(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自車が先行車に追従するための目標車間距離を、自車速度検出手段で検出した実際の自車速度とドライバが知覚する自車速度との相違を表すドライバ毎の固有の1以下の値を、実際の車間距離とドライバが知覚する車間距離との相違を表すドライバ毎の固有の1以下の値で割ったべき指数で上記実際の自車速度をべき乗した値に比例する関数として設定すると共に、
上記実際の自車速度と上記実際の車間距離との関係を示すデータを複数回収集し、
上記関数の係数を、上記データを蓄積した運転行動データに基づき定まる上記実際の自車速度と上記実際の車間距離の下限値との関係に基づいて設定することにより、上記目標車間距離を算出する
追従走行制御方法。
【背景技術】
【0002】
従来、自車を先行車に対して自動的に追従走行させることが可能な追従走行制御装置において、ドライバの感覚に合致した追従走行制御を実行するようにしたものが提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、追従走行制御(ACC)実行時のドライバ好み車間距離マップと、通常運転時のドライバ好み車間距離マップとを使用して、ドライバの好みに合った目標車間距離を算出するものが提案されている。
【0004】
下記特許文献1では、追従走行制御実行時、通常運転時のそれぞれにおいてドライバが好む車間距離データを集めて各ドライバ好み車間距離マップを更新(学習)するようにしている。
【0005】
しかしながら、上述のようにドライバ好み車間距離マップを更新(学習)するものにおいては、ドライバの気分や周囲の交通状況、道路規格等の諸要因によって運転行動にばらつきが生じてしまうことから、有意な学習値が得られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明者は、追従走行制御装置を開発するにあたり、先ずは、ドライバ自身の運転行動によって追従走行している時のドライバの知覚特性について様々な解析、検討を行った。
【0007】
具体的には、実際の自車速度と実際の車間距離との関係について測定を行い、その測定結果からドライバの運転特性を見出すことを試みた。
図6は、実際の自車速度V
s_physと実際の車間距離L
physとの関係について測定を行った結果を示す図であり、ドライバ自身の運転行動による追従走行パターン、詳しくは、実際の自車速度と実際の車間距離との関係を示すデータを蓄積した運転行動データを示している。なお、
図6に示す測定結果は、実際に被験者を使って車両の走行実験を行うことにより得られたものである。
【0008】
図6では、車間距離L
physのデータにある程度のばらつきが生じているものの、車間距離L
physの下限値に関しては、これが下方に凸となる非線形の下限特性グラフ(
図6に太線で示すグラフ参照)に沿ってプロットされていることが分かる。このことから、上記下限値は、ドライバが安心して追従走行する上で最低限確保したい距離であって、ドライバは、上述した下限特性グラフを描ける程度まで上記下限値を厳密に調節しようとしていると推測することができる。
【0009】
本発明者は、
図6に示す測定結果から、上記下限特性グラフ、つまりは、運転行動データに基づき定まる実際の自車速度V
s_physと上記下限値との関係に基づいて目標車間距離を設定することで、運転行動(データ)のばらつきの影響を排除して、ドライバの感覚により合致した追従走行制御を実行することができるという知見を得た。
【0010】
ところで、下記特許文献2には、目標車間距離の下限値(目標最小車間距離)に基づいて追従走行制御を実行するものが開示されている。
【0011】
しかしながら、下記特許文献2は、あくまでも、車間距離センサ(レーダ)の検出値のばらつきを考慮したものであり、ドライバの知覚特性を考慮したものではない。また、車間距離センサ(レーダ)の検出値に関して言えば、その下限値にはグラフを描ける程度の規則性がないと考えられ、それ故、検出値(データ)のばらつきの影響を排除して追従走行制御を実行することは極めて困難であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、ドライバの感覚により合致した追従走行制御を実行することができる追従走行制御方法及び追従走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の追従走行制御方法は、自車が先行車に追従するための目標車間距離を、自車速度検出手段で検出した実際の自車速度とドライバが知覚する自車速度との相違を表すドライバ毎の固有の1以下の値を、実際の車間距離とドライバが知覚する車間距離との相違を表すドライバ毎の固有の1以下の値で割ったべき指数で上記実際の自車速度をべき乗した値に比例する関数として設定すると共に、上記実際の自車速度と上記実際の車間距離との関係を示すデータを複数回収集し、
上記関数の係数を、上記データを蓄積した運転行動データに基づき定まる上記実際の自車速度と上記実際の車間距離の下限値との関係に基づいて設定することにより、上記目標車間距離を算出するものである。
【0015】
この構成によれば、ドライバ自身の運転行動によって追従走行している時に上記下限値を厳密に調節しようとしていることを表す下限特性グラフに基づいて目標車間距離が設定されることになる。この場合、ばらつきを含む運転行動データからべき指数を正確に抽出することができ、ドライバが持つ固有の知覚特性を間接的に推定することができる。このため、運転行動データのばらつきの影響を排除して、ドライバの感覚により合致した追従走行制御を実行することができる。
【0016】
この発明の追従走行制御装置は、自車速度を検出する自車速度検出手段を備えると共に、該自車速度検出手段で検出した実際の自車速度とドライバが知覚する自車速度との相違を表すドライバ毎の固有の1以下の値を、実際の車間距離とドライバが知覚する車間距離との相違を表すドライバ毎の固有の1以下の値で割ったべき指数を
算出し、上記実際の自車速度と上記実際の車間距離との関係を示すデータを蓄積した運転行動データに基づき定まる上記実際の自車速度と上記実際の車間距離の下限値との関係に基づいて
係数を設定し、自車が先行車に追従するための目標車間距離を、上記べき指数で上記実際の自車速度をべき乗した値に
前記係数によって比例する関数に基づいて算出する目標車間距離算出部を有する制御手段を備えたものである。
【0017】
この構成によれば、ドライバ自身の運転行動によって追従走行している時に上記下限値を厳密に調節しようとしていることを表す下限特性グラフに基づいて目標車間距離が設定されることになる。この場合、ばらつきを含む運転行動データからべき指数を正確に抽出することができ、ドライバが持つ固有の知覚特性を間接的に推定することができる。このため、運転行動データのばらつきの影響を排除して、ドライバの感覚により合致した追従走行制御を実行することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記目標車間距離算出部は、上記べき指数で上記実際の自車速度をべき乗した値にゲインを乗算することによって上記下限値よりも大きい目標車間距離を算出し、上記下限値に対応する目標車間距離、または上記下限値よりも大きい目標車間距離のいずれかを設定する構成である。
【0019】
この構成によれば、ドライバの気分や周囲の交通状況、道路規格等に応じて目標車間距離を変更することが可能になる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記下限値よりも大きい目標車間距離は、所定の自車速度の高速域において、上記運転行動データに基づき定まる上記実際の車間距離の上限値に基づいて設定されるものである。
【0021】
この構成によれば、低速域の上限値に基づいて目標車間距離を設定する場合に比べ、高速域における追従走行パターンを忠実に反映することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、ドライバの感覚により合致した追従走行制御を実行することができる追従走行制御方法及び追従走行制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る追従走行制御装置1のシステム構成を示すブロック図である。追従走行制御装置1は、先行車との車間距離L
physを検出するレーダ2と、自車速度V
s_physを検出するための車速センサ3と、車間距離レンジ設定部4と、制御部6と、該制御部6からの制御指令信号に基づいて駆動する動力系(駆動系及び制動系を含む)としてのエンジンスロットル7、ブレーキ装置8、及びトランスミッション9とを備えている。
【0025】
レーダ2は、車両前方に向かってミリ波の電波を発射するミリ波レーダであり、車両前方の先行車(障害物)に反射して帰来する電波を受信することで、自車と先行車との車間距離L
physを検出する。そして、検出した車間距離L
physのデータを制御部6に出力する。
【0026】
車間距離レンジ設定部4は、乗員の適宜の操作によって車間距離レンジの設定を受付けるものであり、例えば、スイッチボタンやダイヤル、ディスプレイ装置のタッチパネル、専用のリモコン、または制御部6との通信が可能な携帯通信端末等により構成される。乗員は、例えば、ショート、ミドル、ロングといった段階に応じて予め用意された車間距離レンジの中から希望するものを1つ選択して設定を行う。
【0027】
図2は、目標車間距離特性グラフを示しており、この目標車間距離特性グラフでは、
図2に示すように、自車速度V
s_physと目標車間距離L
tgtとの関係が示されている。また、目標車間距離特性グラフは、車間距離レンジ設定部4により設定される3つの車間距離レンジに対応して、短距離(ショート)特性グラフG
Sh、第1長距離(ミドル)特性グラフG
Mi、第2長距離(ロング)特性グラフG
Loを示している。
【0028】
このうち、短距離特性グラフG
Shは、
図6に示す下限特性グラフに対応するものであり、この短距離特性グラフG
Shでは、上記下限特性グラフにおける車間距離L
physの下限値が目標車間距離L
tgtとして示されている。
【0029】
ところで、本発明者は、ドライバの知覚特性に関する解析、検討に際し、実際の量(物理量)とドライバが知覚する量(知覚量)との関係について各種測定を行った。
図3は、実際の自車速度V
s_physとドライバが知覚する知覚自車速度
s_percとの関係を測定した結果を示す図であり、実際に被験者を使って車両の走行実験を行うことにより得られたものである。
図3では、実際の自車速度V
s_physが15(m/s)のとき、知覚自車速度V
s_percは約14.5(m/s)となり、両者が略合致しているものの、実際の自車速度V
s_physが20(m/s)のときには、知覚自車速度V
s_percは約18(m/s)となり、実際の自車速度V
s_physが増加する程、ドライバの感度が鈍化する傾向が示されている。ここで、実際の自車速度V
s_physをx、知覚自車速度V
s_percをyとしたとき、知覚自車速度yは、
図3に示す測定結果から、実際の自車速度xを1以下の数値でべき乗した下記(1)式で近似することができる。
【0030】
【数1】
上記(1)式において、R
2は決定係数であり、上記(1)式がどの程度測定結果を説明できているかを示す数値である。
【0031】
図4は、実際の車間距離L
physとドライバが知覚する知覚車間距離L
percとの関係を測定した結果を示す図であり、実際に被験者を使って運転シミュレーションを行うことにより得られたものである。
図4では、実際の車間距離L
physが60(m)のとき、知覚車間距離L
percは約60(m)となり、両者が略合致しているものの、実際の車間距離L
physが100(m)のときには、知覚車間距離L
percは約80(m)となり、実際の車間距離L
physが増加する程、ドライバの感度が鈍化する傾向が示されている。ここで、実際の車間距離L
physをx、知覚車間距離L
percをyとしたとき、知覚車間距離yは、
図4に示す測定結果から、実際の車間距離xを1以下の数値でべき乗した下記(2)式で近似することができる。
【0032】
【数2】
一般的に、車間距離や速度に対するドライバの感度は、実際の量(物理量)が増加する程鈍化する傾向があり、結果として、物理量が増加する程、知覚量と物理量との差が広がることが知られている。
図3、
図4では、上述した各測定によって上記傾向が実証されたことが示されている。
【0033】
図5は、実際の車間時間(車間時間=車間距離/自車速度)の時間変化、及びドライバが知覚する知覚車間時間の時間変化を示すグラフであり、実際に被験者を使って車両の走行実験を行うことにより得られたものである。なお、
図5では、ドライバが感じる危険感が車間時間の逆数に比例する、という知見に基づき、縦軸の値を車間時間の逆数で示している。
【0034】
図5では、知覚車間時間(知覚量)のほうが実際の車間時間(物理量)よりも変動が小さくなることが示されており、本発明者は、
図5に示す測定結果から、ドライバが、知覚自車速度V
s_percと知覚車間距離L
percとによって求められる知覚車間時間を一定に維持するように運転する習性があるという知見を得た。
【0035】
ここで、知覚自車速度V
s_perc、知覚車間距離L
percは、それぞれ
図3、
図4に示す測定結果、及び上記(1)、(2)式により、下記(3)、(4)式で表すことができる。
【0036】
【数3】
上記(3)、(4)式において、べき指数n
Vsは、車速センサ3で検出された実際の自車速度V
s_physとドライバが知覚する知覚自車速度V
s_percとの相違を表すドライバ毎の固有の1以下の数値であり、べき指数n
Lは、レーダ2で検出された実際の車間距離L
physとドライバが知覚する知覚車間距離L
percとの相違を表すドライバ毎の固有の1以下の数値である。また、K
Vs、K
Lはゲインである。
【0037】
また、知覚車間時間をTHW
percとした場合、これは、上記(3)、(4)式により、下記(5)式で表すことができ、上述したように、ドライバが知覚車間時間THW
percを一定に維持するように運転する場合には、目標車間時間THW
percに対応する目標車間距離L
tgtは、下記(5)式を変形することによって、下記(6)式で表すことができる。
【0038】
【数4】
また、ドライバは、距離の変化よりも速度の変化をより敏感に認識するという習性がある。このため、知覚自車速度V
s_percの鈍化の度合いは、知覚車間距離L
percの鈍化の度合いよりも小さく、上記(6)式のべき指数n
Vsはべき指数n
Lよりも大きな値になる。従って、上記(6)式におけるべき指数n
Vs/n
Lは1を超えた値になり、上記(6)式は、下方に凸となる非線形のグラフを描くことになる。このことから、
図6に示す下限特性グラフ及び
図2に示す
下限特性に対応して定めた短距離特性グラフG
Shは、知覚車間時間THW
perc、べき指数n
Vs、n
L、及びゲインK
Vs、K
Lを適切に設定することによって、上記(6)式に示す関数で表すことができる。
【0039】
第1長距離特性グラフG
Mi、第2長距離特性グラフG
Loは、
図2に示すように、短距離特性グラフG
Shの目標車間距離L
tgt(下限値)よりも大きい目標車間距離L
tgtとなるグラフである。これら第1長距離特性グラフG
Mi、第2長距離特性グラフG
Loは、上記(6)式の右辺にそれぞれ1を超えるゲインK
Mi、K
Lo(K
Mi<K
Lo)を乗算することによって定義されるものであり、同じ自車速度V
s_physであっても、上述したゲインK
Mi、K
Loによって短距離特性グラフG
Shの目標車間距離L
tgt(下限値)よりも大きい目標車間距離L
tgtを設定することができる。
【0040】
また、第1長距離特性グラフG
Mi、第2長距離特性グラフG
Loに基づく目標車間距離L
tgtは、
図2に示すように、破線の枠で囲んだ所定の高速域(例えば、市街地走行で一般的に規定される40(km/h)以上の車速域)において、上記運転行動データに基づき定まる車間距離L
physの上限値に基づいて設定されている。
【0041】
これについて詳述すると、第1長距離特性グラフG
Miは、上記高速域において、車間距離L
physの上限値と下限値との間に位置しており、第2長距離特性グラフG
Loは、上記高速域において、車間距離L
physの上限値に略沿うように描かれている。
【0042】
これは、仮に、第1長距離特性グラフG
Mi、第2長距離特性グラフG
Loを低速域の上限値に基づいて描いた場合、
図2に二点鎖線で示すように、自車速度V
s_physの高速域において上記運転行動データとの間に大きな誤差が生じてしまうからであり、上述したように第1長距離特性グラフG
Mi、第2長距離特性グラフG
Loに基づく目標車間距離L
tgtを高速域の上限値に基づいて設定することで、高速域における追従走行パターンを忠実に反映することができる。
【0043】
制御部6は、目標車間距離算出部61と、減算器62と、目標加速度算出部63と、PCM(Power−train Control Module)64と、スロットル制御部65と、ブレーキ液圧制御部66と、シフトギア制御部67とを有する。この制御部6は、レーダ2で検出された車間距離L
physと、車速センサ3で検出された自車速度V
s_physとの関係を示すデータを複数回収集すると共に、該データを蓄積して運転行動データを生成する。そして、該運転行動データからべき指数n
Vs/n
Lを抽出して、ドライバが持つ固有の知覚特性を間接的に推定することで、自車の目標加速度を算出し、この目標加速度に基づく制御指令信号をスロットル制御部65、ブレーキ液圧制御部66、及びシフトギア制御部67に出力して、エンジンスロットル7、ブレーキ装置8、及びトランスミッション9を制御するものである。
【0044】
制御部6のうち、目標車間距離算出部61は、レーダ2、車速センサ3、車間距離レンジ設定部4から、それぞれ車間距離L
phys、自車速度V
s_phys、車間距離レンジのデータを入力可能としており、入力された各種データに基づいて、目標車間距離L
tgtを算出する。
【0045】
これについて詳述すると、目標車間距離算出部61は、レーダ2、車速センサ3から車間距離L
phys、自車速度V
s_physが入力されると、両者の関係を示すデータを複数回収集すると共に、該データを蓄積して運転行動データを生成する。そして、該運転行動データから下限特性グラフに対応するべき指数n
Vs/n
Lを算出する。そして、入力された自車速度V
s_physに対応する目標車間距離L
tgtを抽出して、そのデータを減算器62に出力するようになっている。
【0046】
つまり、目標車間距離算出部61は、自車速度V
s_physと知覚自車速度V
s_percとの相違を表すドライバ毎の固有の1以下のべき指数n
Vsを、実際の車間距離L
physとドライバが知覚する車間距離L
percとの相違を表すドライバ毎の固有の1以下のべき指数n
Lで割ったべき指数n
Vs/n
Lを、実際の自車速度V
s_physと実際の車間距離L
physとの関係を示すデータを蓄積した運転行動データに基づき定まる実際の自車速度V
s_physと実際の車間距離L
physの下限値との関係(上記下限特性グラフ)に基づいて設定し、目標車間距離L
tgtを、べき指数n
Vs/n
Lで自車速度V
s_physをべき乗した値に比例する関数(上記(6)式)に基づいて算出する。
【0047】
このとき、目標車間距離算出部61は、車間距離レンジ設定部4での選択結果に基づいて、短距離特性グラフG
Shに基づく目標車間距離L
tgtを算出するか、または、第1長距離特性グラフG
Mi、第2長距離特性グラフG
Loに基づく目標車間距離L
tgtを算出する。
【0048】
減算器62は、レーダ2、目標車間距離算出部61から、それぞれ車間距離L
physのデータ、目標車間距離L
tgtの算出結果を入力可能としており、両者を減算することによって目標車間距離L
tgtと車間距離L
physとの偏差を算出する。
【0049】
目標加速度算出部63は、減算器62から上記偏差の算出結果を入力可能としており、この偏差に対応する目標加速度を算出する。
【0050】
PCM64は、目標加速度算出部63から目標加速度の算出結果を入力可能としており、この目標加速度に基づいて、スロットル開度指令値θ
c、ブレーキ液圧指令値P
c、シフトポジション指令値X
cに関連する制御指令信号を生成する。そして、スロットル制御部65、ブレーキ液圧制御部66、及びシフトギア制御部67は、それぞれ上述したスロットル開度指令値θ
c、ブレーキ液圧指令値P
c、シフトポジション指令値X
cに基づき、車両の動力系を構成するエンジンスロットル7、ブレーキ装置8、及びトランスミッション9を制御する。
【0051】
以上に示したように、本実施形態の追従走行制御装置1は、自車速度V
s_physを検出する車速センサ3を備えると共に、該車速センサ3で検出した実際の自車速度V
s_physとドライバが知覚する自車速度V
s_percとの相違を表すドライバ毎の固有の1以下のべき指数n
Vsを、実際の車間距離L
physとドライバが知覚する車間距離L
percとの相違を表すドライバ毎の固有の1以下のべき指数n
Lで割ったべき指数n
Vs/n
Lを、実際の自車速度V
s_physと実際の車間距離L
physとの関係を示すデータを蓄積した運転行動データに基づき定まる実際の自車速度V
s_physと実際の車間距離L
physの下限値との関係(上記下限特性グラフ)に基づいて設定し、自車が先行車に追従するための目標車間距離L
tgtを、べき指数n
Vs/n
Lで実際の自車速度V
s_physをべき乗した値に比例する関数(上記(6)式)に基づいて算出する目標車間距離算出部61を有する制御部6を備えている。
【0052】
上述した追従走行制御装置1によれば、ドライバ自身の運転行動によって追従走行している時に上記下限値を厳密に調節しようとしていることを表す上記下限特性グラフに基づいて目標車間距離L
tgtが設定されることになる。この場合、ばらつきを含む運転行動データからべき指数n
Vs/n
Lを正確に抽出することができ、ドライバが持つ固有の知覚特性を間接的に推定することができる。このため、運転行動データのばらつきの影響を排除して、ドライバの感覚により合致した追従走行制御を実行することができる。
【0053】
また、本実施形態の追従走行制御装置1では、目標車間距離算出部61は、べき指数n
Vs/n
Lで実際の自車速度V
s_physをべき乗した値にゲインK
Mi、K
Loを乗算することによって上記下限値よりも大きい目標車間距離L
tgtを算出し、上記下限値に対応する目標車間距離L
tgtまたは上記下限値よりも大きい目標車間距離L
tgtのいずれかを設定する。
【0054】
上述した追従走行制御装置1によれば、ドライバの気分や周囲の交通状況、道路規格等に応じて目標車間距離L
tgtを変更することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態の追従走行制御装置1では、上記下限値よりも大きい目標車間距離L
tgtは、所定の自車速度V
s_physの高速域において、上記運転行動データに基づき定まる実際の車間距離L
physの上限値に基づいて設定される。
【0056】
上述した追従走行制御装置1によれば、低速域の上限値に基づいて目標車間距離L
tgtを設定する場合に比べ、高速域における追従走行パターンを忠実に反映することができる。
【0057】
また、本実施形態の追従走行制御方法では、自車が先行車に追従するための目標車間距離L
tgtを、車速センサ3で検出した実際の自車速度V
s_physとドライバが知覚する自車速度V
s_percとの相違を表すドライバ毎の固有の1以下のべき指数n
Vsを、実際の車間距離L
physとドライバが知覚する車間距離L
percとの相違を表すドライバ毎の固有の1以下のべき指数n
Lで割ったべき指数n
Vs/n
Lで実際の自車速度V
s_physをべき乗した値に比例する関数(上記(6)式)として設定すると共に、実際の自車速度V
s_physと実際の車間距離L
physとの関係を示すデータを複数回収集し、べき指数n
Vs/n
Lを、上記データを蓄積した運転行動データに基づき定まる実際の自車速度V
s_physと実際の車間距離L
physの下限値との関係に基づいて設定することにより、目標車間距離L
tgtを算出する。
【0058】
上述した追従走行制御方法によれば、ドライバ自身の運転行動によって追従走行している時に上記下限値を厳密に調節しようとしていることを表す上記下限特性グラフに基づいて目標車間距離L
tgtが設定されることになる。この場合、ばらつきを含む運転行動データからべき指数n
Vs/n
Lを正確に抽出することができ、ドライバが持つ固有の知覚特性を間接的に推定することができる。このため、運転行動データのばらつきの影響を排除して、ドライバの感覚により合致した追従走行制御を実行することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、車間距離レンジ設定部4を乗員が操作することにより、予め用意された車間距離レンジの中から希望するものを1つ選択できるようにしているが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、地図情報、現在地情報、簡易的な経路誘導情報等の付加的な運転支援情報を提供するナビゲーション装置からの情報や、車外から送信される気象情報等に基づいて、適切な車間距離レンジを自動的に設定、または既に設定した車間距離レンジを微調整するようにしてもよい。
【0060】
また、自車が電気自動車である場合にも本発明を適用することができる。この場合、エンジン(エンジンスロットル7)、スロットル制御部65に代えて、モータ、インバータが備えられ、PCMは上記インバータに対して周波数指令値、電流・電圧指令値等に関連する制御指令信号を生成、出力する構成となる。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の自車速度検出手段は、車速センサ3に対応し、
以下同様に、
制御手段は、制御部6に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。