(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、基板の一面上に、感光性レジスト膜を形成し、この感光性レジスト膜上に遮光マスクを配置し、露光、現像することにより、感光性レジスト膜をパターニングするものとして、たとえば特許文献1に記載の方法が提案されている。
【0003】
ここで、感光性レジスト膜は、紫外光に感光されることにより改質されてエッチング可能となるものであり、感光性レジスト膜のうち遮光マスクの開口部を介して紫外光が照射された部位は、改質され、紫外光が照射されない部位は、改質されない。この紫外光による改質には、酸素が必要である。紫外光により発生する活性酸素やオゾンが、当該改質に寄与するのである。
【0004】
そして、感光性レジスト膜のうち改質された部位と改質されていない部位との物性の相違を利用して、現像が行われ、どちらか一方の部位が除去されることにより、感光性レジスト膜のパターニングがなされる。
【0005】
ここにおいて、上記特許文献1では、現像によるパターニング精度の向上を図るべく、露光時すなわち紫外光の照射時に、感光性レジスト膜と遮光マスクとの間の雰囲気を酸素濃度22体積%以上の高酸素濃度雰囲気に制御するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1の方法では、上述のように、感光性レジスト膜のうちの露光部分つまり紫外光により感光されて改質された部位と、非露光部分つまり非感光の部位との物性の相違により、どちらか一方を現像して除去するようにしている。
【0008】
これに対して、本発明者は、感光性材料よりなる膜を下地膜とし、この下地膜の表面上に選択的に機能膜を形成すること、つまりパターニングされた機能膜を形成することについて、試作を行い、検討を行った。この本発明者の試作方法としての製造方法について、述べる。
【0009】
この場合、具体的には、まず、基板の一面上に下地膜を形成する。この下地膜としては、元来撥液性の感光性材料であって紫外光に感光することにより当該感光前に比べて親液性となる感光性材料よりなるものとする。
【0010】
そして、遮光マスクを用いて、下地膜の表面を紫外光によって選択的に露光することで、下地膜の表面を、濡れ性の相違する第1の部位と第2の部位とに区画する。このとき、量産性等を考慮して、遮光マスクを、下地膜の表面上に離間して配置した状態とし、この状態で紫外光の照射を行うようにする。
【0011】
ここで、この露光時すなわち紫外光の照射工程では、上述したように、紫外光による改質のために、遮光マスクと下地膜との間の雰囲気を、酸素を含有する雰囲気として露光を行う。このとき、雰囲気の酸素濃度は、従来技術すなわち上記特許文献1と同様、22体積%以上に調整されたものとした。
【0012】
そして、露光後における下地膜の表面は、紫外光に感光されて親液性に改質された第1の部位と、紫外光による感光がなされずに第1の部位に比べて撥液性を有する第2の部位と、に区画されたものとなる。
【0013】
そして、機能膜は、機能膜の原料となる液状の機能液、つまり機能性材料を溶媒に混合させた溶液を、下地膜の表面に塗布、乾燥することで形成する。このとき機能液の塗布工程では、下地膜の表面における第1の部位と第2の部位との濡れ性の相違により、機能液は、親液性である第1の部位上に選択的に集約される。
【0014】
その後、機能液を乾燥させれば、機能膜は、下地膜の表面のうちの第2の部位には設けられず、実質的に第1の部位のみに選択的に設けられたパターンとして形成される。つまり、下地膜は、選択的な露光による改質により第1の部位と第2の部位とにパターニングされ、この第1の部位に対応したパターンにて機能膜が形成される。
【0015】
ここで、機能膜のパターニング精度は、下地膜のうち感光された部分である第1の部位のパターニング精度に依存する。上述のように、この下地膜における第1の部位は、紫外光の感光によって下地膜の表面の濡れ性が撥液性から親液性へ改質された部位である。つまり、機能膜のパターニング精度は、下地膜の第1の部位のパターニング精度を継承したものであるから、下地膜をパターニングする照射工程により実質決まる。
【0016】
このとき、本発明者の検討によれば、上記従来の照射工程では、雰囲気の酸素が22%以上と多いので、酸素の拡散が大きくなり、それによって、下地膜の濡れ性改質による第1の部位のパターニング精度が悪化する可能性がある。このことは、ひいては機能膜のパターニング精度にそのまま影響する。
【0017】
このことについて、さらに述べる。上述のように、感光性材料よりなる下地膜の濡れ性の改質は、紫外光による露光と酸素とにより行われる。このとき、本発明者が目的とする下地膜の濡れ性を改質させることについては、たとえば200nm以下の短波長を有する紫外光、いわゆる真空紫外光を用いることが有効である。
【0018】
しかし、このような短波長の紫外光は、拡散しやすく、平行光とすることが困難であり、通常、拡散光となる。一般には平行光の方が、露光によるパターニング精度が良いのであるが、拡散光の場合には、狙いのパターンの境界部よりも外側まで紫外光が拡散して照射される。
【0019】
このとき、遮光マスクと下地膜との間の酸素濃度が上記したような22体積%以上と高濃度であるため、狙いのパターンの境界部の外側の光量の弱い部位においても、そこに存在する高濃度の酸素により感光がなされ、下地膜の改質が生じてしまう。
【0020】
そうすると、下地膜の濡れ性改質による第1の部位のパターンに関して、狙いのパターンよりも大幅に幅広とされたパターンとなりやすく、当該第1の部位のパターニング精度の悪化、ひいては機能膜のパターニング精度の悪化が生じてしまうのである。
【0021】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、紫外光に感光することにより当該感光前に比べて親液性となる感光性材料よりなる下地膜を、酸素を含む雰囲気で選択的に露光し、当該露光された下地膜の表面上に機能膜を選択的に形成するにあたって、機能膜について正確なパターニング精度を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明者は、拡散光を用いた場合に、狙いのパターンの境界部の外側の光量が弱い部位で感光しないように、照射工程における雰囲気の酸素を極力低濃度とすることに着目した。
【0023】
そして、どの程度まで低濃度とすればよいかについて、実験検討を行った。なお、酸素濃度が0の雰囲気、たとえば不活性ガス雰囲気では、上述のように、紫外光による感光が行われないから、酸素の存在は必須である。
【0024】
そして、この検討の結果、下地膜と遮光マスクとの間の雰囲気を、酸素濃度が0.01〜1体積%である雰囲気とすればよいことを見出した。本発明は、このような本発明者の行った検討に基づいて、実験的に見出されたものである。
【0025】
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板(10)と、基板の一面(11)上に形成され、紫外光に感光することにより当該感光前に比べて親液性となる感光性材料よりなる下地膜(20)と、下地膜の表面(21)上に形成された機能膜(30)と、を備え、下地膜の表面は、紫外光に感光されて親液性を有する第1の部位(211)と、紫外光による感光がなされずに第1の部位に比べて撥液性を有する第2の部位(212)とに区画されており、第1の部位と第2の部位との濡れ性の相違により、機能膜は、第1の部位に選択的に形成されている機能膜を有する構造体の製造方法であって、さらに、以下のような各工程を有している。
【0026】
すなわち、感光性材料を用いて、基板の一面上に下地膜を形成する下地膜形成工程と、第1の部位の平面形状に対応した開口形状をなす開口部(101)を有する遮光マスク(100)を、下地膜の表面上に離間して配置した状態で、下地膜と遮光マスクとの間を、酸素を含有する雰囲気に制御する雰囲気制御工程と、下地膜と遮光マスクとの間のギャップ(G)を所望の間隔に調整する間隔調整工程と、上記
の下地膜形成工程、雰囲気制御工程および間隔調整工程を経た後、下地膜に対して遮光マスクの開口部を介して紫外光を照射することにより、下地膜の表面のうち紫外光が照射された部位を第1の部位とし、紫外光が照射されない部位を第2の部位とする照射工程と、次に、遮光マスクを除去した後、機能膜の原料となる液状の機能液(30a)を下地膜の表面上に塗布し、第1の部位と第2の部位との濡れ性の相違を利用して、機能液を、親液性である第1の部位上に選択的に集約させる塗布工程と、しかる後、機能液を乾燥させる乾燥工程と、を備えている。そして、雰囲気制御工程では、下地膜と遮光マスクとの間の雰囲気を、酸素濃度が0.01体積%以上1体積%以下である雰囲気とする。請求項1の製造方法は、これらの点を備えたことを特徴とするものである。
【0027】
それによれば、雰囲気制御工程において下地膜と遮光マスクとの間の雰囲気を、酸素濃度が0.01体積%以上1体積%以下である雰囲気とすれば、機能膜について正確なパターニング精度を確保することができる(後述の
図8参照)。
【0028】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0031】
本発明の実施形態にかかる機能膜を有する構造体S1について、
図1を参照して述べる。本実施形態の構造体S1は、大きくは、基板10と、基板10の一面11上に形成された下地膜20と、下地膜20の表面21上にパターニングされて形成された機能膜30と、を備えて構成されている。
【0032】
基板10は、樹脂やガラスあるいは、その他のセラミック等よりなる基板である。限定するものではないが、
図1では、基板10は樹脂基板として示されている。このような基板10上に下地膜20を形成し、その上に機能膜30を形成してなる構造体としては、たとえば有機トランジスタ等が挙げられる。
【0033】
下地膜20は、紫外光(UV)に感光することによって当該感光前に比べて親液性となる感光性材料よりなる。下地膜20を形成する感光性材料としては、シラン系、チオール系、ホスホン酸系等の自己組織化単分子膜(Self−Assembled Monolayers:略称SAM)が挙げられる。
【0034】
さらに言えば、下地膜20の材料は、これらのSAM材料より選択されたものであって、元来、撥液性を有し、紫外光に感光することにより親液性となるものである。また、これらSAM材料の選択においては、基板10上での自己組織化のしやすさの観点から、基板10との結合性等を考慮して選択を行うようにする。つまり、基板10の材質等も考慮して下地膜20の材料は適宜選択される。
【0035】
下地膜20の感光性材料の一例としては、限定するものではないが、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシランが挙げられる。このような下地膜20は、感光性材料を用いて、CVD等の化学的気相成長法や、塗布および乾燥等の成膜手法により形成される。
【0036】
機能膜30は、電気的または機械的に何らかの機能を有する膜であり、たとえば電極等が挙げられる。具体的に一例を挙げると、本実施形態の機能膜30は、Ag(銀)たAu(金)等の膜である。このようなAgやAuの膜は、たとえば、機能膜30の原料であるAgやAuのナノ粒子を有機溶媒に混合させてなるナノインクとしての機能液30a(後述の
図3(c)参照)を、印刷等により塗布し、これを乾燥させることにより形成されたものである。
【0037】
ここで、
図1に示されるように、下地膜20の表面21は、紫外光に感光されて親液性を有する第1の部位211と、紫外光による感光がなされずに第1の部位211に比べて撥液性を有する第2の部位212とに区画されている。
図1では、第1の部位211に相当する下地膜20の部分と第2の部位212に相当する下地膜20の部分とで、ハッチングを相違させている。
【0038】
そして、機能膜30は、第1の部位211と第2の部位212との濡れ性の相違、つまり、親液性と撥液性との相違により、第1の部位211に選択的に形成されている。つまり、機能膜30は、第1の部位211の平面形状を継承した形状にてパターニング形状されたものとされている。
【0039】
ここで、機能膜30は、上述したように、機能膜30の原料を含む溶液である機能液30aを塗布、乾燥させることにより形成されるものである。そのため、機能液30aは、下地膜20の表面に適量塗布することにより、撥液性の第2の部位212では機能液30aがはじかれて親液性の第1の部位211に集約される。
【0040】
これにより、機能膜30は、第1の部位211上に選択的に形成されるのである。さらに言えば、下地膜20における第1の部位211のパターニング精度が、そのまま機能膜30のパターニング精度に相当すると言える。
【0041】
次に、本実施形態にかかる機能膜30を有する構造体S1の製造方法について、
図2〜
図4を参照して述べる。なお、
図3、
図4において、機能液30aの表面および機能膜30の表面には、識別のために便宜上、点ハッチングを施してある。
【0042】
まず、
図2(a)に示されるように、基板10を用意し、
図2(b)に示される下地膜形成工程において、上記の感光性材料を用いて、基板10の一面11上に下地膜20を形成する。この下地膜20の形成は、上述のようにCVD等の化学的気相成長法や、塗布および乾燥等の成膜手法により形成する。
【0043】
次に、
図2(c)に示される雰囲気制御工程では、第1の部位211の平面形状に対応した開口形状をなす開口部101を有する遮光マスク100を、下地膜20の表面21上に離間して配置する。
【0044】
そして、雰囲気制御工程では、このように遮光マスク100を配置した状態で、下地膜20と遮光マスク100との間を、酸素を含有する雰囲気に制御する。ここでは、下地膜20と遮光マスク100との間の雰囲気を、酸素濃度が0.01体積%以上1体積%以下である雰囲気とする。この酸素濃度の範囲に対する具体的な根拠は、後述する。
【0045】
具体的な酸素量の調整方法の一例としては、下地膜20が形成された基板10および遮光マスク100を、チャンバー等の密閉容器に設置する。そして、酸素とそれ以外の気体とがレギュレータを用いて濃度調整された混合ガスを、上記密閉容器に送り込む。これにより、当該雰囲気の制御が行える。ここで、当該混合ガスにおける酸素以外の気体としては、たとえば、窒素やヘリウム、アルゴン等の不活性ガスなどが挙げられる。
【0046】
次に、
図3(a)に示される間隔調整工程では、下地膜20と遮光マスク100との間のギャップGを所望の間隔(たとえば数μm〜数十μm程度)に調整する。具体的な調整方法の一例としては、たとえば基板10の周辺部にて基板10と遮光マスク100との間に、所望の間隔に対応する高さの図示しないスペーサを介在させる等により、ギャップGの調整を行えばよい。
【0047】
そして、上記各工程の後、
図3(b)に示される照射工程において、光源110から、下地膜20の表面21に対して遮光マスク100の開口部101を介して紫外光UVを照射する。これにより、下地膜20の表面21のうち紫外光UVが照射された部位が、第1の部位211とされ、マスク100に遮光されて紫外光UVが照射されない部位は、第2の部位212とされる。
【0048】
ここで、具体的な光源110としては、低圧水銀ランプやエキシマランプなどが挙げられる。光源110から照射される紫外光UVとしては、たとえば200nm以下の短波長の紫外光、いわゆる真空紫外光を用いる。このような真空紫外光の場合、上述のように、拡散光として照射が行われる。
【0049】
次に、遮光マスク100を除去した後、
図3(c)に示される塗布工程において、機能膜30の原料となる液状の機能液30aを下地膜20の表面21上に塗布する。これにより、第1の部位211と第2の部位212との濡れ性の相違を利用して、機能液30aを、親液性である第1の部位211上に選択的に集約させる。
【0050】
これにより、機能液30aは、実質的に機能膜30のパターンに配置されたものとなる。ここでは、塗布工程において、スキージ120を用いた印刷に準じた手法により、機能液30aの塗布を行っているが、その他、スピンコートやディスペンス等により塗布を行うようにしてもよい。
【0051】
しかる後、図示しないが、基板10上の機能液30aを乾燥させる乾燥工程を行う。具体的な乾燥方法としては、たとえば、オーブン等で機能液30a中の溶媒を蒸発させて除去するようにすればよい。こうして、
図4に示されるように、パターニングされた機能膜30が形成される。
【0052】
ところで、上記した本実施形態の製造方法では、雰囲気制御工程において下地膜20と遮光マスク100との間の雰囲気を、酸素濃度が0.01体積%以上1体積%以下である雰囲気としている。これは、機能膜30について正確なパターニング精度を確保するためであるが、このような雰囲気とすることの根拠について具体的に述べる。
【0053】
上記の根拠は、本発明者の行った実験検討に基づくものであり、限定するものではないが、その実験検討の結果の一例について、
図5〜
図8を参照して述べる。
【0054】
この例では、下地膜20は、SAMとしての1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシランよりなるものとしている。また、機能膜30としては、上記ナノインクを機能液30aとして形成されたAg膜よりなるものとしている。
【0055】
この検討においては、下地膜20と遮光マスク100との間のギャップG(
図3参照)が大きくなるにつれて、拡散光である紫外光UVが狙いのパターンの境界部の外側まで大きく拡がっていきやすいことに着目した。
【0056】
この着目点について、具体的に述べると、上記
図3に示されるように、下地膜20上への紫外光UVの選択的照射は、遮光マスク100の開口部101を介して行われる。このとき、平行光の場合には、開口部101を通り抜けた光が、開口部101の平面サイズのまま下地膜20に照射される。
【0057】
しかし、拡散光の場合には、開口部101を通り抜けた光は、下地膜20に当たるまで拡散し、下地膜20に当たる時点では、開口部101よりも平面サイズが大きいものとなる。そのため、この場合、狙いのパターン上よりも光量は弱くなるものの、狙いのパターンの境界部の外側においても拡散光が当たることになる。さらに、ギャップGが大きくなれば、その分、拡散度合も大きくなり、パターンの外側への拡散光の拡がり度合も大きくなる。
【0058】
ここで、雰囲気制御工程において、下地膜20−遮光マスク100間の雰囲気中の酸素濃度が大きい場合には、狙いのパターンの外側部分つまり紫外光UVの光量が弱い部分でも、感光による下地膜20の改質が生じる。
【0059】
そして、このパターン外側における改質が生じた場合、ギャップGを増加させていくにつれて、下地膜20の第1の部位211の線幅も大きくなり、その結果、パターニングされた機能膜30の線幅も、狙いの線幅よりも増加していく傾向が見られることになる。これが、本発明者の着目点である。
【0060】
このような着目点に鑑みて、本発明者は、上記雰囲気の酸素濃度が、パターン形成可能な酸素量を確保しつつ、狙いのパターンの境界部の外側の光量の弱い部分にて感光しないレベルの低濃度とされていればよいと、考えた。そうすれば、拡散光である紫外光UVが当該パターンの外側まで大きく拡がったとしても、上記ギャップGの増加に対する機能膜30の線幅の増加度合も低く抑えられる。
【0061】
つまり、上記ギャップGに対する上記パターニングされた機能膜30の線幅の比、つまり線幅/ギャップGの比が小さいほど、上記ギャップGが増加しても、機能膜30の線幅の増加度合が低く抑えられることになる。その点で言えば、線幅/ギャップの比は0に近いほど望ましい。
【0062】
そこで、本発明者は、各酸素濃度について、上記ギャップGに対する上記パターニングされた機能膜30の線幅の変化を調査した。ここでは、酸素濃度が0.01体積%、1体積%、3体積%の場合の結果について、それぞれ
図5、
図6、
図7に示している。また、上記ギャップGについては、この種の露光操作において通常のギャップである5μm〜30μmの範囲で増加させたものとして、調査を行った。
【0063】
ここで、
図5〜
図7における各グラフの傾きが、上記線幅/ギャップGの比に相当する。つまり、
図5に示される酸素濃度が0.01体積%の場合、および、
図6に示される酸素濃度が1体積%の場合では、
図7に示される酸素濃度が3体積%の場合に比べて、上記ギャップGに対する上記パターニングされた機能膜30の線幅の増加度合が大幅に小さいものとされている。
【0064】
図8は、
図5〜
図7と同様の調査を、酸素濃度が5体積%、21体積%の場合についても行い、各酸素濃度に対して上記線幅/ギャップGの比を示したものである。
図8に示されるように、酸素濃度が0.01体積%以上1体積%以下の場合、1体積%を超える場合に比べて、当該比の低減が顕著である。
【0065】
それゆえ、雰囲気制御工程における上記雰囲気は、酸素濃度が0.01体積%以上1体積%以下とするのである。そして、この濃度範囲であれば、照射工程において、下地膜20上の感光させたい部分(つまり狙いのパターン上)では感光を十分に発生させ、且つ、感光させたくないが紫外光UVが拡散する部分(つまり狙いのパターンの外側)では、感光を極力抑制することが、できるのである。
【0066】
なお、上記
図5〜
図8に示される傾向については、基板10上に適切に自己組織化作用によって成膜可能であり、且つ元来撥液性であって紫外光と酸素によって感光することで親液性に改質されるような下地膜20であれば、同様の傾向が確認されている。具体的には、そのような性質を有するシラン系、チオール系、ホスホン酸系等のSAMよりなるものについて、同様の傾向がみられることを確認している。
【0067】
以上述べてきたように、本実施形態では、雰囲気制御工程において下地膜20と遮光マスク100との間の雰囲気を、酸素濃度が0.01体積%以上1体積%以下である雰囲気とすれば、機能膜30について正確なパターニング精度を確保することができる。
【0068】
(他の実施形態)
なお、下地膜20の感光性材料としては、元来撥液性であって紫外光UVに感光することにより親液性となるものであるとともに、基板10上に適切に成膜可能なものであるならば、上記実施形態に示したSAM等の材料以外のものであってもよい。
【0069】
また、機能膜30の材料としては、原料である機能液30aを下地膜20に塗布、乾燥することで成膜されるものであるならば、上記実施形態に示した材料以外のものであってもよい。
【0070】
また、紫外光UVとしては、下地膜20の感光性材料を感光させて感光前よりも親液性に改質できるものであればよく、上記した真空紫外光以外の紫外光であってもよい。また、紫外光UVとしては平行光であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、パターニングされた部位の幅すなわちパターン幅を、線幅と記述したが、機能膜30および第1の部位211の線幅と言ったときに、これらは線状のパターンに限定されることを意味するものではない。つまり、機能膜30および第1の部位211は何らかの形状にパターニングされたものであればよく、線状以外のパターン形状であってもよいことはもちろんである。
【0072】
また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能であり、また、上記各実施形態は、上記の図示例に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。