特許第6237382号(P6237382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237382静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237382
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/107 20060101AFI20171120BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G03G9/10 321
   G03G9/10 351
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-60943(P2014-60943)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-184492(P2015-184492A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 洋介
(72)【発明者】
【氏名】庄子 毅
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−209378(JP,A)
【文献】 特開平07−114219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/10−9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30℃、相対湿度85%の環境下で、24000V/cmの電界下における抵抗の常用対数A(logΩcm)、及び、4800V/cmの電界下における抵抗の常用対数B(logΩcm)が、下記関係式(1)及び(2)を満たすフェライト粒子を含み、前記フェライト粒子が、鉄、マンガン、ストロンチウム、及びシリカを含有する静電荷像現像用キャリア。
式(1):1.04≦B/A≦1.11
式(2):6≦A≦9
【請求項2】
前記フェライト粒子の24000V/cmの電界下における抵抗の常用対数A(logΩcm)が7以上9以下である請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
シクロアルキル基を有する樹脂を含み、前記フェライト粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有する請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項4】
静電荷像現像用トナーと、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアとを含む静電荷像現像剤。
【請求項5】
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、
画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジ。
【請求項6】
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法は、静電潜像保持体(感光体)表面に形成された静電潜像を、着色剤を含むトナーで現像し、得られたトナー画像を記録媒体表面へ転写し、これを熱ロール等で定着することにより画像が得られるものである。また、その潜像保持体は再び静電潜像を形成するために転写残存トナーがクリーニング等され、球形トナーを用いたときのように該転写残存トナーがほとんどない場合にはクリーニング工程が省かれる場合もある。このように電子写真法等に使用される乾式現像剤は、結着樹脂に着色剤等を配合したトナーを単独で用いる一成分現像剤と、そのトナーにキャリアを混合した二成分現像剤とに大別される。
【0003】
特許文献1には、「軟磁性を示すフェライト材料からなるフェライトキャリアにおいて、式:(MO)100−x(Fe(但し、MはCuおよびZnを必須成分とする2価の金属元素の組合せ、x=55〜95モル%)で示されるフェライト成分100重量部に対してBaOおよび/またはCaOを0.05〜5.0重量部添加した組成としたことを特徴とするフェライトキャリア。」が開示されている。
【0004】
特許文献2には、「磁性材料表面に樹脂を被覆した静電荷像現像剤用キャリアに於いて、該磁性材料表面に0.5〜3.0重量%の樹脂を被覆したものであり、且つ、下記関係 1≦R2/R1≦10 R1:1400g荷重で1000Vを10秒印加した場合の体積固有抵抗、R2:1400g荷重で1000Vを30秒印加した場合の体積固有抵抗、を満足することを特徴とする静電荷像現像剤用キャリア。」が開示されている。
【0005】
特許文献3には、「Mnを10〜30重量%、Mgを1.0〜3.0重量%、Tiを0.3〜1.5重量%、Feを40〜60重量%を含有することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−16862号公報
【特許文献2】特開平9−160307号公報
【特許文献3】特開2012−13865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高温高湿下で画像形成を繰り返したときに画像の濃度変化が抑制される静電荷像現像用キャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
【0009】
請求項1に係る発明は、30℃、相対湿度85%の環境下で、24000V/cmの電界下における抵抗の常用対数A(logΩcm)、及び、4800V/cmの電界下における抵抗の常用対数B(logΩcm)が、下記関係式(1)及び(2)を満たすフェライト粒子を含み、前記フェライト粒子が、鉄、マンガン、ストロンチウム、及びシリカを含有する静電荷像現像用キャリア。
式(1):1.04≦B/A≦1.11
式(2):6≦A≦9
【0010】
請求項2に係る発明は、前記フェライト粒子の24000V/cmの電界下における抵抗の常用対数A(logΩcm)が7以上9以下である請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【0011】
請求項3に係る発明は、シクロアルキル基を有する樹脂を含み、前記フェライト粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有する請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【0012】
請求項4に係る発明は、静電荷像現像用トナーと、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアとを含む静電荷像現像剤。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジ。
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
請求項7に係る発明は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、静電荷像現像用キャリアに含まれるフェライト粒子の抵抗が、前記関係式(1)及び(2)の両方を満たさない場合に比べ、高温高湿下で画像形成を繰り返したときに画像の濃度変化が抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、フェライト粒子の24000V/cmの電界下における抵抗の常用対数A(logΩcm)が7未満である場合に比べ、高温高湿下で画像形成を繰り返したときに画像の抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、フェライト粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層に含まれる樹脂がメチルメタクリレート樹脂である場合に比べ、高温高湿下で画像形成を繰り返したときに画像の濃度変化が抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、フェライト粒子の抵抗が前記関係式(1)及び(2)の両方を満たさない静電荷像現像用キャリアを含む静電荷像現像剤に比べ、高温高湿下で画像形成を繰り返したときに画像の濃度変化が抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0018】
請求項5、6、7に係る発明によれば、静電荷像現像用キャリアに含まれるフェライト粒子の抵抗が前記関係式(1)及び(2)の両方を満たさない静電荷像現像用キャリアを含む現像剤を適用した場合に比べ、高温高湿下で画像形成を繰り返したときに画像の濃度変化が抑制される現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0021】
<静電荷像現像用キャリア>
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリア(以下、「キャリア」と称する場合がある。)は、高温高湿下(30℃、相対湿度85%)の環境下で、24000V/cmの電界下における抵抗の常用対数A(logΩcm)、及び、4800V/cmの電界下における抵抗の常用対数B(logΩcm)が、下記関係式(1)及び(2)を満たすフェライト粒子を含んで構成されている。
式(1):1.04≦B/A≦1.11
式(2):6≦A≦9
【0022】
電子写真方式による画像形成は一般に次の工程でなされる。現像器内の現像剤が攪拌され帯電する。帯電した現像剤は現像器の現像剤保持体に搬送され、対向する電子写真感光体の表面に形成されている静電潜像がトナーによって現像される。このとき、現像剤中のキャリアの抵抗が高いと、キャリアからトナーが離れにくくなり、濃度不足が生じやすい。逆に抵抗が低いと、トナーが離れる際にキャリアへ電荷が注入され、キャリアの感光体への移行が起こりやすくなる。その結果、画像に白抜けや、色筋などの画像不良が生じやすくなる。特に高温高湿下では顕著である。そのため、キャリアは好適な範囲の抵抗を維持する必要がある。キャリアの抵抗を制御する方法として、キャリアの表面に抵抗を制御した被覆層(コート層)を設けることが用いられる。
【0023】
しかし、一般に印刷を続けていくと現像器の中でキャリアは劣化していく。キャリアの劣化は主に2つの形態で生じる。1つは、現像器内のストレスにより生じる被覆層の剥離や摩耗である。もう1つは、トナーに含まれる外添剤などがキャリアの表面に付着し、キャリアの物性を変化させてしまうことである。
【0024】
これらを解決する方法としては、例えば、被覆層の表面エネルギーを下げ、トナーの外添剤などがキャリアに付着することを抑制する方法がある。しかし、表面エネルギーの低い樹脂は、帯電性が低く、また摩擦帯電も生じにくくなるため使いこなしが難しい。また、適度に被覆層を摩耗させて表面をリフレッシュする方法があるが、長期使用において、被覆層の摩耗によるキャリアの劣化が顕著となる。また、架橋樹脂などにより被覆層の保護を行った場合、表面の汚れが加速し、長期使用が困難となる。
そのため、長期に現像剤を使用する際は、適度に新しいキャリアと入れ替えるトリクル方式を用いることが一般的である。
【0025】
本発明者らは、芯材としてフェライト粒子を用いたキャリアにおいて、30℃、85%RH(相対湿度)の条件下で、24000V/cmの電界下におけるフェライト粒子の抵抗の常用対数A(logΩcm)と4800V/cmの電界下におけるフェライト粒子の抵抗の常用対数B(logΩcm)との比(B/A)を特定の範囲に制御し、且つ、24000V/cmの電界下で特定の範囲の抵抗をもつフェライト粒子を用いることで、高温高湿下(30℃、85%RH)でも長期にわたって画像濃度の変動や色抜けが抑制されることを見出した。
【0026】
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアを含む現像剤を用いることで、高温高湿下で画像形成を繰り返したときに画像の濃度変化が抑制される理由は定かでないが、30℃、85%RHでのフェライト粒子の抵抗が前記式(1)及び(2)を満たすことでキャリア劣化の主要因、すなわち、樹脂層の剥離やキャリア表面へのトナー外添剤の付着が抑制されると推測される。
【0027】
本実施形態に係るキャリアは、フェライト粒子のみで構成されていてもよいし、芯材となるフェライト粒子の表面の少なくとも一部が樹脂を含む被覆層で被覆された樹脂被覆キャリアでもよい。
以下、本実施形態に係るキャリアの代表例として、フェライト粒子の表面が樹脂を含む被覆層で被覆された樹脂被覆キャリアについて具体的に説明する。
【0028】
(フェライト粒子)
本実施形態に係るキャリアに含まれるフェライト粒子は、30℃、相対湿度85%の環境下で、24000V/cmの電界下における抵抗の常用対数A(logΩcm)、及び、4800V/cmの電界下における抵抗の常用対数B(logΩcm)が、下記関係式(1)及び(2)を満たす。
式(1):1.04≦B/A≦1.11
式(2):6≦A≦9
【0029】
キャリアの劣化に起因する画像不良において、キャリアの高抵抗化による画像濃度不良は、4800V/cmの抵抗と相関が高い。4800V/cmの電界下でのフェライト粒子の抵抗はキャリア粒子の比較的表面の抵抗を表し、この抵抗を好適にすることでキャリアからトナーが離れる際の電荷をキャリア表面に僅かに逃がし、トナーが感光体へ移行しやすくなると考えられる。
【0030】
本実施形態におけるフェライト粒子は、30℃、85%RHの環境下における印加電圧4800V/cmでの抵抗が、常用対数で6.01logΩcm以上10.1logΩcm以下であることが好ましく、更に好ましくは7logΩcm以上9logΩcm以下である。
【0031】
キャリアへの電荷注入による感光体への移行については、24000V/cmでの抵抗に相関する。24000V/cmはキャリアの表面から内部にかけての抵抗を表し、この抵抗を特定の範囲に制御することでキャリアへの電荷注入が抑制されると考えられる。
【0032】
本実施形態におけるフェライト粒子は、30℃、85%RHの環境下における印加電圧24000V/cmでの抵抗が、常用対数で6logΩcm以上9logΩcm以下であり、好ましくは7logΩcm以上9logΩcm以下、更に好ましくは7Ωcm以上8logΩcm以下である。
【0033】
上記2つの電界下における抵抗の変化を低く抑えることによって、画像濃度不良とキャリア移行の抑制が両立される。また、フェライト粒子の抵抗を制御することにより、キャリアの経時劣化に対する抵抗変化が抑制される。
【0034】
上記2つの電界下におけるフェライト粒子の抵抗値がそれぞれ上記範囲であっても、それらの比(B/A)が1.04以上1.10以下の範囲外であると、連続印刷中に機内温度の上昇などによる現像剤の帯電変化が生じて画像異常が生じる場合がある。本実施形態に係るフェライト粒子は、30℃、相対湿度85%の環境下、上記2つの電界下における各抵抗の常用対数の比(B/A)は1.04以上1.10以下であり、好ましくは1.06以上1.08以下である。
【0035】
なお、本実施形態に係るフェライト粒子の上記2つの抵抗は以下のように測定される。
2枚の極板を1mmの幅で平行に対峙させ、その間にフェライト粒子を0.25g入れ、断面積2.4cmの磁石で保持し、200Vの印加電圧を掛け、電流値を測定する。このときの電界は4800V/cmである。得られた電流値から抵抗値を計算する。
同様に1000Vの印加電圧での抵抗を測定する。このときの電界は24000V/cmであり、得られた電流値から抵抗値を計算する。
【0036】
キャリアの芯材として用いられるフェライトとしては、例えば、下記式で示される構造のものが挙げられる。
・式:(MO)(Fe
上記式中、MはCu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、Co及びMoからなる群より選択される少なくとも1種を示す。また、X、Yはモル比を示し、X+Y=100である。
【0037】
フェライトとして上記式で示される構造のものうち、Mが複数の金属を表すものは、例えば、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−亜鉛系フェライト等公知のものが挙げられる。
【0038】
本実施形態に係るフェライト粒子は、抵抗が上記式(1)及び(2)を満たせばよいが、マンガンフェライトが好適である。マンガンフェライトは金属として少なくともFeとMnを含み、磁化と抵抗のバランスが良好である。マンガンフェライトは、Fe及びMn以外の他の金属も含むものでもよく、例えば、Mn−Mg系フェライト、Mn−Zn系フェライトなどが挙げられる。
【0039】
本実施形態で用いるフェライト粒子の体積平均粒径(D50v)としては、30μm以上50μm以下が挙げられる。
本実施形態におけるフェライト粒子、粉砕粒子の体積平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定装置LA−700(堀場製作所製)にて測定した値である。得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて累積50%となる粒子径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0040】
本実施形態に係るフェライト粒子を製造する方法は特に限定されないが、例えばSiO添加と、焼成後の熱処理の組み合わせと調整によって製造することができる。
一般に高電界の抵抗を上げるには、フェライトの結晶中の非磁性イオンを増やす必要がある。しかし、非磁性イオンは磁化を下げ、またフェライトを形成しないものが多く、限界がある。
本実施形態ではフェライト粒子を製造する原料として、Fe及びMn(OH)のほかにシリカと炭酸ストロンチウムを加えて焼成することで、粒界面にシリカが存在し、内部にストロンチウムが存在する。このとき、焼成温度を、低温度時間を長く、急激に高温に昇温した後、速やかに温度を下げる。これにより、高電界での抵抗が上昇する。さらに、好適な温度と酸素の下、加熱して表面付近の結晶中酸素比率を上げることで低電界での抵抗が上昇する。
【0041】
以下に、具体的な材料、条件を示して本実施形態に係るフェライト粒子の製造方法の一例を説明するが、本実施形態に係るフェライト粒子は以下に記載する材料や数値に限定されるものではない。
【0042】
Fe及びMn(OH)をFeとMnがモル比で2:1になるように混合し、SrCOを全体の1.5質量%、シリカを全体の1.0質量%加え、更に混合する。
次に、分散剤としてポリビニルアルコールと、水とを加え、メディア径1mmのジルコニアビーズで混合粉砕を行う。
【0043】
次に、スプレードライヤーで体積平均粒径38μmの粒子になるように造粒、乾燥を行う。
【0044】
乾燥粒子を電気炉で1200℃まで4時間かけて昇温し、次いで1400℃まで10分で昇温する。このとき、酸素と窒素の混合気体の中、酸素濃度が1%になるように調整しながら焼成を行う。
【0045】
1400℃で1時間焼成した後、10分で1000℃まで降温する。
【0046】
そのまま、大気状態で放置し、950℃になったところで2時間、一定温度で放置する。
その後、解砕工程、分級工程を経て目的のフェライト粒子を得る。
【0047】
(被覆層)
フェライト粒子を被覆する被覆層に含まれる樹脂(被覆樹脂)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0048】
被覆層は、シクロアルキル基を有する樹脂を含むことが好ましい。シクロアルキル基を有する樹脂としては、(1)シクロアルキル基を含むモノマーの単独重合体、(2)シクロアルキル基を含むモノマーを2種以上重合した共重合体、(3)シクロアルキル基を含むモノマーとシクロアルキル基を含まないモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0049】
被覆層にシクロアルキル基を含む樹脂を用いることで、長期使用で適度な表面摩耗が生じ、よりキャリアの劣化を抑えることができる。このとき、フェライト粒子の抵抗が制御されていることで、被覆層の摩耗影響を抑えることが可能となる。
前記(1)乃至(3)において、シクロアルキル基としては、例えば、3員環乃至10員環のシクロアルキル基が挙げられ、3員環乃至8員環(炭素数3乃至8)のシクロアルキル基が好ましく、5員環乃至6員環(炭素数5乃至6)のシクロアルキル基がより好ましい。炭素数が8以下のシクロアルキル基であれば立体障害が小さく、樹脂の良好な堅牢性が得られ、炭素数が5乃至6のシクロアルキル基であれば環状構造として安定である。
シクロアルキル基の構造は樹脂のNMRによって特定される。
【0050】
前記シクロアルキル基を有する樹脂としては、シクロアルキルアクリレート及びシクロアルキルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する重合単位を含む樹脂であることが好ましく、具体的には、シクロアルキルアクリレート、シクロアルキルメタクリレート、シクロアルキルメタクリレートとメタクリレートとの共重合体、シクロアルキルアクリレートとメタクリレートとの共重合体、シクロアルキルメタクリレートとアクリレートとの共重合体、更には、シクロアルキルアクリレート、シクロアルキルメタクリレート、アクリレート、メタクリレートの組み合わせでの共重合体、シクロアルキルメタクリレートとスチレンとの共重合体、シクロアルキルアクリレートとスチレンとの共重合体、側鎖にシクロアルキル基を持つポリエステル樹脂、側鎖にシクロアルキル基を持つウレタン樹脂、側鎖にシクロアルキル基を持つウレア樹脂などが挙げられる。
【0051】
特に、前記シクロアルキル基を有する樹脂としては、前記(3)シクロアルキル基を含むモノマーとシクロアルキル基を含まないモノマーとの共重合体であることが好ましく、シクロアルキルアクリレート及びシクロアルキルメタクリレートから選択される少なくとも一方と、メチルメタクリレート及びメタクリレートから選択される少なくとも一方との共重合体であることがより好ましく、シクロアルキルアクリレートと、メチルメタクリレート及びメタクリレートから選択される少なくとも一方との共重合体が更に好ましい。前記シクロアルキル基がシクロアルキルアクリレートと、メチルメタクリレート及びメタクリレートから選択される少なくとも一方との共重合体であると、帯電量の変化の抑制が維持される。この効果は、被覆層とフェライト粒子との密着性が向上するためと考えられる。
【0052】
前記シクロアルキルアクリレート及びシクロアルキルメタクリレートの少なくとも一方と、メチルメタクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方との共重合体における共重合比(シクロアルキルアクリレート及びシクロアルキルメタクリレートの少なくとも一方:メチルメタクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方、モル比)としては、85:15乃至99:1が挙げられる。
【0053】
更に、シクロアルキル基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000以上200000以下が挙げられる。
尚、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。GPCは、HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)を用い、カラムは、TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度を0.5質量%、流速を0.6ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、RI(Refractive Index)検出器(示差屈折率検出器)を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0054】
また、本実施形態に係るキャリアは、導電性粒子(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下の粒子)を被覆層中に分散させてもよい。該導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
また、フェライト粒子の被覆層による被覆率は80%以上98%以下であることが好ましく、90%以上98%以下であることが好ましい。
ここで、上記被覆率は以下の方法によって測定される。
X線電子分光分析装置として、日本電子(株)製 ESCA−9000MXを用い、キャリアを試料ホルダーに固定し、ESCAのチャンバー内に挿入する。チャンバーの真空度を1×10−6Pa以下とし、励起源としてはMg−Kαを用い、出力を200Wとする。以上の条件下で、磁性体粒子(フェライト粒子)及びキャリアのXPSスペクトルを測定し、検出された元素のFeピーク(2p3/2)の面積強度の比から被覆率を算出する。
被覆率=F2/F1×100
(F1:磁性体粒子のFe面積強度,F2:キャリアのFe面積強度)
【0056】
フェライト粒子の表面に樹脂を被覆する方法としては、シクロアルキル基を有する樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を、適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
より具体的には、フェライト粒子を被覆層形成用溶液に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をフェライト粒子の表面に噴霧するスプレー法、フェライト粒子を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でフェライト粒子と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法などが挙げられる。
【0057】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤(以下、適宜、現像剤と称する)は、静電荷像現像用トナーと上述した静電荷像現像用キャリアとを含んで構成される。
本実施形態に係る現像剤に含まれるトナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0058】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0059】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0061】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0063】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0064】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0065】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0066】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0067】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0068】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0069】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0070】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0071】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0072】
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0073】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0074】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
【0075】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0076】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0077】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0078】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0079】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0080】
本実施形態に係る現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0081】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0082】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0083】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0084】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0085】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0086】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0087】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0088】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0089】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0090】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0091】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0092】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーと本実施形態に係るキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0093】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0094】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0095】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0096】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0097】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0098】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0099】
<プロセスカートリッジ/現像剤カートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0100】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0101】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0102】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0103】
次に、本実施形態に係る現像剤カートリッジについて説明する。
本実施形態に係る現像剤カートリッジは、本実施形態に係る現像剤を収容し、画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジである。
例えば、図1に示す画像形成装置において、トナーカートリッジ8Y,8M,8C,8Kは、本実施形態に係る現像剤カートリッジでもよい。該カートリッジ内に収納されている現像剤が少なくなった場合には、該カートリッジが交換される。
【実施例】
【0104】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、特に断りがない限り、「部」とは「質量部」を意味する。
【0105】
[トナー1の作製]
【0106】
(着色剤分散液1)
シアン顔料:銅フタロシアニンB15:3(大日精化工業社製) 50質量部
アニオン性界面活性剤:ネオゲンSC(第一工業製薬社製) 5質量部
イオン交換水 200質量部
【0107】
上記を混合し、IKA社製ウルトラタラックスにより5分間、更に超音波バスにより10分間分散し、固形分21質量%の着色剤分散液1を得た。堀場製作所製粒度測定器LA−700にて体積平均粒径を測定したところ160nmであった。
【0108】
(離型剤分散液1)
パラフィンワックス:HNP−9(日本精鑞社製) 19質量部
アニオン性界面活性剤:ネオゲンSC(第一工業製薬社製) 1質量部
イオン交換水 80質量部
【0109】
上記を耐熱容器中で混合し、90℃に昇温して30分、攪拌を行った。次いで、容器底部より溶融液をゴーリンホモジナイザーへと流通し、5MPaの圧力条件のもと、3パス相当の循環運転を行った後、圧力を35MPaに昇圧し、更に3パス相当の循環運転を行った。こうして出来た乳化液を前記耐熱溶液中で40℃以下になるまで冷却し、離型剤分散液1を得た。堀場製作所製粒度測定器LA−700にて体積平均粒径を測定したところ240nmであった。
【0110】
(樹脂粒子分散液1)
−油層−
スチレン(和光純薬工業(株)製) 30質量部
アクリル酸n−ブチル(和光純薬工業(株)製) 10質量部
β−カルボキシエチルアクリレート(ローディア日華(株)製) 1.3質量部
ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) 0.4質量部
【0111】
−水層1−
イオン交換水 17質量部
アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル社製) 0.4質量部
【0112】
−水層2−
イオン交換水 40質量部
アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル社製) 0.05質量部
ペルオキソ二硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製) 0.4質量部
【0113】
上記の油層成分と水層1の成分をフラスコに入れて攪拌混合し単量体乳化分散液とした。反応容器に上記水層2の成分を投入し、容器内を窒素で十分に置換し、攪拌をしながらオイルバスで反応系内が75℃になるまで加熱した。反応容器内に上記の単量体乳化分散液を3時間かけて徐々に滴下し、乳化重合を行った。滴下終了後更に75℃で重合を継続し、3時間後に重合を終了させた。
【0114】
得られた樹脂粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置LA−700(株)堀場製作所製)で樹脂粒子の体積平均粒径D50vを測定したところ250nmであった。また、示差走査熱量計(DSC−50 島津製作所社製)を用いて昇温速度10℃/分で樹脂のガラス転移点を測定したところ53℃であった。また、分子量測定器(HLC−8020東ソー社製)を用い、THFを溶媒として数平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ13,000であった。これにより体積平均粒径250nm、固形分42質量%、ガラス転移点52℃、数平均分子量Mnが13,000の樹脂粒子分散液1を得た。
【0115】
(トナー1の作製)
樹脂粒子分散液1 150質量部
着色剤粒子分散液1 30質量部
離型剤分散液1 40質量部
ポリ塩化アルミニウム 0.4質量部
【0116】
上記の成分をステンレス製フラスコ中でIKE社製のウルトラタラックスを用い十分に混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で80分保持した後、ここに上記と同じ樹脂粒子分散液1を緩やかに70質量部追加した。
【0117】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを6.0に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら97℃まで加熱して3時間保持した。反応終了後、降温速度を1℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに40℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに5回繰り返し、濾液のpHが6.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5A ろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子を得た。
【0118】
トナー粒子の体積平均粒径D50vをコールターカウンターで測定したところ6.2μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.20であった。ルーゼックス社製のルーゼックス画像解析装置で形状観察を行ったところ、粒子の形状係数SF1は135でポテト形状であることが観察された。
トナー粒子のガラス転移点は52℃であった。
【0119】
更に、このトナー粒子に、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO)粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物粒子とを、トナー粒子の表面に対する被覆率が40%となるように添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、トナー1を作製した。
【0120】
(コート液1の調製)
シクロヘキシルアクリレート樹脂(重量平均分子量Mw:5万)36質量部
カーボンブラック VXC72(キャボット社製) 4質量部
トルエン 250質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
【0121】
上記成分と、トルエンと同量のガラスビーズ(粒径:1mm)とを関西ペイント社製サンドミルに投入し、回転速度1200rpmで30分間攪拌し、固形分11質量%のコート液1を調製した。
【0122】
(コート液2乃至4の調製)
コート液1の作製においてシクロヘキシルアクリレート樹脂を以下の樹脂に変更したこと以外はコート液1の作製と同様にしてコート液2乃至4を作製した。
・コート液2:シクロオクチルアクリレート樹脂(Mw:8万)
・コート液3:シクロプロピルアクリレート樹脂(Mw:4万)
・コート液4:メチルメタクリレート(Mw:5万)
【0123】
(フェライト粒子1の作製)
Feを1597質量部、Mn(OH)を890質量部、SrCOを37質量部、シリカを25質量部混合し、分散剤としてポリビニルアルコールを6.6質量部加え、水と、メディア径1mmのジルコニアビーズと共に、サンドミルで解砕混合した。
次に、スプレードライヤーで乾燥粒径が38μmになるように造粒、乾燥させた。
【0124】
‐焼成初期‐
更に、酸素濃度1%の酸素窒素混合雰囲気のもと、電気炉で4時間かけて1300℃に昇温した。
【0125】
‐焼成中期‐
次に、10分で1400℃に温度を上げた後、そのまま2時間放置した。
【0126】
‐冷却‐
2時間後、10分で1000℃に降温し、取り出した。
【0127】
‐終期‐
次にロータリーキルンに移し、950℃で2時間攪拌しながら加熱した。
得られた粒子を解砕工程、分級工程を経た後、フェライト粒子1を得た。
【0128】
(フェライト粒子2乃至5の作製)
フェライト粒子1の作製において表1に示すように条件を変更したこと以外はフェライト粒子1の作製と同様にしてフェライト粒子2乃至5を作製した。
【0129】
【表1】
【0130】
上記のようにして作製したフェライト粒子1乃至5について、フェライト粒子及び粉砕粒子の粒径、並びにフェライト粒子の抵抗をそれぞれ以下の方法によって測定した。
【0131】
・粒子の粒径
フェライト粒子、粉砕粒子の体積平均粒径は、レーザー解説粒度分布測定装置LA−700(堀場製作所)にて測定する。得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて累積50%となる粒子径を体積平均粒径とする。
【0132】
・抵抗測定
2枚の極板を1mmの幅で平行に対峙させ、その間にフェライト粒子を0.25g入れ、断面積2.4cmの磁石で保持し、200Vの印加電圧を掛け、電流値を測定した。このときの電界は4800V/cmである。得られた電流値から抵抗値を計算する。
同様に1000Vの印加電圧での抵抗を測定する。このときの電界は24000V/cmである。得られた電流値から抵抗値を計算する。
【0133】
フェライト粒子1の粒径は35μmであった。
また、30℃、85%RHの条件下、フェライト粒子1の抵抗測定を測定したところ、24000V/cmの電界下での抵抗の常用対数Aは7.60logΩcm、4800V/cmの電界下での抵抗の常用対数Bは8.20logΩcmであり、その比(B/A)は1.08であった。
【0134】
<実施例1>
(キャリア1の作製)
真空脱気型5Lニーダーにフェライト粒子1を2000g入れ、更にコート液1を560g入れ、攪拌しながら、60℃にて−200mmHgまで減圧し15分混合した後、昇温/減圧させ94℃/−720mmHgで30分間攪拌乾燥させ、樹脂被覆粒子を得た。次に75μmメッシュの篩分網で篩分を行い、キャリア1を得た。
【0135】
<実施例2乃至6、比較例1乃至2>
(キャリア2乃至8の作製)
キャリア1の作製において使用するフェライト粒子とコート液をそれぞれ表2に示すように変更したこと以外はキャリア1の作製と同様にしてキャリア2乃至8を作製した。
【0136】
【表2】
【0137】
[評価]
Cyan単独で印刷できるように改造された富士ゼロックス社製DCC400にトリクルキャリアを除いたCyanトナーカートリッジを設置し、実施例1の現像剤を設置した。
【0138】
30℃、85%RHの環境下で1日静置し、その後、20cm四方のベタ印刷(画像濃度100%)を5000枚、連続印刷を行った。その後、翌日まで30℃、85%RHのもと、静置した。これを、60回繰り返し、合計300000枚の印刷を行った。
【0139】
初日の10枚目の印刷物を印刷物1、最終日の最終印刷物を印刷物2とした。
【0140】
<画像欠損(白点):印刷物2>
印刷物2の画像観察画像欠陥(白点)の有無を下記基準により評価した。
A:目視で画像欠損なし(白点なし)
B:目視で白点(粒子状に白く抜けた画像)が1個以上4個以下
C:目視で白点が5個以上9個以下
D:目視で白点が10個以上
【0141】
<濃度変化(ΔE):印刷物1と印刷物2のΔE差>
印刷物1と印刷物2の各画像濃度について、反射濃度計X−rite938(X−rite社製)を使用し、色差(ΔE)を測定した。色差(ΔE)とは、CIE1976(L*a*b*)表色系におけるL*a*b*空間における距離差の2乗和の平方根を取ったものである。CIE1976(L*a*b*)表色系は、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間で、日本工業規格で「JIS Z 8729」に規定されたものである。
【0142】
印刷物1と印刷物2の色差(ΔE)により濃度変化を下記基準により評価した。
【0143】
A:ΔE差が1未満
B:ΔE差が1以上2.5未満
C:ΔE差が2.5以上3.0未満
D:ΔE差が3.0以上
【0144】
印刷物2は画像に欠損なく良好であった。また、印刷物1と印刷物2のΔEの差は0.5で良好であった。
【0145】
<実施例2乃至6及び比較例1、2>
実施例2乃至6及び比較例1、2における現像剤についても実施例1の現像剤と同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0146】
【表3】
【符号の説明】
【0147】
1Y、1M、1C、1K、感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K、帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次次転写ロール(二次転写手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
118 露光のための開口部
117 筐体
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
P 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2