(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のn型III族窒化物半導体層を形成する際に、原料ガスを3層流とし、前記3層流の内、前記第1のn型III族窒化物半導体層の主面に対して、最も近くの領域を流れる第1の層流は窒素原料ガスとしてアンモニアガスを含み、前記第1の層流に比べて遠くの領域を流れる第2の層流はIII族元素原料ガスを含み、前記第2の層流に比べて遠くの領域を流れる第3の層流はサブフローガスとしてアンモニアガスを含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
支持基板と、前記支持基板の一主面側に配置された第1のn型III族窒化物半導体層と、前記第1のn型III族窒化物半導体層上に配置されかつ前記第1のn型III族窒化物半導体層に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層と、を含む半導体層付基板を含む半導体デバイスの評価方法であって、
前記半導体層付基板および前記半導体デバイスの少なくとも一つを用いて、20K以下の温度で前記第2のn型III族窒化物半導体層のフォトルミネッセンススペクトルを測定して、自由励起子発光ピーク強度IFに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度IAの強度比IA/IFが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度IDに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度IAの強度比IA/IDが0.35以下を良品の基準とする半導体デバイスの評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の実施形態の説明>
本発明のある実施形態である半導体デバイス2は、支持基板10と、支持基板10の一主面側に配置された第1のn型III族窒化物半導体層21と、第1のn型III族窒化物半導体層21上に配置されかつ第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22と、を含む半導体層付基板1を含む。ここで、半導体層付基板1および半導体デバイス2の少なくとも一つについて、20K以下の温度で測定される第2のn型III族窒化物半導体層22のPL(フォトルミネッセンス)スペクトルにおいて、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下である。
【0015】
本実施形態の半導体デバイス2は、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルにおいて、上記強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.35以下であることから、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質がよく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度が高い。
【0016】
本実施形態の半導体デバイス2において、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度を950cm
2・V
-1・s
-1以上とすることができる。これにより、従来よりも高い電子移動度を有する半導体デバイスが得られる。
【0017】
本実施形態の半導体デバイス2において、第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度を2×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下とすることができる。これにより、高い電子移動度および低いオン抵抗を有する半導体デバイスが得られる。
【0018】
本実施形態の半導体デバイス2において、第1のn型III族窒化物半導体層21のn型キャリア濃度を1×10
18cm
-3以上5×10
18cm
-3以下とすることができる。これにより、高い結晶性および低いオン抵抗を有する半導体デバイスが得られる。
【0019】
本実施形態の半導体デバイス2において、上記強度比I
A/I
Fを0.0075以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dを0.25以下とすることができる。これにより、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質がさらによく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度がさらに高い半導体デバイスが得られる。
【0020】
本実施形態の半導体デバイスにおいて、支持基板は、GaN基板、シリコン基板、およびサファイア基板の少なくとも一つを含むことができる。これにより、品質の高い第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型族窒化物半導体層22を有する半導体デバイスが得られる。
【0021】
本発明の別の実施形態である半導体デバイス2の製造方法は、支持基板10を準備する工程と、支持基板10の一主面側に第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する工程と、第1のn型III族窒化物半導体層21上に、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22を形成することにより半導体層付基板1を形成する工程と、半導体層付基板1を含む半導体デバイス2を形成する工程と、を含む。ここで、半導体層付基板1および半導体デバイス2の少なくとも一つを用いて20K以下の温度で測定される第2のn型III族窒化物半導体層22のフォトルミネッセンススペクトルにおいて、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下となるように、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整する。
【0022】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法は、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルにおいて、上記強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.35以下となるように第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整することにより、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質がよく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度が高い半導体デバイスが得られる。
【0023】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法において、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際の原料について、III族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIを5000以上とすることができる。これにより、品質の高い第2のn型III族窒化物半導体層22が形成され、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度がより高い半導体デバイスが得られる。
【0024】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法において、第2のn型III族窒化物半導体層を形成する際の層形成速度を2μm/h以下とすることができる。これにより、品質の高い第2のn型III族窒化物半導体層が形成され、第2のn型III族窒化物半導体層の電子移動度がより高い半導体デバイスが得られる。
【0025】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法において、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際に、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度が950cm
2・V
-1・s
-1以上となるように、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整することができる。これにより、従来よりも高い電子移動度を有する半導体デバイスが得られる。
【0026】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法において、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際に、第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度が2×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下となるように、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整することができる。これにより、高い電子移動度および低いオン抵抗を有する半導体デバイスが得られる。
【0027】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法において、第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する際に、第1のn型III族窒化物半導体層21のn型キャリア濃度が1×10
18cm
-3以上5×10
18cm
-3以下となるように、第1のn型III族窒化物半導体層21の形成条件を調整することができる。これにより、高い結晶性および低いオン抵抗を有する半導体デバイスが得られる。
【0028】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法において、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際に、上記強度比I
A/I
Fが0.0075以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.25以下となるように、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整することができる。これにより、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質がさらによく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度がさらに高い半導体デバイスが得られる。
【0029】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法において、支持基板10は、GaN基板、シリコン基板、およびサファイア基板の少なくとも一つを含むことができる。これにより、品質の高い第1のn型III族窒化物半導体層および第2のn型族窒化物半導体層を有する半導体デバイスが得られる。
【0030】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法において、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際に、原料ガスを3層流Fとし、3層流Fの内、第1のn型III族窒化物半導体層の主面に対して、最も近くの領域を流れる第1の層流F1は窒素原料ガスとしてアンモニアガスを含み、第1の層流F1に比べて遠くの領域を流れる第2の層流F2はIII族元素原料ガスを含み、第2の層流F2比べて遠くの領域を流れる第3の層流F3はサブフローガスとしてアンモニアガスを含むことができる。これにより、原料ガスの全体のフローバランスを崩すことなく、アンモニアガスの供給量を増大させることにより、原料ガス中のV/III比(原料ガス中のIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
III)を高められるため、第2のn型III族窒化物半導体層の電子移動度が高い半導体デバイスが得られる。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態である半導体デバイス2の評価方法は、支持基板10と、支持基板10の一主面側に配置された第1のn型III族窒化物半導体層21と、第1のn型III族窒化物半導体層21上に配置されかつ第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22と、を含む半導体層付基板1を含む半導体デバイス2の評価方法である。ここで、半導体層付基板1および半導体デバイス2の少なくとも一つを用いて、20K以下の温度で第2のn型III族窒化物半導体層22のフォトルミネッセンススペクトルを測定して、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下を良品の基準とする。
【0032】
本実施形態の半導体デバイス2の評価方法は、第2のn型III族窒化物半導体層22のフォトルミネッセンススペクトルを測定することにより、電子移動度との相関が強い上記強度比I
A/I
Fおよび上記強度比I
A/I
Dの値を評価するものであることから、対象となる実際の半導体デバイスの電子移動度を比較的簡便に評価できる。
【0033】
<本発明の実施形態の詳細>
[実施形態1:半導体デバイス]
図1〜
図3を参照して、本発明のある実施形態である半導体デバイス2は、支持基板10と、支持基板10の一主面側に配置された第1のn型III族窒化物半導体層21と、第1のn型III族窒化物半導体層21上に配置されかつ第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22と、を含む半導体層付基板1を含む半導体デバイス2である。ここで、半導体層付基板1および半導体デバイス2の少なくとも一つについて、20K以下の温度で測定される第2のn型III族窒化物半導体層22のPL(フォトルミネッセンス)スペクトルにおいて、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下である。
【0034】
本実施形態の半導体デバイス2は、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルにおいて、上記強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.35以下であることから、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質がよく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度が高い。
【0035】
(支持基板)
図1〜
図3を参照して、本実施形態の半導体デバイス2における支持基板10は、特に制限はないが、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型族窒化物半導体層22の品質を高くするために、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型族窒化物半導体層22との結晶構造および/または格子定数の整合性が高い観点から、GaN基板、シリコン基板、およびサファイア基板の少なくとも一つを含むことが好ましく、GaN基板、シリコン基板、およびサファイア基板の一つであることがより好ましく、GaN基板であることがさらに好ましい。
【0036】
(第1のn型III族窒化物半導体層)
図1〜
図3を参照して、本実施形態の半導体デバイス2における第1のn型III族窒化物半導体層21は、支持基板10の一主面側に配置されていればよく、
図1に示すように支持基板10と直接的に接合していてもよく、
図2および
図3に示すように後述するIII族窒化物バッファ層20を介在して間接的に接合していてもよい。
【0037】
第1のn型III族窒化物半導体層21は、Ga、Al、InなどのIII族元素と窒素とを主たる構成元素とする半導体層であれば特に制限はないが、第1のn型III族窒化物半導体層21の品質を高くするために、支持基板10との結晶構造および格子定数の整合性が高いことが好ましく、支持基板10がGaN基板の場合は、n型GaN層であることが好ましい。
【0038】
第1のn型III族窒化物半導体層21のn型キャリア濃度は、特に制限はないが、半導体デバイス2のオン抵抗を低くする観点から、1×10
18cm
-3以上5×10
18cm
-3以下が好ましい。ここで、第1のn型III族窒化物半導体層21のn型キャリア濃度は、ホール測定法、C−V(容量−電圧)測定法などにより測定できる。
【0039】
(第2のn型III族窒化物半導体層)
図1〜
図3を参照して、本実施形態の半導体デバイス2における第2のn型III族窒化物半導体層22は、第1のn型III族窒化物半導体層21上に配置されている。
【0040】
第2のn型III族窒化物半導体層22は、Ga、Al、InなどのIII族元素と窒素とを主たる構成元素とする半導体層であれば特に制限はないが、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質を高くするために、支持基板10との結晶構造および格子定数の整合性が高いことが好ましく、支持基板10がGaN基板の場合は、n型GaN層であることが好ましい。
【0041】
第2のn型III族窒化物半導体層22は、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べて、n型キャリア濃度が低い。このため、第2のn型III族窒化物半導体層22がドリフト層として機能する半導体デバイスが得られる。
【0042】
第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は、半導体デバイスの特性を高くする観点から、950cm
2・V
-1・s
-1以上が好ましく、1000cm
2・V
-1・s
-1以上がより好ましく、1050cm
2・V
-1・s
-1以上がさらに好ましく、1100cm
2・V
-1・s
-1以上が特に好ましい。
【0043】
第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は、特に制限はないが、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度を高くし半導体デバイス2のオン抵抗を低くする観点から、2×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下が好ましく、5×10
15cm
-3以上2×10
16cm
-3以下がより好ましい。ここで、第2のn型III族窒化物半導体層22のキャリア濃度は、ホール測定法、C−V(容量−電圧)測定法などにより測定できる。
【0044】
(第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトル)
本実施形態の半導体デバイス2は、20K以下の温度で測定される第2のn型III族窒化物半導体層22のPL(フォトルミネッセンススペクトル)において、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下である。
【0045】
本実施形態の半導体デバイス2は、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質がよく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度が高い観点から、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルにおいて、上記強度比I
A/I
Fが0.01以下かつ上記強度比I
A/I
Dが0.35以下であり、上記強度比I
A/I
Fが0.0075以下かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.25以下が好ましい。
【0046】
半導体デバイス2の第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度を評価する従来の方法の方法として、以下の3つの方法が挙げられる。第1の方法は、半導体デバイス2の第2のn型III族窒化物半導体層22の厚さを変えて測定した電流−電圧(I−V)特性から電子移動度を算出する方法である。第2の方法は、半導体デバイス2の第2のn型III族窒化物半導体層22のホール効果測定により電子移動度を算出する方法である。第3の方法は、半導体デバイス2の第2のn型III族窒化物半導体層22のSIMS(二次イオン質量分析)により測定したドナー不純物を補償し電子移動度を低下させる不純物(以下、補償不純物という)の濃度から電子移動度を算出する方法である。
【0047】
第1の方法では、第2のn型III族窒化物半導体層22の厚さが互いに異なる複数の半導体デバイスを準備する必要があり、コスト、時間および労力が大きいという問題があった。また、対象とする半導体デバイスでの評価ができないという問題もあった。
【0048】
第2の方法では、第2のn型III族窒化物半導体層22は第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低いことから第2のn型III族窒化物半導体層22よりも第1のn型III族窒化物半導体層21に多くの電流が流れるため、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度を正確に算出するのが困難であった。第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度を正確に算出するために、対象とする半導体デバイスとは別の半導体デバイスとして、第1のn型III族窒化物半導体層21の替わりに第2のn型III族窒化物半導体層22よりn型キャリア濃度の低い高抵抗のIII族窒化物半導体層を配置した半導体デバイスまたは第2のn型III族窒化物半導体層22よりn型キャリア濃度が低い高抵抗のIII族窒化物の支持基板上に直接的に第2のn型III族窒化物半導体層22を配置した半導体デバイスを準備する必要がある。すなわち、第2の方法では、対象とする半導体デバイスでの評価ができず、対象とする半導体デバイスとは別の半導体デバイスを準備する必要があり、コスト、時間および労力が大きいという問題があった。
【0049】
第3の方法では、SIMSで測定される不純物が補償不純物となるのかどうか、また、電子移動度にどの程度影響するのかの判別が困難であり、電子移動度との相関が低いという問題があった。また、SIMS測定においては、不純物の種類が多くなるほど、測定のためのコスト、時間および労力が大きいという問題があった。
【0050】
本実施形態の半導体デバイス2においては、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度を、20K以下の温度雰囲気下で測定した第2のn型III族窒化物半導体層22のPL(フォトルミネッセンス)スペクトルにより評価する。
【0051】
図5を参照して、第2のn型III族窒化物半導体層22がキャリア濃度が5×10
15cm
-3のn型GaN層である場合、4Kの温度雰囲気下で測定された半導体層付基板1の第2のn型III族窒化物半導体層22の3.44eVから3.5eVまでのエネルギー領域内のPLスペクトルには、高エネルギー側から、自由励起子に由来する発光ピークである自由励起子発光ピークP
F、ドナー束縛励起子に由来する発光ピークであるドナー束縛励起子発光ピークP
D、およびアクセプタ束縛励起子に由来する発光ピークであるアクセプタ束縛励起子発光ピークP
Aが、順に現れる。ここで、自由励起子発光ピークP
Fは、自由の重正孔励起子に由来する自由重正孔励起子発光ピークP
FHと、自由の軽正孔励起子に由来する自由軽正孔励起子発光ピークP
FLと、の2つの発光ピークを含む。自由励起子発光ピークP
Fの上記2つのピークに対応して、ドナー束縛励起子発光ピークP
Dおよびアクセプタ束縛励起子発光ピークP
Aは、それぞれ2つのピークを含む。
【0052】
また、自由励起子発光ピークP
Fの強度である自由励起子発光ピーク強度I
Fは、結晶性の高さ、結晶の完全性の高さ、不純物濃度の低さなどの結晶品質の高さを反映し、ドナー束縛励起子発光ピークP
Dの強度であるドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dは、ドナーとなる不純物であるドナー不純物の濃度を反映し、アクセプタ束縛励起子発光ピークP
Aの強度であるアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aは、ドナー不純物を補償する補償不純物の濃度を反映する。ここで、自由励起子発光ピーク強度I
Fは2つのピークを含む自由励起子発光ピークP
Fの積算強度であり、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dは2つのピークを含むドナー束縛励起子発光ピークP
Dの積算強度であり、アクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aは2つのピークを含むアクセプタ束縛励起子発光ピークP
Aの積算強度である。
【0053】
ここで、ドナー束縛励起子発光ピークP
Dおよびアクセプタ束縛励起子発光ピークP
Aがそれぞれドナー不純物および補償不純物の状態を反映しているため、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dおよびアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aは、SIMSで測定される不純物の濃度に比べて、電子移動度との相関が高い。また、PL(フォトルミネッセンス)は、対象とする半導体デバイスでの測定が可能であり、測定も比較的簡便である。
【0054】
なお、第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルは、自由励起子発光ピークP
F、ドナー束縛励起子発光ピークP
Dおよびアクセプタ束縛励起子発光ピークP
Aを明確に識別して観測して、自由励起子発光ピーク強度I
F、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
D、アクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
A、強度比I
A/I
Dおよび強度比I
A/I
Dを正確に算出する観点から、20K以下の温度で測定することが必要であり、10K以下の温度で測定することが好ましい。
【0055】
(III族窒化物バッファ層)
図2および
図3を参照して、本実施形態の半導体デバイス2は、支持基板10が、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22の少なくとも一つと化学組成が異なる異組成基板の場合、たとえば、シリコン基板またはサファイア基板である場合は、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22の品質を高くする観点から、支持基板10と第1のn型III族窒化物半導体層21との間にIII族窒化物バッファ層20が配置されていることが好ましい。
【0056】
ここで、III族窒化物バッファ層20は、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22に比べて低温で成長させることにより形成される層であり、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22に比べて結晶性が低いため、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22と支持基板10との結晶構造および/または格子定数の不整合を緩和する。
【0057】
III族窒化物バッファ層20は、特に制限はないが、半導体デバイス2のオン抵抗を低減する観点から、n型の導電型を有していることが好ましく、n型キャリア濃度は1×10
18cm-
3以上5×10
18cm
-3以下が好ましい。
【0058】
(第1の電極)
図1〜
図3を参照して、本実施形態の半導体デバイス2は、半導体デバイス2としての機能を発現する観点から、第2のn型III族窒化物半導体層22上に第1の電極30が配置されていることが好ましい。
【0059】
第1の電極30は、半導体デバイス2としての機能を発現する観点から、第2のn型III族窒化物半導体層22とショットキー接触するショットキー電極であることが好ましい。さらに、第1の電極30は、特に制限はないが、第2のn型III族窒化物半導体層22とショットキー接触する観点から、Ni電極、Au電極、Rd電極、Pt極、Ni/Au電極などが好ましい。
【0060】
ここで、第2のn型III族窒化物半導体層22は、第1の電極30とショットキー接触する観点から、そのn型キャリア濃度が2×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下が好ましく、5×10
15cm
-3以上2×10
16cm
-3以下がより好ましい。
【0061】
(第2の電極)
図1〜
図3を参照して、本実施形態の半導体デバイス2は、半導体デバイス2としての機能を発現する観点から、支持基板10上(
図1および
図2)または第1のn型III族窒化物半導体層21上(
図3)に第2の電極40が配置されていることが好ましい。
【0062】
第2の電極40は、半導体デバイス2としての機能を発現するとともにオン抵抗を低くする観点から、支持基板10または第1のn型III族窒化物半導体層21とオーミック接触するオーミック電極であることが好ましい。さらに、第2の電極40は、特に制限はないが、支持基板10または第1のn型III族窒化物半導体層21とオーミック接触する観点から、Ti電極、Al電極、Ti/Al電極などが好ましい。
【0063】
ここで、第1のn型III族窒化物半導体層21および/または支持基板10は、第2の電極40とオーミック接触する観点から、そのn型キャリア濃度が1×10
18cm
-3以上5×10
18cm
-3以下が好ましい。
【0064】
(半導体デバイスの構造)
図1〜
図3を参照して、本実施形態の半導体デバイス2は、その構造に特に制限はない。
図1および
図2に示すように、支持基板10がGaN基板やシリコン基板などの導電性を有する基板(導電性基板)およびIII族窒化物バッファ層20がn型GaN層やn型AlN層などの導電性を有する層(導電性層)の場合、第1の電極30と第2の電極40とがそれぞれ半導体デバイス2の一方の主面側と他方の主面側に配置される両側電極構造であってもよい。また、
図3に示すように、支持基板10がサファイア基板などの導電性を有さない基板(絶縁性基板)またはIII族窒化物バッファ層が低温成長GaN層や低温成長AlN層などの導電性を有さない層(絶縁性層)の場合、第1の電極30と第2の電極40とがいずれも半導体デバイス2の一方の主面側に配置される片側電極構造であってもよい。
【0065】
図3を参照して、片側電極構造の半導体デバイス2において、第1の電極30は第2のn型III族窒化物半導体層22上に配置され、第2の電極40は第2のn型III族窒化物半導体層22の一部をメサエッチングすることにより一部が表面に露出した第1のn型III族窒化物半導体層21上に配置することができる。
【0066】
[実施形態2:半導体デバイスの製造方法]
図1〜
図3を参照して、本発明の別の実施形態である半導体デバイス2の製造方法は、支持基板10を準備する工程と、支持基板10の一主面側に第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する工程と、第1のn型III族窒化物半導体層21上に、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22を形成することにより半導体層付基板1を形成する工程と、半導体層付基板1を含む半導体デバイス2を形成する工程と、を含む。ここで、半導体層付基板1および半導体デバイス2の少なくとも一つを用いて20K以下の温度で測定される第2のn型III族窒化物半導体層22のPL(フォトルミネッセンス)スペクトルにおいて、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下となるように、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整する。
【0067】
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法は、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルにおいて、上記強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.35以下となるように第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整することにより、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質がよく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度が高い半導体デバイスが得られる。
【0068】
(支持基板を準備する工程)
図1〜
図3を参照して、支持基板10を準備する工程において準備される支持基板10は、特に制限はないが、品質の高い第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22を有する半導体デバイス2を得るために、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型族窒化物半導体層22との結晶構造および/または格子定数の整合性が高い観点から、GaN基板、シリコン基板、およびサファイア基板の少なくとも一つを含むことが好ましく、GaN基板、シリコン基板、およびサファイア基板の一つであることがより好ましく、GaN基板であることがさらに好ましい。支持基板10は、反応炉100の反応室110内のサセプタ112上に配置される。
【0069】
(第1のn型III族窒化物半導体層を形成する工程)
図1〜
図3を参照して、支持基板10の一主面側に第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する工程において、第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する方法は、特に制限はないが、品質の高い第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する観点から、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MBE(分子線成長)法、昇華法などの気相法、高窒素圧溶液法、フラックス法などの液相法、アモノサーマル法などの超臨界流体法などが好ましい。さらに、第1のn型III族窒化物半導体層21のn型キャリア濃度および厚さの調節が容易な観点から、MOCVD法が特に好ましい。
【0070】
第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する工程において、特に制限はないが、品質のよい第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する観点から、第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する際の原料について、III族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。また、品質のよい第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する観点から、第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する際の層形成速度は、10μm/h以下が好ましく、5μm/h以下がより好ましい。
【0071】
第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する工程において、第1のn型III族窒化物半導体層21のn型キャリア濃度が1×10
18cm
-3以上5×10
18cm
-3以下となるように、第1のn型III族窒化物半導体層21の形成条件を調整することができる。これにより、高い結晶性および低いオン抵抗を有する半導体デバイス2が得られる。
【0072】
図2および
図3を参照して、支持基板10が第1のn型III族窒化物半導体層21および/または第2のn型III族窒化物半導体層22と化学組成が異なる異組成基板(たとえば、シリコン基板、サファイア基板など)の場合、第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22の品質を高くする観点から、支持基板10上にIII族窒化物バッファ層20を形成した後、III族窒化物バッファ層20上に第1のn型III族窒化物半導体層21を形成することが好ましい。ここで、III族窒化物バッファ層を形成する方法は、特に制限はなく、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MBE(分子線成長)法、昇華法などの気相法、高窒素圧溶液法、フラックス法などの液相法、アモノサーマル法などの超臨界流体法などが挙げられる。
【0073】
また、
図4を参照して、第1のn型III族窒化物半導体層21を形成する際に、原料ガスを3層流Fとし、3層流Fの内、支持基板10またはIII族窒化物バッファ層20の主面に対して、最も近くの領域を流れる第1の層流F1は窒素原料ガスとしてアンモニアガスを含み、第1の層流F1に比べて遠くの領域を流れる第2の層流F2はIII族元素原料ガスを含み、第2の層流F2比べて遠くの領域を流れる第3の層流F3はサブフローガスとしてアンモニアガスを含むことができる。これにより、原料ガスの全体のフローバランスを崩すことなく、アンモニアガスの供給量を増大させることにより、原料ガス中のV/III比(原料ガス中のIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
III)を高めるため、第1のn型III族窒化物半導体層の品質が高い半導体デバイスが得られる。
【0074】
(第2のn型III族窒化物半導体層を形成することにより半導体層付基板を形成する工程)
図1〜
図3を参照して、半導体層付基板1を形成する工程において、第1のn型III族窒化物半導体層21上に、第1のn型III族窒化物半導体層に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する。
【0075】
第2のn型III族窒化物半導体層22は、第1のn型III族窒化物半導体層21に比べて、n型キャリア濃度が低い。このため、第2のn型III族窒化物半導体層22がドリフト層として機能する半導体層付基板1を含む半導体デバイス2が得られる。
【0076】
第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する方法は、特に制限はないが、品質の高い第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する観点から、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MBE(分子線成長)法、昇華法などの気相法、高窒素圧溶液法、フラックス法などの液相法、アモノサーマル法などの超臨界流体法などが好ましい。さらに、第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度および厚さの調節が容易な観点から、MOCVD法が特に好ましい。
【0077】
また、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際の原料について、III族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、品質の高い第2のn型III族窒化物半導体層22が形成され、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度がより高い半導体デバイスが得られる観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。
【0078】
また、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際の層形成速度は、品質の高い第2のn型III族窒化物半導体層が形成され、第2のn型III族窒化物半導体層の電子移動度がより高い半導体デバイスが得られる観点から、3μm/h以下が好ましく、2μm/h以下がより好ましい。
【0079】
また、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際に、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は、従来よりも高い電子移動度を有する半導体デバイス2が得られる観点から、950cm
2・V
-1・s
-1以上が好ましく、1000cm
2・V
-1・s
-1以上がより好ましく、1050cm
2・V
-1・s
-1以上がさらに好ましく、1100cm
2・V
-1・s
-1以上が特に好ましい。
【0080】
また、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際に、第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は、高い電子移動度および低いオン抵抗を有する半導体デバイスが得られる観点から、2×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下が好ましく、5×10
15cm
-3以上2×10
16cm
-3以下がより好ましい。
【0081】
(第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルによる第2のn型III族窒化物半導体層の形成条件の調整)
本実施形態の半導体デバイス2の製造方法においては、半導体層付基板1および半導体デバイス2の少なくとも1つを用いて20K以下の温度で測定される第2のn型III族窒化物半導体層22のPL(フォトルミネッセンス)スペクトルにおいて、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下となるように、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整する。かかる形成条件の調整により、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質がよく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度が高い半導体デバイス2が得られる。
【0082】
また、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件の調整は、第2のn型III族窒化物半導体層22の品質をさらによく、特に第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度をさらに高くする観点から、上記強度比I
A/I
Fが0.0075以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.25以下となるようにすることが好ましい。
【0083】
また、第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルの測定は、半導体層付基板1を用いて行うことから、対象とする半導体デバイス2について、コスト、時間および労力を低減して評価することができる。
【0084】
ここで、第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルにおいて、上記強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.35以下となるように、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整する方法は、特に制限はなく、たとえば、ある形成条件で形成した第2のn型III族窒化物半導体層22を含む半導体層付基板1および半導体層付基板1を含む半導体デバイス2の少なくとも1つを用いて測定したその第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルから、上記強度比I
A/I
Fおよび上記強度比I
A/I
Dを算出し、これらの値がそれぞれ0.01以下および0.35以下でない場合は、それぞれ0.01以下および0.35以下になるように第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を変更する。次に、変更後の形成条件で形成した第2のn型III族窒化物半導体層22を含む半導体層付基板を用いて測定したその第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルから、上記強度比I
A/I
Fおよび上記強度比I
A/I
Dを算出し、これらの値がそれぞれ0.01以下および0.35以下でない場合は、それぞれ0.01以下および0.35以下になるように第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件をさらに変更する。このように、トライアル・アンド・エラーを繰り返して、上記強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.35以下となるように、第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件を調整することができる。
【0085】
ここで、第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルにおいて、上記強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.35以下となるようにするのに有効な第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件は、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際の原料について、III族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIを、好ましくは5000以上とし、より好ましくは10000以上とすることであり、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際の層形成速度を、好ましくは3μm/h以下とし、より好ましくは2μm/h以下とすることである。
【0086】
また、
図4を参照して、第2のn型III族窒化物半導体層22を形成する際に、原料ガスを3層流Fとし、3層流Fの内、支持基板10またはIII族窒化物バッファ層20の主面に対して、最も近くの領域を流れる第1の層流F1は窒素原料ガスとしてアンモニアガスを含み、第1の層流F1に比べて遠くの領域を流れる第2の層流F2はIII族元素原料ガスを含み、第2の層流F2比べて遠くの領域を流れる第3の層流F3はサブフローガスとしてアンモニアガスを含むことができる。これにより、原料ガスの全体のフローバランスを崩すことなく、アンモニアガスの供給量を増大させることにより、原料ガス中のV/III比(原料ガス中のIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
III)を高めるため、第2のn型III族窒化物半導体層の品質が高い半導体デバイスが得られる。
【0087】
[実施形態3:半導体デバイスの評価方法]
図1〜
図3を参照して、本発明のさらに別の実施形態である半導体デバイス2の評価方法は、支持基板10と、支持基板10の一主面側に配置された第1のn型III族窒化物半導体層21と、第1のn型III族窒化物半導体層21上に配置されかつ第1のn型III族窒化物半導体層21に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層22と、を含む半導体層付基板1を含む半導体デバイス2の評価方法である。ここで、半導体層付基板1および半導体デバイス2の少なくとも一つを用いて、20K以下の温度で第2のn型III族窒化物半導体層22のPL(フォトルミネッセンス)スペクトルを測定して、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下、かつ、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下を良品の基準とする。
【0088】
本実施形態の半導体デバイス2の評価方法は、第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルを測定することにより、電子移動度との相関が強い上記強度比I
A/I
Fおよび上記強度比I
A/I
Dの値を評価するものであることから、対象となる実際の半導体デバイスの電子移動度を比較的簡便に評価できる。
【0089】
本実施形態の半導体デバイス2の評価方法において、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度を高くして半導体デバイス2の特性を向上させる観点から、上記強度比I
A/I
Fが0.075以下、かつ、上記強度比I
A/I
Dが0.25以下を良品の基準とすることが好ましい。
【0090】
第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルの測定は、半導体デバイス2の半導体層付基板1を用いる。また、半導体デバイス2の第2のn型III族窒化物半導体層22の主面が第1の電極で完全に覆われていなければ、半導体デバイス2を用いることができる。また、第2のn型III族窒化物半導体層22の主面が透明な絶縁膜に覆われていても、半導体デバイス2を用いることができる。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
1.支持基板の準備
図1を参照して、支持基板10として、HVPE法により形成した直径が10cmで厚さが400μmでn型キャリア濃度が2×10
18cm
-3のn
+型GaN基板を準備した。
【0092】
2.第1のn型III族窒化物半導体層の形成
図1を参照して、次に、準備した支持基板10上に、MOCVD法により、第1のn型III族窒化物半導体層21として、厚さが1μmでn型キャリア濃度が2×10
18cm
-3のn
+型GaN層を形成した。ここで、第1のn型III族窒化物半導体層21のn型キャリア濃度は、C−V(容量−電圧)測定法により測定した。かかる第1のn型III族窒化物半導体層21の形成条件としては、
図4を参照して、3層流Fの原料ガスの内、支持基板10の主面に対して、最も近くの領域を流れる第1の層流F1は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量が12.0slm(ここで、1slmは標準状態のガスが1分間に1リットル流れる量をいう。以下同じ。)であり、キャリアガスであるH
2ガスの流量が7.4slmであった。第1の層流F1に比べて遠くの領域を流れる第2の層流F2は、III族元素原料ガスであるTMG(トリメチルガリウム)ガスの流量が36.0sccm(ここで、1sccmは標準状態のガスが1分間に1cm
3流れる量をいう。以下同じ。)であり、不純物原料ガスであるSiH
4(シラン)ガスの流量が34.4sccmであり、キャリアガスであるH
2ガスの流量が29.0slmであった。第2の層流F2比べて遠くの領域を流れる第3の層流F3は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量が1.5slmであり、NH
3ガスの流量が48slmであった。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、600であった。また、第1のn型III族窒化物半導体層21の成長は、成長温度が1130℃であり、成長圧力が101kPaであり、成長速度は3.4μm/hであった。
【0093】
3.第2のn型III族窒化物半導体層の形成による半導体層付基板の形成
図1を参照して、次に、第1のn型III族窒化物半導体層21上に、MOCVD法により、第2のn型III族窒化物半導体層22として、厚さが7μmでn型キャリア濃度が5×10
15cm
-3のn
-型GaN層を形成した。ここで、第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は、C−V測定法により測定した。かかる第2のn型III族窒化物半導体層22の形成条件としては、
図4を参照して、3層流Fの原料ガスの内、支持基板10の主面に対して、最も近くの領域を流れる第1の層流F1は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量が12.0slmであり、キャリアガスであるH
2ガスの流量が7.4slmであった。第1の層流F1に比べて遠くの領域を流れる第2の層流F2は、III族元素原料ガスであるTMG(トリメチルガリウム)ガスの流量が36.0sccm(ここで、1sccmは標準状態のガスが1分間に1cm
3流れる量をいう。以下同じ。)であり、不純物原料ガスであるSiH
4(シラン)ガスの流量が0.086sccmであり、キャリアガスであるH
2ガスの流量が29.0slmであった。第2の層流F2比べて遠くの領域を流れる第3の層流F3は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量が1.5slmであり、NH
3ガスの流量が68slmであった。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、8000であった。また、第2のn型III族窒化物半導体層22の成長は、成長温度が1130℃であり、成長圧力が101kPaであり、成長速度は3.4μm/hであった。その後、支持基板10の裏側の主面(第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22が形成されていない側の主面をいう。以下同じ。)を研磨し、支持基板10の厚さを200μmとした。
【0094】
このようにして、支持基板10上に第1のn型III族窒化物半導体層21および第2のn型III族窒化物半導体層22がこの順に形成された半導体層付基板1が得られた。
【0095】
4.半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルの測定
図1を参照して、次に、得られた半導体層付基板1の第2のn型III族窒化物半導体層22のPLスペクトルを4Kの温度雰囲気下で測定した。得られたPLスペクトルから、自由励起子発光ピーク強度I
F、ドナー束縛励起子発光ピーク強度I
D、アクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
A、強度比I
A/I
Fおよび強度比I
A/I
Dを算出した。強度比I
A/I
Fは0.010であり、強度比I
A/I
Dは0.350であった。
【0096】
5.第1の電極および第2の電極の形成により半導体デバイスの形成
図1を参照して、次に、得られた半導体層付基板1の第2のn型III族窒化物半導体層22の主面上に、電子ビーム蒸着法により、第1の電極30として、厚さが50nmのNi層と厚さが300nmのAu層とがこの順に積層された直径が200μmの円板状のNi/Au電極を形成した。第1の電極30は、TLM(伝送線路モデル)法により評価したところ、第2のn型III族窒化物半導体層22とショットキー接触をしていた。
【0097】
次いで、得られた半導体層付基板1の支持基板10の主面に、電子ビーム蒸着法により、第2の電極40として、厚さが20nmのTi層と厚さが200nmのAl層とがこの順に積層された支持基板の裏側の主面の全面にTi/Al電極を形成した。第2の電極40は、TLM法により評価したところ、支持基板10とオーミック接触をしていた。
【0098】
次いで、第1の電極30および第2の電極40が配置された半導体層付基板1を、主面の大きさが200μm×200μmの正方形状になるようにチップ化した。このようにして、半導体デバイス2としてSBD(ショットキーバリアダイオード)が得られた。
【0099】
6.半導体デバイスの特性測定
図1を参照して、得られた半導体デバイス2について、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は、別途、第2のn型III族窒化物半導体層22の膜厚のみを変更した試料を3つ以上用意し、そのオン抵抗の膜厚依存性から算出したところ、1050cm
2・V
-1・s
-1であった。順方向電圧は、I−V(電流−電圧)測定法により測定したところ、1.43Vであった。オン抵抗は、I−V測定法により測定したところ、電流密度が500A/cm
2のとき、1.06Ω・cm
2であった。逆方向耐電圧は、I−V測定法により測定したところ、650Vであった。結果を表1にまとめた。
【0100】
(実施例2)
1.半導体層付基板の形成
第2のn型III族窒化物半導体層の形成条件について、3層流の原料ガスの内、第1の層流は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量を12.0slmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を7.4slmとし、第2の層流は、III族元素原料ガスであるTMGガスの流量を18.0sccmとし、不純物原料ガスであるSiH
4ガスの流量を0.043sccmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を29.0slmとし、第3の層流は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量を1.5slmとし、NH
3ガスの流量を68slmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、半導体層付基板を形成した。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、16000であった。第2のn型III族窒化物半導体層22の成長速度は1.7μm/hであった。第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は5×10
15cm
-3であった。
【0101】
2.半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルの測定
次に、得られた半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルを、実施例1と同様にして測定した。得られたPLスペクトルから算出された強度比I
A/I
Fは0.0075であり、強度比I
A/I
Dは0.250であった。
【0102】
3.第1の電極および第2の電極の形成による半導体デバイスの形成
次に、実施例1と同様にして、得られた半導体層付基板1に第1の電極および第2の電極を形成することにより、半導体デバイスとしてSBDを得た。
【0103】
4.半導体デバイスの特性測定
得られた半導体デバイスについて、その特性を実施例1と同様にして測定したところ、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は1100cm
2・V
-1・s
-1であり、順方向電圧は1.40Vであり、オン抵抗は、電流密度が500A/cm
2のとき、1.00mΩ・cm
2であり、逆方向耐電圧は650Vであった。結果を表1にまとめた。
【0104】
(比較例1)
1.半導体層付基板の形成
第2のn型III族窒化物半導体層の形成条件について、3層流の原料ガスの内、第1の層流は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量を12.0slmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を7.4slmとし、第2の層流は、III族元素原料ガスであるTMGガスの流量を36.0sccmとし、不純物原料ガスであるSiH
4ガスの流量を0.086sccmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を29.0slmとし、第3の層流は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量を34.5slmとし、NH
3ガスの流量を0slmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、半導体層付基板を形成した。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、1200であった。第2のn型III族窒化物半導体層22の成長速度は3.4μm/hであった。第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は5×10
15cm
-3であった。
【0105】
2.半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルの測定
次に、得られた半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルを、実施例1と同様にして測定した。得られたPLスペクトルから算出された強度比I
A/I
Fは0.025であり、強度比I
A/I
Dは0.833であった。
【0106】
3.第1の電極および第2の電極の形成による半導体デバイスの形成
次に、実施例1と同様にして、得られた半導体層付基板1に第1の電極および第2の電極を形成することにより、半導体デバイスとしてSBDを得た。
【0107】
4.半導体デバイスの特性測定
得られた半導体デバイスについて、その特性を実施例1と同様にして測定したところ、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は930cm
2・V
-1・s
-1であり、順方向電圧は1.50Vであり、オン抵抗は、電流密度が500A/cm
2のとき、1.20mΩ・cm
2であり、逆方向耐電圧は650Vであった。結果を表1にまとめた。
【0108】
(比較例2)
1.半導体層付基板の形成
第2のn型III族窒化物半導体層の形成条件について、3層流の原料ガスの内、第1の層流は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量を12.0slmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を7.4slmとし、第2の層流は、III族元素原料ガスであるTMGガスの流量を18.0sccmとし、不純物原料ガスであるSiH
4ガスの流量を0.043sccmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を29.0slmとし、第3の層流は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量を34.5slmとし、NH
3ガスの流量を0slmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、半導体層付基板を形成した。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、2400であった。第2のn型III族窒化物半導体層22の成長速度は1.7μm/hであった。第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は5×10
15cm
-3であった。
【0109】
2.半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルの測定
次に、得られた半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルを、実施例1と同様にして測定した。得られたPLスペクトルから算出された強度比I
A/I
Fは0.0125であり、強度比I
A/I
Dは0.416であった。
【0110】
3.第1の電極および第2の電極の形成による半導体デバイスの形成
次に、実施例1と同様にして、得られた半導体層付基板1に第1の電極および第2の電極を形成することにより、半導体デバイスとしてSBDを得た。
【0111】
4.半導体デバイスの特性測定
得られた半導体デバイスについて、その特性を実施例1と同様にして測定したところ、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は1000cm
2・V
-1・s
-1であり、順方向電圧は1.46Vであり、オン抵抗は、電流密度が500A/cm
2のとき、1.12mΩ・cm
2であり、逆方向耐電圧は650Vであった。結果を表1にまとめた。
【0112】
(実施例3)
1.半導体層付基板の形成
第2のn型III族窒化物半導体層の形成条件について、3層流の原料ガスの内、第1の層流は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量を12.0slmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を7.4slmとし、第2の層流は、III族元素原料ガスであるTMGガスの流量を36.0sccmとし、不純物原料ガスであるSiH
4ガスの流量を0.34sccmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を29.0slmとし、第3の層流は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量を1.5slmとし、NH
3ガスの流量を68slmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、半導体層付基板を形成した。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、8000であった。第2のn型III族窒化物半導体層22の成長速度は3.4μm/hであった。第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は2×10
16cm
-3であった。
【0113】
2.半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルの測定
次に、得られた半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルを、実施例1と同様にして測定した。得られたPLスペクトルから算出された強度比I
A/I
Fは0.010であり、強度比I
A/I
Dは0.083であった。
【0114】
3.第1の電極および第2の電極の形成による半導体デバイスの形成
次に、実施例1と同様にして、得られた半導体層付基板1に第1の電極および第2の電極を形成することにより、半導体デバイスとしてSBDを得た。
【0115】
4.半導体デバイスの特性測定
得られた半導体デバイスについて、その特性を実施例1と同様にして測定したところ、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は950cm
2・V
-1・s
-1であり、順方向電圧は1.13Vであり、オン抵抗は、電流密度が500A/cm
2のとき、0.46mΩ・cm
2であり、逆方向耐電圧は500Vであった。結果を表1にまとめた。
【0116】
(実施例4)
1.半導体層付基板の形成
第2のn型III族窒化物半導体層の形成条件について、3層流の原料ガスの内、第1の層流は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量を12.0slmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を7.4slmとし、第2の層流は、III族元素原料ガスであるTMGガスの流量を18.0sccmとし、不純物原料ガスであるSiH
4ガスの流量を0.17sccmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を29.0slmとし、第3の層流は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量を1.5slmとし、NH
3ガスの流量を68slmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、半導体層付基板を形成した。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、16000であった。第2のn型III族窒化物半導体層22の成長速度は1.7μm/hであった。第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は2×10
16cm
-3であった。
【0117】
2.半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルの測定
次に、得られた半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルを、実施例1と同様にして測定した。得られたPLスペクトルから算出された強度比I
A/I
Fは0.0075であり、強度比I
A/I
Dは0.063であった。
【0118】
3.第1の電極および第2の電極の形成による半導体デバイスの形成
次に、実施例1と同様にして、得られた半導体層付基板1に第1の電極および第2の電極を形成することにより、半導体デバイスとしてSBDを得た。
【0119】
4.半導体デバイスの特性測定
得られた半導体デバイスについて、その特性を実施例1と同様にして測定したところ、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は1000cm
2・V
-1・s
-1であり、順方向電圧は1.10Vであり、オン抵抗は、電流密度が500A/cm
2のとき、0.40mΩ・cm
2であり、逆方向耐電圧は500Vであった。結果を表1にまとめた。
【0120】
(比較例3)
1.半導体層付基板の形成
第2のn型III族窒化物半導体層の形成条件について、3層流の原料ガスの内、第1の層流は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量を12.0slmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を7.4slmとし、第2の層流は、III族元素原料ガスであるTMGガスの流量を36.0sccmとし、不純物原料ガスであるSiH
4ガスの流量を0.34sccmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を29.0slmとし、第3の層流は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量を34.5slmとし、NH
3ガスの流量を0slmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、半導体層付基板を形成した。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、1200であった。第2のn型III族窒化物半導体層22の成長速度は3.4μm/hであった。第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は2×10
16cm
-3であった。
【0121】
2.半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルの測定
次に、得られた半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルを、実施例1と同様にして測定した。得られたPLスペクトルから算出された強度比I
A/I
Fは0.025であり、強度比I
A/I
Dは0.208であった。
【0122】
3.第1の電極および第2の電極の形成による半導体デバイスの形成
次に、実施例1と同様にして、得られた半導体層付基板1に第1の電極および第2の電極を形成することにより、半導体デバイスとしてSBDを得た。
【0123】
4.半導体デバイスの特性測定
得られた半導体デバイスについて、その特性を実施例1と同様にして測定したところ、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は830cm
2・V
-1・s
-1であり、順方向電圧は1.20Vであり、オン抵抗は、電流密度が500A/cm
2のとき、0.60mΩ・cm
2であり、逆方向耐電圧は500Vであった。結果を表1にまとめた。
【0124】
(比較例4)
1.半導体層付基板の形成
第2のn型III族窒化物半導体層の形成条件について、3層流の原料ガスの内、第1の層流は、窒素原料ガスであるNH
3ガスの流量を12.0slmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を7.4slmとし、第2の層流は、III族元素原料ガスであるTMGガスの流量を18.0sccmとし、不純物原料ガスであるSiH
4ガスの流量を0.17sccmとし、キャリアガスであるH
2ガスの流量を29.0slmとし、第3の層流は、サブフローガスであり、N
2ガスの流量を34.5slmとし、NH
3ガスの流量を0slmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、半導体層付基板を形成した。このとき、原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIは、2400であった。第2のn型III族窒化物半導体層22の成長速度は1.7μm/hであった。第2のn型III族窒化物半導体層22のn型キャリア濃度は2×10
16cm
-3であった。
【0125】
2.半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルの測定
次に、得られた半導体層付基板の第2のn型III族窒化物半導体層のPLスペクトルを、実施例1と同様にして測定した。得られたPLスペクトルから算出された強度比I
A/I
Fは0.0125であり、強度比I
A/I
Dは0.104であった。
【0126】
3.第1の電極および第2の電極の形成による半導体デバイスの形成
次に、実施例1と同様にして、得られた半導体層付基板1に第1の電極および第2の電極を形成することにより、半導体デバイスとしてSBDを得た。
【0127】
4.半導体デバイスの特性測定
得られた半導体デバイスについて、その特性を実施例1と同様にして測定したところ、第2のn型III族窒化物半導体層22の電子移動度は900cm
2・V
-1・s
-1であり、順方向電圧は1.16Vであり、オン抵抗は、電流密度が500A/cm
2のとき、0.52mΩ・cm
2であり、逆方向耐電圧は500Vであった。結果を表1にまとめた。
【0128】
【表1】
【0129】
表1を参照して、実施例1〜実施例4に示すように、支持基板と、支持基板の一主面側に配置された第1のn型III族窒化物半導体層と、第1のn型III族窒化物半導体層上に配置され第1のn型III族窒化物半導体層に比べてn型キャリア濃度が低い第2のn型III族窒化物半導体層と、を含む半導体デバイスにおいて、20K以下の温度で測定された第2のn型III族窒化物半導体層のPLにおいて、自由励起子発光ピーク強度I
Fに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Fが0.01以下かつドナー束縛励起子発光ピーク強度I
Dに対するアクセプタ束縛励起子発光ピーク強度I
Aの強度比I
A/I
Dが0.35以下のとき、第2のn型III族窒化物半導体層の電子移動度が950cm
2・V
-1・s
-1以上と大きくなり、上記強度比I
A/I
Fが0.0075以下かつ上記強度比I
A/I
Dが0.25以下のとき、第2のn型III族窒化物半導体層の電子移動度が1000cm
2・V
-1・s
-1以上とさらに大きくなった。
【0130】
また、実施例1および実施例2と実施例3および実施例4との対比から、第2のn型III族窒化物半導体層のn型キャリア濃度が低いときは、電子移動度、順方向電圧、オン抵抗および逆方向耐電圧が高くなる傾向があり、第2のn型III族窒化物半導体層のn型キャリア濃度が高いときは、電子移動度、順方向電圧、オン抵抗および逆方向耐電圧が低くなる傾向があることがわかった。
【0131】
また、比較例1および比較例2と実施例1および実施例2との対比、ならびに、比較例3および比較例4と実施例3および実施例4との対比から、第2のn型III族窒化物半導体層の形成の際に、第3の層流にNH
3ガスを流すことにより原料ガス中におけるIII族元素原子モル数A
IIIに対する窒素原子モル数A
Nのモル比A
N/A
IIIが著しく高くなり、逆方向耐電圧を維持するとともに、電子移動度、順方向電圧およびオン抵抗を大きく低減できることがわかった。また、第2のn型III族窒化物半導体層の形成の際に、III族窒化物原料ガスの流量を低減することにより、モル比比A
N/A
IIIが高く、成長速度が低くなり、逆方向耐電圧を維持するとともに、電子移動度、順方向電圧およびオン抵抗を低減できることがわかった。
【0132】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。