特許第6237474号(P6237474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237474エレベータのかご移動制御装置およびかご移動制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237474
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】エレベータのかご移動制御装置およびかご移動制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20171120BHJP
   B66B 1/30 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B66B5/02 M
   B66B1/30 H
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-111822(P2014-111822)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-224127(P2015-224127A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠幸
(72)【発明者】
【氏名】宮本 恭昌
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−131085(JP,A)
【文献】 特開昭53−34245(JP,A)
【文献】 特許第5266799(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00− 5/28
B66B 1/00− 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ駆動用のモータと、該モータの回転軸に固設されたシーブと、該シーブに巻き掛けられ、一端にカウンタウェイトが固定され他端にエレベータのかごが固定された主ロープと、前記モータの回転軸の回転を停止させるブレーキと、前記モータの回転速度および回転方向を検出するエンコーダと、
速度指令値および速度検出値の偏差を比例積分演算する速度制御アンプの演算結果によりトルク指令値を求め、該トルク指令値に応じて、前記モータを零速度領域を含めて可変速制御する速度制御系を有した制御部を備え、入力電源又は非常電源の電力を変換して前記モータに供給するインバータと、
前記インバータとの間でインバータの運転に関するシーケンス信号の通信を行うコントローラと、を備えたエレベータのかご移動制御装置であって、
前記コントローラは、
前記入力電源の停電時に、前記インバータの入力を非常電源に切り替える制御を行う機能と、前記ブレーキの開閉状態を制御する機能と、前記インバータへ多段速指令シーケンス信号を送信する機能とを備え、
前記インバータの制御部は、
前記入力電源の停電時に、前記ブレーキの開状態にて、前記速度制御系を零速度制御する機能と、
前記零速度制御実施時の前記速度制御系のトルク指令値を演算し、該演算したトルク指令値の極性に基づいて、前記エンコーダにより検出されたモータの回転方向のうち、前記カウンタウェイトとエレベータのかごの重量バランスで決まるモータの軽負荷方向を検出する軽負荷方向検出部と、
前記軽負荷方向検出部により軽負荷方向が検出された後に、前記ブレーキの開状態にて、前記検出された軽負荷方向のモータの回転方向および前記コントローラからの多段速指令シーケンス信号に従って速度指令値を演算し、演算した速度指令値を前記速度制御系の速度指令値として速度制御系を制御する機能と、を備えたことを特徴とするエレベータのかご移動制御装置。
【請求項2】
エレベータ駆動用のモータと、該モータの回転軸に固設されたシーブと、該シーブに巻き掛けられ、一端にカウンタウェイトが固定され他端にエレベータのかごが固定された主ロープと、前記モータの回転軸の回転を停止させるブレーキと、前記モータの回転速度および回転方向を検出するエンコーダと、
速度指令値および速度検出値の偏差を比例積分演算する速度制御アンプの演算結果によりトルク指令値を求め、該トルク指令値に応じて、前記モータを零速度領域を含めて可変速制御する速度制御系を有した制御部を備え、入力電源又は非常電源の電力を変換して前記モータに供給するインバータと、
前記インバータとの間でインバータの運転に関するシーケンス信号の通信を行うコントローラと、を備えた装置におけるエレベータのかご移動制御方法であって、
前記コントローラが、前記入力電源の停電時に、前記インバータの入力を非常電源に切り替えるステップと、
前記コントローラが、前記インバータへ零速の多段速指令シーケンス信号を送信するステップと、
前記コントローラが、前記ブレーキを開状態に制御するステップと、
前記インバータの制御部が、前記入力電源の停電時に、前記ブレーキの開状態にて、前記速度制御系を零速度制御するステップと、
前記インバータの制御部の軽負荷方向検出部が、前記零速度制御実施時の前記速度制御系のトルク指令値を演算し、該演算したトルク指令値の極性に基づいて、前記エンコーダにより検出されたモータの回転方向のうち、前記カウンタウェイトとエレベータのかごの重量バランスで決まるモータの軽負荷方向を検出する軽負荷方向検出ステップと、
前記コントローラが、前記軽負荷方向検出ステップによって前記モータの軽負荷方向が検出されたときに、インバータへ送信する多段速指令シーケンス信号を零速以外に設定するステップと、
前記インバータの制御部が、前記軽負荷方向検出ステップにより軽負荷方向が検出された後に、前記ブレーキの開状態にて、前記検出された軽負荷方向のモータの回転方向および前記コントローラからの多段速指令シーケンス信号に従って速度指令値を演算し、演算した速度指令値を前記速度制御系の速度指令値として速度制御系を制御するステップと、を備えたことを特徴とするエレベータのかご移動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ用のインバータにおいて、通常の入力電源の停電時に無停電電源装置(以下、UPSと称する)やバッテリなどの非常電源を用いてモータを制御し、効率的な電力消費でかごを近接階へ移動させるエレベータのかご制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ用のインバータは、停電発生時に階間での閉じ込めを防ぐため、UPSやバッテリなどの非常電源によるモータ駆動で近接階へ人が乗っているかごを移動させる機能が備わっている。
【0003】
本機能においては、トルクセンサや荷重センサによる検出で、かごの荷重から軽い負荷方向(軽負荷方向)を判定し、その方向への運転指令をコントローラから入力することで、軽負荷方向へかごを移動させてUPSやバッテリの電力消費を抑えている。この従来技術は例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0004】
従来の、インバータ、モータおよび荷重センサを用いるエレベータの構成例を図5に示す。図5において、50はエレベータ駆動用のモータであり、モータ50の回転軸50aにはシーブ51が固設されている。
【0005】
シーブ51には主ロープ52が巻き掛けられ、主ロープ52の一端にはカウンタウェイト53が固定され、他端にはエレベータのかご54が固定されている。かご54の下端部には荷重センサ55が設けられている。
【0006】
56は、モータ50の回転軸50aに取り付けられ、回転速度および回転方向を検出するエンコーダである。
【0007】
インバータ60にはエンコーダ56の回転速度、回転方向の各検出情報が取り込まれ、図示省略の入力電源又はUPSやバッテリなどの非常電源の電力を所定の電圧に変換し、モータ50のU相,V相,W相に印加してモータ50の回転を制御する。
【0008】
70はインバータ60との間でインバータの運転に関するシーケンス信号の通信を行うコントローラである。コントローラ70からインバータ60には、正転運転指令(UP(F RUN))、逆転運転指令(DOWN(R RUN))、多段速指令などが送信され、コントローラ70には、荷重センサ55からの荷重情報、インバータ60からの各種シーケンス出力などが入力される。
【0009】
また、エレベータ停止時にモータ50とシーブ51間の回転軸50aを機械的に停止させるブレーキが、例えば図6のように配設されている。図6は特許文献3に開示されている、二組の電磁ブレーキ(ブレーキ31,32)を備えたブレーキ装置の構成を示しており、巻上機21のシーブ23には主索25が巻き掛けられ、この主索25にかご26とつり合重り27が吊持されている。シーブ23は回転軸24を介して電動機22に直結され、回転軸24にはブレーキ車30が固着されている。
【0010】
かご26の停止時は、図示省略のブレーキ制御手段が開放されることによってブレーキコイル31b,32bは消勢されており、ブレーキシュー31a,32aはそれぞれ図示省略のばねによって押圧されてブレーキ車30に圧接し、回転軸24を静止させる。
【0011】
かご26を昇降させる場合は、図示省略のブレーキ制御手段が閉放されることによってブレーキコイル31b,32bが付勢され、プランジャ31c,32cを吸引し、ばねに抗してブレーキシュー31a,32aを後退させてブレーキ車30を開放し、電動機22を回転駆動させる。
【0012】
尚、本発明におけるモータの速度制御系は、例えば特許文献4に記載の速度制御系を利用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−82944号公報
【特許文献2】特開2013−147328号公報
【特許文献3】特開2001−278572号公報
【特許文献4】特許第5266799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
非常電源として用いられるUPSやバッテリの駆動では、かご移動のためのモータ駆動で電力を消費していく。UPSやバッテリに蓄えられている電力容量が、近接階への到達、停止までに消費する電力量以下の場合では、かごは途中で停止してしまい、再度階間で閉じ込められることになる。これを防ぐためには効率的な電力消費でのかご移動制御が求められる。
【0015】
その一環として、かごとおもりの荷重を計り、軽負荷方向へ移動することでモータの消費電力を抑える方法がある。
【0016】
一般的なシステムでは、かごやおもりに対する重さを例えば図5に示す荷重センサ55で測定して、それをコントローラ70へ送ることで、コントローラ70はインバータ60へ軽負荷方向への移動指令を出す。ただし、このシステムは以下の問題がある。
・センサ設置のコストがアップする。またセンサ設置用スペースを要する。
・コントローラの操作遅れ、コントローラの外乱ノイズによる正転運転指令(UP(F RUN))もしくは逆転運転指令(DOWN(R RUN))の誤送信、荷重センサ55からの検出値の外乱ノイズによる誤検出などが原因で、重負荷方向への移動となる場合があり、この場合UPSやバッテリの消費電力量が大きくなり、かごが途中停止し階間で閉じ込められるリスクが高まる。
【0017】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、停電発生時に荷重センサやトルクセンサを用いることなく軽負荷方向を判定し、その軽負荷方向の階にかごを移動させ、これによって停電発生時にUPSやバッテリの消費電力を抑制することができるエレベータのかご移動制御装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための請求項1に記載のエレベータのかご移動制御装置は、エレベータ駆動用のモータと、該モータの回転軸に固設されたシーブと、該シーブに巻き掛けられ、一端にカウンタウェイトが固定され他端にエレベータのかごが固定された主ロープと、前記モータの回転軸の回転を停止させるブレーキと、前記モータの回転速度および回転方向を検出するエンコーダと、速度指令値および速度検出値の偏差を比例積分演算する速度制御アンプの演算結果によりトルク指令値を求め、該トルク指令値に応じて、前記モータを零速度領域を含めて可変速制御する速度制御系を有した制御部を備え、入力電源又は非常電源の電力を変換して前記モータに供給するインバータと、前記インバータとの間でインバータの運転に関するシーケンス信号の通信を行うコントローラと、を備えたエレベータのかご移動制御装置であって、
前記コントローラは、
前記入力電源の停電時に、前記インバータの入力を非常電源に切り替える制御を行う機能と、前記ブレーキの開閉状態を制御する機能と、前記インバータへ多段速指令シーケンス信号を送信する機能とを備え、
前記インバータの制御部は、
前記入力電源の停電時に、前記ブレーキの開状態にて、前記速度制御系を零速度制御する機能と、前記零速度制御実施時の前記速度制御系のトルク指令値を演算し、該演算したトルク指令値の極性に基づいて、前記エンコーダにより検出されたモータの回転方向のうち、前記カウンタウェイトとエレベータのかごの重量バランスで決まるモータの軽負荷方向を検出する軽負荷方向検出部と、前記軽負荷方向検出部により軽負荷方向が検出された後に、前記ブレーキの開状態にて、前記検出された軽負荷方向のモータの回転方向および前記コントローラからの多段速指令シーケンス信号に従って速度指令値を演算し、演算した速度指令値を前記速度制御系の速度指令値として速度制御系を制御する機能と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
また、請求項2に記載のエレベータのかご移動制御方法は、エレベータ駆動用のモータと、該モータの回転軸に固設されたシーブと、該シーブに巻き掛けられ、一端にカウンタウェイトが固定され他端にエレベータのかごが固定された主ロープと、前記モータの回転軸の回転を停止させるブレーキと、前記モータの回転速度および回転方向を検出するエンコーダと、速度指令値および速度検出値の偏差を比例積分演算する速度制御アンプの演算結果によりトルク指令値を求め、該トルク指令値に応じて、前記モータを零速度領域を含めて可変速制御する速度制御系を有した制御部を備え、入力電源又は非常電源の電力を変換して前記モータに供給するインバータと、前記インバータとの間でインバータの運転に関するシーケンス信号の通信を行うコントローラと、を備えた装置におけるエレベータのかご移動制御方法であって、
前記コントローラが、前記入力電源の停電時に、前記インバータの入力を非常電源に切り替えるステップと、前記コントローラが、前記インバータへ零速の多段速指令シーケンス信号を送信するステップと、前記コントローラが、前記ブレーキを開状態に制御するステップと、
前記インバータの制御部が、前記入力電源の停電時に、前記ブレーキの開状態にて、前記速度制御系を零速度制御するステップと、
前記インバータの制御部の軽負荷方向検出部が、前記零速度制御実施時の前記速度制御系のトルク指令値を演算し、該演算したトルク指令値の極性に基づいて、前記エンコーダにより検出されたモータの回転方向のうち、前記カウンタウェイトとエレベータのかごの重量バランスで決まるモータの軽負荷方向を検出する軽負荷方向検出ステップと、
前記コントローラが、前記軽負荷方向検出ステップによって前記モータの軽負荷方向が検出されたときに、インバータへ送信する多段速指令シーケンス信号を零速以外に設定するステップと、
前記インバータの制御部が、前記軽負荷方向検出ステップにより軽負荷方向が検出された後に、前記ブレーキの開状態にて、前記検出された軽負荷方向のモータの回転方向および前記コントローラからの多段速指令シーケンス信号に従って速度指令値を演算し、演算した速度指令値を前記速度制御系の速度指令値として速度制御系を制御するステップと、を備えたことを特徴としている。
【0020】
上記構成において、前記速度制御系の零速度制御実施時は、前記カウンタウェイトとエレベータのかごの重量の関係が、例えばカウンタウェイト重量>かご重量の場合はカウンタウェイト側に回転する方向が軽負荷方向であり、カウンタウェイト重量<かご重量の場合はかご側に回転する方向が軽負荷方向である。前記零速度制御においては、前記軽負荷方向に回転させることなくかごの停止を保持させる負荷分トルクが生じる。このとき演算して求められた速度制御系のトルク指令値の極性は前記軽負荷方向と対応関係にある。したがって、荷重センサ、トルクセンサなどを用いることなく、前記トルク指令値の極性に基づいて容易に軽負荷方向を検出することができる。
【0021】
荷重センサやトルクセンサが不要であるため、センサ装置のコスト面および省スペース面において非常に有利となる。
【0022】
また、インバータ側で軽負荷方向を検出し、コントローラの移動方向指令に問わずインバータ側でエレベータかごの移動方向を制御しているため、コントローラの正転運転指令(UP(F RUN))もしくは逆転運転指令(DOWN(R RUN))の誤送信による重負荷方向への移動による消費電力増、およびかごが途中停止し階間で閉じ込められるリスクを防ぐことができる。
【0023】
また、荷重センサやトルクセンサが不要であるため、これらのセンサからの信号の誤検出による重負荷方向への移動による消費電力増、およびかごが途中停止し階間で閉じ込められるリスクを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、外部の荷重センサ、トルクセンサを用いることなく容易に軽負荷方向の検出が可能となるため、これらセンサ設置用のコストおよびスペースをなくすことができる。
【0025】
また、インバータ側で軽負荷方向を検出し、コントローラの移動方向指令に問わずインバータ側でエレベータかごの移動方向を制御しているため、コントローラからインバータ側への信号の誤送信による重負荷方向への移動による消費電力増、およびかごが途中停止し階間で閉じ込められるリスクを防ぐことができる。
【0026】
また、外部の荷重センサやトルクセンサが不要であるため、これらのセンサからの信号の誤検出による重負荷方向への移動による消費電力増、およびかごが途中停止し階間で閉じ込められるリスクを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態例におけるエレベータの全体構成図。
図2】本発明の実施形態例における入力電源、非常電源、インバータの接続構成を表し、(a)は構成図、(b)は(a)の各部の信号波形図。
図3】本発明の実施形態例における、インバータの制御部のモータ速度制御系の一例を示すブロック図。
図4】本発明の実施形態例における軽負荷方向検出動作のチャート図。
図5】従来のエレベータの全体構成図。
図6】エレベータに用いられるブレーキ構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。図1は本実施形態例のエレベータの全体構成を示し、図2は本実施形態例における入力電源、非常電源、インバータおよびモータの接続構成を示している。
【0029】
図1において、モータ50、回転軸50a、シーブ51、主ロープ52、カウンタウェイト53、かご54、エンコーダ56は図5と同一に構成されているが、本実施形態例においては図5の荷重センサ55は設けていない。
【0030】
インバータ80は、例えばスイッチング素子を3相ブリッジ接続した電力変換部と、例えば後述する、図3のモータの速度制御系(速度制御ブロック)およびその速度制御系のトルク指令値の極性に基づいてモータ50の軽負荷方向を検出する軽負荷方向検出部を有した制御部とを備えている。
【0031】
このインバータ80には、エンコーダ56の回転速度、回転方向の各検出情報(A,B)が取り込まれ、図2(a)の入力電源100又はUPSやバッテリなどの非常電源110の電力を所定の電圧に変換し、モータ50のU相,V相,W相に印加してモータ50の回転を制御する。
【0032】
90は、インバータ80との間でインバータ運転に関するシーケンス信号の通信を行うコントローラである。
【0033】
コントローラ90からインバータ80に送信されるシーケンス信号は、後述の図4の上段に示すような、通常の入力電源100と非常電源110の運転を切り替える指令(通常/UPS)、正転運転指令(UP(F RUN))、逆転運転指令(DOWN(R RUN))、零速、高速、低速、クリープ速度等の多段速指令を含んでいる。
【0034】
またインバータ80からコントローラ90に送信されるシーケンス信号は、後述の図4の下段に示すような、ブレーキ開指令、運転状態を示す信号、検出された軽負荷方向を知らせる信号、負荷方向検出状態を示す信号を含んでいる。
【0035】
また図1では図示省略しているが、例えば図6のブレーキ装置が、エレベータ停止時にモータ50とシーブ51間の回転軸50aを機械的に停止させるブレーキとして配設されている。
【0036】
図2(a)はインバータ80の入力が、電磁接触器MC1,MC2によって入力電源100側又は非常電源110側に切り替えられる接続構成を示している。
【0037】
図2(b)は図2(a)の各部の信号を表し、Vac1は入力電源100の相間電圧を示し、Vac2は非常電源110の出力電圧を示し、SW1は入力電源100の停電時にコントローラ90からの運転切り替え信号によってオン(閉)とされるスイッチ(SW1)の信号を示し、MC1は入力電源100の正常時にオン(閉)、停電時にオフ(開)される電磁接触器(MC1)の信号を示し、MC2は入力電源100の正常時にオフ(開)、停電時にオン(閉)される電磁接触器(MC2)の信号を示している。したがって、電磁接触器MC2がオン(閉)となっている期間が非常電源110での運転期間(UPS運転モード)に相当する。
【0038】
尚、非常電源110は単相UPS又はバッテリに限らず3相UPSを用いてもよい。
【0039】
次に、インバータ80の制御部が備えているモータの速度制御系(速度制御ブロック)を図3とともに説明する。図3は特許文献4の図1に開示されている速度制御ブロックである。
【0040】
図3において、モータ50(PMモータ)は、インバータ80の電力変換部80aの出力(周波数と電圧制御した出力)によって可変速駆動される。電力変換器80aの出力制御は、速度指令と、エンコーダ56、位相検出部8、速度検出部9により得たモータ速度検出信号との偏差を速度制御アンプ3によって比例積分(PI)演算を行い、この演算結果をトルクリミッタ4で制限し、このトルク指令に対応する電流指令に電流指令演算器5で変換し、この電流指令とモータ電流検出信号との偏差を電流制御アンプ6によって比例積分演算し、この演算結果で電力変換部80aの出力を制御する。
【0041】
モータ速度の検出は、エンコーダ56のパルス出力から、位相検出部8でモータのロータ回転位置を位相(位置)として検出し、この回転位置の時間変化から速度検出部9により速度を検出する。
【0042】
保持回路10は、零速度制御時と通常運転時での速度を保持スイッチで切り換え、モータの速度制御状態が通常運転速度領域にある場合は、モータのロータ位置検出信号をバッファ(Z-1)で1制御周期だけ保持し、零速度領域にある場合は零速度領域になる前の位置信号を保持し続ける。
【0043】
位置補償アンプ11は、モータのロータ位置検出信号と保持回路10の保持信号との偏差を固定のゲインで増幅した位置補償トルク信号を得、この位置補償トルク信号を速度制御アンプ3の出力になるトルク指令に加算する。通常運転時には、保持回路10のバッファ(Z-1)を更新することで、位置制御の出力トルクが変化しない。
【0044】
零速度制御中には、速度制御アンプ3の積分バッファ(Z-1)は、位置補償アンプ11が位置補償トルク信号を発生しているときはリセットされており、零速度から通常運転に移行するときに、移行前の位置補償トルク信号を積分バッファに加算して移行時のトルク急変を防止する。
【0045】
ローパスフィルタ13は、位置補償アンプ11の入力信号になるA点の位置偏差信号を入力とし、その平均化処理で位置偏差信号に含まれる振動成分を除去する。負荷トルク確立判定部14は、ローパスフィルタ13を通した位置偏差信号が安定したか否かを監視し、安定したときに負荷分トルクが確立したと判別し、保持回路10を通常運転側に切り替える。
【0046】
以上の制御により、零速度制御時の速度制御性能を向上させることができ、図5の荷重センサ55が無い場合でも、ブレーキ開放後に例えば100ms間で必要なトルクを出力することができ、かご54の位置の変動を抑制できる。
【0047】
本実施形態例では、インバータ80の制御部に設けられた軽負荷方向検出部が、図3の速度制御ブロック内で、零速度制御実施時のトルク指令値を演算し(図3のトルクリミッタ4の出力)、該演算したトルク指令値の極性に基づいて、前記エンコーダ56により検出されたモータの回転方向のうち、前記カウンタウェイト53とエレベータのかご54の重量バランスで決まるモータの軽負荷方向を検出するものである。
【0048】
次に、本実施形態例における軽負荷方向検出動作の流れを図4のチャート図とともに説明する。
【0049】
図4内の信号名:シーケンス入力は、図1のコントローラ90からインバータ80へ入力されるシーケンス信号である。図4内の信号名:シーケンス出力は、図1のインバータ80からコントローラ90へ出力されるシーケンス信号である。図4内の信号名:内部は、インバータ80の内部で処理を行う信号であり、正転指令、逆転指令、多段速指令、速度指令、トルク指令を含んでいる。
【0050】
<タイミング(1)>
図2の入力電源100に停電が発生する。図4のシーケンス入力:通常/UPSがONとなりUPS運転モードとなる。これにより、図2のMC1が開、MC2が閉となり、UPS(非常電源110)からインバータ80へ給電される(コントローラ90が行う、非常電源に切り替える制御)。またここでコントローラ90はモータ50の速度指令値=0とする。これにより、図4の内部:多段速指令は「零速」となる。
【0051】
<タイミング(2)>
コントローラ90より、正転運転指令か逆転運転指令いずれかがONとなる。
【0052】
<タイミング(3)>
インバータ80は前記タイミング(2)の指令を受け、内部の運転指令(正転指令又は逆転指令)がONとなり、速度指令値=0での運転開始となる。モータの速度制御では、図3の制御ブロックを用いる。またシーケンス出力:運転状態がONとなる。
【0053】
<タイミング(4)>
図4のシーケンス出力:ブレーキ開指令をONとして、ブレーキ開とする。すなわち、インバータ80からコントローラ90へブレーキ開とする信号を出力し、コントローラ90がブレーキを開く制御を行う。
【0054】
<期間(5)>
速度指令値=0で、一定時間の間、図4のシーケンス出力:ブレーキ開指令をONとして、ブレーキ開状態を保持する。この(5)の期間中に図3の制御ブロックによって演算されるトルク指令値を制御部内の図示省略のメモリなどに記録する。
【0055】
ここでトルク指令値の極性について図1を用いて説明する。
【0056】
かご54の重量>カウンタウェイト53の重量である場合、自重のみではかご54は下降方向へ移動する(図示逆転(CCW)方向へ回転する)。一方モータ50の速度指令値=0で制御をしているため、トルク指令値の極性はモータ50の正転(CW)方向となる。これによりモータ速度=0となり、かご54は停止する。
【0057】
かご54の重量<カウンタウェイト53の重量である場合では、自重のみではかご54は上昇方向へ移動する(図示正転(CW)方向へ回転する)。一方モータ50の速度指令値=0で制御をしているため、トルク指令値の極性はモータ50の逆転(CCW)方向となる。
【0058】
<タイミング(6)>
一定時間(期間(5))が経過したら、シーケンス出力:ブレーキ開指令をOFFとして、ブレーキ閉とする。すなわち、インバータ80からコントローラ90へブレーキ閉とする信号を出力し、コントローラ90がブレーキを閉じる制御を行う。
【0059】
<タイミング(7)>
前記期間(5)で記録したトルク指令値の極性より、軽負荷方向を決定する。また、タイミング(6)でブレーキ閉としているため、ここで一旦インバータ80の運転を停止する。さらに、この時点でシーケンス出力:運転状態はOFFとなる。
【0060】
<期間(8)>
タイミング(7)の後、一定時間ブレーキ閉状態を保持する待機時間を設け、待機を実施する。
【0061】
<タイミング(9)>
前記待機時間(期間(8))経過後にタイミング(7)で測定した軽負荷方向からモータ50の回転方向を決め、図4の内部正転指令、内部逆転指令いずれかをONとする。
【0062】
図1の場合、軽負荷方向がカウンタウェイト53側(すなわち期間(5)のトルク指令記録値の極性がモータの逆転方向)の場合では内部正転指令となる。また、軽負荷方向がかご54側(すなわち期間(5)のトルク指令記録値の極性がモータ50の正転方向)の場合では内部逆転指令となる。
【0063】
尚、図4は軽負荷方向がカウンタウェイト53側であり、内部:正転指令がONとなる例を示している。この内部:正転指令は、タイミング(2)でオンしたシーケンス入力:正転運転指令(または逆転運転指令)と一致しない場合もあり得る。
【0064】
またこの時点で、図4のシーケンス出力:運転状態が再びONとなり、また軽負荷方向検出完了、軽負荷方向をコントローラ90へ知らせる各信号(図4のシーケンス出力:軽負荷方向検出状態と、シーケンス出力:軽負荷方向)を出力する。
【0065】
<タイミング(10)>
コントローラ90は低速へシーケンス入力:多段速指令を変化させる。これを受けて、インバータ内部の多段速指令が零速から低速指令に切り替わり、インバータ80の運転を開始する。図4の内部:速度指令は0から変化する。内部:速度指令は、前記インバータ内部の低速指令とタイミング(9)で決めたモータ50の回転方向に基づいて演算する。図4では、内部:トルク指令の極性が負(モータ50の逆転(CCW)方向)であるので、内部:速度指令の極性は正(モータ50の正転(CW)方向)となっている。
【0066】
尚、シーケンス出力:ブレーキ開指令は、前記タイミング(9)とタイミング(10)の間の時刻でONとされ、タイミング(10)においてブレーキは開状態に制御されている。
【0067】
<タイミング(11)>
かご54が目的階に近づいたところで、コントローラ90はクリープ速度、零速へシーケンス入力:多段速指令を変化させる。そして零速になったら図4の内部:正転指令または内部:逆転指令(この例では内部正転指令)をOFFさせて、インバータ80を停止し、シーケンス出力:ブレーキ開指令をOFFとしてブレーキ閉制御する。この時、かご54は目的階に到達し停止している。
【0068】
<タイミング(12)>
インバータ80の停止後ブレーキは閉状態となっている。
【0069】
<タイミング(13)>
インバータ80の停止を受けて、図4のシーケンス出力:運転状態をOFFとする。
【0070】
<タイミング(14)>
コントローラ90からの運転指令(図4のシーケンス入力:(正転/逆転運転指令))をOFFとする。
【0071】
<タイミング(15)>
図4のシーケンス入力:通常/UPSをOFFとすることで、インバータ80への給電がUPS(非常電源110)から入力電源100へ切り替わり(MC1がON、MC2がOFFし)、停電運転動作(UPS運転モード)完了とする。
【0072】
上記タイミング(3)〜(7)の期間が、速度指令0による負荷方向測定運転期間であり、タイミング(4)〜(6)の期間が、軽負荷方向検出期間であり、タイミング(9)〜(12)の期間が、コントローラ90からの多段速指令による軽負荷方向運転(この例では正転)期間である。
【0073】
以上の動作によって、停電発生時にエレベータのかご54を軽負荷方向の階に移動させることができる。
【符号の説明】
【0074】
3…速度制御アンプ
4…トルクリミッタ
5…電流指令演算器
6…電流制御アンプ
8…位相検出部
9…速度検出部
10…保持回路
11…位置補償アンプ
13…ローパスフィルタ
14…負荷トルク確立判定部
30…ブレーキ車
31,32…ブレーキ装置
50…モータ
50a…回転軸
51…シーブ
52…主ロープ
53…カウンタウェイト
54…かご
56…エンコーダ
80…インバータ
90…コントローラ
100…入力電源
110…非常電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6