特許第6237354号(P6237354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237354
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】熱回収発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 21/02 20060101AFI20171120BHJP
   F01K 25/04 20060101ALI20171120BHJP
   F01B 11/04 20060101ALI20171120BHJP
   F01B 23/10 20060101ALI20171120BHJP
   F01B 29/12 20060101ALI20171120BHJP
   F01B 31/26 20060101ALI20171120BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20171120BHJP
   F02G 5/04 20060101ALI20171120BHJP
   F03G 7/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F01K21/02
   F01K25/04
   F01B11/04
   F01B23/10
   F01B29/12
   F01B31/26
   F01N5/02 F
   F02G5/04 G
   F03G7/06 J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-45353(P2014-45353)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169145(P2015-169145A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 憲志郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 雅至
(72)【発明者】
【氏名】武内 康浩
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−038089(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137287(WO,A1)
【文献】 特開2005−330885(JP,A)
【文献】 特開2008−223648(JP,A)
【文献】 特開昭56−012034(JP,A)
【文献】 特開平05−328666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01B 11/04,23/10,29/12,31/26
F01K 21/02,25/06,27/00
F01N 5/02
F02G 1/044, 1/047, 1/06, 5/04
F25B 27/00
H02K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを介して熱を外部に排出するとともに、冷却液が流れる冷却液通路(2a)および前記冷却液を外部に流出するための冷却液出口(2b)を有する排熱源(2)と、
前記排ガスおよび前記冷却液を熱源とする蒸気エンジン(4)と、
前記蒸気エンジンを動力源とする発電機(5)とを備え、
前記蒸気エンジンは、内部に液体が流動可能に封入された容器(11)と、前記排ガスと熱交換させることにより、前記容器内の液体の一部を加熱して気化させる高温側熱交換器(12)と、前記冷却液出口から流出の前記冷却液と熱交換させることにより、前記高温側熱交換器に加熱されて生成した蒸気を冷却して液化させる低温側熱交換器(13)と有し、
前記高温側熱交換器および前記低温側熱交換器が、前記容器内の液体の一部に対して気化と液化とを繰り返させることにより、前記容器内の液体を自励振動させて前記発電機に機械的エネルギを出力し、
前記冷却液出口と前記低温側熱交換器との間には、前記冷却液を加熱する加熱手段(6、7c、10)が設けられており、
前記加熱手段は、加熱前の前記冷却液の温度が60℃未満の場合に、前記冷却液の温度を60℃以上とするように構成されていることを特徴とする熱回収発電システム。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記排ガスを熱源とすることを特徴とする請求項に記載の熱回収発電システム。
【請求項3】
排ガスを介して熱を外部に排出するとともに、冷却液が流れる冷却液通路(2a)および前記冷却液を外部に流出するための冷却液出口(2b)を有する排熱源(2)と、
前記排ガスおよび前記冷却液を熱源とする蒸気エンジン(4)と、
前記蒸気エンジンを動力源とする発電機(5)とを備え、
前記蒸気エンジンは、内部に液体が流動可能に封入された容器(11)と、前記排ガスと熱交換させることにより、前記容器内の液体の一部を加熱して気化させる高温側熱交換器(12)と、前記冷却液出口から流出の前記冷却液と熱交換させることにより、前記高温側熱交換器に加熱されて生成した蒸気を冷却して液化させる低温側熱交換器(13)と有し、
前記高温側熱交換器および前記低温側熱交換器が、前記容器内の液体の一部に対して気化と液化とを繰り返させることにより、前記容器内の液体を自励振動させて前記発電機に機械的エネルギを出力し、
前記冷却液出口と前記低温側熱交換器との間には、前記冷却液を加熱する加熱手段(6、7c、10)が設けられており、
前記加熱手段は、前記排ガスを熱源とすることを特徴とする熱回収発電システム。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記高温側熱交換器通過後の前記排ガスと前記低温側熱交換器に流入する冷却水とを熱交換させる熱交換器であることを特徴とする請求項2または3に記載の熱回収発電システム。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記高温側熱交換器通過前の前記排ガスと前記低温側熱交換器に流入する冷却水とを熱交換させる熱交換器であることを特徴とする請求項2または3に記載の熱回収発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱源から排出される排ガスの熱を利用して外燃機関で発電する熱回収発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、内燃機関と外燃機関を有し、内燃機関の排ガスの熱を利用して外燃機関で発電する熱回収発電システムが記載されている。特許文献1に記載の熱回収発電システムでは、内燃機関としてガスエンジンを用い、外燃機関としてスターリングエンジンを用いている。また、内燃機関から流出の冷却水をそのままスターリングエンジンの低温側熱交換器に流入させ、スターリングエンジンの低温側熱源として内燃機関の冷却水を用いている。
【0003】
また、特許文献2に、外燃機関としての液体ピストン蒸気エンジン(以下、単に蒸気エンジンと呼ぶ)が記載されている。この蒸気エンジンは、高温側熱源と低温側熱源による加熱と冷却を繰り返すことで、容器内の液体の一部を相変化させるとともに、容器内の液体を蒸気の膨張仕事を直接的に受ける液体ピストンとして機能させて、機械的エネルギを出力するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−328666号公報
【特許文献2】特開2004−084523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の熱回収発電システムにおける外燃機関として、スターリングエンジンの代わりに特許文献2に記載の蒸気エンジンを用いることが考えられる。
【0006】
しかし、一般的に熱機関は高温側熱源と低温側熱源の温度差が大きいほど、すなわち、高温側熱源の温度を一定とした場合、低温側熱源の温度が低いほど、エネルギ変換効率が高くなるが、蒸気エンジンにおいては、低温側熱源の温度が低いほど、エネルギ変換効率が低くなることが、本発明者らの実験結果より明らかとなった。なお、エネルギ変換効率は、熱エネルギから機械的エネルギに変換する効率である。
【0007】
また、内燃機関の運転状態によっては、冷却水が内燃機関に設けられた冷却水通路を通過する際に、冷却水温度が上昇せず、冷却水温度が低いまま、内燃機関から冷却水が流出される場合がある。
【0008】
このため、蒸気エンジンの低温側熱源として、内燃機関から流出の冷却水を何ら温度制御することなく、そのまま用いると、冷却水温度が低すぎて、蒸気エンジンのエネルギ変換効率が低くなる場合がある。この場合、蒸気エンジンが発電する際の発電効率が低くなり、排熱から電力を効率良く得ることができない。
【0009】
なお、この問題は、内燃機関から排出の排ガスと内燃機関を通過後の冷却水の熱を利用して、蒸気エンジンで発電する熱回収発電システムに限らず、排熱源から排出の排ガスと排熱源が有する冷却液通路を通過後の冷却水の熱を利用して、蒸気エンジンで発電する熱回収発電システムにおいても、同様に発生する問題である。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、外燃機関として蒸気エンジンを用いた熱回収発電システムであって、蒸気エンジンのエネルギ変換効率を向上させることができる熱回収発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1、3に記載の発明では、
排ガスを介して熱を外部に排出するとともに、冷却液が流れる冷却液通路(2a)および冷却液を外部に流出するための冷却液出口(2b)を有する排熱源(2)と、
排ガスおよび冷却液を熱源とする蒸気エンジン(4)と、
蒸気エンジンを動力源とする発電機(5)とを備え、
蒸気エンジンは、内部に液体が流動可能に封入された容器(11)と、排ガスと熱交換させることにより、容器内の液体の一部を加熱して気化させる高温側熱交換器(12)と、冷却液出口から流出の冷却液と熱交換させることにより、高温側熱交換器に加熱されて生成した蒸気を冷却して液化させる低温側熱交換器(13)と有し、
高温側熱交換器および低温側熱交換器が、容器内の液体の一部に対して気化と液化とを繰り返させることにより、容器内の液体を自励振動させて発電機に機械的エネルギを出力し、
冷却液出口と低温側熱交換器との間には、冷却液を加熱する加熱手段(6、7c、10)が設けられていることを特徴としている。
さらに、請求項1に記載の発明では、加熱手段は、加熱前の冷却液の温度が60℃未満の場合に、冷却液の温度を60℃以上とするように構成されていることを特徴としている。また、請求項3に記載の発明では、加熱手段は、排ガスを熱源とすることを特徴としている。
【0012】
これによれば、低温側熱交換器に流入する冷却液を加熱手段によって加熱するので、排熱源から流出の冷却液の温度が低い場合に、冷却液の温度を高めることができる。すなわち、低温側熱交換器に流入する冷却液の温度を、常に、高い温度にすることができる。したがって、請求項1、3に記載の発明によれば、排熱源から流出の冷却液を加熱せずに、蒸気エンジンの低温側熱交換器に流入させる場合と比較して、蒸気エンジンのエネルギ変換効率を向上できる。この結果、蒸気エンジンを用いて発電する際の発電効率を向上でき、排熱から電力を効率良く得ることが可能となる。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における熱回収発電システムの全体構成を示す図である。
図2図1中の蒸気エンジンおよび第2発電機の構成を示す模式図である。
図3図1中の蒸気エンジンにおける冷却水温度とエネルギ変換効率との関係を示す図である。
図4】蒸気エンジンの容器内部の圧力と体積の関係を示す図である。
図5】第2実施形態における熱回収発電システムの全体構成を示す図である。
図6】第3実施形態における熱回収発電システムの全体構成を示す図である。
図7】第4実施形態における熱回収発電システムの全体構成を示す図である。
図8】第5実施形態における熱回収発電システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の熱回収発電システム1は、ガスエンジン2と、第1発電機3と、蒸気エンジン4と、第2発電機5と、温水ボイラ6と、貯湯タンク7と、ウォータポンプ8と、ラジエータ9とを備えている。
【0017】
ガスエンジン2は、可燃ガスを燃料とする内燃機関であり、内部で可燃ガスを燃焼させた後、外部に排ガスを排出する。このとき、排ガスを介して熱が外部に排出される。したがって、本実施形態では、ガスエンジン2が排ガスを介して熱を外部に排出する排熱源である。
【0018】
また、ガスエンジン2は、ガスエンジン2を冷却するための冷却水が流れる冷却水通路2aおよび冷却水通路2a通過後の冷却水を外部に流出するための冷却水出口2bを有している。なお、本実施形態の冷却水は水であるが、エチレングリコール水溶液等の水溶液であってもよい。
【0019】
第1発電機3は、ガスエンジン2を動力源として電力を発生させる電力機器である。第1発電機3としては、一般的な発電機が採用可能である。
【0020】
蒸気エンジン4は、特許文献2と同様のものである。本実施形態の蒸気エンジン4は、高温側熱源としてガスエンジン2の排ガスを用い、低温側熱源としてガスエンジン2から流出の冷却水を用いている。第2発電機5は、蒸気エンジン4を動力源として電力を発生させる電力機器である。
【0021】
ここで、蒸気エンジン4と第2発電機5の具体的な構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、蒸気エンジン4は、内部に作動流体としての液体が流動可能に封入された容器11と、容器11内の液体の一部を加熱して気化させる高温側熱交換器12と、高温側熱交換器12に加熱されて生成した蒸気を冷却して液化させる低温側熱交換器13と有している。また、本実施形態では、容器11内の液体として水を用いている。
【0023】
容器11は、屈曲部11aが最下部に位置するように第1、2鉛直部11b、11cを有する略U字状に形成されたパイプ状の圧力容器である。容器11のうち屈曲部11aを挟んで水平方向一端側(紙面右側)の第1鉛直部11bに、高温側熱交換器12が低温側熱交換器13より上方側に位置するように高温側熱交換器12および低温側熱交換器13が設けられている。さらに、第1鉛直部11bのうち高温側熱交換器12よりも上方側にガス室14が設けられている。
【0024】
高温側熱交換器12は、ガスエンジン2の排ガスと容器11内の液体とを熱交換させるように構成されている。低温側熱交換器13は、ガスエンジン2から流出の冷却水と高温側熱交換器12に加熱されて生成した蒸気とを熱交換させるように構成されている。ガス室14は、作動流体の蒸気で満たされている。
【0025】
また、容器11のうち屈曲部11aを挟んで水平方向他端側(紙面左側)の第2鉛直部11cの上端部には、容器11内の液体から圧力を受けて変位する固体ピストン15がシリンダ部15aに摺動可能に配置されている。
【0026】
図2に示すように、第2発電機5は、第2鉛直部11cの上端部に配置されている。第2発電機5は、永久磁石が埋設された可動子16を振動変位させることにより起電力を発生させるリニア振動電機である。可動子16のシャフト16aの一端(下端)は、固体ピストン15に連結されている。可動子16のシャフト16aの他端(上端)は、可動子16を固体ピストン15側に押圧する弾性力を発生させる弾性手段をなすバネ17に連結されている。
【0027】
このような構成の蒸気エンジン4は、高温側熱交換器12および低温側熱交換器13が、容器11内の液体の一部に対して気化と液化とを繰り返させることにより、容器11内の液体を自励振動させて第2発電機5に機械的エネルギを出力する。
【0028】
具体的には、高温側熱交換器12により容器11内の液体の一部が加熱されて蒸気が発生すると、その膨張圧力によって第1鉛直部11b側の液面が押し下げられる。このため、容器11内の液体は、第1鉛直部11bから第2鉛直部11c側に流動変位して固体ピストン15を押し上げる向きの圧力を固体ピストン15に作用させる。これにより、固体ピストン15は、バネ17の弾性力および可動子16に作用する磁力に逆らって上方に変位する。このように、容器11内の液体は、蒸気の膨脹圧力を直接的に受ける液体ピストンとして機能する。
【0029】
そして、高温側熱交換器12により発生した蒸気が膨脹して低温側熱交換器13に至ると、蒸気は低温側熱交換器13により冷却されて液化されるため、第1鉛直部11b側の液面を押し下げる力(膨脹圧力)が消滅し、第1鉛直部11b側の液面が上昇する。このため、容器11内の液体に押し上げられていた固体ピストン15が、バネ17の弾性力により下方に変位する。
【0030】
第1鉛直部11b側の液面が上昇すると、再び、高温側熱交換器12により容器11内の液体の一部が加熱されて蒸気が発生する。このようにして、容器11内の液体は、屈曲部11aを行き帰りするように自励振動変位しながら、第2発電機5に機械的エネルギを出力する。
【0031】
図1に示す温水ボイラ6は、高温側熱交換器12通過後の排ガスと低温側熱交換器13に流入する冷却水とを熱交換させて冷却水を温水とする熱交換器であり、ガスエンジン2の排ガスを熱源として、低温側熱交換器13に流入する冷却水を加熱する加熱手段である。温水ボイラ6は、ガスエンジン2の冷却水出口2bと蒸気エンジン4の低温側熱交換器13の冷却水入口13aとの間の冷却水経路21に配置されている。
【0032】
温水ボイラ6は、冷却水を加熱しない場合と比較して、加熱後の冷却水の温度が蒸気エンジン4のエネルギ変換効率の向上が可能な温度となるように構成されている。具体的には、温水ボイラ6は、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度が60℃未満の場合に、冷却水の温度が60℃以上となるように構成されている。
【0033】
貯湯タンク7は、低温側熱交換器13から流出の冷却水、すなわち、冷却水が温水ボイラ6および低温側熱交換器13を通過して加熱された温水(湯)を貯えるものである。
【0034】
ウォータポンプ8は、冷却水流れを形成するものであり、貯湯タンク7→ラジエータ9→ガスエンジン2の冷却水通路2a→温水ボイラ6→低温側熱交換器13→貯湯タンク7の順に冷却水を循環させる。
【0035】
ラジエータ9は、貯湯タンク7から流出してガスエンジン2に流入する冷却水(温水)を、ファン9aによる送風空気との熱交換により放熱させる放熱用熱交換器である。
【0036】
上記した構成の熱回収発電システム1は、次のように作動する。
【0037】
ガスエンジン2が運転されることによって第1発電機3が発電する。このとき、ガスエンジン2から排ガスが排出され、この排ガスが蒸気エンジン4の高温側熱交換器12に流入する。
【0038】
また、ウォータポンプ8の作動により、貯湯タンク7→ラジエータ9→ガスエンジン2の冷却水通路2a→温水ボイラ6→低温側熱交換器13→貯湯タンク7の順に冷却水が循環する。これにより、ラジエータ9で冷却された冷却水がガスエンジン2の冷却水通路2aを流れ、冷却水通路2aを通過した冷却水が冷却水出口2bから流出する。さらに、冷却水出口2bから流出の冷却水は、温水ボイラ6で加熱された後、蒸気エンジン4の低温側熱交換器13に流入する。
【0039】
そして、蒸気エンジン4では、上述の通り、高温側熱交換器12および低温側熱交換器13が、容器11内の液体の一部に対して気化と液化とを繰り返させることにより、容器11内の液体を自励振動させて第2発電機5に機械的エネルギを出力することで、第2発電機5が発電する。
【0040】
ここで、本発明者は、図2に示す蒸気エンジン4において、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度を変化させて、蒸気エンジン4のエネルギ変換効率を実験により計測した。その結果、図3に示すように、冷却水温度が低いほど、蒸気エンジン4のエネルギ変換効率が低くなることが明らかとなった。
【0041】
なお、この実験では、容器11内の液体として水を用い、高温側熱交換器12の加熱温度を270℃とし、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度を25℃〜95℃の間で変更した。そして、容器11内部の圧力Pと、容器11内部の蒸気体積Vと、低温側熱交換器13の冷却水入口と冷却水出口での冷却水温度の差ΔTと、低温側熱交換器13を通過する冷却水の流量とを測定し、次の式を用いて、エネルギ変換効率を算出した。
【0042】
エネルギ変換効率(%)=W/(W+Q)×100
式中のWは、仕事であり、容器11内部の圧力Pと蒸気体積Vから算出した。具体的には、図4に示すPV線図を作成し、PV線の面積(=仕事W)を算出した。また、式中のQは、熱量であり、低温側熱交換器13の冷却水入口と冷却水出口での冷却水温度の差ΔTと低温側熱交換器13を通過する冷却水の流量とから算出した。
【0043】
上述の通り、蒸気エンジン4では、膨張仕事を取り出すための作動流体とピストンが同一の液体である。このため、高温側熱交換器12によって加熱する際では、容器11内の液体の一部を沸騰させるのと同時に、容器11内の液体のうち仕事に寄与しない残部(液体ピストン部分)も温めてしまう。したがって、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度が低いと、容器11内の液体全体の温度が低くなって、サブクール度が大きくなるため、高温側熱交換器12によって加熱する際に、多くの熱を液体ピストン部分に与えてしまい、エネルギ変換効率が低下してしまう。
【0044】
また、ガスエンジン2の運転状態によっては、冷却水が冷却水通路2aを通過する際に、冷却水温度が上昇せず、冷却水温度が低い状態(例えば、25℃〜35℃)のまま、冷却水出口2bから冷却水が流出される場合がある。すなわち、ガスエンジン2から流出の冷却水の温度は、常に、高温であるとは限らない。
【0045】
このため、蒸気エンジン4の低温側熱源として、ガスエンジン2から流出の冷却水を何ら温度制御することなく、そのまま用いると、冷却水温度が低すぎて、蒸気エンジン4のエネルギ変換効率が低くなる場合がある。この場合、蒸気エンジン4を用いて第2発電機5で発電する際の発電効率が低くなってしまう。
【0046】
これに対して、本実施形態では、ガスエンジン2の冷却水出口2bと低温側熱交換器13の冷却水入口13aとの間の冷却水経路21に温水ボイラ6を設けており、低温側熱交換器13に流入する冷却水を温水ボイラ6によって加熱するようにしている。
【0047】
これにより、ガスエンジン2から流出の冷却水の温度が低い場合に、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度を高めることができる。なお、ガスエンジン2から流出の冷却水の温度が高い場合、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度を高温に維持、もしくは、さらに高めることができる。すなわち、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度を、常に、高温とすることができる。したがって、本実施形態によれば、ガスエンジン2から流出の冷却水を加熱せずに、低温側熱交換器13に流入させる場合と比較して、蒸気エンジン4のエネルギ変換効率を向上できる。この結果、蒸気エンジン4を用いて第2発電機5で発電する際の発電効率を向上でき、ガスエンジン2の排熱から電力を効率良く得ることが可能となる。
【0048】
特に、本実施形態では、温水ボイラ6は、加熱前の冷却水の温度が60℃未満の場合に、冷却水温度を60℃以上とするように構成されている。このため、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度を、常に、60℃以上の高温とすることができる。
【0049】
ここで、図3に示す実験結果によると、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度が60℃以上のときの方が60℃未満のときと比較して、冷却水温度に対するエネルギ変換効率の変化の割合が大きいことがわかる。換言すると、冷却水温度が60℃以上(例えば、65℃)のときの方が60℃未満(例えば、25℃、35℃、50℃)のときと比較して、エネルギ変換効率が高いことがわかる。そこで、本実施形態のように、冷却水温度を60℃以上とすることで、冷却水温度が60℃未満の場合と比較して、エネルギ変換効率を高くすることができる。
【0050】
また、図3に示す実験結果によると、冷却水温度が大気圧下での水の沸点に近い95℃以下の範囲において、冷却水温度が上昇するにつれて、蒸気エンジン4のエネルギ変換効率が向上していた。したがって、冷却水温度は大気圧下において水の沸点以下とすることが好ましい。
【0051】
なお、温水ボイラ6による冷却水の加熱温度は、水の沸点よりも高温であってもよい。すなわち、冷却水が気化して蒸気となる温度であってもよい。ちなみに、蒸気エンジン4の容器11の内部は、真空に近い状態であるので、高温側熱源と低温側熱源との間に温度差があれば、容器11の内部において液化と気化の相変化が可能である。
【0052】
ただし、低温側熱源の温度が高くなりすぎると、高温側熱源と低温側熱源の温度差が小さくなるため、エネルギ変換効率が低下する。したがって、温水ボイラ6による冷却水の加熱温度は、容器11内の蒸気を液化できる温度、かつ、冷却水を加熱する前と比較してエネルギ変換効率が向上する温度に設定される。
【0053】
(第2実施形態)
本実施形態の熱回収発電システム1は、第1実施形態の熱回収発電システム1に対して、温水ボイラ6の配置を変更したものである。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0054】
図5に示すように、温水ボイラ6は、ガスエンジン2の排ガスが流れる排ガス流路のうち高温側熱交換器12よりも上流側に配置されているとともに、ガスエンジン2の冷却水出口2bと低温側熱交換器13との間の冷却水経路21に配置されている。このため、温水ボイラ6は、高温側熱交換器12通過前の排ガスと低温側熱交換器13に流入する冷却水とを熱交換させることにより、ガスエンジン2の排ガスを熱源として、低温側熱交換器13に流入する冷却水を加熱する。
【0055】
本実施形態のように、低温側熱交換器13に流入する冷却水を加熱することによっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
(第3実施形態)
本実施形態の熱回収発電システム1は、第1実施形態の熱回収発電システム1に対して、低温側熱交換器13に流入する冷却水の加熱手段を変更したものである。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0057】
図6に示すように、本実施形態では、ガスエンジン2の冷却水出口2bと低温側熱交換器13との間の冷却水経路21に、冷却水を加熱する加熱手段としての電気ヒータ10を配置している。
【0058】
なお、本実施形態では、温水ボイラ6は、低温側熱交換器13と貯湯タンク7との間の冷却水経路22に配置されており、高温側熱交換器12通過後の排ガスと低温側熱交換器13通過後の冷却水とを熱交換させて冷却水を加熱するようになっている。
【0059】
本実施形態のように、排ガスを熱源としない加熱手段を用いて、低温側熱交換器13に流入する冷却水を加熱することによっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0060】
(第4実施形態)
本実施形態の熱回収発電システム1は、第1実施形態の熱回収発電システム1の低温側熱交換器13と貯湯タンク7とを一体化させたものである。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0061】
図7に示すように、本実施形態では、低温側熱交換器13として貯湯タンク7の一部7aを使用している。より具体的には、貯湯タンク7の内部に、蒸気エンジン4の容器11の一部が配置されており、貯湯タンク7の内部の冷却水と容器11内の液体とが熱交換するように構成されている。
【0062】
貯湯タンク7は、温水ボイラ6で加熱された冷却水を貯えるようになっている。温水ボイラ6は、高温側熱交換器12通過後の排ガスと貯湯タンク7に流入する冷却水とを熱交換させて冷却水を加熱するようになっている。したがって、本実施形態も、第1実施形態と同様に、高温側熱交換器12通過後の排ガスと低温側熱交換器に流入する冷却水とを熱交換させて冷却水を加熱しているので、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0063】
さらに、本実施形態によれば、低温側熱交換器13として貯湯タンク7の一部7aを使用するので、低温側熱交換器を別途設ける必要が無くなり、熱回収発電システム1の構成部品を減らすことができる。
【0064】
また、第1実施形態のように、温水ボイラ6で加熱した冷却水を低温側熱交換器13に流入させる場合、排ガスの温度変化が大きいため、温水ボイラ6通過後の冷却水の温度変化が大きくなり、蒸気エンジン4の低温側熱源の温度が安定しない恐れがある。
【0065】
これに対して、貯湯タンク7内部には、温水ボイラ6通過時の冷却水よりも多量の冷却水が貯えられているため、排ガスの温度変化が大きくても、貯湯タンク7内部の冷却水の温度変化は小さくなる。このため、本実施形態によれば、蒸気エンジン4の低温側熱源の温度を一定に近づけることができる。
【0066】
(第5実施形態)
本実施形態の熱回収発電システム1は、第1実施形態の熱回収発電システム1に対して、低温側熱交換器13に流入する冷却水の加熱手段を変更したものである。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0067】
図8に示すように、本実施形態の熱回収発電システム1は、高温側熱交換器12通過後の排ガスとガスエンジン2から流出の冷却水との熱交換により生成した湯(加熱された冷却水)を貯える貯湯タンク7を備えている。
【0068】
この貯湯タンク7は、高温側熱交換器12通過後の排ガスと貯湯タンク7内部の冷却水とを熱交換させる第1熱交換部7bと、貯湯タンク7内部の冷却水と低温側熱交換器13に流入する冷却水とを熱交換させる第2熱交換部7cとを有している。この第2熱交換部7cが低温側熱交換器13に流入する冷却水を加熱する加熱手段である。
【0069】
本実施形態では、貯湯タンク7の第1熱交換部7bにて、貯湯タンク7内部の冷却水が排ガスとの熱交換により加熱される。そして、貯湯タンク7の第2熱交換部7cにて、ガスエンジン2の冷却水出口2bから流出の冷却水が、貯湯タンク7内部の冷却水との熱交換により加熱される。したがって、本実施形態では、ガスエンジン2の排ガスを熱源として、貯湯タンク7内部の冷却水を介して、低温側熱交換器13に流入する冷却水を加熱している。このように、低温側熱交換器13に流入する冷却水を加熱することによっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0070】
さらに、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0071】
本実施形態は、第1実施形態の熱回収発電システム1の温水ボイラ6と貯湯タンク7とを一体化させたものに相当する。したがって、本実施形態によれば、熱回収発電システム1の構成部品を減らすことができる。
【0072】
また、第1実施形態のように、低温側熱交換器13に流入する冷却水を温水ボイラ6で加熱した場合、排ガスの温度変化が大きいため、温水ボイラ6通過後の冷却水の温度変化が大きくなる。このため、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度が安定しない恐れがある。
【0073】
これに対して、貯湯タンク7内部には、温水ボイラ6通過時の冷却水よりも多量の冷却水が貯えられているため、排ガスの温度変化が大きくても、貯湯タンク7内部の冷却水の温度変化は小さくなる。このため、本実施形態によれば、貯湯タンク7の第2熱交換部7c通過後の冷却水の温度変化を小さくでき、低温側熱交換器13に流入する冷却水の温度を一定に近づけることができる。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、下記のように、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0074】
(1)上記した各実施形態では、蒸気エンジン4の容器11内の液体として、水を用いたが、他の液体を用いてもよい。容器11内の液体としては、例えば、エタノールや冷凍サイクルに用いられる冷媒等が挙げられる。
【0075】
(2)上記した各実施形態では、ガスエンジン2を冷却するために冷却水を用いたが、水以外の冷却液を用いてもよい。
【0076】
(3)上記した各実施形態では、貯湯タンク7は、ガスエンジン2から流出の冷却水を貯えていたが、この冷却水とは別の貯湯用の水を加熱して貯える構成であってもよい。
【0077】
(4)上記した各実施形態では、内燃機関として、ガスエンジン2を用いていたが、他の内燃機関を用いてもよい。
【0078】
(5)上記した各実施形態では、排熱源として内燃機関を用いていたが、工業炉等の他の排熱源を用いてもよい。この場合、排熱源は、排ガスを介して熱を外部に排出するとともに、冷却液が流れる冷却液通路および冷却液を外部に流出するための冷却液出口を有するものであればよい。
【0079】
(6)上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1 熱回収発電システム
2 ガスエンジン(排熱源)
3 第1発電機
4 蒸気エンジン
5 第2発電機
6 温水ボイラ(加熱手段)
11 容器
12 高温側熱交換器
13 低温側熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8