のファイバー、箔などを用いることができる。これらの中でも、正極活物質同士の電気的接触を向上させ、スラリー組成物を用いて形成した正極を使用したリチウムイオン二次電池の電気的特性を向上させる観点からは、導電材として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラックを用いることが好ましく、アセチレンブラックを用いることが特に好ましい。
なお、これら導電材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
なお、導電材の配合量は、正極活物質100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、1.2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以下であることが好ましく、2.8質量部以下であることがより好ましい。導電材の配合量が少なすぎると、正極活物質同士の電気的接触を十分に確保することができず、リチウムイオン二次電池の電気的特性を十分に確保することができない場合がある。一方、導電材の配合量が多すぎると、スラリー組成物の安定性が低下すると共に正極中の正極合材層の密度が低下し、リチウムイオン二次電池を十分に高容量化することができない虞がある。
【0050】
<有機溶媒>
本発明のスラリー組成物中に含まれる有機溶媒としては、結着材を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、有機溶媒としては、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、アセチルピリジン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルホルムアミド、メチルエチルケトン、フルフラール、エチレンジアミンなどを用いることができる。これらの中でも、取扱い易さ、安全性、合成の容易さなどの観点から、有機溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0051】
<その他の成分>
本発明のスラリー組成物は、上記成分の他に、例えば、粘度調整剤、補強材、酸化防止剤、電解液の分解を抑制する機能を有する電解液添加剤などの成分を含有していてもよい。これらの他の成分は、公知のものを使用することができる。
【0052】
<リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物の製造方法>
本発明のスラリー組成物は、各成分を有機溶媒中に溶解及び/又は分散させることにより調製することができる。具体的には、スラリー組成物は、例えば、結着材としての共重合体(P1)と有機溶媒とを含む共重合体(P1)含有組成物を予め調製し(共重合体(P1)含有組成物調製工程)、その後、共重合体(P1)含有組成物と、結着材としてのフッ素含有重合体(P2)と、正極活物質と、導電材と、任意に、その他の成分および追加の有機溶媒とを混合することにより(混合工程)、調製することができる。
【0053】
ここで、上述した共重合体(P1)含有組成物は、例えば、共重合体(P1)の水分散液中の水を有機溶媒で置換することで調製することができる。有機溶媒を用いた水の置換は、例えば、水よりも沸点の高い有機溶媒を添加した後、減圧下で全量の水および一部の有機溶媒を蒸発させることにより行なうことができる。
【0054】
混合工程における混合には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの既知の混合機を用いることができる。また、追加の有機溶媒としては、共重合体(P1)含有組成物の調製に用いた有機溶媒と同じものを用いることができる。
【0055】
(リチウムイオン二次電池用正極)
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極合材層を有する。より具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と、集電体上に形成された正極合材層とを備え、正極合材層には、少なくとも、正極活物質と、導電材と、結着材とが含まれている。なお、正極中に含まれている、正極活物質、導電材および結着材は、本発明のスラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、本発明のスラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
【0056】
そして、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、正極合材層が、上述した本発明のスラリー組成物を用いて形成されているので、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることができる。
【0057】
なお、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、例えば、上述したリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を集電体上に塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布されたリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を乾燥して集電体上に正極合材層を形成する工程(乾燥工程)とを経て製造される。
【0058】
<塗布工程>
上記リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる正極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
【0059】
ここで、スラリー組成物を塗布する集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる集電体を用い得る。この際、アルミニウムとアルミニウム合金とを組み合わせて用いてもよく、種類が異なるアルミニウム合金を組み合わせて用いてもよい。アルミニウムおよびアルミニウム合金は耐熱性を有し、電気化学的に安定であるため、優れた集電体材料である。
【0060】
<乾燥工程>
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に正極合材層を形成し、集電体と正極合材層とを備えるリチウムイオン二次電池用正極を得ることができる。
【0061】
なお、乾燥工程の後、金型プレスまたはロールプレスなどを用い、正極合材層に加圧処理を施してもよい。加圧処理により、正極合材層と集電体との密着性を向上させることができる。
さらに、正極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、正極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
【0062】
(リチウムイオン二次電池)
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、正極として、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を用いたものである。そして、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を用いているので、出力特性およびサイクル特性に優れている。
【0063】
<負極>
リチウムイオン二次電池の負極としては、リチウムイオン二次電池用負極として用いられる既知の負極を用いることができる。具体的には、負極としては、例えば、金属リチウムの薄板よりなる負極や、負極合材層を集電体上に形成してなる負極を用いることができる。
なお、集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料からなるものを用いることができる。また、負極合材層としては、負極活物質とバインダーとを含む層を用いることができる。
【0064】
ここで、負極として負極合材層を集電体上に形成してなる負極を使用し、且つ、負極合材層にカルボキシメチルセルロースなどの粘度調整剤が含まれている場合、前述したように、リチウムイオン二次電池を形成した際にカルボキシメチルセルロースの製造時に混入する塩化物イオンなどのハロゲンイオンが電解液中に溶出する虞がある。しかし、本発明の正極を用いた場合、塩化物イオンなどのハロゲンイオンを共重合体(P1)のアミド基でトラップすることができるので、負極側から電解液中に溶出した塩化物イオンなどのハロゲンイオンにより正極活物質の劣化および集電体の腐食を抑制することができる。
【0065】
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましく、LiPFが特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0066】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類を用いることが好ましく、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物を用いることが更に好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができ、例えば0.5〜15質量%することが好ましく、2〜13質量%とすることがより好ましく、5〜10質量%とすることが更に好ましい。また、電解液には、既知の添加剤、例えばフルオロエチレンカーボネートやエチルメチルスルホンなどを添加してもよい。
【0067】
<セパレータ>
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
【0068】
<リチウムイオン二次電池の製造方法>
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。リチウムイオン二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
共重合体(P1)の電解液膨潤度、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
【0070】
<電解液膨潤度>
調製した共重合体(P1)の濃度8%のN−メチル−2−ピロリドン溶液(共重合体(P1)含有組成物)を、乾燥後の厚みが100μmになるようにテフロン(登録商標)シャーレに流しこみ乾燥して、重合体フィルムを作成した。得られた重合体フィルムから直径16mmの円形試料を打ち抜き、重量を測定した(重量を「A」とする)。次に、非水電解液(組成:濃度1.0MのLiPF溶液(溶媒は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(重量比)の混合溶媒)を準備した。そして、非水電解液20gに、円形試料を60℃で72時間浸漬させた。その後、膨潤した円形試料を取り出し、表面の非水電解液を軽く拭き取ってから重量を測定した(重量を「B」とする)。これらの値より電解液膨潤度(=B/A)を求めた。値が大きい程、電解液中で膨潤し易く、変形量が大きいことを示す。
<出力特性>
作製したパウチ型リチウムイオン二次電池を、25℃環境下、電流140mAで電圧が4.4Vになるまで定電流充電し、電圧4.4Vで充電電流が14mAになるまで定電圧充電を行った。続いて、電流140mAで電池電圧が3Vになるまで定電流放電を行い、初期容量とした。
初期容量を測定したパウチ型リチウムイオン二次電池を、25℃環境下、140mAで電池電圧が4.4Vになるまで定電流充電し、電圧4.4Vで充電電流が14mAになるまで定電圧充電を行った。続いて、電流1400mAで電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、2C容量とした。(2C容量)/(初期容量)×100(%)の値を出力特性とし、下記の基準に従い評価を行った。この値が高いほど、初期出力特性に優れ、すなわち内部抵抗が小さいことを意味する。
A:出力特性が90%以上である。
B:出力特性が87%以上90%未満である。
C:出力特性が84%以上87%未満である。
D:出力特性が84%未満である。
<サイクル特性>
出力特性を評価したパウチ型リチウムイオン二次電池について、60℃環境下、700mAで電池電圧が4.4Vになるまで充電し、700mAで電池電圧が3.0Vになるまで放電する操作を100回(100サイクル)繰り返し、放電容量を測定した。100サイクル終了時の放電容量に対する1サイクル終了時の放電容量の割合を百分率で算出したもの(=(100サイクル終了時の放電容量)/(1サイクル終了時の放電容量)×100%)を充放電容量保持率とし、下記の基準でサイクル特性を評価した。充放電容量保持率の値が高いほど高温サイクル特性に優れることを示す。
A:充放電容量保持率が80%以上である。
B:充放電容量保持率が77%以上80%未満である。
C:充放電容量保持率が74%以上77%未満である。
D:充放電容量保持率が70%以上74%未満である。
D:充放電容量保持率が70%未満である。
【0071】
(実施例1)
<共重合体(P1)の調製>
攪拌機付きのフラスコ中にイオン交換水90質量部、乳化剤としてドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.7質量部を入れた後、アミド基含有単量体としてN−ビニルアセトアミド25質量部、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート75質量部を入れ十分に撹拌した。その後70℃に昇温させ、該温度で保持した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れた後、70℃で3時間、80℃で2時間加温して重合を行い、共重合体P1の水分散液を得た。
続いて、得られた共重合体P1の水分散液にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を共重合体固形分が7%になるよう添加した。そして、90℃にて減圧蒸留を実施して水および過剰なNMPを除去し、固形分濃度8%の共重合体(P1)のNMP溶液(共重合体(P1)含有組成物)を得た。
そして、得られた共重合体(P1)含有組成物を用いて、共重合体(P1)の電解液膨潤度を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
<リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物の調製>
正極活物質としてその粒子表面にZrの酸化物(ZrO)を有するコバルト酸リチウム粒子(体積平均粒子径:20μm)100部と、導電材としてアセチレンブラック(AcB,電気化学工業社製、デンカブラック(登録商標)粉状品:個数平均粒子径35nm、比表面積68m/g)2.0部と、上述のように調製した共重合体(P1)含有組成物を固形分相当で0.4部と、フッ素含有重合体(P2)としてPVDF(フッ化ビニリデン由来の単量体単位の含有割合が100%)を固形分相当で1.6部と、NMPとをプラネタリーミキサーに固形分濃度が78%となるように添加し、60分固練りした。この固練り時のシェアは680W/kgであった。その後、さらにNMPを添加しプラネタリーミキサーを用いて混練し、正極用スラリー組成物を調製した。この正極用スラリー組成物は、温度25℃、せん断速度20s−1の条件で二重円筒型回転粘度計を用いて測定した粘度が約4000mPa・sであった。
【0073】
<リチウムイオン二次電池用正極の作製>
集電体として厚さ15μmのアルミ箔を準備した。そして、上記正極用スラリー組成物をアルミ箔の両面に乾燥後の塗布量が20mg/cmになるように塗布し、60℃で20分、120℃で20分間乾燥して正極原反を得た。この正極原反をロールプレスで圧延し、密度が3.7g/cmの正極合材層とアルミ箔とからなるシート状正極を作製した。そして、シート状正極を幅4.8mm、長さ50cmに切断し、二次電池用正極とした。
【0074】
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
負極活物質として球状人造黒鉛(体積平均粒子径:12μm)100部、結着材としてスチレンブタジエン重合体(個数平均粒子径:180nm、ガラス転移温度:−40℃)1部、粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロース1部、および、適量の水をプラネタリーミキサーにて攪拌し、負極用スラリー組成物を調製した。
次に、集電体として厚さ15μmの銅箔を準備した。そして、上記負極用スラリー組成物を銅箔の両面に乾燥後の塗布量が12mg/cmになるように塗布し、50℃で20分、120℃で20分間乾燥後、150℃で2時間加熱処理して負極原反を得た。この負極原反をロールプレスで圧延し、密度が1.8g/cmの負極合材層と銅箔とからなるシート状負極を作製した。そして、シート状負極を幅5.0mm、長さ52cmに切断し、二次電池用負極とした。
【0075】
<リチウムイオン二次電池の作製>
作製したリチウムイオン二次電池用正極とリチウムイオン二次電池用負極とを、セパレータ(厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔膜)を介在させて直径20mmの芯を用いて捲回し、捲回体を得た。得られた捲回体は、10mm/秒の速度で厚さ4.5mmになるまで一方向から圧縮した。なお、圧縮後の捲回体は平面視楕円形をしており、その長径と短径との比(長径/短径)は7.7であった。
また、非水電解液(組成:濃度1.0MのLiPF溶液(溶媒は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(重量比)の混合溶媒)を準備した。
そして、圧縮した捲回体を所定のアルミラミネート製ケース内に3.2gの非水電解液とともに収容した。そして、負極に接続したニッケルリード線および正極に接続したアルミニウムリード線を所定の箇所に接続したのち、ケースの開口部を熱で封口し、リチウムイオン二次電池とした。このリチウムイオン二次電池は、幅35mm、高さ48mm、厚さ5mmのパウチ形であり、電池の公称容量は700mAhである。得られたリチウムイオン二次電池について、出力特性およびサイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例2、4〜7)
共重合体P1調製時にN−ビニルアセトアミドと2−エチルヘキシルアクリレートの配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例3)
共重合体P1調製時にアミド基含有単量体としてのN−ビニルアセトアミドをアクリルアミドに変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例8)
共重合体P1調製時に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としての2−エチルヘキシルアクリレートをn−ブチルアクリレートに変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例9、10)
共重合体P1調製時に2−エチルヘキシルアクリレートの配合量を45質量部に変更し、その他の単量体として、それぞれ、メタクリル酸30質量部、アクリロニトリル30質量部を加えた以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例11〜13)
スラリー組成物調製時に共重合体P1とフッ素含有重合体P2の配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例14、15)
正極活物質としてそれぞれ、その粒子表面にAlの酸化物(Al)を有するコバルト酸リチウム粒子、その粒子表面にMgの酸化物(MgO)を有するコバルト酸リチウム粒子を使用した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例1)
共重合体P1調製時にN−ビニルアセトアミドと2−エチルヘキシルアクリレートの配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例2)
共重合体P1調製時にN−ビニルアセトアミドと2−エチルヘキシルアクリレートの配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1の水分散液を調製したが、共重合体P1がNMPに溶解せず、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を調製することができなかった。
【0084】
(比較例3)
共重合体P1を使用せず、結着材としてフッ素含有重合体(P2)としてのPVDFを固形分相当で2.0部使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0085】
なお、以下の表1中、N−ビニルアセトアミドを「NVA」と、アクリルアミドを「AA」と、2−エチルヘキシルアクリレートを「2−EHA」と、n−ブチルアクリレートを「n−BA」と、メタクリル酸を「MAA」と、アクリロニトリルを「AN」と、フッ化ビニリデンを「VDF」と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位中の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数を「炭素数」と略記する。
【0086】
【表1】
【0087】
表1より、アミド基含有単量体単位を所定の割合で含み、そして(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む共重合体(P1)と、フッ素含有重合体(P2)を含有する結着材を用いた実施例1〜15では、サイクル特性および出力特性が優れていることが分かる。
一方、アミド基含有単量体単位の含有割合が所定の範囲を超える共重合体(P1)を用いた比較例1では、サイクル特性はある程度確保できてはいるが、出力特性が極端に悪く、サイクル特性と出力特性をバランスよく向上させることができていないことが分かる。また、アミド基含有単量体単位の含有割合が所定の範囲に満たない共重合体(P1)を用いた比較例2では、上述のように、共重合体P1がNMPに溶解せず、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を調製することができなかった。
【0088】
更に、表1の実施例1および3より、共重合体(P1)中アミド基含有単量体の種類を変更することにより、リチウムイオン二次電池の出力特性を更に向上させ得ることが分かる。
また、表1の実施例1、2、4〜7より、共重合体(P1)中アミド基含有単量体の割合を変更することにより、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させ得ることが分かる。
更に、表1の実施例1および8より、共重合体(P1)中(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類を変更することにより、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させ得ることが分かる。
加えて、表1の実施例1、11〜13より、共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)の含有量の比を変更することで、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させ得ることが分かる。
また、表1の実施例1、14および15より、正極活物質としてのコバルト酸リチウム粒子の表面に存在する酸化物の種類を変更することで、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させ得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を提供することができる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用正極、そして出力特性およびサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。