(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液面検知処理部は、前記複数の相対位置における前記電圧検出処理部の検出値及び前記検出値補正処理部により補正された検出値の差分を、第1閾値と比較することにより、前記試料容器内の試料の液面を検知することを特徴とする請求項2に記載のサンプリング装置。
前記検出値取得処理部により取得される前記複数の相対位置における前記電圧検出処理部の検出値を、第2閾値と比較することにより、異常状態を検知する異常検知処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサンプリング装置。
前記検出値取得処理部により取得される前記複数の相対位置における前記電圧検出処理部の検出値に基づいて、試料吸引動作時の前記プローブの位置を補正するプローブ位置補正処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサンプリング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来の液面検知方法では、穿孔部材が金属である場合に、プローブが穿孔部材内を通過する過程で静電容量が変化してしまう。そのため、プローブの先端が液面に到達していない状態で、ベース値に対する電圧検出処理部の検出値の変化量が閾値を超える場合があり、液面の誤検知が生じる可能性があった。
【0008】
プローブが穿孔部材内を通過する際の静電容量の変化は、プローブの外周面と穿孔部材の内周面との距離に応じて異なる。そのため、プローブと穿孔部材との位置調整を精度よく行わなければ、上記のような問題が生じやすい。また、プローブは経時変化により変形する場合があるため、プローブの外周面と穿孔部材の内周面との距離を常に一定に保つことは困難である。
【0009】
そこで、上記閾値を大きく設定することにより、穿孔部材内をプローブが通過する際の誤検知を防止することが考えられる。しかしながら、この場合には、液面を良好に検知できず、プローブを試料容器内の適切な位置で停止させることができなくなるおそれがある。静電容量の変化は試料の量に依存するため、特に試料の量が少ない場合には、微小な電圧変化を検出しなければならず、上記閾値を大きく設定することにより液面を検知できなくなる可能性が高い。
【0010】
また、上記閾値を大きく設定した場合には、プローブが試料容器内の奥の方まで必要以上に挿入されるおそれがある。プローブは、分注後に洗浄ポットに挿入されて洗浄されることとなるが、上記のようにプローブが試料容器内の奥の方まで必要以上に挿入され、プローブの洗浄可能部分を超えて試料が付着した場合には、プローブに付着した試料を全て洗浄することができない。この場合、プローブに残った試料が、次の分注時の試料に混入し、分析に悪影響を与えるおそれがある。
【0011】
このような問題を回避するために、上記閾値を大きく設定するのではなく、プローブが穿孔部材内を通過しているときには液面検知を行わず、プローブが穿孔部材内に挿入されて当該穿孔部材から先端が突出した時点で、液面検知を開始するような構成も考えられる。しかしながら、この場合には、試料容器内の試料の液面を低くする必要があるため、試料容器の種類が制限されるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、試料容器内の試料の液面をより良好に検知することができるサンプリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るサンプリング装置は、穿孔部材と、プローブと、プローブ保持機構と、プローブ移動処理部と、電圧検出処理部と、検出値取得処理部と、液面検知処理部とを備える。前記穿孔部材は、試料容器を封止しているキャップを穿孔して、前記試料容器内に挿入される。前記プローブは、前記穿孔部材内を通って前記試料容器内に挿入され、前記試料容器内の試料を吸引する。前記プローブ保持機構は、前記プローブを保持し、当該プローブを移動させることにより前記穿孔部材内に挿入させる。前記プローブ移動処理部は、前記プローブ保持機構を動作させることにより、前記プローブが前記穿孔部材内に挿入されていない第1相対位置、及び、前記プローブが前記穿孔部材内に挿入されて当該穿孔部材から先端が突出した第2相対位置の間で、前記プローブを移動させる。前記電圧検出処理部は、前記プローブ移動処理部による前記プローブの移動時に、当該プローブに生じる電圧変化を検出する。前記検出値取得処理部は、試料吸引動作時よりも前に、前記プローブ移動処理部により前記プローブを移動させ、前記第1相対位置及び前記第2相対位置の間における複数の相対位置で、前記電圧検出処理部の検出値を取得する。前記液面検知処理部は、試料吸引動作に伴う前記プローブの移動時に、前記複数の相対位置における前記電圧検出処理部の検出値及び前記検出値取得処理部により取得されている検出値に基づいて、前記試料容器内の試料の液面を検知する。
【0014】
このような構成によれば、試料吸引動作時にプローブが移動される第1相対位置及び第2相対位置の間における複数の相対位置で、試料吸引動作時よりも前に電圧検出処理部の検出値を取得することができる。このようにして取得された電圧検出処理部の検出値は、その時点におけるプローブと穿孔部材との位置関係や、プローブの経時変化といった誤差要因が反映された値である。したがって、試料吸引動作に伴うプローブの移動時に、前記複数の相対位置における電圧検出処理部の検出値及び検出値取得処理部により取得されている検出値に基づいて、試料容器内の試料の液面を検知することにより、誤差要因を排除して、試料容器内の試料の液面をより良好に検知することができる。
【0015】
前記サンプリング装置は、検出値比較処理部と、検出値補正処理部とをさらに備えていてもよい。前記検出値比較処理部は、試料吸引動作時に、前記複数の相対位置のうち少なくとも1つの相対位置で前記電圧検出処理部の検出値を取得し、当該相対位置において前記検出値取得処理部により取得されている検出値と比較する。前記検出値補正処理部は、前記検出値比較処理部による比較結果に基づいて、前記検出値取得処理部により取得されている検出値を補正する。この場合、前記液面検知処理部は、前記複数の相対位置における前記電圧検出処理部の検出値及び前記検出値補正処理部により補正された検出値に基づいて、前記試料容器内の試料の液面を検知してもよい。
【0016】
このような構成によれば、試料吸引動作時よりも前に検出値取得処理部により取得されている電圧検出処理部の検出値を、試料吸引動作時に補正した上で、その補正された検出値を用いて試料容器内の試料の液面を検知することができる。これにより、実際の試料吸引動作時における誤差要因を排除して、試料容器内の試料の液面をさらに良好に検知することができる。
【0017】
試料吸引動作時には、例えばプローブ内に希釈液などの試薬を吸引した上で、当該プローブを試料容器内に挿入して試料を吸引する場合がある。このような場合には、試薬の吸引に伴いプローブにおける静電容量が変化するため、この状態で電圧検出処理部の検出値を取得し、検出値取得処理部により予め取得されている電圧検出処理部の検出値を補正することにより、誤差要因を効果的に排除することができる。
【0018】
前記液面検知処理部は、前記複数の相対位置における前記電圧検出処理部の検出値及び前記検出値補正処理部により補正された検出値の差分を、第1閾値と比較することにより、前記試料容器内の試料の液面を検知してもよい。
【0019】
このような構成によれば、複数の相対位置ごとに補正された検出値をベース値として、各ベース値に対する電圧検出処理部の検出値の差分を第1閾値と比較することにより、試料容器内の試料の液面を検知することができる。すなわち、一定のベース値に対する電圧検出処理部の検出値の差分を閾値と比較するような構成ではないため、プローブが穿孔部材内を通過する際の静電容量の変化が液面検知に悪影響を与えるのを防止することができる。
【0020】
また、一定のベース値に対する電圧検出処理部の検出値の差分を閾値と比較するような構成とは異なり、第1閾値を大きく設定しなくても液面の誤検知を防止することができる。これにより、液面の検知精度を向上し、プローブを試料容器内の適切な位置で停止させることができる。
【0021】
前記サンプリング装置は、異常検知処理部をさらに備えていてもよい。前記異常検知処理部は、前記検出値取得処理部により取得される前記複数の相対位置における前記電圧検出処理部の検出値を、第2閾値と比較することにより、異常状態を検知する。
【0022】
このような構成によれば、試料吸引動作時よりも前に検出値取得処理部により取得される電圧検出処理部の検出値を、第2閾値と比較することにより、試料の吸引開始前に予め異常状態を検知することができる。これにより、プローブが穿孔部材に接触することによる検出値の上昇や、穿孔部材内に付着している水や汚れなどにプローブが接触することによる検出値の上昇など、各種異常状態を事前に検知して対応することができるため、当該異常状態が分析に悪影響を与えるのを防止することができる。
【0023】
前記サンプリング装置は、プローブ位置補正処理部をさらに備えていてもよい。前記プローブ位置補正処理部は、前記検出値取得処理部により取得される前記複数の相対位置における前記電圧検出処理部の検出値に基づいて、試料吸引動作時の前記プローブの位置を補正する。
【0024】
このような構成によれば、試料吸引動作時よりも前に検出値取得処理部により取得される電圧検出処理部の検出値を用いて、試料吸引動作時のプローブの位置を適切な位置に補正することができる。このとき、複数の相対位置における電圧検出処理部の検出値に基づいて、試料吸引動作時のプローブの位置をより適切な位置に補正することができるため、試料容器内の試料の液面をさらに良好に検知することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、試料吸引動作に伴うプローブの移動時に、複数の相対位置における電圧検出処理部の検出値及び検出値取得処理部により取得されている検出値に基づいて、試料容器内の試料の液面を検知することにより、誤差要因を排除して、試料容器内の試料の液面をより良好に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るサンプリング装置1の構成例を示した概略平面図である。このサンプリング装置1は、例えば血液などの各種試料を分析するための分析装置に備えられ、試料が収容された複数の試料容器2を自動で順次送り出し、各試料容器2内の試料を吸引して分注することができる。
【0028】
試料容器2は、ラック3により保持された状態でサンプリング装置1にセットされる。各ラック3には、複数の試料容器2を保持することができる。サンプリング装置1には、ラック3を複数設置することができる設置部4が備えられている。設置部4は、設置部移動機構(図示せず)により、例えば設置部4上でラックが並ぶ方向と同じ方向である設置部移動方向D1に沿って移動できるように設けられている。
【0029】
ラック3は、設置部移動方向D1の特定の位置(搬送位置5)において、設置部4から送り出される。ラック3は、例えば設置部移動方向D1に対して直交するラック移動方向D2に沿って送り出される。この例では、設置部4を設置部移動方向D1に沿って移動させることにより、設置部4に設置されている複数のラック3を搬送位置5へと順次移動させ、当該搬送位置5からラック移動方向D2に沿ってラック3を送り出すことができる。
【0030】
設置部4から送り出されたラック3は、ラック搬送路6上で一旦停止され、当該ラック3に保持されている試料容器2から、ピアサ(穿孔部材)7及びプローブ8を用いて試料が吸引される。ピアサ7は、鉛直方向(
図1における紙面前後方向)に延びるようにピアサ保持機構71により保持されている。一方、プローブ8は、鉛直方向に延びるようにプローブ保持機構81により保持されている。
【0031】
図2A〜
図2Dは、試料容器2から試料を吸引する際の動作について説明するための概略断面図である。試料容器2から試料を吸引する試料吸引動作時には、先端が尖った筒状のピアサ7により、試料容器2の開口部21を封止しているキャップ22が穿孔され、試料容器2内にピアサ7が挿入された後、当該ピアサ7内を通して試料容器2内にプローブ8が挿入される。そして、プローブ8が試料容器2内の試料中に浸漬された状態で、ポンプ(図示せず)を駆動させることにより、試料容器2内の試料が吸引される。
【0032】
ピアサ保持機構71には、水平方向に延びるピアサアーム711が備えられており、当該ピアサアーム711の一端部にピアサ7が保持されている。ピアサアーム711は、その他端部に取り付けられた回転軸712を中心に回転可能に保持されている。したがって、回転軸712を中心にピアサアーム711を回転させれば、ピアサ7を円弧状の軌道713に沿って水平方向に移動させることができる(
図1参照)。また、ピアサアーム711は、回転軸712に沿って鉛直方向にも移動させることができる。
【0033】
ピアサ7を試料容器2内に挿入する際には、ピアサアーム711を回転させることにより、ピアサ7を試料容器2の上方に水平移動させた後(
図2A参照)、ピアサアーム711を鉛直下方に移動させることにより、ピアサ7を先端から試料容器2内に挿入させる(
図2B参照)。このようなピアサ7の移動は、モータ及びギアなどのピアサ駆動機構(図示せず)を駆動させることにより行われる。
【0034】
プローブ保持機構81には、水平方向に延びるプローブアーム811が備えられており、当該プローブアーム811の一端部にプローブ8が保持されている。プローブアーム811は、その他端部に取り付けられた回転軸812を中心に回転可能に保持されている。したがって、回転軸812を中心にプローブアーム811を回転させれば、プローブ8を円弧状の軌道813に沿って水平方向に移動させることができる(
図1参照)。また、プローブアーム811は、回転軸812に沿って鉛直方向にも移動させることができる。
【0035】
プローブ8を試料容器2内に挿入する際には、プローブアーム811を回転させることにより、プローブ8を試料容器2に挿入されたピアサ7の上方に水平移動させた後(
図2C参照)、プローブアーム811を鉛直下方に移動させることにより、プローブ8を先端からピアサ7内に挿入させる(
図2D参照)。このようなプローブ8の移動は、モータ及びギアなどのプローブ駆動機構(図示せず)を駆動させることにより行われる。
【0036】
試料の分注動作(サンプリング)を行う際には、上記のようにして試料容器2内にプローブを挿入させ、当該プローブ8で試料を吸引することにより試料吸引動作を行った後、プローブアーム811を鉛直上方に移動させることにより、試料容器2内からプローブ8を退避させる。そして、プローブアーム811を回転させることにより、軌道813上の分注口814の上方にプローブ8を水平移動させ、再びプローブアーム811を鉛直下方に移動させる。これにより、分注口814にプローブ8が挿入され、この状態で予め吸引されている試料を吐出することにより、分注口814に試料を分注することができる。
【0037】
試料吸引動作時には、例えばプローブ8内に希釈液などの試薬を吸引した上で、当該プローブ8を試料容器2内に挿入して試料を吸引する場合がある。このような場合には、試料を吸引する前に、プローブアーム811を回転させて、試薬保持部815に保持されている試薬の上方にプローブ8を水平移動させた後、プローブアーム811を鉛直下方に移動させる。これにより、試薬中にプローブ8が浸漬され、プローブ8内に試薬を吸引することができる。
【0038】
その後、プローブアーム811を鉛直上方に移動させることにより、試薬中からプローブ8を退避させる。そして、プローブアーム811を回転させることにより、プローブ8を試料容器2の上方に水平移動させた後、プローブアーム811を鉛直下方に移動させることにより、ピアサ7を介して試料容器2内にプローブ8を挿入させる(
図2D参照)。この状態で試料容器2内の試料を吸引し、上述のような分注動作を行うことにより、試料及び試薬の混合液を分注口814に分注することができる。
【0039】
プローブ8は、試料を吸引する度に試料容器2内(ピアサ7内)から抜かれ、分注後に洗浄液で洗浄された後、次の試料の吸引動作が行われる。同一の試料容器2から複数回にわたって試料を吸引する場合には、同一の試料容器2内にプローブ8が複数回挿入されることとなる。一方、ピアサ7は、同一の試料容器2から複数回にわたって試料が吸引される間、試料容器2に挿入された状態のまま維持され、当該試料容器2からの試料の吸引が終了した時点で試料容器2内から抜かれて、洗浄液で洗浄される。
【0040】
図3は、サンプリング装置1の電気的構成の一例を示したブロック図である。本実施形態に係るサンプリング装置1には、例えばCPU(Central Processing Unit)などにより構成される制御部9が備えられている。また、サンプリング装置1には、RAM(Random Access Memory)又はハードディスクなどにより構成される記憶部20や、液晶表示器などにより構成される表示部30が備えられている。
【0041】
制御部9は、CPUがプログラムを実行することにより、ピアサ移動処理部10、プローブ移動処理部11、サンプリング処理部12、検出値取得処理部13、電圧検出処理部14、検出値比較処理部15、検出値補正処理部16、液面検知処理部17、異常検知処理部18及びプローブ位置補正処理部19などとして機能する。
【0042】
ピアサ移動処理部10は、ピアサ保持機構71を動作させることにより、ピアサ7を移動させる処理を行う。具体的には、ピアサアーム711を回転させてピアサ7を水平移動させる処理や、ピアサアーム711を鉛直方向に移動させてピアサ7を試料容器2内に挿入、又は、試料容器2内から退避させる処理などが行われる。
【0043】
プローブ移動処理部11は、プローブ保持機構81を動作させることにより、プローブ8を移動させる処理を行う。具体的には、プローブアーム811を回転させてプローブ8を水平移動させる処理や、プローブアーム811を鉛直方向に移動させてプローブ8を試料容器2内に挿入、又は、試料容器2内から退避させる処理などが行われる。
【0044】
このプローブ移動処理部11の処理により、ピアサ7に対するプローブ8の相対位置が変化する。本実施形態では、プローブ8が、ピアサ7内に挿入されていない第1相対位置(
図2C参照)と、ピアサ7内に挿入されて当該ピアサ7から先端が突出した第2相対位置(
図2D参照)との間で移動可能となっている。
【0045】
サンプリング処理部12は、ピアサ移動処理部10でピアサ7を移動させるとともに、プローブ移動処理部11でプローブ8を移動させることにより、試料吸引動作を行う。すなわち、サンプリング処理部12は、
図2A〜
図2Dに例示されるような態様で試料容器2内にピアサ7及びプローブ8を挿入させ、プローブ8の先端から試料容器2内の試料を吸引させる。
【0046】
本実施形態に係るサンプリング装置1は、静電容量式の液面検知機能を備えている。具体的には、プローブ8が外筒及び内筒(いずれも図示せず)を備えており、当該プローブ8の内筒が試料中に浸漬されたときに、内筒と当該内筒の外側を覆う外筒との間の静電容量が変化するような構成となっている。これにより、第1相対位置(
図2C参照)から第2相対位置(
図2D参照)へとプローブ8が移動する過程で、外筒と内筒との間の静電容量が変化するため、その際の電圧変化を検出することにより試料容器2内の試料の液面を検知することができる。
【0047】
プローブ8に生じる電圧変化は、例えばプローブ保持機構81のプローブアーム811に設けられた基板(図示せず)からの信号に基づいて、電圧検出処理部14により検出することができる。当該電圧検出処理部14は、プローブ移動処理部11によるプローブ8の移動時に、リアルタイムでプローブ8に生じる電圧変化を検出する。液面検知処理部17は、電圧検出処理部14の検出値に基づいて、上述のような態様で試料容器2内の試料の液面を検知する。
【0048】
検出値取得処理部13は、試料吸引動作時よりも前に、電圧検出処理部14の検出値を取得する処理を行う。具体的には、検出値取得処理部13は、試料容器2がラック搬送路6上に搬送されていない状態で、
図2Cと同様の位置(第1相対位置)にピアサ7及びプローブ8を移動させた後、
図2Dと同様の位置(第2相対位置)までプローブ8を鉛直方向に移動させる。このとき、第1相対位置及び第2相対位置の間における複数(m+1)の相対位置で、電圧検出処理部14の検出値V
n(n=0,1,2,・・・,m)が取得される。
【0049】
すなわち、
図2Cにおいて試料容器2がない状態の第1相対位置と、
図2Dにおいて試料容器2がない状態の第2相対位置との間で、プローブ8がピアサ7内に挿入される過程で、その途中の複数の位置で電圧検出処理部14の検出値V
nが取得される。取得された検出値V
nは、その検出値V
nが取得されたときのピアサ7とプローブ8との相対位置に関する情報(例えばプローブ8の下降距離)に対応付けて記憶部20に記憶される。
【0050】
ただし、ピアサ7とプローブ8との相対位置に対応する検出値V
nを取得できるような構成であれば、上記のように
図2C及び
図2Dと同様の位置において検出値V
nを取得するような構成に限らず、別の位置で検出値V
nを取得するような構成であってもよい。すなわち、検出値取得処理部13は、試料を吸引する位置とは異なる位置でプローブ移動処理部11によりプローブ8を移動させ、プローブ8がピアサ7内に挿入されていない第1相対位置と、プローブ8がピアサ7内に挿入されて当該ピアサ7から先端が突出した第2相対位置との間における複数の相対位置で、電圧検出処理部14の検出値V
nを取得する処理を行うような構成であってもよい。
【0051】
本実施形態では、試料吸引動作を行う際に、上記のようにして予め取得されている複数の相対位置における検出値V
nを用いて、液面検知処理部17が試料容器2内の試料の液面を検知するようになっている。具体的には、試料吸引動作に伴うプローブ8の移動時に、前記複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値と、検出値取得処理部13により取得されている検出値V
nとに基づいて、試料容器2内の試料の液面が検知される。
【0052】
このように、本実施形態では、試料吸引動作時にプローブ8が移動される第1相対位置及び第2相対位置の間における複数の相対位置で、試料吸引動作時よりも前に電圧検出処理部14の検出値V
nを取得することができる。このようにして取得された電圧検出処理部14の検出値V
nは、その時点におけるプローブ8とピアサ7との位置関係や、プローブ8の経時変化といった誤差要因が反映された値である。したがって、試料吸引動作に伴うプローブ8の移動時に、前記複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値及び検出値取得処理部13により取得されている検出値V
nに基づいて、試料容器2内の試料の液面を検知することにより、誤差要因を排除して、試料容器2内の試料の液面をより良好に検知することができる。
【0053】
上記のような検出値取得処理部13による処理は、例えばサンプリング装置1の起動時に行われる。サンプリング装置1の起動時に取得された電圧検出処理部14の検出値V
nをそのまま用いて、試料吸引動作時に試料容器2内の試料の液面を検知することも可能であるが、本実施形態では、さらに良好に液面を検知するために、試料吸引動作時に検出値比較処理部15及び検出値補正処理部16による処理が行われた上で、試料容器2内の試料の液面が検知されるようになっている。
【0054】
検出値比較処理部15は、試料吸引動作時に、前記複数の相対位置のうち少なくとも1つの相対位置で電圧検出処理部14の検出値を取得し、当該相対位置において検出値取得処理部13により取得されている検出値と比較する。本実施形態では、例えば
図2Cのようにプローブ8がピアサ7内に挿入されていない第1相対位置を基準相対位置として、当該基準相対位置で電圧検出処理部14の検出値V
new(0)が取得される。そして、取得された検出値V
new(0)が、当該基準相対位置において検出値取得処理部13により予め取得されている検出値V
0と比較されることにより、その差分ΔV(=V
new(0)−V
0)が算出される。
【0055】
検出値補正処理部16は、検出値比較処理部15による比較結果に基づいて、検出値取得処理部13により取得されている検出値V
nを補正する。具体的には、検出値取得処理部13により取得されている複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値V
nに対して、それぞれ上記差分ΔVを加算する処理が行われることにより、補正された検出値V
new(n)が得られる。
【0056】
図4は、検出値補正処理部16による処理について説明するための図である。検出値取得処理部13により予め取得されている複数の相対位置における検出値V
n(n=0,1,2,・・・,m)が、
図4に実線で示すような値であったとする。
【0057】
この場合、試料吸引動作時には、基準相対位置において電圧検出処理部14の検出値V
new(0)が取得され、その検出値V
new(0)と、当該基準相対位置において検出値取得処理部13により予め取得されている検出値V
0との差分ΔVが算出される。そして、予め取得されている複数の相対位置における検出値V
n(n=1,2,・・・,m)に対して、それぞれ上記差分ΔVを加算する処理が行われることにより、
図4に破線で示すように、補正された検出値V
new(n)が得られる。
【0058】
液面検知処理部17は、試料吸引動作中に、前記複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値及び検出値補正処理部16により補正された検出値V
new(n)に基づいて、試料容器2内の試料の液面を検知する。具体的には、前記複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値及び検出値補正処理部16により補正された検出値V
new(n)の差分を、第1閾値Aと比較することにより、試料容器2内の試料の液面を検知する。
【0059】
すなわち、この例では、電圧検出処理部14の検出値が、
図4に二点鎖線で示すような値V
A(n)以上となった場合に、プローブ8の先端が試料の液面に到達したと検知される。ここで、V
A(n)は、検出値補正処理部16により補正された複数の相対位置における検出値V
new(n)に、それぞれ第1閾値Aを加算した値である。
【0060】
このように、本実施形態では、試料吸引動作時よりも前に検出値取得処理部13により取得されている電圧検出処理部14の検出値V
nを、試料吸引動作時に補正した上で、その補正された検出値V
new(n)を用いて試料容器2内の試料の液面を検知することができる。これにより、実際の試料吸引動作時における誤差要因を排除して、試料容器2内の試料の液面をさらに良好に検知することができる。
【0061】
試料吸引動作時には、上述の通り、プローブ8内に希釈液などの試薬を吸引した上で、当該プローブ8を試料容器2内に挿入して試料を吸引する場合がある。このような場合には、試薬の吸引に伴いプローブ8における静電容量が変化するため、この状態で電圧検出処理部14の検出値V
new(0)を取得し、検出値取得処理部13により予め取得されている電圧検出処理部14の検出値V
nを補正することにより、誤差要因を効果的に排除することができる。
【0062】
特に、本実施形態では、複数の相対位置ごとに補正された検出値V
new(n)をベース値として、各ベース値に対する電圧検出処理部14の検出値の差分を第1閾値Aと比較することにより、試料容器2内の試料の液面を検知することができる。すなわち、一定のベース値に対する電圧検出処理部の検出値の差分を閾値と比較するような構成ではないため、プローブ8がピアサ7内を通過する際の静電容量の変化が液面検知に悪影響を与えるのを防止することができる。
【0063】
また、一定のベース値に対する電圧検出処理部の検出値の差分を閾値と比較するような構成とは異なり、第1閾値Aを大きく設定しなくても液面の誤検知を防止することができる。これにより、液面の検知精度を向上し、プローブ8を試料容器2内の適切な位置で停止させることができる。
【0064】
再び
図3を参照すると、異常検知処理部18は、検出値取得処理部13により取得される複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値V
nを、第2閾値Bと比較することにより、異常状態(故障状態を含む。)を検知する。すなわち、サンプリング装置1の起動時に複数の相対位置において取得される電圧検出処理部14の検出値V
nが第2閾値Bと比較され、当該第2閾値B以上である場合には、異常状態が生じていると判断される。異常状態が検知された場合には、その旨が表示部30に表示されることにより、作業者に報知される。
【0065】
このように、本実施形態では、試料吸引動作時よりも前に検出値取得処理部13により取得される電圧検出処理部14の検出値V
nを、第2閾値Bと比較することにより、試料の吸引開始前に予め異常状態を検知することができる。これにより、プローブがピアサ7に接触することによる検出値V
nの上昇や、ピアサ7内に付着している水や汚れなどにプローブ8が接触することによる検出値V
nの上昇など、各種異常状態を事前に検知して対応することができるため、当該異常状態が分析に悪影響を与えるのを防止することができる。
【0066】
プローブ位置補正処理部19は、検出値取得処理部13により取得される複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値V
nに基づいて、試料吸引動作時のプローブ8の位置を補正する。例えば、サンプリング装置1の起動時に複数の相対位置において取得される電圧検出処理部14の検出値V
nを、所定の基準値と比較することにより、プローブ8の位置のずれ量を算出することができる。当該ずれ量に応じてプローブ8を移動させることにより、プローブ8の位置を補正することができる。
【0067】
このように、本実施形態では、試料吸引動作時よりも前に検出値取得処理部13により取得される電圧検出処理部14の検出値V
nを用いて、試料吸引動作時のプローブ8の位置を適切な位置に補正することができる。このとき、複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値V
nに基づいて、試料吸引動作時のプローブ8の位置をより適切な位置に補正することができるため、試料容器2内の試料の液面をさらに良好に検知することができる。
【0068】
ただし、上記のような構成に限らず、例えばプローブ8の水平方向の位置をずらし、各位置において、検出値取得処理部13が電圧検出処理部14の検出値V
nを取得することにより、複数の相対位置における電圧検出処理部14の検出値V
nを複数回取得するような構成であってもよい。この場合、取得された検出値V
n同士を比較することにより、プローブ8の最適な位置を判定し、その位置にプローブ8を移動させることにより、プローブ8の位置を補正することができる。
【0069】
図5は、サンプリング装置1の起動時における制御部9による処理の一例を示したフローチャートである。電源が投入されることによりサンプリング装置1が起動された場合には(ステップS101でYes)、まず、ピアサ7が水平方向及び鉛直方向に移動されることにより(ステップS102)、
図2Bに示すような状態(試料容器2はない状態)となる。その後、プローブ8が水平方向に移動されることにより(ステップS103)、
図2Cに示すような第1相対位置(試料容器2はない状態)までプローブ8が移動する。
【0070】
この状態から、プローブ8の鉛直下方への移動が開始され(ステップS104)、その移動中に電圧検出処理部14の検出値V
nが取得される。具体的には、プローブ8が予め定められた複数の取得位置に到達したときに、電圧検出処理部14の検出値V
nが取得される。すなわち、いずれかの取得位置にプローブ8が到達したときに(ステップS105でYes)、電圧検出処理部14の検出値V
nを取得する(ステップS106)という処理が、プローブ8の移動中に行われ、
図2Dに示すような第2相対位置(試料容器2はない状態)にプローブ8が移動するまでに検出値V
nが複数回取得される。なお、上記複数の取得位置は、上記複数の相対位置に対応している。
【0071】
各取得位置で取得された検出値V
nが、所定の第2閾値B以上である場合には(ステップS107でYes)、異常検知処理部18により異常状態が検知され(ステップS108)、その旨が表示部30に表示される。本実施形態では、異常状態が検知された場合でも、そのまま検出値V
nを取得する処理が続行されるような構成となっているが、異常状態が検知された時点で、検出値V
nを取得する処理が中止されるような構成であってもよい。
【0072】
全ての取得位置において電圧検出処理部14の検出値V
nが取得された場合には(ステップS109でYes)、それらの取得された検出値V
nに基づいて、プローブ位置補正処理部19によりプローブ8の位置が補正される(ステップS110)。プローブ8の位置補正は、試料吸引動作時のプローブ8の位置を補正するような構成であれば、このタイミングで行われるような構成に限らず、例えば試料吸引動作の直前など、別のタイミングで行われるような構成であってもよい。
【0073】
ただし、試料容器2がない状態ではなく、試料容器2がある状態で上記のような処理を行うことも可能である。このように、実際のサンプリング時と同様に試料容器2がある状態で電圧検出処理部14の検出値V
nが取得されるような構成とすれば、試料容器2の有無が検出値V
nに与える影響を除外することができる。
【0074】
図6は、サンプリングを開始する際における制御部9による処理の一例を示したフローチャートである。サンプリングが開始された場合には(ステップS201でYes)、まず、ピアサ7が水平方向及び鉛直方向に移動されることにより(ステップS202)、
図2Bに示すような状態となる。このピアサ7の移動以降の動作は、試料容器2内の試料を吸引するための試料吸引動作である。
【0075】
次に、プローブ8が水平方向に移動されることにより(ステップS203)、
図2Cに示すような第1相対位置までプローブ8が移動する。この第1相対位置を基準相対位置として、当該基準相対位置で電圧検出処理部14の検出値V
new(0)が取得される(ステップS204)。そして、取得された検出値V
new(0)が、当該基準相対位置において検出値取得処理部13により予め取得されている検出値V
0と比較され(ステップS205)、その比較結果に基づいて、検出値取得処理部13により取得されている検出値V
nが補正される(ステップS206)。
【0076】
その後、プローブ8の鉛直下方への移動が開始され(ステップS207)、その移動中に複数の相対位置で取得される電圧検出処理部14の検出値と、各相対位置で検出値取得処理部13により予め取得されている検出値V
nとの差分が、第1閾値Aと比較される(ステップS208)。そして、上記差分が第1閾値A以上となったときに(ステップS208でYes)、試料容器2内の試料の液面が検知される(ステップS209)。試料の液面検知後は、当該試料を吸引する処理などが引き続き行われる。
【0077】
以上の実施形態では、上記第1相対位置を基準相対位置として、当該基準相対位置で取得した電圧検出処理部14の検出値V
new(0)を用いて、検出値取得処理部13により取得されている検出値V
nを補正するような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、上記基準相対位置を複数設けることにより、各基準相対位置で取得した電圧検出処理部14の検出値を用いて、検出値取得処理部13により取得されている検出値V
nを複数回補正するような構成であってもよい。
【0078】
また、以上の実施形態では、検出値取得処理部13による処理がサンプリング装置1の起動時に行われるような構成について説明したが、このような構成に限らず、サンプリング装置1の起動後の任意のタイミングで、検出値取得処理部13による処理が行われるような構成であってもよい。