特許第6237375号(P6237375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237375
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】燃料噴霧の広がり角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20171120BHJP
   F02D 41/38 20060101ALI20171120BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20171120BHJP
   F02B 31/06 20060101ALI20171120BHJP
   F02M 61/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F02D45/00 364K
   F02D41/38 B
   F02D41/02 380G
   F02B31/06 540A
   F02M61/18 360J
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-60283(P2014-60283)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-183580(P2015-183580A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】南條 弘行
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−160194(JP,A)
【文献】 特開2009−002177(JP,A)
【文献】 特開2012−189001(JP,A)
【文献】 特開2009−293595(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/035635(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/032627(WO,A1)
【文献】 特開2012−225196(JP,A)
【文献】 特開2013−024054(JP,A)
【文献】 特開2010−007619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 〜 45/00
F02B 31/00 〜 31/06
F02M 61/16 〜 61/18
F02M 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射弁(24)により内燃機関(10)の燃焼室(14)内に噴射される燃料の噴霧の広がり角度を検出する検出装置(30)であって、
前記機関には、前記燃焼室内にスワールを形成するスワール形成手段(27)が設けられており、
前記スワール形成手段により前記燃焼室内にスワールを形成させた状態において、前記燃料噴射弁により時間間隔をあけて燃料を複数回噴射させる所定制御を実行する制御実行手段と、
前記制御実行手段により前記所定制御が実行される際に、複数回噴射された前記燃料の噴霧が互いに重なり合う状態に基づいて前記噴霧の広がり角度を検出する角度検出手段と、
前記燃料噴射弁により前記燃料が噴射されてから着火するまでの着火遅れ期間を検出する期間検出手段と、
を備え
前記角度検出手段は、前記期間検出手段により検出された前記着火遅れ期間を用いて、前記噴霧の広がり角度を検出し、
前記制御実行手段は、前記期間検出手段により検出された前記着火遅れ期間が所定期間よりも長い場合に、前記燃料が複数回噴射される時間間隔を短縮することを特徴とする燃料噴霧の広がり角度検出装置。
【請求項2】
前記機関には、前記燃料噴射弁により噴射される燃料の圧力である噴射圧を算出する噴射圧算出手段(30、46)が設けられており、
前記角度検出手段は、前記噴射圧算出手段により算出された前記噴射圧を用いて、前記噴霧の広がり角度を検出する請求項1に記載の燃料噴霧の広がり角度検出装置。
【請求項3】
前記燃焼室内のガスの密度を算出するガス密度算出手段を備え、
前記角度検出手段は、前記ガス密度算出手段により算出された前記ガスの密度を用いて、前記噴霧の広がり角度を検出する請求項1又は2に記載の燃料噴霧の広がり角度検出装置。
【請求項4】
前記スワールの速度を算出する速度算出手段を備え、
前記角度検出手段は、前記速度算出手段により算出された前記スワールの速度を用いて、前記噴霧の広がり角度を検出する請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料噴霧の広がり角度検出装置。
【請求項5】
前記角度検出手段は、前記燃料が複数回噴射される時間間隔を用いて、前記噴霧の広がり角度を検出する請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料噴霧の広がり角度検出装置。
【請求項6】
前記機関には、前記燃料噴射弁により前記燃焼室内に噴射される燃料と前記燃焼室内のガスとの混合気の混合比を変更する混合比変更手段(52)が設けられており、
前記燃料を燃焼させる噴射方向の目標距離を設定する目標距離設定手段と、
前記目標距離設定手段により設定された前記目標距離での前記混合気の目標混合比を設定する目標混合比設定手段と、
前記燃料噴射弁により噴射された燃料の運動量が前記混合気の運動量として保存されることに基づいて、前記角度検出手段により検出された前記噴霧の広がり角度を用いて、前記目標距離設定手段により設定された前記目標距離での前記混合気の混合比を推定する混合比推定手段と、
前記混合比推定手段により推定された前記目標距離での前記混合比が、前記目標混合比設定手段により設定された前記目標混合比となるように、前記混合比変更手段を制御する混合比制御手段と、
を備える請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料噴霧の広がり角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁により噴射される燃料の噴霧の広がり角度を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料の噴射圧及び燃料の動粘度と、燃料噴霧の広がり角度(噴霧角)との関係をマップとして格納しておき、このマップを参照して噴霧角を推定するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−24138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、燃料噴射弁の個体差による噴霧角の相違や、燃料噴射弁の噴射孔のつまり等による噴霧角の経時変化に対応することができない。このため、特許文献1に記載のものは、実際の噴霧角を検出する上で未だ改善の余地を残している。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、実際の燃料噴霧の広がり角度を正確に検出することのできる燃料噴霧の広がり角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
本発明は、燃料噴射弁により内燃機関の燃焼室内に噴射される燃料の噴霧の広がり角度を検出する検出装置であって、前記機関には、前記燃焼室内にスワールを形成するスワール形成手段が設けられており、前記スワール形成手段により前記燃焼室内にスワールを形成させた状態において、前記燃料噴射弁により時間間隔をあけて燃料を複数回噴射させる所定制御を実行する制御実行手段と、前記制御実行手段により前記所定制御が実行される際に、複数回噴射された前記燃料の噴霧が互いに重なり合う状態に基づいて前記噴霧の広がり角度を検出する角度検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、スワール形成手段により燃焼室内にスワールを形成させた状態において、燃料噴射弁により時間間隔をあけて燃料を複数回噴射させる所定制御が実行される。燃焼室内にスワールが形成された状態では、燃料噴射弁により噴射された燃料の噴霧は、スワールの流れに乗って移動させられる。このため、複数回の噴射において先に噴射された燃料の噴霧の位置と後に噴射された燃料の噴霧の位置とが、スワールの流れ方向でずれることとなる。
【0009】
ここで、燃料の噴霧の広がり角度(噴霧角)が広いほど、時間間隔をあけて複数回噴射された燃料の噴霧が互いに重なり合い易くなる。このため、複数回噴射された燃料の噴霧が互いに重なり合う状態は、噴霧角の広さを反映することとなる。さらに、複数回噴射された燃料の噴霧が互いに重なり合う状態は、燃料噴射弁の個体差や経時変化の影響を受けた実際の噴霧角に応じて変化する。したがって、上記所定制御が実行される際に、複数回噴射された燃料の噴霧が互いに重なり合う状態に基づいて、実際の噴霧角を正確に検出することができる。
【0010】
また、本発明は、燃料噴射弁により内燃機関の燃焼室内に噴射される燃料の噴霧の広かり角度を検出する検出装置であって、前記機関には、前記燃焼室内にスワールを形成するスワール形成手段、及び前記燃料噴射弁により噴射される燃料の圧力である噴射圧を算出する噴射圧算出手段が設けられており、前記スワール形成手段により前記燃焼室内にスワールを形成させた状態において、前記燃料噴射弁により時間間隔をあけて燃料を複数回噴射させる所定制御を実行する制御実行手段と、前記燃料噴射弁により前記燃料が噴射されてから着火するまでの着火遅れ期間を検出する期間検出手段と、前記燃焼室内のガスの密度を算出するガス密度算出手段と、前記制御実行手段により前記所定制御が実行される際に、前記期間検出手段により検出された前記着火遅れ期間、前記噴射圧算出手段により検出された前記噴射圧、及び前記ガス密度算出手段により算出された前記ガスの密度を用いて、前記噴霧の広がり角度を検出する角度検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
複数回噴射される燃料の噴霧が互いに重なり合った部分では、酸素(空気)に対する燃料の当量比が大きくなり、燃料が着火し易くなる。このため、複数回噴射された燃料の噴霧が互いに重なり合う部分が大きいほど、着火遅れ期間が短くなる。したがって、着火遅れ期間は、燃料の噴霧が互いに重なり合う状態、ひいては噴霧角を反映することとなる。よって、着火遅れ期間を用いて噴霧角を検出することができる。
【0012】
燃料の噴射圧に応じて噴霧角は変化する。また、ガス密度(空気の密度)が大きいほど、噴射された燃料が燃焼室内のガスに当たって拡散する度合いが強くなる。このため、ガス密度が大きいほど、噴射された燃料の噴霧角が大きくなる。この点、算出された噴射圧及び算出されたガスの密度を用いて噴霧角が検出されるため、噴射圧やガス密度が変化したとしても噴霧角を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両用ディーゼルエンジンの概要を示す模式図。
図2】燃料噴霧のモデルを示す模式図。
図3】低負荷時においてガス密度低下による噴霧の壁面衝突を示す模式図。
図4】高負荷時においてガス密度低下による噴霧干渉を示す模式図。
図5】燃焼制御の手順を示すフローチャート。
図6】噴射圧と収縮係数との関係を示すマップ。
図7】噴霧運動量と単位時間当たり利用可能ガス量との関係を示すグラフ。
図8】限界利用可能ガス量を示す模式図。
図9】差圧及びEGRガス量と、EGRバルブ開度との関係を示すマップ。
図10】噴霧角、噴霧イメージ、噴霧の動きを示す模式図。
図11】噴射率、及び熱発生率を示すタイムチャート。
図12】噴射インターバルに対する着火遅れ期間を示すグラフ。
図13】噴霧角検出の手順を示すフローチャート。
図14】エンジン回転速度に対するSCV開度を示すグラフ。
図15】噴射圧毎に着火遅れ期間及びガス密度に対する噴霧角を示すマップ。
図16】噴射圧毎にガス密度に対する噴霧角を示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、車両用のディーゼルエンジン(内燃機関)に適用され、燃料噴射弁により噴射される燃料の噴霧の広がり角度(噴霧角)を検出する検出装置として具体化している。
【0015】
図1に示すように、車両は、エンジン10、制御装置30、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ41等を備えている。
【0016】
エンジン10は、例えば4気筒のディーゼルエンジンである。なお、図1では、1つの気筒のみを示している。エンジン10は、シリンダ11、ピストン12、クランク軸13、吸気通路15、ターボチャージャ16、スロットルバルブ装置19、吸気弁17、排気弁18、燃料ポンプ21、コモンレール22、燃料噴射弁24、排気通路25、SCV27、EGRバルブ装置52、回転速度センサ42、筒内圧センサ43、吸気圧センサ44、吸気温センサ45、燃圧センサ46、エアフロメータ47、A/Fセンサ48、水温センサ49等を備えている。シリンダ11及びピストン12によって、燃焼室14が区画されている。
【0017】
吸気通路15には、上流側から、インタークーラ54、スロットルバルブ装置19、サージタンク20、インテークマニホールド20a、及びSCV27が設けられている。インタークーラ54は、ターボチャージャ16によって過給された空気を冷却する。スロットルバルブ装置19は、DCモータ等のアクチュエータ19aにより、スロットルバルブ19bの開度を調節する。サージタンク20と各気筒の燃焼室14とは、インテークマニホールド20aにより接続されている。吸気弁17の開閉により、インテークマニホールド20aと燃焼室14とが連通及び遮断される。また、インテークマニホールド20aには、燃焼室14内にスワール(気流)を生じさせるSCV(スワールコントロールバルブ)27が設けられている。詳しくは、SCV27(スワール形成手段)は、DCモータ等のアクチュエータにより開度が調節され、吸気行程において燃焼室14に吸気が導入されることに伴い生じるスワールの速度を調節する。
【0018】
燃料ポンプ21(噴射圧力変更手段)は、燃料をコモンレール22へ圧送する。コモンレール22(蓄圧容器)は、燃料を蓄圧状態で保持する。燃料噴射弁24は、コモンレール22から供給された燃料を、燃焼室14内に噴孔(噴射孔)から直接噴射する。燃料噴射弁24には、複数の噴孔が形成されており、噴孔の断面形状は円形となっている。
【0019】
排気通路25には、浄化装置26が設けられている。浄化装置26は、排気通路25内を流通する排気を浄化する。排気弁18の開閉により、排気通路25と燃焼室14とが連通及び遮断される。
【0020】
吸気通路15と排気通路25との間には、ターボチャージャ16が設けられている。ターボチャージャ16は、吸気通路15に設けられた吸気コンプレッサ16aと、排気通路25に設けられた排気タービン16bと、これらを連結する回転軸16cとを備えている。そして、排気通路25内を流通する排気のエネルギにより排気タービン16bが回転され、その回転エネルギが回転軸16cを介して吸気コンプレッサ16aに伝達され、吸気コンプレッサ16aにより吸気通路15内の空気が圧縮される。すなわち、ターボチャージャ16によって空気が過給される。なお、ターボチャージャ16は、図示しない可変ベーンの開度を調節することにより、過給圧を調節可能となっている。
【0021】
排気通路25において排気タービン16bの上流側部分が、EGR通路51を介して吸気通路15におけるスロットルバルブ装置19の下流側部分(サージタンク20)に接続されている。EGR通路51には、EGRバルブ装置52、EGRクーラ53が設けられている。EGRバルブ装置52(排気再循環装置、混合比変更手段)は、DCモータ等のアクチュエータ52aにより、EGRバルブ52bの開度を調節する。EGRバルブ52bの開度に応じて、排気通路25内の排気の一部(EGRガス)が、EGRクーラ53によって冷却された後に、吸気通路15内の吸気に導入される。なお、アクチュエータ52aは、EGRバルブ52bの開度を検出する機能を有している。
【0022】
回転速度センサ42は、エンジン10の回転速度NEを検出する。筒内圧センサ43(圧力センサ)は、シリンダ11(燃焼室14)内の筒内圧力Pcylを検出する。吸気圧センサ44は、サージタンク20(吸気通路15)内の圧力を検出する。吸気温センサ45は、サージタンク20(吸気通路15)内の吸気温度を検出する。燃圧センサ46は、コモンレール22内の燃料圧力を検出する。エアフロメータ47は、吸気通路15内を流通する空気量(新気量)を検出する。A/Fセンサ48は、排気を浄化する浄化装置26の下流において空燃比を検出する。水温センサ49は、エンジン10の冷却水温度THWを検出する。
【0023】
制御装置30(ECU)は、上記の各種センサの検出値に基づいて、燃料ポンプ21の駆動、燃料噴射弁24の駆動、EGRバルブ装置52の駆動等を制御する。そして、制御装置30により、燃料噴霧の広がり角度検出装置が構成されている。
【0024】
図2は、燃料噴霧のモデルを示す模式図である。同図に破線で示す検査面(断面)について考察する。
【0025】
燃料噴射弁24の噴孔24aから噴射された燃料は、微小な液滴となって略円錐形状(検査面では略三角形)で示す噴霧を形成する。燃料噴霧は、燃焼室14内のガスを取り込みながら噴射方向(x方向)へ進む。燃料噴霧の存在する領域(噴霧領域A)内では、燃料とガス(空気及びEGRガス)との混合気が形成されている。
【0026】
燃料の微小な液滴の速度は、噴孔24aの出口断面S0(出口)での噴霧初速度v0から空気抵抗(ガス抵抗)を受けて低下する。このため、噴孔24aの出口断面S0で燃料が有していた運動量は、噴霧領域A内の混合気の運動量に変換される。すなわち、噴孔24aから噴射された燃料の運動量は、噴霧領域A内の混合気の運動量として保存される。特に、出口断面S0を通過する燃料の運動量が、噴孔24aから噴射方向へ距離x(t)(任意距離)の対象平面S1を通過する混合気の運動量と等しくなる。x(t)は、出口断面S0に燃料が到達した時間を0として、経過時間tでのx方向の距離である。
【0027】
ここで、出口断面S0を通過する燃料の運動量が、距離x(t)の対象平面S1を通過する混合気の運動量と等しくなることから、以下の数式1が成立する。なお、対象平面S1では通過する燃料の質量が通過する空気の質量と比較して小さいことから、対象平面S1での燃料の運動量を無視している。
【0028】
【数1】
上記において、ρfは燃料密度、dは噴孔24aの径、v0は噴孔24aから噴射される燃料の初速度(噴霧初速度)、ρaは噴射タイミングにおけるシリンダ11(燃焼室14)内のガス密度、θ0は燃料噴霧の広がり角度である噴霧角、w(t)は対象平面S1での燃料の速度である。数式1を変形することにより、速度w(t)は以下の数式2で表される。
【0029】
【数2】
w(t)=dx/dtであることから、数式2を積分して変形することにより、噴射開始からの経過時間tに対する噴霧の到達距離x(t)は以下の数式3で表される。
【0030】
【数3】
そして、出口断面S0を通過する燃料が、対象平面S1を通過する燃料と等しくなる。このため、酸素についての対象平面S1における当量比φ(t)(混合比)は、以下の数式4で表される(混合比推定手段)。
【0031】
【数4】
上記において、φthは理論当量比(酸素過剰率の逆数)、Co2spは後述するように燃料噴霧が取り込むガスの酸素濃度であり、その他の各文字の物理的意味は、上記数式1と同様である。数式4に数式2を代入することにより、当量比φ(t)は以下の数式5で表される。
【0032】
【数5】
図3は、エンジン10の低負荷時において、ガス密度低下による燃料噴霧fjの壁面衝突を示す模式図である。図3(a)は、エンジン10の適合された運転状態で燃料が噴射されている場合を示しており、燃料噴霧fjは破線で示す位置で燃え切っている。このため、NOxやPM等の排気エミッションが抑制されている。図3(b)は、ターボチャージャ16の過給応答遅れが生じた場合を示しており、エンジン10の適合された運転状態と比較してガス密度が低下している。このため、燃料噴霧fjと燃焼室14内のガスとの衝突が推定よりも少なくなり、燃料噴霧fjが燃え切るまでの距離が長くなっている。その結果、ハッチングで示すように、燃料噴霧fjが燃焼室14の壁面12aに衝突している。これにより、燃料噴霧fjの温度、及び燃料噴霧fjの燃焼温度が低下して、HCやCO等の未燃燃料が増加している。
【0033】
図4は、エンジン10の高負荷時において、ガス密度低下による燃料噴霧fjの干渉を示す模式図である。図4(a)は、エンジン10の適合された運転状態で燃料が噴射されている場合を示しており、燃料噴霧fj1〜fJ3が互いに干渉せずに燃え切っている。このため、NOxやPM等の排気エミッションが抑制されている。なお、図4は、エンジン10の高負荷時であるため、燃料の噴射量が多くなり、燃料噴霧fj1〜fj3と燃焼室14の壁面12aとの衝突は生じている。図4(b)は、ターボチャージャ16の過給応答遅れが生じた場合を示しており、エンジン10の適合された運転状態と比較してガス密度が低下している。このため、燃料噴霧fj1〜fj3と燃焼室14内のガスとの衝突が推定よりも少なくなり、燃料噴霧fj1〜fj3が燃え切るまでの距離が長くなっている。その結果、互いに隣り合う燃料噴霧、例えば燃料噴霧fj1と燃料噴霧fj2とで、ハッチングで示すように干渉が生じている。これにより、燃料噴霧fj1と燃料噴霧fj2とが干渉した部分で当量比が上昇して、すす等のPMが増加している。
【0034】
そこで、本実施形態では、燃料を燃焼させる噴射方向の目標距離を設定し、設定された目標距離での混合気の当量比φ(t)が目標当量比となるようにEGRバルブ装置52制御する。これにより、目標距離での混合気の当量比φ(t)を適切に制御し、ひいては燃料の燃焼を適切に制御して、排気エミッションの悪化を効果的に抑制する。
【0035】
図5は燃焼制御の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、制御装置30によって、エンジン10での1噴射毎に実行される。
【0036】
まず、エンジン10の運転状態に基づいて、燃料噴射弁24による燃料の噴射圧Pc、噴射量Q、及び噴射タイミングθinjを設定する(S11)。具体的には、アクセルセンサ41により検出されるアクセルペダルの操作量、及び回転速度センサ42により検出されるエンジン10の回転速度NEを用いて、マップ等を参照して噴射圧Pc、噴射量Q、及びクランク角度θに対する噴射タイミングθinjを設定する。そして、コモンレール22内の燃料圧力が設定された噴射圧Pcとなるように、燃料ポンプ21を駆動する。このとき、燃圧センサ46により、コモンレール22内の燃料圧力を検出する。
【0037】
続いて、目標燃焼距離xtrg、目標当量比φtrg、及び目標燃焼割合ηtrgを設定する(S12)。目標燃焼距離xtrgは、燃料を燃焼させる位置の目標を示す値であり、燃料噴射弁24の噴孔24aから噴射方向への距離で表される。目標燃焼割合ηtrgは、目標燃焼距離xtrgに燃料噴霧が到達するまでに、全体のうち燃やし切る燃料の割合を示す値である。目標当量比φtrgは、目標燃焼距離xtrgまでに目標燃焼割合ηtrgの燃料噴霧を燃やし切った時に、燃料噴霧の当量比が満たすべき目標値である。具体的には、アクセルセンサ41により検出されるアクセルペダルの操作量、及び回転速度センサ42により検出されるエンジン10の回転速度NEを用いて、マップ等を参照して目標燃焼距離xtrg、目標当量比φtrg、及び目標燃焼割合ηtrgを設定する(目標距離設定手段、目標混合比設定手段、目標割合設定手段)。これらの目標値のマップ等は、予め実験等に基づいて、NOxやPMの排出量が最適となるように適合を行うことで作成されている。
【0038】
続いて、目標燃焼距離xtrgまでに燃やしきる燃焼噴射量Qcmb[mg]を算出する(S13)。詳しくは、以下の数式6により、燃焼噴射量Qcmbを算出する。
【0039】
【数6】
上記において、ρfは燃料密度[mg/mm3]、ηtrgはSS12で設定した目標燃焼割合、QはS11で設定した噴射量[mm3/st]である。ここでは、燃料噴射弁24の複数の噴孔24aから噴射される燃料のうち、1燃料噴霧について検討する。このため、噴射量Qとして、S12で設定した噴射量Qを噴孔24aの数nhで割った値を用いる。
【0040】
続いて、インテークマニホールド20a(サージタンク20)内の圧力Pim、及びインテークマニホールド20a内のガス温度Timを取得する(S14)。具体的には、吸気圧センサ44により圧力Pimを検出し、吸気温センサ45によりガス温度Timを検出する。
【0041】
続いて、噴射タイミングθinjにおけるシリンダ11(燃焼室14)内のガス密度ρaを算出する(S15)。詳しくは、以下の数式7,8により、ガス密度ρaを算出する(ガス密度算出手段)。
【0042】
【数7】
【0043】
【数8】
上記において、Mcylはシリンダ11(燃焼室14)内に吸気行程で吸入される総ガス量、V(θinj)は噴射タイミングθinjでのシリンダ11(燃焼室14)の容積、Pimはインテークマニホールド20a(サージタンク20)内の圧力[kPa]、Rは気体定数[J/K/mol]、Timはインテークマニホールド20a内のガス温度[deg]、Mairは空気の分子量[mg/mol]、V(θcls)は吸気行程終了時(吸気弁全閉時)のシリンダ11(燃焼室14)の容積である。容積V(θcls)はシリンダ11の設計値及び吸気弁17の閉タイミングに基づき算出し、容積V(θinj)はシリンダ11の設計値及び噴射タイミングθinjに基づき算出する。なお、EGRガスの再循環を行っている場合等は、空気の分子量に代えてガスの組成を考慮した分子量を用いてもよい。
【0044】
続いて、1燃料噴霧の噴射率Qdot、及び1燃料噴霧の単位時間当たりの運動量Mspを算出する。以下の数式9により、1燃料噴霧の噴射率Qdot[mg/ms]、すなわち燃料噴射弁24の噴孔24aから単位時間当たりに噴射される燃料量を算出する。同様に、以下の数式10により、噴孔24aから単位時間当たりに噴射される燃料の運動量Mspを算出する。
【0045】
【数9】
【0046】
【数10】
上記において、ρfは燃料密度[mg/mm3]、dは噴孔24aの径[mm]、v0は噴孔24aから噴射される燃料の初速度(噴霧初速度)[mm/ms]である。噴霧初速度v0は、以下の数式11により算出する。
【0047】
【数11】
上記において、cは収縮係数、Pcは噴射圧、Pcyl(θinj)は噴射タイミングθinjにおけるシリンダ11(燃焼室14)内の圧力[kPa]、ρfは燃料密度[mg/mm3]である。収縮係数cは、噴射圧Pcを用いて、図6のマップを参照して算出する。図6は、噴射圧Pcと収縮係数cとの関係を示すマップであり、実験等に基づいて予め設定されている。同図に示すように、噴射圧Pcが高いほど、収縮係数cが小さくなる。筒内圧力Pcyl(θinj)は、筒内圧センサ43により検出する。なお、Pcyl(θinj)を、以下の数式12により算出してもよい。
【0048】
【数12】
上記において、γは比熱比であり、その他の各文字の物理的意味は、数式7,8と同様である。
【0049】
続いて、燃料噴射弁24の複数の噴孔24aから噴射される燃料の噴霧のうち、1噴霧の利用可能ガス量Mentを算出する(S17)。まず、S16で算出した燃料の運動量Mspを用いて、図7のグラフを参照して単位時間当たりに噴射される燃料が、燃焼に利用可能なガス量である単位時間当たり利用可能ガス量mentを算出する。燃料の運動量Mspが大きいほど、単位時間当たりに燃料噴霧に取り込まれるガス量が多くなるため、単位時間当たり利用可能ガス量mentが多くなる。図7に示す燃料の運動量Mspと単位時間当たり利用可能ガス量mentとの関係は、実験等に基づいて予め設定しておくことができる。
【0050】
単位時間当たり利用可能ガス量mentに燃料の噴射期間τinjを掛けることにより、1噴霧の利用可能ガス量Mentを算出する(ガス量推定手段)。噴射期間τinjは、以下の数式13により算出する。
【0051】
【数13】
上記において、QcmbはS13で算出した燃焼噴射量、QdotはS16で算出した1燃料噴霧の噴射率である。ここでは、目標燃焼距離xtrgまでに燃やしきる燃焼噴射量Qcmbを噴射する期間を、噴射期間τinjとして算出している。
【0052】
ただし、1噴霧の利用可能ガス量Mentには、シリンダ11(燃焼室14)内に吸入された総ガス量Mcyl(全ガス量)と噴霧の数nh(噴孔24aの数nh)とにより決まる上限値(限界利用可能ガス量)が存在する。図8は、限界利用可能ガス量を示す模式図である。同図に示すように、燃料噴射弁24の複数の噴孔24aから等間隔で燃料が噴射され、それぞれ燃料噴霧fj1,fj2,fj3が形成される。各燃料噴霧では、噴射方向のガスが取り込まれるとともに、矢印で示すように周囲のガスが巻き込まれる。このため、隣り合う燃料噴霧では、破線で示すように互いの中間までの領域内のガス量が利用可能な上限値となる。すなわち、限界利用可能ガス量は、シリンダ11内に吸入された総ガス量Mcylを噴霧の数nhで割った値となる。総ガス量Mcylは、以下の数式14により算出する。
【0053】
【数14】
上記において、mmafは空気量[mg/ms]、megrはEGRガス量[mg/ms]、ninjはエンジン10の1回転当たりの噴射回数、NEはエンジン10の回転速度[rpm]である。空気量mmafはエアフロメータ47により検出し、EGRガス量はEGRバルブ52bの開度及びEGRバルブ52b前後の差圧に基づいて算出し、回転速度NEは回転速度センサ42により検出する。したがって、1噴霧の利用可能ガス量Mentは、以下の数式15で表される。
【0054】
【数15】
続いて、燃料噴霧の広がり角度である噴霧角θ0を算出する(S18)。詳しくは、噴射圧Pc及びガス密度ρaを用いて、図16のマップを参照して噴霧角θ0を算出する。なお、噴射圧Pc且つガス密度ρaの点に対応する噴霧角θ0の値が存在しない場合は、その点の近傍の点に対応する噴霧角θ0の値から補間して噴霧角θ0を算出する。
【0055】
図16は、噴射圧Pc及びガス密度ρaと、噴霧角θ0との関係を示すマップであり、後述する噴射角検出の手順に従って予め設定されている。同図に示すように、噴射圧Pcが高い(噴孔24aから噴射される燃料の運動量が大きい)ほど、噴孔24aから噴射される燃料の噴霧角θ0(噴霧の広がり角度)が大きくなる(図2参照)。このため、噴射圧Pcが高いほど、噴霧角θ0が大きくなる。また、ガス密度ρa(空気の密度)が大きいほど、噴孔24aから噴射された燃料が燃焼室14内のガスに当たって拡散する度合いが強くなる。このため、ガス密度ρaが大きいほど、噴孔24aから噴射された燃料の噴霧角θ0が大きくなる。
【0056】
続いて、目標燃焼距離xtrg及び目標当量比φtrgに基づいて、燃焼噴射量Qcmbを燃やし切った時の燃料噴霧領域の目標燃焼酸素濃度Co2cmbを算出する(S19)。具体的には、上述した数式5において、到達距離x(t)を目標燃焼距離xtrgとし、当量比φ(t)を目標当量比φtrgとして、以下の数式16により目標燃焼酸素濃度Co2cmb(酸素濃度Co2sp)を算出する。
【0057】
【数16】
上記において、ρaはS15で算出した筒内ガス密度、θ0はS18で検出した噴霧角であり、その他の各文字の物理的意味は、数式5と同様である。
【0058】
続いて、目標燃焼酸素濃度Co2cmbに基づいて、目標インマニ酸素濃度Co2imを算出する(S20)。具体的には、燃料噴霧領域における酸素量の釣り合いから、以下の数式17が成立する(消費酸素量推定手段)。
【0059】
【数17】
上記において、Co2imはインテークマニホールド20a内のガスの酸素濃度、MentはS17で算出した1噴霧の利用可能ガス量、κは燃料量を使用酸素量に変換する係数、Co2cmbはS19で算出した目標酸燃焼素濃度、QcmbはS13で算出した燃焼噴射量Qcmbである。すなわち、数式17は、燃料噴霧領域において、燃焼噴射量Qcmbを燃焼させる前の酸素量から燃焼噴射量Qcmbの燃焼に使用される酸素量を引いた酸素量が、燃焼後の噴霧領域内の酸素量に等しいことを表している。数式17を変形することにより、以下の数式18が導かれる(目標酸素濃度算出手段)。
【0060】
【数18】
続いて、目標インマニ酸素濃度Co2imに基づいて、目標EGRガス量megrを算出する(S21)。具体的には、シリンダ11(燃焼室14)内のガスについて、以下の数式19〜22が成立する。
【0061】
【数19】
【0062】
【数20】
【0063】
【数21】
【0064】
【数22】
上記において、Co2airは大気の酸素濃度[wt%]、Co2exは排気の酸素濃度[wt%]、mmafは吸気通路15内を流通する空気量[mg/ms]、megrは吸気に導入されるEGRガス量[mg/ms]、mcylはシリンダ11内に吸入される吸気量、κは燃料量を使用酸素量に変換する係数、Qは噴射量、EGRは吸気全体に対するEGR率である。
【0065】
これらの数式19〜22から、以下の数式23が導かれる。
【0066】
【数23】
数式23において、S20で算出した目標インマニ酸素濃度Co2im、噴射量Qとして燃焼噴射量Qcmbに噴孔24aの数nhを掛けた値、mcylとして数式8により算出した総ガス量Mcylを代入することにより、目標EGRガス量megrを算出する。
【0067】
続いて、目標EGRガス量megrに基づいて、EGRバルブ52bの開度指示値EGRaを算出する(S22)。具体的には、目標EGRガス量megrを用いて、図9のマップを参照して開度指示値EGRaを算出する。図9のマップは、実験等に基づき予め設定しておくことができる。
【0068】
そして、EGRバルブ52bの開度が開度指示値EGRaとなるように、EGRバルブ装置52を制御する(混合比制御手段)。すなわち、推定された目標燃焼距離xtrgでの当量比φ(t)が、設定された目標当量比φtrgとなるように、EGRバルブ装置52を制御する。そして、S11で設定された噴射タイミングθinjにおいて燃料噴射弁24の駆動を開始して、S11で設定した噴射量Qの燃料を噴射させる。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0069】
本実施形態では、制御装置30は、SCV27により燃焼室14内にスワールを形成させた状態において、燃料噴射弁24により時間間隔をあけて燃料を複数回噴射させる所定制御を実行する(制御実行手段)。そして、制御装置30は、この所定制御が実行される際に、複数回噴射された燃料の噴霧が互いに重なり合う状態に基づいて噴霧の広がり角度を検出する(角度検出手段)。
【0070】
図10は、燃焼室14内にスワール形成された状態で時間間隔をあけて燃料を複数回噴射させた場合について、噴霧角θ0、噴霧イメージ、噴霧の動きを示す模式図である。噴霧角θ0が狭い場合(噴霧角θn)と、噴霧角θ0が広い場合(噴霧角θw)とでは、噴霧イメージに示すように、噴霧の幅(噴霧の径)が異なる。
【0071】
まず、燃料噴射弁24により第1段の噴射が行われ、燃料の噴霧Q1が形成される(左側の図)。このとき、矢印で示すように、燃焼室14内にはスワールが形成されている。このため、時間の経過に伴って、噴霧Q1は、破線で示した位置から実線で示した位置まで、スワールの流れに乗って移動させられる(中央の図)。なお、噴霧Q1は、時間の経過に伴って拡散して形状がくずれている。
【0072】
その後、時間の経過に伴って、噴霧Q1は矢印の方向へ更に移動する(右側の図)。そして、図11(a)に示すように、第1段の噴射から噴射インターバルtintが経過すると、燃料噴射弁24により第2段の噴射が行われ、燃料の噴霧Q2が形成される。このとき、図10の右側の図に示すように、噴霧Q1の位置と噴霧Q2の位置とは、スワールの流れ方向でずれている。
【0073】
ここで、噴霧角θnでは、噴霧Q1と噴霧Q2とは、互いに重なり合っていない。これに対して、噴霧角θwでは、噴霧Q1と噴霧Q2とは、互いに重なり合っている。すなわち、噴霧角θ0が広いほど、時間間隔をあけて複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合い易くなる。
【0074】
そして、複数回噴射される燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合った部分では、酸素(空気)に対する燃料の当量比が大きくなり、燃料が着火し易くなる。このため、図11(b)に示すように、噴霧角θwでの着火遅れ期間Tdly1は、噴霧角θnでの着火遅れ期間Tdly2よりも短くなっている。すなわち、複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う部分が大きいほど、着火遅れ期間Tdlyが短くなる。また、噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う部分が存在しない場合は、噴霧角θ0の広さにかかわらず、燃料の噴霧の重なり合いによる着火性向上は起こらないこととなる。この場合は、燃料の噴霧の重なり合いがない状態で、噴霧Q1が着火することとなる。なお、図11(b)では、熱発生率ROHRが所定の熱発生率dRHを超えた時点で、燃料が着火したと判定している。
【0075】
図12は、所定の噴射条件において、噴射インターバルtintに対する着火遅れ期間Tdlyを取得した結果を示すグラフである。
【0076】
噴射インターバルtintが短い場合は、同じ噴孔24aから噴射された燃料の噴霧Q1と噴霧Q2とが、互いに重なり合うこととなる。そして、噴射インターバルtintが長くなるほど、噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う部分が小さくなる。このため、広い噴霧角θw及び狭い噴霧角θnいずれの場合も、噴射インターバルtintが長くなるにつれて、着火遅れ期間Tdlyが長くなっている。噴霧角θwの噴霧の着火遅れ期間Tdlyは、噴霧角θnの噴霧の着火遅れ期間Tdlyよりも短くなっている。このため、予め実験等に基づいて、着火遅れ期間Tdlyと噴射インターバルtintとの関係を取得しておくことにより、検出した着火遅れ期間Tdlyを用いて噴霧角θ0を検出することができる。
【0077】
そして、噴射インターバルが噴射インターバルtint1になると、図10の中央の図に示したように、噴霧角θnでは噴霧Q1,Q2が互いに重なり合わない状態になる。この状態では、噴霧Q1,Q2の重なり合いによる着火性向上が起こらず、破線で囲んだ領域のように着火遅れ期間Tdlyは変化しないようになる(tint1〜tint2)。噴霧角θwでは、噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う状態が維持されているため、着火遅れ期間Tdlyが一定となる噴射インターバルtintが存在していない。なお、着火遅れ期間Tdlyは、噴射インターバルtintを含んでいるため、噴射インターバルtint分だけ上乗せされた期間となっている。
【0078】
噴射インターバルtintが更に長い場合は、図10の右側の図に示したように、隣り合う噴孔24aから噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合うこととなる。そして、噴射インターバルtintが長くなるほど、噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う部分が大きくなる。このため、広い噴霧角θw及び狭い噴霧角θnいずれの場合も、噴射インターバルtintが長くなるにつれて、着火遅れ期間Tdlyが短くなっている。この場合も、噴霧角θwの噴霧の着火遅れ期間Tdlyは、噴霧角θnの噴霧の着火遅れ期間Tdlyよりも短くなっている。
【0079】
また、噴射インターバルが噴射インターバルtint3よりも長くなると、噴霧Q1は2つ隣りの噴孔24aから噴射された燃料の噴霧Q2と互いに重なり合うこととなる。このため、噴射インターバルtintが長くなるにつれて、着火遅れ期間Tdlyが短くなっている。なお、燃料の噴霧の重なり合いがない状態でも、着火遅れ期間Tdlyが閾値Tth2よりも長くなると噴霧Q1は着火することとなる。このため、着火遅れ期間Tdlyは最長で閾値Tth2となる。
【0080】
図13は、噴霧角検出の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、制御装置30によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0081】
まず、噴霧角θ0の検出条件が成立しているか否か判定する(S31)。検出条件は、エンジン10が減速フューエルカット中であることを含む。なお、その他には、エンジン10の暖機が完了後であること等を検出条件に含んでもよい。
【0082】
S31の判定において、噴霧角θ0の検出条件が成立していないと判定した場合(S31:NO)、この一連の処理を一旦終了する(END)。一方、噴霧角θ0の検出条件が成立していると判定した場合(S31:YES)、エンジン10の回転速度NEを取得する(S32)。詳しくは、回転速度センサ42により、エンジン10の回転速度NEを検出させる。
【0083】
続いて、エンジン10回転速度NEに応じてSCV27の開度を設定する(S33)。詳しくは、燃焼室14内に形成されるスワールの速度が一定速度(予め設定した速度)となるように、エンジン10回転速度NEに応じてSCV27の開度を設定する。例えば、図14に示すマップを用いて、エンジン10の回転速度NEに基づいてSCV37の開度を設定する。そして、SCV27の開度が設定した開度になるように、SCV27のアクチュエータを駆動する。
【0084】
続いて、インテークマニホールド20a(サージタンク20)内の圧力Pim、及びインテークマニホールド20a内のガス温度Timを取得し(S34)、噴射タイミングθinjにおけるシリンダ11(燃焼室14)内のガス密度ρaを算出する(S35)。S34の処理は図5のS14の処理と同一であり、S35の処理は図5のS15の処理と同一である(ガス密度算出手段)。
【0085】
続いて、燃料噴射弁24による燃料の噴射圧Pc、第1段の噴射量Q1、第2段の噴射量Q2、第1段の噴射タイミングθinj、及び第1段の噴射と第2段の噴射との噴射インターバルtintを設定する(S36)。具体的には、これらの噴射条件を、噴霧角θ0の検出用に予め設定した値とする。噴射圧Pcは、低圧、中圧、及び高圧のいずれかの圧力であり、後述する図16のマップで噴霧角θ0が検出されていない噴射圧にその都度設定される(噴射圧算出手段)。噴射量Q1,Q2は、エンジン10の回転速度を急変させない微少噴射量である。第1段の噴射タイミングθinjは、噴霧角θ0を検出するために適切な着火遅れ期間Tdlyを得ることのできるタイミングであり、例えばエンジン10の圧縮上死点(TDC)よりも所定量進角側又は所定量遅角側のタイミングである。噴射インターバルtintは、噴霧角θ0を検出するために適切な着火遅れ期間Tdlyを得ることのできる期間であり、例えば図12の噴射インターバルtint1よりも短い期間である。また、S42の処理で噴射インターバルtintが短縮された場合は、その短縮された噴射インターバルtintに設定される。そして、コモンレール22内の燃料圧力が設定された噴射圧Pcとなるように、燃料ポンプ21を駆動する。このとき、燃圧センサ46により、コモンレール22内の燃料圧力を検出する。
【0086】
続いて、S36で設定された噴射条件において、燃料噴射弁24により燃料の噴射を実行させる(S37)。そして、燃料噴射弁24による燃料の噴射開始から燃料の燃焼終了までの期間にわたって、クランク角度θに対する熱発生率ROHR(θ)を算出する(S38)。
【0087】
以下の数式24により、クランク角度θに対する熱発生率ROHR(θ)を算出する。数式24は、熱力学方程式及び気体の状態方程式に基づいて導出される(熱発生率推定手段)。
【0088】
【数24】
上記において、Cvは定積モル比熱[J/mol/K]、Rは気体定数[J/K/mol]、V(θ)はクランク角度θに対するシリンダ11(燃焼室14)の容積、Pcyl(θ)はクランク角度θに対する筒内圧である。容積V(θ)は、シリンダ11の設計値及びクランク角度θに基づき算出する。筒内圧力Pcyl(θ)は筒内圧センサ43により検出する。dはそれぞれの微分を表すため、それぞれの微小な変化量を対応させる。
【0089】
続いて、熱発生率ROHRに基づいて、着火遅れ期間Tdlyを検出する(S39)。具体的には、燃料の噴射タイミングθinjから熱発生率ROHRが所定の熱発生率dRHを超える時点までの期間(図11参照)を、着火遅れ期間Tdlyとして検出する(期間検出手段)。
【0090】
続いて、検出された着火遅れ期間Tdlyにより噴霧角θ0を検出可能であるか否か判定する(S40)。具体的には、検出された着火遅れ期間Tdlyが、判定値Tth1(所定期間)よりも短いか否か判定する。図12に示すように、この判定値Tth1は、噴射インターバルが噴射インターバルtint1よりも短いか否か、すなわち第1段の噴射による噴霧と第2段の噴射による噴霧とが互いに重なり合う状態であるか否か判定することのできる値に設定されている。
【0091】
S40の判定において、検出された着火遅れ期間Tdlyにより噴霧角θ0を検出可能であると判定した場合(S40:YES)、着火遅れ期間Tdlyに基づいて噴霧角θ0を検出する(S41)。具体的には、図15に示すマップを参照して、S35で算出したガス密度ρa、S36で設定した噴射圧Pc、及びS39で検出した着火遅れ期間Tdlyを用いて、噴霧角θ0を検出する(角度検出手段)。これらのマップは、可視化エンジン等で実際の噴霧角θ0を測定することにより、予め実験等に基づいて設定しておくことができる。なお、S36において噴射圧Pcを、図15(a)の低圧、図15(b)の中圧、及び図15(c)の高圧に区分しているが、噴射圧Pcをより細かく区分してもよい。また、S41において噴射圧Pcとして、燃圧センサ46により検出した圧力を用いることもできる(噴射圧算出手段)。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0092】
一方、S40の判定において、検出された着火遅れ期間Tdlyにより噴霧角θ0を検出可能でないと判定した場合(S40:NO)、噴射インターバルtintを短縮する(S42)。詳しくは、S36で設定される噴射インターバルtintを、現在の噴射インターバルtintよりも所定期間短縮する。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0093】
そして、制御装置30は、S41で検出した噴霧角θ0により、図16のマップを更新する。詳しくは、図16のマップにおいて、S35で算出したガス密度ρa、且つS36で設定した噴射圧Pc(又は燃圧センサ46により検出した圧力)の点に対応する噴霧角θ0として、S41で検出した噴霧角θ0を記憶させる。なお、その点に既に噴霧角θ0の値が記憶されている場合は、既に記憶されている噴霧角θ0の値と今回検出された噴霧角θ0の値との加重平均を取るなどして、その点の噴霧角θ0を学習して記憶させる。
【0094】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0095】
・SCV27により燃焼室14内にスワールを形成させた状態において、燃料噴射弁24により噴射インターバルtintをあけて燃料を複数回噴射させる所定制御が実行される。燃料の噴霧Q1,Q2の広がり角度(噴霧角θ0)が広いほど、噴射インターバルtintをあけて複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合い易くなる。このため、複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う状態は、噴霧角θ0の広さを反映することとなる。さらに、複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う状態は、燃料噴射弁24の個体差や経時変化の影響を受けた実際の噴霧角θ0に応じて変化する。したがって、上記所定制御が実行される際に、複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う状態に基づいて、実際の噴霧角θ0を正確に検出することができる。
【0096】
・複数回噴射される燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合った部分では、酸素(空気)に対する燃料の当量比が大きくなり、燃料が着火し易くなる。このため、複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う部分が大きいほど、着火遅れ期間Tdlyが短くなる。したがって、着火遅れ期間Tdlyは、燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う状態、ひいては噴霧角θ0を反映することとなる。よって、着火遅れ期間Tdlyを用いて噴霧角θ0を検出することができる。
【0097】
・検出された着火遅れ期間Tdlyが判定値Tth1よりも長い場合に、燃料が複数回噴射される噴射インターバルtintが短縮される。このため、検出された着火遅れ期間Tdlyが判定値Tth1よりも長く、燃料の噴霧Q1,Q2の重なり合いによる着火性向上が起きていないと予測される場合に、複数回噴射される燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合い易くすることができる。その結果、着火遅れ期間Tdlyが噴霧角θ0を反映する状態に修正することができる。
【0098】
・算出された噴射圧Pcを用いて噴霧角θ0が検出されるため、噴射圧Pcが変化したとしても噴霧角θ0を正確に検出することができる。
【0099】
・算出されたガス密度ρaを用いて噴霧Q1,Q2の広がり角度が検出されるため、ガス密度ρaが変化したとしても噴霧角θ0を正確に検出することができる。
【0100】
・燃料を燃焼させる噴射方向への目標燃焼距離xtrgが設定され、設定された目標燃焼距離xtrgでの混合気の目標当量比φtrgが設定される。燃料噴射弁24により噴射された燃料の運動量が混合気の運動量として保存されることに基づいて、算出された噴霧角θ0を用いて、目標燃焼距離xtrgでの混合気の当量比φ(t)が推定される。このため、噴射された燃料の運動量、すなわち噴霧Q1,Q2の状態を考慮して、目標燃焼距離xtrgでの混合気の当量比φ(t)を精度良く推定することができる。そして、推定された目標燃焼距離xtrgでの当量比φ(t)が、設定された目標当量比φtrgとなるように、EGRバルブ装置52が制御される。したがって、燃料を燃焼させる噴射方向への目標燃焼距離xtrgでの混合気の当量比φ(t)を適切に制御することができ、排気エミッションの悪化を効果的に抑制することができる。
【0101】
・燃料が完全に燃焼するためには、燃料が燃焼し終えた状態で、酸素に対する燃料の当量比が所定の当量比になっている必要がある。この点、噴孔24aから噴射される燃料が設定された目標燃焼距離xtrgに到達するまでに、噴孔24aから噴射される燃料の燃焼により消費される消費酸素量が推定される。そして、推定された消費酸素の量に基づいて、燃料が目標燃焼距離xtrgに到達する時の混合気の目標当量比φtrgが設定される。したがって、燃料の燃焼により消費される酸素量を考慮して、燃料が目標燃焼距離xtrgに到達する時の混合気の目標当量比φtrgを適切に設定することができる。
【0102】
・設定された目標燃焼距離xtrgにおいて、噴孔24aから噴射される燃料のうち、設定された目標燃焼割合ηtrgの燃料を燃焼させることにより、燃料の燃焼を適切に制御することができる。この点、噴孔24aから噴射される燃料のうち、設定された目標燃焼距離xtrgに到達するまでに燃焼させる燃料の目標燃焼割合ηtrgが設定され、噴孔24aから噴射される燃料のうち、設定された目標燃焼割合ηtrgの燃料の燃焼により消費される消費酸素量が推定される。したがって、目標燃焼距離xtrgまでに燃焼させる目標燃焼割合ηtrgの燃料の燃焼により消費される酸素量を考慮して、燃料が目標燃焼距離xtrgに到達する時の混合気の目標当量比φtrgを適切に設定することができる。
【0103】
・噴射圧Pcが高い(噴孔24aから噴射される燃料の運動量が大きい)ほど、混合気に取り込まれるガス(空気)の量が多くなる。この点、噴孔24aから噴射される燃料の運動量Mspが大きいほど、燃料の燃焼に用いられる利用可能ガス量Mentが多く推定される。したがって、燃料の運動量Mspに応じて混合気に取り込まれるガス量が変化する影響を考慮して、当量比φ(t)を正確に推定することができる。
【0104】
・燃料噴射弁24に複数の噴孔24aが形成されている場合、1つの噴孔24aから噴射された燃料の噴霧が燃焼に用いることのできる利用可能ガス量Mentは、燃焼室14内の総ガス量Mcylを噴孔24aの数で割った量が上限値となる。燃料の運動量Mspが大きいほど多く推定される利用可能ガス量Mentに対して上限値を設定することにより、利用可能ガス量Mentに基づいて推定される当量比φ(t)を正確に推定することができる。
【0105】
・設定された目標燃焼距離xtrgでの混合気の目標当量比φtrgに基づいて、吸気の目標インマニ酸素濃度Co2imが算出される。すなわち、目標燃焼距離xtrgでの混合気の目標当量比φtrgが設定されれば、その目標当量比φtrgから吸気の目標インマニ酸素濃度Co2imを逆算することができる。そして、算出された目標インマニ酸素濃度Co2imに基づいて、EGRバルブ装置52により吸気に導入する排気の量が変更される。したがって、吸気の酸素濃度を目標インマニ酸素濃度Co2imに制御することにより、目標燃焼距離xtrgでの混合気の当量比φ(t)を目標当量比φtrgに制御することができる。
【0106】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
【0107】
・筒内圧センサ43により検出された筒内圧力Pclyの上昇率が判定値dPを超えた場合に、燃料が着火したと判定してもよい。
【0108】
・制御装置30は、スワールの速度を算出する速度算出手段を備え、速度算出手段により算出されたスワールの速度を用いて、噴霧角θ0を検出することもできる。スワールの速度は、SCV27の開度、エンジン10の回転速度NE、及びガス密度ρaに基づいて算出することができる。燃料噴射弁24により噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が、スワールの流れに乗って移動させられる距離は、スワールの速度に応じて変化する。そして、燃料の噴霧Q1,Q2が移動させられる距離によって、複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う状態は変化する。この点、算出されたスワールの速度を用いて噴霧角θ0が検出されるため、スワールの速度が変化したとしても噴霧角θ0を正確に検出することができる。
【0109】
・制御装置30(角度検出手段)は、燃料が複数回噴射される噴射インターバルtint(時間間隔)を用いて、噴霧角θ0を検出することもできる。複数回噴射される燃料の噴霧Q1,Q2のうち先に噴射された燃料の噴霧Q1が、後の噴射までにスワールの流れに乗って移動させられる距離は、燃料が複数回噴射される噴射インターバルtintに応じて変化する。そして、先に噴射された燃料の噴霧Q1が後の噴射までに移動させられる距離によって、複数回噴射された燃料の噴霧Q1,Q2が互いに重なり合う状態は変化する。この点、燃料が複数回噴射される噴射インターバルtintを用いて噴霧角θ0が検出されるため、噴射インターバルtintが変化したとしても噴霧角θ0を正確に検出することができる。
【0110】
・同じ噴孔24aから噴射された燃料の噴霧Q1と噴霧Q2とが互いに重なり合う状態に基づいて噴霧角θ0を検出する場合は、燃料噴射弁24の噴孔24aの数を任意に設定することができる。また、噴霧Q1と噴霧Q2とが互いに重なり合う状態として、噴霧Q1と噴霧Q2とが互いに重なり合う量に限らず、噴霧Q1と噴霧Q2とが互いに重なり合わなくなる噴射インターバルtint等を用いることもできる。
【0111】
・上記実施形態では、混合気の混合比として、酸素についての当量比φ(t)を用いたが、空気についての当量比φa(t)や、空気過剰率λ(t)(当量比φaの逆数)、空燃比A/F(t)等を用いることもできる。
【0112】
・上記実施形態では、車両用のディーゼルエンジンに、混合気の混合比を制御する制御装置としての制御装置30(ECU)を適用した。しかしながら、試験装置に搭載されたディーゼルエンジンに、混合気の混合比を制御する制御装置としてのPC(Personal Computer)等を適用することもできる。また、混合気の混合比を制御する制御装置30に限らず、未燃燃料の排出量を推定する推定装置や、すすの排出量を推定する推定装置等に、燃料の噴霧の広がり角度を検出する検出装置を適用することもできる。
【符号の説明】
【0113】
10…エンジン、14…燃焼室、24…燃料噴射弁、27…スワールコントロールバルブ、30…制御装置、46…燃圧センサ。
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