(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図14を参照して説明する。各図には、適宜、乗物用シート前方に符号F、乗物用シート後方に符号B、乗物用シート上方に符号UP、乗物用シート下方に符号DWを付す。
本実施例では、車両(乗物の一例)の室内に、フロア面FS(略平坦な床面)と、インストルメントパネル(図示省略)と、乗物用シート2が設けられる(
図1を参照)。そしてインストルメントパネルが車両前部側に配置するとともに、その下部側にペダルPDが配設される。
【0015】
そして乗物用シート2は、シート構成部材(シートクッション4,シートバック6,ヘッドレスト8)と、後述の連結機構を有する。シートバック6は、シートクッション4後部に起倒可能に連結する。またシートバック6(起立状態)の上部にヘッドレスト8が連結する。
そして本実施例では、シート構成部材(4,6,8)を、連結機構(詳細後述)を介してフロア面FS上に配置しつつ、第一状態と第二状態の間で変位させる(
図1及び
図2を参照)。
図1の第一状態の乗物用シート2では、シート構成部材が乗物後部に移動してインストルメントパネルから離間する(大柄の乗員に適した配置位置となる)。また
図2の第二状態の乗物用シート2では、シート構成部材が、第一状態よりも乗物前部に移動してインストルメントパネルに近接する(小柄の乗員に適した配置位置となる)。
そして上述のシート構成では、乗員の体格差に合わせて、シートクッション4の座面角度(詳細後述)を各状態に応じて変更できることが望ましい。
そこで本実施例では、シートクッション4の座面角度を、水平状態では平均的な乗員の体格に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態とする。さらに後述の構成にて、乗物用シート2の状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することとした。以下、各構成について詳述する。
【0016】
<実施例1>
本実施例の連結機構は、第一リンクアーム11と、第二リンクアーム12と、複数のブラケットBR1〜BR4を有する(
図1及び
図2を参照)。
第一リンクアーム11と第二リンクアーム12は、ともにI字状(側面視)の平板部材であり、シートクッション4とフロア面FSの間に配置可能である。また複数のブラケットBR1〜BR4は、各リンクアーム端部を回転自在に取付け可能な部材(典型的に平板材)である。
本実施例では、シートクッション4の裏面前端で第一ブラケットBR1を下方に突設するとともに、シートクッション4の裏面後端で第二ブラケットBR2を下方に突設する。
また第三ブラケットBR3を、フロア面FSで上方に突設しつつ、第一状態時のシートクッション4の前部(第一ブラケットBR1)に対面状に配置する。また第四ブラケットBR4を、フロア面FSで上方に突設しつつ、第二状態時のシートクッション4の後部(第二ブラケットBR2)に対面状に配置する。
【0017】
本実施例では、シート構成部材を、インストルメントパネル(ペダルPD)の後側に配置しつつ、シートクッション4の前部を、第一リンクアーム11を介してフロア面FSに連結する。
このとき第一リンクアーム11上端を、回転軸A1を介して第一ブラケットBR1に回転自在に取付けるとともに、第一リンクアーム11下端を、回転軸A3を介して第三ブラケットBR3に回転自在に取付ける。そして本実施例では、第一状態時の第一リンクアーム11を、フロア面FSから略垂直に起立させる(起立姿勢とする)。そして第一リンクアーム11を、第一状態から第二状態に変位するに従って次第に前傾姿勢(上方に向かうにつれて次第に前方に傾斜する姿勢)となる構成とする。
【0018】
またシートクッション4の後部を、第二リンクアーム12を介してフロア面FSに連結する。
このとき第二リンクアーム12上端を、回転軸A2を介して第二ブラケットBR2に回転自在に取付けるとともに、第二リンクアーム12下端を、回転軸A4を介して第四ブラケットBR4に回転自在に取付ける。そして本実施例では、第一状態時の第二リンクアーム12を、フロア面FSに対して後傾姿勢(上方に向かうにつれて次第に後方に傾斜する姿勢)とする。そして第二リンクアーム12を、第一状態から第二状態に変位するに従って次第に起立姿勢となる構成とする。
【0019】
[第一状態時の乗物用シート]
図1を参照して、連結機構にて、シート構成部材を第一状態としつつ、インストルメントバネルから離間して(大柄の乗員に適した位置に)配置させる。
このとき本実施例では、第一リンクアーム11を起立姿勢とするとともに第二リンクアーム12を後傾姿勢とする。この状態でロック機構(図示省略)にて両リンクアームの姿勢を維持することにより、シート構成部材を、インストルメントバネルから離間して配置させる(第一状態とする)ことができる。
さらに本実施例では、連結機構にて、シートクッション4の座面角度を大柄の乗員に適した角度とする。
本実施例では、第一リンクアーム11の起立に伴ってシートクッション4前部が上方に移動するとともに、第二リンクアーム12の後傾に伴ってシートクッション4後部が下方(相対的に下方)に移動する。このため両リンクアームの姿勢変位にて、シートクッション4の座面を、大柄の乗員に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態(水平状態時よりも傾斜角度が大きい状態)とすることができる。さらにシートクッション4の傾斜に伴ってシートバック6がやや後傾することにより、大柄の乗員を、その上半身をやや後傾させた状態で着座させることができる。
【0020】
そこで大柄の乗員を模した第一模型CM1(SAE規格におけるAM95に相当)を用意して、乗物用シート2に自然な状態で着座させる。
このとき第一模型CM1が、上半身(肩部SP)をやや後傾させつつ、臀部(ヒップポイントHP)を、シートクッション4後部に大きく沈み込ませた状態で着座する。そして第一模型CM1の脚部が略逆V字状に屈曲して、太腿部が、ヒップポイントHP(シート基準点BP)から前方且つ上方に傾斜する。また太腿部から先の部分では、膝部GPで前方且つ下方に屈曲しつつ足首部APがペダルに延びる。このとき太腿部が、シートクッション4の座面に沿って配置しつつ、適度にシートクッション4に沈み込むこととなる(大柄な乗員とシートの関係性を好適に維持できる)。
さらに上半身(肩部SP)をやや後傾させつつ、臀部を、シートクッション4後部に大きく沈み込ませた状態で着座することで、目部EP(目線)の位置が必要以上に高くなることを阻止できる。
【0021】
ここで第一状態における公知技術(座面角度が不変の構成)の問題点を補足説明する。
公知技術では、シートクッション4の座面角度を平均的な乗員の体格に合わせて設定する(例えば本実施例における第一状態と第二状態の中間の傾斜角度に設定する)。
そして公知技術の構成では、第一状態時のシートクッション4の座面角度が、本実施例よりも緩やかとなるとともに、シートバック6がやや起立した状態となる。
このため公知技術の構成では、第一状態において、太腿部と座面の離間を極力避ける必要上、第一模型cm1(実施例との区別のため小文字で示す)のヒップポイントhpがやや後方に配置する。この状態で第一模型cm1が、その上半身(肩部sp)をやや起立させつつシートクッション4に着座するため、目部ep(目線)の位置が必要以上に高くなる。
【0022】
[第二状態時の乗物用シート]
つぎに連結機構にて、シート構成部材を第二状態としつつインストルメントバネルに近接させて(小柄の乗員に適した位置に)配置させる(
図2を参照)。
このとき本実施例では、第一リンクアーム11を前傾姿勢とするとともに第二リンクアーム12を起立姿勢とする。この状態でロック機構(図示省略)にて両リンクアームの姿勢を維持することにより、シート構成部材を、インストルメントバネルに近接して配置させる(第二状態とする)ことができる。
さらに本実施例では、連結機構にて、シートクッション4の座面角度を小柄の乗員に適した角度とする。
本実施例では、第一リンクアーム11の前傾に伴ってシートクッション4前部が下方に移動するとともに、第二リンクアーム12の起立に伴ってシートクッション4後部が上方(相対的に上方)に移動する。このため両リンクアームの姿勢変位にて、シートクッション4の座面を、小柄の乗員に合わせて、第一状態時よりも水平な状態に近づけることができる。さらにシートクッション4の水平化に伴ってシートバック6が第一状態に比して起立することにより、小柄の乗員を、その上半身を起立させた状態で着座させることができる。
【0023】
そこで小柄の乗員を模した第二模型CM2(SAE規格におけるJF05に相当)を用意して、乗物用シート2に自然な状態で着座させる。
このとき第二模型CM2が、上半身(肩部SP)を起立させつつ、臀部(ヒップポイントHP)を、シートクッション4後部に軽く沈み込ませた状態で着座する。そして太腿部が、ヒップポイントHP(シート基準点BPのやや下方に配置)から前方且つ上方に(第一模型CM1に比して緩やかに)傾斜する。このとき太腿部が、比較的水平なシートクッション4の座面に沿って配置しつつ、適度にシートクッション4に沈み込むこととなる(小柄な乗員とシートの関係性を好適に維持できる)。
さらに上半身(肩部SP)を起立させつつ、臀部を、シートクッション4後部に軽く沈み込ませた状態で着座することで、目部EP(目線)の位置が必要以上に低くなることを阻止できる。
【0024】
ここで第二状態における公知技術(座面角度が不変の構成)の問題点を補足説明する。
公知技術では、上述のとおりシートクッション4の座面角度を平均的な乗員の体格に合わせて設定することで、第二状態時の座面角度が本実施例よりも急になる。
そして公知技術の構成では、太腿部と座面との過度の干渉を避けるべく、第二状態において、第二模型cm2をやや浅く着座させる(ヒップポイントhpがやや前方に配置する)。このため第二模型cm2が、その上半身(肩部sp)をやや後傾させつつ、シートクッション4に着座するため、目部ep(目線)の位置が必要以上に低くなる。
【0025】
以上説明したとおり本実施例では、第一状態時のシートクッション4の座面を、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態として、比較的大柄の乗員に合わせることができる。また第二状態時のシートクッション4の座面を、第一状態時よりも水平な状態として、比較的小柄の乗員に合わせることができる。
このため本実施例によれば、乗物用シート2の状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0026】
<実施例2>
本実施例の乗物用シート2Aは、実施例1の乗物用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施例の連結機構は、シートクッション4のアーム部20と、ブラケットBR5を有する(
図3及び
図4を参照)。
アーム部20は、平板状の部位(側面視で略I字状)であり、シートクッション4(シートフレーム4F)の裏面略中央からフロア面FS側に延びる。またブラケットBR5は、フロア面FSに突設される平板部材であり、アーム部20の端部を回転自在に取付け可能である。
本実施例では、シートクッション4の前部側を後部側に比してやや上方に配置した状態としつつ、シート構成部材を第一状態時の位置に配置する。このときアーム部20を、下方から上方に向かうにつれて次第に後方に傾斜した状態(後傾姿勢)としつつ、その下端を、回転軸A5を介してブラケットBR5に回転自在に取付ける。そしてアーム部20を、第一状態から第二状態に変位するに従って次第に起立姿勢となる構成とする。
【0027】
そして
図3を参照して、ロック機構(図示省略)にてアーム部20を後傾姿勢で維持することにより、シート構成部材を第一状態とする。このときシートクッション4の座面が、大柄の乗員(CM1)に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態とされる。
つぎに
図4を参照して、シート構成部材を、連結機構にて第一状態から第二状態に変位させる。このとき本実施例では、アーム部20を、回転軸A5を中心として回転させて(振り子状に回転させて)起立姿勢とする。そしてロック機構(図示省略)にてアーム部20を起立姿勢で維持することにより、シート構成部材を第二状態に変位させることができる。そして本実施例では、アーム部20の起立に伴って、シートクッション4前部が下方に傾く(移動する)とともに、シートクッション4後部が上方に傾く(移動する)。このためシートクッション4の座面を、小柄の乗員(CM2)に合わせて、第一状態時よりも水平な状態に近づけることができる。
このため本実施例では、アーム部20の振り子動作(比較的シンプルな構成)にて、乗物用シート2Aの状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0028】
<実施例3>
本実施例の乗物用シート2Bは、実施例1の乗物用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施例の連結機構は、アッパレール31と、ロアレール32と、台座34を備える(
図5を参照)。ロアレール32は、上部側が円弧形状(側面視で凸曲面状)をなす平板部材であり、略中央の頂点を境として、前部側が次第に下方に向けて湾曲するとともに、後部側が次第に下方に向けて湾曲する。またアッパレール31は、ロアレール32に摺動自在に組付け可能な平板部材であり、下部側が、ロアレール32に倣った円弧形状(側面視で凹曲面状)をなす。
本実施例では、ロアレール32を、台座34を介してフロア面FSに固定するとともに、アッパレール31を、シートクッション4(シートフレーム4F)の裏面(略中央)に固定してロアレール32に対面可能に配置する。この状態でアッパレール31を、ロアレール32の後部側に摺動可能に連結するとともに、ロック機構(図示省略)にてアッパレール31とロアレール32の相対移動を規制する。
【0029】
本実施例では、第一状態時のアッパレール31をロアレール32の頂点からやや後部寄りの位置に配置しつつ、シートクッション4前部を後部に比して上方に配置する(
図5(a)を参照)。こうしてシートクッション4の座面を、大柄の乗員に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態とすることができる。
つぎにシート構成部材を、連結機構にて、第一状態から第二状態に変位させる(
図5(b)を参照)。このとき本実施例では、アッパレール31を、シート構成部材とともにロアレール32前部側に移動させて、ロック機構にて両レールの相対移動を規制することにより、シート構成部材を第二状態に変位させる。
そして本実施例では、シート構成部材が、ロアレール32(湾曲形状)に沿って移動するに従って、シートクッション4前部が下方に傾く(移動する)とともに、シートクッション4後部側が上方に傾く(移動する)。このためシートクッション4の座面を、小柄の乗員に合わせて、第一状態時よりも水平な状態に近づけることができる。
このため本実施例においても、乗物用シート2Bの状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0030】
<実施例4>
本実施例の乗物用シート2Cは、実施例1の乗物用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施例では、乗物用シート2Cを、段差状のフロア面(乗物前部の第一フロア面FS1と、一段高い乗物後部の第二フロア面FS2)に配設する(
図6を参照)。
そして本実施例の連結機構は、リンクアーム41と、第六ブラケットBR6及び第七ブラケットBR7(実施例1のブラケットと同一構成)と、連結部42と、スライド機構(44,46)を備える。
リンクアーム41は、比較的長尺なI字状(側面視)の平板部材である。また第六ブラケットBR6は、シートクッション4の前部裏面に突設される。また第七ブラケットBR7は、第一フロア面FS1に突設されて、第一状態時の第六ブラケットBR6に対面状に配置する。
また連結部42は、略矩形の平板部位(比較的短尺)であり、シートクッション4の裏面(やや後部寄り)から下方に突設される。そしてスライド機構は、第二フロア面FS2の前部側に固定されるロアレール46(直線状の平板材)と、ロアレール46上を摺動可能なスライダ44(短尺な平板材)を有する。
【0031】
本実施例では、第一状態時のシート構成部材が、第一フロア面FS1と第二フロア面FS2に跨って配置する。そこでシートクッション4の前部両側を、リンクアーム41を介して第一フロア面FS1に連結する。このときリンクアーム41上端を、回転軸A6を介して第六ブラケットBR6に回転自在に取付けるとともに、リンクアーム41下端を、回転軸A7を介して第七ブラケットBR7に回転自在に取付ける。そして第一状態時のリンクアーム41を起立姿勢として、第二状態に変位するに従って次第に前傾姿勢となる構成とする。
またシートクッション4の後部側を、スライド機構を介して第二フロア面FS2に連結する。このときシートクッション4後部側(連結部42)を、回転軸A8を介してスライダ44に回転可能に取付けることで、ロアレール46上をスライド移動可能とする。
【0032】
本実施例では、第一状態時において、リンクアーム41を起立させつつ、連結部42(スライダ44)を、ロアレール46後部側に配置する(
図6(a)を参照)。この状態でロック機構(図示省略)にてロアレール46とスライダ44の相対移動を規制するなどして、シート構成部材を第一状態で維持できる。
さらに本実施例では、第一状態時において、リンクアーム41が起立姿勢となる(スライド機構と連結部よりも高くなる)ことで、シートクッション4前部側が後部側に比して上方に配置する構成とする。こうしてシートクッション4の座面を、大柄の乗員に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態とすることができる。
【0033】
またシート構成部材を、連結機構にて、第一状態から第二状態に変位させる(
図6(b)を参照)。このとき本実施例では、リンクアーム41を前傾させつつ、連結部42(スライダ44)をロアレール46前部に移動させる。そしてロアレール46とスライダ44の相対移動を規制するなどして、シート構成部材を第二状態で維持できる。
そして本実施例では、リンクアーム41の前傾とともに、シートクッション4が、その後部側(回転軸A8)を回転中心として回転することで、シートクッション4前部が後部に比して下方に傾く(移動する)。こうしてシートクッション4の座面を、第一状態時よりも水平な状態とすることができる。
このため本実施例においても、乗物用シート2Cの状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0034】
<実施例5>
本実施例の乗物用シート2Dは、実施例1の乗物用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
そして本実施例の連結機構は、複数の連結部(第一連結部51,第二連結部52)と、支持部材54と、スライド機構56,58を備える(
図7を参照)。
第一連結部51(平板部位)は、シートクッション4の裏面(前部寄り)から下方に突設されており、第二連結部52(平板部位)は、シートクッション4の後部裏面から下方に突設される。またスライド機構(実施例4と同一構成)は、ロアレール58と、スライダ56を有する。
そして支持部材54は、フロア面FS前部側で上方に突出する平板状の部材(シート上下に比較的長尺)であり、その上部側に長孔54hが設けられる。長孔54hは、支持部材54の貫通孔(シート幅方向に貫通する孔部)であり、後部から前部に向かうにつれて次第に下方に傾斜する。
【0035】
本実施例では、シートクッション4の前部側を、支持部材54を介してフロア面FSに連結する。このとき第一連結部51に、シート幅方向に突出する軸部A9を設けて、この軸部A9を、支持部材54の長孔54hに摺動可能に挿入する。
またシートクッション4の後部側を、スライド機構を介してフロア面FSに連結する。このときシートクッション4後部側(第二連結部52)を、回転軸A10を介してスライダ56に回転可能に取付けることで、ロアレール58上をスライド移動可能とする。
【0036】
本実施例では、第一状態時において、第一連結部51を長孔54h後部に配置しつつ、第二連結部52をロアレール58後部側に配置する(
図7(a)を参照)。この状態でロック機構(図示省略)にてロアレール58とスライダ56の相対移動を規制するなどして、シート構成部材を第一状態で維持できる。
そして本実施例では、第一状態時において、第一連結部51を長孔54h後部(最上部)に配置させることで、シートクッション4前部側が後部側に比して上方に配置する構成とする。こうしてシートクッション4の座面を、大柄の乗員に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態とすることができる。
【0037】
またシート構成部材を、連結機構にて、第一状態から第二状態に変位させる(
図7(b)を参照)。このとき本実施例では、第一連結部51を長孔54h前部に移動させつつ、第二連結部52をロアレール58前部側に配置する。この状態でロック機構(図示省略)にてロアレール58とスライダ56の相対移動を規制するなどして、シート構成部材を第二状態で維持できる。
そして本実施例では、第二状態において、第一連結部51が長孔54h前部(最下部)に移動する。この第一連結部51の移動とともに、シートクッション4が、その後部側(回転軸A10)を回転中心として回転することで、シートクッション4前部が後部に比して下方に傾く(移動する)。こうしてシートクッション4の座面を、第一状態時よりも水平な状態とすることができる。
このため本実施例においても、乗物用シート2Dの状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0038】
<実施例6>
本実施例の乗物用シート2Eは、実施例1の乗物用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
そして本実施例の連結機構は、複数の連結部(第一連結部61,第二連結部62)と、支持部材64と、リンクアーム63と、第八ブラケットBR8を備える(
図8を参照)。
第一連結部61(平板部位)は、シートクッション4の裏面(前部寄り)から下方に突設されており、第二連結部62(平板部位)は、シートクッション4の後部裏面から下方に突設される。また支持部材64は、フロア面FS前部側で上方に突出する平板状の部材(シート上下に比較的長尺)であり、その前部側に長孔64hが設けられる。長孔64hは、支持部材64の貫通孔(シート幅方向に貫通する孔部)であり、後部から前部に向かうにつれて次第に下方に傾斜する。
そしてリンクアーム63は、比較的短尺なI字状(側面視)の平板部材である。また第八ブラケットBR8は、フロア面FS後部で上方に突出する部材であり、第二状態時の第二連結部62に対面状に配置する。
【0039】
本実施例では、シートクッション4の前部側を、支持部材64を介してフロア面FSに連結する。このとき第一連結部61に、シート幅方向に突出する軸部A11を設けて、この軸部A11を、支持部材64の長孔64hに摺動可能に挿入する。
またシートクッション4の後部側を、リンクアーム63を介してフロア面FSに連結する。このときリンクアーム63上端を、回転軸A12を介して第二連結部62に回転自在に取付けるとともに、リンクアーム63下端を、回転軸A13を介して第八ブラケットBR8に回転自在に取付ける。そして第一状態時のリンクアーム63を後傾姿勢として、第二状態に変位するに従って次第に起立姿勢となる構成とする。
【0040】
そして本実施例では、第一状態時において、第一連結部61を長孔64h後部に配置しつつ、リンクアーム63を後傾姿勢とする(
図8(a)を参照)。この状態でロック機構(図示省略)にてリンクアーム63を後傾姿勢で維持するなどして、シート構成部材を第一状態で維持できる。
そして第一状態時において、第一連結部61を長孔64h後部(最上部)に配置させるとともに、リンクアーム63を後傾させることで、シートクッション4前部側が後部側に比して上方に配置する構成とする。こうしてシートクッション4の座面を、大柄の乗員に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態とすることができる。
【0041】
またシート構成部材を、連結機構にて、第一状態から第二状態に変位させる(
図8(b)を参照)。このとき本実施例では、第一連結部61を長孔64h前部に配置しつつ、リンクアーム63を起立姿勢とする。この状態でロック機構にてリンクアーム63を起立姿勢で維持するなどして、シート構成部材を第二状態で維持できる。
そして本実施例では、第二状態において、第一連結部61を長孔64h前部(最下部)に配置させることで、シートクッション4前部が下方に移動する。またリンクアーム63を起立姿勢とすることで、シートクッション4後部が上方に移動する。こうしてシートクッション4の座面を、第一状態時よりも水平な状態とすることができる。
このため本実施例においても、乗物用シート2Eの状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0042】
<実施例7>
本実施例の乗物用シート2Fは、実施例1の乗物用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施例の連結機構は、シートクッション4のアーム部71と、支持部材72を有する(
図9を参照)。
アーム部71は、平板状の部位(側面視で矩形状)であり、シートクッション4の裏面略中央からフロア面FS側に延びる。そしてアーム部71の下端は半円状をなしており、その周縁が凹凸状である(第一噛合部71gが形成される)。また支持部材72は、略矩形状(側面視)の平板部材であり、その上面部が凹凸状とされて、第一噛合部71gに噛合い可能な第二噛合部72gが形成される。
【0043】
本実施例では、シートクッション4の前部側を後部側に比してやや上方に配置した状態としつつ、シート構成部材を第一状態時の位置に配置する。また同状態において支持部材72を、アーム部71に対面させつつフロア面FSに固定する。
そしてアーム部71を、下方から上方に向かうにつれて次第に後方に傾斜した状態としつつ、その下端(第一噛合部71g)を、支持部材72上面(第二噛合部72g)に噛合せる。そしてアーム部71を、第一状態から第二状態に変位するに従って次第に前傾姿勢(上方に向かうにつれて次第に前方に傾斜する姿勢)となる構成とする。
【0044】
そして
図9(a)を参照して、ロック機構(図示省略)にてアーム部71を後傾姿勢で維持することにより、シート構成部材を第一状態とする。このときシートクッション4の座面が、大柄の乗員に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態とされる。
つぎに
図9(b)を参照して、シート構成部材を、連結機構にて第一状態から第二状態に変位させる。このとき本実施例では、アーム部71を、第一噛合部71gと第二噛合部72gを噛合せつつ振り子状に回転させて前傾姿勢とする。そしてロック機構(図示省略)にてアーム部71を前傾姿勢で維持することにより、シート構成部材を第二状態に変位させることができる。そして本実施例では、アーム部71の前傾に伴って、シートクッション4前部が下方に傾く(移動する)とともに、シートクッション4後部が上方に傾く(移動する)。このためシートクッション4の座面を、小柄の乗員に合わせて、第一状態時よりも水平な状態に近づけることができる。
このため本実施例においても、アーム部71の振り子動作(比較的シンプルな構成)にて、乗物用シート2Fの状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0045】
<実施例8>
本実施例の乗物用シート2Gは、実施例1の乗物用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施例の連結機構は、スライド機構82,83と、連結部81と、支持部材84とを備える(
図10を参照)。
スライド機構82,83は、アッパレール82と、ロアレール83を有し、アッパレール82はシートクッション4の裏面に取り付けられ、ロアレール83は、フロア面FSに連結された第9ブラケットBR9に対して回動軸A14を中心に前後方向に回動可能に取付けられている。支持部材84は、フロア面FS後部側で上方に突出する平板状の部材(シート上下に比較的長尺)であり、その上部から下部にかけて長孔84hが設けられる。長孔84hは、支持部材84の貫通孔(シート幅方向に貫通する孔部)であり、前部から後部に向かうにつれて次第に下方に傾斜する。
【0046】
本実施例では、シートクッション4の前部側を、スライド機構82,83を介してフロア面FSに連結する。このとき、ロアレール83は、第9ブラケットBR9に対して回動軸A14を中心に前後方向に回動可能に取り付けられているので、アッパレール82はシートクッション4とともにロアレール83上をスライドするとともに、ロアレール83とともに前後方向に回動可能とされている。
また、シートクッション4の後部側を、支持部材84を介してフロア面FSに連結する。このとき連結部81に、シート幅方向に突出する軸部A15を設けて、この軸部A15を、支持部材84の長孔84hに摺動可能に挿入する。
【0047】
本実施例では、第一状態において、連結部81の軸部A15を長孔84h後部に配置しつつ、アッパレール82前端部をロアレール83前端部近傍に配置する(
図10(a)を参照)。この状態でロック機構(図示省略)にてロアレール83とアッパレール82の相対移動を規制するなどして、シート構成部材を第一状態で維持できる。
そして、本実施例では、第一状態時において、連結部81の軸部A15を長孔84h後部(最下部)に配置させることで、シートクッション4前部側が後部側に比して上方に配置する構成とする。こうして、シートクッション4の座面を、大柄の乗員に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態することができる。
【0048】
また、シート構成部材を、連結機構にて、第一状態から第二状態に変位させる(
図10(b)を参照)。このとき、本実施例では、連結部81を長孔84h前部に移動させつつ、アッパレール82前端部をロアレール83前端部から前方に離れた位置に配置する。この状態でロック機構(図示省略)にてロアレール83とアッパレール82の相対移動を規制するなどして、シート構成部材を第二状態で維持できる。
そして、本実施例では、第二状態時において、連結部81の軸部A15が長孔84h前部(最上部)に移動する。この連結部81の軸部A15の移動に伴って、シートクッション4の後部側が上昇し、前部側が前方に移動するとともに回動軸A14を中心にロアレール83といっしょに前後方向に回転することで、シートクッション4前部が後部に比して下方に傾く(移動する)。こうして、シートクッション4の座面を、第一状態よりも水平な状態とすることができる。
このため、本実施例においても、乗物用シート2Gの状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0049】
<実施例9>
本実施例の乗物用シート2Hは、実施例1の乗物用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施例の連結機構は、複数の連結部(第一連結部91、第二連結部92)と、複数のリンク部材(第一リンクアーム93、第二リンクアーム94、第三リンクアーム97)と、スライド機構(ロアレール95、アッパレール96)と、ブラケットBR10,BR11とを備える(
図11を参照)。
第一連結部91(平板部位)は、シートクッション4の裏面(前部寄り)から下方に突設されており、第二連結部92(平板部位)は、シートクッション4の後部裏面から下方に突設される。スライド機構のロアレール95は前後方向に延びて、その前端部をブラケットBR10によってフロア面FSに対して支持され、その後端部をブラケットBR11によってフロア面FSに対して支持されている。スライド機構のアッパレール96は、前後方向に延びて、ロアレール95に対し前後方向に摺動可能に組み付けられている。
第一リンクアーム93は、I字状(側面視)の平板部材であり、その上端を回転軸A16を介して第一連結部91に回転自在に取付けるとともに、その下端を回転軸A18を介してアッパレール96の前端部に回転自在に取り付けられている。第三リンクアーム97は、略弧状(側面視)の平板部材であり、その中央部には弧状の長孔97hが設けられている。長孔97hは、第三リンクアーム97の貫通孔(シート幅方向に貫通する孔部)であり、第三リンクアーム97の弧状外形に沿った形状(側面視)とされている。第三リンクアーム97の後端部は、回転軸A20を介してアッパレール96の後端部に回転自在に取り付けられており、長孔97hにはロアレール95に設けられたシート幅方向に突出する軸部A21が通されている。第三リンクアーム97の前寄り上部には、回転軸A19がシート幅方向に突出して設けられている。第二リンクアーム94は、I字状(側面視)の平板部材であり、その上端を回転軸A17を介して第二連結部92に回転自在に取付けるとともに、その下端を回転軸A19を介して第三リンクアーム97に回転自在に取り付けられている。
【0050】
本実施例では、第一状態において、第一リンクアーム93は、後傾姿勢とされるとともに、軸部A21が第三リンクアーム97の長孔97h前部に配置されて第三リンクアーム97が最下部に配置されて、第二リンクアーム94は、第一リンクアーム93と同程度の後傾姿勢とされる(
図11(a)を参照)。すなわち、第一リンクアーム93と第二リンクアーム94は、略平行の状態となる。この状態で、ロック機構(図示省略)にて第一リンクアーム93を後傾姿勢で維持するなどして、シート構成部材を第一状態で維持できる。
そして、本実施例では、第一状態時において、第三リンクアーム97を最下部に配置させることで、第二リンクアーム94を第一リンクアーム93と同程度に後傾させ、シートクッション4前部側が後部側に比して上方に配置する構成とする。こうして、シートクッション4の座面を、大柄の乗員に合わせて、シート後方からシート前方に向かうにつれて次第に上方に傾斜した状態することができる。なお、第一リンクアーム93は、必要に応じて前傾姿勢とすることもできる。この場合、シートクッション4の裏面やアッパレール96への取付け位置は適宜変更される。
【0051】
また、シート構成部材を、連結機構にて、第一状態から第二状態に変位させる(
図11(b)を参照)。すなわち、ロアレール95に対してアッパレール96を前方向に移動させる。このとき、本実施例では、第三リンクアーム97の長孔97h中を軸部A21が摺動して長孔97hの後部に至る。実際には軸部A21がロアレール95に対して固定されているので、第三リンクアーム97が回転軸A20を中心に上方向に回転して最上部に配置させられる。このとき、第二リンクアーム94は後傾姿勢を起こすべく(後傾の度合いを少なくする方向に)回転し、第一リンクアーム93はその後傾姿勢を第一状態と同程度に保つ。この状態で、ロック機構(図示省略)にて第一リンクアーム93を後傾姿勢で維持するなどして、シート構成部材を第二状態で維持できる。
そして、本実施例では、第二状態時において、第三リンクアーム97を最上部に配置させることで、第二リンクアーム94を第一リンクアーム93より起立姿勢に近い後傾姿勢とさせ、シートクッション4前部側が後部側に比して下方に傾く(移動する)。こうして、シートクッション4の座面を、第一状態よりも水平な状態とすることができる。
このため、本実施例においても、乗物用シート2Hの状態変位に合わせて、シートクッション4の座面角度を性能よく変更することができる。
【0052】
<実施例10>
本実施例の乗物用シート2Jは、実施例8の乗物用シート2Gの連結機構80L(スライド機構82,83、連結部81、支持部材84)に加えて、リフタ機構100L(第一リフタリンク部材103、第二リフタリンク部材104)を備えている(
図12を参照)。実施例8の乗物用シート2Gと共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0053】
リフタ機構100Lについて説明する。
図12及び
図14に示すように、シートクッション4にはその骨格をなすクッションフレーム4aが備えられている。クッションフレーム4aは、略矩形板状のプレス部品である2本のサイドフレーム4a1をその長手方向が前後方向に延びその短手方向が上下方向に延びるように配置して、その前後端部においてフロントパイプ(図示省略)とリアパイプ(図示省略)で連結し、平面視で矩形枠状とされている。第一連結部101(平板部位)は、両サイドフレーム4a1の前部寄り下面から下方に突設され、第二連結部102(平板部位)は、両サイドフレーム4a1の後部下面から下方に突設されている。
第一リフタリンク部材103は、I字状(側面視)の平板部材であり、その上端が回転軸A22を介して第一連結部101に回転自在に取付けられるとともに、その下端が回転軸A24を介してアッパレール82の前端部に回転自在に取り付けられている。第二リフタリンク部材104は、I字状(側面視)の平板部材であり、その上端が回転軸A23を介して第二連結部102に回転自在に取付けられるとともに、その下端が回転軸A25を介してアッパレール82の後端部に回転自在に取り付けられている。左右の第二リフタリンク部材104は、回転軸A23に対して固定結合されているとともに、回転軸A23には略扇形板状のセクタギヤ105の要部分が固定結合されている。セクタギヤ105の円弧部分には歯が設けられ、サイドフレーム4a1に対して回動可能に支持されるピニオンギヤ106と噛み合っている。ピニオンギヤ106を回転させるとセクタギヤ105が回転し、回転軸A23の回転を介して第二リフタリンク部材104が回転する。なお、本実施例においては、第一リフタリンク部材103は、第二リフタリンク部材104より長めに設定されている。これは、シートクッション4の前端部の上下動範囲を後端部の上下動範囲より大きくするためのものである。しかし、必要に応じて第一リフタリンク部材103と第二リフタリンク部材104の長さは自由に調整してもよい。
【0054】
図14に示すように、ピニオンギヤ106は出力軸107連結され、出力軸107はサイドフレーム4a1に対して回動可能に支持されている。出力軸107の、サイドフレーム4a1に対するシートの幅方向外側には円筒状のブレーキ付き駆動ユニット108を介してリフタ機構操作レバー109が取り付けられている。リフタ機構操作レバー109は、
図13に示すように、側面視でクランク状に折れ曲がった短冊状の板部分109aの外周に立ち壁109bをシート内側方向に向けて配設した部材である。板部分109aの長手方向の一端には、ブレーキ付き駆動ユニット108の外周に嵌め合わされる円環状の嵌合部109cが、出力軸107と同軸に、立ち壁109bと同じ方向に立設されている。なお、この立ち壁109bは、後述する連結機構ロック開閉レバー111の作動部分は切りかかれて連結機構ロック開閉レバー111の作動に支障がないようにされている。板部分109aの長手方向の他端部は短手方向に狭められていてグリップ部109dが形成されている。
図14において、実際には、サイドフレーム4a1とリフタ機構操作レバー109との間にはシートカバー、シールド等が介在するが省略している。
【0055】
ブレーキ付き駆動ユニット108は、リフタ機構操作レバー109が、グリップ部109dの引き上げ操作もしくは押し下げ操作がされる前の通常時には、リフタ機構操作レバー109をニュートラル位置に保持して、出力軸107にブレーキ力をかけて出力軸107が回転しないように保持する。そして、ブレーキ付き駆動ユニット108は、リフタ機構操作レバー109が上記どちらかの方向に回転操作されてブレーキ付き駆動ユニット108にこの回転力が入力されると、この回転力を増大させて軽い力で出力軸107に大きな回転出力を与えられるようにトルクを付与する。また、ブレーキ付き駆動ユニット108は、リフタ機構操作レバー109を操作した位置から元のニュートラル位置に戻すときには、かかる回転操作によって出力軸107が回転操作されないように操作を空転させるように機能するものとなっている。ここで、サイドフレーム4a1、第一リフタリンク部材103、アッパレール82、第二リフタリンク部材104は4節のリンク機構を構成する。この4節のリンク機構は、第二リフタリンク部材104をアッパレール82に対して回転させると第一リフタリンク部材103もその動きに従動し、アッパレール82とサイドフレーム4a1の間隔を変化させる。これによって、リフタ機構操作レバー109のグリップ部109dの引き上げ操作もしくは押し下げ操作を行うことで、出力軸107、ピニオンギヤ106、セクタギヤ105、第二リフタリンク部材104の回転を通じてシートクッション4をアッパレール82に対して上下動させることができる。アッパレール82に対するシートクッション4の上下位置が適当になった状態でリフタ機構操作レバー109をニュートラル位置に保持することによりその位置でシートクッション4の動きを止めることができる。
【0056】
また、
図13に示すように、リフタ機構操作レバー109の中央の折れ曲がり部には、連結機構80Lのロック開閉を行うための連結機構ロック開閉レバー111をリフタ機構操作レバー109に対して回動可能に支持するレバー回転軸110が立ち壁109b同じ方向に立設されている。連結機構ロック開閉レバー111は、側面視でL字状の板状部材で、その折れ曲がり部においてレバー回転軸110に対して回動可能に支持され、その長手の腕部分の端部にはグリップ部111aが設けられている。グリップ部111aは樹脂製のカバー部材が取り付けられており握ったときに手に当たる面積が少なすぎて痛くないようにされている。連結機構ロック開閉レバー111の短手の腕部分の端部には連結機構80Lのロック機構と連結されたケーブル112の端部が係止されている。また、リフタ機構操作レバー109の、連結機構ロック開閉レバー111の短手の腕部分の端部近傍の立ち壁109bから板部分109aの短手方向の中央に向かって延設立ち壁部109eが設けられ、ケーブル112の被覆113の端部が係止されている。被覆113の他端部は連結機構80Lのロック機構近傍に係止されている。
図13において、連結機構ロック開閉レバー111の短手の腕部分の前側とリフタ機構操作レバー109の立ち壁109bの後側との間には、伸張方向に付勢するバネ部材114が設けられている。これによって、通常時は連結機構ロック開閉レバー111は、リフタ機構操作レバー109のグリップ部109dから離れる方向(
図13において反時計回り方向)に付勢され、立ち壁109bの切りかかれた部分の端部109fに当接して回転が止められた状態となっている。この状態において、連結機構80Lはロック状態にある。そして、リフタ機構操作レバー109のグリップ部109dと連結機構ロック開閉レバー111のグリップ部111aを同時に握って近づけると、ケーブル112が引かれて連結機構80Lのロック機構が解除状態になる。連結機構80Lのロック機構が解除されたとき、
図12(c)に示すように、ロアレール83がフロア面FSと平行になる位置(軸部A15が支持部材84の長孔84hの中間部に来る位置)に来るよう付勢手段(図示省略)が設けられている。これは、連結機構80Lをフリーにした状態でシートクッション4を前後させながら、リフタ機構100Lを操作して最適着座位置を調整するのに便利であるためである。ただし、この連結機構80Lの初期位置は第一状態と第二状態との間で適宜選択が可能である。
すなわち、本実施例の乗物用シート2Jは、実施例8の乗物用シート2Gの連結機構の上に、サイドフレーム4a1、第一リフタリンク部材103、アッパレール82、第二リフタリンク部材104からなる4節のリンク機構が載っている構成とされている。
【0057】
本実施例における、乗物用シート2Jの状態変位に合わせたシートクッション4の座面上下位置と角度の調整方法について説明する。乗員が着座した状態で、リフタ機構操作レバー109のグリップ部109dと連結機構ロック開閉レバー111のグリップ部111aを同時に握る。すると、連結機構80Lは
図12(c)に示す初期位置に移動する。この状態で、乗員は尻を前後させながらロアレール83に対するアッパレール82の前後位置を調整するとともに、リフタ機構100Lを操作して前後、上下、座面角度の最適な位置を探る。具体的には、連結機構80Lを動かしながら、リフタ機構操作レバー109に対して連結機構ロック開閉レバー111を移動させた状態(連結機構80Lのロック機構フリー状態)でリフタ機構操作レバー109を操作する。最適な位置が見出されたら連結機構ロック開閉レバー111のグリップ部111aから手を離すとともに、リフタ機構操作レバー109をニュートラル位置に保持する。すると、連結機構80Lとリフタ機構100Lが、それぞれロック状態とされシートクッション4の位置が固定される。これによって、連結機構80Lのみの操作では得られないシートクッション4の前後位置、上下位置、座面角度の組み合わせが得られ、より調整の自由度が拡大する。
【0058】
なお、かかる連結機構80Lとリフタ機構100Lの組み合わせは、実施例1の乗物用シート2、実施例2の乗物用シート2A、実施例3の乗物用シート2B、実施例4の乗物用シート2C、実施例5の乗物用シート2D、実施例6の乗物用シート2E、実施例7の乗物用シート2F、実施例9の乗物用シート2Hにおいても実施例8の乗物用シート2Gと同様に適用が可能である。すなわち、上記実施例1〜7および9の各連結機構にリフタ機構100Lを組み合わせることで、本実施例の乗物用シート2Jと同様な作用効果を達成できる。このとき、各連結機構とシートクッション4との間にリフタ機構100Lを配設するに当たって、実施例8の乗物用シート2Gにおけるアッパレール82に相当するフレーム部材が必要な場合はかかる部材を補って配設するものとする。
【0059】
本実施形態の乗物用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態のうち実施例1〜9では、第一状態時において、シートクッション全体を水平状態よりも傾斜させて配置する(前部を上方側に向けるとともに後部を下方側に向ける)例を説明した。これとは異なり第一状態において、シートクッションを水平に配置しつつ、座面だけを、大柄の乗員に合わせた傾斜角度に設定することもできる。
(2)また本実施形態のうち実施例1〜9では、インストルメントパネルの後方に乗物用シートを配置する例を説明したが、乗物用シートは、他の乗物用シート等の各種他部材の後方に配置できる。また本実施例では、連結機構を、フロア面に取付ける例を説明したが、車室壁体等の各種室内構造体に取付けることができ、各ブラケットの構成も適宜変更可能である。
(3)また本実施形態のうち実施例1〜9では、連結機構は、第1状態と第2状態の間のいずれの位置においてもロック機構によるロックが可能とされている。
(4)本実施形態のうち、実施例10においては、リフタ機構操作レバー109のグリップ部109dと連結機構ロック開閉レバー111のグリップ部111aを同時に握って近づけたとき、連結機構80Lのロック機構が解除される構成とした。しかし、これに限らず、通常はロック解除状態で、リフタ機構操作レバー109のグリップ部109dと連結機構ロック開閉レバー111のグリップ部111aを同時に握って近づけたとき、連結機構80Lのロックがされる構成としてもよい。ただし、後者の場合は、リフタ機構操作レバー109のグリップ部109dと連結機構ロック開閉レバー111のグリップ部111aを近づけた状態で保持する機構が必要となる。さらに、リフタ機構の操作時には連結機構ロック開閉レバー111のグリップ部111aを握らずリフタ機構操作レバー109のみを操作することになる。
(5)本実施形態のうち、実施例10においては、リフタ機構として4節のリンク機構を用いたが、これに限らず、シートクッション4の前後をそれぞれ独立に上下調節できる機構を採用してもよい。ただし、その場合はリフタ機構操作レバー109と連結機構ロック開閉レバー111をそのまま採用できない場合が生ずる。
(6)本実施形態の構成は、車両や航空機や電車などの各種乗物用シート全般に適用できる。なお本実施例では、乗物用シートの構成を例示したが、乗物用シートの構成は適宜変更できる(例えばヘッドレストを省略することもできる)。