特許第6237453号(P6237453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許6237453-物理量検出装置 図000002
  • 特許6237453-物理量検出装置 図000003
  • 特許6237453-物理量検出装置 図000004
  • 特許6237453-物理量検出装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237453
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】物理量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/12 20060101AFI20171120BHJP
   G01L 9/04 20060101ALI20171120BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01L19/12 H
   G01L9/04
   G01L9/00 303U
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-97480(P2014-97480)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-180854(P2015-180854A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2017年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-42469(P2014-42469)
(32)【優先日】2014年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 和幸
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−220402(JP,A)
【文献】 特開昭57−160037(JP,A)
【文献】 特開平9−101211(JP,A)
【文献】 特開2012−127721(JP,A)
【文献】 特表2001−500625(JP,A)
【文献】 実開平5−14871(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/00 − 9/04
G01L 19/12
G01L 23/22
G01L 1/22
G01R 31/02
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量の印加に応じて抵抗値が変化すると共に前記抵抗値が温度に応じて変化する第1歪みゲージ(21)、第2歪みゲージ(22)、第3歪みゲージ(23)、及び第4歪みゲージ(24)によってブリッジ回路が構成されており、当該ブリッジ回路に印加される入力電圧に基づいて前記第1歪みゲージ(21)と前記第2歪みゲージ(22)との第1中点(25)の第1電圧を第1検出信号として出力すると共に、前記第3歪みゲージ(23)と前記第4歪みゲージ(24)との第2中点(26)の第2電圧を第2検出信号として出力するブリッジ回路部(20)と、
前記ブリッジ回路部(20)に対して並列に接続されており、前記第1〜第4歪みゲージ(21〜24)よりも前記物理量の印加及び前記温度に対する抵抗値の変化が小さいものであり、前記ブリッジ回路部(20)に印加される前記入力電圧に対応する第3電圧を第3検出信号として出力する温度特性調整部(30)と、
前記第1検出信号及び前記第2検出信号を入力し、前記第1電圧と前記第2電圧との差電圧を第1増幅率で増幅した第1差電圧を第1差電圧信号として出力する第1信号処理回路部(40)と、
前記第2検出信号及び前記第3検出信号を入力し、前記第2電圧と前記第3電圧との差電圧を前記第1増幅率とは異なる第2増幅率で増幅した第2差電圧を第2差電圧信号として出力する第2信号処理回路部(50)と、
を備えていることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
前記第1差電圧信号及び前記第2差電圧信号を入力し、前記第1差電圧と前記第2差電圧とが正常範囲内であるか否かを判定することにより前記ブリッジ回路部(20)の異常の有無を判定する判定回路部(70)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項3】
前記第1信号処理回路部(40)から出力される前記第1差電圧信号と、前記第2信号処理回路部(50)から出力される前記第2差電圧信号と、のうち前記判定回路部(70)によって異常であると判定された信号の出力を遮断する遮断回路部(60)を備えていることを特徴とする請求項2に記載の物理量検出装置。
【請求項4】
前記ブリッジ回路部(20)は、前記第1〜第4歪みゲージ(21〜24)が平衡条件を満たさないように前記第1〜第4歪みゲージ(21〜24)の各抵抗値がそれぞれ設定されており、これにより、前記第1検出信号及び前記第2検出信号としてオフセット成分を含んだ信号を出力するようになっており、
前記第1信号処理回路部(40)は、前記オフセット成分を補正するための第1オフセット補正値を有し、当該第1オフセット補正値によって前記第1差電圧を補正し、
前記第2信号処理回路部(50)は、前記オフセット成分を補正するための第2オフセット補正値を有し、当該第2オフセット補正値によって前記第2差電圧を補正し、
さらに、
前記ブリッジ回路部(20)及び前記温度特性調整部(30)に定電流を供給する定電流回路部(10)と、
前記第1差電圧信号及び前記第2差電圧信号を入力し、前記第1差電圧と前記第2差電圧との和が正常範囲内であるか否かを判定することにより前記定電流回路部(10)の異常の有無を判定する判定回路部(70)と、を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の物理量検出装置。
【請求項5】
前記温度特性調整部(30)は、第1抵抗(31)と当該第1抵抗(31)と同じ抵抗値の第2抵抗(32)とが直列接続されて構成されており、前記第1抵抗(31)と前記第2抵抗(32)との第3中点(33)の電圧が前記第3電圧とされ、当該第3電圧を前記第3検出信号として出力するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物理量検出装置。
【請求項6】
前記温度特性調整部(30)は、1つの抵抗(34)によって構成されていると共に前記抵抗(34)のローサイドがグランドに電気的に接続されており、当該抵抗(34)のローサイドの電圧が前記第3電圧とされ、当該第3電圧を前記第3検出信号として出力するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物理量検出装置。
【請求項7】
前記温度特性調整部(30)は、1つの抵抗(34)によって構成されていると共に前記抵抗(34)のハイサイドに前記入力電圧が印加されており、当該抵抗(34)のハイサイドの入力電圧が前記第3電圧とされ、当該第3電圧を前記第3検出信号として出力するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物理量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を検出するように構成された物理量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物理量を検出するように構成された検出装置が、例えば特許文献1で提案されている。検出装置は、物理量が印加されることで変形可能な薄肉状のダイヤフラムと、ダイヤフラムの歪みに応じて歪むことで抵抗値が変化する複数の歪みゲージと、を備えている。各歪みゲージはブリッジ回路部を構成するように接続されている。
【0003】
また、検出装置は上記のブリッジ回路部を2つ備えている。これにより、2つのブリッジ回路部の出力信号に基づく物理量の差が正常範囲を超える場合、各ブリッジ回路部のうちのいずれか一方が故障や特性変動を起こしていると判定することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−116287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、検出装置にブリッジ回路部が2つ備えられているので、検出装置のサイズもコストも大きくなってしまう。したがって、発明者らは、ブリッジ回路部を1つとした構成でも当該ブリッジ回路部の異常を判定可能にすることができないか検討を行った。
【0006】
その結果、発明者らは以下の回路構成を発案した。まず、電源とグランドとの間に1つのブリッジ回路部が接続され、このブリッジ回路部に並列に調整抵抗が接続される。ブリッジ回路部を構成する各歪みゲージは温度特性を有するが、調整抵抗は温度特性がほぼ無い。ブリッジ回路部及び調整抵抗に対しては定電流が供給される。
【0007】
また、ブリッジ回路部の2つの中点がそれぞれ第1信号処理回路部及び第2信号処理回路部に接続される。各信号処理回路部は入力した信号をそれぞれ同じ増幅率で増幅するように構成されている。そして、第2信号処理回路部は第1信号処理回路部に対して極性が反転するようにブリッジ回路部の各中点に接続される。
【0008】
このような構成によると、ブリッジ回路部が受ける温度が高い場合には各歪みゲージの抵抗値が大きくなるので、調整抵抗にはブリッジ回路部よりも大きな電流が流れる。一方、ブリッジ回路部が受ける温度が低い場合には各歪みゲージの抵抗値が小さくなるので、ブリッジ回路部には調整抵抗よりも大きな電流が流れる。このため、ブリッジ回路部の各中点の差電圧は温度に依存しないので、ブリッジ回路部の感度を一定に維持することができる。
【0009】
また、各信号処理回路部の出力は互いに極性が反転した値となるので、各信号処理回路部の出力の合算値は一定となる。さらに、各信号処理回路部の出力を比較することで各信号処理回路部のいずれか一方の異常を判定することが可能である。
【0010】
しかし、ブリッジ回路部に異常が発生したとしても各信号処理回路部の出力は互いに反転した値になるので、ブリッジ回路部の異常に関わらず各信号処理部の合算値は一定とな
る。すなわち、ブリッジ回路部の異常に基づく成分が各信号処理部の合算値に反映されないので、各信号処理回路部の出力に基づいてブリッジ回路部の異常を判定することができない。
【0011】
本発明は上記点に鑑み、ブリッジ回路部を1つとした構成でも当該ブリッジ回路部の異常を判定可能にすることができる物理量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、物理量の印加に応じて抵抗値が変化すると共に抵抗値が温度に応じて変化する第1歪みゲージ(21)、第2歪みゲージ(22)、第3歪みゲージ(23)、及び第4歪みゲージ(24)によってブリッジ回路が構成されており、当該ブリッジ回路に印加される入力電圧に基づいて第1歪みゲージ(21)と第2歪みゲージ(22)との第1中点(25)の第1電圧を第1検出信号として出力すると共に、第3歪みゲージ(23)と第4歪みゲージ(24)との第2中点(26)の第2電圧を第2検出信号として出力するブリッジ回路部(20)を備えている。
【0013】
また、ブリッジ回路部(20)に対して並列に接続されており、第1〜第4歪みゲージ(21〜24)よりも物理量の印加及び温度に対する抵抗値の変化が小さいものであり、ブリッジ回路部(20)に印加される入力電圧に対応する第3電圧を第3検出信号として出力する温度特性調整部(30)を備えている。
【0014】
また、第1検出信号及び第2検出信号を入力し、第1電圧と第2電圧との差電圧を第1増幅率で増幅した第1差電圧を第1差電圧信号として出力する第1信号処理回路部(40)を備えている。
【0015】
さらに、第2検出信号及び第3検出信号を入力し、第2電圧と第3電圧との差電圧を第1増幅率とは異なる第2増幅率で増幅した第2差電圧を第2差電圧信号として出力する第2信号処理回路部(50)を備えていることを特徴とする。
【0016】
これによると、第1信号処理回路部(40)によってブリッジ回路部(20)の状態に依存しやすい第1差電圧が取得される。一方、ブリッジ回路部(20)の異常に関わらず、温度特性調整部(30)によって安定したすなわち一定の第3電圧が生成されるので、第2信号処理回路部(50)によってブリッジ回路部(20)の状態に依存しにくい第2差電圧が取得される。このため、ブリッジ回路部(20)で異常が発生した場合、第2差電圧に対して第1差電圧を変動させることができる。したがって、第1差電圧と第2差電圧との比較によってブリッジ回路部(20)の異常の有無の判定が可能となる。以上により、ブリッジ回路部(20)を1つとした構成でも当該ブリッジ回路部(20)の異常を判定可能にすることができる。
【0017】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る物理量検出装置の全体構成図である。
図2】ブリッジ回路部が正常である場合において、圧力に対する第1差電圧(V1)及び第2差電圧(V2)の変化を示した図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る温度特性調整部の回路構成を示した図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る温度特性調整部の回路構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る物理量検出装置は、例えば圧力媒体の圧力を検出する圧力センサ装置として構成されている。このような物理量検出装置は、図1に示されるように、定電流回路部10、ブリッジ回路部20、温度特性調整部30、第1信号処理回路部40、第2信号処理回路部50、遮断回路部60、及び判定回路部70を備えて構成されている。
【0021】
物理量検出装置のうち、定電流回路部10、ブリッジ回路部20、温度特性調整部30、第1信号処理回路部40、第2信号処理回路部50、及び遮断回路部60はセンサ装置80として構成されている。また、判定回路部70はECU90(Electrical Control Unit)に設けられている。
【0022】
定電流回路部10は、一定の電流を生成するように構成されている。定電流回路部10は、生成した定電流をブリッジ回路部20及び温度特性調整部30に供給する。
【0023】
ブリッジ回路部20は、圧力媒体の圧力に応じた検出信号を出力するセンシング手段である。ブリッジ回路部20は、第1歪みゲージ21、第2歪みゲージ22、第3歪みゲージ23、及び第4歪みゲージ24を備えて構成されている。各歪みゲージ21〜24は、物理量の印加に応じて抵抗値が変化すると共に抵抗値が温度に応じて変化する抵抗体である。
【0024】
また、各歪みゲージ21〜24は、第1歪みゲージ21及び第2歪みゲージ22の直列接続部と第3歪みゲージ23及び第4歪みゲージ24の直列接続部とが並列に接続されることでホイートストンブリッジ回路を構成している。各歪みゲージ21〜24は、例えば図示しない半導体基板に形成された拡散抵抗である。
【0025】
そして、ブリッジ回路部20は、定電流回路部10から定電流が供給されると共に入力電圧が印加される。したがって、ブリッジ回路部20は、ホイートストンブリッジ回路に印加される入力電圧に基づいて第1歪みゲージ21と第2歪みゲージ22との第1中点25の第1電圧を第1検出信号として出力する。また、ブリッジ回路部20は、第3歪みゲージ23と第4歪みゲージ24との第2中点26の第2電圧を第2検出信号として出力する。例えば、入力電圧をVとすると、各歪みゲージ21〜24に圧力が印加されていないときの各中点25、26の出力はV/2となる。
【0026】
温度特性調整部30は、ブリッジ回路部20に対して並列に接続されている。具体的に、温度特性調整部30は、第1抵抗31と第2抵抗32とが直列接続されて構成されている。第1抵抗31及び第2抵抗32は、ブリッジ回路部20の各歪みゲージ21〜24よりも圧力の印加及び温度に対する抵抗値の変化が小さいものである。第1抵抗31及び第2抵抗32は、例えば半導体基板の上に形成されたCrSi等の薄膜抵抗である。例えば、第1抵抗31及び第2抵抗32は抵抗値が同じである。
【0027】
また、温度特性調整部30は、ブリッジ回路部20に印加される入力電圧に対応する第3電圧を第3検出信号として出力する。本実施形態では、第1抵抗31と第2抵抗32との第3中点33の電圧が第3電圧とされる。第1抵抗31および第2抵抗32は、第3電圧がブリッジ回路部20の第1電圧と第2電圧との差電圧と同じになるように、それぞれ抵抗値が調整されている。例えば、入力電圧をVとすると、第3中点33の第3電圧はV/2となる。すなわち、第1抵抗31及び第2抵抗32は同じ抵抗値になっている。
【0028】
第1信号処理回路部40は、ブリッジ回路部20の第1電圧と第2電圧との差電圧を第1増幅率で増幅した第1差電圧を生成し、この第1差電圧を第1差電圧信号として出力するものである。第1信号処理回路部40は、第1増幅部41、第1調整部42、及び第1出力部43を備えて構成されている。
【0029】
第1増幅部41は、ブリッジ回路部20から第1検出信号及び第2検出信号を入力し、第1電圧と第2電圧との差電圧を所定の増幅率で増幅するように構成された差動増幅器である。第1調整部42は、第1増幅部41の出力に対してオフセット補正や温度特性に基づく補正を行う信号調整手段である。
【0030】
第1出力部43は、電流ブースタとしてのボルテージホロワを構成するものである。第1出力部43は、第1増幅部41及び第1調整部42によって信号調整された第1差電圧信号を第1増幅率で増幅して出力する。第1差電圧信号はブリッジ回路部20の第1電圧及び第2電圧に基づいて生成された信号であるので、第1差電圧信号は温度に依存した信号となる。
【0031】
第2信号処理回路部50は、ブリッジ回路部20の第2電圧と温度特性調整部30の第3電圧との差電圧を第1増幅率とは異なる第2増幅率で増幅した第2差電圧を生成し、この第2差電圧を第2差電圧信号として出力するものである。第2信号処理回路部50は、第2増幅部51、第2調整部52、及び第2出力部53を備えて構成されている。
【0032】
第2増幅部51は、ブリッジ回路部20から第2検出信号を入力すると共に温度特性調整部30から第3検出信号を入力し、第2電圧と第3電圧との差電圧を所定の増幅率で増幅するように構成された差動増幅器である。第2調整部52は、第2増幅部51の出力に対してオフセット補正や温度特性に基づく補正を行う信号調整手段である。
【0033】
第2出力部53は、電流ブースタとしてのボルテージホロワを構成するものである。第2出力部53は、第2増幅部51及び第2調整部52によって信号調整された第2差電圧信号を第2増幅率で増幅して出力する。本実施形態では、第2増幅率は第1増幅率の2倍に設定されている。第2差電圧信号は温度特性調整部30の第3電圧に基づいて生成された信号であるので、第2差電圧信号は第1差電圧信号とは異なる感度の信号となる。
【0034】
遮断回路部60は、センサ装置80からECU90への信号の出力を制御するものである。遮断回路部60は、第1スイッチ部61、第2スイッチ部62、及び切替部63を備えて構成されている。
【0035】
第1スイッチ部61は、第1出力部43とセンサ装置80の第1出力端子81(Vout1)とを電気的に接続または切断するスイッチ手段である。第2スイッチ部62は、第2出力部53とセンサ装置80の第2出力端子82(Vout2)とを電気的に接続または切断するスイッチ手段である。
【0036】
切替部63は、第1スイッチ部61及び第2スイッチ部62の接続または切断を制御するものである。切替部63は、第1差電圧信号及び第2差電圧信号のうち判定回路部70によって異常であると判定された信号の出力を遮断するように第1スイッチ部61及び第2スイッチ部62を制御する。
【0037】
判定回路部70は、ブリッジ回路部20の異常の有無を判定するものである。判定回路部70は、センサ装置80から第1差電圧信号及び第2差電圧信号を入力し、第1差電圧と第2差電圧とが正常範囲内であるか否かを判定する。例えば、判定回路部70は、第1
差電圧と第2差電圧との合算値が正常範囲内であるか否かを判定する。判定回路部70は、第1差電圧と第2差電圧との差分が正常範囲内であるか否かを判定しても良い。また、判定回路部70は判定結果に応じてセンサ装置80の遮断回路部60の切替部63に指令を出す。この判定回路部70により、物理量検出装置において、ブリッジ回路部20の異常の有無を判定することができる。
【0038】
なお、ECU90は、判定回路部70の他に圧力値を用いた制御を行うように構成されている。また、センサ装置80は電源端子83(VCC)及びグランド端子84(GND)を介してECU90から電源供給される構成となっている。以上が、本実施形態に係る物理量検出装置の全体構成である。
【0039】
次に、物理量検出装置の作動について説明する。ここで、ブリッジ回路部20の第1中点25及び第2中点26の各初期電位をVgとする。また、ブリッジ回路部20のオフセット成分をαとする。αは定電流に比例するパラメータである。温度特性調整部30の第1抵抗31及び第2抵抗32によるオフセット成分をβとする。さらに、ブリッジ回路部20への圧力印加による各中点25、26の電圧の変動分をΔVとする。
【0040】
上記に加え、第1信号処理回路部40の第1増幅部41及び第2信号処理回路部50の第2増幅部51の増幅率をAとする。また、第1信号処理回路部40の第1出力部43の第1増幅率をBとし、第2信号処理回路部50の第2出力部53の第2増幅率を2Bとする。
【0041】
まず、ブリッジ回路部20が正常に動作している場合について説明する。
[正常時:圧力が0(MPa)の場合]
ブリッジ回路部20に圧力が印加されていない場合、ブリッジ回路部20の第1中点25の第1電圧をVspとすると、Vspは数1で表される。
(数1)
Vsp=Vg+α
同様に、ブリッジ回路部20の第2中点26の第2電圧をVsmとすると、Vsmは数2で表される。
(数2)
Vsm=Vg−α
さらに、温度特性調整部30の第3中点33の第3電圧をVsとすると、Vsは数3で表される。
(数3)
Vs=Vg+β
したがって、第1信号処理回路部40で生成される第1差電圧をV1とすると、V1は数4で表される。ここで、第1調整部42において調整されるオフセット成分をVz1とし、温度特性成分をVt1とする。
(数4)
V1={(Vsp−Vsm)×A+Vz1+Vt1}×B=C
これは、第1電圧と第2電圧との差電圧であるVsp−Vsm(=2α)が第1増幅部41でA倍されると共に第1調整部42でVz1+Vt1の調整が行われ、さらにこの信号が第1出力部43でB倍されることでCとなることを意味している。Vz1+Vt1は例えば−2Aαとなるように設定される。ここで、Cは圧力が0の場合のV1の初期オフセット値である。
【0042】
また、第2信号処理回路部50で生成される第2差電圧をV2とすると、V2は数5で表される。ここで、第2調整部52において調整されるオフセット成分をVz2とし、温度特性成分をVt2とする。
(数5)
V2={(Vsm−Vs)×A+Vz2+Vt2}×2B=D
これは、第2電圧と第3電圧との差電圧であるVsm−Vs(=−α−β)が第2増幅部51でA倍されると共に第2調整部52でVz2+Vt2の調整が行われ、さらにこの信号が第2出力部53で2B倍されることでDとなることを意味している。Vz2+Vt2は例えばA(α+β)となるように設定される。ここで、Dは圧力が0の場合のV2の初期オフセット値である。
[正常時:圧力がP(MPa)の場合]
ブリッジ回路部20にPの圧力が印加されている場合、ブリッジ回路部20の第1中点25の第1電圧(Vsp)は数6で表される。なお、Vgは圧力により変動しないとする。
(数6)
Vsp=Vg+α+ΔV
同様に、ブリッジ回路部20の第2中点26の第2電圧(Vsm)は数7で表される。
(数7)
Vsm=Vg−α−ΔV
さらに、温度特性調整部30の第3中点33の第3電圧(Vs)は数8で表される。
(数8)
Vs=Vg+β
したがって、第1信号処理回路部40で生成される第1差電圧(V1)は数9で表される。
(数9)
V1={(Vsp−Vsm)×A+Vz1+Vt1}×B=C+2ABΔV
これは、Vsp−Vsm(=2α+2ΔV)が第1増幅部41でA倍されると共に第1調整部42でVz1+Vt1(=−2Aα)の調整が行われ、さらにこの信号が第1出力部43でB倍されることで+2ABΔVの変動が生じることを意味している。2ABΔVの成分は圧力値に応じた大きさとなる。
【0043】
また、第2信号処理回路部50で生成される第2差電圧(V2)は数10で表される。(数10)
V2={(Vsm−Vs)×A+Vz2+Vt2}×2B=D−2ABΔV
これは、Vsm−Vs(=−α−β−ΔV)が第2増幅部51でA倍されると共に第2調整部52でVz2+Vt2(=A(α+β))の調整が行われ、さらにこの信号が第2出力部53で2B倍されることで−2ABΔVの変動が生じることを意味している。
【0044】
このように、圧力印加時では数9及び数10に示されるように互いに反転した値が算出される。このため、図2に示されるように、圧力の増加に伴って第1信号処理回路部40で生成された第1差電圧(V1)が一定の傾きで増加する一方、第2信号処理回路部50で生成された第2差電圧(V2)は第1差電圧(V1)と同じ傾きで減少する。したがって、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値は一定になる。
【0045】
ECU90の判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値を取得する。そして、判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値が正常範囲内であると判定する。
【0046】
続いて、ブリッジ回路部20において、第1電圧(Vsp)に異常が発生した場合と第2電圧(Vsm)に異常が発生した場合とについて説明する。ここで、「異常」とは、耐久変動やその他の異常を意味している。この異常を表す成分をγとする。
[異常時;第1電圧(Vsp)の場合]
ブリッジ回路部20にP(MPa)の圧力が印加されている場合、ブリッジ回路部20
の第1中点25の第1電圧(Vsp)は数11で表される。
(数11)
Vsp=Vg+α+ΔV+γ
同様に、ブリッジ回路部20の第2中点26の第2電圧(Vsm)は数12で表される。(数12)
Vsm=Vg−α−ΔV
さらに、温度特性調整部30の第3中点33の第3電圧(Vs)は数13で表される。
(数13)
Vs=Vg+β
したがって、第1信号処理回路部40で生成される第1差電圧(V1)は数14で表される。
(数14)
V1={(Vsp−Vsm)×A+Vz1+Vt1}×B=C+2ABΔV+2ABγ
これは、Vsp−Vsm(=2α+2ΔV+γ)が第1増幅部41でA倍されると共に第1調整部42でVz1+Vt1(=−2Aα)の調整が行われ、さらにこの信号が第1出力部43でB倍されることで+2ABΔV+2ABγの変動が発生することを意味している。
【0047】
また、第2信号処理回路部50で生成される第2差電圧(V2)は数15で表される。(数15)
V2={(Vsm−Vs)×A+Vz2+Vt2}×2B=D−2ABΔV
これは、Vsm−Vs(=−α−β−ΔV)が第2増幅部51でA倍されると共に第2調整部52でVz2+Vt2(=A(α+β))の調整が行われ、さらにこの信号が第2出力部53で2B倍されることで−2ABΔVの変動が生じることを意味している。
【0048】
このように、第1電圧(Vsp)の異常時では数14及び数15に示されるように「2ABγ」の成分の差が生じる。この差は、ブリッジ回路部20の第1電圧(Vsp)が異常によって変化する一方、温度特性調整部30の第3電圧(Vs)は一定値で安定していることから生じる。つまり、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)とで異常に対する影響度を異ならせているので、異常に基づく成分を発生させることができる。
【0049】
したがって、判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値が正常範囲を超えると判定する。また、判定回路部70は、2ABγの値に基づいて第1電圧(Vsp)の異常であると判定し、遮断回路部60に対して第1スイッチ部61を遮断する旨の指令を出す。
[異常時;第2差電圧(V2)の場合]
ブリッジ回路部20にP(MPa)の圧力が印加されている場合、ブリッジ回路部20の第1中点25の第1電圧(Vsp)は数16で表される。
(数16)
Vsp=Vg+α+ΔV
同様に、ブリッジ回路部20の第2中点26の第2電圧(Vsm)は数17で表される。(数17)
Vsm=Vg−α−ΔV+γ
さらに、温度特性調整部30の第3中点33の第3電圧(Vs)は数18で表される。
(数18)
Vs=Vg+β
したがって、第1信号処理回路部40で生成される第1差電圧(V1)は数19で表される。
(数19)
V1={(Vsp−Vsm)×A+Vz1+Vt1}×B=C+2ABΔV+ABγ
これは、Vsp−Vsm(=2α+2ΔV−γ)が第1増幅部41でA倍されると共に第1調整部42でVz1+Vt1(=−2Aα)の調整が行われ、さらにこの信号が第1出力部43でB倍されることで+2ABΔV+ABの変動が発生することを意味している。
【0050】
また、第2信号処理回路部50で生成される第2差電圧(V2)は数20で表される。(数20)
V2={(Vsm−Vs)×A+Vz2+Vt2}×2B=D−2ABΔV+2ABγ
これは、Vsm−Vs(=−α−β−ΔV+γ)が第2増幅部51でA倍されると共に第2調整部52でVz2+Vt2(=A(α+β))の調整が行われ、さらにこの信号が第2出力部53で2B倍されることで−2ABΔV+2ABγの変動が生じることを意味している。
【0051】
このように、第2差電圧(V2)の異常時では数19及び数20に示されるように「ABγ」の成分の差が生じる。したがって、判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値が正常範囲を超えると判定する。また、判定回路部70は、ABγの値に基づいて第2差電圧(V2)の異常であると判定し、遮断回路部60に対して第2スイッチ部62を遮断する旨の指令を出す。
【0052】
続いて、ブリッジ回路部20にPの圧力が印加されているときに、定電流回路部10に異常が発生した場合について説明する。ここで、定電流回路部10の異常による成分をδとする。
【0053】
この場合、ブリッジ回路部20の第1電圧(Vsp)は数21で表される。
(数21)
Vsp=δ(Vg+α+ΔV)
同様に、ブリッジ回路部20の第2電圧(Vsm)は数22で表される。
(数22)
Vsm=δ(Vg−α−ΔV)
さらに、温度特性調整部30の第3中点33の第3電圧(Vs)は数23で表される。
(数23)
Vs=δ(Vg+β)
定電流回路部10の異常は、ブリッジ回路部20及び温度特性調整部30の全体に掛かるものであるので、第1電圧(Vsp)、第2電圧(Vsm)、及び第3電圧(Vs)はδによって支配される。
【0054】
そして、第1信号処理回路部40で生成される第1差電圧(V1)は数24で表される。
(数24)
V1={(Vsp−Vsm)×A+Vz1+Vt1}×B=C+{δA(2α+2ΔV)−2Aα}×B
また、第2信号処理回路部50で生成される第2差電圧(V2)は数25で表される。
(数25)
V2={(Vsm−Vs)×A+Vz2+Vt2}×2B=D+{δA(−α−β−ΔV)+A(α+β)}×2B
このように、定電流回路部10の異常時では数24及び数25に示されるように第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)とは全く異なる値となる。したがって、判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値が正常範囲を超えると判定する。また、判定回路部70は、合算値に基づいて定電流回路部10の異常であると判定し、遮断回路部60に対して第1スイッチ部61及び第2スイッチ部62を遮断する旨の指令を出す。
【0055】
以上説明したように、本実施形態では、センサ装置80の第1信号処理回路部40によってブリッジ回路部20の状態に依存しやすい第1差電圧(V1)を取得する構成となっている。一方、ブリッジ回路部20の異常に関わらず、温度特性調整部30によって一定の第3電圧を生成することにより、第2信号処理回路部50によってブリッジ回路部20の状態に依存しにくい第2差電圧(V2)を取得する構成となっている。これにより、ブリッジ回路部20で異常が発生した場合、第2差電圧(V2)に対して第1差電圧(V1)を変動させることができる。また、定電流回路部10の異常時にも第1差電圧(V1)及び第2差電圧(V2)を変動させることができる。
【0056】
以上により、ブリッジ回路部20を1つとした構成でも、第1差電圧(V1)及び第2差電圧(V2)に基づいてブリッジ回路部20の異常の有無の判定を可能とすることができる。
【0057】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、図3に示されるように、温度特性調整部30は1つの第3抵抗34によって構成されている。そして、第3抵抗34のローサイドの電圧すなわちグランド電圧が第3電圧(Vs)とされる。このように、ブリッジ回路部20に印加される入力電圧(V)に対応する第3電圧(Vs)をグランド電圧としても良い。
【0058】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、第3抵抗34が特許請求の範囲の「抵抗」に対応する。
【0059】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、図4に示されるように、第3抵抗34のハイサイドの電圧すなわち入力電圧が第3電圧(Vs)とされる。このように、ブリッジ回路部20に印加される入力電圧(V)に対応する第3電圧(Vs)を入力電圧(V)そのものとしても良い。
【0060】
(第4実施形態)
本実施形態に係る物理量検出装置の構成は、図1に示された構成と同じである。但し、上記各実施形態に係るブリッジ回路部20の第1〜第4歪みゲージ21〜24は平衡条件を満たすホイートストンブリッジ回路として構成されていた。しかしながら、本実施形態に係るブリッジ回路部20の第1〜第4歪みゲージ21〜24は平衡条件を満たさないブリッジ回路として構成されている。すなわち、第1〜第4歪みゲージ21〜24は平衡条件を満たさないように各抵抗値がそれぞれ設定されている。つまり、第1〜第4歪みゲージ21〜24のゲージバランスが予め崩されている。これにより、ブリッジ回路部20は、オフセット成分を含んだ第1検出信号及び第2検出信号を出力する。
【0061】
第1信号処理回路部40は、第1検出信号及び第2検出信号に含まれるオフセット成分を補正するための第1オフセット補正値を有している。そして、第1信号処理回路部40は、第1オフセット補正値によって第1差電圧を補正し、第1差電圧信号を出力する。なお、第1調整部42が第1オフセット補正値を用いた補正を行う。
【0062】
一方、第2信号処理回路部50は、第2検出信号に含まれるオフセット成分を補正するための第2オフセット補正値を有している。そして、第2信号処理回路部50は、第2オフセット補正値によって第2差電圧を補正し、第2差電圧信号を出力する。なお、第2調整部52が第2オフセット補正値を用いた補正を行う。
【0063】
ECU90の判定回路部70は、上記のブリッジ回路部20の異常の有無を判定する機能だけでなく、定電流回路部10の異常の有無を判定する機能も備えている。判定回路部70は、第1信号処理回路部40から第1差電圧信号を入力すると共に第2信号処理回路部50から第2差電圧信号を入力し、第1差電圧と第2差電圧との和が正常範囲内であるか否かを判定することにより定電流回路部10の異常の有無を判定する。以上が、本実施形態に係る物理量検出装置の構成である。
【0064】
次に、判定回路部70における定電流回路部10の異常判定の作動について説明する。
【0065】
まず、定電流回路部10が正常に動作している場合について説明する。定電流回路部10が正常動作している場合、定電流回路部10はブリッジ回路部20にIの定電流を流すとする。
【0066】
そして、第1歪みゲージ21の抵抗値をR1、第2歪みゲージ22の抵抗値をR2とすると、第1中点25の第1電圧(Vsp)は数26で表される。
(数26)
Vsp={R2/(R1+R2)}×I
また、第3歪みゲージ23の抵抗値をR3、第4歪みゲージ24の抵抗値をR4とすると、第2中点26の第2電圧(Vsm)は数27で表される。
(数27)
Vsm={R4/(R3+R4)}×I
さらに、温度特性調節部30の第1抵抗31の抵抗値をR5とし、第2抵抗32の抵抗値をR6とすると、温度特性調整部30の第3中点33の第3電圧をVsは数28で表される。
(数28)
Vs={R6/(R5+R6)}×I
したがって、第1信号処理回路部40で生成される第1差電圧(V1)は、数29で表される。
(数29)
V1={(Vsp−Vsm)×A+Vz1+Vt1}×B=ΔE−ΔE=0
これは、第1電圧と第2電圧との差電圧であるVsp−Vsm(=Rg1×I)が第1増幅部41でAB倍されるとΔEとなり、さらに第1調整部42で(Vz1+Vt1)×B(=−ΔE)のオフセット調整が行われることを意味している。すなわち、第1信号処理回路部40は第1オフセット補正値として−ΔEを有している。上述のように、第1〜第4歪みゲージ21〜24のゲージバランスが崩されているので、第1信号処理回路部40は第1オフセット補正値(−ΔE)によって第1検出信号に含まれるオフセット成分を補正する。なお、Rg1は数30で表される。
(数30)
Rg1=(R2R3−R1R4)/{(R1+R2)×(R3+R4)}
また、第2信号処理回路部50で生成される第2差電圧(V2)は、数31で表される。
(数31)
V2={(Vsm−Vs)×A+Vz2+Vt2}×2B=−(1/2)×ΔE+(1/2)×ΔE=0
これは、第2電圧と第3電圧との差電圧であるVsm−Vs(=Rg2×I)が第2増幅部51で2AB倍されると−(1/2)×ΔEとなり、さらに第2調整部52で(Vz2+Vt2)×2B(=+(1/2)×ΔE)のオフセット調整が行われることを意味している。すなわち、第2信号処理回路部50は第2オフセット補正値として+(1/2)×ΔEを有している。上述のように、第1〜第4歪みゲージ21〜24のゲージバランスが崩されているので、第2信号処理回路部50は第2オフセット補正値(+(1/2)×ΔE)によって第1検出信号に含まれるオフセット成分を補正する。なお、Rg2は数32で表される。
(数32)
Rg2=(R4R5−R3R6)/{(R3+R4)×(R5+R6)}
そして、ECU90の判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値を取得する。合算値は数33で表される。
(数33)
V1+V2=0
判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値が正常範囲内であると判定し、定電流回路部10に異常が無いと判定する。
【0067】
続いて、定電流回路部10において異常が発生した場合について説明する。この場合、定電流回路部10はブリッジ回路部20に例えば2Iの異常な電流を流す。したがって、Vsp−Vsm=Rg1×2Iとなるので、第1信号処理回路部40で生成される第1差電圧(V1)は数34で表される。
(数34)
V1={(Vsp−Vsm)×A+Vz1+Vt1}×B=2ΔE−ΔE=ΔE
これは、(Vsp−Vsm)×A×B(=2ΔE)が2倍の値になるのに対し、第1オフセット補正値である(Vz1+Vt1)×B(=−ΔE)の値には変化がないため、演算結果としてΔEが残ることを示している。
【0068】
一方、Vsm−Vs=Rg2×2Iとなるので、第2信号処理回路部50で生成される第2差電圧(V2)は数35で表される。
(数35)
V2={(Vsm−Vs)×A+Vz2+Vt2}×2B=−ΔE+(1/2)×ΔE=−(1/2)×ΔE
これは、(Vsm−Vs)×2ABが2倍の値になるのに対し、第2オフセット補正値である(Vz2+Vt2)×2B(=+(1/2)×ΔE)の値には変化がないため、演算結果として−(1/2)×ΔEが残ることを示している。
【0069】
そして、ECU90の判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値を取得する。合算値は数36で表される。
(数36)
V1+V2=(1/2)×ΔE
このように、定電流回路部10に異常が発生している場合は第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値に異常成分が生じる。すなわち、定電流回路部10からブリッジ回路部20に供給される電流値に変化が生じると、第1電位差(V1)のVsp−Vsmと第2電位差(V2)のVsm−Vsとに差が生じる。したがって、判定回路部70は、第1差電圧(V1)と第2差電圧(V2)との合算値が正常範囲を超えると判定し、定電流回路部10に異常が発生していると判定する。
【0070】
なお、判定回路部70が定電流回路部10に異常が発生していると判定した場合、判定回路部70は遮断回路部60を動作させてセンサ装置80からECU90への信号出力を遮断することもできる。
【0071】
以上説明したように、定電流回路部10に異常が発生して定電流の電流値が変化した場合、ブリッジ回路部20のオフセット成分が変化する。この場合、第1信号処理回路部40はブリッジ回路部20の出力を処理する一方、第2信号処理回路部50はブリッジ回路部20の出力だけでなく温度特性調整部30の出力も処理する。このため、第1信号処理回路部40及び第2信号処理回路部50の出力に差を生じさせることができる。したがって、第1信号処理回路部40で取得された第1差電圧(V1)と第2信号処理回路部50で取得された第2差電圧(V2)との和が変化するので、定電流回路部10の異常を検出することができる。
【0072】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された物理量検出装置の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、物理量検出装置が検出すべき物理量は圧力に限られず、検出対象はブリッジ回路部20によって検出可能な他の物理量でも良い。
【0073】
温度特性調整部30の構成は、上記各実施形態で示された構成に限られない。例えば、温度特性調整部30は、第3電圧(Vs)が第1電圧(Vsp)と第2電圧(Vsm)との差電圧と同じになるように、抵抗値が調整された抵抗によって構成されていても良い。
【0074】
上記各実施形態では、第2信号処理回路部50の第2増幅部51の第2増幅率は、第1信号処理回路部40の第1出力部43の第1増幅率の2倍に設定されていたが、これは増幅率の一例である。したがって、第2増幅率は第1増幅率の2倍に限られない。
【0075】
上記各実施形態では、判定回路部70は物理量検出装置を構成するECU90に設けられていたが、判定回路部70はセンサ装置80に設けられていても良い。
【0076】
上記各実施形態では、判定回路部70は物理量検出装置を構成するECU90に設けられていたが、物理量検出装置に判定回路部70が設けられていなくても良い。上記各実施形態に係る物理量検出装置は、ブリッジ回路部20の異常判定が可能な信号を出力するように構成されているので、物理量検出装置の出力先で異常の有無の判定が行われれば良い。
【0077】
上記各実施形態では、物理量検出装置に遮断回路部60が設けられていたが、これは構成の一例である。したがって、信号の出力の許可または禁止についての構成が不要であれば、物理量検出装置に遮断回路部60を設けなくても良い。
【0078】
第1、第4実施形態では、第1抵抗31及び第2抵抗32は抵抗値が同じであったがこれは一例である。したがって、第1抵抗31及び第2抵抗32は抵抗値が異なっていても良い。
【0079】
図3及び図4に示された温度特性調整部30の構成に対して第4実施形態で示されたブリッジ回路部20、第1信号処理回路部40、第2信号処理回路部50、及び判定回路部70を適用しても良い。
【符号の説明】
【0080】
20 ブリッジ回路部
21〜24 第1〜第4歪みゲージ
25 第1中点
26 第2中点
30 温度特性調整部
40 第1信号処理回路部
50 第2信号処理回路部
図1
図2
図3
図4