(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1ブラケットと、前記第1ブラケットに対して回転する第2ブラケットと、前記第1ブラケットに対して回転するカムと、前記カムに回転に基づいて前記第1ブラケットの径方向に移動して前記第2ブラケットに係合する複数のポールとを備え、
前記第2ブラケットは、前記ポールの外歯と係合する内歯が設けられた外周壁と、この外周壁よりも径方向内方において周方向にわたるように設けられた内周部とを有し、
前記複数のポールのうちの少なくとも1つは、径方向外方に配置される第1ブロックと径方向内方における前記カムの回転軸方向にずれた位置に配置されるとともに前記第1ブロックと一体的に形成された第2ブロックとを有し、
前記第1ブロックの径方向外方端面には前記外歯が設けられ、
前記第1ブロックの径方向内方端面には前記カムが当接するカム面が設けられ、
前記第2ブロックの径方向外方端面には前記ポールの径方向外方への移動により前記内周部に当接する制限面が設けられ、
前記カム面と前記制限面とが同じ面構造を有する
シートリクライニング装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図12を参照して実施形態に係るシートリクライニング装置について説明する。
図1に示すように、シートリクライニング装置20は、例えば、車両フロア1等に設置されるシート2に適用される。例えば、適用に係るシート2は、座面を構成するシートクッション3と、背もたれを構成するシートバック4とを備え、シートバック4がシートクッション3に対して回転可能にかつ所定角度に維持可能なものである。
【0017】
シートバック4は、シートリクライニング装置20を介してシートクッション3に取り付けられる。このシートリクライニング装置20が、シートバック4をシートクッション3に対して所定角度に維持する。
【0018】
図2に示すように、シートリクライニング装置20の一方の回転体(後述の第1及び第2ブラケット21,31のうちの一方)が、シートクッション3に取り付けられているプレート3aに固定される。シートリクライニング装置20の他方の回転体(後述の第1及び第2ブラケット21,31のうちの他方)は、シートバック4に取り付けられているプレート4aに固定される。この実施形態における説明では、
図2に示すように、第1ブラケット21がシートクッション3側のプレート3aに固定され、第2ブラケット31がシートバック4側のプレート4aに固定されたものとして説明する。
【0019】
また、シートリクライニング装置20の中央部にシャフト5が貫通する。このシャフト5は、シートリクライニング装置20内に設けられたカム機構を動作させる。このシャフト5の端部には、このシャフト5を回転させるための操作レバー5aが取り付けられている。
【0020】
シートリクライニング装置20がシート2に取り付けられた状態において、シャフト5の回転軸C1とシートリクライニング装置20の回転軸C2(第1ブラケット21及び第2ブラケット31の回転軸)とは一致する。
【0021】
なお、以降の説明では、シートリクライニング装置20の回転軸C2を中心軸とする円周に沿う方向を周方向といい、この回転軸C2に垂直な方向(法線方向)を径方向という。また、シートバック4が後方に倒れるのに伴って第2ブラケット31が回転する方向を後回転方向RXという。
【0022】
図3を参照して、シートリクライニング装置20の構成を説明する。
図3に示すように、シートリクライニング装置20は、第1ブラケット21と、第2ブラケット31と、第1〜第3ポール40A〜40Cと、カム50と、カム50を付勢する渦巻きばね60と、渦巻きばね60を覆うカバー70と、第1及び第2ブラケット21,31とを保持する保持部材80とを備えている。また、シートリクライニング装置20は、第1ポール40Aの余分な動きを抑制するためのボールカム90を備える。なお、上記カム機構は、カム50、渦巻きばね60、第1〜第3ポール40A〜40C、及びボールカム90により構成される。
【0023】
図4を参照して、第1ブラケット21について説明する。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第1ブラケット21は、円板状の本体部22と、ポール40A,40B,40Cの移動を案内する3つのガイド部23と、第1ブラケット21を固定部材に取り付けるための凸部27とを有する。
【0024】
ガイド部23は、本体部22の内面22aから突出するように設けられている。
ガイド部23は、外方に向かって延びるガイド面24と内側面23aとを有する。3つのガイド部23の内側面23aに囲まれる領域には、カム50が収容される。
【0025】
隣り合う2つのガイド部23において互いに対向する2つのガイド面24は、互いに平行であり、そして、これらガイド面24は本体部22の内面22aと協働してガイド溝26を構成する。ガイド溝26は、ポール40A,40B,40Cを径方向への移動に案内する。
【0026】
3つのガイド部23は、同一形状を有し、周方向に等角度で配置されている。すなわち、3つのガイド溝26は、周方向に等角度間隔に配置される。ガイド部23の反対側(第1ブラケット21の外面22b側)は、ガイド部23に対応して陥没する。
【0027】
凸部27は、各ガイド溝26の反対側の面(本体部22の外面22b)から突出するように設けられる。凸部27の反対側(第1ブラケット21の内面22a側)は、凸部27に対応して陥没する。凸部27の反対側に構成される陥没部の一つが、上記収容凹部28として用いられる。この収容凹部28には、渦巻きばね60の端部62aが収容される。
【0028】
第1ブラケット21を固定部材(例えば、プレート3a)に取り付ける際には、固定部材に設けられる孔または切欠きにこの凸部27が挿入される。そして、この凸部27と固定部材とが溶接される。
【0029】
本体部22の中央部には、渦巻きばね60の渦巻き部61が収容される収容部25が設けられている。
この収容部25は、連通溝25aを介して第1ブラケット21の収容凹部28に繋がっている。連通溝25aから収容凹部28にわたる部分に渦巻きばね60の外方係合部62(
図3参照)が係合する。
【0030】
このような第1ブラケット21は、プレス加工により形成される。
例えば、金属板のプレス加工により、ガイド部23とガイド部23の反対側の陥没構造と、凸部27とその反対側の陥没構造とが、一組の金型で形成される。
【0031】
図5を参照して、カム50の構造について説明する。
カム50は、第1及び第2ブラケット21,31の間に配置される(
図2参照)。また、カム50は、第1ブラケット21の各ガイド部23の内側面23aに囲まれる領域に収容される。
【0032】
カム50は、カム本体部51と、3本のポール係合部52と、渦巻きばね60の内方係合部63(
図3参照)に係合する2本のばね係合部53とを有する。3本のポール係合部52は、第1〜第3ポール40A〜40Cにそれぞれ係合する。ポール係合部52は、カム50の一方の面(第1面50a)に設けられ、ばね係合部53は、カム50の他方の面(第2面50b(
図2参照))に設けられている。
【0033】
カム本体部51の中央部には、シャフト5が嵌合する嵌合孔54が設けられている。このカム50はシャフト5の回転に連動する。具体的には、シャフト5に取り付けられている操作レバー5aの操作によりカム50が回転する。
【0034】
カム本体部51の周面には、各ポール40A〜40Cのカム面44A〜44Cに当接する3個のカム部(以下、それぞれを「第1カム部55」、「第2カム部56」、「第3カム部57」という。)が等角度間隔で設けられる。
【0035】
第1カム部55は、第1ポール40Aの第1カム面44Aを押す2個の押圧部55a,55b(以下、それぞれ「第1押圧部55a」、「第2押圧部55b」という。)を有する。
【0036】
第2カム部56は、第2ポール40Bの第2カム面44Bを押す3個の押圧部56a,56b,56cを有する。
第3カム部57は、第3ポール40Cの第3カム面44Cを押す3個の押圧部57a,57b、57cを有する。第3カム部57は、第2カム部56と同じ構造を有する。
【0037】
カム50は、渦巻きばね60によって第1ブラケット21に対して所定の回転方向(以下、この方向を「付勢方向RB」という。)に付勢される。すなわち、カム50には、付勢方向RBに回転する付勢力が付与されている。
【0038】
図6及び
図7を参照して、第1ポール40Aについて説明する。
図6は、第1ポール40Aの斜視図であり、
図7(a)は、
図6の矢印Aからみた図、
図7(b)は、
図6の矢印Bからみた図である。
【0039】
第1ポール40Aは、互いに段違いに配置された第1ブロック41Aと第2ブロック42Aとを備える。具体的には、第1ブロック41Aは径方向において外方(径方向外方)に、第2ブロック42Aは径方向において内方(径方向内方)に配置され(
図2等参照)、かつ、第1ブロック41Aと第2ブロック42Aとは回転軸C2に沿う方向(回転軸方向)にずれた位置に配置される。
【0040】
第1ブロック41Aはガイド溝26に装着される。
また、第1ブロック41Aは、回転軸C2に沿う方向において、カム50と同じ位置に配置される(
図2参照)。
【0041】
第1ブロック41Aの径方向外方端面(第2ブラケット31の内歯37と対向する端面)は、円弧状に構成されている。この径方向外方端面には、第2ブラケット31の内歯37と噛合する外歯43Aが形成されている。
【0042】
第1ブロック41Aの径方向内方端面(径方向外方端面とは逆側の端面)には、カム50の第1カム部55が当接する第1カム面44Aが形成されている。
第1カム面44Aは、周方向に連続する3つの部位(以下、それぞれを「第1部位441A」、「第2部位442A」、「第3部位443A」という。)を有する。
【0043】
第1部位441Aには第1カム部55の第1押圧部55aが当接する。第2部位442Aには第1カム部55の第1押圧部55a及び第2押圧部55bは実質的に当接しない。第3部位443Aには第1カム部55の第2押圧部55bが当接する。
【0044】
また、第1ブロック41Aの径方向内方端面には、第1カム面44Aから連続して、ボールカム90を収容するための凹曲面部45Aが設けられている。ボールカム90は、第1ポール40Aの凹曲面部45Aと、カム50の第1カム部55と、ガイド部23のガイド面24とにより構成されるボールカム収容室Sに収容される(
図10参照。)。
【0045】
第2ブロック42Aは、カム50の第1面50a側に配置される。すなわち、回転軸C2に沿う方向においてカム50よりも第2ブラケット31側に配置される(
図2参照)。そして、第2ブロック42Aの径方向外方端面が、第2ブラケット31の外周部35または内周部36(
図9参照)に対向するように、第2ブロック42Aが配置される。
【0046】
第2ブロック42Aの径方向外方端面には、第2ブラケット31の内周部36に当接して第1ポール40Aの径方向外方への移動を制限する制限部46Aが設けられている。
制限部46Aを構成する制限面46Asは、第1カム面44Aと同じ面構造を有する。具体的には、制限部46Aを構成する制限面46Asは、周方向に連続する3つの部位(以下、それぞれを「第4部位464A」、「第5部位465A」、「第6部位466A」という。)を有する。
【0047】
第4部位464Aは、第1カム面44Aの第1部位441Aに対応する面構造を有し、第5部位465Aは、第1カム面44Aの第2部位442Aに対応する面構造を有し、第6部位466Aは、第1カム面44Aの第3部位443Aに対応する面構造を有する。
【0048】
第5部位465Aは、第2ブラケット31の内周部36の内周面36aに沿う形状に構成されている。この第5部位465Aは、第1ポール40Aの径方向における位置に応じて第2ブラケット31の内周部36に当接したり、この内周部36から離間したりする。
【0049】
第4部位464A及び第6部位466Aは、径方向において第5部位465Aよりも内方(径方向内方)の位置に構成される。このため、第1ポール40Aの径方向における位置に関係なく、第2ブラケット31の内周部36に当接しない。
【0050】
また、制限面46Asと第1カム面44Aとは、第1ポール40Aの長手方向(シートリクライニング装置20に配置された第1ポール40Aにおいてその径方向に沿う方向)において、互いに同じ位置にある。ここで、同じ位置とは、半抜きプレス加工による段違い構造の形成において、雄金型と雌金型の噛み合い部分に対応して形成される雄金型側の面と雌金型側の面について、両面の位置関係のことを示す。
【0051】
また、第2ブロック42Aの中央部には、板厚方向に貫通するカム孔47Aが設けられている。カム孔47Aは、周方向に長く、かつ付勢方向RBに沿って内方側に向かうように構成されている。カム孔47Aには、カム50のポール係合部52が挿通する。
【0052】
このような第1ポール40Aはプレス加工により、第1ブロック41Aと第2ブロック42Aとが一体的に形成される。
例えば、金属板のプレス加工により、第1ブロック41Aの第1カム面44Aと第2ブロック42Aの制限面46Asとが一組の金型で形成される。
【0053】
図8を参照して、第2ポール40Bについて説明する。
第2ポール40Bは、互いに段違いに配置された第1ブロック41Bと第2ブロック42Bとを備える。第1ブロック41Bは径方向において外方(径方向外方)に、第2ブロック42Bは径方向において内方(径方向内方)に配置される。
【0054】
第1ブロック41Bは、ガイド溝26に装着される。
また、第1ブロック41Bは回転軸C2に沿う方向において、カム50と同じ位置に配置される。
【0055】
第1ブロック41Bの径方向外方端面(第2ブラケット31の内歯37と対向する端面)は、円弧状に構成されている。この径方向外方端面には、第2ブラケット31の内歯37と噛合する外歯43Bが形成されている。また、第1ブロック41Bの径方向内方端面(径方向外方端面とは逆側の端面)には、カム50の第2カム部56が当接する第2カム面44Bが形成されている。
【0056】
第2ブロック42Bは、カム50の第1面50a側に配置される。すなわち、回転軸C2に沿う方向においてカム50よりも第2ブラケット31側に配置される。
第2ブロック42Bの中央部には、板厚方向に貫通するカム孔47Bが設けられている。カム孔47Bは、周方向に長く、かつ付勢方向RBに沿って内方側に向かうように延びるように構成されている。カム孔47Bにはカム50のポール係合部52が挿通する。
【0057】
図9を参照して、第2ブラケット31について説明する。
図9(a)及び
図9(b)に示すように、第2ブラケット31は、シャフト5が挿通する挿通孔32aを有する円板状の本体部32と、本体部32の外縁に沿って設けられた外周壁33とを有する。
【0058】
外周壁33の内周面33aには、全周にわたって、第1〜第3ポール40A〜40Cの外歯43A〜43Cと噛合する内歯37が設けられている。
外周壁33の外周面33bは、保持部材80に摺接する。外周壁33の外面33cは、保持部材80の突起83(
図2参照)に摺接する。
【0059】
本体部32の中央部には、略円形の凹部34が設けられている。
凹部34は、所定の第1半径の周面を有する外周部35と、第1半径よりも小さい第2半径の周面を有する内周部36とを有する。すなわち、外周部35の周面を基準面としたとき、内周部36は径方向における内方(径方向内方)に突出する。
【0060】
外周部35は、次のように構成される。
外周部35の周面は、第1ポール40Aが最も径方向外方に移動するとき(すなわち第1ポール40Aの外歯43Aと第2ブラケット31の内歯37とが噛合するとき)の第1ポール40Aの制限部46Aの第5部位465Aの位置よりも、径方向外方に位置する(
図10参照。)。
【0061】
これにより、第2ブラケット31の回転により、外周部35が、第1ポール40Aの制限部46Aに対応する位置に配置されるとき、第1ポール40Aの径方向への移動が制限されない。このため、この配置のときは、第1ポール40Aが最も径方向外方に移動することが可能となる。
【0062】
内周部36は、次のように構成される。
内周部36の周面は、第1ポール40Aが最も外側に移動するとき(すなわち第1ポール40Aの外歯43Aと第2ブラケット31の内歯37が噛合するとき)の第1ポール40Aの制限部46Aの第5部位465Aの位置よりも内方(径方向内方)に位置する(
図10参照。)。
【0063】
これにより、第2ブラケット31の回転により、内周部36が、第1ポール40Aの制限部46Aに対応する位置に配置されるとき、第1ポール40Aの制限部46Aが内周部36に当接する。このため、この配置のときは、第1ポール40Aの径方向外方への移動が制限される。
【0064】
次に、保持部材80を説明する。
図3に示すように、保持部材80は、円環状の本体部81と、本体部81の一方の周縁から中心部に向かって延びるフランジ部82とを備える。フランジ部82には、内側(第2ブラケット31側)に向かって突出する突起83が設けられている。この突起83により、第2ブラケット31の回転軸C2方向への移動の遊び(余裕度)が調整される。
【0065】
保持部材80の本体部81は、第1ブラケット21の外周面22c及び第2ブラケット31の外周面33bを覆う。また、保持部材80の本体部81は、第1ブラケット21の外周面22cにレーザ溶接される。保持部材80のフランジ部82は、第2ブラケット31の外周壁33の外面33c(
図2参照)を覆う。これにより、保持部材80は、第1ブラケット21と第2ブラケット31との間の距離を、回転軸C2方向において所定距離に維持して、両者を保持する。
【0066】
図10〜
図12を参照して、シートリクライニング装置20の動作を説明する。
図10〜
図12は、
図2のC−C線に沿う断面の模式図である。
図10は、各ポール40A〜40Cの外歯43Aと第2ブラケット31の内歯37とが噛合する状態(以下、「ロック状態」)を示す。
【0067】
図11は、各ポール40A〜40Cが径方向における内方側の位置に維持されることにより、各ポール40A〜40Cの外歯43A〜43Cと第2ブラケット31の内歯37とが噛合していない状態(以下、「ロック解除状態」)を示す。
【0068】
図12は、第1ポール40Aの径方向外方への移動が制限されることにより、各ポール40A〜40Cの外歯43A〜43Cと第2ブラケット31の内歯37とが噛合しない状態(以下、「ロック制限状態」)を示す。
【0069】
シートリクライニング装置20は、次の2つの基本動作を含む。
第1の基本動作は、カム50の回転による各ポール40A〜40Cの動作である。
第2の基本動作は、第2ブラケット31の回転に伴う各ポール40A〜40Cの移動制限である。
【0070】
第1の基本動作について、第1ポール40Aを例にして説明する。
カム50は、付勢方向RBに回転するように付勢されている。カム50が付勢方向RBに回転するとき、第1カム部55が第1ポール40Aの第1カム面44Aを押すため、第1ポール40Aが径方向外方へ移動する。
【0071】
そして、
図10に示すように、第1ポール40Aの外歯43Aが第2ブラケット31の内歯37に噛合したときには、第1カム部55は、第1ポール40Aを径方向外方へ押圧する。これにより、第2ブラケット31が第1ブラケット21に対して固定される。すなわち、シートリクライニング装置20がロック状態になる。
【0072】
このように、第1カム部55が第1ポール40Aの第1カム面44Aが押すときは、第1カム部55の第1押圧部55aが第1カム面44Aの第1部位441Aを押し、かつ第1カム部55の第2押圧部55bが第1カム面44Aの第3部位443Aを押す。すなわち、第1ポール40Aは、第2部位442Aを挟む2箇所において径方向に向かって押される。このため、第1ポール40Aの姿勢が安定し、径方向への移動が円滑になる。
【0073】
操作レバー5aの操作により、カム50が付勢方向RBとは反対方向に回転するときは、カム50のポール係合部52が第1ポール40Aのカム孔47Aの内面を押すため、第1ポール40Aが内方(径方向内方)に移動する。
【0074】
このとき、
図11に示すように、第1ポール40Aの外歯43Aと第2ブラケット31の内歯37とが離間する。これにより、第1ブラケット21に対して第2ブラケット31が回転可能となる。すなわち、シートリクライニング装置20がアンロック状態になる。
【0075】
第2の基本動作について説明する。
図12に示すように、第2ブラケット31の内周部36が第1ポール40Aの制限部46Aに対応する位置にあるときに操作レバー5aの操作が解除されたとすると、カム50が付勢方向RBに回転する。そうすると、カム50の回転に伴って第1ポール40Aが径方向外方に移動するが、第1ポール40Aの制限部46Aが内周部36に当接するため、第1ポール40Aが最も径方向外方へ移動する前にその移動が阻止される。すなわち、第1ポール40Aの径方向への移動が制限されることにより、第1ポール40Aの外歯43Aと第2ブラケット31の内歯37とが離間した状態で維持される。また、第1ポール40Aの制限部46Aが第2ブラケット31の内周部36に当接することにより、カム50の回転が阻止されるため、他のポール(第2及び第3ポール40B,40C)もその外歯43B,43Cと第2ブラケット31の内歯37とが離間した状態で維持される。このため、第2ブラケット31の内周部36が第1ポール40Aの制限部46Aに対応する位置にあるときは、シートリクライニング装置20がロック状態になることが制限される。すなわち、シートリクライニング装置20はロック制限状態(第2ブロック31の回転が許容される状態)になる。
【0076】
次に、シートリクライニング装置20の各状態におけるカム機構の動作について説明する。
図10に示すロック状態は、シートバック4がシートクッション3に対して所定範囲内の角度に傾けられて、操作レバー5aが操作されないときの、シートリクライニング装置20の態様である。
【0077】
シートバック4がシートクッション3に対して所定範囲内の角度で傾けられるとき、すなわち第2ブラケット31の外周部35が第1ポール40Aの制限部46Aに対応する位置にあるときは、上記したように第1ポール40Aの径方向への移動が制限されない。
【0078】
そして、操作レバー5aが操作されていないとき、すなわちカム50に付勢方向RBとは反対方向の力が加えられていないときは、カム50に加えられている付勢力によりカム50は付勢方向RBに回転するため、第1〜第3カム部55〜57が各ポール40A〜40Cの第1〜第3カム面44A〜44Cを押圧する。これにより、各ポール40A〜40Cが径方向外方に押圧されるため、各ポール40A〜40Cの外歯43Aが第2ブラケット31の内歯37に噛合する。すなわち、シートリクライニング装置20がロック状態になる。
【0079】
また、カム50の回転により押圧力の一部は、このボールカム90を介して第1ポール40Aに加えられる。このとき、ボールカム90は第1ポール40A及びガイド部23を押す。これによって、第1ポール40Aの側面41Asとガイド面24との間に隙間があることに起因して生じる第1ポール40Aの余分な動きが抑制されるようになる。
【0080】
図11に示すロック解除状態は、操作レバー5aを操作しているときのシートリクライニング装置20の態様である。
操作レバー5aの操作により、カム50が付勢方向RBとは反対方向に回転すると、上記第1の基本動作により、各ポール40A〜40Cが径方向の内方に移動するため、各ポール40A〜40Cの外歯43A〜43Cと第2ブラケット31の内歯37とが離間する。これにより、シートリクライニング装置20がアンロック状態になる。
【0081】
図12に示すロック制限状態は、シートバック4がシートクッション3に対して所定範囲以外の角度に傾けられて、操作レバー5aが操作されていないときの、シートリクライニング装置20の対応である。
【0082】
シートバック4がシートクッション3に対して所定範囲以外の角度で傾けられるとき、すなわち第2ブラケット31の内周部36が第1ポール40Aの制限部46Aに対応する位置にあるときは、第2の基本動作により、第1ポール40Aの径方向への移動が制限される。すなわち、シートリクライニング装置20がロック制限状態になる。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態のシートリクライニング装置20は、従来のポールとは異なるポール構造を有するものであるが、従来のロック制限機構を有するシートリクライニング装置と実質的に同等の作用を奏する。
【0084】
従来のシートリクライニング装置では、第1ポール40Aについて、カム面と制限面とは互いに異なる面構造を有するものとして構成されている。すなわち、従来の第1ポール40Aの第1カム面は、本実施形態の第2ポール40Bの第2カム面44Bと同様のS字形状を有し、カム50により3箇所で押されるものとして構成される。従来の第1ポール40Aの制限面は、略Λ字形状を有し、周方向の中間部で径方向外方に突出するものとして構成される。このように従来の第1ポールでは、第1カム面の面構造と制限面の面構造とが異なっている。
【0085】
これに対して、上記説明したように、第1カム面44Aと制限面46Asとが同じ面構造を有するように、それぞれが構成されている。すなわち、第1カム面44Aと制限面46Asとは同一形状に構成される。
【0086】
具体的には、第1カム面44Aにおいて、周方向の中間部位(すなわち第2部位442A)が第1カム部55に当接しない部分として構成され、この中間部位の両側の部位(すなわち第1部位441Aと第3部位443A)が第1カム部55に当接する部分として構成されている。一方、制限面46Asにおいては、この中間部位に対応する部分(すなわち、第5部位465A)が第2ブラケット31の内周部36に当接する部位として構成され、その両側の部位(すなわち、第4部位464Aと第6部位466A)が第2ブラケット31の内周部36に当接しない部位として構成されている。
【0087】
すなわち、第1カム面44Aと制限面46Asはともに周方向において機能を発揮させる機能部位と機能を発揮させない非機能部位とに区分されている。そして、第1カム面44Aの機能面と制限面46Asの非機能面とが互いに対応し、第1カム面44Aの非機能面と制限面46Asの機能面とが対応するように、第1カム面44Aと制限面46Asとが構成されている。
【0088】
このような構成により、作用の異なる2つの機能(第1カム面44Aとしての機能と制限面46Asとしての機能)を一つの面構造により発揮させている。
そして、一つの面構造の表裏のうちで、裏面側(径方向内方に向く面)において第1カム面44Aとしての機能を発揮させ、表面側(径方向外方に向く面)において制限面46Asとしての機能を発揮させている。
【0089】
以上に説明したように、本実施形態に係るシートリクライニング装置20は、次の効果を奏する。
(1)上記実施形態では、第1ポール40Aについて、第1カム面44Aと制限部46Aを構成する制限面46Asとが同じ面構造をする。この構成によれば、この第1ポール40Aをプレス加工により形成することが可能である。すなわち、上記構成のシートリクライニング装置20は製造が容易な構成を有する。
【0090】
(2)上記実施形態では、第1カム面44Aは、周方向に順に配置された、第1部位441Aと、第2部位442Aと、第3部位443Aとを有し、第1部位441Aと第3部位443Aとがカム50の第1カム部55が当接する部位として構成されている。また、制限部46Aの制限面46Asは、第1部位441Aに対応する第4部位464Aと、第2部位442Aに対応する第5部位465Aと、第3部位443Aに対応する第6部位466Aとを有し、第5部位465Aが、第1ポール40Aの径方向外方への移動により第2ブラケット31の内周部36に接触する部位として構成されている。
【0091】
この構成によれば、第1ポール40Aは、第1部位441Aと第3部位443Aで、すなわち第2部位442Aを挟む2箇所でカム50により押される。このため、第1ポール40Aが片側から押される構成に比べて、第1ポール40Aの径方向への移動が円滑になる。
【0092】
(3)上記実施形態では、制限部46Aの制限面46Asの第5部位465Aは、内周部36の内周面36aに沿う形状に構成されている。
すなわち、制限面46Asの第5部位465Aと内周部36との接触は面同士の接触となる。このため、制限部46Aの制限面46Asの第5部位465Aが第2ブラケット31の内周部36に接触しているときの第1ポール40Aの姿勢が安定する。
【0093】
これにより、制限部46Aの第5部位465Aが第2ブラケット31の内周部36に接触している状態にあるとき、第1ポール40Aの余分な動き(径方向に対して傾く動き)が抑制されるため、第1ポール40Aの余分な動きに起因して第2ブラケット31の回転が阻害されるといった事態が抑制される。
【0094】
(4)上記実施形態では、第1ポール40Aの第1ブロック41Aの径方向内方端面と第2ブロック42Aの径方向外方端面と同一形状をなし、両端面が径方向において同じ位置にある。
【0095】
この構成によれば、第1ポール40Aをプレス加工する場合に、第1ブロック41Aの径方向内方端面と第2ブロック42Aの径方向外方端面とが径方向において離れた位置にある場合に比べて、径方向内方端面のカム面44A及び径方向外方端面の制限面46Asを寸法精度良く形成することが可能である。
【0096】
(5)上記実施形態では、第1ポール40Aがプレス加工により形成されている。
この構成によれば、鍛造によって第1ポール40Aを形成する場合に比べて、第1ポール40Aの形成時間が短縮される。
【0097】
なお、上記実施形態は以下のように変更することもできる。
・上記実施形態では、3つのポール40A〜40Cのうちの1つのポール(第1ポール40A)について、制限部46Aを設けて、第1カム面44Aと制限面46Asとを同一面構造としているが、他のポール(第2及び第3ポール40B,40C)についても第1ポール40Aと同様に構成してもよい。
【0098】
・上記実施形態では、シートバック4が後方側に倒れるときの第2ブラケット31の後回転方向RXとカム50の付勢方向RBとが一致しているが、これを異なるように構成することもできる。すなわち、シートバック4が後方側に倒れるときの第2ブラケット31の後回転方向RXとカム50の付勢方向RBとを互いに逆になるように構成してもよい。
【0099】
・前記実施形態では、第1ブラケット21内に3つのポール40A,40B,40Cを配置しているが、ポールの個数は限定されない。また、複数のポールが配置される場合、これらの動作が連動する構成であれば互いに異なる形状であってもよいし、また、同一形状であってもよい。
【0100】
・上記実施形態では、第1ブラケット21をシートクッション3側に固定し、第2ブラケット31をシートバック4側に固定したが、この固定関係を逆に構成してもよい。すなわち、第1ブラケット21をシートバック4側に固定し、第2ブラケット31をシートクッション3側に固定してもよい。
【0101】
[付記]
上記実施形態及び変形例から把握される技術的思想について付記する。
第1ブラケットと、前記第1ブラケットに対して回転する第2ブラケットと、前記第1ブラケットに対して回転するカムと、前記カムに回転に基づいて前記第1ブラケットの径方向に移動して前記第2ブラケットに係合する複数のポールとを備え、前記第2ブラケットは、前記ポールの外歯と係合する内歯が設けられた外周壁と、この外周壁よりも径方向内方において周方向にわたるように設けられた内周部とを有し、前記複数のポールのうちの少なくとも1つの前記ポールは、外方に配置される第1ブロックと径方向内方に配置される第2ブロックとを有し、前記第1ブロックの外方端には前記外歯が設けられ、前記第1ブロックの径方向内方端面には前記カムが当接するカム面が設けられ、前記第2ブロックの外方端には前記ポールの外方への移動により前記内周部に当接する制限面が設けられ、前記カム面と前記制限面とが同じ面構造を有し、前記カム面の中間部位を挟む両側の各部位がカム機能を有し、前記中間部位はカム機能を有さず、前記制限面において前記カム面の中間部位に対応する部位が前記内周部に当接する部分として構成される。