特許第6237358号(P6237358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部興産株式会社の特許一覧

特許6237358有機金属化合物の製造方法、及びそれに用いる容器
<>
  • 特許6237358-有機金属化合物の製造方法、及びそれに用いる容器 図000002
  • 特許6237358-有機金属化合物の製造方法、及びそれに用いる容器 図000003
  • 特許6237358-有機金属化合物の製造方法、及びそれに用いる容器 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237358
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】有機金属化合物の製造方法、及びそれに用いる容器
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/00 20060101AFI20171120BHJP
   C07F 3/02 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   C07F17/00
   !C07F3/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-48271(P2014-48271)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-224092(P2014-224092A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-93332(P2013-93332)
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134566
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 和俊
(72)【発明者】
【氏名】物部 浩之
(72)【発明者】
【氏名】大谷 正樹
(72)【発明者】
【氏名】徳毛 充
(72)【発明者】
【氏名】黒田 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】境 和彦
(72)【発明者】
【氏名】竹林 浩二
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 晋
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩平
【審査官】 水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−520429(JP,A)
【文献】 特開2000−255536(JP,A)
【文献】 特開2013−021130(JP,A)
【文献】 特開昭63−055194(JP,A)
【文献】 特開平08−012678(JP,A)
【文献】 特開2011−178726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07C
C07D
C07B
C23C
B65B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固体の有機金属化合物の固体の製造方法であって、
容器本体と、前記容器本体の底面の上に着脱可能に敷き詰められており、前記容器本体よりも低い熱伝導率を有する底壁部材とを備える容器に、常温で固体の有機金属化合物の蒸気及び融液の少なくとも一方を導入する工程と、
前記容器に導入された有機金属化合物を冷却させて固化させる工程と、
前記固化した有機金属化合物を、前記底壁部材ごと前記容器本体から取り出す工程と、を備える、有機金属化合物の固体の製造方法。
【請求項2】
前記容器本体が金属製であり、
前記底壁部材がフッ素樹脂を含む、請求項1に記載の有機金属化合物の固体の製造方法。
【請求項3】
前記容器本体の熱伝導率が、前記底壁部材の熱伝導率の10倍以上である、請求項1又は2に記載の有機金属化合物の固体の製造方法。
【請求項4】
前記底壁部材として、シート状又は板状の部材を用いる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機金属化合物の固体の製造方法。
【請求項5】
前記底壁部材の厚みが2mm以下である、請求項4に記載の有機金属化合物の固体の製造方法。
【請求項6】
前記容器の底面の面積に対する、内側面のうち、前記固化した有機金属化合物と接触している部分の面積の比((前記容器の内側面のうち、前記固化した有機金属化合物と接触している部分の面積)/(前記容器の底面の面積))が2以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機金属化合物の固体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化合物の製造方法、及びそれに用いる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、常温で固体の有機金属化合物であるビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの製造方法として、ジアルキルマグネシウムとシクロペンタジエンとを反応させて得られたビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムを、減圧下で昇華精製させて、白色結晶として得る方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の製造方法では、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムが蒸気及び融液のうちの一方として容器に導入され、この容器内で冷却され固体となる。ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの冷却、固化を行うための容器は、強度、耐熱性、耐腐食性に優れたものである必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4168209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
常温で固体の有機金属化合物を高純度かつ高収率で製造し得る容器が求められている。
【0006】
本発明の主な目的は、高純度かつ高収率で、常温で固体の有機金属化合物を製造する方法及びそれに用いる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る有機金属化合物の製造方法は、常温で固体の有機金属化合物の製造方法に関する。本発明に係る有機金属化合物の製造方法では、相対的に高い熱伝導率を有する容器本体と、容器本体の底面の上に着脱可能に敷き詰められており、相対的に低い熱伝導率を有する底壁部材とを備える容器に、常温で固体の有機金属化合物の蒸気及び融液の少なくとも一方を導入する。容器に導入された有機金属化合物を冷却させて固化させる。固化した有機金属化合物を、底壁部材ごと容器本体から取り出す。
【0008】
本発明に係る有機金属化合物を製造するための容器は、常温で固体の有機金属化合物を製造するための容器である。本発明に係る有機金属化合物を製造するための容器は、容器本体と、底壁部材とを備える。容器本体は、相対的に高い熱伝導率を有する。底壁部材は、容器本体の底面の上に着脱可能に敷き詰められている。底壁部材は、相対的に低い熱伝導率を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高純度かつ高収率で、常温で固体の有機金属化合物を製造する方法及びそれに用いる容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る容器の模式的断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る容器の模式的斜視図である。
図3】本発明の一実施形態における容器の実施態様を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0012】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0013】
(容器の構成)
図1は、本実施形態に係る容器の模式的断面図である。図2は、本実施形態に係る容器の模式的斜視図である。
【0014】
本実施形態では、図1及び図2に示される容器1を用いて、常温で固体の有機金属化合物を製造する方法について説明する。
【0015】
常温で固体の有機金属化合物の具体例としては、例えば、有機リチウム化合物、有機インジウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機ガリウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機ビスマス化合物、有機マンガン化合物、有機鉄化合物、有機バリウム化合物、有機ストロンチウム化合物、有機銅化合物、有機カルシウム化合物、有機イットリビウム化合物が挙げられる。有機リチウム化合物の具体例としては、例えば、t−ブチルリチウム等が挙げられる。有機インジウム化合物の具体例としては、例えば、トリメチルインジウム、ジメチルクロロインジウム、シクロペンタジエニルインジウム、トリメチルインジウム・トリメチルアルシンアダクト、トリメチルインジウム・トリメチルホスフィンアダクト等が挙げられる。有機亜鉛化合物の具体例としては、例えば、エチルヨウ化亜鉛、エチルシクロペンタジエニル亜鉛、シクロペンタジエニル亜鉛等が挙げられる。有機アルミニウム化合物の具体例としては、例えば、メチルジクロロアルミニウム、トリフェニルアルミニウム等が挙げられる。有機ガリウム化合物の具体例としては、例えば、メチルジクロロガリウム、ジメチルクロロガリウム、ジメチルブロモガリウム等が挙げられる。有機マグネシウム化合物の具体例としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム等が挙げられる。有機ビスマス化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルビスマス等が挙げられる。有機マンガン化合物の具体例としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)マンガン等が挙げられる。有機鉄化合物の具体例としては、例えば、フェロセン等が挙げられる。有機バリウム化合物の具体例としては、例えば、ビス(アセチルアセトナト)バリウム、ジピバロイルメタナトバリウム・1,10−フェナントロリンアダクト等が挙げられる。有機ストロンチウム化合物の具体例としては、例えば、ビス(アセチルアセトナト)ストロンチウム、ジピバロイルメタナトストロンチウム等が挙げられる。有機銅化合物の具体例としては、例えば、ビス(アセチルアセトナト)銅、ジピバロイルメタナト銅等が挙げられる。有機カルシウム化合物の具体例としては、例えば、ビス(アセチルアセトナト)カルシウム、ジピバロイルメタナトカルシウム等が挙げられる。有機イットリビウム化合物の具体例としては、例えば、ジピバロイルメタナトイットリビウム等が挙げられる。
【0016】
容器1は、容器本体10と、底壁部材20とを備えている。
【0017】
壁面、底面は、ある程度の厚みが必要だそうで、実際には3.4mmで統一されているようですので、それを中心として現実的な範囲を設定しました。
【0018】
容器本体10は、高い熱伝導率を有する材料により構成されている。具体的には、容器本体10は、1W/m・K以上の熱伝導率を有する材料により構成されていることが好ましく、10W/m・K以上の熱伝導率を有する材料により構成されていることがより好ましい。そのような高い熱伝導率を有する材料としては、例えば金属等が挙げられる。すなわち、容器本体10は、金属製であることが好ましい。容器本体10の好ましい構成材料の具体例としては、例えば、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0019】
容器本体10は、有機金属化合物の蒸気及び融液の少なくとも一方が供給され、固化する内部空間10aを有するものである限り、特に限定されない。本実施形態では、側壁部11と、底部12とを有する。側壁部11は、筒状に設けられている。より具体的には、側壁部11は、円筒状に設けられている。側壁部11の一方側の開口は、底部12により閉口されている。これにより、有底円筒状の容器本体10が構成されている。このため、容器本体10には、円柱状の内部空間10aが設けられている。
【0020】
側壁部11の厚みは、1mm〜6mm程度であることが好ましく、2mm〜5mm程度であることがより好ましい。底部12の厚みは、1mm〜6mm程度であることが好ましく、2mm〜5mm程度であることがより好ましい。側壁部11の厚みと、底部12の厚みとは、相互に実質的に同じであってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0021】
底壁部材20は、容器本体10の底面と実質的に同じ形状寸法を有する。具体的には、本実施形態では、底壁部材20の平面視形状は、容器本体10の底面と同様に、円形である。底壁部材20は、容器本体10の底面の上に着脱可能に敷き詰められる。従って、底壁部材20と容器本体10の内面とは実質的に全体において接触している。
【0022】
底壁部材20は、容器本体10よりも低い熱伝導率を有する。すなわち、容器本体10の熱伝導率が相対的に高く、底壁部材20の熱伝導率が相対的に低い。容器本体10の熱伝導率は、底壁部材20の熱伝導率の10倍以上であることが好ましく、50倍以上であることがより好ましい。容器本体10の熱伝導率は、通常、底壁部材20の熱伝導率の150倍以下である。具体的には、容器本体10の熱伝導率は、1W/m・K〜420W/m・Kであることが好ましく、10W/m・K〜240W/m・Kであることがより好ましい。底壁部材20の熱伝導率は、0.02W/m・K〜0.40W/m・Kであることが好ましく、0.15W/m・K〜0.50W/m・Kであることがより好ましい。
【0023】
底壁部材20は、有機金属化合物が付着しにくい材料により構成されていることが好ましい。具体的には、底壁部材20は、例えば、フッ素樹脂により構成されていることが好ましい。好ましく用いられるフッ素樹脂の具体例としては、例えば、テフロン(登録商標)、テフゼル、カルレッツ、ヴァイトン、フルオン、テドラー、ヘイラー、ハイラー、カイナー、テクノフロン、レアフロンなどが挙げられる。
【0024】
底壁部材20は、可撓性を有するシート状であってもよいし、可撓性を有さない剛体の板状であってもよい。底壁部材20の厚みは、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。底壁部材20の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。
【0025】
(有機金属化合物の製造方法)
次に、容器1を用いた有機金属化合物の製造方法について説明する。
【0026】
まず、図3に示されるように、有機金属化合物の合成装置2において有機金属化合物を合成する。次に、合成した有機金属化合物を、精製装置3において精製する。精製した有機金属化合物を融液及び蒸気の少なくとも一方として、容器1に導入する(導入工程)。
【0027】
次に、容器1内において、有機金属化合物の融液及び蒸気の少なくとも一方を冷却することにより固化させる(冷却工程)。
【0028】
次に、有機金属化合物の固体30を、底壁部材20ごと容器本体10から取り出す(取り出し工程)。その後、有機金属化合物の固体30から底壁部材20を除去する。
【0029】
以上の工程により、有機金属化合物の固体を製造することができる。
【0030】
ところで、容器が有機金属化合物と反応すると、高純度の有機金属化合物を製造することが困難となる。このため、容器は、有機金属化合物に対する反応性が低いものであることが好ましい。この観点からすれば、容器の全体をフッ素樹脂により構成することが好ましいと考えられる。
【0031】
しかしながら、フッ素樹脂の熱伝導率は低い。このため、全体がフッ素樹脂からなる容器を用いた場合は、有機金属化合物の冷却に要する時間が長くなる。よって、有機金属化合物の製造効率が低くなる。本発明者らが、全体がフッ素樹脂からなる容器を用いて有機金属化合物を製造したところ、有機金属化合物が容器に付着してしまい、有機金属化合物を容器から好適に取り出すことが困難であることが判明した。特に、内部空間の隅部に位置する有機金属化合物を取り出すことは困難であった。
【0032】
有機金属化合物の冷却に要する時間を短くする観点からは、例えば、容器全体をステンレス鋼等の金属により構成することも考えられる。しかしながら、本発明者らが、金属製の容器を用いて有機金属化合物を製造したところ、有機金属化合物が容器に付着し、有機金属化合物を好適に取り出すことが困難であった。
【0033】
本実施形態に係る容器1では、容器本体10の底面の上に、底壁部材20が着脱可能に敷き詰められている。このため、有機金属化合物が固化した後に、容器1を下向きにすることにより、有機金属化合物の固体30と底壁部材20とが容器本体10から容易に、かつ容器本体10に有機金属化合物が付着することを抑制しつつ離脱させることができる。従って、有機金属化合物の固体30を高い収率で製造することができる。また、容器1を容易に洗浄することができる。
【0034】
また、内部空間10aの側壁は、相対的に高い熱伝導率を有する容器本体10により構成されている。このため、容器1では、例えば、全体がフッ素系樹脂により構成されている容器内で有機金属化合物を冷却する場合と比較して、有機金属化合物の冷却速度が高い。従って、容器1を用いることにより、有機金属化合物の固体を効率的に製造することができる。
【0035】
以上より、容器1を用いることにより、有機金属化合物の固体30を高い収率及び高い製造効率で製造することができる。
【0036】
有機金属化合物の固体30の製造効率をより向上する観点からは、容器本体10の熱伝導率が、底壁部材20の熱伝導率の10倍以上であることが好ましく、50倍以上であることがさらに好ましい。容器本体10の熱伝導率が、1W/m・K以上であることが好ましく、10W/m・K以上であることがより好ましい。また、熱伝導率が相対的に低い底壁部材20の厚みが、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。但し、底壁部材20が薄すぎると、有機金属化合物の固体30と底壁部材20とを好適に分離することが困難となったり、有機金属化合物の固体30を容器1から取り出すことが困難になったりする場合がある。従って、底壁部材20の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。
【0037】
また、以下の条件が満たされるように、導入工程において容器1内に有機金属化合物の融液及び蒸気の少なくとも一方を導入することが好ましい。すなわち、容器の底面の面積をS1とし、容器1の内側面のうち、有機金属化合物の固体30と接触している部分の面積をS2としたときに、S2/S1が2以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、2.8以上であることがさらに好ましい。但し、S2/S1が大きすぎると、金属接触面からの金属不純物溶出の蓋然性が高くなる場合がある。従って、S2/S1は、5以下であることが好ましく、4.8以下であることがさらに好ましい。
【0038】
なお、容器本体10の内側面の上に、熱伝達効率を低下させない範囲で、メッシュ状などの開口を有するシートを配してもよい。その場合、シートは、フッ素樹脂により構成されていることが好ましい。
【0039】
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
(容器の作製)
上記実施形態に係る容器1と実質的に同様の構成を有する容器を準備した。準備した容器の容器本体としては、内容積3.9Lの有底円筒状のステンレス製容器(容器底面の面積;222cm)を用いた。底壁部材としては、厚みが、1.0mmであるテフロン(登録商標)シートを用いた。容器本体の熱伝導率は、16.7W/m・Kであった。テフロン(登録商標)シートの熱伝導率は、0.23W/m・Kであった。
【0041】
(シクロペンタジエンの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積1000mlの反応器に、ジシクロペンタジエン610g(4.6mol)を加え、常圧下、攪拌しながら160℃でクラッキング反応させた。反応終了後、得られたシクロペンタジエンを15℃以下に冷却した受器に入れた。
【0042】
(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積4000mlの反応器に、20質量%n−ブチルエチルマグネシウムのn−ヘプタン溶液1887g(n−ブチルエチルマグネシウムとして3.4mol)及びトリ−n−ドデシルアミン450g(0.9mol)を加え、常圧下、攪拌しながら90℃でn−ブチルエチルマグネシウムを処理した。
【0043】
次いで、該混合液に、シクロペンタジエン488g(7.4mol、2.15当量)を、液温を40℃以下に保ちながらゆるやかに加え、同温度で8.75時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下にて濃縮(n−ヘプタンを除去)した後、得られた濃縮物(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムを含有)を減圧下で昇華精製(87.5℃、0.5kPa)した。
【0044】
更に、得られた留出物(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムを含有)にトリ−n−ドデシルアミン450g(0.9mol)を加えた後、再び減圧下で昇華精製(87.5℃、0.5kPa)し、上記作製の容器に、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの蒸気を導入した。
【0045】
そのまま、室温まで冷却したところ、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムは白色固体となった。実施例1では、S2/S1は3.125であった。ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの固体を、容器から容易に取り出すことができた。
【0046】
なお、得られたビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム中に、容器内壁、及びテフロン(登録商標)シートの破損物は見られなかった。
【0047】
(実施例2)
実施例2では、内容積3.9Lの有底円筒状のガラス製容器(容器底部の面積;167cm)を容器本体として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの固体を製造した。実施例2においても、実施例1と同様に、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの固体をは、容器から容易に取り出すことができた。得られたビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム中に、容器内壁、及びテフロン(登録商標)シートの破損物は見られなかった。
【0048】
なお、実施例2では、S2/S1は、4.35であった。
【0049】
(比較例1)
実施例1において使用した容器本体と同様の容器本体の内側面及び底面の全体を、テフロン(登録商標)でスプレーコーティングした容器を使用したこと以外、実施例1と同様にビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの固体を製造した。その結果、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムが固体となるまえに多大な時間を要した上に、テフロン(登録商標)コーティング膜の表面の凹凸部分にビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムが入り込み、好適に取り出すことができなかった。
【0050】
(比較例2)
実施例1において、使用した容器本体と同様の容器本体の内側面及び底面の全体を鏡面研磨したものを容器として使用したこと以外、実施例1と同様にビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムの固体を製造した。その結果、目視で表面の凹凸はなかったものの、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムが強固に付着していて、好適に取り出すことができなかった。
【符号の説明】
【0051】
1 容器
2 合成装置
3 精製装置
10 容器本体
10a 内部空間
11 側壁部
12 底部
20 底壁部材
30 有機金属化合物の固体
図1
図2
図3